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7 標本の作製法
Ⅰ.形態検査の意義 2.血液塗抹標本の作製と染色法 1)標本の作製法 2)普通染色の意義・原理・応用 3)特殊染色の意義・原理・応用 4)血液染色による細胞の基本構造 血液塗抹標本の種類 人為的塗抹 薄層標本 圧挫伸展標本 ウエッジ(wedge)法 クラッシュ法* (引きガラス法) (押し潰し法) A (末梢血) C 厚層(濃塗)標本 手伸ばし法 スピン法 D E pH6.4~7.0 MG染色 (骨髄血) B 機械的塗抹 C’ 血中の寄生体の証明 (マラリア,フイラリアなど) (骨髄血) (2枚の標本が作成される) 最近は薄層標本で代用 *スパイクル法ともいう. 薄層塗抹標本の留意点と厚層塗抹標本 薄層塗抹標本の留意点 1. 貧血症や多血症や白血病などで、細胞数の増減が顕著なときは、塗抹速度、 引きガラスの角度、血液量などを加減して観察に適した塗抹標本を作製する。 2. 塗抹が終了したら、直ちに標本を強風乾燥を行う。しかし、鏡検下で細胞の 壊れがみられる時は、自然乾燥で処理することもある。 3.血液量の均一、引きガラスとスライドガラスの関係を配慮する。 濃塗(厚層塗抹)標本(thick blood smear) マラリア、フイラリア症、回帰熱など血中に寄生体が証明される可能性がある場合に使 用される。 1日のなかで証明しやすい時間に合わせて採血を行う。 A 新鮮な血液の1滴を載せガラス上に落とし、ガラス棒か引きガラスの端で、直径 15mm大の円になるように約4倍に速やかに広げ(2ケ所)、十分に自然乾燥する。 片側に塗抹することもある。また、通常の末梢血塗抹標本を作製し(A)、緩衝液は pHの7.0付近とされるがpH6.4あたりでのギムザ染色でも検出可能とされる。 薄層塗抹標本と圧挫伸展標本 ウェッジ法 (薄層塗抹標本:引き伸ばし法) クラッシュ法 (圧挫伸展標本:押しつぶし法) 引きガラス 約30度 載せガラス(スライドガラス) 血液の小滴 骨髄粒子の小血滴 スライドガラス 骨髄粒子の小血滴 染色後 染色後 B (末梢血・骨髄血に適応) C (骨髄血に適応) ウェッジ法の引きガラスの作製と塗抹 引きガラス *1 (A) 血球計算板用カバーガラスをセロファンテープで スライドガラスの一端に貼り付けたもの。 (B) 22X22mmの血球計算版用 カバーガラス スライドガラスは作業台の上に置き、引き終わりの端を 指で固定して塗抹してもよい。 *2 1. 引きガラスは右図の(A)か(B)を用意する。初心者には塗抹しやすい(A)を推奨する 2. スライドガラス(載せガラス)を用意する。 3. 両者とも清拭されたものを使用する。 4. 操作 ①引きガラスの塗抹部の中央または両端に血液の小滴(約5µl)を採り均等に広げる。 ②引きガラスをもっている母指と中指でスライドガラスを軽く挟み込むようにして約30度の 角度を保ちつつ、矢印の方向へ一定の速度(0.5秒)で軽く滑らせる。 *1:安藤泰彦,宮地勇人.東海大学出版会.2000 *2:奈良信雄ほか.血液検査学.医歯薬出版.2006 ウェッジ法による血液塗抹標本の良否と対策 A C E G B D F H 評価 I A:良好な標本 B:薄い、短い(血液量が少ない) C:長くて厚い、血液が引き終わりに残る(血液量過剰) D:短くて厚い(引く速度が速すぎる) 血液の量(5µl) E:血液が引き終わりに残る(引きガラスを途中で止めた) F:塗抹面が蛇行する(スライドガラスの縁と平行に塗抹できなかった) G:引き終わりが揃わない(塗抹時に血液量が均一でなかった) H:塗抹面が波打ち波打つ(引きガラスの圧過剰) I : 指紋で汚れた部分に塗抹できない(スライドガラス塗抹面の汚れ) 巽典之・阿南建一ほか:血液細胞ノート.文光堂.2005 ウェッジ法による塗抹の条件と塗抹標本の関係 塗抹標本 塗抹の条件 長さ 多い 血液の量 角度 圧力 速度 厚さ 長くなる 厚くなる 少ない 短くなる 薄くなる 大きい 短くなる 厚くなる 小さい 長くなる 薄くなる 強い 長くなる 薄くなる 弱い 短くなる 厚くなる 速い 短くなる 厚くなる 遅い 長くなる 薄くなる 古沢新平ら.臨床検査技術学.医学書院.2001 血液塗抹法の特徴と鏡検場所 ウエッジ標本(wedge) 11 ・細胞の詳細部観察や分類に適用 ・赤血球の接する部分が均一で赤血球2個の 重なりが50%以内の部分を観察する(末梢血) ・密度勾配ができるため大型細胞は塗抹周辺 部に集合しやすい. 圧座伸展標本(crush, particle) 2 ・細胞密度や分布状態の観察に適用 ・押し潰しのため細胞配列が維持できる ・末梢血の混入が少ないため新値に近い スピン標本(spine) 3 ・専用塗抹器にて作製する. ・細胞の分布は均一である. (矢印の方向、○印を観察する) 塗抹染色標本からわかること(ウェッジ法) A B C D ・正常の血球数における塗抹標本である. ・全体に赤みの染まりがみられる. ・血球数の減少における貧血症の塗抹標本である. ・全体に淡い染まりがみられる. ・高蛋白血症(骨髄腫など)の塗抹標本である. ・全体に青い染まりがみられる. ・貧血と白血球数増加の塗抹標本である. ・全体に淡い染まりで引き終わりが青くみられる.