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1
これからは、実際に皆さんの病院に放射線に被ばくした、または放射性物質が体表面に付着
、または体の中に入った患者さんが来た場合に、どういう順番で、何をやっていくかをお話しして
いきたいと思います。
ただ、今までの話にもありましたように、一口に被ばくしている患者と言ってもいろいろな患者さ
んがおります。基本的なことを守って、まずはその患者さんに今何が必要か、そのことを普通に
してあげようと考えてやっていただければよろしいかと思います。
きょうお話しする内容は、まず被ばく患者受け入れの原則、どういうことを考えてやっていただ
くか、あと、患者さんが来る前に、受け入れの準備に何が必要であるか、そして実際に患者さん
が来た場合の処置、そして最後に、いつ、どういう線量評価のための試料をとったほうがよいか
をお話ししていきたいと思います。
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初めに、原則です。
一番上に通常の医療優先ということを掲げました。通常の医療を優先するということが、どんな
場合でも第一になります。しかし、放射線に被ばくした患者さんが来た場合には、医療のトリアー
ジのほかに、放射線に対するトリアージが必要になります。ただ、いつもの医療、患者さんに何
が必要かを考えて、放射線のトリアージがそれに優先してはいけないということだけは頭に入れ
ておいてください。
ただ、そう言っても、皆さんの安全が担保されなければいけません。また、施設などに関しても
、すぐに使えるようにとか、そういうようなものもあります。下に書いてある二次被ばく・汚染の防
止をやっていかなければいけないということです。
さらに”チームでやっていく“、”情報を取り、測定する“、そして“心理面への配慮”、また放射線
の評価をするということで、“専門家の援助”も必要になります。そして、今現在皆さんが受けて
いるように、通常から訓練、研修、教育も必要です。
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次に、放射性物質による汚染の影響です。
放射性物質による汚染のみでは救急処置は必要としません。すぐに症状があらわれないとい
うこともあります。
生命に直接関係するものは主に外部被ばくによるものです。ということで、汚染の測定、線量
評価、また汚染がついているからと言って除染が救命処置に優先してはならないということにな
ります。
そして、医療者が二次被ばくにより影響を受けた例は今までにありません。
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この被ばく医療が一般医療とどこが異なるか、について話します。ここに示したように、被ばく
線量推定に基づいた医療プランを立てるということになります。すぐに症状があらわれない、何
も見えないということからも、線量を推定することが医療上大変重要になります。
そのためには、線量評価のために必要な試料を採り、測定する。また、多分野の要員が一緒
に行う必要があります。
また、患者に汚染があった、または汚染の疑いがある、汚染がないとは言えないという場合に
は、この汚染の管理をしていく必要があります。
さらに、体表面・体内汚染には除染という処置も必要になります。
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では次に、病院で患者受け入れの準備は一体何をやっていくかということです。ほかの災害も
同様だと思いますが、院内に災害対策本部のようなものを設置したほうが、後からのことを考え
てもスムーズに進むと思います。
患者の受け入れについての情報が来ましたら、この情報はすぐに知らせ、またとり続けなけれ
ばいけないということになります。
そして、要員を集め、ブリーフィングをよくやって、今ある情報を全員で共有化して、要員が自
分の仕事を把握して、自分たちは何をやって、どのように協力してやっていくのだということを話
し合います。
そのほかに先ほども言ったように、もし放射性物質に汚染している患者が来るような場合を考
えたら、防護衣、あとは個人線量計もつけて、汚染や放射線から防護する必要もあります。
施設もゾーニングし、管理区域をつくる必要があります。無用な人の出入りも管理します。また
、養生という言葉を使っていますが、これは実習でやりますが、シートを敷いたりすることも必要
になります。
そして、資機材は普通の医療用のほかに、放射線測定に必要な資機材、除染に必要な資機
材も必要になります。
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では、1つずつお話ししていきます。
情報ですが、医療のほうの患者人数とか患者さんの臨床状態を聞くことは当たり前だと思いま
すが、もし事故があったら、その事故の状況をよくお聞きしてください。
放射線事故の場合になると、患者に汚染があるのか、被ばくがあるのか、被ばくだけなのか、
汚染と両方なのか、傷が一緒にあるのか、そういうことが必要になります。
現場でその救急処置をしたかどうかは皆さんお聞きになると思いますが、それと一緒に、もう
放射線の測定をしているのか、除染をしたのかについても聞いて下さい。
あと脱衣をしてあるのか。もし脱衣が現場でできるものならば、できるだけ現場で脱衣をしてか
ら患者を運んでくれとお願いするようにしてください。
到着時刻はいつものとおりです。あと、追加情報、こういう事故のとき皆さんもご経験があると
思いますが、なかなかとれません。けれども、一方的に待っているだけではなくて、こちらからも
とれるようにする。つまり連絡者をきちんと把握して、連絡を追ってどんどんもらえるようにすると
いうことが必要になります。
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これは先ほど言ったチームで行うということす。
まず病院の責任ある方をトップにすることが一番大切だと思います。その後に、お医者さんは
いつもの医療をやるのですが、そのほかに必要な試料をとったり、あと除染をするというようなこ
とが入ります。
看護師さんは準備、お医者さんの補助です。医療用品を入れたりということのほかに、線量評
価のために必要なものの出し入れも必要になってきます。
一番ふだんのお仕事と変わってしまうと思うものが診療放射線技師さんではないかと思います
が、やはり測定という面、あと管理という面、これは放射線技師さんに課せられることが多いの
ではないかと思います。
そのほかに事務の方や保安要員も、出入り管理、また救急車の入り口を確保するとか、そうい
うような仕事があります。また、記録ということが後から大事になります。
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要員の防護衣についてお話しします。
もし放射性物質による汚染、汚染の可能性がある場合には防護衣を身につけます。ただ、もう
ご存じと思いますが、外部被ばくを防ぐものではありません、防げません。これは放射性物質に
よる体表面や体内汚染を防ぐものです。
あと、被ばく量を管理するものとしては個人線量計をつけるということになります。
防護衣はこれでなくてはいけないというものはありません。医療現場では、ディスポの手術着
やタイベックスーツが利用できます。
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ここに防護衣の一つの例を示しました。着脱方法は参考のスライドを参照してください。
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今度施設についてですが、入り口と処置室は一般患者と区別したほうがいいです。そして、処
置室はできるだけ入り口に近いほうが便利です。というのは、動線が短いほうがよいということで
す。
ただ、事故などで多人数の傷病者が出た場合は、これに限らないと思います。もしかしたら外
来のほうを使うようなことにもなると思いますが、一応できたならば入り口、処置室は一般患者と
区別したほうがよいということになります。
あと、放射線の管理の問題以外にも、不要な人の制限はしたほうがよく、余計な人はそこに入
れないというような管理が必要になります。
この養生、管理については最後の時間に説明とデモをやりたいと思います。ここに書いてある
ようなものが主に必要となるものです。
そして、そこの管理区域の中のものはすべてを管理する必要があるということで、人、物、水、
すべてです。すべてを管理しなければいけないということだけは覚えてください。床の養生につ
いては後で行います。床の養生については後で行います。
管理区域の設定、管理に必要なものを挙げました。
そして、ここにあるビニールシートとかポリエチレンろ紙、これがあるとは限りませんので、みん
なあるものを使って行ってください。
ただ、1つ、自分たちが処置をする、除染をするような場所では、吸水タイプのポリエチレンろ
紙と書いたものが、一方は水を吸って、片方は防水になっているというシートですが、そういうも
のを使ったほうが扱いやすいと思います。
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これは、処置室の例です。管理区域の中でも、患者さんを処置する場所、つまり一番汚染する
可能性のある場所、反対に言えば汚染させてもいい場所をつくります。これをホットエリアと呼び
、床や機器、ごみ箱等も養生します。その周りには緩衝エリア、さらのその周りはコールドエリア
とします。時間があれば管理区域内の床をすべて養生します。時間が無い時は、ホットエリアを
優先し、養生します。
参考のスライドに、管理区域と要員の配置例があります。
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これは、除染に必要なものです。と言っても特別なものはありません。ただ、除染のときには、
ガーゼなどもなるべく1回ふいたら、同じものを使わない、すぐ捨てます。また、養生もしなけれ
ばいけないということで、ガーゼとかシートとか、あと紙おむつみたいな吸収パッド、こういうもの
をすごく使いますので、十分に用意していただければと思います。
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汚染検査、空間線量に必要なものは、こういうものを用意していただくということになります。
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今度は実際に患者さんが到着したときに最初に行うことは、これはもう何度も出ていますが、
意識レベル、バイタルサインを確認するということです。
この時にもしNaIシンチレーション式サーベーメータがあれば、同時に空間線量率を測定します
。この測定器は単位がマイクロシーベルト/時間(μSv/Hr)で、1時間そこにいたらどのくらい被ばく
するか、何シーベルトになるかを表示します。
患者さんがその場に来た時、そこの空間線量率が上がるのか、上がらないのかを確認します
。上がらなかったら全然心配ないということになります。
処置室に移動して、安定化させます。あと、患者本人が話せるようだったら本人から、また救急
隊員からも自分たちが知っている以外の情報があるかどうかということを確認することも必要で
す。
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汚染がないということが確定できた、わかったという場合です。
これはもうほかの災害医療、救急医療に準じて行います。養生、除染も必要ありません。
ただ、わからない場合は汚染があるという考えで行ってください。汚染がない場合は、前駆症
状によく注意します。何時にどういう症状が出たかということに気をつけてください。線量評価の
ためにリンパ球数とか、あと被ばくにより唾液腺由来のアミラーゼレベルが一過的に上がります
のでそれらを調べます。
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今度は汚染がある場合です。
一番皆さんにわかりやすいものは、感染症の場合と同様の注意を行うことだと思います。ただ
、もし違うとしたら、先ほど見たように手袋が2重になったり、シューズカバーをしたりというような
ことになると思いますが、感染症の場合と同様に防護措置を行います。あとはなるべく二次被ば
く、汚染の防護をしながら行うということになります。
救命第一はいつでも同じです。患者さんが落ちついたら、汚染検査をし、除染をし、あとは廃棄
物の管理もします。外部被ばくも考慮しなければいけません。汚染ばかり頭にあると、外部被ば
くのほうが抜けてしまう場合があると思います。ですから、必ず患者さんの症状を見て下さい。必
要な検体を採取するということになります。
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汚染が体表面にあった場合です。
現場脱衣ができていれば、汚染は殆どとれており、ずっとでている顔や手足だけと考えてもら
えればよいと思います。脱衣をすることで大体70から90%の除染になると言われています。脱衣
していない場合は、脱がせやすいように、服を切り、裏側が表になるようにくるくると丸めながら
脱がせます。
あと、早期の除染と書きましたが、早くやるにこしたことはありませんが、やはり患者さんが安
定してからになります。ただ、除染は早くやればやるほど落ちやすいです。
そして汚染を広げない工夫をしながら行う必要があります。
あと、除染の優先度は先ほど紹介したカルテに従っていけば、順番にできるようになっていま
す。
そして、残存汚染も測定です。除染と測定はセットで行います。除染しっ放しはありません。除
染した後には必ず測定し、除染の効果や残っている汚染の程度を確認します。
普通除染をどのくらいするのかと聞かれることが多いのですが、できればバックグラウンドまで
落ちれば一番よいのですが、バックグラウンドの2倍、3倍ぐらいになれば、十分だと思います。
ただ、1つ、除染の効果が見られないのに、何度も何度もやって過度にこすり過ぎると、かえっ
てまた内部汚染をする可能性もあります。ですから、除染の効果が見られない場合はその方法
はそこで終わりにしてください。
そして、もし汚染がとり切れない場合は、汚染の拡大防止のために、被覆します。
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ここで患者の除染と養生の方法を説明します。
創傷部に汚染があった場合、初めに汚染をしていないところまで汚染を広げないように、シート
などを使って他の部分を覆います。これはどんな方法でも、皆さんのある物を利用してやってい
ただければよいと思います。こうやらなければいけないというものは何もありません。
時間があればテープで留めてもいいですし、時間がなかったらテープせずに置くだけでもよい
と思います。下に水がこぼれても、ほかに広がらないように、給水パットシートを敷いたりします。
汚染水は吸わせてしまうのが面倒無いでしょう。ほかに広がらないようにということです。
最初は水で流してしまってください。その後汚染部位をこすってください。洗瓶を使ったり、あと
、おしりを洗うものだったり、シリンジを使ったり、いろいろなものを使っています。
除染の効果をみるために、測定するときは必ず水滴をふき取ってから測ります。
除染が終わったら被覆をして、周りのシート等をとっていきます。周りの汚染検査も必要です。
プローブをゆっくり、1秒間に3センチぐらいの速さで、1センチぐらい離して測定します。上だけ
ではなくて下に回っていないかどうかも確認してください。
次に、健常な皮膚の汚染の場合です。
基本は、濡れ(水滴がこぼれない程度)ガーゼ等による拭き取りです。これは汚染検査をしても
汚染場所がどこか、なかなかわかりづらいと思います。マジックで汚染の周りを、そこが汚染して
いると分かるように書いてしまえばよいと思います。
今までと違うのは、外側から内側にふき取り、一度使ったガーゼ等は捨てます。 ふき取ったら
、やはりまた測定ということになります。もし、水等で落ちづらい時は、オレンジオイルというよう
なものを使います。これはしばらく汚染の部位に付けておき、その後、ぬぐうよう拭き取ります。
これは健康な皮膚の場合だけに使用し、またオレンジオイルを使ったら、その後は必ず水ぶき
をしてください。
皆さん、工夫しながらこの除染を行ってもらいたいと思います。
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あと、開口部、主に顔に汚染があった場合です。この中に汚染があるかどうかを調べなければ
いけません。もし鼻などだったら綿棒か何かでぐるっと回す。鼻スメアの方法が参考のほうに入
っています。
ただ、開口部の場合は、必ず周りをふいて、外側に付いていたものが、中に入らないようなこと
をしてから、鼻をかむとか、うがいをするとか、ガーゼでふき取るとかいうことをします。除染とと
もにこれらは核種検査等の試料ともなります。
髪の毛についても一番高い部分を先にふき取ってから、毛先に向かってふきます。全体に拭き
取った後、まだ落ちないようでしたら開口部に水が入らないように注意しシャンプーをします。そ
れでもとれなかったら、シャンプーキャップをかぶせるなどして汚染が広がらないようにします。
髪を切ることもあるかもしれませんが、そるということ、かみそりを使うようなことは絶対にしない
でください。
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体内除染に関しては説明がありましたので、省略しますが、創傷部や、開口部に汚染があった
場合に体内汚染を疑います。
体内除染は、除染によるメリットとデメリットを考え、実施するかどうかを判断します。専門家に
相談するとよいでしょう。
最後に、線量評価に必要な検体をいつとるかをまとめたものです。もちろん血球数の分画、あ
と唾液腺のアミラーゼの測定に必要な血液を採取します。
また、高線量と考えられる場合は染色体検査が必要になるかもしれません。このときに気をつ
けていただきたいことは、ヘパリン採血でとっていただくことが大切です。24時間以降に採取しま
す。ただ、すごく高線量と考えられる場合は、早くから採血することも必要です。
先ほど言ったように汚染がある場合は、必ず最初のふき取ったものは試料に回してください。
核種を調べるのに役立ちます。
また、もし内部被ばくの疑いがある場合は、24時間尿・便を4、5日間とっていただくことになり
ます。
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検体を取った後の受け渡しですが、必ず、時間、名前、部所、もし何回か除染した後だったら、
除染後とか、そういうものを書き入れ、ビニール袋の中に入れて渡して下さい。
あと、ただ渡されても、これが何の検査に必要かわからないときがあります。核種検査なのか、
もし血液だったら、普通の臨床なのか、線量評価のためのものか、きちんとわかるように検体を
受け渡すということが大事になります。参考の最後に記録票の例を載せてあります。
まとめです。
この被ばく・汚染患者を処置をするに当たって、要員は、まず自分の安全、つまり防護着を着
て、患者救命を第一に考えて行います。医療のほかに、放射線によるトリアージも行いますが、
必ず医療を優先させましょう。また、汚染がある場合は、汚染の拡大防止に気をつけて行っても
らいたいと思います。
後ろに何枚か参考でスライドをつけてあります。最初のスライドが大体の流れがわかるように
書いたものですので、参考にして下さい。
では、これで終わりにいたします。
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4. インナースーツ(ディスポ手術着)を着る
5. 個人線量計(記録)を男性は胸に、女性は腹部につける
6. (椅子に座り)シューズカバー(または長靴)をはき、スーツにぴったりとテープでとめる
(*テープの端ははがしやすくするため折り返す)
7. ディスポガウンを着る
8. 内側用の手袋をはめ、テープでスーツにぴったりと張り付ける(*)
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9. 必要ならば(除染)ビニルエプロンをつける
10. マスク、メガネ、キャップをつける
11. 役割と名前を油性ペンで書く
(区域により色を分けるとわかりやすい)
12. 外側の手袋をはめる
(できれば、内側と色が異なり脱着しやすいもの)
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1. (もし付けていたなら)エプロンを取り、ゴミ箱へ
2. 外側の手袋を取り、ゴミ箱へ
3. 帽子を取り、ゴミ箱へ
4. 内側の手袋のテープをガウンからはずす
5. ガウンの外側を内側に包むようにして脱ぎ、ゴミ箱へ
6. 境界(外側)に椅子を置き腰掛け、シューズカバーのテープをはずす
7. 片側のシューズカバーを取り、足は上げたままゴミ箱へ。足裏をサーべしてもらい、緩衝区域へおろす
8. もう一方も同様に
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9. 汚染区域側を向き(手は汚染区域)、マスク、メガネをはずし、汚染区域のゴミ箱へ
10. 最後に内側の手袋を外し、汚染区域のゴミ箱へ
11. 全身をサーべイ
12. 個人線量計をチェック(記録)
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