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皮膚線量

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皮膚線量
特別報告
医療 における
第 1 部 医療被ばくの現状と考え方
放射線防護
2.医療被ばくの現状
エビデンスに基づいて
現場の質問に答える
赤羽恵一 (独)放射線医学総合研究所重粒子医科学センター医療放射線防護研究室
6040 となっている。また,マンモグラフィ
はじめに
X 線発見後 100 年あまりの間に放射線
るX線CT装置数は100万人あたり92 . 6 台
は 3792,SPECT が 1337,PET が 199,
で,他国に比べて非常に大きな値を示し
PET/CT が 267 である(図 1)。これらの
ている。ちなみに,2 番目のオーストラリ
診療技術は目覚ましく発展し,医療で
装置を用いた放射線診療を実施してい
アでも100 万人あたりの推定値は 2002 年
は高度な画像診断および放射線治療が
る施設の割合は,マルチスライス CT で
は 34 . 1 台,2006 年は 56 . 0 台である(図
可能になった。私たちはその恩恵を受け
は一般病院 50 . 1%,一般診療所 1 . 5%,
2)
。放射線診療機器の台数に関しては,
ており,日本では非常に多くの放射線診
その他の CT はそれぞれ,36 . 6%および
必ずしも精度の高い統計データがあるわ
療が行われている。そのため,他国と比
3 . 4%である。マンモグラフィは 32 . 8%
けではないが,既報データからは,日本
べて医療被ばくが大きいことが指摘され
と 1 . 1%,PET は病院 1 . 4%,PET/CT
は現在人口 1 万人あたりおよそ 1 台の
てきた。海外でも,人工放射線による被
が 2 . 1%である。ただし,これらの値は
X 線 CT 装置があると推定される。
ばくの中で占める割合が高いことから,
推定値であって,日本の装置および検
X線CT装置以外に,MRI装置も他の
医療被ばくを防護の重要な課題として取
査数を正確に把握することは現状では困
国々より人口あたりの台数が非常に多い
り組む動きが大きくなってきている。そ
難である。X 線 CT 装置および検査数は
ことが OECD のデータに示されている
こで,日本の医療の現状を,線量を中
年々増加の傾向が認められたが,近年は
(2002 年および 2005 年の 100 万人あたり
心に述べる。
それほど増加していないと推定している
装置数がそれぞれ,35.3台および40.1台)
。
評価結果もある。
しかし,すべての放射線診療機器が多い
放射線診断機器数
OECD は 2009 年に“OECD Health
わけではなく,例えば放射線治療装置は
日本の放射線診療は,諸外国と比べ
D a t a”を公 表したが,その中に世 界
2002 年および 2005 年でそれぞれ,100 万
て多いことが指摘されてきた。放射線診
30 か国の種々の比較データが示されて
人あたり6.6台および6.8台で,OECDの
断機器,特に X 線 CT 装置数は多く,
いる。それによると,日本の 2002 年におけ
30か国の比較の中では低い方に入る。
年を追うごとに増加する傾向にある。
厚生労働省の平成 20 年度医療施設
2002年日本:92.6台
調査によると,放射線診療機器数は,
マルチスライス CT が 5960,他の CT が
図 1 放射線診療機器数
T/
C
T
T
PE
PE
T
C
PE
S
マ
ル
チ
ス
ラ
イ
ス
C
T
そ
の
他
の
マ
C
ン
T
モ
グ
ラ
フ
ィ
一般病院
一般診療所
(平成 20 年度厚生労働省医療施設調査)
46 INNERVISION (25・6) 2010
米国
英国
トルコ
スイス
スウェーデン
スペイン
スロバキア
ポルトガル
ポーランド
ノルウェイ
ニュージーランド
オランダ
メキシコ
ルクセンブルグ
韓国
日本
イタリア
アイルランド
アイスランド
ハンガリー
ギリシャ
ドイツ
フランス
フィンランド
デンマーク
チェコ
カナダ
ベルギー
オーストリア
オーストラリア
4500
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
図 2 人口 100 万人あたり X 線 CT 装置数(OECD Health Data 2009)
〈0913-8919/10/¥300/ 論文 /JCOPY〉
)
)
医療における放射線防護
特別報告
0 ∼14歳
15歳以上
歯科X線診断 0.034 0.001
核医学診断
集団検診
(胸部)0.023
1.6%
2.5%
3.9%
1.5%
0.7%
3.6%
頭部
1.6%
1.6%
頭部-胸部
頭部-腹部
頭部-骨盤
胸部
1.5%
83.0%
胸部-腹部
胸部-骨盤
腹部
腹部-骨盤
骨盤
集団検診
(胃)0.0097
0.5%
9.6%
0.41
40.5%
CT
4.3%
集団検診
(胃)
0.43
2.3
0.005
12.8%
14.0%
自然放射線
(内部)
フォールアウト
一般 X 線診断
X 線 CT
0.59
14.8%
自然放射線
(外部)
ラドンおよび娘核種
0.038
集団検診
(胸部)
歯科 X 線診断
1.2%
0.2%
0.6%
*単位はmSv
図3 X線CTの検査部位別割合(放医研2000年実態調査データより)
核医学診断
1.47
その他
一般X線診断
職業被ばく
その他
図 4 日本の一人あたり年間被ばく線量の内訳
日本
(mSv)
日本
日本
米国
米国
4
米国
3.5
3
と一般 X 線診断が多く,ラドン等は少な
い状況である(図4)
。
線量評価の精度を考慮すると,日本も
米国も 1 人あたりの被ばく線量にはそれ
ほど差がないが,比率として医療放射線
2.5
2
の影響が大きいと言える(図 5)。
1.5
現場における正当化と最適化の
現状
1
0.5
0
0.005
医療放射線
その他の放射線源
個々の放射線診療の際の正当化につ
いては,実際には医師 ・ 歯科医師の経験
図 5 被ばくに占める医療放射線の割合比較(日本と米国)
医療放射線
医療放射線
その他の放射線源
その他の放射線源
放射線診断の頻度
日本の放射線診断の頻度は,装置数
で約 2700 万件と,米国の約半分程度と
なっている。
的な判断に委ねられているのが実状であ
る。概して適切な判断が行われていると
思われるが,短時間に高画質の画像が
得られるようになり,疾病やケガの見落
としを防止するために安易に X 線診断,
特に X 線 CT 検査が選択され,撮影範
囲も広めに検査が行われる事例もあるこ
全被ばくにおける医療被ばくの
割合
とは否めない。適切な判断が求められる。
が 2000 年に行った実態調査では,撮影
“NCRP PEPORT No.160”では,米国
例えば X 線検査では,X 線発生装置の
部位は 0 ∼ 14 歳の被検者では約 83%が
民が 1 年間に受ける放射線被ばくの線量
管電圧・管電流・照射野などの照射条
頭部の検査である。15 歳以上でも頭部
は,1人あたり6.2mSvと評価されている。
件の設定が重要である。また,放射線
検査は全体の約 40 . 5%を占め,腹部
そのうち,最も高い割合を占めている
診断では,最適化の過程の中で診断参
同様に高いと言える。X 線 CT 検査につ
いて放射線医学総合研究所(放医研)
医療の現場における最適化については,
14 . 8%,胸部 14 . 0%と続く(図 3)。米
のはラドンとトロンである(全体の 37%:
考レベル(D i a g n o s t i c R e f e r e n c e
国の“NCRP REPORT No. 160”による
約 2 . 3 m S v)
。医 療 被ばくは,C T が
Level:DRL)を用いるべきであると国
と,2006 年の米国における X 線 CT 検
24%(約 1 . 5 mSv)
,核医学が 12%(約
際放射線防護委員会(ICRP)は勧告し
査でも,頭部検査が単独部位としては
0 . 74 mSv),
IVR が 7%(約 0 . 43 mSv),
ており,IAEA はガイダンスレベルとし
一 番 多 い こ と が 示 さ れ て い る。 同
X 線撮影 ・ 透視が 5%(約 0 . 31 mSv)と
て具体的数値を示した。日本では日本
REPORT では,1993 ∼ 2006 年までの
なっている。
放射線技師会がガイドラインとして,日
X 線 CT 検査数が漸増している経時的推
一方,日本は,1人あたりの被ばく線量
本のデータを基に独自に設定した値を公
移のデータもあり,2005 年における検査
が約 5 . 3 mSv/ 年で,CT が約 2 . 3 mSv,
表している。これらの線量指標は,一般
数は 5760 万件である。科研費甲斐班の
一般X線診断が1.47mSv,ラドンおよび
的な X 線撮影では入射表面線量,X 線
推定では,日本の CT 検査数は 2005 年
娘核種が 0 . 43 mSv と,米国よりも CT
CT は CTDI,核医学は投与放射能,マ
INNERVISION (25・6) 2010 47
2.医療被ばくの現状
近の報告書は 2000 年に出されたものに
面積線量積(Dose Area Product : DAP )
X線管から出てくるX線の量に関係する量
なる。 2.胸部撮影
胸部撮影では,
“UNSCEAR 2000 年
入射皮膚線量(Entrance Skin Dose)
報告書”に 19 か国の平均値(実効線量)
入射表面線量(Entrance Surface Dose)
として 0 . 14 mSv,日本は 0 . 057 mSv と
皮膚の線量
患者の体からの散乱線を加味した空気の線量
入射線量(Entrance Dose)
患者の体がないときの空気の線量
いうデータが示されている。診断参考レ
ベル(入射表面線量)は,IAEA ガイダ
ンスレベルが 0 . 4 mGy,日本放射線技
師会ガイドラインが 0 . 3 mGy である。
臓器線量(Organ Dose)
臓器の平均線量
3.上部消化管検査
上部消化管検査では,
“UNSCEAR
2000 年報告書”で 19 か国平均(実効線
量)が 3 . 6 mSv,日本が 3 . 33 mSv で,
図 6 X 線診断における被ばくを表す指標の例
診断参考レベル(入射表面線量)は日
本放射線技師会ガイドラインで直接が
ンモグラフィは乳腺線量などである。海
Dose)と混同される場合があるので注意
100 mGy,間接が 50 mGy である。
外では DRL を医療被ばく防護の手法と
が必要である(図 6)。
4.X 線 CT 撮影
して採用している国々もあるが,日本で
CTDI は,体幹部では直径 32 cm,頭
CT撮影は,UNSCEARに日本を含めた
はまだ規 制に取り入れられていない。
部は 16 cm の円柱形 PMMA(アクリル)
9か国のデータが頭部,胸部,腹部検査に
DRL を用いるためには,医療施設で実
ファントムの中心における空気吸収線量
対する実効線量として報告されており,そ
際に行われている放射線診断の線量を
で示される指標で,ファントム辺縁部の
れぞれ0.8 ∼ 5.0mSv,4.6 ∼ 20 .5mSv,
測定あるいは計算で評価する必要がある。
線 量を考 慮して加 重 和を取 っ た
6 ∼ 27.4mSvとなっている。放医研では
DRL と比較して線量が高い場合には,
CTDIw,CTDIwをピッチファクタ(1回
人体を高度に模擬した物理ファントムと
線量低減の可能性を検討することになる。
転あたりのテーブル移動量 / ビーム幅)
線量計素子を用いた臓器線量測定を行い,
医療被ばくの線量
で割った CTDIvol など,複数の種類が
頭部,胸部,腹部−骨盤検査でそれぞれ
ある。スキャン範囲により被ばくが異な
1.0 ∼ 2.1mSv,5.1 ∼ 15.5mSv,7 . 6 ∼
1.医療被ばくの線量指標
ることから,CTDIvol にスキャン長を乗
21 . 9 mSv という値を得ている。診断参
「医療被ばく」と一口に言っても,歯
じた値が長さ線 量 積(D o s e L e n g t h
考レベルは頭 部と腹 部 検 査に対する
科撮影のような低い線量レベルから,
Product:DLP)である。
CTDI の値として,IAEA ガイダンスレ
IVR や放射線治療のように高い線量レ
ほかにも,X 線管球から出てくる X 線
ベルが 50 mGy および 25 mGy,日本放
ベルまで,多岐にわたっている。また,
の線量を表す指標に面積線量積(Dose
射線技師会ガイドラインが 65 mGy およ
線量を表す指標にも多くの種類があり(臓
Area Product:DAP)がある。異なる
び 20 mGy である。
器吸収線量,等価線量,実効線量,入
種類の放射線診療の線量を比較するた
5.核医学検査
射表面線量,皮膚線量,CTDI,DLP,
めに, 指 標として実 効 線 量( 単 位は
核医学では,
“UNSCEAR 2000 年報
乳腺線量など)
,これまでに数多くの線
mSv:ミリシーベルト)が用いられる。
告書”に9か国平均として,腎臓,骨,心臓
量評価データが報告されている。
医療被ばく線量の具体的値に関して,
血管,甲状腺摂取の実効線量が1.5mSv,
臓器吸収線量は,放射線のリスク評
さまざまなデータが報告されている。し
4 . 5 mSv,8 mSv,15 mSv と示されてい
価の基本となる線量である。等価線量 ・
かし,同一種類の放射線診療でも,国,
る。日本核医学会 ・ 日本核医学技術学
実効線量は,放射線の種類による影響
地域,病院,装置,放射線診療従事者
会 ・日本アイソトープ協会が作成した『核
の違いと,臓器による放射線感受性の
の違いにより,線量にも大きな差が存在
医 学 検 査 Q & A』に は 1 回 あ た り
違いを考慮した線量で,防護のために用
している。そのため,1 つの数値で示さ
1 ∼ 15 mSv と紹介されている。診断参
いられる。また,対象が医療放射線のみ
れている被ばく線量は,あくまでも平均
考レベルは,IAEA,技師会とも,核種 ・
で,診断参考レベルとしても用いられて
値あるいは代表値であることを理解した
放射性医薬品ごとに投与量の値が個別
いる指標では,入射表面線量(Entrance
上で用いる必要がある。国連科学委員
に示されている。PET 検査はUNSCEAR
S u r f a c e D o s e:E S D)
,C T D I(C T
会(UNSCEAR)は数年に一度,世界各
が 2 ∼ 10 mSv,日本核医学会 ・ 日本ア
Dose Index)などがある。入射表面線
国に対し放射線に関する調査を行い,そ
イソトープ協会の『PET 検査 Q & A』は
量は患者の放射線入射表面における空
の結果をまとめて報告書として総会に報
18
気の吸収線量だが,患者の皮膚の線量
告している。近いうちに最新の報告書が
6.乳房撮影
を表す入射皮膚線量(Entrance Skin
出される予定になっているが,既存の最
乳房撮影は,乳腺線量としてUNSCEAR
48 INNERVISION (25・6) 2010
F-FDG 検査で 3 . 5 mSv としている。
特別報告
医療における放射線防護
表 1 各放射線診療の診断参考レベルと被ばく線量
診断参考レベル
検査の種類
胸部撮影
被ばく線量
IAEA ガイダンスレベル
日本放射線技師会
ガイドライン
線量の種類
線量
線量の種類
0 . 4 mGy
0 . 3 mGy
入射表面線量
0 . 06 mSv 程度
実効線量
直接 100 mGy, 間接 50 mGy
入射表面線量
3 mSv 程度
実効線量
上部消化管検査
CT 撮影
頭部 50 mGy, 腹部 25 mGy
頭部 65 mGy, 腹部 20 mGy
CTDI
5 ∼ 30 mSv 程度
実効線量
核医学検査
放射性医薬品ごとの値
放射性医薬品ごとの値
投与放射能
0 . 5 ∼ 15 mSv 程度
実効線量
PET 検査
〃
〃
〃
2 ∼ 10 mSv 程度
実効線量
乳房撮影
3 mGy
2 mGy
乳腺線量
2 mGy 程度
乳腺線量
透視
通常 25 mGy/ 分
(高レベル 100 mGy/ 分)
透視線量率 25 mGy/ 分
入射表面線量率
手技により異なる
歯科撮影
(なし)
(なし)
の 23 か国のデータで 0 . 23 ∼ 2 . 71 mGy
被ばくで線量レベルも低いという特徴が
2 ∼ 10μSv 程度
実効線量
それは適切な医療が広く行われていると
ある。
“UNSCEAR 2000 年報告書”で
いう,大きなベネフィットを意味する。
国が 5 . 2 ∼ 11 . 08 mGy という数値である。
は 27 か国の平均(実効線量)として,
しかし,診断参考レベルの利用が ICRP
放医研が 4 種類のデジタルマンモグラフィ
口内法が 13μSv(日本 14μSv)
,パノラ
により勧告され,具体的数値が複数の
装置に対して行った測定結果は,平均
マ法が 12μSv(日本 11μSv)という値が
組織 ・ 機関から出されていることからも
値が 1 . 74 mGy であった。また,診断参
載っている。放医研と日本大学が測定し
わかるように,まだ改善の余地があり,
考レベル( 乳 腺 線 量 )は,I A E A が
た結果は,口内法の皮膚線量が 2 . 5 ∼
不安を抱いている患者さんも多いのが現
3 mGy,日本放射線技師会が 2 mGy で
4 mSv という値であった。
状である。正当化・最適化の判断のみ
ある。
9.被ばく線量レベル
ならず,患者さんの不安や疑問に答える
7.IVR,透視
上記のUNSCEAR や放医研の測定デー
ためにも,利用している放射線診療の線
IVR は,透視をしながら治療的手技も
タなどを考慮すると,各放射線診断の被
量レベルを把握しておくことと,線量と
行われることから,他の診断とは異なる
ばく線量レベルは,大まかに歯科撮影は
リスクの関係をある程度知っておくこと
面を持っている。線量も,確定的影響(皮
0 . 01mSv 程度,胸部撮影は0 . 06 mSv 程
も大切なことである。
膚障害など)が問題になるほどの線量レ
度,上部消化管撮影は 3 mSv 程度,CT
ベ ル に 達 す ることもま れ で は な い。
撮影は 0 . 5 ∼数十 mSv 程度,核医学検
(日本 1 . 8 mGy)
,入射表面線量は 17 か
UNSCEAR では種々の手技に対する各
査は0.5 ∼ 15mSv程度,PET検査が2 ∼
国からのデータがまとめられているが,
10 mSv 程度と評価されている。また,個々
例えば複数の文献から,PTCA は皮膚
の臓器が受ける線量は臓器吸収線量(単
線量が0.1 ∼ 0.5Gy,実効線量は6.9 ∼
位は mGy:ミリグレイ)と呼ばれ,乳房
28.9mSv,面積線量が28.5 ∼ 143Gy・cm
2
という値が載っている。IVR に関しては,
撮影では乳腺線量が 2 mGy 程度である。
これらの数値はあくまでも目安であって,
ICRP が Publication 85「IVR における放
異なる数値を示しているデータ源も多々
射線傷害の回避」の中で,繰り返される
ある。実際には同一の診断でも非常に低
手技は 1 Gy,いかなる手技も 3 Gy に近
い線量から高い線量まで 10 倍以上の差
づいたり超えたりした場合には,線量を
があることもまれではないが,被ばくの
診療録に記載すべきであると勧告してい
レベルを考えるのには有用である(表 1)。
る。透視の線量では,診断参考レベル
( 入 射 表 面 線 量 )を I A E A が通 常で
医療被ばくの課題
25 mGy/ 分,高レベルが 100 mGy/ 分と
先述のとおり,医療被ばくの防護では,
し て い る。 日 本 放 射 線 技 師 会 は
いかに適切に正当化 ・ 最適化を行うか,
25 mGy/ 分という値を示している。
ということが重要になる。たとえ国民全
8.歯科撮影
体が受ける医療被ばくが大きくても,正
歯科は,他の手技と比較し,局所の
当化・最適化が適切に行われていれば,
●参考文献
1)放射線医学総合研究所 監訳:放射線の線源と
影響 . 原子放射線の影響に関する国連科学委員
会の総会に対する 2000 年報告書,東京 , 実業公
報社,2002.
2)NCRP: NCRP REPORT No.160. Ionizing
Radiation Exposure of the Population of the
United States, National Council on Radiation Protection and Measurements, 2009.
IAEA: Safety Series No. 115. International
Basic Safety Standards for Protection against
Ionizing Radiation and for the Safety of Radiation Sources, IAEA, Vienna, 1996.
3)日本放射線技師会:放射線量適正化のための医
療被曝ガイドライン . 東京 , 文光堂,2009.
4)日本アイソトープ協会翻訳発行:ICRP Publication 60. 国際放射線防護委員会の 1990 年勧
告,東京 , 丸善,1991.
5)日本アイソトープ協会翻訳発行:ICRP Publication 103. 国際放射線防護委員会の 2007 年勧
告,東京 , 丸善,2009.
6)日本アイソトープ協会翻訳発行:ICRP Publication 85. IVR における放射線傷害の回避,東
京 , 丸善,2003.
●参考 URL
OECD データ http://stats.oecd.org/Index.aspx
INNERVISION (25・6) 2010 49
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