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エグゼクティブ・サマリー
Accenture Technology Vision 2016 エグゼクティブ・サマリー 2 Technology Vision 2016 主役は “ひと” :デジタル時代は “ひと” こそ最優先 デジタル時代の勝者は、テクノロジー力の獲得のみならず、 それを凌駕する幅広い取り組みを行っています。こうした 企業は“ひと”こそが成功の鍵であることを知っています。 顧客のニーズや行動を理解する能力はもちろん不可欠ですが、 インテリジェンスの時代と呼ばれる今、企業は新たに登場 するテクノロジーを活用できるというだけでは不十分です。 むしろ、そうしたテクノロジーを原動力に新たなビジネス 戦略が導入できるよう、自らの文化を進化させる能力こそ、 より重要な決定打となります。 #techvision2016 3 Technology Vision 2016 デジタルな世界における成功は、 単に多くのテクノロジーを取り入れる、 あるいは(一部の人々が懸念する点でも ありますが)人間をテクノロジーによって 置き換えるだけでは達成できません。 企業は“ひと”、すなわち消費者、労働者、 およびエコシステム パートナーが、テクノ ロジーを通じてより多くのことを達成できる 仕 組み作りに 注力すべきです。 “ひと”が 新たな状況に対応する中で学習し、新しい 解決策を生み出し、たゆむことなく変化を 追求し、また現状を変えることを可能にする 手段としてテクノロジーを活用するような、 新たな企業文化を創出せねばなりません。 繰り返しになりますが、テクノロジー万能と いわれるこの時代にあって、真のリーダーは “ひと”を最優先に行動しているのです。 #techvision2016 4 Technology Vision 2016 デジタルなカルチャーショック 私たちは今、大いなる技術革命、すなわちデジタル革命のさなかに あります。アクセンチュアの調査によると、現在、あらゆる経済分野が デジタルによって支配されつつあります。 このグローバルなデジタル経済は、2015年 こうした 変化 は 段 階 的なものでは なく、 の時点で世界のGDPの22%を占めています。 実際のところ、もはや新たなスタンダード この比率は急速に拡大しており、2005年で (New Normal)となっています。ITとビジネ は15%だったのが2020年までには25%に ス分野の3,100名超の経営層を対象とした まで達すると我々は予測しています。1 アクセンチュアの調査では、86%が、自ら デジタルはあらゆる分野に浸透し、かつて ない規模の変化をもたらしています。新しい テクノロジーやソリューションが登場し、デ ータ量は前例のない規模に拡大し、レガシ ーシステムと新システムとの一体化が求め られています。そして、 (社内外において)コ ラボレーション、新たな提携、新しいスター トアップ企業、その他、これまでなかった様 の業界の技術変化のスピードは今後3年間 に急速に、かつてないペースで拡大すると 回答しています。多くの企業が、テクノロジ ーの影響やその対応に必要な変化にうろた え、今後必要となる取り組み規模に圧倒さ れそうになっています。まひ 状態に陥る企 業すら出てきています。これは無理もない 状況です。 々なことが生まれてきています。同時に、市 しかし、企業は、一度立ち止まって深呼吸 場に出てみればデジタル顧客が成熟してき し、デジタル・カルチャーショックへ向け、 ています。サービス、スピード、パーソナライゼ 新たな製品、ビジネスモデル、それらをサポ ーションといったことへの劇的な欲求の変 ートする全プロセスを変革し始める必要が 化は、いまだその初期段階にすぎません。 あります。 顧客だけではありません。ミレニアル世代 新たなスキルを開発したり、緩やかなパー (1980年代〜2000年代前半生まれ)の参入 トナーベースのコラボレーションによって形 により、人生観や願望が全く異なる新タイプ 作られたエコシステムを通じた、従来とは の従業員も登場しました。この、いわゆるデ 異なる機敏な業務スタイルを学ばねばなり ジタル世代は、世界が自分のニーズに合わ ません。これを実現するには、企業のあらゆ せることを要求し、また、仕事の進め方につ る要素、とりわけ“ひと”に対する新たな観 いての考えも従来とは異なります。コラボレ 点が求められます。 “ひと”が成長するため ーション技術の普及は、長年の雇用形態に の投資や管理、および彼らが変化に対応し 変化をもたらしています。フリーランスやポ 受け入れることができるよう支援すること ートフォリオキャリア(複数の職を同時に持 が、基本的な要件となります。ビジネスがデ つこと)の増加とともに、どのように、いつ、 ジタル化する中、組織、 “ひと”、企業文化 どこで仕事をするか、が変わってきています。 にもまたデジタル化が求められます。 2020年までに世界 のGDPの25%が デジタル経済に 出典:Digital Economic Value Index, Accenture, January 2016 #techvision2016 5 Technology Vision 2016 現在多くの企業が直面するデジタルなカル 入手段の見直しまで、あらゆることについて チャーショックは、克服不可能とさえ思わ 実験的な取り組みを行っています。さらに れがちです。しかし幸いなことに、打開に は、優良会員の協力までもを要請し、3万人 向けたヒントとなるモデルはすでに存在し の人々にChange.orgで署名させることで、 ます。テクノロジー企業の多くがすでに活 ダラス・ラブフィールド空港で2つのゲート 発なデジタル文化を確立していますが、他 枠を獲得しました(これは後に実現してい の産業においても早期導入企業が登場し、 ます)。同社はこの貢献に金銭で報い、株 ガイド役となっています。たとえばVirgin 式公開に先立ってマイレージサービス会員 Americaという、シリコンバレーに本社を にストックオプションを提供しました。何よ 置く唯一の航空会社があります。彼らは、周 りもすばらしいことに、同社自体が実際的 囲の破壊的変化をもたらしてきたテクノロ な成果を得ており、2014年の売上高は15億 ジー企業と同様な思考方法を学びました。 ドル近く、株式公開時の時価総額は3億600 機内ソーシャルネットワークから航空券購 万ドルに達しています。2 今後3年間にあなたの業界での技術変化のペースは どのように変化すると予想されますか? 28%が前例のない速度で拡大と回答 58%が急速に拡大と回答 12%がゆっくりと拡大と回答 1%が現在と変化なしと回答 1%が縮小すると回答 Accenture Technology Vision 2016 Surveyより #techvision2016 6 Technology Vision 2016 企業文化をいかにして変えるか? デジタル文化の活気や成功の基盤はどこにあるのでしょうか? 我々は、4つの重要な柱があると考えます。企業は、変化に対応する 仕組みを持ち、データに基づいて行動し、破壊的変化を喜んで取り入れ、 デジタル面でのリスクを認識することが求められているのです。 変化を前提 当然ですが、企 業や 組 織は変化を前 提に そうしたことを主眼に構築されたアーキテ 構築されなければなりません。これは企業 クチャやコラボレーションのためのプラット としての行動様式を変えなければならない フォームとなります。そしてこれらすべての 場 合もあることを意味します。デジタルビ まとめ役として、 “ひと”が作り出す変化を ジネスに要求されるスピードで行動するに 企業全体として受け入れることです。人々 は、新たなスキル、新たなプロセス、新た は、その役割にかかわらず、変化を期待し、 な製品、そして、新たな働き方が必要です。 その影響を理解し、自らのスキルを進化させ、 とにかく敏 速性を備えた手法が重 視され 新たなスキルを磨くことで変化に歩調を合 ます。 「New IT」が必要とされるのですが、 わせることが求められます。企業とIT部門 「New IT」には、まずDevOpsモデルがあり、 の経営層の37%はすでに、従業員へのトレ 継続的な成果達 成(デリバリー)を行う実 ーニングが3年前と比較して非常に重要に 働組 織 がいます。そして、SOA(Se r vice なってきていると回答しています。最も先進 Oriented Architecture)とクラウドによっ 的な組織が変化に最も良く対応し、ビジネ て拡張性を担保し、SaaS(Software as a スの成長と改善を実現させているのです。 Service)によって効率化、敏速性を持つ、 もう1つ同様に重要な(しかし今なお不十 ンライン販売を行うZappos社では、広告 分な)要素として、データに基づいて行動 活動やサイトのパーソナライゼーションより する組 織となること、があります。データ もデータを優先しています。同社が最も重 とアナリティクス活用能力の向上について 視する顧客に関する重要な決定を、データ は、過去数年さまざまな議論がなされてき に基づいて行うためです。自社データに外 ましたが、真にデータに基づくということ 部の第三者データを組み合わせることによ は、優れたツールやスキルを持つことだけ り、同社のマーケティング分析チームは、2 を意味しません。企業のあらゆるレベルに つの主要な重要顧客セグメントを特定しま おいて、意思決定の基盤を変えることを意 した。最終的には、従来と同じく広告という 味するのです。直感、過去の経験、あるいは 手法が使われるものの、適切な顧客セグメ HiPPO(Highest-Paid Person’ s Opinion: ントをターゲットとした広告となる点が全 最も給料の高い人の意見)などに頼るので く異なります。また、こうしたデータや消費 はなく、企業全体にわたってインサイトに基 者に関する文化を社内で徹底するため、同 づく意思決定を行えるよう、あらゆる面で 社の顧客中心主義に賛同できない人が退職 容易にデータ活用できることが求められま しやすいよう、採用から4週間後に離職する す。人間だけではなく、機械もまたインテリ 場合には1人当たり3,000ドルを支払ってい ジェンスを取得し、それに基づいて行動で ることも有名です。3 データに基づいて行動 きなければなりません。靴とアパレルのオ #techvision2016 7 Technology Vision 2016 破壊的変化 「こうした家電が互いに 接続されている世界を 想像してみてください。 コンテンツやサービスと アプリ、あるいは広告など を配信する、最大の プラットフォームのひとつ が出現するのです」 あらゆる階層の“ひと”が、新しいツール、 開け放しのときにメールを送る冷蔵庫、ス 新しいスキル、および新しい機械を使って ポットエネルギー価格を使っていつ洗浄す 変化を 進 める中、経 営層にも果 たすべき るかを判断する食洗機、スマートウォッチや 重要な役割があります。真に最先端を行く スマートフォンによって制御されるロボット 企業は、デジタル化のもたらす効率改善の 掃除機など、次世代のウェアラブル機器や みに注目するのではなく、自社のDNA内に スマート家電を世に送り出しています。サム 破壊的変化を取り入れ、テクノロジーによっ スン社のエグゼクティブ・バイスプレジデン て業務の進め方が変わり、ビジネスがまっ トであるデイビッド・ユン(David Eun)は、 たく異なる方向に進み得ることを示してい 「こうした家電が互いに接続されている世 ます。そのためにこそ、顧客、パートナー、お 界を想像してみてください。コンテンツやサ よび従業員を含む人々の声に慎重に耳を傾 ービスとアプリ、あるいは広告などを配信す け、破壊的変化を推進する新たなニーズ、要 る、最大のプラットフォームのひとつが出現 求、態度を把握する手段としてテクノロジー するのです」4 と述べています。さらに、こう を使うのです。 した破壊的変化は製品だけにとどまりませ こうした企業は、激変する環境下において 成功を支える戦略を生み出し、社内に組み 込んでいます。また自らの(および他の)業 界の境界を率先して変え、過去と現在の両 方においてエコシステム構築とその調整を 主導しています。たとえばサムスン社の行 動を例にとってみます。サムスン社はドアが ん。 “ひと”の側面において、同社は社員が 社内競争の一環としてアイデアを提出でき るC-Labと呼ぶプログラムを開始しました。 選考を経て選ばれた人々は従来の業務から 1年あるいはそれ以上の休みを取り、自らの アイデアを検証、開発するための小規模な チームの運営を任されます。 デイビッド・ユン(David Eun) サムスン社のエグゼクティブ・バイスプレジデント 残 念 な がら、デジタル 経 済に 見られる変 スクに直 面したり、こうしたリスクを生み 化 のスピードは 新 た なリスク分 野も生み 出したりする の で す。これ に 対 応 するた 出します。ソフトウェアに多大な機 会をも め、リーダー層はあらゆる行動にあたって たらしている“規模の大きさ”ゆえに、新 デジタル時 代の信 頼を考慮することが求 た な 問 題も 発 生し、リスクが 高 まってい められます。セキュリティ、プライバシー、 るのです。セキュリティ上の脅威をもたら およびデジタルにおける倫 理というもの す 新た な 媒 体 、消費 者のプライバシー 保 は、テクノロジーからリバースエンジニア 護 責 任、明 確 な データ活用基 準 、新た な リングしても構築することはできません。 テクノロジーの 倫 理的 利用に関する懸 念 開発 段階から不可避な一要素として組み など、デジタルビジネスは従来なかったリ 込む必要があります。 デジタル時代の信頼 #techvision2016 8 Technology Vision 2016 Technology Vision 2016 のトレンド: 世界を何度も作り直す 現在、デジタルはすべての企業に定着しています。しかしテクノロジーが組織とその戦略の不可分の一部 であったとしても、この、かつてない速度で再構築され続ける世界で成功を支えるのは“ひと”なのです。 今年のAccenture Technology Visionでは、この新たな環境を “ひと”」がテーマとなっていることに気付きます。明日のリーダー企業 形作る、新しく登場してきたテクノロジーのトレンドを取り上げまし は、これらのトレンドを理解し、自らのデジタルな優位性を明確に打 た。紹介する各トレンドはテクノロジーを基盤として始まるものです ち立てるための戦略を実行しています。 が、それらを注意深く観察すれば、そのいずれにおいても「主役は トレンド 1:インテリジェント・オートメーション インテリジェントなオートメーションは新たな成長とイノベーションの足掛かりです。 人工知能を推進力とするこの次世代ソリューションは、システム、データ、および“ひと” を織り合わせることで、ばらばらだったシステムから前例のない規模のデータを収集し、 組織、組織が行うこと、いかにしてそれを行うか、といったことを根本的に変革します。 トレンド 2:流体化する労働力 企業はデジタル時代のたゆまない変化に対応すべく、必要とされるツールやテクノロ ジーに投資を続けています。しかし多くの場合に、労働力という重要な要素が取り残さ れています。企業は、適切なテクノロジーを利用するだけでは不十分です。適切な人々が 適切なことをする、適応力豊かで、変化に対応でき応答性にも優れた、まるで液体の ような(水のごとき)労働力によって行うことを可能にするようなテクノロジーの利用が 求められているのです。 トレンド 3:プラットフォーム・エコノミー 次の破壊的イノベーションの波は、テクノロジーが実現し、プラットフォームが原動力と なって、さまざまな産業で形成されつつあるエコシステムから生まれます。リーダー企業 はデジタルビジネスを作り出すためのテクノロジーを戦略的に獲得し、そのうえでエコ システムをベースに、デジタル経済を支える、適応性と拡張性に富んだ、相互に接続 されたプラットフォーム経済を構築しています。 #techvision2016 9 Technology Vision 2016 勝者は、テクノロジーによって“ひと”が 力を得て、新しいことを受け入れ、変化を 起こしていく、そんなことができる企業文化 を創っています。 トレンド 4:破壊を予期する すでに、あらゆる企業がデジタルの変革パワーを認識しています。しかしこの新しい プラットフォームを基盤とするエコシステムから生じる変化が、どれほど劇的、かつ 継続的なものであるかを把握している企業はわずかです。根本的に変化するのはビ ジネスモデルだけではありません。このようなエコシステムから生じる予測可能な 破壊は大きな力を持ち、産業や経済分野全体を根本的に再定義、再構築し状況を 一新するでしょう。 トレンド 5:デジタル時代の信頼 新しいテクノロジーの普及とともに、デジタル時代のリスクに関する大きな新しい 問題が生じています。信頼なくして企業は業務を支えるデータの共有や利用を行え ません。今日の最先端のセキュリティが、境界部のセキュリティ確立のみにとどまら ず、データに関する最高の倫理基準を取り入れているのもこのためです。 #techvision2016 10 Technology Vision 2016 デジタルは “ひと” も意味する 我々はわずかな期間のうちに大きな変化を あれ、雇用する人材であれ、現状に本質的 経験しました。企業は顧客に製品やサービ な変化をもたらす力を備えています。 スを提供するだけではなく、顧客とのコラ しかしデジタルの力だけで、企業や組織を ボレーションも求めています。他社とは競争 だけではなくパートナーとしての関係も結 びます。業界の垣根にはもはやこだわらず、 垣根があることすら無視されます。これらす べてを結び付けるものはデジタルかもしれ ませんが、それを形作るのは“ひと”です。 そしてこれは今日の業 務 改善 の手段をは るかに超えています。デジタルは企業が属 戦略的目標に向けて推進することができな いことも判明しつつあります。成功企業で は、テクノロジーによって“ひと”が進化し、 適応し、変化を推進するための力を得るよ うな企業文化が構築されています。言い換 えれば「主役は“ひと”」というのが、成功 の秘訣なのです。 する産業であれ、ターゲットとする市場で #techvision2016 11 Technology Vision 2016 全体像を完成させる アクセンチュアのTechnology Visionは3年 れます。こうしたテクノロジーが企業にとっ 間の技術的トレンドから構成されています。 て次世代ビジネス構築のための基盤となる アクセンチュアは毎年最新のトレンドを取り のに時間はかからず、またこれらのテクノロ 上げていますが、それぞれのトレンドは全体 ジーは今年アクセンチュアが取り上げるトレ 像の一部を構成するにすぎません。企業が ンドの多くを生み出した触媒でもあります。 デジタルビジネスへの歩みを続けるにあた 下記に示すトレンドの詳細な説明はw w w. り、テクノロジーの最新の進化と歩調を合 accenture.com/technologyvision-jpを わせ、また成熟してきたテクノロジーを継 ご覧ください。 続的に自社に取り込んでいくことが求めら Technology Vision の進展 2013~2016年 #techvision2016 12 Technology Vision 2016 アクセンチュアのTechnology Vision 2016につながる直近3年間の技術的トレンドは以下の通りです。 Accenture Technology Vision 2015: デジタルビジネスの時代――業界の垣根を越えて The Internet of Me: パーソナライズされた世界 日常がオンライン化されるとともにエクス ペリエンスもオンライン化され 、個々人の 生 活のあらゆる側 面に 深く関 わるデジタ ルチャネルが数多く作り出されます。先見 の明のある企 業は 新しいアプリケーショ ン、製品、およびサービスを構築するため の手段に変更を加えています。これらのタ ッチポイントをコントロールするため、企 業は信頼を失うことなく消費者に関わり、 刺激を与えるため、高度にパーソナライズ されたエクスペリエンスを提供しています。 「Internet of Me」において成功を収める 企業は、次の世代には誰もが知っている企業 になると予想されます。 成果を売る経済:具体的な成果を生み出す ハードウェア インテリジェントなハードウェアは、デジ タル 企 業と物理的な世界との間のギャッ プを橋渡しします。業界をリードする企業 は、IoTへの対応に際し、自社のデジタルツ ールボックス内にハードウェアやセンサー を埋め込む機 会を見出します。このような 企業は、高度に接続されたハードウェアコ ンポーネントを使い、顧客が本当に望んで いるもの、すなわち、たくさんの製品やサー ビスではなく、より有意義な成果そのもの を提供します。こうした「デジタルな破壊的 変革企業」は、優位性というのがもはや物 を売ることではなく、成果を売ることであ ると理解しています。まさに、 「成果を売る 経済」なのです。 「ワークフォース」再考:人と機械が交わる場 でのコラボレーション デジタル化の進展に伴い、人と機械がより プラットフォームの革命と進化:エコシス テムの定 義 を変 え、業 界 の定 義 をも書き 換える 多くを共に行う必要性が高まってきていま 「Global 2000」企業の間では、デジタルな す。ナチュラルインターフェイス、ウェアラブ 産業プラットフォームとエコシステムが次な ル機器、およびスマートな機械は、テクノロ るイノベーションと破壊的成長の波を誘引 ジーを通じて従業員の能力を高めようとす しています。プラットフォームベースの企業 る企業に新たな機会を提供しています。こ が、デジタル 経済による機会を捉え、大き れはまた、人と機械の両方で構成されるコ な成長と利益を獲得するケースが増えてい ラボレーションベースの労働力の管理とい ます。クラウドやモバイルの急速な進展は う新たな課題も浮き彫りにします。成功を そうしたプラットフォームに伴うテクノロジ 収めている企業は人の才能とインテリジェ ーとコスト面での障壁を無くすだけではな ントなテクノロジーが互いに協力しあうこと く、さまざまな産業や地域の企業に新たな によるメリットを認識し、双方が新たに構 市場を開放しています。端的に言えば、プラ 築し直された労働力の不可欠なメンバーと ットフォームベースのエコシステムは新たな して重視されます。 競争の場となっています。 インテリジェントな企業:膨大なデータとより スマートなシステム――より優れたビジネス 卓越した業務と次世代ソフトウェアサービ スは、ソフトウェアのインテリジェンスが達 成する次の進歩から生まれます。これまで ソフトウェア機能の向上は、従業員がより 良い判断を迅速に下すための支援を目的と していました。しかし、ビッグデータの登場 と処理能力、データサイエンス、そして認識 技術の進展によって、ソフトウェアのインテ リジェンスは、機械がより良い情 報に基づ いて判断することをも支援しています。ビジ ネスとテクノロジーのリーダーたちは、今や ソフトウェアインテリジェンスを試験的プロ ジェクトやワンタイムのプログラムとして捉 えるのではなく、新たなレベルへの進化と 発見をもたらし、全社的イノベーションを推進 する総合的な機能とみなす必要があります。 #techvision2016 13 Technology Vision 2016 Accenture Technology Vision 2014: すべてのビジネスがデジタルに――デジタルの「受容者」から「主導者」へ デジタルとリアルの融合:インテリジェンス の究極へ データ・サプライチェーン:循環する「情報」 データテクノロジーは確かに急速に進化し 現実の世界がオンライン化され、スマート ていますが、その大半はばらばらに導入さ 化したオブジェクト、機器、および機械が物 れています。その結果、企業データはほとん 理的な世界において人々のインサイトを拡 ど活用されていません。データのエコシステ 大します。これは、単なる「モノのインター ムは複雑で、サイロ化されており、アクセス ネット」を指すのではありません。従業員を が困難なため企業は自らのデータから本来 補佐し、プロセスを自動化し、また機械を人 の価値を引き出すことができません。デー 々の生活に組み込む、接続されたインテリ タが持つ価値を真に発揮させるには、デー ジェンスによる新たなレイヤーが誕生しま タをいわばサプライチェーンのように取り す。高度な情報を持ち、周囲のあらゆるもの 扱い、組織全体を通じて、また最終的には と関わり、その体験に影響を及ぼすことの パートナー企業によるエコシステム全体を できる現代の消費者にとって、これは新た 通じて、容易に、かつ役に立つ形で流通さ なレベルの能力が付加されることを意味し せなければなりません。 ます。組織や企業の点からは、現実世界へ のリアルタイムの接続が実現し、機械と従 ハイパースケールを味方につける:ハード 業員双方がよりインテリジェントに行動し、 ウェアの復権 敏速に対応できるようになります。 ハードウェアは、10年以上に及ぶソフトウ ワークフォースからクラウドソースへ: ボーダレス・エンタープライズの出現 ェアイノベーションの影に隠されてきました が、今や、より大きく、高速で、効率的なデ ータセンターへの需要が急拡大しているこ 労働力が自社の従業員にとどまらず、インタ とに伴い、新規開発案件の中心となってい ーネットに接続するすべてのユーザーから ます。 「ハイパースケール」イノベーションが 構成される状況を想像してみてください。ク 持つメリットが、コスト削減としてデータセ ラウド、ソーシャル、およびコラボレーショ ンターに反映されることはどの企業も知っ ンのためのテクノロジーによって、企業は世 ています。そして、自らのビジネスをデジタ 界中の膨大な数の、またその多くは支援す ル化しつつ、次の成長を実現するために、こ ることにやぶさかではない、人材を活用で うしたシステムが不可欠であると考える企 きるようになりました。こうした取り組みを 業も増えてきています。 ビジネスゴール達成に転換することは容易 ではありませんが、可能性は膨大です。こう アプリケーションビジネス:ソフトウェアを した取り組みを通じ、あらゆる企業は、直面 競争力の源泉に している問題の解決により適した、しかも多 人々がソフトウェアを構築する手法が変化 くの場合には無償の、巨大かつ敏速な労働 力を活用できるようになります。 企業は、いわば「アプリケーションからアプ リへの移行」を急速に進めています。大規 模な組織を支える大きくて複雑なエンター プライズソフトウェアのシステムが引き続き 存在し、ITデベロッパーにはこれらのシステ ムのカスタマイズ、アップデート、パッチな どが求められることに変わりはありません。 しかし現在では、組織や企業が運営面での 敏速性を求めた結果、よりシンプルでモジュ ール化されたアプリへのシフトが急速に進 んでいます。これによるITリーダーや経営陣 への影響として、新しいデジタル組織にお いては誰がアプリケーション開発の役割を 担うかを判断するだけでなく、アプリケーシ ョン開発の性格そのものを変えなければな らなくなると予想されます。 回復力をデザインする:「故障ありきの開発」 がノンストップ・ビジネスのカギに デジタル時代において、企業にはビジネス プロセス、サービス、およびサービスに対 する従業員や関係者からのノンストップの 要請に応えることが期待されます。変化し 続ける優先順位に対応するという方針変更 は、組織全体にわたって、特に「常時オン」 のITインフラ、セキュリティ、およびビジネ スプロセスへの対応が事業存続とブランド 価 値き損との違いとなり得る場 合におい て、CIO管轄部門に影響を及ぼします。結果 として、今日のITリーダーたちには自らのシ ステムに高度なスペックを追求するというよ りも、障害に耐えられるよう設計することへ の保証が求められています。 しています。消費者の世界での変化と同様、 #techvision2016 14 Technology Vision 2016 結論 デジタルビジネスの新たな要諦: 主役は“ひと” 上記のテーマは総じて、アクセンチュアが デジタルビジネスのパワーを活用するとは、 提唱するコンセプト「Every Business is a もはやこれらのテクノロジーを自らの組織 Digital Business(すべてのビジネスがデ や企業に取り入れることのみを意味しませ ジタルに)」に集約されます。テクノロジー ん。これはイノベーションを推進し、変革を の構 造的変化と、世界 の組 織 や 企 業の戦 推進し、ビジネスを次世代へと進めるため 略・業務上の優先順位に及ぼす影響に関し に組織とその文化を構築し直すことを意味 て、アクセンチュアの数年来の示唆が加わ します。 ったものです。これらはいずれも、企業が前 進し、自らを変革するために取り入れ始め なければならない、新たなデジタル文化の これらのデジタル戦略と破壊的変化はまだ 現れ始めたばかりですが、今後数年の間に 要素でもあります。 形作られる新たなデジタルエコシステムの 掲げられたテーマは隔年ごとの主要なテク 課題を先取りして取り組む企業のみが自ら ノロジーの進化を示すものであり、そのいく の運命を決めることのできる存在となると つかは、先進企業においてすでにデジタル 予想されます。すべての企業に対して、あな への取り組みの中心となっています。各テー たの会社は“ひと”をそこへ導くことができ マで語られた内容を総合すれば、企業が今 ますか? という質問が投げ掛けられている 後成功に向けた計画を立てるにあたり、想 のです。 中で自らの居場所を作ろうとする、いわば 定すべき根本的な前提事項の変化が示され ています。あらゆる業界のリーダーたちが、 デジタルテクノロジーが自らの企業をどこへ 導くかについてのインサイトとインスピレー ションを得ることのできる、豊かなディテー ルを備えた観点を提供します。 #techvision2016 15 Technology Vision 2016 トレンド分析手法 Technology Vision について Technology Visionのチームは毎年Accenture Researchと 連携し、今後3年から5年のうちに企業、政府機関、およびその 他の機関に最も大きな影響を及ぼすと予想される新たな IT分野の事象を特定しています。 この調査は公共および民間部門、学術界、 調査から明らかになったテーマのリストを ベンチャーキャピタル、および新興企業か 基に、Technology Visionチームは前述の ら20 名を超える経 験 豊かな人々を集めた 諮問委員会をあらためて開催しました。こ Technology Vision External Advisory の委員会による、アクセンチュア経営陣と Boardからの意見を基に2015年に開始さ 外部専門家との一連の「掘り下げ」セッショ れました。これに加えTechnology Vision ンを含むワークショップを通じ、これらのテ チームはテクノロジー産業の著名人や専門家、 ーマが検証され、さらに洗練されたものと および100名近いアクセンチュアのビジネス なりました。 リーダーへのインタビューを行いました。 このプロセスで使用された選別基準は、実 このチームはまた、アクセンチュアが持つ 際の課題との関連性に基づいてテーマに重 極めて大きな知識と新しいアイデアも探り、 み付けされました。具体的にはTechnology アクセンチュアのコラボレーション技術とク Visionチームは技術的変化の要因となるこ ラウドソーシングを使ってオンラインのコン とが良く知られている項目を超え、大半の テストを開催することにより、テクノロジー 企業の上席経営陣が近々にも取り組まなけ 分野で新たに登場してきた興味深いテーマ ればならないテーマに注力しました。これ を探りました。このコンテストには3,200名 らのテーマは次の基準に基づいて優先順位 を超える参加者があり、貴重なアイデアを が付けられました。 ちに実行に移すことが可能か •直 後3年間の組織変革に非常に関連する •今 界 ごとの「サイロ」を 越 えて 大 き な •業 影響力を持つ に既存のソリューションを1対1で置き •単 換えること以上の破壊的影響をもたらす • 1 社のベンダーまたは個々の製品技術にと どまらない これらを使った 選 別により一 連の強力な 仮 説 が 生まれ 、そ れらを 合 成 することに より今年のレポートに記載した5つの全体 的トレンドが得られました。 提供するとともに他の参加者の考えに投票 を行いました。 #techvision2016 16 Technology Vision 2016 Accenture Technology Vision 2016 調査概要 今回のトレンドを分析するにあたり、グローバル調査を実施しました。世界11か国、3,100名超の経営・ IT経営層を対象にしたもので、テクノロジーが自社にいかなるインパクトを及ぼすか、直近数年のテクノ ロジー投資における優先度などを確認しました。調査は2015年の10月から12月にかけて実施されました。 #techvision2016 17 Technology Vision 2016 References: 1 2 Digital Economic Value Index, Accenture, 2016年1月、 Most Innovative Companies 2015: Virgin America, Fast Company, 2015年2月25日、 http://www.fastcompany.com/3039590/most-innovative-companies-2015/virgin-america 3 How Blue Apron and Zappos Use Data to Disrupt Themselves, Ad Exchanger, 2015年10月9日、 http://adexchanger.com/advertiser/how-blue-apron-and-zappos-use-data-to-disrupt-themselves The Ultimate Marketing Machine, Harvard Business Review, 2014年7月―8月、 https://hbr.org/2014/07/the-ultimate-marketing-machine 4 Most Innovative Companies 2015: Samsung, Fast Company, 2015年2月10日、 http://www.fastcompany.com/3039597/most-innovative-companies-2015/samsung Acknowledging a Crisis, Samsung is Trying to Improve Its Corporate Culture, Quartz, 2014年12月30日、 http://qz.com/288923/samsung-is-trying-to-improve-its-corporate-culture-amid-crisis/ 問合せ先 Accenture Technology R&D について Technology VisionはTechnology Visionグループ、Accenture Open Paul Daugherty Chief Technology Officer Innovation、およびAccenture Technology Labsを含むアクセンチュア の研究開発専任組織であるAccenture Technology R&Dにより毎年 [email protected] 発表されています。 Accenture Technology R&Dは20年以上にわたり、アクセンチュアと Marc Carrel-Billiard Managing Director, Accenture Technology R&D そのクライアントが技術的イノベーションをビジネス面での結果に変え ることを支援してきました。このR&Dグループは新しい、および新たに 登場してきたテクノロジーを探り、それらのテクノロジーが未来をどの ように形作り、またどのような次の最先端のビジネスソリューションを [email protected] もたらすかを示すビジョンを構築しています。 Michael J. Biltz Managing Director, Accenture Technology Vision Accenture Technology R&DはTechnology Visionに関するセミナー を実施し、その中ではトレンドをさらに深く検証するとともに、お客様の ビジネスへの影響を探るフォーラムを開催しています。 [email protected] アクセンチュアについて アクセンチュア株式会社 アクセンチュアは「ストラテジー」「コンサルティング」「デジタル」「テク 本社所在地 ノロジー」「オペレーションズ」の5つの領域で幅広いサービスとソリュー ションを提供する世界最大級の総合コンサルティング企業です。世界最 〒107-8672 東京都港区赤坂1-11-44 大の規模を誇るデリバリーネットワークに裏打ちされた、40を超す業界 赤坂インターシティ とあらゆる業務に対応可能な豊富な経験と専門スキルなどの強みを生か Tel: 03-3588-3000(代) Fax: 03-3588-3001(代) Mail: [email protected] www.accenture.com/jp し、ビジネスとテクノロジーを融合させて、お客様のハイパフォーマンス 実現と、持続可能な価値創出を支援しています。世界120カ国以上のお 客様にサービスを提供するおよそ37万3,000人の社員が、イノベーション の創出と世界中の人々のより豊かな生活の実現に取り組んでいます。 アクセンチュアの詳細はwww.accenture.comを、アクセンチュア株式 会社の詳細はwww.accenture.com/jp をご覧ください。 accenture.com/technologyvision-jp #techvision2016 Copyright © 2016 Accenture All rights reserved. Accenture, its logo, and High Performance Delivered are trademarks of Accenture. The views and opinions expressed in this document are meant to stimulate thought and discussion. 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