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溶解度及び溶解状態

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溶解度及び溶解状態
一23一
昭 和53年11月(1978年)
疎 水 性 色 素(Oil
red O)の
血 清 に対 す る
溶 解 度及 び溶 解 状 態
竹中
Solubility
of a Hydrophobic
Kuniko
緒
Takenaka
and
に 腸 管 よ り吸 収 され 循 環 器 系 に 入 るが,血
で は単 独 に存 在 せ ず,い
Hiroko
裕 子**
in Serum
Nakamori
H
くの 疎 水 性 物 質 が
含 ま れ て い る。 これ らの 物 質 が 体 内 に 取 り込 ま れ た場
合,主
(Oil red 0)
中森
を 調 べ る こ とが 目的 で あ る。
言
医 薬 品 や 食 品 添 加 物 の 中 に は,多
Dye
邦 子*
清中
くつ か の 受 容 体 と結 合 して,
代 謝 ・排 泄 ・蓄 積 の 機 構 が 形 成 され る と考 え られ る。
1.試
実
験
方
法
料 及 び 試 料 の調 製
リ ガ ン ド と し て のOil
2-naphthol)は,
red
O(Azoxylene-4-azo-
CHROMA社
製 を用 い た。 構造式
は 次 の と お りで あ る9)。
従 って,こ れ らの 疎 水 性 物 質 の代 謝 ・排 泄 速 度 は,受
容 体 との 結 合 の 強 さ や受 容 体 分 子 へ の 取 り込 み の 深 さ
に よ って 影 響 され る で あ ろ う。
サ ル フ ァ剤 に対 して は,主
と して 血 清 アル ブ ミ ンが
受 容 体 と して作 用 す る と考 え られ て い るが1)・2),最近,
近 藤 ら3)は 血 清 中 に は ア ル ブ ミン以 外 に も受 容 体 が 存
在 す る こ と を 明 らか に し,そ れ が リボ蛋 白 で あ る こ と
を示 唆 して い る。 血 液 中 で の 疎 水 性 物 質 と受 容 体(球
状 蛋 白,リ
ボ蛋 白 な ど)と の 相 互 反 応 は,主
と して 疎
水 性 自由 エ ネ ル ギ ー に 基 づ くと 考 え られ4)醇8),溶 媒
(水)の 構 造 変 化 に 由来 す るエ ン トロ ピ ー支 配 の 過 程 で
あ る と予 想 され る。 一 方,疎
(分 子 量:408)
水性分子 の受容体分 子へ
の取 り込 み の 深 さ及 び量 は,受 容 体 分 子 内 部 の 構造 エ
ン トaピ ーに よ って 決 ま る と考 え られ る。 即 ち,疎 水
領 域 に疎 水 性 分 子 が 取 り込 ま れ る結 果,リ
ガ ン ド量 の
血 液 は,ブ
所,No.4ロ
タ 血 液 を 冷 却 機 付 万 能 遠 心 機(富
ー タ ー 使 用)に
分 間 遠 心 分 離 し,得
増 大 に伴 い,脂 肪 鎖 の 伸 長 に よ る構 造 エ ン トロ ピ ーの
は,0.02%の
減 少 が起 こ り,分 子 の合 一 ・壊 裂 な どの 物 性 変 化 が 生
む よ う に 調 整 し,保
じ る と予 想 され る。
と して知 られ て い るOil
させ,血
て,5℃,8200×g,15
られ た 上 澄 血 清 を 使 用 した。 血 清
窒 化 ナ ト リ ウ ム 及 びEDTA-2Naを
red Oを,ブ
タ血 清 に溶 解
清 中 に お け る受 容 体 を同 定 し,更 に そ れ らの
9g/m4に
調 整 後,日
65TAmタ
清 をNaBrでp=1.1
立65P分
離 用 超 遠 心 機(RP-
ー 使 用)で5℃、126800×g,30時
心 した 。 採 取 し た リボ 蛋 白 は,5℃
分 子 の 溶 解 状 態 及 び 取 り込 み に よ って 生 じ る物 性 変 化
TRIS-Glycine
*生 物 化学研究室 大学院生
** 生物化学 研究室
こ の 場 合 も 内 外 液 共 に,0.02%の
EDTA-2
Naを
含
存 は 冷 蔵 庫 中 で行 っ た。
血 清 リボ 蛋 白 の 分 離 は10),血
本 研 究 で は,疎 水 性 低 分 子 物 質 と して,脂 質 染 色 剤
永製 作
Buffer(pH8.3)に
間遠
の 冷 蔵 庫 中 に て,
透 析 を 行 った 。
窒 化 ナ ト リウ ム及 び
含 む 。 透 析 チ ュ ー ブ はVisking
Cell一
食物学会誌・第33号
- 24ー
u
l
o
s
eTube (直径 0.6cm,y
z巾1.0cm) を用いた。
血清中の各リポ蛋白(極低密度リポ蛋白 :VLDL,
密度リポ蛋白: LDL,高密度リポ蛋白:HDL) の分
BlueDextran を用いて行い,
625nm の吸光度より
求めた。
3
) 超遠心法による受容体の同定
離は,密度差超遠心法によって行った 10)。まず,血清
全てのリポ蛋白が浮上し,蛋白質は全て沈降するよ
をそのまま (p=1
.007g/mの分離用超遠心機にて 5
うな溶媒密度で色素一受容体の混合物を超遠心するこ
.
C, 1
2
6
8
0
0x g で 1
8
時間遠心して浮上した VLDL
とによって,色素のリポ蛋白及び蛋白質に対する結合
を│珠く。残った液を NaCl I
乙て ρ=1
.063g/ms に調
の度合を知ることができる。
整し, 5.
C, 1
2
6
8
0
0xgで3
6
時間遠心して LDLを得
過剰の O
i
lr
e
d0 とインキュベートした血清の 1
る。更に, LDL を取り去った液を p=1
.19g/ms に
日目と 1
0日目のサンフ。ルについて,過剰の色素を東洋
NaBrで調整し,
、
F紙 No.2で除いた後,溶液の密度を ρ=1.19g/ms
5o
C,1
2
6
8
0
0xg,48
時間遠心して
浮上してくるものを HDLのサンプルとした。このよ
に NaBrで調整し,超遠心を行った。色素の分布を
全リポ蛋白と同
調ぺる為,遠心チューブの上部より 1ms ずつ採取し
様
, 冷蔵庫中にて Bu宜e
r(pH8.3) に透析する。全
O
i
lr
e
d0 の濃度分布を測定した。濃度の測定は,前
うにして得られた LDL,HDL は
,
リポ蛋白及び LDL,HDL の濃度の測定は,
乾燥重
記の方法と同様である。尚,超遠心機の分析条件は,
i
式料リポ蛋自分離の場合に準じた。
量法, Lowry法,紫外部吸収法によった。
2
. 操作
4
) 沈降速度定数の測定
1
) 疎水性色素の溶解度測定
色素をリポ蛋白に溶解させることにより,後者の溶
一定量の血清及びリポ蛋白溶液に, O
i
lred0 を過
液物性に変化がみられるかどうかを知る為に,沈降速
剰に加え,ゆるやかに撹拝しながらインキュベーター
度の変化を調ぺた。沈降及び浮上界面のシュリーレン
巾(
2
0
.
C
)に放置し,日を追って,その一部約 1msを
像が非対称の場合でも,ピークの最高位置の移動速度
取る。過剰の色素を東洋P紙 No.2でi
戸過した後,
から速度定数を計算し,
マイクロピペットで 200μ4取り ,2ms のメタノー
た。サンフ。ル濃度は,
1時間放置後 , 4ms のクロロホ
ノレ溶液中に加える。
ルムを加え,
更に 1時間放置する。
この操作は,
1
0
その重量平均速度定数とし
1
.5 %になるように Bu宜e
rで
希釈し,色素とインキュベートして 1日目のサンプル
については浮上速度定数 (
S
f
) 及び沈降速度定数 (S)
7日自については Sのみを測定した。溶媒
ms 容量の三角コルベンで行い,蒸発を除?為にシリ
を測定し,
コン栓を用いて,室温で、行った。色素抽出後,凝固し
密度は沈降の場合 p=1
.007g/me,浮上の場合は p=
た蛋白を除く為に東洋炉紙 No.2 で炉過し , t
p
液を
1
.19g/ms に NaBrで調整し,
525nm で比色し,予め作成した検量線より溶解して
ものについても同時に測定を行った。使用した超遠心
いる O
i
lred0 の量を求めた。 BSA溶液について
機は BeckmanSpinco model E で
,
は,人の正常血清蛋白質中のアルブミン含量より算出
r
.
p
.
m
. で 12mm のシングル又はダブルセクターセ
4% BSA/0.1MNaCl (
含
, 0.02%空化ナト
し
て
1
1
)
,
リウム, EDTA-2Na) について行った。
比較の為に未処理の
2
0
.
C, 50740
ルを用いた。
5
) 受容体に取り込まれた O
i
lred0 の交換速度
2
) ゲ、ノレ炉過による受容体の確認
一旦,
LDL あるいは HDL に取り込まれた色素
Sepharose4B を用いて,色素分子を受け取った受
が,受容体問に分配交換きれるかどうかを調ぺること
容体を分画し,溶出容積及びおよその分子量より受容
は,極めて興味深いことである。分配交換が自由に起
体を推定した。
こるとした場合,どの程度の速度でそれが起とるかを
カラムは内径1.6cm,高さ 21cm で,流速は 7.5
ms
/cm ・h
r
. に保ち,
2
ms ずつ集めた。
調ぺる為に,
LDLから HDLへ
,
また逆に HDL
フラクションコレクターで 2
から LDLへの色素の移行速度をゲ〉レ炉過及びゲ、ノレ電
Bu貸e
r は TRIS-GlycineBu:
fe
r
気泳動で試みた。まず,色素で飽和した LDLあるい
(pH8.3,以下 Bu笠e
rとはこの液をさす)を用い,サ
は HDL を未処理の HDL,LDL と同量の割で混和
ンフ。ノレは O
i
lred0 でインキュベートした血清及び
2
0C
)にて一定時開放置す
し,インキュベーター中 (
リポ蛋白溶液で,前者はそのまま,後者は適量を
る。適当な時間間隔をおいてサンプルを取り,ゲノレ P
Bu妊e
rで希釈して 1ms流した。溶出パターンの測
過と電気泳動で HDL及ぴ LDLに取り込まれた色素
定は,
520nm及び 280nm における吸光度の測定に
よって行った。又,
Void Volume の測定は,
0.1%
0
の相対量を測定した。ゲソレ P過には, Sepharose2B,
4B,並びに SephadexG-2ooのカラム(1.6x23cm)
- 25-
昭和5
3
年1
1月 (
1
9
7
8
年)
を用い,
Bu宜e
r (pH8
.
3
) 中で流速 7
.
5mf
!
/cm2・hr
共に増加し,
5.C及び2
0
.
Cのいずれの場合も 2つのプ
で行い,溶出パターンは 520nm及び 280nm の吸光
ラトーを示している。一方,図 2~乙示すように,血清
度より得た。電気泳動のゲ、ル濃度は,アクリルアミド
アルブミンの場合は O
i
lred 0 の取り込みが速やか
3.75%,ピス 0.1%とし 12〉,通電は疎孔ゲル中で、は 1本
に起こり,比較的短時間で一応の飽和に達する。リポ
のカラムにつき 1m A,3
0
分,細孔ゲ‘ルで、は 2mA と
蛋白の場合は,取り込みの速度は遅いが,
した。電気泳動後,色素のバンドの部分を切り取り,
の取り込み量は血清アルブミンに比較してかなり多
1gあたり
細かくスライスしたものに 2ms の氷酢酸を加え, 24
時間, 2
0
.
Cのインキュベーター中に放置し,抽出液を
523nm で比色して,予め作成した検量線より求めた。
図 31こ
は
, 過剰の Oilred 0 と共に一定時間イン
キュベートした血清についてゲル、F過を行い,
O
i
l
実
岡山
験
結
果
0
.
8
図 1は O
i
lred 0 の血清に対する溶解速度の曲線
1day
を示したものである。 O
i
lred0 の溶解度は,温度と
3days
LP
ー
ー 10days
0
.
6
1
0
(一
ECCNU#6.
口.0
E¥切)匂三×∞
5
。
0.
4
0
.
2
5
1
0
d
a
y
s
図1 O
i
l red0 の血清に対する溶解
i
lred0 を過剰に加え,ゆ
一定量の血清に O
0
.
Cでインキュベートし
るやかに撹持しながら 2
た後,過剰の色素を除き,溶解した色素を比色
定量した。
。
1
0
20
3
0
4
0
Ve(
m
l
)
ηJ
(切¥凶)四()同×∞
i
l red 0 の ゲ fレF過パ
図 3 血清に溶解した O
ターン
O
i
l red 0 を過剰に血清に加え, 2
0
.
Cでインキ
ュベートしたサンフ。ルを 1ms流した。カラム
は1.6x2
1cm,流速 7
.
5mf
!
/cm2・hr. (LP:
リポ蛋白, ALB:血清アルブミン)
/ρ/
/グ〆~
red0 の吸収を記録した溶出パターンが示されてい
る。最初のピークは VLDL,LDL
,HDLから成る
リポ蛋白画分であり,後のピークは主として血清アル
ブミンを含んでいる。血清リポ蛋白の含量が約 0
.
5g
/
1
0
0msであり 10〉,血清アルブミンが約 5g
/lOOme
5
10days
i
lred0 のリポ蛋白及び BSA溶液に対
図2 O
する溶解
一定量のリポ蛋白溶液(竺 3.5%), 4% BSA/
i
lred 0 を過剰に加え
0
.
1 MNaCl溶液に O
0
.
Cでインキュベートし,溶解した色素を定
て2
量した。
である 11)ことを考慮すれば,
前者の O
i
lred0 に対
する結合容量が極めて大きいことがわかる。
リポ蛋白が O
i
lred 0 の主な受容体であることは,
O
i
l red 0 とインキュベートした血清の超遠心 (p=
1
.
1
9g/mのの結果からも明らかである。図 4に示し
であるように,
血清に溶解した Oilred 0 の大部分
- 26-
食物学会誌・第33号
どのような変化が起こるかを調べる為に,全リポ蛋白
xω2
を密度差超遠心法によって分離した。図 5は ρ=1.19
、
、
(百¥国)
g/ms の NaBr溶液中の浮上ノミターンを示したもの
/
である。浮上速度及び沈降速度分布の範囲は,既に報
o 1
0d
a
y
s
@()﹂[
・
告されている値 10)とほぼ一致した。このようにして得
1day
i
l red 0 と共にインキュベート
られたリポ蛋白を O
Top
-
Bottom
図 4 血清に溶解した Oil red 0 の遠心後の分布
過剰の O
i
lr
ed0 とインキュベー卜した血清
の 1日目と 1
0日目について,過剰の色素を東洋
j
戸紙 No.2で除いた後, 溶液の密度を NaBr
で ρ=1.19g/ms に調整し, 5o
C,126800xg,
30
時間遠心後,上部より 1ms ずつ採取し,
O
i
lr
ed 0 の濃度分布を定量した。
し,経時的に沈降パターン及ぴ沈降速度の変化を調べ
た。図 6はインキュベートして 7日目のパターンを示
したもので,
LDL の沈降速度には有意の差がみられ
るが(表 1
,
) 沈降界面の形は変化しない。従って,
が遠心チューブの上部に分布している。 O
i
lr
ed0 が
チューブの下部でほぼ一様の分布を示すのは,血清蛋
白の分布に対応するからであろう。
O
i
lr
ed 0 を取り込むことによって,
リポ蛋白に
i
l red0 とインキュベートしたりポ蛋白
図G O
の沈降パターン
上の像:過剰の O
i
l red 0 とインキュベート
して 7日目のリポ蛋白 (1.5%
溶液)
下の像:O
i
l red 0 を含まないリポ蛋白(1.5
%溶液〕
溶媒は TRIS-Glycine Bu妊e
r (pH8.3,ρ=
1.007g/ms),遠心条件は図 5と同じ。
表1 O
i
lr
ed 0 処理リポ蛋白の沈降定数
図 5 リポ蛋白の浮上パターン
リポ蛋白溶液の濃度:1
.5%
溶媒密度:1
.1
9g/ms (NaBr)
温度:20oC,回転速度:50740r
.p.m.
時間:46
分
未処理
1日目*
7日目水
LDL
7.1S
7.1S
7.7S
HDL
3.5S
3.5S
3.5S
ヰ
j
邑剰の O
i
l red 0 とインキュベートして 1日
目及び 7日目のサンフ。ル
- 27-
昭和53
年1
1月 (
1
9
7
8
年)
LDL は分子の大きさに変化は起こるが, 構造的に破
り
, O
i
lred0 は少なくとも部分的には受容体の疎水
壊されたり,分子会合などは起こらないと思われる。
領域に取り込まれると考えられる。
一方, HDL は沈降速度について有意な変化はみられ
O
i
lred0 の血清への取り込み量の時間的変化は,
2つのプラトーによって特徴づけられる。
なかった。
i
lr
e
d0 が
,
一旦リポ蛋自に取り込まれた O
どの
このこと
は,一種類の受容体に 2つの結合サイトがあるか,
も
ような速度で他のリポ蛋自に移行するかを調ぺる為
しくは少なくとも三種以上の親和性の違う受容体が存
に,予め O
i
lred0 で飽和した HDL又は LDLを
i
lred0 のリ
在することを示唆している。しかし, O
未処理の LDL叉は HDL の同量と混和し,
ポ蛋白 (VLDL+LDL+HDL) と BSA に対する溶
二つの
受容体に分配される O
i
lred0 の濃度を経時的に測
解速度曲線の対比からわかるように(図 2), O
i
lred
定した。その結果を表 2I
乙示しである。 LDLから
O は血清アルブミンに速やかに取り込まれ,リポ蛋白
HDLへの色素の移行は,わずかに時間に依存するよ
へ取り込まれる量は多いが,
溶解速度は遅い。従っ
i
l red0 の血清への溶解速度曲線の最初のプラ
て
, O
表2 O
i
l red0 の LDL・HDL 聞の分配交換速度
H D L← L D L
L D L← H D L一
LDL
HDL
(O.D. a
t523nm)
│混和後経過時間
トーは血清蛋白(主としてアルブミン)に,次のプラ
トーはリポ蛋白に基づくと考えられる。このことは,
ゲル炉過(図 3) 及ぴ超遠心の結果(図 4) とも一致
1
5
分
0.342
0.146
する。特にゲノレ P過は,血清アルブミンの取り込み速
1
8
0
分
0.308
0.137
度がリポ蛋自に比較しでかなり速いことを明確に示し
360
分
0.329
0.151
ている。
O
i
l red0飽和によって LDLは沈降速度定数が変
1
5
分
0.209
0
.
0
7
1
化するが, HDL は全く変化を受けない。 リポ蛋白の
分
1
8
0
0.212
0.071
疎水領域は一種の液晶構造をとっていると考えられる
360
分
0.211
0
.
0
7
1
上のカラムは, LDL に O
i
lr
e
d0 を飽和させた
O
-5g
/
g
) に未処理の HDL
もの (0.46%, S= 3X 1
(0.42%) を等量混和後, 経時的にゲル電気泳動を
行い, 濃度分布を定量したもの。下のカラムは,
HDLに O
i
lred0を飽和させ未処理の LDLと混
和したサンプルについての濃度分布。
i
lred0 の取り込みの深さ及び量
が 18〉,おそらく, O
は液晶構造の度合に依存すると考えられる。 LDL の
場合は, O
i
lred0 を取り込むことによって,沈降速
i
lr
e
d0 の
度定数が 7.1Sから 7.7Sに増加する。 O
LDL 1g あたりに取り込まれる量はごく微量である
から,分子量 (M) 及 び 比 容 積 (v) に対する寄与を
無視してよいであろう。この場合, Svedbergの式14.)
から,
少 /S=D
本/D が得られる。(ここで,
Sキ及び
D*は O
i
lred0で飽和された LDLの沈降定数及び
拡散定数を示す。)この式と
LDL聞の分配交換は極めて速やかに起こることは明
RT/ND(f :摩擦係数,
Einstein の式m,
R:気体定数,
tokes の式的,
ドロ定数)及び S
らかである。
N 考
の粘度,
察
一
一rI
うであるが,それが有意であるかどうか,尚詳しい検
i
l red0 の HDL討を要する。いずれにせよ, O
N:アボガ
f=6
例 r(η:溶 媒
r:球状高分子の半径)と組み合わせると,
S*/S=r/
げが得られる。この式によれば, O
i
lred0
O
i
lred0 の血清リポ蛋白及び血清アルブミンへの
を飽和まで取り込むことによって LDL の半径は約
取り込みは,温度と共に増加しており(図 1),いわゆ
0.9
倍となる。 O
i
lr
e
d0 の取り込みによって, LDL
る吸熱過程である。取り込みの熱力学的なパラメータ
の内部エントロビーが減少し,従ってそれを防ヤ為に
ーを定量的に計算することは可能であるが,
O
i
lr
e
d
O の血清の受容体(主としてリポ蛋白)への溶解が水
4
2
0Cで 4X1
O
-g/mf
!
) を大きく上
に対する溶解度 (
0
まわっていることから
<0,)
(
ム F0
O
i
lred0 の
むしろ分子の膨張が起こると予想されるのであるが,
上記のデーターは LDLがかなり小さくなることを示
i
lr
e
d0 の溶解は, LDL の液品構造を
している。 O
大きく変化させる可能性もあり,叉,蛋白質やリン脂
血清への溶解過程(水→血清)は,ム HO>O,ム SO>
質の部分的な脱離も考えられるので,上記のデーター
0によって規定される過程である。おそらく,水の構
から一定の結論を引き出すことは不可能である。
造変化に基づく疎水性自由エネルギー支配の過程であ
O
i
lr
e
d0 の LDL や HDL分子への取り込みの
- 28-
食物学会誌・第33号
深さは,疎水性の公害物質の排世速度との関連におい
2
) Klotz,I
.M.:TheProteins,1,758 (
1
9
5
3
)
て,最も重要な問題である。吸収スベクトルの溶媒効
3
)近藤和子:京都女子大学食物学科卒業論文(昭和
果を利用する一連の予備実験を行ったが,有役な知見
を得ることはできなかった。
しかし, O
i
lred0 の
HLD及び LDL間の分配交換速度が極めて速いこと
から, リポ蛋白の脂肪核の中心に取り込まれていると
50
年度)
4
) Nemethy,G.,Scheraga, H.A. :J
. Chem.
3
8
2.
.
.
,3
4ω(1962)
Phys.,36,3
.,Scheraga,H. A. :J
. Chem.
5
) Nemethy,G
4
0
1
"
"
"
"
3
4
1
7(
19
6
2
)
Phys.,36,3
は考えられない。
V 要
約
疎水性低分子 (
O
i
lr
e
d0) を血清に溶解させた場
合
, リポ蛋白と血清アルブミンが主な受容体として作
用する。 O
i
lred0 は血清アルブミンに速やかに取り
込まれるのに対し,
リボ蛋白の場合は,取り込まれる
量は多いが溶解速度は遅い。 O
i
lred0 の血清アルブ
ミン及ぴリポ蛋白への取り込みは,いわゆる吸熱反応
であり,水の構造変化に基づく疎水性自由エネルギー
6
) Nemethy,G.,Scheraga, H. A. :J
. Chem.
Phys.,66,1
7
7
3
"
"
"
"
1
7
8
9(
1
9
6
2
)
7
) Janado,M.,Shimada,K.,
Horie,N.,Nishida,
T.:J.Biochem.,Vol
.1
.8
0,No.1
.(
1
9
7
6
)
8
) Janado, M.,Shimada, K.,Nishida,T.: J
.
9,5
1
3(
1
9
7
6
)
Biochem.,7
7,35 (
1
9
6
8
)
9
) 清水勲,油化学, 1
¥
1
.
, Martin, W.G.,Cook,W.H.:
1
0
) Janado, 1
Can. J.Biochem.,44,201 (
1
9
6
6
)
支配の過程である。更に, HDL は O
i
lred0 を取
1
1
) 医学大事典,南山堂, p
.587 (1978)
り込むことにより全く変化がないが, LDL は沈降定
1
2
) 青木幸一郎,中埜栄三,大井優一:電気泳動実験
数が 7
.
1Sから 7.7Sに増加し, Stokes半径が約 0.9
倍に小さくなる。叉, O
i
l red0 の HDL及び LDL
間の分配交換速度が極めて速いことから, O
i
lred0
はリポ蛋白の脂肪核の中心に取り込まれているとは考
法,麿川書庖, p
.1
4
4(
1
9
6
6
)
1
3
) 謝名堂昌信,西田敏郎:蛋白質核酸酵素, 21,
1
8
4
"
"
"
"
1
9
1(
1
9
7
6
)
.:K
o
l
l
o
i
d-Z
.,36,Erg.-Bd. 5
3
1
4
) Svedberg,T
(
1
9
2
5
)
えられない。
最後に,本研究にあたり御指導下さいました謝名堂
昌信教授に深く感謝致します。
参 考 文 献
1
) Davis,B.P.:J
.C
l
i
n
.I
n
v
e
s
t
.,22,753 (
1
9
4
3
)
1
5
)E
i
n
s
t
e
i
n,A.:Ann. Physik.,1
7,549 (
1
9
0
5
)
1
6
) Stokes,G.G.:Trans. Cambridge. Phil
.S
o
c
.,
9,Part 1,8 (
1
8
5
6
)
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