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溶解度及び溶解状態
一23一 昭 和53年11月(1978年) 疎 水 性 色 素(Oil red O)の 血 清 に対 す る 溶 解 度及 び溶 解 状 態 竹中 Solubility of a Hydrophobic Kuniko 緒 Takenaka and に 腸 管 よ り吸 収 され 循 環 器 系 に 入 るが,血 で は単 独 に存 在 せ ず,い Hiroko 裕 子** in Serum Nakamori H くの 疎 水 性 物 質 が 含 ま れ て い る。 これ らの 物 質 が 体 内 に 取 り込 ま れ た場 合,主 (Oil red 0) 中森 を 調 べ る こ とが 目的 で あ る。 言 医 薬 品 や 食 品 添 加 物 の 中 に は,多 Dye 邦 子* 清中 くつ か の 受 容 体 と結 合 して, 代 謝 ・排 泄 ・蓄 積 の 機 構 が 形 成 され る と考 え られ る。 1.試 実 験 方 法 料 及 び 試 料 の調 製 リ ガ ン ド と し て のOil 2-naphthol)は, red O(Azoxylene-4-azo- CHROMA社 製 を用 い た。 構造式 は 次 の と お りで あ る9)。 従 って,こ れ らの 疎 水 性 物 質 の代 謝 ・排 泄 速 度 は,受 容 体 との 結 合 の 強 さ や受 容 体 分 子 へ の 取 り込 み の 深 さ に よ って 影 響 され る で あ ろ う。 サ ル フ ァ剤 に対 して は,主 と して 血 清 アル ブ ミ ンが 受 容 体 と して作 用 す る と考 え られ て い るが1)・2),最近, 近 藤 ら3)は 血 清 中 に は ア ル ブ ミン以 外 に も受 容 体 が 存 在 す る こ と を 明 らか に し,そ れ が リボ蛋 白 で あ る こ と を示 唆 して い る。 血 液 中 で の 疎 水 性 物 質 と受 容 体(球 状 蛋 白,リ ボ蛋 白 な ど)と の 相 互 反 応 は,主 と して 疎 水 性 自由 エ ネ ル ギ ー に 基 づ くと 考 え られ4)醇8),溶 媒 (水)の 構 造 変 化 に 由来 す るエ ン トロ ピ ー支 配 の 過 程 で あ る と予 想 され る。 一 方,疎 (分 子 量:408) 水性分子 の受容体分 子へ の取 り込 み の 深 さ及 び量 は,受 容 体 分 子 内 部 の 構造 エ ン トaピ ーに よ って 決 ま る と考 え られ る。 即 ち,疎 水 領 域 に疎 水 性 分 子 が 取 り込 ま れ る結 果,リ ガ ン ド量 の 血 液 は,ブ 所,No.4ロ タ 血 液 を 冷 却 機 付 万 能 遠 心 機(富 ー タ ー 使 用)に 分 間 遠 心 分 離 し,得 増 大 に伴 い,脂 肪 鎖 の 伸 長 に よ る構 造 エ ン トロ ピ ーの は,0.02%の 減 少 が起 こ り,分 子 の合 一 ・壊 裂 な どの 物 性 変 化 が 生 む よ う に 調 整 し,保 じ る と予 想 され る。 と して知 られ て い るOil させ,血 て,5℃,8200×g,15 られ た 上 澄 血 清 を 使 用 した。 血 清 窒 化 ナ ト リ ウ ム 及 びEDTA-2Naを red Oを,ブ タ血 清 に溶 解 清 中 に お け る受 容 体 を同 定 し,更 に そ れ らの 9g/m4に 調 整 後,日 65TAmタ 清 をNaBrでp=1.1 立65P分 離 用 超 遠 心 機(RP- ー 使 用)で5℃、126800×g,30時 心 した 。 採 取 し た リボ 蛋 白 は,5℃ 分 子 の 溶 解 状 態 及 び 取 り込 み に よ って 生 じ る物 性 変 化 TRIS-Glycine *生 物 化学研究室 大学院生 ** 生物化学 研究室 こ の 場 合 も 内 外 液 共 に,0.02%の EDTA-2 Naを 含 存 は 冷 蔵 庫 中 で行 っ た。 血 清 リボ 蛋 白 の 分 離 は10),血 本 研 究 で は,疎 水 性 低 分 子 物 質 と して,脂 質 染 色 剤 永製 作 Buffer(pH8.3)に 間遠 の 冷 蔵 庫 中 に て, 透 析 を 行 った 。 窒 化 ナ ト リウ ム及 び 含 む 。 透 析 チ ュ ー ブ はVisking Cell一 食物学会誌・第33号 - 24ー u l o s eTube (直径 0.6cm,y z巾1.0cm) を用いた。 血清中の各リポ蛋白(極低密度リポ蛋白 :VLDL, 密度リポ蛋白: LDL,高密度リポ蛋白:HDL) の分 BlueDextran を用いて行い, 625nm の吸光度より 求めた。 3 ) 超遠心法による受容体の同定 離は,密度差超遠心法によって行った 10)。まず,血清 全てのリポ蛋白が浮上し,蛋白質は全て沈降するよ をそのまま (p=1 .007g/mの分離用超遠心機にて 5 うな溶媒密度で色素一受容体の混合物を超遠心するこ . C, 1 2 6 8 0 0x g で 1 8 時間遠心して浮上した VLDL とによって,色素のリポ蛋白及び蛋白質に対する結合 を│珠く。残った液を NaCl I 乙て ρ=1 .063g/ms に調 の度合を知ることができる。 整し, 5. C, 1 2 6 8 0 0xgで3 6 時間遠心して LDLを得 過剰の O i lr e d0 とインキュベートした血清の 1 る。更に, LDL を取り去った液を p=1 .19g/ms に 日目と 1 0日目のサンフ。ルについて,過剰の色素を東洋 NaBrで調整し, 、 F紙 No.2で除いた後,溶液の密度を ρ=1.19g/ms 5o C,1 2 6 8 0 0xg,48 時間遠心して 浮上してくるものを HDLのサンプルとした。このよ に NaBrで調整し,超遠心を行った。色素の分布を 全リポ蛋白と同 調ぺる為,遠心チューブの上部より 1ms ずつ採取し 様 , 冷蔵庫中にて Bu宜e r(pH8.3) に透析する。全 O i lr e d0 の濃度分布を測定した。濃度の測定は,前 うにして得られた LDL,HDL は , リポ蛋白及び LDL,HDL の濃度の測定は, 乾燥重 記の方法と同様である。尚,超遠心機の分析条件は, i 式料リポ蛋自分離の場合に準じた。 量法, Lowry法,紫外部吸収法によった。 2 . 操作 4 ) 沈降速度定数の測定 1 ) 疎水性色素の溶解度測定 色素をリポ蛋白に溶解させることにより,後者の溶 一定量の血清及びリポ蛋白溶液に, O i lred0 を過 液物性に変化がみられるかどうかを知る為に,沈降速 剰に加え,ゆるやかに撹拝しながらインキュベーター 度の変化を調ぺた。沈降及び浮上界面のシュリーレン 巾( 2 0 . C )に放置し,日を追って,その一部約 1msを 像が非対称の場合でも,ピークの最高位置の移動速度 取る。過剰の色素を東洋P紙 No.2でi 戸過した後, から速度定数を計算し, マイクロピペットで 200μ4取り ,2ms のメタノー た。サンフ。ル濃度は, 1時間放置後 , 4ms のクロロホ ノレ溶液中に加える。 ルムを加え, 更に 1時間放置する。 この操作は, 1 0 その重量平均速度定数とし 1 .5 %になるように Bu宜e rで 希釈し,色素とインキュベートして 1日目のサンプル については浮上速度定数 ( S f ) 及び沈降速度定数 (S) 7日自については Sのみを測定した。溶媒 ms 容量の三角コルベンで行い,蒸発を除?為にシリ を測定し, コン栓を用いて,室温で、行った。色素抽出後,凝固し 密度は沈降の場合 p=1 .007g/me,浮上の場合は p= た蛋白を除く為に東洋炉紙 No.2 で炉過し , t p 液を 1 .19g/ms に NaBrで調整し, 525nm で比色し,予め作成した検量線より溶解して ものについても同時に測定を行った。使用した超遠心 いる O i lred0 の量を求めた。 BSA溶液について 機は BeckmanSpinco model E で , は,人の正常血清蛋白質中のアルブミン含量より算出 r . p . m . で 12mm のシングル又はダブルセクターセ 4% BSA/0.1MNaCl ( 含 , 0.02%空化ナト し て 1 1 ) , リウム, EDTA-2Na) について行った。 比較の為に未処理の 2 0 . C, 50740 ルを用いた。 5 ) 受容体に取り込まれた O i lred0 の交換速度 2 ) ゲ、ノレ炉過による受容体の確認 一旦, LDL あるいは HDL に取り込まれた色素 Sepharose4B を用いて,色素分子を受け取った受 が,受容体問に分配交換きれるかどうかを調ぺること 容体を分画し,溶出容積及びおよその分子量より受容 は,極めて興味深いことである。分配交換が自由に起 体を推定した。 こるとした場合,どの程度の速度でそれが起とるかを カラムは内径1.6cm,高さ 21cm で,流速は 7.5 ms /cm ・h r . に保ち, 2 ms ずつ集めた。 調ぺる為に, LDLから HDLへ , また逆に HDL フラクションコレクターで 2 から LDLへの色素の移行速度をゲ〉レ炉過及びゲ、ノレ電 Bu貸e r は TRIS-GlycineBu: fe r 気泳動で試みた。まず,色素で飽和した LDLあるい (pH8.3,以下 Bu笠e rとはこの液をさす)を用い,サ は HDL を未処理の HDL,LDL と同量の割で混和 ンフ。ノレは O i lred0 でインキュベートした血清及び 2 0C )にて一定時開放置す し,インキュベーター中 ( リポ蛋白溶液で,前者はそのまま,後者は適量を る。適当な時間間隔をおいてサンプルを取り,ゲノレ P Bu妊e rで希釈して 1ms流した。溶出パターンの測 過と電気泳動で HDL及ぴ LDLに取り込まれた色素 定は, 520nm及び 280nm における吸光度の測定に よって行った。又, Void Volume の測定は, 0.1% 0 の相対量を測定した。ゲソレ P過には, Sepharose2B, 4B,並びに SephadexG-2ooのカラム(1.6x23cm) - 25- 昭和5 3 年1 1月 ( 1 9 7 8 年) を用い, Bu宜e r (pH8 . 3 ) 中で流速 7 . 5mf ! /cm2・hr 共に増加し, 5.C及び2 0 . Cのいずれの場合も 2つのプ で行い,溶出パターンは 520nm及び 280nm の吸光 ラトーを示している。一方,図 2~乙示すように,血清 度より得た。電気泳動のゲ、ル濃度は,アクリルアミド アルブミンの場合は O i lred 0 の取り込みが速やか 3.75%,ピス 0.1%とし 12〉,通電は疎孔ゲル中で、は 1本 に起こり,比較的短時間で一応の飽和に達する。リポ のカラムにつき 1m A,3 0 分,細孔ゲ‘ルで、は 2mA と 蛋白の場合は,取り込みの速度は遅いが, した。電気泳動後,色素のバンドの部分を切り取り, の取り込み量は血清アルブミンに比較してかなり多 1gあたり 細かくスライスしたものに 2ms の氷酢酸を加え, 24 時間, 2 0 . Cのインキュベーター中に放置し,抽出液を 523nm で比色して,予め作成した検量線より求めた。 図 31こ は , 過剰の Oilred 0 と共に一定時間イン キュベートした血清についてゲル、F過を行い, O i l 実 岡山 験 結 果 0 . 8 図 1は O i lred 0 の血清に対する溶解速度の曲線 1day を示したものである。 O i lred0 の溶解度は,温度と 3days LP ー ー 10days 0 . 6 1 0 (一 ECCNU#6. 口.0 E¥切)匂三×∞ 5 。 0. 4 0 . 2 5 1 0 d a y s 図1 O i l red0 の血清に対する溶解 i lred0 を過剰に加え,ゆ 一定量の血清に O 0 . Cでインキュベートし るやかに撹持しながら 2 た後,過剰の色素を除き,溶解した色素を比色 定量した。 。 1 0 20 3 0 4 0 Ve( m l ) ηJ (切¥凶)四()同×∞ i l red 0 の ゲ fレF過パ 図 3 血清に溶解した O ターン O i l red 0 を過剰に血清に加え, 2 0 . Cでインキ ュベートしたサンフ。ルを 1ms流した。カラム は1.6x2 1cm,流速 7 . 5mf ! /cm2・hr. (LP: リポ蛋白, ALB:血清アルブミン) /ρ/ /グ〆~ red0 の吸収を記録した溶出パターンが示されてい る。最初のピークは VLDL,LDL ,HDLから成る リポ蛋白画分であり,後のピークは主として血清アル ブミンを含んでいる。血清リポ蛋白の含量が約 0 . 5g / 1 0 0msであり 10〉,血清アルブミンが約 5g /lOOme 5 10days i lred0 のリポ蛋白及び BSA溶液に対 図2 O する溶解 一定量のリポ蛋白溶液(竺 3.5%), 4% BSA/ i lred 0 を過剰に加え 0 . 1 MNaCl溶液に O 0 . Cでインキュベートし,溶解した色素を定 て2 量した。 である 11)ことを考慮すれば, 前者の O i lred0 に対 する結合容量が極めて大きいことがわかる。 リポ蛋白が O i lred 0 の主な受容体であることは, O i l red 0 とインキュベートした血清の超遠心 (p= 1 . 1 9g/mのの結果からも明らかである。図 4に示し であるように, 血清に溶解した Oilred 0 の大部分 - 26- 食物学会誌・第33号 どのような変化が起こるかを調べる為に,全リポ蛋白 xω2 を密度差超遠心法によって分離した。図 5は ρ=1.19 、 、 (百¥国) g/ms の NaBr溶液中の浮上ノミターンを示したもの / である。浮上速度及び沈降速度分布の範囲は,既に報 o 1 0d a y s @()﹂[ ・ 告されている値 10)とほぼ一致した。このようにして得 1day i l red 0 と共にインキュベート られたリポ蛋白を O Top - Bottom 図 4 血清に溶解した Oil red 0 の遠心後の分布 過剰の O i lr ed0 とインキュベー卜した血清 の 1日目と 1 0日目について,過剰の色素を東洋 j 戸紙 No.2で除いた後, 溶液の密度を NaBr で ρ=1.19g/ms に調整し, 5o C,126800xg, 30 時間遠心後,上部より 1ms ずつ採取し, O i lr ed 0 の濃度分布を定量した。 し,経時的に沈降パターン及ぴ沈降速度の変化を調べ た。図 6はインキュベートして 7日目のパターンを示 したもので, LDL の沈降速度には有意の差がみられ るが(表 1 , ) 沈降界面の形は変化しない。従って, が遠心チューブの上部に分布している。 O i lr ed0 が チューブの下部でほぼ一様の分布を示すのは,血清蛋 白の分布に対応するからであろう。 O i lr ed 0 を取り込むことによって, リポ蛋白に i l red0 とインキュベートしたりポ蛋白 図G O の沈降パターン 上の像:過剰の O i l red 0 とインキュベート して 7日目のリポ蛋白 (1.5% 溶液) 下の像:O i l red 0 を含まないリポ蛋白(1.5 %溶液〕 溶媒は TRIS-Glycine Bu妊e r (pH8.3,ρ= 1.007g/ms),遠心条件は図 5と同じ。 表1 O i lr ed 0 処理リポ蛋白の沈降定数 図 5 リポ蛋白の浮上パターン リポ蛋白溶液の濃度:1 .5% 溶媒密度:1 .1 9g/ms (NaBr) 温度:20oC,回転速度:50740r .p.m. 時間:46 分 未処理 1日目* 7日目水 LDL 7.1S 7.1S 7.7S HDL 3.5S 3.5S 3.5S ヰ j 邑剰の O i l red 0 とインキュベートして 1日 目及び 7日目のサンフ。ル - 27- 昭和53 年1 1月 ( 1 9 7 8 年) LDL は分子の大きさに変化は起こるが, 構造的に破 り , O i lred0 は少なくとも部分的には受容体の疎水 壊されたり,分子会合などは起こらないと思われる。 領域に取り込まれると考えられる。 一方, HDL は沈降速度について有意な変化はみられ O i lred0 の血清への取り込み量の時間的変化は, 2つのプラトーによって特徴づけられる。 なかった。 i lr e d0 が , 一旦リポ蛋自に取り込まれた O どの このこと は,一種類の受容体に 2つの結合サイトがあるか, も ような速度で他のリポ蛋自に移行するかを調ぺる為 しくは少なくとも三種以上の親和性の違う受容体が存 に,予め O i lred0 で飽和した HDL又は LDLを i lred0 のリ 在することを示唆している。しかし, O 未処理の LDL叉は HDL の同量と混和し, ポ蛋白 (VLDL+LDL+HDL) と BSA に対する溶 二つの 受容体に分配される O i lred0 の濃度を経時的に測 解速度曲線の対比からわかるように(図 2), O i lred 定した。その結果を表 2I 乙示しである。 LDLから O は血清アルブミンに速やかに取り込まれ,リポ蛋白 HDLへの色素の移行は,わずかに時間に依存するよ へ取り込まれる量は多いが, 溶解速度は遅い。従っ i l red0 の血清への溶解速度曲線の最初のプラ て , O 表2 O i l red0 の LDL・HDL 聞の分配交換速度 H D L← L D L L D L← H D L一 LDL HDL (O.D. a t523nm) │混和後経過時間 トーは血清蛋白(主としてアルブミン)に,次のプラ トーはリポ蛋白に基づくと考えられる。このことは, ゲル炉過(図 3) 及ぴ超遠心の結果(図 4) とも一致 1 5 分 0.342 0.146 する。特にゲノレ P過は,血清アルブミンの取り込み速 1 8 0 分 0.308 0.137 度がリポ蛋自に比較しでかなり速いことを明確に示し 360 分 0.329 0.151 ている。 O i l red0飽和によって LDLは沈降速度定数が変 1 5 分 0.209 0 . 0 7 1 化するが, HDL は全く変化を受けない。 リポ蛋白の 分 1 8 0 0.212 0.071 疎水領域は一種の液晶構造をとっていると考えられる 360 分 0.211 0 . 0 7 1 上のカラムは, LDL に O i lr e d0 を飽和させた O -5g / g ) に未処理の HDL もの (0.46%, S= 3X 1 (0.42%) を等量混和後, 経時的にゲル電気泳動を 行い, 濃度分布を定量したもの。下のカラムは, HDLに O i lred0を飽和させ未処理の LDLと混 和したサンプルについての濃度分布。 i lred0 の取り込みの深さ及び量 が 18〉,おそらく, O は液晶構造の度合に依存すると考えられる。 LDL の 場合は, O i lred0 を取り込むことによって,沈降速 i lr e d0 の 度定数が 7.1Sから 7.7Sに増加する。 O LDL 1g あたりに取り込まれる量はごく微量である から,分子量 (M) 及 び 比 容 積 (v) に対する寄与を 無視してよいであろう。この場合, Svedbergの式14.) から, 少 /S=D 本/D が得られる。(ここで, Sキ及び D*は O i lred0で飽和された LDLの沈降定数及び 拡散定数を示す。)この式と LDL聞の分配交換は極めて速やかに起こることは明 RT/ND(f :摩擦係数, Einstein の式m, R:気体定数, tokes の式的, ドロ定数)及び S らかである。 N 考 の粘度, 察 一 一rI うであるが,それが有意であるかどうか,尚詳しい検 i l red0 の HDL討を要する。いずれにせよ, O N:アボガ f=6 例 r(η:溶 媒 r:球状高分子の半径)と組み合わせると, S*/S=r/ げが得られる。この式によれば, O i lred0 O i lred0 の血清リポ蛋白及び血清アルブミンへの を飽和まで取り込むことによって LDL の半径は約 取り込みは,温度と共に増加しており(図 1),いわゆ 0.9 倍となる。 O i lr e d0 の取り込みによって, LDL る吸熱過程である。取り込みの熱力学的なパラメータ の内部エントロビーが減少し,従ってそれを防ヤ為に ーを定量的に計算することは可能であるが, O i lr e d O の血清の受容体(主としてリポ蛋白)への溶解が水 4 2 0Cで 4X1 O -g/mf ! ) を大きく上 に対する溶解度 ( 0 まわっていることから <0,) ( ム F0 O i lred0 の むしろ分子の膨張が起こると予想されるのであるが, 上記のデーターは LDLがかなり小さくなることを示 i lr e d0 の溶解は, LDL の液品構造を している。 O 大きく変化させる可能性もあり,叉,蛋白質やリン脂 血清への溶解過程(水→血清)は,ム HO>O,ム SO> 質の部分的な脱離も考えられるので,上記のデーター 0によって規定される過程である。おそらく,水の構 から一定の結論を引き出すことは不可能である。 造変化に基づく疎水性自由エネルギー支配の過程であ O i lr e d0 の LDL や HDL分子への取り込みの - 28- 食物学会誌・第33号 深さは,疎水性の公害物質の排世速度との関連におい 2 ) Klotz,I .M.:TheProteins,1,758 ( 1 9 5 3 ) て,最も重要な問題である。吸収スベクトルの溶媒効 3 )近藤和子:京都女子大学食物学科卒業論文(昭和 果を利用する一連の予備実験を行ったが,有役な知見 を得ることはできなかった。 しかし, O i lred0 の HLD及び LDL間の分配交換速度が極めて速いこと から, リポ蛋白の脂肪核の中心に取り込まれていると 50 年度) 4 ) Nemethy,G.,Scheraga, H.A. :J . Chem. 3 8 2. . . ,3 4ω(1962) Phys.,36,3 .,Scheraga,H. A. :J . Chem. 5 ) Nemethy,G 4 0 1 " " " " 3 4 1 7( 19 6 2 ) Phys.,36,3 は考えられない。 V 要 約 疎水性低分子 ( O i lr e d0) を血清に溶解させた場 合 , リポ蛋白と血清アルブミンが主な受容体として作 用する。 O i lred0 は血清アルブミンに速やかに取り 込まれるのに対し, リボ蛋白の場合は,取り込まれる 量は多いが溶解速度は遅い。 O i lred0 の血清アルブ ミン及ぴリポ蛋白への取り込みは,いわゆる吸熱反応 であり,水の構造変化に基づく疎水性自由エネルギー 6 ) Nemethy,G.,Scheraga, H. A. :J . Chem. Phys.,66,1 7 7 3 " " " " 1 7 8 9( 1 9 6 2 ) 7 ) Janado,M.,Shimada,K., Horie,N.,Nishida, T.:J.Biochem.,Vol .1 .8 0,No.1 .( 1 9 7 6 ) 8 ) Janado, M.,Shimada, K.,Nishida,T.: J . 9,5 1 3( 1 9 7 6 ) Biochem.,7 7,35 ( 1 9 6 8 ) 9 ) 清水勲,油化学, 1 ¥ 1 . , Martin, W.G.,Cook,W.H.: 1 0 ) Janado, 1 Can. J.Biochem.,44,201 ( 1 9 6 6 ) 支配の過程である。更に, HDL は O i lred0 を取 1 1 ) 医学大事典,南山堂, p .587 (1978) り込むことにより全く変化がないが, LDL は沈降定 1 2 ) 青木幸一郎,中埜栄三,大井優一:電気泳動実験 数が 7 . 1Sから 7.7Sに増加し, Stokes半径が約 0.9 倍に小さくなる。叉, O i l red0 の HDL及び LDL 間の分配交換速度が極めて速いことから, O i lred0 はリポ蛋白の脂肪核の中心に取り込まれているとは考 法,麿川書庖, p .1 4 4( 1 9 6 6 ) 1 3 ) 謝名堂昌信,西田敏郎:蛋白質核酸酵素, 21, 1 8 4 " " " " 1 9 1( 1 9 7 6 ) .:K o l l o i d-Z .,36,Erg.-Bd. 5 3 1 4 ) Svedberg,T ( 1 9 2 5 ) えられない。 最後に,本研究にあたり御指導下さいました謝名堂 昌信教授に深く感謝致します。 参 考 文 献 1 ) Davis,B.P.:J .C l i n .I n v e s t .,22,753 ( 1 9 4 3 ) 1 5 )E i n s t e i n,A.:Ann. Physik.,1 7,549 ( 1 9 0 5 ) 1 6 ) Stokes,G.G.:Trans. Cambridge. Phil .S o c ., 9,Part 1,8 ( 1 8 5 6 )