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2 - World Bank

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2 - World Bank
Public Disclosure Authorized
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日本開発政策・人材育成基金 Japan Policy and Human Resources Development Fund (PHRD)
76970
PHRD 2011
年次報告
日本政府
世界銀行
日本政府
世界銀行
日本開発政策・人材育成基金(PHRD)は、日本政
府と世界銀行のパートナーシップの下、1988年に
設立されました。PHRDの対象範囲は、以下の通
りPHRD運用合意書(1999年3月改定)に定めら
れています。
「本基金は、世界銀行がその加盟国である途上国
において人材育成を支援し、途上国による開発政
策の策定・実施や日本と世銀のパートナーシップ
強化を促進するために出資するプロジェクト/プ
ログラムや活動の策定・実施に関する技術協力な
どのグラント活動に充てることができる」
PHRDは世界銀行が運営・管理する信託基金の
中でも最大級の規模を誇り、被支援国政府による
キャパシティ・ビルディングの取組みに独自の形で
貢献するものと評価されています。
有効性、
持続可能性、
パートナーシップの
向上
マイケル・コッホ
世界銀行グローバル・パートナーシップ
信託基金業務局長からのメッセージ
2011年3月11日の東日本大震災から1年が経ちました。改めまし
の能力強化、モンゴルにおけるク
て世界銀行グループより、お亡くなりになられた方々のご冥福を
リーン開発メカニズム・プロジェ
お祈り申し上げますと共に、被災された方々に心よりお見舞い申
クトなどが挙げられます。メキシ
し上げます。
コでは、気候変動グラントによる研
究が、メキシコ湾岸の湿地帯にお
本年度の年次報告は、アフリカ食糧危機への取り組み、太平洋島
ける気候変動適応プロジェクトの
嶼国やアジアの脆弱国における防災の支援、障害者の障壁の解消
設計に役立てられ、その後、同プロ
を目的とした新たな日本開発政策・人材育成基金(PHRD)技術協
ジェクトは特別気候変動基金の支
力(TA)プログラムの開始について紹介しています。モザンビーク、
援を受けました。太平洋災害リスク評価ファイナンシング・イニ
タンザニア、リベリア、コートジボワール、シエラレオネ、ギニア
シアティブは、PHRD技術協力プログラムの資金を受けて2011年
において、稲作の生産性向上や、改良型の土壌・水管理技術を採
に完了した影響力のある研究で、太平洋島嶼国において、災害後
用する農家のために、PHRD技術協力プログラムから総額4390万
支援と事前の予算計画を組み合わせた費用対効果の高いリスク・
ドルのグラントが提供されました。また、バヌアツ、ソロモン諸
ファイナンシング戦略の構築方法を特定しました。世銀は、この
島、パプアニューギニア、キリバス、モンゴル、ラオス人民民主共
場をお借りし、災害の脅威の高まりへの注意喚起と対応を促進す
和国、ネパール、スリランカ、パキスタンにおける防災機能強化の
る上で、日本政府および日本の技術的専門家の皆様が極めて重要
ために、約1390万ドルが提供されました。さらに、ギニア、
インド、
な役割を果たしてくださっていることを強調させていただきます。
モロッコ、ルーマニア、ペルーに対し、障害者が直面する経済的、
社会的、構造上の様々な障壁への対策のために約1330万ドルが承
PHRD技術協力プログラムで2番目に大きいコンポーネントが、日
認されました。
本/世界銀行共同大学院奨学金制度で、世銀に加盟する途上国で
専門職についている中堅の人材に対して大学院教育を受けるため
1989年に開始されたPHRD技術協力プログラムは、PHRD基金の
の奨学金を提供することにより、経済・社会開発の分野で極めて
中で最も大規模で最も歴史のあるプログラムです。技術協力プロ
有能な専門家集団を構築しています。2011年度、この制度により
グラムの中心を占めているのがプロジェクト準備のコンポーネン
新たに292件の奨学金が提供され、この内3分の1以上をアフリカ
トであり、受益国が世銀の融資を得られるよう質の高いプロジェ
地域の奨学生が占めています。
クトを準備するキャパシティ・ビルディングで重要な役割を果た
してきました。2011年度に終了したプロジェクト準備グラント
2011年度は、スタッフ・長期コンサルタント・プログラムの下で
は、そうしたグラントを使用して準備されたプロジェクトに対す
世銀での日本人採用のために提供されたグラント件数も過去最高
る約10億5000万ドルの世銀融資につながりました。PHRD技術
となり、長期コンサルタントおよび有期雇用職員の採用のために
協力プログラムの気候変動イニシアティブ・グラントは、グラン
48件のグラントが承認されました。
ト受益国において他に先駆けて新たなアプローチを導入していま
す。気候変動イニシアティブ・グラントを受けて実施され、2011
グローバル・パートナーシップ信託基金業務局はこれからも、日
年に終了した活動の主な成果としては、コロンビアにおける植林、
本政府と世銀との間で合意されている通り、開発のためにPHRD
ならびにアグロフォレストリーと混牧林のシステムを通じた二酸
基金を最大限効果的かつ効率的に活用していく所存です。
化炭素吸収源の開発、ブラジルが世界の炭素市場に参入するため
i
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
略語
ALOS
Advanced Land Observation Satelite 陸域観測技術衛星
CARD
Coalition for African Rice Development アフリカ稲作振興のための共同体
CC
Climate Change Initiative 気候変動イニシアティブ
CFP
Concessional Finance and Global Partnerships 譲許性資金・グローバル・パートナーシップ
CGAP
Consultative Group to Assist the Poorest 貧困層支援協議グループ
CGIAR
Consultative Group on International Agriculture Research 国際農業研究協議グループ
CoF
Project Cofinancing プロジェクト協調支援
D&D
Disaster and Development 災害と開発
DFSP
Donor Funded Staff Program ドナー資金による職員採用プログラム
DRM
Disaster Risk Management 災害リスク管理
ERPA
Emission Reduction Purchase Agreement 排出権購入契約
ETC
Extended Term Consultant 長期コンサルタント
FY
Fiscal Year 年度
GFDRR
Global Facility for Disaster Reduction and Recovery 防災グローバル・ファシリティ
GDLN
Global Development Learning Network グローバル・ディベロップメント・ラーニング・ネットワーク
GoJ
Government of Japan 日本政府
GRM
Grant Reporting and Monitoring グラント報告・モニタリング
IBRD
International Bank for Reconstruction and Development 国際復興開発銀行
ICM
Implementation Completion Memorandum 実施完了メモランダム
IDA
International Development Association 国際開発協会
IRRI
International Rice Research Institute 国際稲研究所
JICA
Japan International Cooperation Agency 国際協力機構
JIPS
Japan Indonesia Presidential Scholarship Program 日本/インドネシア大統領奨学金プログラム
JJ/WBGSP Joint Japan/World Bank Graduate Scholarship Program 日本/世界銀行共同大学院奨学金制度
JPO
Junior Professional Officer ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー
JSDF
Japan Social Development Fund 日本社会開発基金
M&E
Monitoring and Evaluation モニタリング・評価
MIDP
Most Innovative Development Project 最も革新的な開発プロジェクトに対する日本賞
ORD
Outstanding Research on Development 開発分野の目覚しい研究に対する日本賞
PacRIS
Pacific Catastrophe Risk Information System 太平洋災害リスク情報システム
PFM
Public Financial Management 財政管理
PHRD
Policy and Human Resources Development Fund 日本開発政策・人材育成基金
PICs
Pacific Island Countries 太平洋島嶼国
PP
Project Preparation プロジェクト準備
TDLC
Tokyo Development Learning Center 東京開発ラーニングセンター
WB
World Bank 世界銀行
WBI
World Bank Institute 世界銀行研究所
目次
第1章:
第5章:
序論および概要
PHRD活動のモニタリングと評価
1.1 PHRDの起源と目的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1
1.2 プログラム概要 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1
1.3 プログラムの実行. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
1.4 2011年度のプログラム要旨 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
5.1 PHRD活動の進捗状況と成果のモニタリング. . . . . . . . . . . . 21
第6章:
PHRDおよびPHRDの資金によるプログラムに
ついての情報
第2章:
6.1 PHRDについての情報. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 23
PHRD技術協力プログラム̶傾向と主な実績
6.2 PHRDの資金によるプログラム . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 23
2.1 プログラムの傾向. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5
2.2 2011年度に終了したPHRD技術協力グラントの主な実績
6
図一覧
2.3 新たなPHRD技術協力プログラム. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10
第3章:
人材育成
図1: PHRDへの年間拠出額の推移(単位:100万ドル). . . . . . . .
1
図2: PHRDプログラム別実行額(2011年度と2010年度). . . . . .
3
図3: PHRD技術協力グラントの配分額と実行額
(1998-2011年度). . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5
図4: PHRD技術協力Pillar I̶受益国
3.1 はじめに . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 15
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10
図5: PHRD技術協力Pillar II̶受益国 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3.2 日本/世界銀行共同大学院奨学金制度 . . . . . . . . . . . . . . . . 15
図6: PHRD技術協力Pillar III̶受益国
3.3 日本/インドネシア大統領奨学金プログラム . . . . . . . . . . . . 15
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12
図7: 地震ハザードマップ̶パプアニューギニア
3.4 日本/世界銀行パートナーシップ・プログラム. . . . . . . . . . . 16
第4章:
PHRDが支援するその他のプログラム
11
. . . . . . . . . . . . . . 13
図8: 実地調査された資産データ̶8万棟. . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
13
図9: 承認されたスタッフ・グラント件数(2000-2011年度). . . .
18
表一覧
4.1 はじめに . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18
4.2 日本PHRDスタッフ・ETCプログラム . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18
4.3 日本ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー
(JPO)
プログラム . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18
表1: スタッフ・ETCグラントの承認(2009-2011年度). . . . . . . .
18
表2: 2011年度のその他のPHRDプログラムへの配分額 . . . . . .
19
囲み一覧
4.4 その他のPHRDプログラム . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 19
囲み1: 終了した2件のプロジェクト準備グラントの成果. . . . . . . .
7
囲み2: 終了した2件のプロジェクト協調支援グラントの成果
8
...
囲み3: 終了した2件の気候変動イニシアチブ・グラントの成果
9
囲み4: 2011年国際開発賞 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
16
iii
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
第1章:
序論および概要
1.1 PHRDの起源と目的
日本開発政策・人材育成基金(PHRD)は、日本政府と世界銀行の
パートナーシップの下、1988年に設立されました。低所得国(グ
ラント受領時点で国民一人当たり年間所得が900ドル以下の国)
向けの技術協力とキャパシティ・ビルディング・イニシアティブ
に対する主要なグラントの1つです。PHRDは、世界銀行が運営・
管理する信託基金の中でも有数の規模を誇り、過去23年間に、貧
1.2 プログラム概要
困削減やキャパシティ・ビルディングの幅広い取組みにおいて開
発機関としての世銀の役割に独自の形で貢献するものと評価され
ています。PHRD基金は、経済・金融危機の影響を受けた国々に
PHRDは、以下のプログラムを通じて、技術協力、人材育成および
対し、いち早く、また多くの場合は唯一、譲許性資金を提供してき
キャパシティ・ビルディング、日本人スタッフやコンサルタント、
ました。
日本/世界銀行パートナーシップ・イニシアティブを支援しました。
設立から2011年度までに、日本政府はPHRDに対し26億ドルを
技術協力
拠出しています。2006-2011年度におけるPHRDに対する日本の
• PHRD技術協力(TA)プログラム:以前は、国際復興開発銀行
累積拠出額は、国際開発協会(IDA)/国際復興開発銀行(IBRD)に
(IBRD)
の貸出および国際開発協会
(IDA)
の融資・贈与によるプ
対する信託基金拠出総額28億ドルの約13%を占めています。
ロジェクトの準備・実施を支援するグラントを提供していまし
た。また、同プログラムは、気候変動関係の様々な取組みも支
この10年間で年間拠出額は減少傾向にあり、2000年度の約5000
万ドルが2004年度は2000万ド
ル、2009年 度 は120万 ド ル と
図1:PHRDへの年間拠出額の推移(単位:100万ドル)
なりました。しかし、2010年
度には、2000年度以降で最高
250
額に当たる4100万ドルの拠出
がありました。2010年度の拠
ラムである日本社会開発基金
の緊急対応枠※1に移転されまし
た ※2。2011年の年間拠出額は
2400万ドルに減少しました。
150
100
50
年度
0
19
88
19
89
19
90
19
91
19
92
19
93
19
94
19
95
19
96
19
97
19
98
19
99
20
00
20
01
20
02
20
03
20
04
20
05
20
06
20
07
20
08
20
09
20
10
20
11
するもう1つの信託基金プログ
単位:100万ドル
出額の一部は、世銀が管理運営
200
1
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
1
序論および概要
援しました。2008年度まで技術協力プログラムには、プロジェ
士課程教育を受けるための奨学金を提供しています。日本が
クトの準備
(PP)
、実施、協調融資
(COF)
、気候変動イニシアティ
支援して他の国際開発金融機関が管理する同様の奨学金プロ
ブ
(CC)などの支援が含まれていました。2009年度に技術協力
グラムは他にもありますが、JJ/WBGSPはいずれのプログラ
プログラムのこうしたコンポーネントは廃止され、以降新規の
ムにも先駆けて設置され、はるかに大きな規模を誇っていま
グラントは提供されていません。2011年7月の時点で、約63件
す。日本政府は設立以来2億4094万ドルを本プログラムのた
のグラントが引き続き実施中です。
めに承認し、その96%が2011年度末までに実行されました。
• PHRD世界銀行研究所(WBI)能力開発
グラント・プログラム:WBIの能力開
発活動、特に東・南・中央アジアでの活
動を中心に支援します。設置以来、日
本政府は4444万ドルを承認しており、
その内約97 %が2011年度末までに実
行されました。このプログラムは2011
年度に終了しました。
•
日本/インドネシア大統領奨学金プロ
グラム(JIPS)
:経済、経営、教育、保健、
農業、インフラ、環境など開発関連分野
での研究を支援するため2008年に設置
されました。日本政府はこの新プログ
ラムに対しこれまでに300万ドルを提
供し、内62%が2011年度末までに実行されています。
2009年、技術協力プログラムは、Pillar I:農業と稲作の生産
性拡大に関する研究開発
(1億ドル)
、Pillar II:災害の削減と
復旧
(DRR)プログラム
(5000万ドル)
、Pillar
(D&D)プログラム
(4000万ドル)
、Pillar
日本人スタッフおよびコンサルタント
III:障害と開発
IV:日本政府と世界
•
銀行が合意するその他の活動、という4つのテーマ
(Pillar)
に再
日本PHRDスタッフ・長期コンサルタント(ETC)プログラム:
編されました。Pillar Iでは、約2000万ドルが国際稲研究所お
世銀のスタッフまたは長期コンサルタントとしての日本人の
よびアフリカ稲研究センターに割り当てられました。残りの
採用を支援する目的で2004年に設置されました。このプログ
資金はアフリカにおける稲作生産性拡大のための活動支援に
ラムに対する日本政府の累積拠出額は2850万ドル(2011年度
充てられます。新しい技術協力プログラムの政策文書は付録I
末現在)で、内71%が実行されています。
の通りです。
パートナーシップ・イニシアティブ
2011年度PHRD技術協力プログラムは、2009-13年度PHRD技術
•
協力政策文書の実施を可能にすることに主眼が置かれており、そ
日本・世界銀行パートナーシップ・プログラム:主要な開発
問題に関して日本のステークホルダーと世銀のパートナー
こには最初の3つのPillar(2010年10月に修正)に基づくグラン
ト・プロポーザルの準備および日本政府への承認申請が含まれて
シップを構築し、国際的開発問題に対する日本国民の関心を
います。
高め、援助協調イニシアティブを強化する活動を支援します。
このプログラムへの拠出総額は2011年6月末現在で5774万
ドルで、89%が実行されています。
人材育成およびキャパシティ・ビルディング
•
日本/世界銀行共同大学院奨学金制度(JJ/WBGSP):1987
PHRDは、こうした主力プログラムの他に、世界銀行が大きな役
年に設立され、加盟国の国籍を有する人材を対象に大学院修
割を担う国際社会の取組みも支援しています(第2、3、4章で詳
2
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
序論および概要
1.4 2011年度のプログラム要旨
述)。日本ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー・プログ
ラム、貧困層支援協議グループ、国際農業研究協議グループ、東京
開発ラーニングセンター、国際エイズワクチン推進機構、防災グ
• 2011年度に終了した13件のプロジェクト準備グラントは、そ
ローバル・ファシリティ(GFDRR)、クリティカル・エコシステム・
うしたグラントにより準備されたプロジェクトに対する約10
パートナーシップ基金など、世銀グループが運営する他のプログ
億5000万ドルの世銀融資につながりました。
ラムにPHRDやPHRD技術協力プログラムから資金を移転するこ
•
とも、しばしば行われます。
アフリカにおける農業生産性の向上、防災、障害対策に主眼を
置いた新たなPHRD技術協力プログラムが開始され、17件の
グラント・プロポーザル(1億240万ドル)が日本政府の承認を
1.3 プログラムの実行
受けています。
• JJ/WBGSPプログラムへの2050万ドルの拠出により、通常プ
2011年度、PHRDの実行総額5860万ドルの約2分の1がPHRD技
ログラムおよびパートナーシップ・プログラムの下で新たに
術協力プログラムに対するものでした。PHRD技術協力プログラ
292件の奨学金が提供されました。奨学生の3分の1以上がア
ムが実行総額に占める割合が最も高いのは前年度までと同じです
フリカ地域出身者でした。
が、2010年度と比べると9%ポイント低下しています。PHRD TA
•
実行額は2008年度以降一貫して減少しています。、その主な原因
スタッフ・ETCプログラムにより、48人の日本人が世銀に採
用され、グラント件数は同プログラム史上最多となりました。
としては、かつての取組みが順次終了したこと、2011年度内に新
• 2011年6月に日本がドナー資金による職員採用プログラム
TAプログラムで新規承認がなかったこと等が挙げられます。しか
(DFSP)に正式に参加し、同プログラムの下で日本政府は10
し、2013年度は2011-2012年度に承認された新規グラントの実
の職種を承認しました。
行により、実行額が増加する見込みです。実行額の中で2番目に大
• PHRDから他の非中核的プログラムへの移転額は2420万ドル
きな割合を占めたのはJJ/WBGSPでした。スタッフETCプログラ
で、CEPFがこの内1000万ドルを受領しました。
ムの2011年度の実行額は、前年度と比べて4%ポイント増加しま
した。
図2:PHRDプログラム別実行額(2011年度と2010年度)
WBI能力開発
20万ドル(0%)
JIPS
100万ドル
(1%)
スタッフ・ETC
グラント
560万ドル
(10%)
JIPS
70万ドル
WBI能力開発
90万ドル(1%) (1%)
パートナーシップ
500万ドル
(7%)
パートナーシップ・
グラント
320万ドル
(5%)
JJ/WB GSP
1930万ドル
(33%)
JJ/WB GSP
1780万ドル
(26%)
PHRD TA
プログラム
2930万ドル
(50%)
スタッフ・ETC
グラント
380万ドル
(6%)
PHRD TA
プログラム
4010万ドル
(59%)
2010年度
2011年度
※1
日本政府は2009年度から3年間にわたり、食糧、燃料、金融の3つの危機に対応するため、JSDF緊急対応枠に2億ドルの拠出を誓約しています。
※2
www.worldbank.org/jsdf
3
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
1
第2章:
PHRD技術協力プログラム
̶傾向と主な実績
2.1 プログラムの傾向
プログラムの設置以降、
(旧)
PHRD技術協力プログラムの種々のコ
ンポーネントに対する累計配分額は22億7000万ドルで、その内約
74%が実行されています。図3は、配分額の推移を示していますが、
2010年度に210万ドル、2011年度にはわずか4万ドルまで減少す
るなど、年によってばらつきがあります。前述の通り、2007年度
以降の減少は、かつての技術協力プログラムが順次終了している
国にとって、IBRDによる貸出やIDAの融資を受ける準備のための
ことが主な原因です。
重要な資金源です。プロジェクト準備グラントは、借入を希望す
旧プログラムに基づくグラントが終了する一方、新プログラムで
る国に直接提供され、世銀融資申請文書の作成に必要な分析調査
のグラントはまだ実施されていないため、図3に示されている実行
に欠かせない専門知識獲得に向け、世銀プロジェクトの品質や受
額は旧技術協力プログラムの下でのグラントです。2011年度の実
益国のオーナーシップの強化に充てられます。平均すると2000-
行額は、2010年度の4000万ドルに対し、2900万ドルとなってい
2005年度に承認された融資総数の内3分の1以上がプロジェクト
ます。2012年度は、新規グラントが実施されるため、実行額の増
準備グラントの支援を受けていました。その後、この割合はいく
加が見込まれています。
つかの理由により徐々に低下してきています。
プロジェクト準備グラントを受
図3:PHRD技術協力グラントの配分額と実行額(1988-2011年度)
けて計画されたにもかかわらず、
そうしたプロジェクトが世銀融
300
資プログラムでの承認に至らな
単位:100万ドル
250
いのは、グラント受益国政府が重
点分野/政策を転換し、そのプロ
200
ジェクトへの関心を失った場合
や、国内で政治危機が発生した場
150
合などです。たとえば、2011年
100
度に終了したプロジェクト準備
グラントを受けて準備された3件
50
年度
19
88
19
89
19
90
19
91
19
92
19
93
19
94
19
95
19
96
19
97
19
98
19
99
20
00
20
01
20
02
20
03
20
04
20
05
20
06
20
07
20
08
20
09
20
10
20
11
0
配分額
のプロジェクトは、当該地域にお
ける政治危機のために世銀理事
会への申請承認が提出されませ
んでした。さらに、当該プロジェ
実行額
クトへの融資を行うには改革策
が不十分であると世銀が判断し
PHRD技術協力プログラムは、その大半をプロジェクト準備(PP)
た場合にも、プロジェクト準備グラントを受けて計画された予算
グラントが占めています。同グラントは、低所得国や低位中所得
支援プロジェクトに対する融資は承認されません。
5
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
2
PHRD 技術協力プログラム̶傾向と主な実績
2.2 2011年度に終了したPHRD技術協力グラン
ベスト・プラクティスの例示と知識の移転:
トの主な実績
•
ベトナム:水力発電開発分野におけるベスト・プラクティス
共有の機会
2011年度には旧技術協力プログラムの37件のグラント(4110万
•
ドル)が終了しました。その主な成果は以下の通りです。
アルメニア:アジア、ヨーロッパ、南北アメリカの国々との交
流を通じ多くの知識を獲得。
•
プロジェクト準備グラント
インドネシア:制度改革や変更管理を手がける省庁間での知
識の相互交換を促進するために、財政管理(PFM)チームと広
範囲に協調。
2011年度に終了したプロジェクト準備グラントは、技術協力グラ
•
ント37件の内の20件で、技術協力プログラムからの実行総額の
ウズベキスタン、ニカラグア:国内のコンサルティング企業
が、海外のコンサルタントとの交流を通じて、水と衛生に関す
76%を占めました。同グラントは、農業、教育、保健サービスから、
る貴重な新しい知識や経験を獲得。
金融、エネルギー、運輸へのアクセス改善、農村の生計機会拡大、
環境まで、多岐にわたるプロジェクトを受益国政府が準備する際
の支援に役立てられました。
終了したプロジェクト準備グラ
ントの主な成果としては、
(i)同
グラントを受けて準備されたプ
ロジェクトに対する資金の動
員、
(ii)ベスト・プラクティスの
例示と知識の移転、
(iii)機関の
垣根を越えた実施能力の構築、
(iv)これまで世銀資金を受けた
ことのない一部受益国への初の
世銀支援、などが挙げられます。
終了したプロジェクト準備グラ
ントによる資金動員:
•
終 了 し た13件 の グ ラ ン ト
は、これらグラントにより
準備され承認されたプロ
プロジェクト準備グラントにより、いくつかの国で新たなアイデ
ジェクトに対し約10億5000万ドルの世銀融資を動員。
•
アやアプローチの初の試行に役立つ環境が整いました。例えば:
ベトナム:水の持続可能な提供のために約2000万ドルのIDA
•
融資、水力発電開発のために3億3000万ドルの世銀貸出。
•
モザンビーク:水と衛生プロジェクトへのIDA融資。
•
ニカラグア:改革戦略のためのマルチドナー融資が、世銀、米
グラントの実施によりパプアニューギニアの機能が強化され、
農村部通信プロジェクト―パプアニューギニアで初の受領者
が実施する取組み―の準備が可能に。これは同国にとって重
要な学習機会となり、後続のIDAプロジェクトの管理責任を負
州開発銀行、欧州連合による協調融資プロジェクトとして結実。
うという流れを促進。
•
ベトナムで初のIBRD水力発電プロジェクトを、プロジェクト
準備グランドを受けて準備。
6
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
PHRD 技術協力プログラム̶傾向と主な実績
プロジェクト協調支援グラント
囲み1:終了した2件のプロジェクト準備グラントの成果
アルメニア政府に対し、アルメニアEソサエティ・イノベーショ
プロジェクト協調支援グラントは、IDA融資適格国やIDA/IBRDブ
ン・競争プロジェクトについて世銀融資の申請準備のためにプ
レンド国における世銀プロジェクトのために組織としての能力強
ロジェクト準備グラントが提供されました。同プロジェクトは、ア
化を図る技術協力の支援に充てられました。2011年度は9件のグ
ルメニアの情報通信技術セクターにおける技術革新と雇用の機
ラント(2141万ドル)が終了し、承認額の68%が実行されました。
会を高め、競争力を強化し、市民や実業界の情報アクセスを向
終了した協調支援グラントは、鳥インフルエンザ対策プロジェク
上させることを目的としたもので、世銀の承認を受け、主に以
ト(アルバニア、アルメニア、グルジア)、ガバナンス・財政管理・
下のような成果を上げました。
歳入管理、制度改革とキャパシティ・ビルディング(インドネシア
•
およびケニア)、農村開発および農村企業(グルジアおよびアルメ
本グラントを受けた技術協力および助言支援により、トレーニ
ニア)に役立てられました。
ングおよび大量の知識移転を通じて参加機関の機能が強化さ
れました。
•
終了したプロジェクト協調支援グラントの主な成果としては、
(i)
本グラントにより、ブロードバンドの官民パートナーシップ、ベ
投融資の動員、
(ii)効果的なトレーニング、
(iii)他のドナーとの生
ンチャーキャピタル基金、ギュムリ技術センターといった革新
産的パートナーシップ、
(iv)制度面・技術面での能力強化が挙げら
的な特長を備えた、プロジェクト設計への取り込みが可能に。
•
れます。
関連融資プロジェクトの開始時の質が大幅に高まり、プロジェ
クト成功に向けクライアントが万全の準備。
投融資の動員:
•
ニカラグア公共セクター技術協力プロジェクトへの世銀融資申
グルジア:農村開発プロジェクトにおいて、生産のための融
資の査定・管理でマイクロファイナンス機関を支援し、マイ
請の準備のために、ニカラグア政府にプロジェクト準備グラント
クロファイナンス融資活動をきわめて有益な形で実施。
が提供されました。ガバナンス向上に向けた公共政策の策定・
•
実施における公共セクターの機能強化を継続的に図っていくこ
アルメニア:農業関連の中小企業132社に総額640万ドルの
とが、同プロジェクトの目的です。そのためには、貧困削減プロ
長期農業金融へのアクセスを可能にすることで恩恵をもたら
グラムの実施のための公的資源の活用における全体的な効率
し、農村地域への総額1030万ドルの投資を創出。
と透明性の改善が必要です。このグラントは、世銀、米州開発
トレーニング・実証プログラムによる具体的な成果:
銀行、欧州連合による協調融資プロジェクトを支える包括的な
•
財政管理戦略の準備に充てられました。主な3つの成果は以下
ガンビア:教育支援のトレーニング・認証プログラムにより、
の通りです。
中途退学率の低下と就学率の上昇がもたらされ、教育ツール
•
の開発・実施と、近代的な補助教材の導入が実現。
参加型プロセスを通じて構築された新たな財政管理統合モデ
•
ル
(財務手順と運営手順の統合)
を策定。専門家にグラントの
グルジア:農家を対象に新技術の実地説明が行われ、農業慣
行が改善され、栽培地の生産性や農産物の質が向上し、最終的
支援。
には地元住民の雇用率向上と所得増加に貢献。
•
既製ソリューションへの移行。
•
ニカラグアの中核的な財政管理制度(予算、会計、国庫、公共
負債)およびその他の非中核的な運営手続き
(人事、公共投
資、調達、国家資産)、ならびに規制、規範、手続きの強化を
目的とする財政管理近代化計画の策定。
7
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
2
2
PHRD 技術協力プログラム̶傾向と主な実績
•
マルチドナー・チームの一員として生産的パートナーシップを
計画を可能にするための新たな法律・規制上の枠組みを構築。
推進:
•
インドネシア:世銀の他、米財務省、GPFオーストラリア、韓
•
キルギスタン共和国:新たな獣医法を制定。
国などのドナーによる支援を受けたガバナンス・財政管理改
•
アルメニア:種子市場構築を支援する近代的な法律や規制を
革プログラムにおいて重要な役割を実行。
•
導入。
ケニア:世銀を含む様々なパートナーからの資金をプールし、
気候変動イニシアティブ・グラント
組織・制度改革とキャパシティ・ビルディングを支援。
気候変動イニシアティブ・グラントは、気候変動の問題を受益国
政府の新たな情報関連システム、プロセス、法律の構築と導入:
•
アルバニア:より効率的な疾病予防/管理および緊急時対応
の開発計画立案プロセスに盛り込むため役立てられています。ま
キルギスタン共和国、アルメニア:鳥インフルエンザ対策を
た、温室効果ガス排出削減に向けた世銀プロジェクトの準備や実
支援するための新たな管理、コミュニケーション、情報システ
施、さらには、エネルギー効率や気候変動の悪影響への適応の推
ムのアプローチを採用。
囲み2:終了した2件のプロジェクト協調支援グラントの成果
アルメニア:農村企業・小規模商業的農業開発プロジェクト
このグラントの目的は、アルメニアの農村地域に対する官民からの市場志向の投資を促進することによって農家や農村企業の市場アクセスを向
上させ、雇用機会を高めることを主な目的とするプロジェクトに対して、世銀融資との協調支援を行うことでした。このグラントは、農村金融セク
ターのキャパシティ・ビルディング、農業拡張システム、種子市場の構築、地域社会主導型経済開発など、プロジェクト・コンポーネントのすべてで、
それぞれ必要とされている技術協力を提供するために役立ちました。PHRD資金を受けた活動がもたらした主な成果は以下の通りです。
•
約132の中小規模の農業関連企業が農業金融へのアクセスを得て、農村地域への多額の投資を動員
•
法律や規則の改定により種子・苗木市場を改善し、種子局を新設
•
地域社会の計画策定能力が強化され、地域社会の経済開発に対する1200万ドル以上の投資の創出を通じて141の村落コミュニティに暮らす10
万人以上に恩恵
ガンビア:第2期教育支援プログラムを支援する第三次教育セクター・プロジェクト
本グラントは、基礎教育での指導・学習の条件改善を主な目的とするプロジェクトにおける組織・制度面でのキャパシティ・ビルディングのコンポー
ネントに役立てられました。金融、建設管理、教育管理、建築積算から、カリキュラム管理、英語、情報技術まで、様々な学問分野における長期
的な学校教育への資金援助を通じて、専門職員の能力強化を支援しました。さらに、費用効果の高いクラスター型の研修コースをはじめとする
幅広い現職者研修によって、3,700人以上の教職員が恩恵を受けました。このグラントは、持続可能な書籍刊行システム、計画立案および教育管
理の分権化、成果に対する説明責任、品質基準向上に向けた指導・学習のモニタリングに充てられました。キャパシティ・ビルディング・イニシアティ
ブがもたらした主な成果は、以下の通りです。
•
中途退学率の低下、進学率の上昇
•
就学率の上昇(特に女子)、人種的障壁の低減
•
生徒1人当たり教科書数の増加
8
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
PHRD 技術協力プログラム̶傾向と主な実績
進にも充てられています。2011年度は6件のグラント
(357万ドル)が終了し、実行率は68%でした。これら
のグラントは、気候変動の原因と影響の両方に取り組
むプロジェクトに充てられました。5件のグラントは
囲み3:終了した2件の気候変動イニシアティブ・グラントの成果
メキシコ:気候変動への適応
キャパシティ・ビルディングおよびカーボンファイナ
このグラントは、気候変動がメキシコ国内の水資源および領土内の沿岸湿地
ンス実施に、1件は気候変動への適応に特化したもの
帯にもたらす影響にメキシコ政府が対処する際の支援を提供することが目的
でした。終了した気候変動グラントの主な成果は、以
で、メキシコ湾沿岸における極端な気象現象や高潮の影響を評価するツール
下の通りです。
の開発、日本の陸域観測技術衛星(ALOS)
を使用した湿地でのリモートセン
シング調査、気候変動が沿岸湿地帯にもたらす最終的な影響の評価という領
クリーン開発メカニズム(CDM)の支援:
•
コロンビア:二酸化炭素吸収源の開発によりCDM
プロジェクトの最新の対象地域を決定。
•
域において、技術研究に役立てられました。特別気候変動基金から資金を受
けた「メキシコ湾における沿岸湿地帯への気候変動の影響への適応」は、これ
らの研究に基づいて設計・準備が行われました。
ブラジル:CDMの下でのプログラム活動の潜在
ALOSを使用して生成された沿岸湿地帯データのアクセスやその活用に関す
性と開発課題に関する診断と提言を政府に提供。
る日本の国家機関とその技術支援部門であるRESTECとの協力は、大きな成
果を収めました。それらの日本の機関が現地でトレーニングを実施し、そうし
炭素市場や資金調達への参加能力の強化:
•
ケニア:グリーンベルト運動が、排出権購入契約
的な監視と診断のために3種類のセンサーを使用したALOS画像を保存する
(ERPA)に規定されている、バイオ炭素基金アクセ
アーカイブが設けられました。そうした結果は質が極めて高く、ラムサール
スのすべての条件を満たすよう支援。
•
モンゴル:自然環境観光省によるカーボン・ファ
イナンス・プロジェクトの開発・実施能力を育成
し、2件のERPAを検証。
•
た協力の結果として技術的能力が大幅に向上しました。沿岸湿地帯の継続
条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)代表者に
も、他の地域にも配備すべき事例として紹介されています。
コロンビア:サンニコラス二酸化炭素吸収源プロジェクト
ブラジル:炭素市場の組織・制度やインフラの強
このグラントは、放置された800万ヘクタールの放牧地での再植林、アグロ
化により、炭素市場参加を拡大。
フォレストリと混牧林のシステムを通じた二酸化炭素吸収源の開発において
グラント受益者であるCORNARE/MASBOSQUESの能力強化に大きく貢献し
気候変動アジェンダを支援する新たな方法の設計:
•
コロンビア:二酸化炭素吸収源の開発を支援する
ための排出量削減の定量化と監視の方法を改定。
•
メキシコ湾沿岸:大型ハリケーンによる影響の評
価と定量化の新たな方法を設計。
ました。同グラントは、コロンビアにおける炭素処理の方法および二酸化炭
素吸収源のための付加的ツールの開発に向けた技術協力、絶滅の危機に瀕
している樹木種の回復と強化、持続可能な森林管理に向けた農家のトレーニ
ングとキャパシティ・ビルディング、社会資本および生物多様性保護の強化、
気候に対する意識喚起やカーボンファイナンスの利用促進などの活動に充て
られました。こうした活動は、付随プロジェクトである森林減少・劣化等によ
る温室効果ガス排出量の削減(REDD)
コンポーネントの方法論の設計、なら
びにクリーン開発メカニズム
(CDM)
コンポーネントの対象区域を定めるため
の初期調査と評価に役立てられました。さらに、グラントを受領した活動によ
り、天然資源(森林)の管理と保全に関するコミュニティ組織の機能強化、森
林管理を通じた天然資源(特に土壌と水)の回復と保全、農業慣行への樹木
種の導入などを通じて、サンニコラス渓谷の小規模農家の生計向上に役立ち
ました。
9
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
2
2
PHRD 技術協力プログラム̶傾向と主な実績
2.3 新たなPHRD技術協力プログラム
めの新パートナーシップ」と連携して「アフリカ稲作新興(CARD)
のための共同体」を立ち上げました。
2011年度はPillar I-IIIで17件のグラント・プロポーザル(1億240
万ドル)が承認を求めて日本政府に提出されました。2011年6月
CARD加盟国は、国家稲作振興戦略の策定を順調に進め、そうし
30日現在で8250万ドル相当のグラントが承認されています。残
た戦略は国家プロセスやアフリカ農業総合開発プログラムのプロ
り3件のプロポーザル―1件はアフリカでの農業に関する1496万
セスの主流に組み込まれます。
ドルのプロポーザル(タンザニア)、2件は災害の削減と復旧に関す
る合計490万ドルのプロポーザル(パプアニューギニアとキリバ
食糧安全保障は日本による支援の重点対象です。2008年に大阪で
ス)―は、2012年度初めに承認されました。詳細は付録2に掲載
開催されたG8財務相会合でも、食糧危機による直接的影響と食糧
しています。
不足の原因に対する世銀の取組みを支持することが表明されまし
た。これを踏まえ、日本はPHRD
稲作生産性・開発研究プログラム
を支援しました。このプログラム
に対する日本の支援は、大阪での
G8財務相会合における確固たる
コミットメントに基づいたもので
す。
PHRD技術協力プログラムでは、
サブサハラ・アフリカおよび東南
アジア諸国での次世代コメ品種
開発のために国際農業研究協議
グループ
(CGIAR)に 提 供 さ れ た
2000万 ド ル に 加 え、こ れ ま で に
Pillar IでのPHRD技術協力グラン
トで6か国が恩恵を受けています。
図4:PHRD技術協力Pillar I̶受益国
(グラント額)
Pillar I:農業と米作の生産性拡大に関する研究開発
過去20年間にサブサハラ・アフリカではコメの消費量が急増し
ましたが、生産量はそうした需要に追いついていません。その結
果、国際食糧価格が上昇する中でコメの輸入量が増加していきま
した。こうした状況のために、もともと貧しかったアフリカの数
ギニア
(900万ドル)
百万人が食糧を確保できないリスクに直面しています。コメはア
シエラレオネ
(1000万ドル)
フリカにおいて主要な穀物であり、生産量増加の潜在性も高いと
コートジボワール
リベリア (800万ドル)
(800万ドル)
考えられています。
タンザニア
(1425万ドル)
この課題に取り組むため、国際協力機構(JICA)は、2008年5月に
横浜で開催された第4回アフリカ開発会議のサイドイベントにお
いて、
「アフリカ緑の革命のための同盟」および「アフリカ開発のた
モザンビーク
(1425万ドル)
10
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
PHRD 技術協力プログラム̶傾向と主な実績
Pillar II:災害の削減と復旧(DRR)
これらのプロジェクトは、当該国政府のDRM国別プログラムおよ
び政策に明記されている最も緊急性の高い国家DRM優先事項の
DRRプログラムは、そのプロジェクト設計において、兵庫行動枠
一部に対応するものです。DRM国別プログラムの準備はGFDRR
組2005-2015など、災害リスク管理(DRM)に関する世界の優良
の支援によって進められ、国レベルでのGFDRR介入に一貫性や戦
事例および認められている国際基準や枠組みの大枠を指針として
略を与えるために各国政府によって承認された後、審査が行われ
います。
ています。
PHRDとGFDRRのパートナーシップ。本プログラムは、技術的
PHRD DRRプログラムは、GFDRRが策定したDRM枠組みを指
な焦点および資金調達アプローチにおける比較優位に基づいたも
針としています。したがって、プログラムの付加価値、および既
のです。
存の取組みや国家の優先課題との整合性を確保するため、PHRD
プロジェクト・プロポーザルは、GFDRRの優先国における国家
図5:PHRD技術協力Pillar II̶受益国
(グラント額)
パキスタン
(270万ドル)
モンゴル
(270万ドル)
ラオス人民民主
共和国
(270万ドル)
ネパール
(140万ドル)
パプア・ニューギニア
(270万ドル)
スリランカ
(90万ドル)
キリバス
(180万ドル)
ソロモン諸島
(270万ドル)
バヌアツ
(270万ドル)
GFDRRは、政府やその他の関係者に対して世銀が実行する需要主
導型の技術協力や助言に重点を置いていますが、PHRD技術協力
プログラムの資金によるプロジェクトは、グラント受益者(通常は
政府)によって実施されます。両アプローチ共に政府のオーナー
DRMの枠組みに従って選定されます。クライアント国政府(なら
シップとリーダーシップが中核を成していますが、GFDRRの支
びに当該国の日本大使館およびJICA)との実質的な協議がすべて
援は、PHRDの優先支援対象である、政府の実行するパイロット・
のプロポーザルの基礎となっています。これまでに9件のプロポー
プロジェクトや能力開発を補完します。こうした異なるメカニズ
ザル(2240万ドル)が日本政府の承認を受けています。
ムを組み合わせることで、災害に強い国づくりという長期的な取
組みを支援すると同時に、
「比較的簡単に実施でき、効果を上げや
たとえばラオス人民民主共和国のPHRDグラントは、災害リスク
すい取り組み(クイック・ウィン)」および主要知識の不足を補う
管理の実践を政府全体に広く定着させるために、GFDRRプログラ
ための対応が遅滞なく行われます。
ムの下で国家・県の災害管理局に提供された最初の技術支援を踏
まえたものです。GFDRRの支援によって職員は、包括的なDRM
2011年度のPHRD技術協力DRRのプロポーザル。PHRD技術協
主流化の潜在性を意識するようになり、PHRDを通じて可能と
力プロジェクトの初年度、9件のプロジェクト・プロポーザルの承
なったより広範な支援の要請が職員から出されています。さらに
認申請が日本政府に提出されました。
PHRDは、例えば排水系統、病院、学校などで災害に強い建設方法
11
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
2
2
PHRD 技術協力プログラム̶傾向と主な実績
•
を実証するパイロット工事に資金を提供する予定です。政府が実
施するこうしたパイロット・プロジェクトは、GFDRRプログラム
モロッコ:移動性が限られている障害者の物理的アクセスを
高めることを目的としたプロポーザル。
がなければ不可能でした。
•
タミルナドゥ(インド)
:精神障害を抱えている人々のコミュ
ニティ活動(生計手段を含む)への参加促進に主眼を置いたプ
モンゴルでは、GFDRRプログラムは進められておらず、国内の
ロポーザル。
DRMの取り組み(JICA支援を含む)の拡大に切実に必要とされてい
•
る支援をPHRDグラントで提供します。
部の歩道/公共交通施設の計画・実施の主流に盛り込むこと
を通じて、職員の能力、不十分な政策、アクセス性の欠如の問
PHRDグラントによるソロモン諸島、バヌアツ、キリバスに対す
題に取り組むプロポーザル。
る新規グラント、パプアニューギニアの運輸部門に対する新規支
•
援は、大洋州地域におけるDRMプログラムを大きく前進させるで
ギニア:学校や教員の能力開発を通じて職員の能力の低さや
サービス提供不足の問題に対処し、軽度障害児を通常の幼稚
しょう。
園や小学校に通えるようにすることに取り組むプロポーザル。
Pillar III:障害と開発
Pillar IV:その他
日本政府に承認申請が提出されたD&Dグラント・プロポーザル
Pillar IVは、日本政府と世銀の間で合意された新たな問題に対処
は、多くの障壁や不平等に取り組むための対策の試行を目的とし
するための支援を提供するために設けられました。これまでに、
たものです。これまでに5件のプロポーザル(1330万ドル)が日本
本Pillarで承認されたのは2010年度の太平洋諸国大災害リスク評
政府の承認を受けています。
•
ペルー:リマ市の機能強化、ならびに障害者のニーズを都市
価融資イニシアティブ研究(132万ドル)の1件のみで、このグラン
ルーマニア:政策立案に当たり、障害者評価および障害者情
トは2011年12月に終了しました。
報の精度向上を通じてデータの問題に対処することを目的と
したプロポーザル。
図6:PHRD技術協力Pillar III̶受益国
(グラント額)
ルーマニア
(170万ドル)
モロッコ
(290万ドル)
ギニア
(290万ドル)
インド
(280万ドル)
ペルー
(250万ドル)
12
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
PHRD 技術協力プログラム̶傾向と主な実績
–
本研究は、太平洋島嶼国(PICs)が災害後支援と事前の予算計画を
過去の熱帯低気圧および地震のデータベース(ハザード・データ
組み合わせた費用対効果の高いリスク・ファイナンシング戦略構
ベース)。過去の地震の記録として、現在、1768年―2009年に
築を目的としていました。このグラントは2011年12月に終了し
域内で発生したマグニチュード5以上の地震約11万5000件、サ
イクロンの記録は1948年―2008年の2,422件が含まれていま
ました。主な成果は以下の通りです。
•
す。
太平洋災害リスク情報システム(PacRIS)を開発し、同システ
–
ムに含まれる情報を使用して以下の通り実践的な適用を行な
15か国の少なくとも1か国に影響した約450件の事象による「イ
いました。これまでに開発された以下の応用策により、太平
ンパクト」のデータベースです。大洋州地域に関して存在するも
洋島嶼国に暮らす1000万人が毎年直面するリスクの軽減に大
のの中で最も完全なこのデータベースは、平均すると太平洋島
きく役立つでしょう。
–
嶼国全体で10年間当たり10億ドル台の損失を発生させており、
太 平 洋 島 嶼 国15か
1980年代および1990年代にはそれぞれ40億ドルまで増加して
国のための最先端の
大災害リスク・モデ
ル が、地 震、津 波、
います。
図7:地震ハザードマップ
̶パプア・ニューギニア
–
災害の危険にさらされている資産のデータベース(エクスポー
ジャ・データベース)。建物・インフラ、農業、人口についてのコ
熱帯低気圧といった
ンポーネントが含まれています。建物・インフラのデータセット
自然災害が経済や財
では、45万棟以上の建造物の占有面積(輪郭図)
が高解像度衛星
政にもたらす影響を
画像からデジタル化されています。このうち約8万棟について実
評価するために開発
地調査、写真撮影、分類が行われました。さらに、農村部の建造
されました。
–
累積損失のデータベース。1831年―2009年に太平洋島嶼国
物を中心とした300万枚の画像の位置情報入力と分類がリモート
国別災害リスク・プ
センシング技術を使用して行われました。
ロファイルが、太平
洋 島 嶼 国15か 国 す
図8:実地調査された資産データ̶8万棟
べてについて作成さ
れました。 これはリ
スク・モデリング・プ
ロセスを通じて収集・
作成されたデータを統合したもので、ハザード、危険にさらされ
ている資産、潜在的な損失を示した地図を含んでおり、災害リス
ク管理対策の優先順位付けに使用することができます。この分
析は、自然災害リスクの対応費用向けの融資方法の構築に使わ
れます。
–
災害・気候変動リスク融資・保険の適用は、自然災害に対するマ
クロ経済計画の改善、ならびに国家の災害リスク管理および気
候変動適応のアジェンダの一環としての国家災害リスク資金調
さらに、大洋州地域の災害エクスポージャに関するこれまでで最
達戦略の設計・実施で太平洋島嶼国を支援することを目的とし
も総合的なデータセットであるこのデータベースには、主要な
ています。
換金作物、地被、地形地図、人口に関する情報も加えられていま
• PacRISには、過去の地震と熱帯低気圧に関する最も包括的な
す。太平洋島嶼国15か国における全資産の再取得原価は合計で約
1130億ドルと推定されています。
記録、位置情報付きの固定資産データベース、これまでに遂行
された確率的リスク解析およびリスク・マッピングが組込ま
れています。PacRISには、住宅用建物、基幹インフラ(道路、橋、
発電所など)、植被、作物マップ、土壌と地形、水深測量(海深)
などを記したデジタル・マップが含まれます。こうした情報は、
様々な実践的用途に活用されています。
13
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
2
第3章:
人材育成
キャパシティ・ビルディングおよびパートナーシップ・プログラム
3.1 はじめに
ハイライト
• 1987年の設立以来、JJ/WBGSPは世銀加盟国にある有名大学
日本政府は、PHRD資金を通じて、
(a)日本/世界銀行共同大学院
で開発関係の分野を専攻する学生に4,883件の奨学金を提供
奨学金制度(JJ/WBGSP)、
(b)日本/インドネシア大統領奨学金
してきました。この内1,380件の奨学金がパートナーシップ・
(JIPS)プログラム、
(c)日本/世界銀行パートナーシップ・プログ
プログラムの下で様々なパートナー機関での研究のために提
ラムという3件の人材育成・キャパシティ・ビルディング・プロ
供されました。
グラムを支援しています。
• 2011年度、日本政府はJJ/WBSGPに2050万ドルを提供しま
した。これにより同プログラムは、通常プログラムの下で218
3.2 日本/世界銀行共同大学院奨学金制度
人、パートナーシップ・プログラムの下で新たに74人の奨学
生に対し、奨学金を提供しました。
日本/世界銀行共同大学院奨学金制度(JJ/WBGSP)の主たる目的
は、世銀借入国で専門職についている中堅の人材に対して大学院
3.3 日本/インドネシア大統領奨学金プログラム
教育を受ける機会を提供することにより、途上国の経済・社会開
発の分野で極めて有能な専門家集団を構築することにあります。
日本/インドネシア大統領奨学金プログラムは、インドネシア国
プログラムには、修士号取得に向けて、通常プログラムとパート
家教育省の大統領奨学生プログラムを支援するため、2008年度
ナーシップ・プログラムの2つがあります。
に導入されました。目的は、大学職員の資質と経験の向上、高等
教育における職に従事する新たな人材の発掘、国内外の学術パー
現在、世界の大学に15のパートナーシップ・プログラムがあり、
トナーシップ構築などです。JIPSは日本政府から1000万ドルの
奨学生には、経済政策管理、インフラ管理、税制など開発の主要分
グラントを受けてい
野で専門教育を受ける機会を提供して
ま す。 現 在、JIPSの
います。JJ/WBGSPはまた、パートナー
奨学生は41人です。
シップ・プログラムを通じ、経済政策管
2012年 度 に はJIPS
理の修士課程を支援することで、アフリ
プログラムの下で最
カの7つの大学の組織・制度の機能向上
初の卒業生を輩出す
に貢献しています。アウトリーチ活動
る予定です。
である奨学生・元奨学生の開発分野の
能力向上ネットワークでは、JJ/WBGSP
の奨学生と元奨学生の間での知識共有
と情報交換の促進を目的としたいくつ
かのイベントが2011年度に開催されま
した。
15
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
3
人材育成
3.4 日本/世界銀行パートナーシップ・プログラム
囲み4:2011年国際開発賞
このグラントの重点分野は、遠隔教育センター(DLC)から、開発
最も革新的な開発プロジェクトに対する日本賞(MIDP)で最優
分野における独創的かつ革新的な貢献をした取組みへの表彰、日
秀賞を受賞したのは、ルワンダの学校に低コストのEラーニング
本における広報活動、輸出促進技術革新に至るまで、多岐にわ
センターを設置するカマラ・ルワンダ
(ルワンダ)の社会事業プ
たっています。本プログラム設立以来の日本政府による承認額は
ロジェクトでした。インドのラージャスタン州で児童労働をなく
5770万ドルに上り、この内86%が実行されています。現在、本パー
すための「子どもにやさしい村」が同部門の第2位、農村コミュニ
トナーシップ・グラントが支援するグラント7件が実施されており
ティへの住民参加を通じてよいガバナンスの文化を形成するプ
(承認待ちのプロポーザル2件を含む)、この内3件を世界銀行東京
ロジェクトでインドの農村調査開発研究所が第3位を、それぞれ
事務所が管理しています。
受賞しました。
開発分野の目覚しい研究に対する日
本賞には、
(i)開発のための外国資本
流入と資金調達、
(ii)国内資源の動
員と金融セクター開発:危機後の世
界におけるMDGs検証の新たな視点、
(iii)開発金融の革新的な財源、とい
う3つのテーマがあります。
最優秀賞は、サント・トーマス大学
(フィリピン)の文化教育社会問題に
関する研究クラスターのジェレミア・
オピニアーノとアルビン・アングが
受賞しました。これは、農村部の出
身地への送金投資環境の分析に主眼
を置いた研究で、農村コミュニティに
変革をもたらすと期待されています。
第2位はブルガリアの国内・世界経済
大学のペーター・スタンコフ氏による
2011年度は、本プログラムで以下の3件のグラントが承認されま
「金融危機と金融発展逆転」に関する研究プロポーザル、第3位
した。
•
はインド対外貿易研究所のビベック・レイ・チャウドリー氏による
世銀・日本民間セクター・パートナーシップ強化基金−第5
「外国資本の流入がマイクロファイナンス機関の業績に及ぼす
期(800万円)
•
影響」の研究プロポーザルが、それぞれ受賞しました。
国際開発賞(19万ドル、ならびにグローバル・ディベロップメ
ント・ネットワークとJSDFとの協力のためのJSDFからの追
加拠出46万ドル)
•
責任ある農業投資(75万3000ドル)
16
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
第4章:
PHRDが支援するその他のプログラム
4.1 はじめに
2011年度、日本政府は48件(850万ドル)のグラント申請を承認し
ました。その内訳は、ETCが31人(350万ドル)と有期雇用が17人
PHRDは、日本PHRDスタッフ・長期コンサルタント(ETC)プログラ
(500万ドル)です。2000年度以降、合計225のポジションが同プ
ムなど、世銀が運営管理する様々なプログラムや、日本がPHRD基金
ログラムの支援を受け、この内56%がETC、38%が有期雇用、6%
を通じて資金援助するその他の信託基金も支援しています。
が無期雇用に対するものでした。
4.2 日本PHRDスタッフ・ETCプログラム
図9の通り、2007年度以降に年間の採用総数が増加していますが、
これはETCの増加がその主要因です。
日本PHRDスタッフ・ETCプログラムの目的は、
職員あるいは長期コンサルタントとして世銀で
図9:承認されたスタッフ・グラント件数(2000-2011年度)
働く日本人職員の増加の促進です。本プログラ
ムは、
(a)12か月間を当初の任期とし、2年目の
50
延長が可能なETC(
、b)最初の2年間までを当初
45
の任期とし、一定の条件下で3年目の延長が可
40
能な有期雇用職員、
(c)2年間を最長とする通常
35
グラント件数
の試用期間付きの無期雇用、という3つのカテ
ゴリーの採用を支援します。
30
25
20
ETCプログラムは2005年度に導入され、現在は
15
ETCでの採用が2005年以降に本プログラムで
10
支援された採用全体の3分の2以上を占めてい
5
ます。ETCのカテゴリーがこのプログラムの目
0
標を達成する方法として魅力的であるのは、コ
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
n 無期雇用 n 有期雇用 n
ETC
年度
ンサルタントに適任の候補者を提供し、そうし
たコンサルタントが有期雇用あるいは無期雇用
職員として採用された場合は世銀から給与を受
4.3 日本ジュニア・プロフェッショナル・
オフィサー(JPO)プログラム
け取ることになるためです。
日本は2009年3月にJPOプログラムに参加しました。信託基金の
表1:スタッフ・ETCグラントの承認(2009-2011年度)
2011年度
カテゴリー
件数
2010年度
合理化と統合を図るべく、JPOプログラムと外部資金による職員
2009年度
採用プログラムが、ドナー資金による職員採用プログラム
(DFSP)
100万ドル 件数 100万ドル 件数 100万ドル
スタッフ
17
5.5
13
5.2
8
2.0
ETC
31
3.0
18
1.6
14
1.4
合計
48
8.5
31
6.9
22
3.4
の下に正式に統合されました。日本は2011年6月21日にDFSPプ
ログラムに参加しました。
これまでに合計7人の日本人JPOが採用されています。2012年度
18
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
PHRD が支援するその他のプログラム
第3四半期には、本プログラムの目標に則り、初年度に採用された
ス機関が協力してマイクロファイナンスの主流化を図るコンソー
JPOが世銀でのポジションを獲得しました。
シアムで、多国間金融機関
(MFIs)
、ドナー機関、マイクロファイナ
ンス業界のステークホルダー 3者のニーズを満たすことで、マイク
2011年度の採用サイクルで、日本政府はDFSPで10件の支援を承
ロファイナンス界にサービスを提供しています。CGAPは、マイク
認し、その内6件がJPO、4件が専門職員のポジションでした。6件
ロファイナンスの取り組みを支援する政策の策定、ドナー間でのイ
のJPOポジションの内5件が最終決定し、入行プロセスが進んでい
ニシアティブ調整、MFIsの貧困層に対する広範かつより踏み込ん
ます。2012年度末までには、これらのポジションの採用が完了す
だ働きかけのための資金動員により、ベスト・プラクティスの学習
る見込みです。
と発信を通じ、こうしたステークホルダーを支援しています。詳細
は以下のサイトをご覧ください。http://www.cgap.org.
4.4 その他のPHRDプログラム
世銀のDFSPは、ドナーからの支援を受けたEFSPおよびJPOと
いう2つの独立したプログラムを統合して出来た新制度です。そ
2011年度は、下記のプログラムに合計約2420万ドルが移転され
の目的は、世銀が本部や各国事務所での中堅の人材やJPOの採用
ました。
を通じて職員の多様性を達成し、キャパシティ・ビルディングを
拡大することです。本プログラムにより、世銀の各ユニットは希
PHRD資金の内1000万ドルは、CEPFに移転されました。CEPFは、
世界で生物学的に最も重要でありながら脅威にさらされている地
少な人的資源をDFSPからの資金提供により必要技能を備えた人
域の保全を支援するために5年間で1億5000万ドル以上の提供を
材で補完する手段となると共に、ドナーにとっても世銀の開発ア
目指しており、コンサベーション・インターナショナル、地球環
ジェンダをより戦略的に推進することが可能になります。2011年
境ファシリティ(GEF)、マッカーサー財団、日本政府、世銀による
度には、PHRD基金から250万ドルがJPOプロラムに割り当てら
れました。
共同イニシアティブです。こうした主要機関は、脅威にさらされ
ている生態系をより効果的に保護するためには、戦略的な提携と
活動の重複回避が極めて重要であることを認識し、本基金に対し
東京開発ラーニングセンター(TDLC)は、グローバル・ディベロッ
てそれぞれ2500万ドルの資金提供を約束しています。
プメント・ネットワーク(GDLN)を通じた域内外の知識共有を一
防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)
はPHRD基金から600万
た。日本政府と世銀による共同イニシアティブであり、知識共有
層促進する新たなイニシアティブとして2004年に設立されまし
や協力のための地域の中心として、また東アジア・大洋州地域内
ドルを受領しました。2006年に設立されたGFDRRは、自然災害に
各国のGDLNセンターに対する技術支援拠点としての役割を果た
対する脆弱性削減と気候変動への適応で途上国を支援する39か国
しています。TDLCを介して、種々の開発問題に関する域内や日本
と8つの国際機関から成るパートナーシップです。災害リスク管
理および気候変動への適応を国別開発戦略の主流に盛り込むこと
国内での学習、知識共有、ベスト・プラクティス伝達の革新的な
を使命としています
(http://esddev.worldbank.org/gfdrr.org/
方法が活用されます。日本はTDLC第2フェーズに対して5年間で
1500万ドルを承認しており、2011年度には第1トランシェとし
node/48参照)。GFDRRは次の3つの開発目標を掲げています。
•
て300万ドルがPHRD基金から移転されました。
災害リスクの高い世銀パートナー国における兵庫行動枠組
(HFA、2005-2015年)の実施の推進
•
表2:2011年度のその他の
PHRDプログラムへの配分額
国家の災害リスク管理能力を強化し、災害の予防と緩和への
投資の拡大
•
プログラム名
低所得国における持続可能な災害復旧に資金を提供する適切
CEPF
GFDRR
TDLC
JPO
なメカニズムの確立
貧困層支援協議グループ
(CGAP)
は、貧困層を対象とする持続可能
なマイクロファイナンス組織の質向上および増加を目指し、世界銀
行に設置されました。CGAPは、ドナー機関とマイクロファイナン
19
IAVI仙台ベクトル
CGAP
MIGA
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
配分額(単位:100万ドル)
$
$
$
$
$
$
$
10.0
6.0
3.0
2.5
2.0
0.3
0.406
4
第5章:
PHRD活動のモニタリングと評価
5.1 PHRD活動の進捗状況と成果のモニタリング
トナーシップ信託基金業務局が適宜報告書を作成し、日本政府に
提出します。報告書はすべて、インターネット上に構築された報
譲許性資金・グローバル・パートナーシップ総局は、信託基金に
告システムであるドナー・センターを通じて日本政府に提出され
よる支援を受けた活動に関し、結果に焦点を当てた報告を重視し
ます。ドナー・センターからは、すべてのドナーが信託基金に関
ています。PHRDグラントの報告は、財務面、実施状況、終了時ま
する情報にアクセスできるようになっています。
でを網羅しています。PHRDプログラムの成果は、プ
ログラム全体の評価により検証されますが、成果の
判定には時間がかかり、現在の結果が過去の特定の
活動に起因するかどうかを判断する方法の精度上の
問題が生じる場合もあります。これまでに2回の評価
が実施され、次回の外部評価は2013年度に予定され
ています。
PHRDプログラムの活動全体に関する年次報告書お
よびJJ/WBGSPの年次報告書は、財務面のみならず、
グラント活動の進捗状況と目標の達成度についても
触れています。PHRD年次報告書は英語版と日本語
版があり公開資料です。
PHRDグラントの実施状況についての定期的な内部報告は主に
監査済みの財務諸表は、外部の監査法人により年度末の半年後に
グラント報告・モニタリング(GRM)システムで行なわれます。
作成され日本政府に提出されます。また、信託基金会計部門が当
PHRDのプログラム・マネージャが年に一度GRM報告書の要件を
該年度の未監査財務諸表およびPHRD基金の主要カテゴリーのこ
発表します。最終的な包括的報告書は、グラント実施の完了後に
れまでの出資を網羅した詳細なPHRDプログラム四半期財務報告
GRMシステムでタスクチーム・リーダーが作成します。100万ド
書を作成し、やはり日本政府に提出します。
ルを超えるグラントの場合は、実施完了メモランダム(ICM)報告
書が作成されます。GRM報告書もICM報告書も世銀の内部文書で
JJ/WBGSP年次報告書に加え、WBIは隔年で元奨学生の5 ∼ 6年
すが、ドナーに対する報告の基礎資料として使われています。こ
後の追跡調査を行い、プログラムがその後どのような影響を与え
の他、大規模なプログラムや大型のグラントの場合は、重大な成
たかを分析し、報告書を公開しています。第7回目となった前回
果や実施段階で得られた教訓を盛り込んだ完了報告書が作成され
の追跡調査は2007年5月に実施されました。このときの調査は、
ます。
1987-2007年の間に奨学金を受けた3,554人を対象とし、その後
の学位取得状況、出身国への帰国状況、職業、専門性の進歩状況を
2007年度からPHRDは前年度に終了したPHRD技術協力グラン
具体的に調べ、またJJ/WBGSPを通じて得られた経験をどう捉え
トを毎年検証しています。こうした検証により、グラントの実施
ているかを元奨学生に調査したものです。第7回JJ/WBGSP追跡
から得たフィードバックを提供してプログラムの改善につなげ、
調査の結果と提言は2007年度年次報告書に掲載されています。
終了したグラントの結果報告が幅広く行なわれるようにします。
PHRD技術協力グラントの報告書はPHRDのウェブサイトで公開
されています。
日本PHRDスタッフ・ETCプログラムについてはグローバル・パー
21
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
第6章:
PHRDおよびPHRDの資金による
プログラムについての情報
6.1 PHRDについての情報
PHRDとそのプログラムについては、ウェブサイト上
で詳細をご覧いただけます。ウェブサイトは英語で
すが、一部は日本語など他の言語でも表示されていま
す。
PHRDのウェブサイト:
http://www.worldbank.org/phrd(英語)
ここでは、PHRDの技術協力プログラム、日本/世界
銀行パートナーシップ・プログラム、日本PHRDスタッ
フ・ETCプログラムの詳細が紹介されているほか、年
次報告書を英語版と日本語版で掲載しています。ま
6.2 PHRDの資金によるプログラム
た、PHRD技術協力プログラムの評価報告書もご覧いただけます。
2011年度にPHRDの資金を受けたその他のプログラムは以下の
世界銀行東京事務所のウェブサイトでも、PHRDに関する情報を
通りです。
ご覧いただけます。
クリティカル・エコシステム・パートナーシップ基金(CEPF):
www.worldbank.org/japan/about(英語版)
http://www.cepf.net/Pages/default.aspx
www.worldbank.org/japan/about-j(日本語版)
貧困層支援協議グループ(CGAP):
世界銀行研究所:www.worldbank.org/wbi
http://www.cgap.org
日本/世界銀行共同大学院奨学金制度(JJ/WBGSP):
www.worldbank.org/wbi/scholarships
日本ジュニア・プロフェッショナル・プログラム(JPO):
(JJ/WBGSPの年次報告書と追跡調査報告書を含む)
http://go.worldbank.org/J7YPILJGI0
PHRDパートナーシップ・プログラムが支援する東京開発ラーニ
ングセンターは、日本語と英語でウェブサイトを運営しています:
www.jointokyo.org
23
日本開発政策・人材育成基金 年次報告
2011
日本政府
世界銀行
譲許性資金・グローバル・パートナーシップ総局
PHRDプログラム運営担当ユニット
世界銀行グループ
Eメール:[email protected]
1818 H Street, N.W.
Washington, D.C. 20433
USA
http://www.worldbank.org/cfp
世界銀行
1818 H Street, N.W.
Washington, D.C. 20433
http://www.worldbank.org/phrd
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