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- 1 - 歴史的建築物の保存及び活用に係る技術的基準の普及啓発業務
歴史的建築物の保存及び活用に係る技術的基準の普及啓発業務委託仕様書 1 総則 ⑴ 適用 本仕様書は,歴史的建築物の保存及び活用に係る技術的基準の普及啓発業務(以下「本業 務」という。 )に適用する。 ⑵ 本業務の背景及び目的 建築基準法(以下「法」という。 )の施行日(昭和25年11月23日)前に建築された歴 史的な建築物が年々消失し,京都らしい風情ある景観や文化が次第に失われているため,そ の保存と活用は,京都市において喫緊の課題である。 特に,京都の町並み景観を特色付けている歴史的な木造建築物である京町家は,市内に約 4万8千軒存在すると推測され,ストック重視型の時代へ転換したと言われる今日,建築物 の安心,安全を確保したうえで活用していく方策が求められている。 その一方で,こうした歴史的な建築物は,法の規定に適合していない部分も多く,大規模 の修繕・模様替,増築や用途変更等を行う際に法の規定に適合することが求められ,歴史的 な意匠や形態等を保存しながら使い続けることが困難となっている。 本市では,景観的,文化的に重要な歴史的な木造建築物に対し,法の適用を除外し本市独 自の安全性等を確保する仕組みを適用することで,現行法では困難であった改修や機能更新 を可能とする「京都市伝統的な木造建築物の保存及び活用に関する条例」を平成24年4月 から施行した。また,平成25年11月には,対象建築物を木造以外の建築物にも拡大する 条例改正を行い,条例名称も「京都市歴史的建築物の保存及び活用に関する条例」 (以下「条 例」という。 )に改正し,歴史的建築物の保存及び活用を推進している。 さらに,本市では,歴史的建築物の保存活用を促進するため,標準的な規模の京町家にお いて条例を適用する際,必要な安全性等を確保することにより増築等を可能とするための具 体的な技術的基準(地震に対する安全性,火災に対する安全性及び敷地の周辺の環境保全に 関する基準。以下「技術的基準」という。)の検討を行っている。(別紙に概要を示す。) 京町家の改修業務に携わる設計者等に技術的基準を周知し,京都市歴史的建築物の保存及 び活用に関する条例の普及啓発を行うことを本業務の目的とする。 ⑶ 本業務の期間 委託契約日の翌日から平成29年3月15日(水)まで 2 用語の定義 ⑴ 本仕様書において使用する用語の定義は,⑵に定めるもののほか,法及び条例において使 用する用語のとおりとする。 ⑵ 本仕様書において「京町家」とは,昭和25年以前に伝統軸組構法により建築された木造 家屋をいう。 -1- 3 業務の内容 ⑴ 設計者向け説明会の準備 普及啓発のための具体的手法の提案として以下のア及びイの業務を行うこと。 ア 技術的基準のモデル化の提案(成果物リスト1にその成果物を示す。 ) 設計者が技術的基準を視覚的に理解しやすくするための設計事例を3事例作成すること。 設計事例は,延べ面積100㎡以上200㎡以内の京町家を増築又は用途変更することを 想定し,本市が貸与する技術的基準(貸与資料1)に適合するものとすること。この場合 において,設計事例は,典型的なものとするとともに,技術的基準を深く理解し,火災に 対する安全性,地震に対する安全性等に関し,創意工夫がされた計画とすること。 なお,設計事例を作成するにあたっては,計画図の京町家が実在の建築物か否かについ ては問わないが,本市が普及啓発のために公開することを前提に作成すること。 イ 技術的基準のコスト面からの分析(成果物リスト2にその成果物を示す。) (ア) 設計料の見積徴集及び分析 条例に基づき保存活用計画を作成する際の設計料を把握するために,aからcまでの 業務を行うこと。 a 京町家の改修設計を行う設計者を3者選定すること。 b 本市が貸与する設計図書(貸与資料2)の作成に係る設計料の見積をaで選定した 設計者3者から徴集すること。 c (イ) 徴集した設計料の見積を基に分析(作業別のコスト分析等)を行うこと。 工事費の見積徴集及び分析 設計者が技術的基準に適合させるために必要な工事費の目安を掴むために,aからc までの業務を行うこと。 a 京町家の改修工事を行う工務店等を3者選定すること。 b アの設計事例及び本市が貸与する設計図書(貸与資料2)について,それぞれ3者 からaで選定した工務店等3者から工事費の見積を徴集すること。 c 徴集した工事費の見積を基に分析(改修内容別のコスト分析等)を行うこと。 ⑵ 設計者向け説明会の開催(成果物リスト3にその成果物を示す。 ) ア 概要 (ア) 目的 設計者を対象に,条例,技術的基準及び設計事例等の説明を実施する。 (イ) 開催時期 原則として平成29年3月上旬とする。詳細については本市と協議のうえ,決定する。 (ウ) 場所 京都市景観・まちづくりセンターワークショップルームを基本とし,別の場所とする 場合は,本市と協議のうえ,定員に応じた適切な場所を設定する。 (エ) 時間 説明会の時間は2時間程度とする。 (オ) 対象者 原則として,京町家の改修業務等に携わる設計者等とする。 (カ) 参加料 -2- 無料とする。 (キ) 定員 90名程度を想定する。 イ 業務内容 (ア) 上記説明会を企画すること (イ) 会場手配,日程調整,必要機材の手配,資料の用意,説明会の運営に関する打合せ等 を行う。なお,条例,技術的基準及び設計事例等の説明については原則として,本市が 行うこととする。 (ウ) 参加者を募集するため,案内の作成,印刷及び配布並びに関係団体等への周知を行う。 (エ) 説明会当日の会場設営,参加者の案内,資料の配布,説明会の記録等の運営全般を行 う。 (オ) 参加者に対してアンケートを行う。 (カ) 摘録,実施状況,配布資料,アンケート集計結果等を取りまとめた報告書を作成する。 ⑶ ⑴及び⑵の内容を集約した本業務の報告書作成(成果物リスト4にその成果物を示す。 ) ⑷ その他本市が指示すること 4 業務委託期間 委託契約日の翌日から平成29年3月15日(水)までとする。 5 前払金 前金払は行わない。 6 管理技術者等の資格要件 受託者は,本業務に関する統括及び管理を行う管理技術者,管理技術者の下で担当業務を行 う担当技術者を定め,管理技術者・担当技術者通知書を本市に提出すること。 なお,業務履行期間中において,管理技術者等が業務を担当するに当たり,著しく不適当で あると本市がみなした場合,受託者は,すみやかに適正な措置を講じるものとする。 -3- 7 成果物の提出等 本市に納品する成果物は,以下のとおりとする。また,紙資料については1部提出し,電子 データはCD-ROMに収録して提出するものとする。 なお,成果物の著作権は本市に帰属するものとし,業務完了後,受託者は本市の承諾を得ず に,本業務によって得られた成果物をはじめとする各種資料を保持しないこととする。 ⑴ 成果物 成果物リスト1 資料名称 平面図,断面図,立面図【現況図】 事例数 3 京町家型標準設計法による耐震性能評価【現況図】 ※ 貸与する京町家型標準設計法の計算ツールを使用し,作成すること。 3 平面図,断面図,立面図【改修後】 ※ 技術的基準に基づき行う,防火改修及び耐震改修の内容を引出し線や別表等で 3 図面内に記載すること。 京町家型標準設計法による耐震性能評価【改修後】 ※ 貸与する京町家型標準設計法の計算ツールを使用し,作成すること。 その他本市の指示するもの 3 - 成果物リスト2 資料名称 事例数 設計料の見積(1事例につき3者) 1 設計料の見積の分析書 - 工事費の見積(1事例につき3者) 4 工事費の見積の分析書 - その他本市の指示するもの - 成果物リスト3 資料名称 説明会の業務報告書 その他本市の指示するもの 成果物リスト4 資料名称 業務報告書 その他本市の指示するもの ※ 上記報告書の原稿は,両開きのパイプ式ファイルの背表紙及び表表紙に委託名称,委託 年度,発注者及び受託者を記入したものに綴じ込み,提出することとする。 ※ 上記ファイルには成果物ごとにインデックス付の仕切り紙を綴じ込む等,分かりやすく 整理すること。 -4- ※ 報告書等の作成に利用した各種資料については,電子データにて提出すること。 ※ 電子データは Microsoft Word,Microsoft Excel,Microsoft Power Point,Adobe Acrobat を基本とすること。その他アプリケーションを用いる場合は,本市と協議を行うこと。 ※ 電子データは,ウイルスチェックを行いウイルスが存在していないことを確認したうえ で提出すること。 ⑵ 納品期限 平成29年3月15日(水) ⑶ 納品場所 京都市都市計画局建築指導部建築指導課 8 業務の進め方 ⑴ 本業務は,本仕様書によるほか,関係法令等に準拠して実施すること。 ⑵ 受託者は,業務の実施に当たり,事前に管理技術者等の届を提出し,本市担当職員の承諾 を受けるものとする。 ⑶ 受託者は,業務着手に先立ち,業務工程表を本市担当職員へ提出すること。 ⑷ 業務の実施に当たっては,逐次,本市と協議を行い,本市担当職員の指示により業務を進 め,業務の結果については速やかに報告を行うこと。 ⑸ 業務の内容について機密を守り,本市の許可なく第三者に公表,転用及び貸与しないこと。 (業務完了後も含む。 ) ⑹ 業務上,受託者の不注意や不備により生じたすべての費用は,受託者の負担とする。 ⑺ 受託者は,業務実施に当たり,関係法規を遵守し,常に適切な管理を行うこと。 ⑻ 受託者は,本市担当職員と打合せを行った内容について,協議録等を作成し,打ち合わせ 後1週間以内にこれを提出すること。協議録の内容については,協議の都度,本市担当職員 の確認を受けること。 ⑼ 受託者は,本業務実施中に生じた諸事故に関して一切の責任を負い,本市に発生原因,経 過,被害状況等を速やかに報告し,本市担当職員の指示に従うこと。また,本業務の実施に 関連して発生した損害(第三者に及ぼした損害を含む。)のために生じた経費は,受託者が負 担すること。 ⑽ この仕様書の定めにない事項及びこの仕様書に定める事項について疑義が生じた場合,受 託者は速やかに本市と協議を行うこと。 9 疑義 本仕様書に疑義が生じた場合及び定めのない事項については,本市と協議のうえ処理するも のとする。 -5- 10 貸与資料等 貸与資料一覧 貸与資料1 歴史的建築物の保存及び活用の対象拡大に向けた具体的手法の検討 報告書【平成26年 度,平成27年度検討結果】 歴史的建築物の保存及び活用の対象拡大に向けた具体的手法の検討 報告書(別冊) 京町家等の伝統的構法の木造建築物の安全基準(案) 【平成26年度,平成27年度検討結果】 技術的基準(建築基準法第3条第1項第3号の規定に基づく包括同意基準(案) ) 京町家型標準設計法の計算ツール 技術的基準を用いたモデルケース 貸与資料2 平面図【現況図,改修後】 求積表(敷地面積,建築面積,床面積) 【現況図,改修後】 断面図,立面図【現況図,改修後】 構造伏図【改修後】 X通軸組図【改修後】 Y通軸組図【改修後】 京町家型標準設計法による耐震性能評価【改修後】 重量算定表【改修後】 重量算定平面求積図【改修後】 重量算定立面求積図【改修後】 耐力要素拾い用平面図【改修後】 ⑴ 受託者は,貸与された資料を破損・紛失しないよう十分注意して取り扱わなければならな い。 ⑵ 受託者は,貸与された資料を本市の許可なく複製してはならず,また,本業務以外に使用 してはならない。 ⑶ 受託者は,貸与された資料を本業務完了後,速やかに本市に返却しなければならない。ま た,写しを取っている場合は,写しも同様とする。 11 その他 受託者は,業務完了後,成果物に不備があった場合,本市の指示により受託者の負担におい て直ちに再調査等を行い,その誤りを訂正するものとする。 -6- (委託仕様書別紙) 技術的基準の検討の概要 歴史的建築物の保存活用を促進するため,標準的な規模の京町家において条例を適用する際, 必要な安全性等を確保することにより増築等を可能とするための具体的な技術的基準(地震に対 する安全性(構造) ,火災に対する安全性(防火)及び敷地の周辺の環境保全(集団規定)の基準) の検討を平成26年度及び平成27年度に実施し,技術的基準を作成した。 1 京町家の地震に対する安全性の検討 ⑴ 平成26年度の検討内容 ア 伝統的構法に適した安全基準の検討 (ア) 構造計算手法の検討 【検討の主な視点】 ・ 設計者にとって使いやすい計算手法 ⇒ 限界耐力計算によらない簡易な計算手法とする。 ・ 必要な耐震性能を確保するとともに,京町家をオリジナルに近いかたちで保存活用 できるよう,伝統的構法の木造建築物の特長を活かせる計算手法 ⇒ 限界耐力計算のエッセンスを取り込んだ計算手法とする。 以上から,伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験検討委員会作成の標準設計法案 をベースとし,京都市の地域特性及び京町家の特質を加味して構造計算手法を作成した。 (イ) 京町家改修の補修・補強要領案の作成 部位ごとの補修・補強の手法を作成した。 イ 計算ツールの作成 ア(ア)で作成した構造計算手法について,表計算ソフトによる計算を可能とするツールを 作成した。 ⑵ 平成27年度の検討内容 (ア) 平成26年度に検討した構造計算手法の精査 既往の研究(※1)を踏まえ,⑴ア(ア)で作成した構造計算手法について,以下の点につ いて更に検討し,修正を行った。 ・ 耐力要素の復元力特性について ・ P-Δ効果の考え方について ・ Cbの下限値の設定について ・ ゾーニング手法について ・ 柱脚の拘束条件について (※1)既往の研究として,主に以下を想定した。 ・ 平成22年度から平成24年度にかけて,国土交通省が実施した「伝統的構法の設 計法作成及び性能検証実験」の事業報告書 ・ 過去に実施された伝統的構法に関する実大振動台実験の成果 ・ その他,平成26年度,平成27年度の検討作業の業務委託の受託者によって提供 -7- された資料等 (イ) 計算ツールの精査及び修正 ・ (ア)による構造計算手法の精査の結果を⑴イで作成した計算ツールに反映させた。 2 京町家の火災に対する安全性の検討(平成26年度に実施) ⑴ 平成26年度の検討内容 ア 既存の京町家の改修を前提とした防火改修手法の検討 (ア) 防火改修手法の検討 【検討の主な視点】 今回の安全基準を適用しようとする京町家の大半が準防火地域に属することを考慮 し,以下の視点で検討した。 ・ 軒裏については,木材現しとしつつ,「屋根の葺き替えを伴わない(既存野地板を 活用) 」 , 「面戸欠き設置を要しない(既存面戸板を活用) 」工事とするため,特に,屋 内側からの改修が可能な改修方法を選択できるよう,告示仕様以外に実験等で性能が 確認されている仕様を検討した。 ・ 外壁については,隣地建物が近接して物理的に外壁の屋外側から施工ができないこ とが多いことを考慮し,土塗り真壁造,板張り等の仕様について,告示仕様以外に実 験等で性能が確認されている仕様を検討した。 ・ 開口部については,アルミサッシ等が外観意匠に現れると京町家としての外観的価 値が損なわれること及びアルミサッシ等の防火設備の外側に木製格子を設置しても 防火性能を低下させないこと等を踏まえ,京町家の外観要素と防火設備との組み合わ せ,防火壁の設置による延焼ラインのブロック,消防設備・消防器具との組み合わせ による対応等を検討した。 (イ) 検討に使用した既往の研究資料 ・ 「土壁塗と化粧軒裏の防火マニュアル」京都建築工業協同組合編 ・ 「既存伝統木造住宅の防火改修設計・改修マニュアル」関西木造住文化研究会編 ・ 「既存伝統木造住宅の防火改修設計・改修マニュアル技術解説書」関西木造住文化 研究会編 ・ その他,平成26年度の検討作業の業務委託の受託者によって提供された資料等 3 敷地の周辺の環境保全に関する安全基準の検討(平成27年度に実施) ⑴ 平成27年度の検討内容 ア 集団規定の既存不適格である京町家の保存活用に当たっての安全基準 (ア) 既存不適格建築物の増築等のための基準の検討 【検討の主な視点】 ・ 接道制限(法43条) ,道路内建築制限(法44条),用途規制(法48条),容積 率制限(法52条) ,建ぺい率制限(法53条),高さ制限(法56条) ,高度地区(法 58条)などの,法の集団規定のうち,主に建築物の規模や形態を制限する規定の趣 旨を踏まえ,これらの規定の既存不適格建築物である京町家の増築等を可能とする基 準を検討した。 -8- 以上の視点から,既往の研究(※1)並びに本市及び他都市の上記制限についての許 可基準等を踏まえ,基準案を作成した。 (※1)既往の研究とは,主に以下を想定した。 ・ 国土交通省国土技術政策総合研究所(以下,「国総研」という。)の研究成果資料 等 ・ 市街地環境・集団規定研究関連の所外発表論文リスト(国総研都市研究部都市開 発研究室)に記載の発表論文及び著書(参照:http://www.nilim.go.jp/lab/jeg/list00 2.pdf) ・ 日本建築学会及び日本都市計画学会の集団規定に係る論文 ・ その他,平成27年度の受託者によって提供された資料 -9-