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よく書く児童を育てるノート指導
国語科(小学校全学年) よく書く児童を育てるノート指導 本事例の言語活動のポイント ① 1時間の授業内にノートに書く場を計画的に位置付けておくことで、書くことに慣れ させる。 ② ノートの使い方を定着させることで、学年の発達段階に応じて書く量や内容、まとめ 方などの工夫を促す。 ③ 教師が板書計画を工夫することで、児童に自らのノートづくりの参考にさせる。 目 標 ① 日付、題名、目当てなどを丁寧に書くことができる。 ② 中心発問について自分の考えを書くことができる。(書く活動Ⅰとする) ③ 授業のまとめを書くことができる。(書く活動Ⅱとする) 活動の概要 〇 目標①については、着席と同時に日付、題名、目当てなどを書かせることで学習の構 えをつくる。 〇 目標②については、書く活動Ⅰとして、中心発問、学習の目当てについて自分の考え をまとめ、ノートに書かせる。考えの根拠となった言葉や文が分かるようにさせる。 〇 目標③については、書く活動Ⅱとして、学習の振り返りを授業の終末に3分間程度で ノートに書かせる。書く内容は「学習して分かったこと」「自分と友達の意見を重ねて 考えたこと」など、その授業内容に関連した内容を担任が示す。 活動の実際 1 活動の計画 〇 自分の考えを書く時間を授業時間に2回設ける。 〇 書く活動Ⅰ(自分の考えをつくる)→意見交流(伝え合う)→書く活動Ⅱ(自分の考 えを見つめ直す)という学習活動を設定することで、児童の考えを広げたり深めたりさ せる。 (1) 学習の構えをつくる ・ 日付、題名、目当てなどを、板書と同じように書かせる。 (2) 自分の考えを書かせる(書く活動Ⅰ) ・ 中心発問に対して自分の考えを書かせる。 ・ 自分の立場をはっきりさせて書かせる。 ・ 文中から根拠となる記述を抜き出し、どう捉えたかその理由を書かせる。 - 59 - (3) 本時の学びのまとめを書かせる(書く活動Ⅱ) ① 交流時間の中で書かせる ・ 児童の発達段階によっては、意見交流の間、児童にはノートをとらせずに「聞く・ 話すこと」に集中させる。 <1~4年> 書く時間と意見交流(伝え合う)とを区別する。 <5・6年>・ 自分が重要だと思うことは、その都度ノートに書き加えさせる。 ・ 相手の意見を聞きながら書かせることで、オリジナルノートづく りへ発展させる。 ② 本時の学びのまとめを書かせる(書く活動Ⅱ) ・ 分かったこと、考えたこと、深まった考えなどをまとめさせる。 ・ 他の児童と学んだことについて話し合い、自分の思いを整理させる。 ・ 早く書くことができた児童に発表させる。→他の児童のヒントにする。 ・ 児童が書いた内容を把握し、児童に知らせたい内容を学級全体の場で紹介する。 ・ 低学年は書き方を統一したノートにする。→高学年はオリジナルノートへ発展さ せる。 2 実際の展開 (1) 低学年は「全員が板書と同じように書けるノートづくり」を目指す ~1年生6月・単元「おおきなかぶ」~ ・ 語彙を増やすために、日付は全学年とも旧暦で書かせた(1 年生も「みなづき」と 平仮名で書いている)。 ・ 目当ての字は全学年とも赤で書かせた。 ・ 1年生は、ノートと同じマス目になっている黒板を使用し、「マスいっぱいに丁寧 な字で書くことができる」ことを目標にした(資料1)。 ・ 1学期は、担任が一文字一文字を確認しながらゆっくり書き進め、「ノートにはき ちんとした字を書く」という意識をもたせ、習慣化を図った。 【資料1 板書と同じように書いた1年生のノート】 (2) 中学年は「書く活動Ⅱの充実」を図る ~3年生6月・単元「ゆうすげ村の小さな旅館」~ ・ 板書を確実に視写させ、表は赤ペンや定規を使って書かせるようにした。 - 60 - ・ 「ゆうすげ村の小さな旅館」では、時を表す言葉に着目させて、その時の出来事を ノートにまとめさせることで、あらすじを捉えさせた(書く活動Ⅰ)。 ・ その日の学習の振り返りを『書く活動Ⅱ』として設定した。授業内容に応じて「授 業で分かった登場人物の気持ち」「その日の学習で心に残ったこと」「その日の学習 で頑張ったこと」など、書く内容を担任が指示した(資料2)。 【資料2 表でのまとめや学習後の振り返りを書いた3年生のノート】 (3) 高学年は「オリジナルノートづくり」を目指す ~6年生6月・単元「ばらの谷」、9月・単元「海のいのち」~ ア 目当てに対して自分の考えをまとめる(書く活動Ⅰ) ・ 単元「ばらの谷」 【写真3 心情曲線を用いた6年生のノート】 では、設定、展開、 山場、結末ごとに、 バラに対する主人公 ドラガンの心情の変 化を読み取るために、 村人の気持ちと対比 してまとめさせた。 ・ 『書く活動Ⅰ』で は、本時の目当てに 従って、個々の児童 が読み取ったことを ノートに書かせた。 ・ 資料3のノートに 引かれている心情曲線は、全体交流の後で教師が板書したものを基に、児童が自分 で考えて書いたものである。色ペンで線を引いたり、大切な言葉を書きとめたりし ている。 ・ 他の児童と交流するときは、ノートを見せ合わせ、友達のノートを見て気付いた ことも、自分のノートに書き加えさせた。 ・ 単元「海のいのち」では、場面ごとの人物関係図を作った。6年生もマス目のノ - 61 - ートを使っているので、横書きやマスを無視しての ノートづくりは抵抗があるかと思ったが、どの児童 【資料4 人物関係図でま とめた6年生のノート】 も色や矢印を使い、工夫して自分のノートをつくっ ていた(資料4)。 イ 授業のまとめを書く(書く活動Ⅱ) ・ 単元「海のいのち」では、本時の振り返りとし て、「おとうについて考えたこと」「与吉じいさ の海に対する考え」など、目当てに関わる自分の 考えをまとめさせた(資料5)。 ・ 意見交流の中で、考えを深める参考になった友 達の考えをノートに書き加えることもできるよう になった。 ・ 6年間のノート指導が6年生のオリジナルノー トに表れるように取り組んできた。その試みから 高学年でも教師の朱書きが有効であることが分か った。 考 察 【資料5 オリジナルノートを目指す6年生のノート】 ○ 「ノートはきれいに書 く」という意識をもたせ、 マス目に合わせて書く ことを指導してきた。こ れが土台となり、学年の 発達段階に応じて書く 量や内容、まとめ方など の工夫を積み上げるこ とができた。高学年にな ると、授業内容によって 自分の判断でノートづ くりに取り組むことが できるようになってい った。 ○ 『書く活動Ⅱ』では、書く量や内容はその時間の意見交流の充実度によるところが大き い。意見交流によって考えが深まれば、『書く活動Ⅱ』も充実したものになる。教師とし て常に意見交流の充実を図る工夫は必要である。 ○ 児童のノートづくりの基本は教師の板書である。板書計画をしっかり立てて授業に臨む 必要がある。また、教師の励ましと友達からの称賛は、児童の書くことに対する意欲を高 める。児童のノートを集めて朱書きを入れたり、児童間でノートを見せ合い、それぞれの よさを共有化させたりすることも、書くことに対する意欲を高める有効な手立てである。 - 62 -