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確かな読みの力を育てる指導の在り方

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確かな読みの力を育てる指導の在り方
平成 24 年度(第 56 回)
岩手県教育研究発表会発表資料
国語
確かな読みの力を育てる指導の在り方
~説明的な文章の単元指導における第二次の指導の在り方(書く活動の充実)~
平 成
2 5 年
2 月
1 5 日
西 和 賀 町 教 育 委 員 会
西 和 賀 町 立 沢 内 小 学 校
坂
下
和
泉
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
○内容を理解するために,筆者の説明の工夫を囲んだり,サイドラインを引いたりする「書
く活動」及び自分の考えを明確にするための「書く活動」の実践
第5学年 「天気を予想する」
(中心学習材)・
「アップとルーズで伝える」(補助学習材)
(H24年度2学期の実践)
ア
目 標
読者に,自分の考えをより分かりやすく伝えるための工夫について読み取ることがで
きる。
イ
手立て
書く活動として位置付けたのは,「アップとルーズ」と比較しながら「天気を予想する」での筆
者の工夫と考えられる部分を囲んだり,文章表現にサイドラインを引いたりすることと,形式段落
1の表の説明と表から読み取れることについてサイドラインを引くことである。そして,効果的だ
と思われる資料について,自分の考えをノートに書き,工夫を読み取らせる。
ウ
授業記録
段階
学
4
習 活 動
説明の工夫を読み取る。
・筆者の工夫と考えられる部分
授
業
記 録
T:「天気を予想する」と「アップとルーズ」を比べて,似
ている点はと聞かれたら何と答えますか。
を囲んだり,文章表現にサイド
C:どちらにも写真が使われています。
ラインを引いたりする。
T:文章表現で似ているところはあるかな。似ている文章
表現にちょっと鉛筆で線を引いてみましょう。
C:(二つの学習材を見比べて似ている表現を見付ける)
T:(机間指導しながら,文末表現に着目するように助言する)
T:似ている表現はありましたか。
C:どちらにも,問いの文があります。
T:では,違う点を明らかにしていきましょう。
深
T:「アップとルーズ」にはないけれども,「天気を予想す
る」にあるのは何ですか。
C:表です。
C:図もあります。
C:グラフもあります。
め
T:文章表現上の違いは?今度は囲んでみましょう。
C:(二つの学習材を見比べて,違いを見付ける)
T:
(机間指導しながら,数字に着目したり,ことわざに着目
したりしている児童を確認する)
T:どんな違いがありましたか。
る
C:「天気を予想する」には,数字が多く使われています。
T:その他に確か A 君,おもしろいところに線を引いていま
したね。教えてくれるかな。
14
C:ことわざを使っているところに線を引きました。
T:その通り,「天気を予想する」には,ことわざも使われ
ていましたね。
・形式段落1を例にして,表やグ
T:この説明文には,多くの資料が使われていますね。この
ラフ等の資料を使うわけにつ
ように多くの資料を使った理由は何でしょう。形式段落
いて考える。
1にある表に焦点を当てて考えてみよう。→指名音読
T:では,この表は何を表したものなのかが分かる文に青ペ
ンで線を引きましょう。
T:どこに引いたか教えてください。
C:上の表は,予報の的中率を示したものです。
T:次に,この表から分かることに赤ペンで線を引きます。
T:どこに引いたか教えてください。
C:これを見ると,1970 年代に~が分かります。
T:どの文を説明したくてこの表を使ったんだろう。
C:天気予報は,以前に比べ~になりました。
・効果的だと思われる資料につ
いて,自分の考えを書く。
T:この他の多くの資料の中で,この表のように「この写真
があることで」
「この図があることで」
「このグラフがあ
ることで」こんなよさがあるということを探ってくれな
いかな。ノートに,自分が選んだ資料とその資料のよさ
をメモしておいてください。後で,ペアで交流します。
T:(発問の意味を理解しかねている児童が多かったため,
次のような例を示した。
「例えば,静止気象衛星の写真を
見てください。これを見ると雲がすごく大きく,いろい
ろな国にまたがっています。だから,確かに国際的な協
力が必要なことを実感できます。というように考えま
す。」)
T:さあ,それぞれの資料からどんなよさを探りましたか。
C:気象レーダーやアメダスです。実際に見たことがない
ので,資料にあることによって,イメージがわいてきま
した。
C:グラフです。回数の多さが一目で分かりました。
T:他にもあると思います。交流してみてください。
15
本時に児童が使用した学習シート(下資料)
本時に特別支援児童が使用した学習シート(下資料)
16
エ
考
察
・ 自分の考えを明確にするために,書く活動は有効な手段であると考える。
・ 「アップとルーズ」との類似点と相違点を書く活動によって明確にしたことは,「天気を予想する」
での資料の活用のよさに繋げることができた。
・ 効果的だと思われる資料について,自分の考えを書く活動では,交流によって,それぞれの考えを
さらに深めることができた。
・ 本単元では,特別支援学級の児童も一緒に学習した。その際,自分の考えを明確にするために,特
別支援児童用の学習シートを作成した。書く活動に抵抗をもっていたが,学習シートの活用によ
り一緒に活動することができた。
単位:%
番
号
問
題
事前正答率
事後正答率
問いの文を読み取ることができる。
83
94
2
文章とグラフを関連付けて読み取ることができる。
44
72
3
説明の細部を読み取ることができる。
33
72
4
問いの文の根拠を読み取ることができる。
28
61
オ
1
事前・事後テスト結果
資料と関連させた文章の読み取りについては,授業で取り組んだ成果がうかがえる。しかし,問い
の根拠の読み取りについては十分とは言えないので,機会をとらえながら継続して指導していく必
要がある。
17
研究のまとめ
1
事前・事後テストの分析による研究の有用性の検証
P10・P11 に挙げた1年生の授業実践においては入門期ということを考慮し,事前・事後テスト
を実施しなかったが,他の授業実践においては実施した。
P17 の実践例で示したように,ほぼ,どの設問においても事前正答率より事後正答率の割合が増し,
授業実践によって確かな読みの力が身に付いたことが分かった。
2
国語に関する意識調査
次の①から⑤の項目について,児童がどのように変容したのかを平成 23 年8月と平成 24 年 7 月に
調査した。
(とても好き・尐し好きと答えた割合
調 査
①
項 目
あなたは説明文の学習が好きですか。
%)
H23.8
H24.7
66.7
71.2 ↑
68.6
84
58.8
65.6 ↑
74.5
81.6 ↑
88.2
93.6 ↑
(説明的な文章の学習に対する意欲)
②
授業でサイドラインを引いたり、視写したりすること
↑
(書く活動についての意欲)
③
説明文の学習の後に,自分で文章を書いたり,発表したりすること
(第三次の言語活動についての意欲)
④
今,学習していることに関係のある本を読むこと
(並行読書についての意欲)
⑤
本を読むのが好きですか。
(普段の読書についての意欲)
・平成 23 年度と平成 24 年度を比較すると,どの項目においても平成 24 年度の数値が上回っている。
・書く活動の意欲に関して15ポイントの伸びが見られるのは,授業で書く活動を重ねたことでやり
方が身に付き,児童が進んで取り組むようになったためと思われる。
・普段の読書についての意欲が90%を超えているのは,授業でブックウォークに取り組んだり,教
師がたくさんの本を意図的に紹介したりするなど,読む環境を整えたことによると思われる。
3
授業実践における児童の変容・記録の積み重ね
平成 23 年度・平成 24 年度の 2 年間の研究指定を受け,教師全員が授業実践を行った。授業研究会
で,活発に研究協議を行い,児童の変容をみとり,授業実践を積み重ねることができた。
18
4
岩手県学習定着度状況調査の結果
学年
平成 23 年度の県平均との差
平成 24 年度の県平均との差
伸び
4年
-9%
-1.7%
7.3%
5年
-4.8%
+4.7%
9.5%
・岩手県平均の正答率と比較すると,学年全体の正答率の伸びが結果に表れた。
・説明的な文章における確かな読みの力に関して設問ごとに見ると,平成 24 年度は 4 年生におい
て,
「文と文のつながりをとらえて読むこと」「細かい点に注意して内容を正しく読むこと」
「書
き方の工夫に気を付けて読むこと」が県平均を上回った。5 年生においては,
「段落の要点を要約
すること」
「必要に応じて文章の内容を要約すること」が上回り,さらに「段落の構成を考えな
がら指定された長さの文章を書くこと」
「文章の構成に注意して意見を書くこと」は 100%の正答
率であった。
・これらの結果から,研究の手立てによって確かな読みの力が身に付いてきた成果であると言える。
5
研究の成果と課題
手立て① 単元のゴールを見通した指導計画の工夫
(1)成 果
・単元のゴールを示すことで児童が学習の見通しをもち,興味・関心が持続し,主体的に学習
に取り組むことができるようになった。また,読書活動により積極的に取り組むようになっ
た。
・児童に付けたい力を明確にし,児童の実態を考慮して単元のねらいに応じた言語活動を設定
して,単元のゴールを見通すことで,1単位時間のねらいを焦点化して指導することができ
た。
(2)課 題
・言語活動についての意欲を高め効果的に指導するために,言語活動の特徴を生かした指導計
画をさらに吟味する必要がある。
手立て② 第二次の単位時間における「書く活動」の工夫
(1)成 果
・
「書く活動」をねらいに応じて取り入れたことにより,説明的な文章における確かな読みの
力が身に付いてきた。
・
「書く活動」を具体化し,児童が自分の考えを明確にしたり,他の考えと比較したり,より
深く考えたりすることを意識して指導することにより,本時のねらいに迫ることができるよ
うになった。
(2)課 題
・単元や1単位時間のねらいを達成するためには,何をねらいとして,どの場面で,どのよう
に書かせ,それを授業にどのように生かしていくのかを,さらに明確にして取り組まなけれ
ばならない。
〈主な参考文献〉
小学校学習指導要領
文部科学省
小学校学習指導要領解説 国語編 文部科学省(東洋館出版社)
言語活動の充実に関する指導事例集【小学校版】文部科学省(教育出版)
評価規準の作成,評価方法等の工夫改善のための参考資料【小学校
19
国語】国立教育政策研究所 ほか
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