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Part1 日本企業が考えるべき 海外拠点のストレージ戦略

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Part1 日本企業が考えるべき 海外拠点のストレージ戦略
特集
グローバル時代の
ストレージ戦略
Part1
日本企業が考えるべき
海外拠点のストレージ戦略
新興国の急速な台頭や世界的な経済不況などにより、グローバル化のあり方が大きく様変わりしており、多くの日本企業が海外戦略の
見直しに取り組んでいる。そうした中で、支店や工場を国内に開設する場合と同様、海外に拠点を設ける際も、IT設備は重要な検討項
目となる。現地でのビジネスを円滑に進めつつ、本社からの統制を有効にし、導入/運用コストを最小限に抑えるには、事前の入念な
検討を欠かすことができない。
山口学/文
グローバル化が進む今
海外進出をITが後押し
に基づくグローバルルールを規範としてビ
造業や商社が中心だったが、現在では中
ジネスを行い、グローバルな評価法で企
小規模レベルの企業でも海外に進出する
業の優劣が判定されるようになったといえ
例が増えてきた。つまり、海外展開が当た
グローバリゼーションの時代──。企業
よう。
り前な社会情勢にあるともいえる。
や人、そして情報が、国や地域の境界を越
経済・社会の領域におけるこのような変
海外進出に不可欠なのが、海外拠点に
えて自由に交わるようになり、グローバル
化にともない、海外に進出する企業の規
おける IT環境の整備である。いまや業務
スタンダード
(世界標準)の考えが普及して
模や業種も多様化しつつある。以前の海
の多くは、ITの力を借りずには遂行できな
きている。すなわち、グローバルな価値観
外進出は、いわゆる大企業といわれる製
いからだ。それゆえ、ITコストが大きいと
2
Hitachi Storage Magazine Vol.3
海外拠点のIT設備は、主に3つの形態が挙げられるが、実際には規模やアプリケーションの使い方に応じて、これをモディファイすることになる
海外拠点
本社/データセンター
■本社サーバにリモートアクセス
クライアントPC
全社情報共有サーバ
全社業務サーバ
全社情報共有サーバ
全社業務サーバ
全社情報共有サーバ
全社業務サーバ
■業務アプリケーションだけ本社サーバにリモートアクセス
クライアントPC
部門情報共有サーバ
■海外拠点に分散サイトを設置
クライアントPC
部門業務サーバ
部門情報共有サーバ
図 海外拠点に設置するIT設備の主な3つの形態
海外進出を困難なものにしてしまう。
の海外拠点の場合は、現地に大がかりな
改善させるために、WAN経由のアクセス
ただし、テクノロジーの進化やソリュー
IT設備は置かず、国内の本社やデータセン
を高速化する装置(Webアクセラレーター
ションの多様化などにより、海外拠点の規
ターにあるサーバ/ストレージにリモート
や WAFS*)が活用されるようになってい
模に合った IT環境を構築しやすくなった。
アクセスさせることが多い。少人数の部署
る。
また、メインフレーム時代は大規模であった
に多額の設備コストを投入するのは現実的
一方で、情報システム部門が行うべき準
“計算機室”
は、今では同様の処理能力で
ではないうえ、サーバやストレージを円滑
備作業は、それほど多くない。回線につい
ラック一本に収まってしまうほどであり、オ
に稼働させるためのシステム運用管理者
ては通信事業者にすべて任せることになる
フィスのスペースという観点においても IT
を現地に常駐させることが難しいからだ。
し、ハードウェアやソフトウェアについて
は導入しやすくなっている。
リモートアクセスのしかたは、国内の営
も、デスクトップアプリケーションとクライ
業所から本社やデータセンターに接続す
アントアプリケーションを組み込んだ PC
海外拠点に設置すべき
IT施設の選び方
る場合と基本的には同じ。普通のインター
を用意するというのが一般的なためだ。
ネット回線ではなく、より高いセキュリティ
PCと周辺機器(プリンタなど)は現地で
強度が得られる専用回線や VPN(仮想専
調達するのがベストだが、国内で用意した
では、そうした海外拠点用の IT設備はど
用線)回線を使うのが一般的だ。ただ、国
ものを持ち込むという方法も考えられる。
のように準備したらよいのだろうか。
際回線はどうしても割高になることから、
ただし、持ち込む際は、電源まわりにはよ
海外拠点の規模やアプリケーションの
国内営業所と同等の伝送速度(帯域幅)
を
く注意したい。電圧とプラグ形状について
使い方にもよるが、主な形態としては次の
得るのはコスト面で難しい。また、伝送距
は一般の旅行ガイドを読めば分かるが、電
3つが考えられる
(図)
。
離が長く、途中に何段もの中継装置が入
圧や周波数の安定性については現地専門
ることから、信号の遅延によるレスポンス
家のアドバイスを受けるべきである。落雷
本社サーバにリモートアクセス
低下も顕在化しがちだ。そこで、国際回線
の多い地域(雷サージが電源に乗りやす
駐在員が数人しかいないような小規模
に特有のこのような不便さを多少なりとも
い)、湿度が低い場所(静電気対策が必
特集 グローバル時代のストレージ戦略
Hitachi Storage Magazine Vol.3
3
Part1 日本企業が考えるべき海外拠点のストレージ戦略
要)、気温が極端に高い/低い地方(IT機
内の営業所と同様、購入またはリースで調
器の動作保証範囲を超える可能性あり)の
達すると良いだろう。メーカーや機種につ
ない。つまり、業界標準のインタフェース
場合は、さらに十分な対策が必要だ。こう
いては、本社や国内営業所で使っているの
を備えたものを前提にして、あとは国内で
したことから、現地の環境を熟知したベン
と同じものにしておけば、システム運用管
使っているのと同機種にしておけばシステ
ダーから調達することが理想的といえよ
理やトラブル対処も容易になる。
ム運用管理やトラブル対処をしやすくなる
う。
システム運用管理者なしで運用するの
ということだ。
海外拠点との時差が大きくなる場合は、
であれば、ホスティングやレンタルサーバ
もちろん、機能面も重要である。たとえ
システムの稼働時間を延長する必要が生
でまかなうケースも考えられる。多少割高
ばリモートコピーやリモートレプリケーショ
じることにも注意していただきたい。24
になるとしても、もろもろのシステム運用
ンの機能を備えたストレージを選んでおく
時間稼働に切り替えるとシステム運用管理
管理作業をすべて任せてしまえるからだ。
と、データの
“安全保障”
や可用性を確保す
コストが増すため、後述する分散サイト方
なお、海外のサーバやストレージにデー
るのに役立つ。海外拠点で行われた追加・
式にした方が割安になることもある。
タを格納する場合は、
“安全保障”
について
変更の結果を国内の本社/データセン
*WAFS:Wide Area File Services
も事前によく検討しておいていただきた
ターにあるレプリカに自動的に反映させる
い。海底ケーブルが破損したり紛争が発生
ことにより、海底ケーブルが切れたりして
業務アプリケーションだけ
したりすると、日本側からアクセスできな
も、データロストや業務中断といった最悪
本社サーバにリモートアクセス
くなってしまうからだ。また、現地の司法
の事態は避けられる。
用サーバを選択する場合とほとんど変わら
海外拠点の規模がもう少し大きくなる
当局や金融規制当局の命令によっては、
ただし、リモートコピーやリモートレプリ
と、情報共有の仕組みを構築して業務の
ハードディスク内のデータの提出を求めら
ケーションは、同一メーカーや同一機種で
効率を高めたいというニーズが発生してく
れることも考慮しておきたい。
ないとうまく機能しないこともある。国内
る。具体的には、共有ファイルを格納して
おくためのフォルダやグループウェアなど
で使っているのと同じ機種にするという戦
海外拠点に分散サイトを設置
の仕組みが相当するだろう。
スタッフが何十人もいるような大きなオ
このような使い方をするには、海外拠点
フィスや、現地の得意先/消費者向けに
の側にも情報共有のためのサーバが必要
ITサービスを提供するような海外拠点と
になる。ファイルを共有するにはファイル
もなると、基幹系業務システムは現地で処
略は、この点からもお勧めできる。
海外での実績と
サポート力が「カギ」
サーバ、電子メールや電子掲示板にはグ
理するための分散サイトを必要とすること
海外拠点において国内のストレージ機器
ループウェアサーバといった具合だ。
が多い。
と同じものを導入するとしても、現地で適
ファイル共有のためだけにストレージ装
この場合の基本的な考え方は、国内の
切なサポートが受けられなかったり、現地
置を導入する必要はないだろう。共有フォ
支店や工場に分散サイトを設置する場合
での実績がなかったりするのは、大きな不
ルダにせよ、グループウェアのデータベー
と同様である。業務処理用と情報共有用
安要素となることはいうまでもない。特に
スにせよ、サーバに内蔵されているハード
のサーバやストレージを現地に用意し、本
新興国などでは新たに進出する日本企業
ディスクで足りると考えられるからだ。ただ
社やデータセンターとの間で分散型処理
が多く、前述のとおり、現地での電力事情
し、単なるファイル共有にはとどまらない
を行う形態にすればよい。
や利用環境などで想定外の事態が起こら
ような重要なデータを扱う場合は、外部接
前項の「業務アプリケーションだけ本社
ないともかぎらない。それゆえ、現地での
続のストレージ装置も検討する必要があ
サーバにアクセス」
との違いは、業務アプリ
サポート力や実績が重要となるのである。
る。バックアップ先として使うハードディス
ケーションのデータベースを格納するため
裏を返せば、日本国内での使用を前提
クも、データの重要度を考慮しながらスト
のストレージを必要とするケースが多いと
としてストレージを導入する場合でも、将
レージ装置の導入を検討するべきである。
いうこと。分散サイトを必要とするほどの業
来を見据えて海外での実績も考慮した方
4
ストレージやサーバなどの機器について
務規模ともなれば、サーバの内蔵ハード
が良いともいえよう。欧米などでは最新技
は、次の2つの方法で調達できる。
ディスクで済ませることは現実的ではない。
術を好んで導入する企業も多く、先端事
兼務でもかまわないから現地にシステ
海外拠点に設置するストレージを選ぶ際
例が豊富なことから、さまざまなメリットを
ム運用管理の担当者を置ける場合は、国
のポイントは、機能面を除けば、海外拠点
享受できることになるからだ。
Hitachi Storage Magazine Vol.3
Part2
インタビュー
世界での実績を
ストレージ製品に反映
ストレージベンダーとしても、世界中に多くの実績がある日立製作所。そのグローバルサプライチェーンを通じて世界 3ヵ所の製造拠点か
ら顧客サイトへと届けられているのが、世界共通のブランド“Hitachi Storage Solutions”だ。日立製作所のストレージビジネスではグ
ローバリゼーションにどのようなかたちで取り組んでいるのか、これから何を目指していくのか、日立製作所 RAIDシステム事業部 海外
事業統括本部 本部長の中野俊夫氏に話を聞いた。
グローバルビジネスを意識した
Hitachi Storage Solutions
ブランド
ローカライゼーションは重要であるという
数 10T(テラ)バイトの容量で済ませてし
考えは、今でも変わっておりません。
まうシステムに 100Tバイトのストレージ
──そうしたグローバル戦略は、ストレー
を設計する例は珍しくありません。それで
ジビジネスを進めるうえでどのような強み
はストレージのディスクが空気を回してい
を生んでいますか。
るようなものですから、当然、システムの
Storage Solutions」
とアルファベット表
中野 仕事柄、私は海外に出張すること
規模が大きくなるんですね。その際には、
記にした背景から、あらためて伺います。
が多く、いろいろなお客さまとお話しする
有効な実績から仮想化機能やサイジング
世界共通のブランドを作り出すという意味
機会があります。それも、アメリカだけで
ノウハウをコンサルタントし、お客さまの
合いが強かったかと思いますが。
なく、文化や風習の異なるさまざまな国や
投資効率を適正化する提案を行っていま
── ま ず 、ブ ラ ンド 名 を「 H i t a c h i
中野 Hitachi Storage Solutionsとい
地域の方々とです。
す。
う名称を採用したのは、2007 年 5 月で
月並みな言い方にはなりますが、そうし
世界各地におけるコンサルティング、シ
す。実は、10 年くらい前までは、装置の
た方 々 のご要 望を聞き、当 社 の 製 品や
ステム設計、販売、保守やサポートを通じ
スペックが世界共通であっても、筐体デザ
サービスに改善を加えたり逆提案したりす
て得た経験やノウハウを製品やサービス
に反映させることによって、日本を含む世
イン、ネーミング、フィーチャー
(機能)
のく
ることを通じて人の輪を世界中で広めてい
くり方などは日本向けと海外向けでは別に
けるというのは、私にとってつねに大きな
界のお客さまにより良いソリューションや
なっていました。
喜びとなっています。また、技術的な面で
サービスを提供しています。これらがグ
ただし、それでは海外に事業拠点を置こ
は、世界のさまざまな企業で行われている
ローバル活動の強みになります。
うとされるお客さまを困らせることになっ
システム設計や運用のノウハウを身をもっ
てしまいますし、当社にとりましても、同じ
て手に入れることができるという利点もあ
レベルの商品やサービスをワールドワイド
ります。
世界の製造拠点から顧客への
グローバルサプライチェーン
に提供するには、1つの系統に集中した方
例えば、日本のお客さまはシステム設計
が手持ちのリソースを活かせて合理的で
を非常にきめ細かく行われますから、出来
──どのようなビジネス戦略も、それを支
す。そこで、名称を Hitachi Storage
上がったシステムにも無駄なところはほと
える組織や体制が適切に整備されていて
Solutionsというアルファベット表記に替
んどないことが多いのです。その一方で、
初めて有効になると思います。そこで、
えることを含めて、1つに集中・統一するこ
国によってはとても大らかなサイジングを
日立のストレージ事業における組織や体制
とにしました。とはいえ、細かいところでの
さ れるところも あり、日 本 の 企 業 なら
について教えてください。
特集 グローバル時代のストレージ戦略
Hitachi Storage Magazine Vol.3
5
Part2 世界での実績をストレージ製品に反映
中野 まず、製品をお客さまのところまで
構成は、アメリカのインディアナポリスと
は私たちの自社技術。それをベースとし
お届けするグローバルなサプライチェーン
オランダのアムステルダムにあるディスト
て、お客さまによりよい価値をご提供し、
の役割が重要になります。当社の製造拠
リビューションセンターに送られ、各製造
お客さまが資産を有効活用するためのご
点は世界に 3ヵ所、アメリカのオクラホマ
拠点で作られた製品を組み上げて出荷構
支援をさせて頂いているのだと自負して
州、日本の神奈川県小田原市、フランスの
成としたうえで、お客さまのサイトに向か
います。
オルレアンの各地にあります。各々の工場
います。各国の仕様に合わせたケーブル
また、その中でも特に重要なものとして
は市場に近いところに位置する利点を持っ
類やアクセサリ類を添付し、各国語のエン
は、信頼性を挙げたいと思います。日本を
ています。加えて、この 3つの製造拠点は
ジニアリングドキュメントを添付するといっ
含めた世界中のお客さまが等しくおっしゃ
互いに製造能力を補完しあう関係にあり、
たローカライゼーションを行うのも、この
るのは、
「ストレージは信頼性」
ということ。
特定の地域の市場で需要が急激に変化し
ディストリビューションセンターの役目にな
大切なデータを格納する場所がストレージ
たら、他の地域を担当している製造拠点が
ります。
なのですから、その保持が永続的なもの
カバーするというように動きます。
このほか、セールス網と保守網は世界
でなければ存在理由がないのです。
ストレージはお客さまのご要求に合わせ
のあらゆる国と地域をカバーしていますか
そこで、最大限の信頼性を発揮できるよ
た構成を組んで、各種の設定を行い、初
ら、日本のお客さまがどこに進出されても
うにと、Hitachi Storage Solutionsの
めて効果的なご使用に至ります。このた
安心して使っていただけます。
スペックは非常に厳しいものになってお
め、当社では製造拠点の他に、システム設
──そうした戦略と体制を提供できる日立
り、保守などのサービスについても非常に
計を支援する拠点と出荷設定や登録を行
製作所のストレージ製品は、お客さまにとっ
高いレベルのものをご提供しています。さ
う拠点を有しています。お客さまの要件を
てどのような魅力があるとお考えですか。
らに、昨今の経済情勢では、少ない投資で
満足するためのシステム構成を検討する
中野 日本のお客さまにとっても、世界の
より高い効率を上げられることも、お客さ
技術者チームとして、ディールオペレー
お客さまにとっても、Hitachi Storage
まに高く評価されています。
ションセンターがアメリカのシカゴとマ
Solutionsの最大の魅力は、やはりその
──ところで、日本企業が海外に進出して
レーシアのクアラルンプールの 2ヵ所にあ
製品力でしょう。日立製作所はモノを作る
現地でITシステムを稼働させようとする場
ります。このセンターで設計したシステム
“メーカー”
ですから、コアとなっているの
合、ストレージについてはどのようなこと
に留意しなければなりませんか。
中野 グローバル企業であればあるほど、
ITの仕様や基準は世界共通にしなければ
なりません。拠点によってシステムが違う
というのは効率の点でもガバナンスの点
でもよくありませんから、当然に、世界共
通です。ただ、日系企業であっても現地法
人の ITオペレーションは現地採用のスタッ
フが行うわけですから、製品は現地で調達
するのが鉄則。それ以外の選択は考えら
れません。
現地の電力規格に適合し、現地スタッフ
の言語や文化に合った製品を選ぶという
のが、もっとも素直なやり方でしょう。その
ために、日立のストレージビジネスは世界
の 140ヵ国以上で展開されています。ま
た、そうしたワールドワイドなビジネスから
生まれた経験やノウハウを日本のお客さま
に役立てて頂けることも、グローバルビジ
6
Hitachi Storage Magazine Vol.3
日立製作所
RAIDシステム事業部
海外事業統括本部 本部長
中野 俊夫氏
ネスに強い日立ならではのポイントになる
のだと思います。
そう推し進め、日本のセールスチームと世
経営方針を決めるための会議やプロセス
界各国のセールスチームが連携してお客
についても、イニシアチブは日本の本社が
さまに対応できるようにしていきます。
取っていますが、全世界の拠点に散らばっ
バリューチェーンを改善し
さらなるグローバル化へ
サ プ ライ チェー ンマ ネジメントとバ
ている役員の方々が参加し、世界各国の
リューチェーンの改善にも引き続き力を注
お客さまに向けた活動をしています。
ぎたいと思っています。お客さまに提供す
──最後に、一言、読者の方々にメッセー
──今後のストレージ戦略についてです
るサービスレベルを向上するためというの
ジをお願いします。
が、グローバリゼーションという視点にお
が主な狙いといってよいでしょう。
中野 まず、すでに当社製品をご愛用の
いて、どのように強化・拡張されていかれ
──そうすると、本社機構のあり方もこれ
お客さまには心よりお礼を申し上げます。
ますか。
から変わっていくのですか。
また、当社製品をご検討中のお客さま、興
中野 さらにグローバル化を推進していき
中野 いや、本社機構のあり方は関係な
味を持っておられるお客さまには、日立は
ます。魅力ある製品やソリューションを提
いと思います。古き良き時代の本社・支店
海外における豊富な経験とノウハウをリ
供し続けることは当然ですが、サービス面
の関係とは異なり、現在ではオフィスの物
ファレンス
(参考事例)
としてご紹介できる
での充実にも力を入れます。
理的な位置は問題にならなくなっていま
こと、日本のお客さまが海外に進出される
商品のグローバルマーケティングも強化
す。所属は本社でも実際に働いているとこ
際には ITインフラの構築についてのご支
していきますし、研究開発についてもさら
ろは海外のオフィス、というロケーションフ
援を提供できることをアピールしたいと思
なるグローバル化を目指します。当社は研
リーの働き方が当たり前になっているんで
います。
“Customer comes first.”
(お
究開発部門の人間も海外に出しておりまし
すね。
客さま第一主義)の考え方に基づき、スト
て、シリコンバレーで最先端領域の研究を
この小田原の地にも日立データシステ
レージとそれに付随するサービスをグロー
したり海外の大学と共同研究をしたりと
ムズやパートナー企業の方が毎日のように
バルに供給する——。そのようなビジネス
いった活動をしています。セールス部門に
見えていますし、このオフィスからも毎日
を、これからも続けていきたいと思ってい
ついても現状のグローバル化をさらにいっ
のようにだれかが海外に出張しています。
ます。
特集 グローバル時代のストレージ戦略
Hitachi Storage Magazine Vol.3
7
ra
From Odawa
に
ム
テ
ス
シ
ストレ ー ジ
前線
最
る
す
供
提
を
”
心
安
“
業部
AIDシステム事
立製作所の R
日
、
が
の
る
い
することは
担って
りの機能を発揮
制。その一翼を
お
体
ど
証
ク
ッ
保
ペ
質
ス
品
て
とし
の
の裏付けとなる
続性や操作性
ージ製品は単体
の高い信頼性
テムとしての接
」である。ストレ
ス
ー
シ
タ
体
ン
全
セ
ストレージ製品
た
価
せ
評
み合わ
る杉本守二
システム
ざまな機器と組
本部長を務め
日立ストレージ
ま
の
「
さ
る
部
、
す
ど
本
置
な
発
位
ド
開
ー
に
部
カ
内
事業
インタフェース
RAIDシステム
バやスイッチ、
ターについて、
ン
セ
同
る
もちろん、サー
た
あ
検証に
る。その評価/
良さが求められ
氏に伺った。
ユーザーの視点から
ストレージ製品を評価
ジ製品がスペックどおりに動くかどうか、
あるいは使い勝手が十分に洗練されてい
るかといった評価を行うのが特長です。
障害発生時には
問題点と原因を徹底追究
── 日立ストレージ製品の品質保証体制
── 評価センターは、どれくらいの歴史を
── 具体的に評価センターでは、どのよう
を支える「日立ストレージシステム評価セ
持っているのでしょうか。
な取り組みを行っているのでしょうか。先
ンター」
(以下、評価センター)の役割につ
杉本 1989年に設立され、すでに20年
に挙げていただいた 2つの役割のうち、ま
いて教えてください。
の歴史があります。また、米国カリフォル
ずハードウェア主体の評価についてお聞か
杉本 評価センターの役割には大きく2
ニア州サンタクララを拠点とする日立デー
せください。
つ、ハードウェアを主体とする評価と、さ
ターシステムズにも、同様の評価センター
杉本 ここ、評価センターでは、正常時の
まざまな周辺装置やソフトウェアと組み合
を設置しています。これは国内と海外の分
みならずお客さまの使い勝手や障害時の
わせたストレージシステム全体としての評
散体制を構築し、お客さまにできるかぎり
動作にまで踏み込んだ検証を行います。
価/接続検証があります。いずれも設計
近いロケーションから多様なニーズに素早
装置で発生する可能性のある障害を擬似
者の立場から一歩身を引き、あえて第三
く対応していくという狙いによるもので
的に発生させ、その状況でもシステムが
者的な観点・ユーザーの視点からストレー
す。
問題なく業務を継続できることを検証しま
日立ストレージシステ ム評価センターの誌上視察ツアー
日立ストレージシステム評価センターでは、
メインフレームから PCサーバ、さらには
各社のストレージやスイッチなど、さまざま
な製品を実際に使って検証しています。
メインフレームを中心とした大規模システム用のマシン
8
Hitachi Storage Magazine Vol.3
す。問題がある場合には徹底的に原因を
追究し、自社製品だけではなく、他社製の
ソフトウェア、ハードウェアについてもベン
ダーに対して改善を要求していきます。
日立ストレージ製品の信頼性とは、安心
してシステムを使い続けられることにほか
ならず、それに対するお客さまの期待を絶
日立製作所
RAIDシステム事業部 開発本部
本部長
杉本 守二氏
対に裏切ってはならないと考えています。
── 評価センター自体でもストレージを
活用していると思いますが、そこでの運用
も評価につなげたりしているのですか?
杉本 そうですね。別な側面から評価セン
ターを語ると、日立が新たに開発したスト
レージ製品を、お客さまに提供する前に自
分たちで徹底的に使い込んで問題点を洗
い出し、改善を図っていく場にもなってい
ます。例えば、RAIDシステム事業部内に
分散しているPCやファイルサーバなどの
すべてのデータを、ネットワークを介して
大容量ストレージに集約して評価センター
もに、日経 BP社で実施する顧客満足度調
て挙げられた、さまざまな周辺装置やソフ
で一元的に管理する、いわゆるストレージ
査/パートナー満足度調査のストレージ部
トウェアと組み合わせた評価/接続検証に
セントリックネットワークのコンセプトをい
門において2008年以降、2年連続No.1
ついての取り組みはいかがでしょうか。
ち早く導入しました。その上で、シンクラ
/3 年連続 No.1に選ばれました。市場か
杉本 ストレージ製品は単独で動くわけで
イアントやデータバックアップの仕組みも
らこのような高い評価をいただくことがで
はなく、ソフトウェアやサーバ、各種スイッ
構築するなど、日立のストレージ製品がそ
きたのも、その背景に評価センターにおけ
チ、インタフェースカードなどのハードウェ
うした環境下でいかにストレスなく使用で
る地道な取り組みがあったからこそと考え
ア機器と組み合わせることで、はじめてシ
きるかといった検証を通じて、適切な運用
ています。
ステムとして機能します。そこで日立では、
これらの機器の主要ベンダーと協力関係
やトラブル対応のノウハウを率先して蓄積
しています。
日立のストレージ製品は、調査開始の
1 9 9 6 年 以 降 、1 3 年 連 続で国 内 売 上
No.1(IDC Japan調査)を達成するとと
多様な機器との相互接続の
膨大な組み合わせを検証
── 評価センターのもう1つの役割とし
を結び、早期に評価システムを構築し、評
価/接続検証を実施することで、お客さま
には、最新のシステムをタイムリーに導入
し、安心してご利用いただくことが可能と
検証に使用する
各社のスイッチ類
Windows® サーバやUNIXサーバも各種取りそろえている
Hitachi Storage Magazine Vol.3
9
From Odawara
日立SANテクノロジーセンター
日立 SANテクノロジーセンターでは、日立ディスクアレイ
サブシステムを中心として、異機種環境でのさまざまなデ
モンストレーションを用意。見て理解できるように、ビジュ
アルにも工夫を凝らしている。また、評価コーナーも併設
しており、複数ベンダー製品の相互接続性の検証やスト
レージソリューションの開発・検証も行っている。
活用例をもとに先進のテクノロジーが実感できる
デモンストレーション
なっています。
センターの使命は、お客さまに安心して
よりユーザーに近い立場でストレージ製
── そうした評価/接続検証において、
使っていただけるストレージシステムを、
品の使い勝手などを判断できる評価セン
最も苦労するのはどのようなところでしょ
可能なかぎり早いタイミングで提供してい
ターが、上流の開発プロセスから積極的に
うか。
くことにあります。そういう意味でも、評
かかわって製品を改善していくことで短期
杉本 組み合わせの数が膨大になること
価/接続検証のさらなるスピードアップを
間で品質を高めていけると考えています。
です。サーバやスイッチ、インタフェース
図っていく必要があります。
── 一般的に製品の評価部門というと、
カード、それらを動作させる OSやドライ
膨大な組み合わせに対して
“しらみつぶ
後方支援や裏方のイメージがありますが、
バなど、ストレージシステムの構成要素と
し”
にあたっていたのではキリがありませ
日立の評価センターはストレージビジネス
していくつもの機器やソフトウェアが存在
ん。これまで培ってきたノウハウに基づい
の
“フロント”
としての存在感を高めている
し、さらに各々に複数のバージョンが出
て重要ポイントを絞り込みながら評価/接
ように思えます。
回っています。
続検証を行う、あるいは支援ツールを開
杉本 もちろん、後方支援や裏方も重要
加えて、これらの機器は定期的にモデル
発・導入することで自動化を進めるといっ
なポジションであり、評価センターとして
チェンジを繰り返しており、ファームウェア
たアプローチにより、評価作業の品質向上
その責務を果たしていかなければなりま
のバージョンアップも頻繁に行われること
と効率化に努めています。
から、そのつど評価/接続検証を行わな
ければならないことになります。
評価/接続検証のための環境を構築す
るにあたっては、メインフレームや UNIX、
せん。しかし、一方では自分たちが最前線
に立っているという意識を持つことも重要
ストレージビジネスの
“フロント”
として活動
でしょうね。実際、特殊なシステム環境を
使用しているお客さまに対して、サービス
部門や SI部門などと連携しながら、個別に
Windows ® など、さまざまな OSの動作
── 評価センターが今後注力していきた
評価/接続検証を行うケースもあります。
や操作はもちろんのこと、専門の評価ノウ
いと考えているテーマには、どのようなも
また、評価センターの関連施設である
ハウを有するエンジニアが必要です。こち
のがありますか。
らの評価センターでは各プラットフォーム
杉本 すでに完成したストレージ製品を評
日立ディスクアレイサブシステムを中心と
に精通したエンジニアで構成される組織
価するだけではなく、企画段階から評価セ
した新技術のデモンストレーションを行う
体制を整え、日々の作業と向き合っていま
ンターの意見を積極的に設計に取り入れ
とともに、評価コーナーも併設していま
す。
る活動をしています。もちろん現在でも、
す。こうした開かれた接点を通じて、複数
── ストレージシステムの構成要素の組
さまざまな評価を行う過程で発見された
ベンダー 製 品 の 相 互 接 続 性や各 種スト
み合わせ数が膨大になる一方で、決して
問題点は、すべて設計部門にフィードバッ
レージソリューションの操作性など、さま
人海戦術では片づけられないのが難しい
クするという体制を採っています。しかし、
ざまな評価や検証の様子をお客さまの目
ところですね。
その結果が実際の改善点としてストレージ
で直接ご覧いただくことが可能です。
杉本 それはまさに私たちの最大の課題
製品に反映されるまでには、どうしても時
ぜひ一度お越しくださるよう、心からお
と言えます。先に申し上げたとおり、評価
間がかかってしまいます。
待ちしております。
10
Hitachi Storage Magazine Vol.3
「日立 SANテクノロジーセンター」では、
先
進
事
例
ユニバーシティ・ヘルスシステム・コンソーシアム
(The University HealthSystem Consortium)
https://www.uhc.edu/
米国の医療研究機関から収集した
膨大な研究データの活用環境を
ボリューム容量の仮想化機能により最適化
非営利団体であるユニバーシティ・ヘルスシステム・コンソーシアム
(以下、UHC)は、参加団体から収集した多くのデータを管理してお
り、そのデータ量は2年ごとに倍増していた。また、ストレージ環境が老朽化していたり、柔軟性に欠けるという課題も抱えていた。そこ
でUHCは、ボリューム容量仮想化機能を中心としたストレージ環境の刷新に取り組んだ。
従来システムのサービス停止や
パフォーマンス低下が顕著に
した。一方で、UHCのデータベース・サイ
ソリューションを UHCに提示していた。そ
ズがこの 6 年間、2 年ごとに倍増している
うした中で、UHCが選んだのは、日立デー
分は非計画的なものであることも問題視
階層ストレージの性能を特にアピールする
ユニバーシティ・ヘルスシステム・コン
ことにも気づいた。この増加率のまま今後
タシステムズのソリューションであった。
ソーシアムは、米国の医療研究機関の約
もデータ量が増加していくと、早期にスト
「とても明白な選択でした。日立データ
90%が参画している大学医療センターと
レージがパンクしてしまうこともわかった。
システムズのソリューションは、疑いなく
附属病院の連合体である。UHCでは、20
これらの評価結果から UHCは、組織が
ベストでした」とナグリヒ氏。また、
「日立
年以上もの間、医療の向上、および運営と
大量のデータ収集と処理を行う一方で、
のカスタマーサービスのレスポンスタイム
財政を最適化するためのユニークなプロ
物理的なパワーとストレージの容量不足に
に匹敵するところはありません。これが、
グラムとサービスを提供してきている。
よってデータセンターが制約されていると
最 終 的な選 定ポイントになりました」と
UHCはこうしたサービスを提供するた
判断した。
めに、コンソーシアムのメンバーである病
カールバーグ氏が付け加えている。UHC
と日 立 デ ー タシステム ズ の 契 約 は 、
ソリューションの選定
2007年11月上旬までにまとまった。
サーバ(サーバの 25%で仮想化)などで
ストレージを中心とするシステム環境の
構成されたシステムを運用している。とこ
見直しにあたって、ストレージベンダー各
スムーズな移行
院から収集したデータを格納するためのス
トレージ、データベース、および 180台の
ろが、そのシステムは、何年もの間、スト
社のソリューションの評価を含め、厳密な
2008 年 1 月下旬までに、日立データ
レージ装置に負担をかけ続けてきたことに
調査プロセスを主導したのが、UHCのテ
システムズの 2人のコンサルタントがカー
より、サービスの停止やパフォーマンスの
クノロジー・インフラストラクチャ担当役員
ルバーグ氏とネットワーク管理者副主任の
低下が顕著に現れてきていた。また、この
であるドン・ナグリヒ氏と、ネットワーク管
ハイビン・カオ氏とともに作業し、
「Hitachi
ストレージ装置は、UHCの現在の要求に
理者主任であるスティーブ・カールバーグ
Universal Storage Platform V(以下、
応えるだけの拡張性を持っていなかったの
氏である。
U S P V )」と、そ の 配 下 に「 H i t a c h i
である。
「ここでの選定は非常に大きいもので
Adaptable Modular Storage 500」を
2007 年初め、UHCのネットワーク管
す。なぜなら、選定結果が UHCのデータ
ストレージデバイスの仮想化で接続し、イ
理者は、このシステムの性能とストレージ
処理の方法における重要な転換点となる
ンストールとデータ移行を行った。このス
の能力について調査を実施した。そこで彼
からです。誤ったソリューションは実装と管
テップは、最小限のシステム停止で問題な
らがディスクI/Oの負荷に注目したところ、
理を困難にします。また、私たちが将来の
く完了した。
ワークロードが増加すると、UHCのメン
成長のために必要とする拡張性を失ってし
UHCのソリューションの核心は、USP
バー向けレポート機能において、次第に応
まいます」
とカールバーグ氏は語っている。
V に よ る ボリュ ー ム 容 量 仮 想 化 機 能
答時間が低下するという問題が確認でき
3ヵ月におよぶ徹底的な調査、各ベン
「Hitachi Dynamic Provisioning」にあ
たのである。また、頻発していたサービス
ダーの事例視察およびインタビューを経
る。カールバーグ氏とカオ氏は、ストレー
停止については、いくつかはファームウェ
て、ナグリヒ氏とカールバーグ氏は2社に絞
ジ管理の簡素化、物理ディスクの利用の
アの更新など計画的なものだったが、大部
り込んだ。両社は、仮想化技術を使用した
最適化、そしてパフォーマンスの強化を約
Hitachi Storage Magazine Vol.3
11
束する新しいソリューションに興奮したと
アプリケーションは、必要に応じてスト
システム刷新により、100%の稼働率を
いう。それは、UHCの現在のプロビジョニ
レージ容量を拡張するデータボリュームに
実現している。ファームウェアの更新にお
ング設計と管理スキームによって、UHC
割り当てられる。そのためデータボリュー
いてさえ、ダウンタイムが発生しない。更
のチームは UHCが持つストレージリソー
ムは、1つの動的プール内に均等に分散さ
新時のダウンタイムは、かつて問題になっ
スの使用率を約 40から50%までに抑え
れた領域を使用することになる。
ていたことだった。
ることができたからだ。
Hitachi Dynamic Provisioningの仮
順調な滑り出し
想ボリュームやティア
(階層)
間のデータ移
して、特定の物理ディスクのスピンドルが
導入作業から数週間のうちに、カール
かつては 20〜30 分のダウンタイムが発
置かれたアレイ・グループに対して手動で
バーグ氏は USP Vの導入を決めたことの
生し、3回は試行する必要があった。新シス
データボリュームを割り当てることで、シ
重要性を実感した。
テムは完全に冗長化され、UHCは都合の
ステム負荷のバランスをとる必要があっ
「私たち少人数のスタッフは、ストレージ
良いときに気軽に更新できるようになった。
た 。U S P V の H i t a c h i D y n a m i c
とダウンタイムの問題でオーバーロード状
以前のストレージシステムでは、管理者
は自分自身で計算
(またはベストな推測)
を
Provisioning によって、このタスクは自
態でした。そして、顧客はパフォーマンス
動化され、その効果も改善されている。
について不満を言い始めていました」と
行についても、ダウンタイムは必要ない。
簡単な管理と柔軟性の向上
Hitachi Dynamic Provisioning は、ボ
カールバーグ氏が旧システムについて振り
カールバーグ氏にとって、新システムの
リュームによってストレージシステム・ボ
返る。また、
「日立の仮想化に関する高い
驚くべき利点は、日常的な管理の容易さ
リュームのパフォーマンス特性を設計・管
能力によって、パフォーマンスとストレージ
だった。
理することはせずに、物理的な容量を、ス
利用の両方が大幅に改善されました。私
「特に、どのようにしてストレージを構成
トレージシステム上の少数の大きな動的ス
のスタッフは、システムの信頼性、そして
するべきか計画するのに要する時間を節
トレージプールに割り当てる。物理容量の
多くのタスクを彼ら自身がたやすく遂行で
約できる点です」とカールバーグ氏は語っ
追加が必要になると、その容量は適切な
きることについてわくわくしています」
と続
ている。仮想ボリュームの作成は、ほんの
プールに追加される。ストレージ管理者
けている。
数分で終わる。そのため、カールバーグ氏
は、各プールの容量とパフォーマンスを監
UHCのシステムは以前、許容可能な稼
のチームのメンバーは、四半期ごとに1週
視するだけでよい。
働率を 99.9%としていた。それが今回の
間以上の就業時間を節約できるというわ
左からスティーブ・カールバーグ氏、ドン・ナグリヒ氏、ハイビン・カオ氏
12
Hitachi Storage Magazine Vol.3
仮想化ソリューションによる課題解決
ブレードサーバ
仮想サーバ
アプリケーション
ゲストOS
仮想サーバ
アプリケーション
ゲストOS
●容量の拡張性
・最大247Pバイトまで拡張可能
仮想化ソフトウェア
●ストレージリソースの使用効率向上
Hitachi Universal Storage Platform V
仮想
ボリューム
プール
ティア1
(FC HDD)


・ストレージインフラ全体の使用効率向上
Hitachi Adaptable Modular Storage 500
ティア2
(FC HDD)
ティア3
(SATA HDD)
けだ。
また、UHCチームは「Hitachi Tiered
ボリューム
容量仮想化
ストレージデバイス
仮想化
●ストレージ管理・運用の簡素化
・容量設計・性能チューニング不要化
・複数ストレージの管理・運用を統合化
●データ可用性の向上
・ エンタープライズクラスの
高信頼ハードウェア、
データ保護機能
FC : Fibre Channel
SATA : Serial Advanced Technology Attachment
HDD : Hard Disk Drive
きました」
とカールバーグ氏は語っている。
ことを実行できるストレージの能力は、経
新しいディスク上にポーティングされた
:
営にも貢献することにつながるのである。
Storage Manager」により、彼らの選択
データベース内のクエリやストアドプロ
カールバーグ氏は、日立データシステム
した場所にデータおよびアプリケーション
シージャのほとんどは、レスポンスタイム
ズの提案を評価するまでは動的プロビジョ
を配置することができ、必要に応じて迅速
が大幅に向上した。
ニング技術の効果を疑っていた。今となっ
にデータを再配置できるようになった。そ
「私たちは、向上したレスポンスタイム
ては、そのことを不思議に思うほどに動的
のためにダウンタイムは発生しない。これ
に非常に満足しています。私たちが計測し
プロビジョニング技術を信頼している。
「な
は、UHCにおける仮想サーバの使用に
た、あらゆるストアドプロシージャと標準的
ぜ私は、すべてのストレージを動的プロビ
とって理想的な環境である。
なクエリは 、新 シ ス テ ム 上 で 2 0 0 〜
ジョニングにしようと考えることすらしな
以前は、新しいボリュームのためのス
8 0 0 % 高 速に動 いています」とカー ル
かったのだろう?」
とカールバーグ氏は自問
ペースを確保するために、データボリュー
バーグ氏は語っている。
する。
ムを頻繁に移動させる必要があった。領域
を使い果たしたときには、既存のデータボ
リュームを再配置し、同じアレイ・グループ
にあまりにも多くのボリュームを配置して
カー ル バ ーグ 氏 は 、次 の 数ヵ月内に
データストレージを
新たなレベルへ
UHCが開始する新しいサービスの提供を
楽しみにしている。これは、USP Vで容易
にカバーできるものだ。
しまったり、将来のデータ増のために確保
UHCの経営者も新たなストレージ環境
「私たちは、正しいソリューションを選択
しておいたディスク領域を使い果たしたり
に非常に満足しているという。それは、改
したと自信をもっています。そして、私た
していた。
善されたシステムのパフォーマンス向上と
ちがその能力についてより多く学ぶほど楽
「運用環境において、これらのデータ
停止時間の削減が、運用コストと人的リ
しみになりました。私たちは、日立のテク
ベースにおけるティア間の移動がシームレ
ソースの最適化を実現したからだ。UHC
ノロジーの利用と展開を継続していくこと
スで簡単であり、ほとんどリソースを必要
のシステム担当チームはとても小さな組織
を強く望んでいます」とカールバーグ氏は
としないことに気づき、私たちは非常に驚
であることから、少ない労力でより大きな
語っている。
Hitachi Storage Magazine Vol.3
13
先
進
事
例
北九州市
http://www.city.kitakyushu.jp/
全庁レベルの大規模なシステム刷新において
ストレージ環境を仮想化技術の採用で最適化
地方自治体の行政サービスは、情報化社会の進展によるサービス形態の多様化や、利用者である住民の利便性向上への取り組みな
どにより、常に進化を続けている。そして、さまざまな行政サービスを実現するには、ITの利活用が不可欠であり、なおかつ柔軟なIT
環境が求められる。北九州市は区役所窓口のワンストップサービスなどの実現に向け、システム間連携などを考慮した全庁的なIT基
盤の刷新に取り組んだ。そこでは、ストレージやサーバの仮想化といった先端技術が積極的に採用されている。
元気発進!北九州
施策を戦略的に進めている。
九州の最北端に位置し、本州と九州の
極的に取り組んでおり、その1つが2006
そうした中で北九州市は、IT施策にも積
メインフレームから
オープンシステムへ
結節点であり、またアジアへの玄関口とい
年 5月に策定された「業務の効率化と情報
「業務の効率化と情報システムの再編基
う地 理 的 特 性 を 持って い る北 九 州 市 。
システムの再編基本計画書」である。その
本計画書」を策定した背景には、メインフ
1963 年 2 月に門司市・小倉市・若松市・
目的を北九州市 総務市民局 情報政策室
レームからオープンシステムへの移行とい
八幡市・戸畑市の 5市による対等合併によ
室長の大場謙一氏は、次のように語る。
う
“レガシー改革”
の流れも挙げられる。北
り誕生した政令指定都市である。筑豊の
「『市民が安全・安心に利用でき、かつ満
九州市は、基幹システムにおいて 30年以
産炭地を背景に、製鉄所などを中心とした
足できる行政サービスの提供』
と
『最小経
上にわたり日立のメインフレームを利用し
重工業地帯として日本の経済成長ととも
費で最大効果を創出し続ける行財政運営』
てきている。
に発展してきた。また、北九州市役所の本
の実現に向け、組織体制・業務手順の見直
また、メインフレームに関するシステム
庁舎は、小倉駅から 10 分ほど歩いたとこ
しを含めた全体最適の視点から、行政組織
は情報政策室が一括して管理しているもの
と情報システムの
“あるべき姿”
を目指し、
の、それ以外のシステムは業務所管課が
ろにあり、文武両道の名将として名高い細
川忠興が築城し、幕末の舞台としても知ら
『業務の効率化と情報システムの再編基本
個別に調達・管理しているという課題があっ
れる小倉城に隣接している。
計画書』
を策定しました」
た。業務所管課ごとに導入されていたこと
北九州市は現在、2020 年を目指した
同計画では、区役所窓口のワンストップ
から、
「各業務システム間のデータ連携が
基本構想・基本計画「元気発進!北九州」プ
サービス化と発生源入力の徹底による内
困難」
「ライセンスや保守費用が重複して
ランに基づき、まちづくりの目標「人と文
部事務(人事・給与・福利など)の効率化を
いる」
「ハードウェアリソースの利用率が低
化を育み、世界につながる、環境と技術の
テーマに、改革を支援するための情報シス
い」
「個人情報を含む重要データが個別に
まち」の実現に向けた施策に取り組んでい
テム再編と、再編後のシステム運用経費
管理され、セキュリティレベルが不均一」
な
る。特に、同プランによる財政の健全化を
削減などを打ち出している。
どの課題が顕在化していたのである。
「そこでメインフレームを、次回更新時
図りながら、選択と集中によりさまざまな
期にあわせて廃止し、レガシーシステムを
再構築するとともに、分散サーバ上の業務
システムも
“全体最適”
の視点から統合し、
さらなる効率化とコスト低減を目指す『次
期基幹システム』を構築しようと考えまし
た」
と、北九州市 総務市民局 情報政策室
情報システム再編担当課長の井上憲八郎
氏は振り返る。
次期基幹システムは、メインフレームで
北九州市
総務市民局
情報政策室 室長
大場謙一氏
14
Hitachi Storage Magazine Vol.3
北九州市
総務市民局 情報政策室
情報システム再編担当課長
井上憲八郎氏
北九州市
総務市民局 情報政策室
情報システム再編担当係長
(再編総括、次期基幹システム構築担当)
遠藤勇一氏
稼働していた住民記録、国民健康保険、
税情報などと、業務サーバで稼働している
戸籍、福祉・介護などを集約し、共通のプ
ラットフォーム上で業務システムを一括処
理するスタイルを採用した。そして共通プ
北九州市に導入され
たストレージとサー
バ。左から 2 番目と
3番目がストレージ、
4番目がテープ装置
ラットフォームには、財団法人全国地域情
報化推進協会が推進している
「地域情報プ
ラットフォーム」を採用し、他自治体や企業
とのデータ連携によるワンストップサービ
※フロントドアを外した状態で撮影
しています。
スへの拡張性を持たせた。
信頼性の高さを評価し
日立のストレージを採用
次期基幹システムでは、日立のサーバ
バ タ ー ジ ュ
仮想化機構「V irtage」を使った仮想化に
次期基幹システムでは、エンタープライ
よるサーバ統合にも踏み込んでいる。これ
ズディスクアレイ「Hitachi Universal
型)
ストレージの構成を採用している。実際
により、物理サーバの台数減と運用効率
Storage Platform VM」
( 以下、USP
にデータの配置を検討するにあたっては、
適材適所で配置するというティアド(階層
の向上、さらにはソフトウェアライセンス
VM)
を中心にし、ミッドレンジディスクアレ
最大効果を上げるための構成と業務内容
料の低減も実現したいと考えたためだ。
イ「 H i t a c h i A d a p t a b l e M o d u l a r
を綿密に分析し、検討を重ねたという。
そして、そのサーバ環境につながるスト
Storage 2100」
( 以下、AMS2100)
レージについても、同様のコスト削減や運
を組み合わせた構成にしている。
用効率の向上が求められる。さらにスト
「信頼性を重視したら、すべてのストレー
レージには、住民情報などの重要なデータ
ジをハイエンドモデルに統一することが理
を格納することになるため、高い信頼性が
想的です。しかし、それではコストがかかり
ストレージ容量は、SANブートで使用し
必要とされる。
過ぎますから、ビット単価を考慮しつつ、
ているOS領域も含めて、全体で約25Tバ
北九州市では、長年にわたり日立のスト
適材適所の考え方に基づき、複数の機種
イトとなっている。また、バックアップ用とし
レージを利用してきている。
「エンタープラ
を混在させる形にしました」
(遠藤氏)
て専用バックアップ装置
(ストレージ・テープ
イズディスクアレイは、初期のモデルから
ただし、複数機種の混在環境でも、運用
一体型)を備えており、Disk to Disk、
バックアップの運用も
仮想化により最適化
数世代にわたり利用してきました。これまで
管理の負荷が大きくなるのでは意味がな
Disk to Tapeの 2段階バックアップを実
システム稼働中にディスク障害が発生した
い。そこで北九州市は、ストレージデバイ
施。Disk to Diskのバックアップでは、ス
ことは一度もありません。そのため、信頼
スの仮想化機能を採用し、USP VMを中
トレージ装置内のボリュームレプリケーショ
性において非常に高く評価しています」
と、
心にストレージ統合を行っている
(図)。つ
ン機能「ShadowImage」を採用した。
北九州市 総務市民局 情報政策室 情報シ
まり、サーバ側から見れば、すべて USP
「約 25Tバイトあるシステム全体のバッ
ステム再編担当係長の遠藤勇一氏は語る。
VMに接続するイメージになる。
クアップを毎日行っていますが、短時間で
こうした実績もあり、次期基幹システムに
また、使用頻度や更新頻度などを考慮
完了するほか、運用しやすく作業負荷を大
おいても日立のストレージが採用された。
し、USP VMとAMS2100のそれぞれに
幅に軽減できています。というのも、スト
レージデバイスの仮想化機能とShadow
AMS2100
正VOL
OSデータ
(SANブート領域)
:1TB
正VOL
正VOL
長期保存データ:9TB
ログデータ:1TB
業務DBデータ:3TB
USP VM
正VOL
正VOL
正VOL
正VOL
正VOL
OSデータ
(SANブート領域)
:2TB
副VOL
業務DBデータ:9TB
副VOL
副VOL
副VOL
副VOL
仮想化
Imageを組み合わせることで、専用バック
アップ装置や AMS2100の領域を意識す
ることなく、USP VM配下の領域として
一括してバックアップできるからです」と、
ShadowImage
遠藤氏はストレージの信頼性とともに運用
バックアップ
面においても高く評価している。
北九州市はサーバに加え、ストレージで
も仮想化技術を採用した。これにより、IT
副VOL
専用バックアップ装置
副VOL
副VOL
副VOL
コストと運用管理コストを大幅に低減し、
副VOL
柔軟な機器構成も可能になるなど、行政
正
副
正
副
正
副
正
副
正
副
USP VM:Hitachi Universal Storage Platform VM
AMS2100:Hitachi Adaptable Modular Storage 2100
VOL:ボリューム
DB:データベース
SAN:Storage Area Network
●ディスクアクセスが多いデータ、
重要度が高いOSイメージ ⇒ USP VM
●ディスクアクセスが通常レベルのデータ、
重要度が通常レベルのOSイメージ、長期保存/ログデータ ⇒ AMS2100
●バックアップ領域 ⇒ ストレージ&テープ一体型の専用バックアップ装置
組織と情報システムの
“あるべき姿”
を目指
した「業務の効率化と情報システムの再編
基本計画書」に大きく貢献するIT環境を手
に入れたのである。
Hitachi Storage Magazine Vol.3
15
パートナー企業紹介
大規模な仮想化環境に必須の
“I/O仮想化”ソリューション
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)は、日立製作所のストレージとシーゴシステムズ・ジャパンの I/O仮想化コントロー
ラなどをセットにしたパッケージソリューション「仮想 I/0統合プラットフォーム」の販売を開始した。サーバの仮想化を進めるにあたり、今
後日本でも問題となってくるI/O枯渇にも配慮したパッケージソリューションだ。サーバ仮想化の進展によって必要となるI/Oの仮想化と
はどういったもので、その際に利用されるストレージとして日立製品が指名される理由はどこにあるのだろうか。パッケージを提供する伊藤
忠テクノソリューションズに聞いた。
仮想化環境の構築を容易に
でもコスト削減をしたい」と考える企業が
「スクラッチから仮想化環境を構築する
多いのは当然のことだといえよう。
となると、システム開発に多大な工数がか
仮想化を採用する企業が増加し続けて
こうしたニーズに対応するために、CTC
かり、納期も長くなることから、コストが増
きている。当初は小規模なシステム環境
ではパッケージ化した仮想化ソリューショ
大していきます。また、システムの品質に
に適用するといった様子見的なケースが
ンを用意した。
もブレが生じかねません。コスト削減を実
多かったが、現在では徐々に大規模なシス
第 一 弾となる「 仮 想 I / 0 統 合プラット
現するために仮想化を導入するお客さま
テム環境にも適用され始めている。
フォーム」は、シンプロビジョニング機能
に対し、できるだけ低コスト・短納期で導
伊藤忠テクノソリューションズ エンター
(Hitachi Dynamic Provisioning)
付きの
入でき、なおかつ高品質な仮想化ソリュー
プライズエンジニアリング 室 プラット
日 立 製 2 T( テ ラ )バ イト の ストレ ー ジ
ションはどんなものかを考えた結果、事前
フォームシステム部 プラットフォームシス
「Hitachi Adaptable Modular Storage
テム推進課の筧 直之氏は、
「現在、仮想化
2100」、シーゴシステムズ製の I/O仮想
を全く検討しないというお客さまは皆無と
化コントローラ「VP780」、FC(Fibre
いってよい状況だと思います」と指摘す
Channel)スイッチなどをセットにした。低
る。
コストを求める顧客ニーズに応えるコスト
仮想化へのニーズが高まっている背景
削減を実現するとともに、日本ではまだな
サーバやストレージの仮想化はすっかり
として、情報システムのコスト削減ニーズ
じみの薄い I/Oを仮想化するソリューショ
おなじみだが、I/Oの仮想化については、
がある。厳しい経済環境が続く中、
「1 円
ンを盛り込んだパッケージだ。
初めて聞いたという人も多いのではない
検証を行ってパッケージ化することが最適
だと判断しました」
(筧氏)
I/O仮想化ソリューション
だろうか。日本ではまだなじみの薄いキー
仮想I/0統合プラットフォーム
x86サーバ
1
2
3
4
5
Hitachi Adaptable
Modular Storage 2100
仮想環境・運用管理ソフトウェア
仮想OS
ワードだが、大規模な仮想化ソリューショ
サーバ
仮想化
ソフトウェア
16
Hitachi Storage Magazine Vol.3
サーバ5台への接続と
2Tバイトのストレージパック
サーバ
日立ストレージ
(AMS2100)
2Tバイト
(実効1.6Tバイト)
※シンプロビジョニング機能付
I/O
仮想化
コントローラ
サーバ
FC
スイッチ
キーワードである。
シーゴシステムズ・ジャパン 代表取締役
の尾方一成氏は、サーバ同様、I/Oを仮想
シーゴシステムズ
I/O仮想化コントローラ
VP780(冗長構成)
サーバ
アダプタ
カード
FCスイッチ
FCスイッチ
化しなければならない理由を次のように説
明する。
「米国と日本では、サーバ仮想化システ
ムの導入状況に 2 年程度差があるといわ
れています。日本よりも仮想化導入が進
んでいる米国では、1台のサーバ上で 50
台の仮想サーバを動かすなど大規模事例
ストレージ
FC:Fibre Channel
ンが稼働する米国では一般的に使われる
※オプション
が多数出てきているのです。50台の仮想
サーバとなると、CPUやメモリ、I/Oが足
りないという状況が起こります。CPUやメ
モリの増強は実現可能ですが、I/0につい
ては拡張スロット数も限られていることか
ら、簡単には増強できません。そこで I/O
を仮想化するソリューションが必要となり
ます」
シーゴシステムズの I/O仮想化ソリュー
ションは、通常個々にケーブルで結ばれて
いるサーバとストレージプール、サーバと
ネットワークプールの間に、高速共有 I/O
バスを持った仮想化コントローラを置く。
個々に物理的なケーブルで結ばれていた
ものを、高速共有 I/Oバス経由での接続に
切り替えるのだ。
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
エンタープライズエンジニアリング室
プラットフォームシステム部
プラットフォームシステム推進課
筧 直之氏
シーゴシステムズ・ジャパン株式会社
代表取締役
尾方 一成氏
各サーバに数多くの I/Oカードやケーブ
ルをインストールする必要はなく、サーバ
が高く、なおかつ多くのお客さまに納得し
こうした機能が、日本よりも仮想化が
間を1本のケーブルで接続できるようにす
ていただけるような高い技術を持った製品
普及している米国で、大規模ユーザーが
ることで、瞬時に仮想リソースを作成す
を選択しなければなりません」
(筧氏)
日立製ストレージを指名する要因となって
いる。
る。この結果、サーバ管理を数百倍高速化
そこで選ばれたのが日立のストレージで
し、ケーブルとカードを 70%減らすことに
あり、シーゴシステムズの I/O仮想化コン
より、設備コストを最大50%削減すること
トローラだ。実は米国で稼働している大規
も可能になる。
模仮想化システムには、日立製ストレージ
CTCでは、コスト削減と今後の大規模
とシーゴシステムズの I/O仮想化システム
日本のソリューションベンダーである
仮想化システムが必要な時代が来ること
がセットで導入されているケースが多いの
CTCでは、ワールドワイドで支持される実
を見越して、サーバだけでなく、日本では
だという。
績とともに、日本のユーザーにも合わせた
国内企業に適したラインアップ
なじみの少ない I/Oを仮想化するパッケー
尾方氏によれば、
「大規模仮想化システ
製品を提供できる点でも日立を高く評価し
ジ導入を決定した。
ムのストレージには、
『日立のストレージ
ている。
「恐らく日本では 2010 年以降、仮想
を 』と指名されるお客さまがたくさんい
例えば、日立のストレージは、エンター
サーバの大規模化が進み、その結果サー
らっしゃいます。当社の製品と日立製スト
プライズ、ミッドレンジ、ローエンド、ファ
バ密集度が高まって I/Oが足りないという
レージは、米国では実績のあるポピュラー
イルストレージと製品の幅が広い。日本の
お客さまが出てくるものと予測されます。
な組み合わせなのです」
という。
ベンダーである日立だけに、日本の顧客
われわれはそこを見越したパッケージ製品
I/Oを仮想化し、これまでボトルネックと
ニーズにも合わせたラインアップだ。さら
を提供させていただきます」
(筧氏)
なっていた I/Oの枯渇という問題が解決で
に運用管理ソフトウェアとして定評のある
きたとしても、ストレージがボトルネックと
「JP1」
と連携することで、日本企業ならで
仮想化環境での高い導入実績
なるようなトラブルが起こってしまえば、
はの運用ニーズに合わせたソリューション
I/Oを仮想化する意味はない。そこでミッ
を構築することが可能となる。
CTCでは、パッケージとして仮想化ソ
ドレンジでは世界最速 で、ストレージがボ
「パッケージに採用する製品の品質や実
リューションを提供するにあたり、採用す
トルネックとなることがない日立製品が選
績については、世界レベルの技術、品質を
るベンダーをどこにするのか、綿密な検討
択されることになる。
持っていることが大前提となります。それ
を行った。
しかも仮想化環境では、ストレージにか
に加えて、日本のお客さまに適したライン
*1
「パッケージとして提供するソリューショ
かる負荷の予測ができない。そこで日立
アップ、機能、カスタマイズを行っていた
ンは、スクラッチで提供する以上にたくさ
のストレージには、コントローラ間のバイ
だけるベンダーであることも重要な選択肢
んのお客さまが対象となります。パッケー
パス機能と自動負荷分散機能により不測
となります。日本のお客さまに向けた製品
ジのコストは低く抑えることができたとし
の事態に備えるダイナミックロードバラン
という点で、日立は最高のパートナーだと
ても、導入後に不具合が頻発するような事
スコントローラが備わっている。ミッドレン
いえます」
(筧氏)
態が起これば、その分のコストが余分にか
ジ用ストレージとしては日立製品だけ が
かり、お客さまにとっても、当社にとっても
持つ機能だ。さらにシンプロビジョニング
ダメージが大きくなってしまいます。品質
による容量仮想化機能も可能である。
*2
*1:2009年 3月時点、ストレージ主要ベンダー設立の非営利
団体ストレージパフォーマンスカウンシル
(SPC)
提供のベンチ
マークテストSPC Bebchmark-1™
*2:2009年12月、日立調べ
Hitachi Storage Magazine Vol.3
17
ア ワ ー ド
Hitachi Adaptable Modular Storage 2500を
地球環境に配慮したストレージとして評価
日立のミッドレンジストレージ「Hitachi
Adaptable Modular Storage 2500」
Award(環境への配慮責任賞)を受賞し
た。Information Age誌は、企業の経営
(以下、AMS2500)が、Information
や戦略とITをテーマに、企業の業績向上
A g e 誌 が 実 施し て い る 2 0 0 9 年 の
を支援することを編集方針とした英国の雑
Information Age Innovation Awards
誌である。
制御機能や環境に配慮した製造工程など
において、the Eco-Responsibility
今回、数多くの他社製品を抑えてアワー
が高く評価された。
ドを受賞した AMS2500は、消費電力の
R F I D タ グ シ ス テ ム 導 入
勤務管理と安全対策の機能を持つRFIDタグシステムを導入
日立製作所のストレージ生産拠点の1つ
間の見極めも難しい。RFID方式では、施
などの作業上の安全対策機能も搭載して
である小田原の製造現場では、無線識別
設内に設置した読み取り機が勤務管理シ
いる。作業前に従業員の帯電状況を調べ
(RFID)
タグを活用した勤務管理システム
ステムと連動しており、従業員は RFIDタ
るといった安全対策の徹底に加え、製造す
の運用を開始した。
グ入りの名札をかざすだけでよい。規定の
るプリント基板などの不具合発生の防止に
この製造現場ではこれまで、従業員が
退社時刻から残業終了時刻までの間の休
も貢献する。
紙に直接記入する方式で就業を管理して
憩時間を自動で差し引いて集計するなど、
なお、勤務管理と安全対策の機能を組
いた。ただ、手書きでは記入ミスが生じる
実働時間も把握しやすくなっている。ま
み合わせた RFIDタグシステムの導入は、
可能性があり、記入された時間と実働時
た、RFIDタグシステムは、静電気チェック
体 制 強 化
国内初*の取り組みといわれている。
RFID:Radio Frequency IDentification
*2009年10月、日立調べ
多様化する市場ニーズに柔軟な対応ができる組織へ
日立は、文 書や画 像などの 非 構 造 化
ていたファイルストレージのソフトウェア設
データを格納するファイルストレージの事
計部も同開発本部に統合し、体制強化を
続する際の対応として、検証支援やテクニ
業を強 化 するため、2 0 0 9 年 1 0 月に
実施している。
カル支援、システム構築などのさまざまな
また、他社製サーバの接続対応を目的
面のサポートを担う。
「ファイルストレージ開発本部」として組織
を拡充した。ソフトウェア事業部に在籍し
他社製サーバに日立製のストレージを接
とした部隊を販売推進本部の中に設け、
サ ポ ー ト
業界初!!* ディスクアレイ製品向けで
7年間のハードウェア長期保証を実現
日立のミッドレンジストレージ「Hitachi
これにより、システムの保守サービス期
Adaptable Modular Storage 2000
限切れによるシステム停止や更新作業回
シリーズ」のラインアップ全 3 機種におい
数の低減を図ることができ、システム運用
て、ディスクアレイ製品向けとしては業界
のコスト削減につなげることができる。
で初めて *となる、7年間のハードウェア長
期保証を実現するロングライフサポートモ
デルの販売を開始した。
18
Hitachi Storage Magazine Vol.3
*2009年10月、日立調べ
Hitachi Adaptable Modular Storage 2500
ア ワ ー ド
日立のストレージが
パートナー満足度調査でNo.1に!
日経コンピュータ(発行:日経 BP社)が
やネットワークに携わる人を読者対象とす
2010 年 2 月 3 日号で発表した「パート
るIT総合情報誌である。
ナー満足度調査」において、日立製作所が
日立はストレージ仮想化をはじめ、スト
ストレージ部門で No.1に選ばれた。同ア
レージ業界をリードする最新テクノロジー
ワードの受賞は、3 回連続となる。なお、
をいち早く市場に投入しているほか、ワー
り、多くのパートナー企業からの支持を集
日経コンピュータは、企業の情報システム
ルドワイドでの豊富な実績があることもあ
める結果となった。
日経コンピュータ
2010年2月3日号
第12回パートナー満足度調査
ストレージ部門1位
仮 想 化 ソ リ ュ ー シ ョ ン
日本オラクル社、日立、日立システムが
サーバの仮想化ソリューションで協業
日本オラクル(株)、
(株)
日立製作所(以
導入コストが低下する一方で、増え続ける
下、日立)、
(株)
日立システムアンドサービ
「Hitachi Simple Modular Storage
サーバに対する運用管理コストが増加傾
100」を日立システムに提供する。日本オ
ス(以下、日立システム)の 3 社は 2009
向にある。そのため、SMB市場向けに各
ラクル社と日立との共同での互換性、なら
年 1 0 月 2 1 日 、中 堅・中 小 企 業 市 場
社の持つ製品を組み合わせたサーバの仮
びに相互接続検証のもと、日立システム
(SMB:Small and Medium Business
想化ソリューションを提供することにより、
は、すでに提供を開始している「仮想化ソ
業務システムの変化に対しても柔軟に対
リューション」に SMB市場向けモデルを
想化ソフトウェアと日立のローエンドディス
応できる高信頼なシステム環境を実現す
追加するなど、ソリューションを強化して
クアレイなどを活用したサーバの仮想化ソ
ることを目指す。
いく。
市場)向けに、日本オラクル社のサーバ仮
リューションの提供で協業していくことを
今回の合意により、日本オラクル社は、
3 社は、今後も、本仮想化ソリューショ
発表した。
サ ー バ仮 想 化ソフトウェア の「 O r a c l e
ンの事業拡大に向け、共同でのセミナー
近年、中級クラス PCサーバである
“コ
VM」や「Oracle Database」を、また
開催など、マーケティング・拡販活動を積
モディティ・サーバ”
の普及により、サーバ
日 立 は 、ロ ー エ ンド デ ィ ス ク ア レ イ
極的に進めていく。
仮 想 化 ソ リ ュ ー シ ョ ン
マイクロソフト社製品との連携により
高信頼な環境での顧客業務の継続性を実現
日立は、地震などの災害やシステム障
クアレイからリモートサイトに業務データ
接続性が保たれているため、確実にサー
害への対策として業務データのバックアッ
のバックアップを保存する
「リモートコピー
バ処理や業務データを自動的に切り替え
プシステムを構築する「バックアップ・ディ
機能」
と、業務処理中のサーバに障害が発
られる。さらに、災害が発生したサイトが
ザスタリカバリ設計・構築サービス」に、マ
生した場合でもリモートサイトにある予備
復旧した場合には、元のサイトに業務を戻
イクロソフト社のサーバ仮想化ソフトウェア
サーバに業務を自動的に切り替えることが
すフェールバックも行うことができる。
「Hyper-V™ 2.0」
(以下、Hyper-V)
によ
できる
「Microsoft® Windows® Server
また、地震などの災害やシステム障害時
るサーバ仮想化環境に対応したサービス
2008 R2」の「フェールオーバークラス
にも、業務データの損失がなく、業務シス
の提供を開始した。
タ機能」の連携を実現した。これにより、
テムの停止による損害を最小限に抑えるこ
今回のサービスにより、Hyper-Vによる
バックアップを行うサイトが離れていても、
とができるため、より高信頼な環境で顧客
サーバ仮想化環境において、日立のディス
サーバとディスクアレイ間の高信頼な相互
業務を継続させることが可能となる。
Hitachi Storage Magazine Vol.3
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日 立 ストレ ー ジ ソリュー ション 製 品 ラ イ ン アップ
S e r v i c e s
O r i e n t e d
S t o r a g e
S o l u t i o n s
ストレージシステム
エンタープライズやミッドレンジ、ローエンドといった各クラスに最適化されたストレージに加え、さまざまなニーズに対応できる柔軟な NAS
(Network Attached Storage)
システムやアーカイブ用ストレージもラインアップしている。
先進の仮想化ソリューションを提供する
エンタープライズストレージ
性能・機能
Hitachi
Universal Storage Platform V
Hitachi Universal
Storage Platform Vのエントリーモデル
エンタープライズストレージ
Hitachi
Universal Storage Platform VM
仮想化のサポートと業務に適応して拡張できる
高性能ストレージ
ミッドレンジストレージ
Hitachi
Adaptable Modular Storage
2000シリーズ
大容量・低コストのバックアップ支援
Tape replication機能
シンプル導入、
シンプル運用、
シンプル保守を実現したストレージ
ローエンドストレージ
Hitachi Simple Modular Storage 100
コストパフォーマンスに優れた
NASゲートウェイ製品
デジタルコンテンツを
長期保存するための
ストレージアプライアンス
ファイルストレージ
AMS2500
AMS2300
AMS2100
Hitachi
Content Archive Platform
Hitachi
Essential NAS Platform
スケーラビリティ
ストレージ管理ソフトウェア「Hitachi Storage Command Suite」
ストレージ管理ソフトウェア製品の総称を「Hitachi Storage Command Suite」
として体系化し、以下の製品を提供している。
ストレージハードウェア管理
複数・異機種ストレージ装置を一元的に管理し、
ストレージ運用を簡素化
階層ストレージリソース管理
オンライン中のデータ移行を実現し、
ストレージ資産の効率的活用を支援
ストレージリソース割当管理
サーバへのボリューム割り当てや
ファイルシステムの作成操作を簡素化
対処
構築
データ入出力パス管理
多重化したデータ入出力パスを最大限に活用し、
ストレージアクセスの可用性を向上
運用・監視
データプロテクション管理
グローバル入出力パス稼働管理
日立ディスクアレイサブシステムの高度な
バックアップ・リストア操作を簡素化し、確実なデータ保護を実現
データ入出力パス管理で多重化した
すべてのサーバのパス稼働状況を集中監視
ストレージレプリケーション管理
ストレージシステム稼働管理
SAN環境に分散するボリュームレプリケーションの
構成・稼働状況を一元管理
SAN/NAS環境全体の性能・容量を一元的に監視し、
ストレージシステムの安定稼働を支援
SAN:Storage Area Network NAS:Network Attached Storage
20
Hitachi Storage Magazine Vol.3
新 機 能 紹 介
あたかも
“水”
が器に従うかのごとく── 既存データの自動再配置機能
水槽の水が平らになるのと同様
■対象ストレージ
Hitachi Universal Storage Platform V
Hitachi Universal Storage Platform VM
Hitachi Adaptable Modular Storage 2000シリーズ
仕切りのある水槽の片側に水が入っている。その仕切りを外した
ら、水はどのように振る舞うのか。言うまでもなく、水は水槽全体
にまんべんなく広がって平らになる。水槽の片側に水がとどまって
いることはない。この水の振る舞いのように、ドライブの増設時に
各ドライブ間で使用率を自動で均一化するのが「既存データの自
動再配置機能(プールリバランス)」である。
いるはずはなく、一部の処理でレスポンスが悪いといった状況が生まれ
ドライブの追加による課題
る可能性があった。
ストレージ仮想化でつねに一歩リードしている日立のストレージ製品
群。ストレージ仮想化において豊富な導入実績があり、また継続した機
能強化も行ってきている。
既存データを自動で再配置
ストレージ仮想化には、デバイス仮想化とボリューム容量仮想化がある
ドライブの追加によるデータ配置の偏りを避けるには、ドライブ間で
が、今回紹介するのはボリューム容量仮想化における機能強化となる
「既
データの再配置などの作業が必要となるが、
「既存データの自動再配置
存データの自動再配置機能(プールリバランス)」である。
機能」では、それを自動的に実行する。これにより、新たなドライブを
ボリューム容量仮想化では、サーバに「見せる容量」とストレージへの
増設する場合でも、各ドライブの使用量は一定しており、安定した性能を
「実搭載容量(プール)」の分離を実現する。これにより、サーバにストレー
実現することになる。もちろん、サーバ側では何も意識する必要がなく、
ジ容量を大きく見せられたり、書き込みデータを複数のドライブに分散さ
システムを止めることなく通常どおりの運用を続けることができる。
せたりすることができる。ただし、実搭載容量の不足などにより、新たな
既存データの自動再配置機能の動きは、冒頭で紹介したように水が器
ドライブを追加する場合には、次のような問題があった。
に従うかのごとく、器が大きくなれば自動的に平らになるというわけであ
すでに書き込まれているデータは、これまで使ってきたドライブに格納
る。なお、既存データの自動再配置機能は、Hitachi Universal
されているため、サーバ側からのデータの読み込みが偏ることになる。
Storage Platform V/VMとHitachi Adaptable Modular Storage
一方で、新たな書き込みは新しいドライブに偏ることになってしまう。
2000シリーズにおいて利用することができる。
もちろん、ストレージ仮想化により、こうした事情をサーバ側が認識して
ドライブ増設時に既存データを自動再配置して各ドライブの使用率を均一化
ゲストOS
ゲストOS
ゲストOS
仮想ボリューム
ゲストOS
ゲストOS
ゲストOS
仮想ボリューム
プール
プール
既存ドライブ
データの偏り
増設ドライブ追加
性能アンバランス
既存データの再配置
安定した性能を実現
プール容量拡張時の性能設計を簡素化 運用コスト削減
Hitachi Storage Magazine Vol.3
21
お客さま自身も気づいていない新しい市場
販売力 =
製品力 × 営業力
column
ネスにおいて新たな価値を生み出していくた
を創出する ── 現在、日立のストレージ部門
めの架け橋としての任務を担っています。言
が掲げる重要なテーマの1つです。
い換えれば、販売企画部は、製品開発を行っ
ストレージが活用される分野は、まだまだ発
ているスタッフと、営業スタッフのちょうど中
展の途上にあると思います。
間、お互いをうまくくっつけ
例えば、世の中にはさまざま
る役割の部署でもあります。
なデータが蓄積されていま
この役割の中で感じたの
す。セキュリティのために設
が、RAIDシステム事業部で
けられた各種センサーや、防
も開発現場のスタッフがこ
犯カメラのデータもその 1
れまで以上にお客さまのと
つ。みなさんのご自宅にある
ころへ同行する必要がある
機器もデジタル化され、個別
ということです。これが冒頭
にデータを持つようになりま
で申し上げた、新しい市場を
した。ところが、こうした多種
創出することにつながるから
多様なデータの活用範囲は
です。
限定されがちなため、そこに
営業時代に「販売力=製品
は新市場を創出する機会が
力×営業力」との話を伺った
十分にあると考えています。
ただし、新市場を創出する
には、日立にも意識改革が
必要となります。従来どおり
ことがあります。製品として
の競合力が非常に強ければ、
日立製作所 RAIDシステム事業部
販売推進本部 販売企画部 部長
馬場政彰
黙っていてもお客さまに買っ
ていただけます。逆に製品
の縦割りの提案では、新しい
力が弱かったとしても、強力
市場は創出できないと思うからです。お客さ
レージを提案することはありましたし、お客さ
な営業力があれば買っていただけるという意
まご自身も気づいていない新しい市場ですか
まに同行して、RAIDシステム事業部の製造現
味の計算式です。
ら、組織の枠を越えた提案が必須となります。
場(小田原)
を見学したことも何回かあります。
もちろん、このどちらかが「0」であれば、答
私がこのように考えるようになったきっかけ
ところが、やはり組織の外側から見ているの
えも「0」になってしまいますから、いかにして
は、RAIDシステム事業部の販売企画部への
と、内側で仕事をするのとでは大きく違いまし
製品力と営業力の両方を上げていくかが販売
異動にあります。
た。ストレージ製品の製造現場では出荷前に
力を上げるためのキーであり、それを担うの
私は、入社以来 20 数年もの間、営業部門
徹底的なテストを製造時間の何倍もかけて
が販売企画部になります。
に所属し、メインフレームからパソコン、ネット
行っているのを目のあたりにすると、
「日立の
そして、販売力を「新市場の創出力」とする
ワーク、アプリケーション開発や運用など、実
ストレージは本当に品質管理を徹底としてい
ことにより、お客さまに喜んでいただき、ひい
に多岐に渡る営業品目を販売してきました。
る」と実感したものです。営業の視点では、こ
ては社会貢献にもつなげていくのが、日立の
長年、営業部門に従事した私が、RAIDシステ
の理解が不十分だったように思います。
役割です。
ム事業部の販売企画部へと異動となったのは
RAIDシステム事業部の販売企画部は、スト
日立は、今年創業 100 周年を迎えますが、
2008年の 10月のこと。RAIDシステム事業
レージ製品の提供によってお客さまの価値を
創業時からの企業理念である「優れた自主技
部にきて何よりも感じたことは「モノづくり」へ
創造し、また、お客さまのニーズを製品開発
術、製品の開発を通じて社会に貢献する」をこ
のこだわりでした。もちろん、営業としてスト
に活かすことによって、さらにお客さまがビジ
れまで以上に実践していきたいと思います。
22
Hitachi Storage Magazine Vol.3
Vol.3
Services Oriented Storage Solutions
「Services Oriented Storage Solutions」とは、みなさまの業務
に重点をおくことにより、複雑なシステム構成やその運用を意識し
ていただくことなく、ストレージ資産の最適な活用を実現する日立スト
レージソリューションのコンセプトです。
このコンセプトの下、日立はみなさまのビジネスや ITシステムの価
値を高めつつ、ストレージのTCO(Total Cost of Ownership)
を
削減し、ROI(Return On Investment)向上を支援していきます。
編集後記
百年
生誕100年。
昨年のことになりますが、小倉(現・北九州市小倉北区)育ちとして知られる作家、
松本清張の生誕100年にあたる年だったそうです。事例取材に訪れた北九州市の
資料にありました。松本清張が第 28回芥川賞を受賞した作品の『或る
「小倉日記」
伝』は、小倉が舞台となっており、地元への思い入れの深さをうかがうことができ
ます。ちなみに、
『或る
「小倉日記」伝』は、森鷗外が小倉に在任していた 3年間の
日記を、実在した郷土史家の田上耕作が探すという物語(フィクション)
です。
話は変わりますが、北九州市では昨年、Jリーグチーム「ギラヴァンツ北九州」
(旧:ニューウェーブ北九州)
が誕生しました。チーム名の「ギラヴァンツ」
とは、イタ
リア語で
“ひまわり”
を意味する「Girasole」
と
“前進する”
を意味する「Avanzare」
を組み合わせた造語。ひまわりは北九州市の市花です。
Jリーグは「Jリーグ百年構想 〜スポーツで、もっと、幸せな国へ。〜 」
というス
ローガンを掲げていますので、北九州市には新たな 100年の楽しみができたので
はないでしょうか。
そして2010年、日立は創業100周年を迎えます。
これまでの 100 年と同様、次の 100 年も、日立は蓄積してきた確かな技術を
活かし、本誌の特集でご紹介したように、地球規模で課題解決に貢献する
「社会イ
ノベーション事業」を推進することで、皆さまからの期待にこたえていきます。
[企画・編集] 株式会社日立製作所 RAIDシステム事業部
〒140-8573 東京都品川区南大井六丁目26番2号
大森ベルポートB館12F
http://www.hitachi.co.jp/storage/
本誌に記載している会社名・製品などは、それぞれの会社の商標または登録商標です。
本誌記載の内容について社外からの寄稿や発言は、必ずしも当社の見解を示している
わけではありません。画面表示をはじめ、製品仕様は改良のため変更することがあります。
北 九 州 市にお 邪 魔した の は 、
20 数年ぶりともいわれた大雪
の翌日。取材当日も朝から雪が
舞っていました
Hitachi Storage Magazine Vol.3
23
Fly UP