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原子燃料サイクルの現状 最近の原油価格高騰

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原子燃料サイクルの現状 最近の原油価格高騰
原子燃料サイクルの現状
最近の原油価格高騰
■ 原子燃料サイクルの現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
Ⅰ 原子燃料サイクルとは
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
∼サイクル政策についての中間とりまとめ∼ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7
Ⅱ 日本原燃(株)の再処理事業
Ⅲ 原子力長期計画での議論
3
■ 最近の原油価格高騰 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
Ⅰ 世界的な石油需要の増加・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
Ⅱ 供給余力の低下 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
Ⅲ その他諸要因 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
Ⅳ 今後の原油価格の見通し ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
Ⅴ 当社への影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
原子力発電所における地震対策
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
新潟県中越地震に伴う当社取り組み
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
当社に関する主要な動き s s s
16
18
s s 平成16年11月∼平成16年12月
11.05
サハリン2プロジェクトのLNG売買契約書に調印
11.24
女性のキャリアチェンジを支援するスクール事業化プロジェクト「TEPCO WORK&CAREER
SCHOOL」の受講生を募集開始
12.01
「日本温暖化ガス削減基金」および「日本カーボンファイナンス株式会社」への出資について発表
「サンプラザ」
(東京都中野区)へのガス販売を開始
DVD映像配信サービス「ひかりde DVD」
トライアル開始
FTTHサービス『TEPCOひかり・マンションタイプ』における「VDSLプラン(100Mbps)」の提供
開始
FTTHサービス『TEPCOひかり』のテプコケーブルテレビ(T-CAT)への提供開始
12.20
12.22
2
横須賀火力発電所1号機および横浜火力発電所4号機を廃止
「接続供給約款」と「振替供給約款」を一体化した「託送供給約款」を経済産業大臣に届出
原子燃料サイクルの現状
我が国の原子力開発利用の基本的考え方を示す原子力長期計画は、ほぼ5年に1度評価・
見直しが行われ、現在、原子力委員会内に設置された新計画策定会議にて、平成17年中の
とりまとめを目標とした検討が進められています。
新計画策定会議では、まず原子燃料サイクル政策について、活発な議論が行われ、これ
まで基本的政策とされてきた使用済燃料の再処理路線が継続されることとなりました。
この結果を受けて、青森県六ヶ所村に再処理工場を建設中の日本原燃(株)は、青森県を
始めとする地元自治体との間で安全協定を締結し、先日、ウラン試験を開始しました。
今回は、こうした原子燃料サイクルを巡る最近の動きについて、レポートします。
Ⅰ
原子燃料サイクルとは
天然のウランは核分裂しにくいウラン 238 が大部分(99.3 %)を占めており、核分裂しやすい
ウラン235はわずか0.7%しか含まれていません。現在、日本の原子力発電で使用している軽水炉
では、ウラン235の含有率を濃縮して3∼5%程度にまで高めたものを燃料として使っています。
このウラン235の含有率を高める工程を「濃縮」といいます。
また、原子炉で使い終わった燃料は、ウラン235が核分裂(燃焼)することで含有率が約1%まで減
りますが、核分裂しにくいウラン238に中性子が吸収されてできたプルトニウム239という核分裂
性物質が新たに生成されています。したがって、一定期間燃焼させた後の燃料(使用済燃料)から燃え
残りのウランと、新たに原子炉で燃焼中にできたプルトニウムを分離して取り出せば、再び燃料として
使うことができます。このウランやプルトニウムを使用済燃料から分離して取り出す工程を「再処理」
といいます。
この一連の流れを原子燃料サイクルといい、原子燃料サイクルを実現することによってウラン資源
をリサイクルして利用できるようになります。
■ 図1 原子燃料サイクル
採掘
製錬
ウラン
鉱石
ウラン精鉱
(イエローケーキ)
ウランとプルトニウムの流れ
放射性廃棄物の流れ
回収
ウラン
濃縮ウラン
(六フッ化ウラン)
回収ウラン・
プルトニウム
(MOX粉末)
再処理
使用済
燃料
高レベル
放射性廃棄物
使用済
燃料
劣化ウラン
(二酸化ウラン)
低レベル
放射性廃棄物
低レベル
放射性廃棄物
埋設センター
再転換
MOX燃料*
成型加工
中間
貯蔵 MOX燃料
濃縮ウラン
(二酸化ウラン)
集合体
使用済
燃料
最終処分場
ウランの流れ
天然
ウラン
濃縮
ウラン鉱山
高レベル
放射性廃棄物
貯蔵管理
転換
発電
燃料
集合体
原子力発電所(軽水炉)
成型加工
*:ウランとプルトニウムの混合酸化物燃料をMOX
燃料(Mixed-Oxide Fuel)
と呼んでいます。
3
Ⅱ
日本原燃(株)の再処理事業
施設概要
現在、日本原燃(株)が青森県六ヶ所村に建設を進めている再処理工場は、イギリスやフランスに
おけるこれまでの30年以上にわたる経験、実績と核燃料サイクル開発機構の運転経験、実績等を
踏まえ実用化された技術を導入した、国内初の商業用の大規模再処理工場です。
■ 図2 六ヶ所再処理工場
●施設の所在地
青森県上北郡六ヶ所村
大字尾駮字沖付
●施設の概要
年間の最大再処理能力 800トンU
一日あたりの最大再処理能力 4.
8トンU
使用済燃料貯蔵設備の最大貯蔵能力 3,
000トンU
●敷地面積
約380万m2
(高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター等を含む)
出典:日本原燃HP他
■ 図3 再処理工場のあゆみ
年
事 項
1980(昭和55年)03月
●
日本原燃サービス株式会社発足
1984(昭和59年)07月
●
電気事業連合会が青森県および六ヶ所村に原子燃料サイクル3施設の立地申し入れ
1985(昭和60年)03月
●
日本原燃産業株式会社発足
4月
●
青森県知事、六ヶ所村長が電気事業連合会長に原子燃料サイクル3施設の立地受け入れを回答
4月
●「原子燃料サイクル施設の立地への協力に関する基本協定書」
を締結
1989(平成 元 年)03月
●
再処理事業指定申請
1992(平成04年)07月
●
日本原燃サービス株式会社と日本原燃産業株式会社が合併、
「日本原燃株式会社」発足
12月
●
再処理事業指定
1993(平成05年)04月
●
再処理工場着工
1998(平成10年)07月
●
青森県・六ヶ所村、隣接市町村と「六ヶ所再処理工場の受入れ貯蔵施設等で行う燃焼度計測装置の校正試験に
用いる使用済燃料の受入れ及び貯蔵に当たっての周辺地域の安全確保及び環境保全に関する協定書」を締結
10月
●
第1回試験用使用済燃料の搬入
1999(平成11年)12月
●
再処理事業の開始(貯蔵施設の竣工を受け事業開始を届出)
2000(平成12年)10月
●
青森県・六ヶ所村、隣接市町村と「六ヶ所再処理工場の使用済燃料受入れ貯蔵施設等の周辺地域安
全確保及び環境保全に関する協定書」を締結
12月
●
第1回使用済燃料の搬入
2001(平成13年)04月
●
通水作動試験を開始
2002(平成14年)11月
●
化学試験を開始
2004(平成16年)
11月22日、12月03日
●
青森県・六ヶ所村、隣接市町村と「六ヶ所再処理工場における使用済燃料の受入れ及び貯蔵並びにウラン
試験に伴うウランの取扱いに当たっての周辺地域の安全確保及び環境保全に関する協定書」を締結
●
ウラン試験を開始
8月
11月
2004(平成16年)
12月21日
4
再処理の工程
原子力発電所から輸送された使用済燃料は、貯蔵プールで一定期間冷却されます。冷却された
燃料を細かくせん断した後、硝酸で溶解し、ウラン溶液、プルトニウム溶液、核分裂生成物とに分離
します。さらにウラン溶液およびプルトニウム溶液から微量の核分裂生成物を除去(精製)
し、硝酸を
取り除き(脱硝)
、ウラン酸化物及びウラン・プルトニウム混合酸化物の2種類の製品をつくります。
■ 図4 日本原燃(株)六ヶ所再処理施設の例
受 入・貯 蔵
せん断・溶 解
せん断
分離
核分裂
生成物の
分離
キャスク
精製
ウランと
プルトニウム
の分離
脱硝
製品貯蔵
硝酸
ウラン溶液
ウラン
脱硝
ウラン酸化物
製品
硝酸
プルトニウム
溶液
ウラン
プルトニウム
混合脱硝
ウラン
プルトニウム
混合酸化物製品
溶解
貯蔵プール
使
用
済
燃
料
被
覆
管
な
ど
高レベル
放射性廃液
容器に入れて
貯蔵庫で安全に保管
ウラン
プルトニウム
ガラス固化体にして
安全に保管
核分裂生成物(高レベル放射性廃棄物)
被覆管など
日本原燃(株)六ヶ所再処理施設の例
日本やドイツなどは、イギリス(BNFL)およびフランス(COGEMA)に、再処理を委託してきて
おり、当社でも再処理のほとんどをこの両国で実施してきました。イギリスおよびフランスで回収
されたプルトニウムは、ウランと混合してMOX燃料に加工し、日本に輸送して、日本の原子力発電所
で使用する予定です。
■ 図5 世界の主要な再処理施設(運転中)
国 名
設 置 者
設置場所(工場名)
フランス
フランス核燃料公社
(COGEMA)
ラ・アーグ
(UP2-800)
(UP3)
イギリス
イギリス原子燃料会社
(BNFL)
セラフィー ルド
(B205)
(THORP)
日 本
核燃料サイクル開発機構
(JNC)
茨城県 東海村
(東海再処理工場)
処 理 能 力
操業開始年
1,000tU/年(濃縮ウラン)
1,000tU/年(濃縮ウラン)
(2基合計の処理能力は1,700tU/年)
1994
1989
1,500tU/年(天然ウラン) 1,200tU/年(濃縮ウラン)
1964
1994
0.7tU/日(濃縮ウラン)
1981
出典:原子力ポケットブック 2004
新計画策定会議資料
5
試験運転の概要
■ 図6 試験運転の概略フロー
試験運転の全体スケジュールは、フランスの
ラ・アーグ再処理工場、我が国の東海再処理工場
各試験ステップの実施内容
などの試験、運転経験なども踏まえ計画して
建
設
工
事
います。
再処理工場では、放射性物質を取り扱うこと
水、蒸気等による機器単体の作動・機能確
認及び系統毎若しくは複数の系統毎の作
動確認等
通水作動試験
(化学試験準備)
通水作動試験のための仮設備撤去、化学
試験のための仮設備設置、槽仮閉止等
から、
「 水や空気」→「化学薬品」→「ウラン」→
「使用済燃料」
の順に、段階的に実際の運転で取り
硝酸、有機溶媒等の試薬による機器単体、
系統の作動確認並びに性能確認、系統毎
及び建屋全体の作動確認等
化学試験
扱うものに近づけて試験を実施していきます。
試験では、機器・設備の作動確認、性能確認、
(ウラン試験準備)
セル仮閉止、化学試験のための仮設備撤
去、ウラン試験のための仮設備設置等
処理能力の確認を行い、節目節目で安全を確認
しながら進めていきます。
また、このように段階的に試験を行いながら
機器・設備の故障や不具合を早期に見つけ出し、
調整・手直しを行うとともに、これらを通じて、
ウラン溶液及び模擬ウラン燃料集合体に
よる機器及び系統の作動確認、並びに性能
確認、系統毎及び建屋全体の作動確認等
ウラン試験
試
験
運
転
(総合確認試験準備)
セル閉止、槽閉止及び仮設備撤去等
運転員や保守員の技術向上を図り、安全かつ
安定な操業を目指していきます。
総合確認試験
アクティブ試験に向けた工場全体での最終
確認
アクティブ試験
使用済燃料による工場全体の機能・性能
の確認及び安全性、操作性の確認等
■ 図7 再処理工場の操業に至るまでのスケジュールの概要
(予定)
平成13年
平成14年
平成15年
平成16年
平成17年
平成18年
▽竣工
前処理建屋
H13.4
H15.1
通水作動試験
H17.1
化学試験
分離建屋
H13.11
H17.12
ウラン試験
H14.11
H17.2
H18.7
アクティブ
試験
H17.12
H18.7
H17.12
H18.7
H17.12
H18.7
H17.12
H18.7
精製建屋
H13.12
工 程
H14.11
H17.3
ウラン脱硝建屋
H14.4
H15.2
H16.12
ウラン・プルトニウム混合脱硝建屋
H14.3
H15.8
H17.3
高レベル廃液ガラス固化建屋
H14.9
H15.12
H17.10 H17.12 H18.7
低レベル廃液処理建屋
H13.11
H14.11
H17.12
H18.7
平成16年12月現在
6
Ⅲ
原子力長期計画での議論
∼サイクル政策についての中間とりまとめ∼
原子力長期計画について
我が国の原子力利用は、昭和 30 年 12 月に制定された原子力基本法で本格的に始まりました。
同法に基づき、昭和31年1月には、原子力政策を企画、審議し、決定する役割等を担う原子力委員
会が設置されました。
原子力委員会は、原子力に係わる国の施策を計画的に遂行するために、原子力の研究、開発および
利用に関する長期計画(原子力長期計画)を策定しています。原子力長期計画は、我が国の原子力開
発利用の基本的考え方を示すもので、昭和31年に最初の計画ができて以来、計画の進展や策定時と
の情勢の変化等を踏まえて、概ね5年毎に評価・見直しが行われ、これまでに9回の計画が策定され
てきました。現行の計画は平成12年に策定されましたが、原子力委員会は、平成16年6月に新た
な長期計画を策定するための新計画策定会議を立ち上げ、平成17年中のとりまとめを目指して検討
を行っているところです。
新計画策定会議での議論の内容
資源に乏しい我が国では、第一回の原子力長期計画から、原子燃料サイクル路線を国の基本的な
政策としています。平成16年6月21日より開始された新計画策定会議では、まず「原子燃料サイクル
のあり方」
について検討することとされ、11月12日の第12回策定会議まで継続して議論がなされ
ました。
議論にあたっては、政策を検討・評価するため、4つの「基本シナリオ」を想定し、あらかじめ定めた
10項目の「評価の視点」に沿って評価が実施されました。
基 本シナリオ
シナリオ1 全 量 再 処 理
使用済燃料は、適切な期間貯蔵された後、再処理
シナリオ2 部 分 再 処 理
使用済燃料は、再処理するが、再処理能力を超えるもの
は直接処分
シナリオ3 全量直接処分
使用済燃料は、直接処分
シナリオ4 当 面 貯 蔵
使用済燃料は、当面貯蔵し、その後再処理するか、直接
処分するかのいずれかを選択
7
評価の視点
( 1 )安全の確保
( 2 )エネルギーセキュリティ(資源節約性、供給安定性)
( 3 )環境適合性(循環型社会との整合性、放射性廃棄物の諸量比較、CO2発生量)
( 4 )経済性(燃料サイクルコスト比較)
( 5 )核不拡散性(平和利用の担保)
( 6 )技術的成立性(技術の困難性)
( 7 )社会的受容性(社会的受容性、立地困難性)
( 8 )選択肢の確保(将来の柔軟性)
( 9 )政策変更に伴う課題(既投資、追加発生コスト)
(10)海外の動向
評価の視点のうち、経済性に関する検討に際しては、2002年度から2060年度まで(59年間)に
発生する使用済燃料に係るサイクル費用を事業毎の諸量をもとに計算し、シナリオ毎の経済性を発電
単価(円/kWh)で評価しました。
その結果、現在のウラン価格の水準の下では、直接処分した方が再処理するよりも原子燃料サイ
クルコストは約0.5∼0.7円/kWh安いと試算されました(1世帯あたりの年間電気代で約600∼
840円に相当)
。
しかし、政策変更に伴う費用のうちコストとして計算できるもの(六ヶ所再処理工場への既投資、
廃止措置および使用済燃料問題による原子力発電所停止に伴う火力の焚き増し費用等)を59年間の
発電電力量で平均化したものは約0.9∼1.5円/kWhとなり、これを含めると直接処分するよりも
再処理の方が経済的に優位となる可能性があります。
■ 図8 シナリオ毎の試算結果(発電単価:割引率2%)
政策変更コストを59年間の発電電力量で平均化
発電単価(円/kWh)
10
【政策変更コスト】
0.9∼1.5円/kWh
差額
0.5∼0.7円/kWh
9
六ヶ所再処理関連コスト
(既投資、廃止措置)
+
代替火力コスト(①、②)
8
7
6.0-6.2
6
5.2
5.0-5.1
5.4-5.6
4.5-4.7
5
6.2-6.3
5.6-5.7
4.7-4.8
4
①
②
②:15年間使用済燃料が搬出
できず原子力が停止した場合
資本金
+
3
運転維持費
2
1.6
1.4-1.5
0.9-1.1
1.1-1.2
1
0
8
原子燃料サイクル費
シナリオ1
(全量再処理)
シナリオ2
(部分再処理)
シナリオ3
(全量直接処分)
シナリオ4
(当面貯蔵)
①:10年間使用済燃料が搬出
できず原子力が停止した場合
結 論
全ての評価の視点について検討・議論した結果、シナリオ1の再処理路線が、現在のウラン価格の
水準や技術的知見の下では、経済性では劣るものの、将来にわたるエネルギーセキュリティーの確保、
環境適合性(廃棄物の放射能の低減など)
、将来の不確実性への対応能力(状況変化に対する柔軟な対
応)などの点で総合的に優位との評価がなされ、再処理を基本方針とする中間とりまとめが作成され
ました。
【再処理を基本方針として採用する主な理由】
●再処理路線は直接処分路線に比較して、現在のウラン価格の水準や技術的知見の下では「経済性」
の面では劣るが、
「エネルギーセキュリティ」
、
「環境適合性」
、
「将来の不確実性への対応能力」等の面
で優れており、原子力発電を基幹電源に位置づけて長期にわたって利用していく観点から総合的に
みて優位と認められる。
●国及び民間事業者が原子燃料サイクルの実現を目指してこれまで行ってきた活動と長年かけて
蓄積してきた社会的財産は、我が国が原子力発電を基幹電源に位置づけて適宜適切に技術進歩を
取り入れつつ長期にわたって利用し、
「エネルギーセキュリティ」
、
「環境適合性」
、
「将来の不確実性へ
の対応能力」等の面での優位性を享受していくために、維持するべき大きな価値を有している。
●再処理路線から直接処分路線に政策変更を行った場合においても、立地地域との信頼関係の
再構築が必要となる。その再構築は極めて困難であると予想され、その結果として、原子力発電所
からの使用済燃料の搬出が困難になり、原子力発電所が順次停止する事態が発生することや中間
貯蔵施設と最終処分場の立地が進展しない状況が続くことが予想される。
新計画策定会議委員
【議長】近藤駿介(原子力委員会委員長)
【委員】井川陽次郎(読売新聞東京本社論説委員)井上チイ子(生活情報評論
家) 内山洋司(筑波大学大学院システム情報工学研究科リスク工
学専攻教授)岡
俊雄(日本原子力研究所理事長)岡本行夫(外交
評論家)勝俣恒久(東京電力株式会社取締役社長)河瀬一治(敦賀市
長)神田啓治(京都大学名誉教授、エネルギー政策研究所所長)木元
教子(原子力委員会委員)草間朋子(大分県立看護科学大学学長)児
嶋眞平(福井大学学長)齋藤伸三(原子力委員会委員長代理)笹岡好
和(全国電力関連産業労働組合総連合会長)佐々木弘(放送大学教授)
末永洋一(青森大学付属総合研究所所長)住田裕子(弁護士、獨協大学
特任教授)田中知(東京大学大学院工学系研究科教授)千野境子(産
経新聞社大阪本社編集局特別記者兼論説委員) 殿塚
一(核燃料
▲ 新計画策定会議
サイクル開発機構理事長)中西友子(東京大学大学院農学生命科学
研究科教授)庭野征夫(日本電機工業会原子力政策委員会委員長)
橋本昌(茨城県知事)伴英幸(原子力資料情報室共同代表)藤洋作(電
気事業連合会会長)前田肇(原子力委員会委員)町末男(原子力委員
会委員)山地憲治(東京大学新領域創成科学研究科先端エネルギー
工学専攻教授)山名元(京都大学原子炉実験所教授)吉岡斉(九州
大学大学院比較社会文化研究院教授)和気洋子(慶応義塾大学商学
部教授)渡辺光代(日本生活協同組合連合会理事)
9
評価の視点と主要な論点
評価の視点
主要な論点
前提として必要不可欠な視点からの評価
安全の確保
・いずれのシナリオでも適切な対応を講じることにより、安全確保が可能。
・現時点では、直接処分には、技術的知見の蓄積が必要。
技術的成立性
・シナリオ1が最も技術的な課題が少ない。
・シナリオ4は、長期間にわたって技術選択が先送りされる状況下で、技術基盤や
人材を維持するための投資を継続することは困難。
シナリオ間の政策的意義の比較衡量を行う視点からの評価
経済性 発電原価
・シナリオ1は、現在のウラン価格などの状況下では、他のシナリオに比べて劣る。
・再処理によるコスト増は、他のリサイクルでの負担額と比較しても決して大きく
ない。
政策変更コストを考慮
エネルギーセキュリティ
・なお、政策変更コストを勘案すると、シナリオ1が優位になりうる。
・シナリオ1は、供給安定性、資源節約性の面で優位性あり。
・この優位性は、FBRが導入されれば格段に高まる。
環境適合性
・シナリオ1は、高レベル放射性廃棄物の放射能の潜在的有害度、環境負荷(高レベ
ル放射性廃棄物の体積及び処分場の面積)、循環型社会との適合性の面で優位性
あり。
・この優位性は、FBRが導入されれば格段に高まる。
核不拡散性
・厳格な保障措置・核物質防護を講ずれば、シナリオ間に優位な差はない。
・ただし、直接処分では、処分後数百年から数万年にわたり転用誘引度が高まるの
で、この間における国際的に合意できるモニタリング手段と核物質防護措置の
開発が必要。
海外動向
・各国は地政学要因、資源要因、原子力発電の規模やコスト競争力等に応じて再処理
路線あるいは直接処分路線を選択。
・直接処分を選択している米国であっても高レベル放射性廃棄物処分場の規模や数
の増大を最小限にすることを目的に先進的再処理技術を開発中。
現実的な制約条件となる視点からの評価
政策変更に伴う課題
・直接処分では、現時点において技術的知見の蓄積が欠如しており、Pu を含んだ
使用済燃料の処分場を立地することは困難が予想。
・これまで再処理を前提に進められてきた立地地域との信頼関係を損ない、使用済
燃料等の受け入れや中間貯蔵施設の立地が滞り、現在運転中の原子力発電所が
順次停止する可能性が高い。
社会的受容性
(立地困難性)
・シナリオ4は、①再処理事業に関する技術や人材、国際的理解を維持することが
困難、②多くの中間貯蔵施設が必要となるが、将来の方針を定めず立地すること
は困難、③最終処分場の立地活動が長期に停止、といった現実的な課題あり。
選択肢の確保(将来の不確実性への対応能力)の視点からの評価
柔軟性
・シナリオ1は、現在の人材、技術による幅広い対応が可能。
・シナリオ4は、論理的には不確実性に対する対応能力があるはずであるが、現実に
は長期間事業化しないままで、再処理に関する技術・人材及び国際理解を維持
することは困難。
10
● 新計画策定会議の中間とりまとめ(主要部抜粋)●
【基本方針】
我が国における原子力発電の推進にあたっては、経済性の確保のみならず、循環型
社会の追究、エネルギーセキュリティの確保、将来における不確実性への対応能力の
確保などを総合的に勘案するべきとの観点から、核燃料資源を合理的に達成できる
限りにおいて有効に利用することを目指すものとし、
「安全性」
、
「核不拡散性」
、
「環境
適合性」を確保するとともに、
「経済性」にも留意しつつ、使用済燃料を再処理し回収さ
れるプルトニウム、ウラン等を有効利用することを基本方針とする。
【当面の政策の基本的方向】
当面は、利用可能になる再処理能力の範囲で使用済燃料の再処理を行うこととし、
これを超えて発生する使用済燃料は中間貯蔵することとする。中間貯蔵された使用
済燃料の処理の方策は、六ヶ所再処理工場の運転実績、高速増殖炉及び再処理にかか
る研究開発の進捗状況、核不拡散を巡る国際的な動向等を踏まえて2010年頃から
検討を開始する。この検討は基本方針を踏まえ柔軟性にも配慮して進めるものとし、
その処理に必要な施設の建設・操業が六ヶ所再処理工場の操業終了に十分に間に
合う時期までに結論を得ることとする。
国においては、この基本方針に則って、必要な研究開発体制、所要の経済的措置の
整備を行うとともに、安全の確保や核不拡散に対する誠実な取組み、国民や立地地域
との相互理解を図るための広聴・広報等への着実な取組みを行うべきである。特に、
プルサーマルの推進や中間貯蔵施設の立地について一層の努力を行う必要がある。
民間事業者には、これらの国の取り組みを踏まえて、この基本方針に則って、安全
性、信頼性の確保と経済性の向上に配慮しつつ、核燃料サイクル事業を責任をもって
推進することが期待される。特に、六ヶ所再処理工場に関しては、安全・安定操業の
確保、
トラブルへの対応策の準備を含む事業リスク管理の徹底とリスクコミュニケー
ションによる地域社会に対する説明責任の徹底を通じて、これを円滑に稼動させて
いくことが期待される。
また、プルトニウム利用の徹底した透明化を進めるため、事業者は、プルトニウム
を分離する前に、プルトニウム利用計画を公表し、その利用量、利用場所、利用開始
時期及び利用に要する期間の目途などからなる利用目的を明らかにすることが適切
であり、事業の進展に応じて順次これらをより詳細なものにしていくなどにより、
これを誠実に実施していくことが期待される。
なお、国及び民間事業者は、長期的には技術の動向、国際情勢等に不確実要素が
多々あることから、それぞれにあるいは協力して、こうした将来の不確実性に対応
するために必要な調査研究を進めていくべきである。
11
最近の原油価格高騰
2003 年春以来上昇を続けてきた原油価格は、2004 年 10 月 25 日にニューヨーク
市場のWTI原油先物価格で55.67ドル/バーレルの史上最高値を記録し、現在も高値で
推移しています。「世界経済の血液」とも称される原油の価格高騰は、世界経済に大きな
影響を与えることはもちろん、火力発電所の燃料コストの増加要因ともなります。
今回は、最近の原油価格高騰の状況についてレポートします。
原油価格高騰
世界の原油取引の指標価格となっているWTI原油(ウェスト・テキサス・インターメディエイト原油:
西テキサス地方の中質原油)の先物価格は、2003年春から上昇を始め、昨年5月12日に湾岸戦争
前の最高値40.42ドル/バーレルを更新しました。価格はその後も上昇を続け、10月25日に55.67
ドル/バーレルの史上最高値を付けました。現在、一時期の過熱気味の高騰局面を脱しましたが、
依然として高値で推移しています(図1)。
こうした原油価格高騰の背景には、需給の逼迫の他、地政学的リスクなどの諸要因があります。
■ 図1 WTI先物価格の推移
(ドル/バーレル)
60
史上最高値
55.67$/b記録
55
50
イラク戦争
開戦
ユコスの経営
危機浮上
OPECが
減産決定
45
サウジアラビアで
テロ発生
40
北米が
厳冬
OPECが
減産決定
ハリケーン
「アイバン」襲来
35
30
25
03/1
Ⅰ
サウジアラビアで
テロ発生
4
7
10
04/1
4
ベネズエラの
国民投票
7
(月)
10
1バーレル≒159リットル
世界的な石油需要の増加
現在、中国やインドなどが急速に経済成長を続けるとともに、好調な米国経済に牽引される形で
先進諸国においても景気が回復傾向にあります。こうした経済発展・景気回復に伴い、世界の石油
需要が著しく増加しています。
IEA
(国際エネルギー機関)
のレポートによると、2004年の世界の石油需要は前年に比べて約270
万バーレル/日の増加となり、近年では最大の増加幅となったと推定されています
(図2)
。OPEC
(石
油輸出国機構)第3位の産油国であるUAE
(アラブ首長国連邦)1国分の生産量
(約255万バーレル/
12
日)
を超える規模の需要が、この1年間に創出されたことになります。
■ 図2 全世界石油需要実績と見通し
■ 図3 OPEC(除くイラク)生産量の推移
(百万バーレル/日)
(百万バーレル/日)
29.0
86.0
供給
28.0
84.0
0.31 0.36
270万b/dの
需要増加
82.0
80.0
82.4
1.94 1.90 1.99 2.47
0.85
27.57
1.66
27.74
27.58
83.7
78.0
27.53
26.0
79.7
77.3
0.23
1.01 0.67
27.0
76.0
サウジが生産能力を
増加したが生産余力は
わずか85万b/dのみ
生産余力
生産実績
需要
27.11
25.85
77.9
25.0 25.81
26.89
25.81
26.14
74.0
25.43
72.0
2001
2002
2003
出典:IEAおよび米国エネルギー省
Ⅱ
2004
2005 (年)
24.0
04/1 2
3
4
5
6
7
出典:IEA「Oil Market Report 12月号」
8
9
10
11(月)
供給余力の低下
次に供給面について見ると、急激な石油需要増加に対応する供給余力は、世界の産油国にほとんど
残っていません。特に、世界の石油生産量の 40 %程度を占め、これまで需要と供給の緩衝役と
なっていたOPECは、現在保有する生産能力ぎりぎりで生産を続けており、供給余力はサウジアラビア
を中心にわずかしかないと見られています
(図3)
。そして、生産能力の増強には相当の費用と時間を
必要とします。
Ⅲ
その他諸要因
以上のように世界の石油需給バランスが厳しくなっている中で、さまざまな突発的な価格変動要
因が、原油価格に影響を与えています。
地政学的リスク
今回の原油価格高騰に最も影響を与えている要因として、イラクをはじめとする中東地域やナイ
ジェリアなどの産油国の政情不安、いわゆる地政学的リスクが高まっていることが挙げられます。
原油価格高騰に至る直接のきっかけは、2003年4月の戦争終結後もいっこうに治安が回復しな
いイラク情勢にありました。戦争終結当初には、イラクの原油生産は、短期間で戦争前の水準に回復
すると思われていましたが、相次ぐパイプラインの爆破により、生産量が安定しませんでした。さら
に、イラクでの政情不安が周辺諸国に波及し、特にサウジアラビアでテロが度々発生するなど、原油
の供給力への不安感が常にマーケットに重くのしかかることになりました。
また、混沌とする中東情勢に加え、ロシアで170万バーレル/日程度(ロシア生産量の約20%弱)
を生産する大手石油会社ユコス社の脱税・経営破綻問題や、米国の主要原油輸入先であるベネズエラ
での政情不安、アフリカ最大の産油国であるナイジェリアの民族紛争など、主要産油国で供給不安に
繋がる問題が発生する度に、原油価格が跳ね上がっていきました(表1)。
13
■ 表1 主要産油国事情
産 油 国
生 産 量
イ ラ ク
179万b/d
イラク戦争以降治安はますます悪化。石油関連施設を狙ったテロが相次ぐ。
サウジアラビア
925万b/d
2004年5月に石油関連企業などを標的としたテロが発生、その後もテロの脅威が続く。
ロ シ ア
941万b/d
大手石油会社ユコスの経営危機問題による原油生産停止、減産が懸念されている。
ベ ネズエラ
225万b/d
2004年8月の国民投票により、大統領罷免は否決されたものの、2002年末のゼネストの
影響による石油生産能力の減少は未だ回復せず。
ナ イジ ェリ ア
235万b/d
人種間の紛争や石油施設への攻撃などが絶えず。
イ ラ ン
390万b/d
米国に「悪の枢軸国」と名指しされ、核開発疑惑も浮上。
情 勢
※生産量:2004年11月実績(IEA「Oil Market Report 12月号」より)
米国の石油製品需給
米国の石油製品需給も原油価格に大きな影響を与えます。
自動車社会である米国では、6∼8月末までの期間をドライビング・シーズンと呼び、ガソリン需要
が高まります。米国のガソリンの品質規格は州によって異なりますが、昨年初から一部の州で、ガソ
リンの環境規制が厳しくなった結果、
ドライビング・シーズンを前にガソリン在庫が積み上がらず、
ガソリン価格が史上最高値に高騰するという事態になりました。そしてニューヨーク市場では、この
ガソリン価格の高騰が原油価格をつり上げる形となりました。
さらにドライビング・シーズンが終了した9月には、メキシコ湾岸を史上最大級のハリケーン「アイ
バン」が襲い、石油生産設備や製油所に甚大な被害をもたらしました。このため、石油製品、特に冬場
の需要期を前にして暖房油の供給不安が高まり、これに連動して原油価格も高騰しました(図4)。
■ 図4 ニューヨーク市場のガソリン、暖房油先物価格の推移
(セント/ガロン)
160
ガソリン価格
史上最高値
(147.00¢/gal)
NYガソリン
NY暖房油
暖房油価格
史上最高値
(160.30¢/gal)
140
120
100
80
04/1
4
7
10
(月)
1ガロン≒3.785リットル
投機的要因
年金などのファンドを運用する投資家たちは、昨年初以来株価の低迷が続いたため、株式市場から
石油先物市場に大量の資金をシフトしました。こうした投機資金の流入により、原油価格の動きは
一層増幅されたと見られています。
14
Ⅳ
今後の原油価格の見通し
昨年11月以降、米国での暖冬傾向などから需要が減退し、価格はやや下落傾向にあります。さら
に、石油の需要期である北半球の冬場を過ぎれば、原油価格はさらに下落する可能性があります。
しかし、基本的には価格高騰要因となっている諸事情が短期間で解消されることは難しく、当面
現状の高水準が継続していくものと考えられます(表2)。
■ 表2 米国エネルギー省によるWTI価格の見通し
2005年1Q
2Q
3Q
4Q
46.57$/b
46.10$/b
45.20$/b
44.30$/b
出典:EIA「Short-Term Energy Outlook 12月号」
OPEC臨時総会(2004.12.10)
OPECの動向は今後の原油市場を占ううえで、非常に重要な要因となります。
OPEC臨時総会が2004年12月10日カイロにて開催され、次のように決定しました。
●生産枠については現行の2,700万バーレル/日を維持するものの、各国が現在生産枠を超過している分
(合計で100万バーレル/日)を2005年1月以降実質減産する。
原油価格が高水準で推移している中、消費国側からの反発を受けつつ決定した今回の減産は、OPECが現状の価格レベル
を容認する意志を明らかにしたとも考えられます。
Ⅴ
当社への影響
当社はオイルショック前後から、LNG(液化天然ガス)を積極的に導入してきました。石油に対する
依存度は1972年の91%をピークに減少し、現在火力発電燃料に占める石油系燃料の割合は2割
程度になっています(図5)。
とはいえ、火力燃料の大半を占める LNG の価格は原油価格に連動して決定されるため、やはり
原油価格高騰の影響を受けます。しかしながら、当社調達のLNGは、原油の価格上昇リスクを緩和
させる契約方法を採用しているため、原油価格の上昇に比べ、LNG価格の上昇は半分程度にとどま
ります。
■ 図5 当社火力燃料構成の変遷
〈1972年度実績〉
〈2004年度上期実績〉
ガス系
5.0%
石炭
4.0%
石炭
6.5%
石油系
19.2%
ガス系
74.3%
石油系
91.0%
15
原子力発電所に
1 原子力発電所の地震対策について
平成16年10月23日、柏崎刈羽原子力発電所の南東方約28kmの位置を震源としたマグニチュード6.8
の新潟県中越地震が発生しました。この地震では、震源の近傍における地表の観測点で1,000ガルを超え
る最大加速度を観測しましたが、柏崎刈羽原子力発電所5号機原子炉建屋の基礎部における水平最大加速
度は約54ガルであり、地震後に実施した点検において直接プラントの運転に係わるような設備被害は確認
されませんでした。また、原子炉を自動的に停止させる加速度(120ガル)以下の揺れであり、通常通り
運転を継続しております。
ここでは、原子炉建屋の耐震設計について、その主なポイントを紹介します。
1.活断層の上には建設しません
2.建築基準法の3倍の地震力で設計
圧縮力
引張り力
設計で想定している地震(による)力
×3
【横ずれ断層】
兵庫県南部地震 など
【逆断層】
新潟県中越地震 など
文部科学省「地震の発生メカニズムを探る」より
3.硬い岩盤に直接支持させています
一般建築物(建築基準法)
原子炉建屋
4.建屋は頑丈な構造にしています
変形小
表層地盤
(揺れ大)
変形大
岩盤(揺れ小)
原子炉建屋
一般建築物
5.敷地で考えられる最大の地震を想定
138゚
139゚
38゚
気比ノ宮断層(M6.9)
1828年三条地震
(M6.9)
1614年越後高田の
地震(M7.7)
柏崎刈羽
原子力発電所
原子炉建屋
6.大地震時には原子炉の運転を自動停止
過去の大きな地震
活断層による地震
中央丘陵西縁部
断層(M6.7)
一般建築物
タービン建屋
原子炉建屋
例えば柏崎刈羽原
子力発電所の設計で
は 、新 潟 県 中 越 地 震
(M6.8、
Δ=28km)
を上回る気比の宮断
層による地震(M6.9、
Δ= 2 0 k m )を 想 定
しています。
本震の震央位置
37゚
長野県北部の
活断層群(M7.5)
16
緊急停止用地震計
原子炉建屋の中には、大地震が発生した時に原子炉を自動的に
停止させる緊急停止用の地震計が設置されています。
(120ガルで原子炉自動停止)
おける地震対策
2 原子力発電所の敷地周辺で想定している地震
原子力発電所は、
「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」
(昭和56年原子力安全委員会決定)に
したがって地震を想定し、耐震設計を行っています。
原子力発電所の設計で想定している地震は以下の通りです。
2.活断層による地震
1.過去の地震
繰り返し発生する地震の間隔が有史以来の期間
地震は繰り返し発生すると考えられることから、
敷地周辺で発生した有史以来の「過去の地震」を
を越えるような地震の存在も考えられることから、
調べ、再びこれらの地震が発生することを想定して
敷地周辺の活断層を調査し、活断層による地震を
います。
考慮しています。
1847年善光寺地震の崖崩れ
(青木雪卿による絵)
、右下は現在
(活断層の例)
※点線囲み部分が
活断層
文部科学省
「活断層」より
根尾谷断層
4.直下地震
3.地震地体構造
過去の地震および活断層による地震に加え、地震
敷地の直下には活断層がないことを調査した
の起こり方に地域共通の性質を持った地質構造(
「地
上で、念のためマグニチュード 6.5 の直下地震を
震地体構造」
)の観点から、限界的な地震を考慮して
想定します。
います。
3 岩盤と地表の地震による揺れの違い
原子力発電所には、原子炉の緊急停止用に設置された地震計とは別に、建屋の耐震設計検証を目的と
した地震計が設置されています。右下の図は、福島第一原子力発電所の敷地地盤で観測された地震記録の
最大加速度を、最深部の値を 1として
基準化したものです。同図より地表付近
O.P.
(m)
原子炉建屋
では揺れが増幅されるものの、岩盤内で
はほとんど増幅しないことがわかります。
地震計設置位置
及び地盤状況
タービン建屋
観測室
最大加速度振幅比
(観測9波平均)
倍率
地質・
地震計
+34.9
+32.9
+14.2
+12.2
-5.0
O.P. 0
(m )
砂層
細砂
1
2
3
+32.9
-5.0
なお、新潟県中越地震本震の際、柏崎
刈羽原子力発電所敷地地表面における
地震計
-100.0
地震計
最大加速度は 132 ガルであったのに
-100.0
砂質泥岩
及び泥岩
-200.0
-200.0
対し、岩盤に直接設置された5号機原子
-300.0
炉建屋基礎マット上の最大加速度は54
ガルでした。
( :地震計)
-300.0
(O.P.:海水面からの高さ)
▲ 敷地における地震観測
17
新潟県中越地震に
昨年の 10 月 23 日午後 5 時 56 分頃に発生した新潟県中越地震は、川口町で阪神・淡路大震災以来の
震度7の激震を観測し、多数の死者・負傷者が出るなど甚大な被害が発生しました。揺れの強かった地域に
は、当社の信濃川電力所や柏崎刈羽原子力発電所があり、地震発生直後から、これらの事業所を始め、当社・
関係会社が一体となって地域支援活動に取り組んでいます。
今回は、新潟県中越地震に伴う当社取り組みについて、レポートします。
1 義援物資の提供などによる支援
地震発生の翌日から、新潟県や当社事業所・施設
のある市町村と連絡をとり、要請に応じる形で、
非常災害用に備蓄していた飲料水や食料、物品をお
届けしました。被害が甚大だった小千谷市、小国町、
越路町、川口町には、25 日から 26 日朝にかけ、
飲料水やアルファ米・缶詰などの食料、仮設トイレな
どを運びましたが、この輸送に使用したトラックやヘ
リコプター(普段は送電線の巡視用に使用)は、非常
災害時の物資輸送の協定に基づき、関係会社から
手配をしました。
また、地域の要望にきめ細かく対応し、柏崎市、
刈羽村、西山町には、避難所で使用する紙コップ類
や降雨対策用のブルーシート等、十日町市にカップラーメンや携帯用カイロなどもお届けしました。
その他、停電復旧が進むにつれ、電気による熱源確保の必要性が高まると考え、関係会社の東電ホーム
サービスの協力を得て、小千谷市にIHクッキングヒーター200台を調理鍋とともにお届けしました。
義援金については、新潟県に3,000万円を寄贈したのを始め、東京電力労働組合や各支店・支社、さま
ざまなグループ単位によって、カンパ、義援金支援を行なっています。
2 ボランティア活動への参加や専門家派遣による人的な支援
災害の復旧・復興の段階に合わせ、さまざまな
人的支援も行ないました。柏崎刈羽原子力発電所と
信濃川電力所の社員は、支援物資の整理や配布など
地域のボランティア活動に参加しました。
また、建物の倒壊や落下物等の危険性を調査する
「震災建築物応急危険度判定士」の資格を有する社員
を派遣しました。当社には、この資格をもった社員
が120名いますが、十日町市、小国町からの要請に
応え、40名を派遣し、専門家が手薄な状況の中で、
調査を実施しました。
18
伴う当社取り組み
さらに、11月に入り、本格的な復旧・復興が始まるのに合わせ、本店・支店の社員130名が小千谷市と
十日町市のボランティア活動に参加し、被災したお宅の片付けや義援物資の仕分け、道路補修、廃棄物の
整理等を約1ヶ月に亘り実施しました。
3 その他の支援
そのほか、被災者の休憩所施設として柏崎
刈羽原子力発電所のサービスホールを開放
するとともに、社宅の一部を仮住居として、
市 町 村 を 通じ 地 域 住 民 の 方 に お 貸 しして
います。
また、関係会社の(株)当間高原リゾートは、
十日町市の被災者の方のために炊き出しを
実施した他、浴場の開放や低料金での宿泊
サービスを実施し、東電不動産管理(株)では、
長岡市で営業している「極楽湯」の無料開放を
行いました。
4 東北電力の停電復旧活動への支援
新潟県の電力供給サービスは、東北電力が
行っていますが、地震後、被災地域を中心に広
範囲に約30万軒という停電が発生しました。
当社は、東北電力からの要請により、翌日の24
日から27日までの間、発電機車29台と社員
約120人を派遣し、小千谷市内をはじめとし
て、避難所やガソリンスタンドなどで応急送電
を行いました。
19
当社はインターネットを通じ情報提供をしています。
当社のホームページのアドレスは
http://www.tepco.co.jp です。
皆さまからのアクセスをお待ちしております。
平成17年1月 通巻第 108号
編集・発行箇所
広報部 広報計画グループ
〒100-8560
東京都千代田区内幸町1丁目1番3号
電話:
(03)4216 -1111
(代表)
※当レポートは再生紙を利用して作成しています。
東京電力は電気事業連合会の一員として
に電力館を出展します
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