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資源エネルギー庁 - 危機管理監室 原子力安全対策室

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資源エネルギー庁 - 危機管理監室 原子力安全対策室
石川県原子力環境安全管理協議会
資料No.1-1
プルサーマルのエネルギー政策上の
必要性について
資源エネルギー庁
平成22年7月
目
次
1.プルサーマルの概要と必要性
2.プルサーマルの位置づけと動向
1
1.プルサーマルの概要と必要性
2
核燃料サイクルとは
○ 使用済核燃料をリサイクル(再利用)するための一連の仕組みを核燃料サイクルという。
○ 現在「軽水炉サイクル」の関連諸施設を整備中。将来的には「高速増殖炉サイクル」へ
移行する方針。
ウラン鉱山
燃料製造工程
(濃縮等)
天然ウラン
ウラン燃料
鉱石
原子力発電所
プルサーマル
(軽水炉)
(全国54基)
MOX燃料を原子力発
電所(軽水炉)で利用
核燃料
サイクル
MOX燃料工場
分離・抽出した
プルトニウムを
MOX燃料に加工
使用済燃料から有用成分
(プルトニウム、ウラン)
を分離・抽出
再処理工場
高レベル
放射性廃棄物
高レベル放射性廃棄物
処分施設
プルトニウム・ウラン
(地点募集中)
将来的には「高速増殖炉サイクル」に移行
3
プルサーマルとは
○原子力発電所で使用した使用済燃料中には、有用成分(プルトニウム、ウラン)が含まれている。
○有用成分のうち、プルトニウムを分離・抽出・加工し、再度、原子力発電所(軽水炉)で利用する
ことをプルサーマルという。
使用前のウラン燃料の構成(例)
使用後のウラン燃料の構成(例)
約1%
約4%
約96%
ウラン235
(核分裂しやすい)
ウラン238
(核分裂しにくい)
MOX燃料の構成(例)
プルトニウム
約1%
約3~4%
ウラン235
約1%
ウラン238
(核分裂しにくい)
約93%
約95~96%
再処理工場
原子力発電所
(軽水炉:全国54基)
MOX燃料工場
約5%
高レベル放射性廃棄物
4
プルサーマルの必要性 その1:エネルギーの安定供給①
○ウラン資源の可採年数は、あと100年。世界のウラン必要量は、年々上昇。
○ 原子炉の新規建設に向けた動きが見られるなか、世界的なウラン獲得競争が激化。
ウラン価格は、近年上昇傾向。
ウラン価格の推移
世界のウラン生産量と必要量
ウラン価格【米ドル/ポンドU3O8】
160
140
120
136米ドル/ポンドU308
(2007年6月)
第一次オイル
ショック
(1973年10月)
100
80
スリーマイル島事件
(1979年3月)
60
47.0米ドル/ポンドU308
(2009年7月)
42米ドル/ポンドU308
(2009年3月)
40
7.1米ドル/ポンドU308
(2000年11月~12月)
20
0
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
(世界の必要量) (世界の生産量)
【出典:Uranium 2007, OECD, 2008】
2010
【年】
【出典】The Ux Consulting Company,LLC のスポット価格
5
プルサーマルの必要性 その1:エネルギーの安定供給②
○ 1000kgの使用済燃料を再処理すると、
⇒ 約130kgのMOX燃料(プルサーマル利用)と約130kgの回収ウラン燃料(ウラン燃料
利用)を再生でき、 1~2割のウラン資源節約効果がある。
○ 準国産エネルギーとしてエネルギー自給率の向上に寄与。
120kg
(0.3%)
ウ 劣
ラ 化
ン
回収
8400kg
(0.3%)
プルトニウム
プルトニウム1%
MOX燃料加工
130kg
MOX燃料
130kg
(4.1%)
回収ウラン
燃料
約 10kg
天
然
ウ
ラ
ン
濃縮
新
し
い
ウ
ラ
ン
燃
料
9400kg
1000kg
(0.7%)
(4.1%)
発電
使
用
済
ウ
ラ
ン
燃
料
再転換・加工
再処理
1000kg
(0.9%)
)内の%は、燃えやすいウラン(ウラン235)の割合
劣
化
ウ
ラ
ン
再濃縮
940kg
(0.9%)
高レベル放射
性廃棄物 5%
(
回
収
ウ
ラ
ン
810kg
高レベル
放射性廃棄物
約 50kg
(0.3%)
ガラス固化処理
高レベル放射性廃棄物
ガラス固化体
6
プルサーマルの必要性 その2:環境適合性①
-高レベル放射性廃棄物の種類と年間発生量
○高レベル放射性廃棄物の体積が1/3~1/4に低減。
⇒高レベル放射性廃棄物処分場の規模を低減でき、環境適合性に優れる。
再処理
(ガラス固化体)
3
体 積
処分に要する面積
約1,400m
※3
2
約14万 m
直接処分
(使用済みウラン燃料)
約3,800m3
約5,200m3
約21万 m2
約25万 m2
※1
※2
※1
※2
(2021年頃までに原子力発電所で発生する使用済燃料を全量再処理した場合に発生するガラス固化体を4万本と想定)
※1:1キャニスタ当りの使用済燃料4体のケース
※2:1キャニスタ当りの使用済燃料2体のケース
※3:軟岩のケース
【原子力委員会第9回新計画策定会議資料第8号のデータをもとに作成】
7
プルサーマルの必要性 その2:環境適合性②
-高レベル放射性廃棄物の放射能の有害度
同じ発電電力量に対する
高レベル廃棄物の放射能の有害度
○使用済燃料を再処理しない場合、ウラン、プルトニウム、核分裂生成物等を全て含んだまま
高レベル放射性廃棄物となる。
○再処理した場合、核分裂生成物とごくわずかなウラン、プルトニウム等しか存在しない。
⇒使用済ウラン燃料を再処理して得られるガラス固化体は、使用済ウラン燃料を直接処分
する場合に比べ放射能による潜在的な有害度を低くすることが可能。
直接処分(使用済燃料)
1
再処理※(ガラス固化体)
0.1
0.01
※軽水炉最新技術
同じ量の発電に必要な天然ウランの
放射線による有害度(最大値)
1/8
0.001
0.0001
0.00001
1年
十年
百年
千年
万年
十万年
百万年
〔出典:原子力委員会 第9回新計画策定会議 資料第13号より抜粋〕
8
プルサーマルの必要性 その3:経済性
(核燃料サイクルの経済性)
○直接処分した方が再処理するよりも発電コストは1割程度安価。
○リサイクルによるコストは約0.5~ 0.7円/kWhとなるが、これを一世帯あたりの年間負担額に
換算すると、年間約600~840円の負担となり、年間電気代の1%程度。
【参考】<他のリサイクル費用(1台あたり)の例
自動車約13,000円、エアコン3,675円、テレビ2,875円、冷蔵庫2,520円
(単位:円/kWh)
全量再処理
全量直接処分
約5.2
約4.5~4.7
約1.6
約0.9~1.1
うち ①フロントエンド
0.63
0.61
うち ②バックエンド
0.93
0.32~0.46
発電コスト
燃料サイクルコスト
出典:原子力委員会 第13回新計画策定会議 参考資料1より抜粋
9
2.プルサーマルの位置づけと動向
10
国の方針「原子力政策大綱」決定に至る議論(2004年6月~2005年9月)

全て公開のもと、再処理以外の選択肢もタブー視せず議論が行われ、「4つの選択
肢」を、「10項目の視点」で評価。
【4つの選択肢】
①全量再処理
②部分再処理
③全量直接処分
④当面貯蔵
(現行の政策の考え方) → 核燃料サイクル
(六ヶ所再処理工場の能力を超える使用済燃料については中間貯蔵後直接処分)
→ ワンススルー
(当面、中間貯蔵※し、その後直接処分か再処理かを決定) ※40~50年
【10項目の評価の視点】
①安全の確保(いずれも可能)
②エネルギーの安定供給
(再処理に資源節約効果あり)
③環境適合性
(再処理により放射性廃棄物の有害度量を低減)
④経済性(再処理は1割程度高い)
⑤核不拡散性(有意な差はない)
⑥技術的成立性(直接処分は技術的知見の蓄積が不足)
⑦社会的受容性(直接処分は最終処分場の受入が一層困難)
⑧選択肢の確保(再処理は多様な展開が可能)
⑨政策変更するとした場合の課題
(政策変更には時間を要し、原発停止の可能性が高い)
⑩海外の動向
(発電規模が大きい国、エネルギー資源が乏しい国では
再処理を選択する傾向)
○我が国における原子力発電の推進に当たっては、経済性の確保のみならず、循環型社会の追究、エネ
ルギー安定供給、将来における不確実性への対応能力の確保等を総合的に勘案するべきである。(中
略)我が国においては、(中略)使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用す
ることを基本的方針とする。
○基本的方針を踏まえ、当面、プルサーマルを着実に推進することとする。
(2005年10月閣議決定 「原子力政策大綱」より抜粋)
11
原子力に関する政府決定等
原子力立国計画(2006年8月)
●原発の新・増設実現、核燃料サイクルの推進と関連産業の戦略的強化、高速増殖炉(FB
R)サイクルの早期実用化、放射性廃棄物対策の強化、等の具体的アクションを策定。
低炭素社会づくり行動計画(2008年7月閣議決定)
●2020年を目途に原子力等の「ゼロ・エミッション電源」の割合を50%以上とする。
●原子力発電は、低炭素エネルギーの中核として、地球温暖化対策を進める上で極めて重要
な位置を占める。
●原子力等の「ゼロ・エミッション電源」の割合を50%以上とする中で、原子力発電の比
率を相当程度増加させることを目指す。
原子力発電推進行動計画(2010年6月、経済産業省策定)
●原子力は、供給安定性と経済性に優れた低炭素電源であり、基幹電源として利用を着実に
推進。原子力発電所について、
・新増設を、2020年までに9基、2030年までに、少なくとも14基以上
・設備利用率を、2020年までに約85%、2030年までに約90%
●「中長期的にブレない」確固たる国家戦略として、核燃料サイクルを着実に推進
●世界のエネルギー安定供給等への貢献、技術・人材基盤の強化等の観点から、原子力産業
の国際展開を推進
12
最近の政府決定における原子力の取扱い
エネルギー基本計画 [2010年6月18日、閣議決定] (抜粋)
(原子力発電の推進)
■ 供給安定性、環境適合性、経済効率性の3E を同時に満たす中長期的な基幹
エネルギーとして、安全の確保を大前提に、国民の理解・信頼を得つつ、需要
動向を踏まえた新増設の推進・設備利用率の向上などにより、原子力発電を積
極的に推進する。
■ 使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム・ウラン等を有効利用する
核燃料サイクルは、原子力発電の優位性をさらに高めるものであり、「中長期
的にブレない」確固たる国家戦略として、引き続き、着実に推進する。
13
プルトニウムの発電割合
○ 現在の発電所でもプルトニウムが発電に寄与。
ウラン炉心
発
電
へ
の
寄
与
割
合
(
%
)
1/3MOX炉心
100
発
電
へ
の
寄
与
割
合
(
%
)
80
60
ウラン
60~70%
40
20
プルトニウム
30~40%
0
燃料交換※
次の燃料交換
(運転期間)
100
80
ウラン
40~50%
60
40
20
プルトニウム
50~60%
0
燃料交換
(運転期間)
次の燃料交換
※約1年間の運転毎に、炉心の燃料の約1/5から1/4を新燃料に取り替えるが、残りは継続使用するため
ウラン炉心の運転初期でも燃焼して生成したプルトニウムを含む燃料が存在している。
、
14
安全審査の際の基本的な考え方
原子力安全委員会は、軽水炉に取替燃料の一部としてMOX燃料を装荷
することに係る安全審査の指標について検討
(検討の範囲)
核分裂性プルトニウム富化度は8%まで
MOX燃料の炉心装荷率は1/3程度まで
燃料集合体最高燃焼度は45,000MWd/t(ウラン燃料を超えない範囲)まで
(結論)
 上記の検討の範囲においてMOX燃料の特性と挙動はウラン燃料と大きな差
はない
 MOX燃料及びその装荷炉心は、従来のウラン燃料炉心と同様の設計が可能
安全評価に当たって、従来ウラン燃料炉心に用いている判断基準並びにMOX
燃料の特性を適切に取り込んだ安全設計手法、安全評価手法を適用することは
差し支えない
15
プルサーマル実施に係る法令上の主要手続き
(国)
(事業者)
原子炉設置
変更許可申請
安全審査 (基本設計)
原子力安全・保安院による審査
諮問
答申
原子力委員会及び原子力安全委員会によるダブルチェック
文部科学大臣の同意
工事計画
認可申請
審査(炉心詳細設計)
事業者
国
許可
輸入燃料体検査申請
燃料加工 加工時の
チェック
燃料輸送
認可
燃料装荷
審査
(燃料体詳細設計)
(試験)(品質保証)
検査(外観)
合格
使用前検査申請
使用前検査
合格
16
海外の軽水炉におけるMOX燃料使用実績

海外では、合計6千体以上のMOX燃料使用実績。
各国の軽水炉におけるMOX燃料の使用実績(2008年12月末現在)
3,500
3,110
加圧水型
3,000
沸騰水型
2,336
2,500
累
積
装
荷
体 2,000
数
( 1,500
体
) 1,000
392
500
321
95
70
ア
メ
リ
カ
イ
タ
リ
ア
0
フ
ラ
ン
ス
ド
イ
ツ
ス
イ
ス
ベ
ル
ギ
ー
10
イ
ン
ド
7
3
オ
ラ
ン
ダ
ス
ウ
ェ
ー
デ
ン
出展:資源エネルギー庁調べ
17
使用済MOX燃料の処理方法について


現在試験運転中の六ヶ所再処理工場においては、使用済MOX燃料を再処理の対象としていない
が、使用済MOX燃料の再処理は国内外で実績があり、使用済ウラン燃料の再処理の方法と大き
な違いはない。
日本原子力研究開発機構東海再処理工場では、「ふげん」で使用した29トンの使用済MOX燃料
の再処理を行っており、また、フランスでは、研究施設及び商業再処理施設において、使用済MOX
燃料の再処理が、以下のとおり行われている。
【フランスにおける使用済MOX燃料再処理の実績】
実施年
再処理施設
原子力発電所名
処理量(tHM)
1992年 the Marcoule pilot facility
German KKG PWR(ドイツ)
2.1トン
1992年 ラ・アーグ UP2-400
German PWRs KWO,
GKN and KKU(ドイツ)
4.6トン
1998年 ラ・アーグ UP2-400
the Chooz-A PWR(CAN)(フランス)
4.9トン
2004年 ラ・アーグ UP2-800
Grafenreinfeld(ドイツ)
10.6トン
2006年 ラ・アーグ UP2-800
Grafenreinfeld, Grohnde(ドイツ)
16.5トン
2007年 ラ・アーグ UP2-800
Brokdorf, Unterweser, Grohnde,
Philippsburg, Neckar(ドイツ)
31.3トン
2008年 ラ・アーグ UP2-800
Goesgen(スイス)
5.1トン
18
プルサーマル計画の進捗状況
○電気事業者は、遅くとも2015年度までに、全国の原子力発電所のうち16~18基でプルサー
マル導入を計画。
○九州電力玄海3号機は、2009年12月2日に我が国初となるプルサーマルによる営業運転を開
始。四国電力伊方3号機は、2010年3月4日にプルサーマルによる発電開始。今後、中部電力
浜岡4号機、関西電力高浜3、4号機等で順次プルサーマルが実施される見込み。
営業運転開始済
2010年7月現在
北海道電力
泊3号機(北海道泊村)
地元了解済
地元了解前
日本原子力発電
敦賀(1基)(福井県敦賀市)
関西電力
大飯(1~2基)(福井県おおい町)
※MOX燃料加工契約済
北陸電力
志賀1号機(石川県志賀町)
※2010年6月28日に地元申し入れ
関西電力
高浜3、4号機(福井県高浜町)
※発電所内にMOX燃料搬入済
中国電力
島根2号機(島根県松江市)
※MOX燃料の加工契約締結済
九州電力
玄海3号機(佐賀県玄海町)
※2009年12月2日に営業運転開始
電源開発
大間(青森県大間町)(建設中)
※MOX燃料の加工契約締結済
東北電力
女川3号機(宮城県女川町、石巻市)
※2010年3月18日地元自治体が同意
東京電力
福島第一3号機(福島県大熊町、双葉町)
※三つの技術的条件(耐震安全性、高経年化対策、
MOX燃料の健全性)が全て満たされることを必要不
可欠な条件として、プルサーマル実施受入れを表明
日本原子力発電
東海第二(茨城県東海村)
中部電力
浜岡4号機(静岡県御前崎市)
※発電所内にMOX燃料搬入済
四国電力
伊方3号機(愛媛県伊方町)
※2010年3月30日に営業運転開始 ※東京電力は、立地地域の信頼回復に努めることを基本に、福島第一
3号機を含む東京電力の原子力発電所の3~4基で実施の意向。
19
ま と
め
■原子力発電は、エネルギー安定供給、地球温暖化防止に優れた電源です。
■プルサーマルを含む核燃料サイクルは、原子力による長期のエネルギー供給を可能にす
るためのウラン資源のリサイクルであり、
①資源の節約により原子力の持つ電力の供給安定性のメリットを一層増すことができる
②廃棄物の量を減らし、有害度も低くすることができる
ことから、2015年度までに全国で実施することを目指します。
■プルサーマルを含む核燃料サイクルを推進する方針は、それ以外の選択肢も含め、全て
公開の下で長所短所を慎重に検討した結果、その妥当性が確認されたものです。
■プルサーマルを含め、核燃料サイクルは一歩一歩前進しています。今後とも、国としてし
っかり推進していきますので、石川県においても、御理解・御協力をいただきたいと考えて
います。
20
Fly UP