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民法法人規定の改正に関わる 『新・民法学1 総則』の「第2章2法人」部分

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民法法人規定の改正に関わる 『新・民法学1 総則』の「第2章2法人」部分
民法法人規定の改正に関わる
『新・民法学1 総則』の「第2章2法人」部分の改訂について
公益法人関連三法、すなわち「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(平成18
年法律第48号―一般社団法人・財団法人法)、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等
に関する法律」(平成18年法律第49号―公益法人認定法)、「一般社団法人及び一般財団
法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う
関係法律の整備等に関する法律」(平成18年法律50号―関係整備法)がおそくとも200
8年12月1日までに施行されることとなっている。これによって、民法第一編第三章法
人の規定が大幅に改正される(関係整備法38条)にともない、本書の「第2章1法人」の
部分も大幅な改訂を余儀なくされる。本書の改訂は以下のように予定される。
第2章
権利の主体
承前
※69-72頁(6行目まで)→
2
法
改訂の要なし
人
法人制度はなぜ必要とされるのであろうか。法人にはどのような種類ガあるか。法人相
手に取引をはじめようとするものは、どのような点に注意すべきであろうか。
1
法人の意義・機能
法人はなぜ必要か
民法(そして商法、労働組合法、私立学校法、医療法、宗教法人法、社会福祉事業法、
弁護士法・農業協同組合法など各種の協同組合法などは、すでに1でみた自然人つまり人
間以外のものにも。権利・義務の帰属主体となりうること(権利能力)を認めている。す
なわち、法人とは、法律上、自然人でなくして法人格を認められたものをいうのであって、
その実体としては、ある目的をもった自然人(構成員)の集合(社団)とある目的に捧げ
られた財産の集合(財団)とがある。
では、法人はなぜ必要とされるのであろうか。個々の自然人の生命、活動財産にはおの
ずから限りがある。そこで、世の中においては、自然人が集合し出資しあい団体意思にも
とづいて、あるいは自然人から拠出され取り分けられた財産が基礎となり、組織をもって、
それぞれの目的に応じた種々の社会的活動・事業を継続的にするということがみられる。
ところが、社団が取引によってたとえば不動産を取得し、取引をめぐって訴訟をするとい
う場合を考えてみた場合、全構成員の名で契約を締結し、全構成員名義の不動産登記をし、
あるいは全構成員の名で訴えを提起し、また訴えられるというのではまことに不便である。
また、ある個人が社団によって活動するため出資した財産、ある個人から拠出された財産
さらには社団あるいは財躇がこの活動のなかで取得した財産が、法人制度によってその個
人あるいは右財産の管理者個人の財産から分けられていないと、これら個人の債務の実現
のためにその債権者からの強制執行の対象とされるおそれがあるなど、社団ないし財団の
継続的な事業の遂行が危ぶまれる。そこで、社団ないし財団が個人とは独力してその社会
的経済的活動を営んでいることを認めたうえで、右にあげた不都合を免れるために、法律
関係の単純化・明確化をはかり、財産の分別(責任財産の独立)をもたらす法技術として、
法人制度が設けられているのである(→図2-3)(→Sup.4)。
図2-3 法人という法技術
【Sup.4】- 法人本質論
法人の本質がなんであるかについては、かつて、法律の力によって自然人になぞらえら
れて人為的に財産権の主体として擬制された主体にすぎないとする法人擬制鋭、法人は単
に多数主体者の法律関係を単一化するための技術ないし法律関係の形式的帰属点であって
実在しないと説く法人否認鋭、法人は社会的有機体あるいは組織体であって社会的に実在
するものであるとする法人実在鋭の間で激しく争われてきた。わが国でもとくに法人の社
会的作用に目を向けた実在説(社会的作用説)が通説とされていたが、現在では、法人の
本質をめぐる右の争いは法人がおかれた時代的背景、法人の活動の発展過程に由来するの
であって、それぞれは同じ平面に立った議論ではなく、右各説が法人の実体的側面・技術
的側面、内部的側面・対外的側面など法人が有する諸側面をそれぞれ明らかにしてきたと
解され、むしろ法人の技術的性格が強調されるにいたっているといえよう(法人擬制説の
再評価)。
各説において、たとえば法人実在説では法人の代表機関たる理事の行為を法人の行為と
み、法人擬制説・否認説では理事の代理行為によって権利・義務を取得するにとどまり法
人それ自体の行為というものを観念しないなど説明のしかたに相違があるが(実は、後者
においても理事の行為を法人の行為と表現することは理論的にはともかく便宜として許さ
れている)、具体的な問題の取り扱いにあっては、いずれの説に立つかによって大きな結
論の違いはもたらされていないとみることができる。
※72頁【App.6】
→
以下のように改訂
【App.6】いわゆるNPO(Non-Profit Organization)法
市民団体が、一定の地域を基盤として、社会教育の推進、文化・芸術・スポーツの振興、
社会福祉への貢献、まちづくりの推進、災害救援活動、環境の保全さらには国際的理解の
増進などを目的とする活動すなわちボランティア活動または非営利もしくは公益活動を行
うということが広くみられるようになってきている。これらの団体においては、取引・財
産にかかる法的関係の明確化を図る、寄附金等を得やすくする、社会的信用を高める、税
制上の優遇措置を受けるなどの点から、法人格をもつ必要が感じられているが、従来の公
益法人制度(平成にあっては、主務官庁による許可・監督制度がとられていること(そこ
で、たとえば設立許可を受けるまでにはかなりの時間を要し、あるいは複数の所管官庁に
またがった事業については法人格が取得しにくくなっている)、とりわけ設立許可との関
わりで多額の基本財産・年間予算を要求されることなどの事情があり、法人格を取得する
ことに困難性もしくは問題性があった。そこで、民法上の制度とは別立ての、「市民活動
団体法人」制度の導入を求める声がとりわけ阪神・淡路大震災(1995年1月)をきっかけとし
大いに高まりをみせ、これが、市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動(保
健、医療または福祉の増進など12種類の活動として定義される)の発展を促進することを
目的とする「特定非営利活動促進法」の成立というかたちで、実を結んだ(1998年3月成立
平成10年法7号)。この法律によって、こうした活動をする市民団体は、所轄庁の認証を受
けることにより法人格を取得し、団体名義で契約を結び、登記をすることができることに
なったのである。また、その後、特定非営利活動の種類が17種類に拡げられたほか、認
定特定非営利活動法人という税制上の優遇措置に関わる制度が導入された。すなわち、特
定非営利活動法人のうち、運営組織及び事業活動が適正であること並びに公益の増進に資
することについて一定の要件を満たすとして、国税庁長官の認定を受けたもの(認定特定
非営利活動法人)に寄附をした者について、所得税・法人税・相続税の特例措置が認めら
れ、認定特定非営利活動法人自身についてもみなし寄附金制度等が適用されることとなっ
た。2007年1月の時点で約3万法人が特定非営利法人として認証されているが、パブ
リックサポートテストが厳しいこともあってか、同年2月現在認定の有効期間内にある認
定特定非営利活動法人は56法人にすぎない。なお、2008年12月1日までに予定さ
れる公益法人制度改革に関わる三法施行後もこの制度は存続される。
※73頁
2
→
以下のように改訂
法人の種類
社団法人・財団法人
法人は、種々の観点から分けることができる。
まず、法人には、社団法人と財団法人とがある。社団法人とは、共同の目的をもった人
(自然人に限られない)の集合(団体=社団)を基礎として活動するものであり、したが
って構成員としての社員があり、意思決定機関として社員の総会を有し、そこで選ばれた
代表機関によって運営されるものである。
これに対し、財団法人は、設立者によって一定の目的のために拠出(設立者の財産から
明確に分別)された財産の集合(財団)にもとづき活動するものであり、代表機関によっ
て運営されるものである。
非営利法人(公益法人・中間法人)・営利法人
法人は、これまで、その目的が不特定かつ多数の者の利益にあるもの(公益法人)、構
成員の相互扶助をはかることを目的とするなど公益も営利も目的としないもの(非公益・
非営利=中間法人)、営利の追求を目的とするもの(営利法人)とに分かち論じられてき
た。民法は、法人制度の基本的なこと(法人法定主義、能力など)のほかは、主として公
益社団法人・公益財団法人について規定し(平成17年改正前の民法33条~84条の3
ー民法法人)、中間法人法は、非公益・非営利法人について規定していた(中間法人法は、
後述の関係整備法によって廃止されることとなった)。また、各種の協同組合法、労働組
合法などが、各種の中間法人の設立を認めている(たとえば、農業協同組合法5条、消費生
活協同組合法4条、労働組合法11条など)。これに対し、商法・有限会社法(そして現行は、
会社法ー平成17年法86号)は、対外的に営利活動をし獲得した利益を構成員に分配す
る営利(営利社団)法人について規定している。
ところで、2006年5月に、公益法人制度改革にかかわり、「一般社団法人及び一般
財団法人に関する法律」(以下では一般社団・財団法人法という)、「公益社団法人及び
公益財団法人の認定等に関する法律」(以下では公益法人認定法という)、「一般社団法
人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法
律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(以下では関係整備法という)が成立し
た(これらは、おそくとも2008年12月1日までには施行されるものとされる)。これは、1
896年に民法が公益法人制度を設けて以来この制度にとっての最大の改革であって、公
益法人の設立許可の主務官庁による広い裁量によって民間の公益的活動が制約される反面
で公務員の天下り先となるなどの弊が生じ、必ずしも不特定かつ多数の者の利益を目的と
しているとはいいがたく、もしくは公益性の薄い公益法人があり、あるいは公益法人の事
業内容が収益事業ないし大きな利益をともなう特定の目的事業に傾斜しているとみられる
ことがある(公益法人には収益事業を営んでいる場合に限り軽減された税率による法人税
が課せられることになっていることなどからして、課税上の不均衡が生ずるなど無視でき
ない問題がでてくる)などの問題を解決しようとする改革といえる。
この改革によって、法人は、まずは、社員・設立者に剰余金または残余財産の分配をし
ない非営利法人(一般社団・財団法人ー一般社団・財団法人法11条2項、35条3項、153条3
項 )と、これをする営利法人とに分かたれることとなった。そして、非営利法人(一般社
団法人または一般財団法人)のうち、学術・技芸・慈善その他の公益に関する事業であっ
て不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業すなわち法定される23種の公益目的
事業を行うことを主たる目的とする、それを行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を
有する、公益目的事業費率が100分の50以上となることが見込まれる、理事・監事・
評議員に対する報酬等が不当に高額とならないような基準を定めている、清算する場合に
おいて残余財産を類似の事業を目的とする他の公益法人または国・地方公共団体などに帰
属させる旨を定款で定めているなど、公益法人認定法所定の基準を充たしている(なお、
理事・監事等のうちに暴力団員等があること、暴力団員等その事業活動を支配しているな
どの一般社団法人・財団法人は公益認定を受けることができないなどという欠格事由につ
いての定めもある)として、行政庁(内閣総理大臣又は都道府県知事)により公益性認定
を受けた法人が公益法人(公益社団法人または公益財団法人)とされるのである(同法2条
4号・4条・5条・6条参照)。
法人の種類にかかわり、他に、公法人・私法人、内国法人・外国法人(35条)などの分
類がある。
【App.7】特例民法法人
公益法人制度改革にともない、これまでに存在した約25、000法人の公益社団法人・
公益財団法人(以下現行公益法人ということがある)は、新法施行後5年間の移行期間内
に、それぞれ行政庁に対し申請を行いその認定又は認可を受けて、新制度の法人に移行で
きるものとされる(「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び
公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」1章4
節・6節)。すなわち、関係整備法によって、その施行の際に現存する公益法人は、一般
社団法人・財団法人法の規定による一般社団法人又は一般財団法人として存続するものと
される(同法40条)。こうして存続することとなる現行公益法人は、移行期間内に、行政
庁の認定を受けて公益社団法人あるいは公益財団法人に移行するか、認可を受けて一般社
団法人あるいは一般財団法人に移行することとなる。移行の登記を了していない法人は、
関係整備法上「特例社団法人」あるいは「特例財団法人」(総称して「特例民法法人」)
と呼称されるが、従来どおり、「社団法人○○」、「財団法人○○」という名称を使うこ
とができる。一般社団法人・財団法人として存続するとされるから、設立に関わる規定な
どは別として一般社団・財団法人法の適用があるやにみえるが、移行するまでの間は、基
本的にこれまでどおりに運営できるものとしたうえで、法人が望めば新制度も可能な限り
利用できるものとする内容での経過措置を定めている。特例社団法人についてこれをみれ
ば、たとえば、新法施行の際に置かれている法人の理事又は監事は一般社団・財団法人法
の理事又は監事とみなし特例民法社団法人の理事または監事となることにしており、貸借
対照表の公告を義務づける規定の適用はないものとしており、一般社団・財団法人法にも
とづく基金を募集することはできるものとしており、定款の変更については従前の例によ
るとしており、業務の監督は、関係整備法の施行の際に所管官庁であった旧主務官庁が引
き続き行うものとしている(関係整備法48条・59条・87条・89条・95条)。特例民法法人
は、移行期間内に、行政庁の認定を受けて公益社団法人または公益財団法人となることが
できる。また、行政庁の認可を受けて一般社団法人または一般財団法人になることができ
る(同法44条・45条)。いずれになるかは各特例民法法人の任意とされている。移行の認
定又は認可を受けた法人は、主たる事務所の所在地においては2週間以内に、従たる事務
所の所在地おいては移行の登記(特例民法法人にかかる解散の登記、公益社団・財団法人
あるいは一般社団・財団法人にかかる設立登記)をしなければならない(同法106条・121
条)。移行期間内に移行の認定又は認可を受けなかった特例民法法人は、移行期間の満了
日に解散したものとみなされる(関係整備法46条)。
なお、中間法人法は、関係整備法によって廃止されることになった(関係整備法1条)が、
1500法人ほどある現行の中間法人も新制度の法人に移行できるものとされている。す
なわち、有限責任中間法人については、一般社団・財団法人法の施行日に、何らの手続を
要せず、当然に、一般社団法人となり一般社団・財団法人法の適用を受けることになる。
一般社団法人となった有限責任中間法人は、施行日の属する事業年度が終了した後、最初
に招集される定時社員総会の終結の時までに、社員総会の決議を得て、その名称に「一般
社団法人」という文字を使用する旨の定款の変更を行う必要がある。これに対して、無限
責任中間法人については、新法施行日から「特例無限責任中間法人」として従前の中間法
人法の適用を受けるが、その後1年間の移行期間内に、総社員の同意、債権者保護手続、
そして移行の登記という移行手続を行うことによって、一般社団法人へ移行することがで
きるものとされる。移行の登記後、一般社団法人・財団法人法の適用を受けることになる
のである。しかし、移行期間内に一般社団法人への移行手続を行わなければ、その無限責
任中間法人は解散したものとみなされる(関係整備法1節・2節)。
※74頁
図表を以下のように改訂
図2-4多少の手直し
社団法人
の後の (公益・中間・営利)を削除
財団法人
の後の
信託
の後の
表2-3
差し替え
(公益) を
削除
(公益・営利)を
削除
国税庁統計年報告書第130回(平成16年)125頁
※75-
3
78頁
→
以下のように改訂
法人の設立
法人設立についての諸主義
すべての法人は民法その他の法律の規定によらなければ設立することができない,とさ
れている(33条一法人設立についての法定主義)。わが法において,法人格を賦与するに
あたっての考え方としては,国家の関与の強い方から具体的にあげると,次のようなもの
がある。
(1)特設(あるいは特許)主義
これは特別の法律の制定によって法人が設立される場合
であって,日本銀行,国民金融公庫,日本道路公団,日本放送協会,日本輸出入銀行など
がその例である。
(2)許可主義
主務官庁が,その自由裁量によって,法人格を与える場合である。民法の
公益法人について,この主義が採用されていた(平成18年改正前民法34条)。
(3)認可主義
法律の定める一定の要件がそなわっていれば,主務官庁としては法人格を
与えなければならないとされるものである。学校法人,医療法人,多くの協同組合につい
てこうした考え方がとられている(私立学校法30条以下,医療法44条以下,農業協同組合
法59条以下など)。
(4)認証主義
法律が定める一定の要件を備えているかを所轄庁が確認することによって
設立が認められる場合であって,宗教法人,特定非営利活動法人(いわゆるNPO法人)につ
いてこの主義がとられている(宗教法人法12条以下,特定非営利活動促進法10条・12条)。
(5)準則主義
法律が定める一定の要件をそなえれば法人の成立を認める(特定の所轄庁
の関与はない)ものであって,営利法人たる会社(株式会社・合名会社など),労働組合
などの場合がこれである(会社法49・911条,労働組合法11条)。非営利法人(構成員に剰
余財産の配分をしない法人)についても、準則主義により、設立の登記をすることによっ
て成立するものとされた(一般社団・財団法人法22条・163条)。
他には,弁護士会や健康保険組合のごとく法人の設立が強制されている場合(強制主義)
そして相続人不在の場合の相続財産法人や国・地方公共団体のごとく法律上当然に法人と
される場合(当然設立主義)がある(なお,わが国において自由設立主義の例はない)。
一般社団法人の設立
ここでは,「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(以下において一般社団・
財団法人法とよぶことがある)が定める非営利法人についてみておくことにしよう。
まず,一般社団法人の設立であるが、社員になろうとする二人以上の者(設立時社員)
が法人の根本規則である定款を作成し、公証人の定款認証を受け、主たる事務所の所在地
において設立登記をすることによって成立する(一般社団・財団法10条・13条・22条)。
すなわち、成立における準則主義が採られている。定款の必要的記載(・記録)事項は、
目的、名称、主たる事務所の所在地、設立時社員の氏名または名称・住所、社員の資格の
得喪に関する定め、公告方法、事業年度である(同法11条1項)。これらの他、社員総会招
集の手続,理事の権限などを定めてもよいが(これを任意的記載・登録事項という(同法1
2条参照)、社員に剰余金又は残余財産の分配する権利を与える旨の定款の定めは効力を有
しないものとされている。これは非営利性を確保するためである(同法11条2項)。設立に
際して最低限拠出しなければならない額の定めはない。法人の成立時は、設立登記の時で
ある。
なお、一般社団法人の社員は、定款の定めるところにより経費を支払う義務を負う。社
員はいつでも退社することができるが、定款で別段の定めをすることができるとされる。
別段の定めがあっても、やむを得ない自由あるときはいつでも退社できる(同法27条・28
条)。社員は、定款の定めた事由の発生、総社員の同意、死亡又は解散、除名によって退
社する(同法29条)。
一般財団法人の設立
ついで一般財団法人であるが、その設立は、設立者(二人以上いる場合にはその全員)
が定款を作成し、公証人の認証を受け、その後遅滞なく財産の拠出を履行し、設立登記を
することによって成立する。遺言による設立も可能である(一般社団・財団法152条・155
条・163条)。定款には、目的、名称、主たる事務所の所在地、設立者の氏名または名称・
住所、設立者が拠出する財産及びその金額、設立時評議員・設立時理事・設立時監事選任
に関する事項、会計監査人設置一般財団法人の場合は設立時会計監査人の選任に関する事
項、評議員の選任及び解任の方法、公告方法、事業年度を記載し又は記録しなければなら
ないものとされる(同法153条1項)。拠出される財産は300万円を下回ってはならない
とされ、理事又は理事会が評議員を選任し又は解任する旨の定め、設立者に剰余金又は残
余財産の分配する権利を与える旨の定めは、効力を有しないとされる(同法153条2項・3項)。
これまでは、不特定かつ多数の者の利益を目的とする財団法人(公益財団法人)しか認
められなかったが、一般社団及び財団法人法のもとでは、非営利・非公益の財団法人も認
められることになったことに留意したい。
法人設立と登記
法人と取引しようとする第三者は,当該法人についてその組織・社員・財産状態など取
引上の重要事項について関心をもたざるをえない。そこで,法人の目的・名称・事務所の
所在地・設立許可の年月日・資産の総額・理事の氏名住所などを登記事項とする法人登記
制度が設けられている(一般社団・財団法人法299条以下)。
一般社団・財団法人法は、会社法(911条・49条、912条・579条など)、私立学校法(33
条)、労働組合法(11条)、農業協同組合法(63条1項)、特定非営利活動法人法(13条)
などと同じく、法人の成立に法人設立登記を関わらしめている(同法22条・163条)。設立
の登記は、一般社団・財団法人法20条1項または161条1項の規定による調査あるい
は設立時社員または設立者が定めた日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければなら
ないものとされる(同法301条1項、302条1項)。その登記事項は、目的、名称、主たる事
務所・従たる事務所の所在地、存続期間又は解散事由についての定款の定めがあるときは
その定め、理事等の氏名、代表理事の氏名・住所、役員等に責任の免除についての定款の
定めがあるときはその定め、公告方法などなどである(同法301条2項、302条2項)。
な
お,設立の登記の他には,変更の登記、吸収合併の登記、新設合併の登記、解散の登記、
継続の登記、清算人等の登記、清算結了の登記などがある(一般社団・財団法人法303-311
条)。
一般社団・財団法人法の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをも
って善意の第三者に対抗できないとされ、登記の後であっても第三者が正当な理由によっ
てその登記があることを知らなかったときも同様とされる。故意又は過失によって不実の
事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することが
できないものとされる(同法299条)。
法人の住所
設立された一般社団・一般財団法人の住所は,その主たる事務所の所在地にあるものと
される(一般社団・財団法4条)。住所の意義は,自然人の場合に準じて考えれば足りる(→
第2章1)。
※76-77頁
表2-4、2-5①②
※78-82頁
→
削除
以下のように改訂
名称の使用禁止
一般社団法人・一般財団法人でない者が、その名称または商号中に、一般社団法人・一
般財団法人であると誤認させるような文字を使ってはならないものとされている(一般社
団・財団法人法6条)。また、何人も、不正の目的をもって、他の一般社団法人又は一般財団
法人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならないものとされる
(同法7条)。なお、公益社団法人・公益財団法人でない者が公益社団法人・公益財団法人
であると誤認させるような文字を使ってはならないものとされてもいる(同法9条4項・5項)。
【Sup.4-1】法人の情報開示・公開
社会が規制緩和・司法による事後規制へ向かう大きな流れの中で、多様な目的の私人に
よる公益的もしくは非営利的活動そしてその活性化・促進の意義・価値を積極的に認め、
その組織を緩やかに公的に認知し、税制優遇措置など必要に応じた法的助成をはかってい
くことにかかり、設立・監督における行政による強い規制に代わるものとして、監事制度
の拡充・会計監査人制度の導入など自己規律の強化とならんで、情報開示の強化が求めら
れる(対内的にも対外的にも適正な活動が行われることを担保するための、あるいは法人
としてのアカウンタビリティ(説明責任)という意味での、情報開示・公開)。情報開示・
公開にかかわり、平成18年の一部改正前の民法は、登記と財産目録等の備置義務につい
てのみ規定していたが、特定非営利活動法人法や中間法人法はこの点を進めた。こうした
動きのなかで、この度の非営利法人制度改革においても情報開示・公開につきさらなる一
歩を進めた。すなわち、一般社団法人は、主たる事務所及び従たる事務所に定款を備え置
かなければならない。社員及び債権者は定款の閲覧を求めることができる。社員名簿をそ
の主たる事務所に備え置かねばならず、原則として社員の請求に応じてその閲覧または謄
写請求に応じなければならない。定時総会の招集に際して、計算書類・事業報告等の提供
をしなければならない。定時社員総会の終結後遅滞なく貸借対照表、大規模一般社団法人
にあっては加えて損益計算書、を公告しなければならない。さらに、計算書類・事業報告
等を定時社員総会の日の前日から5年間、主たる事務所の備え置かなければならない。社
員及び債権者は計算書類等又はその写しの閲覧、謄本又は抄本の交付を請求することがで
きる。一般財団法人についても同様である(以上につき、同法14条・32条・125条・128条・
129条・156条・199条など参照)。一般社団法人・財団法人のうち公益性認定を受けた公益
社団法人・公益財団法人は、当該年度開始の前日からその末日まで当該年度の事業計画書・
収支決算書を主たる事務所に備え置くこと、当該事業年度経過後3か月以内に作成した財
産目録、役員名簿、報酬等の支給基準を記載した書類などを5年間主たる事務所に備え置
くこと、財産目録等財務書類を行政庁に提出することなどが求められている。また、だれ
でも、原則として計算書類等の閲覧請求ができるものとされる(公益認定法21条・22条)。
なお、非営利法人が理解・信頼を得て非営利活動・公益活動の利用あるいはこれらへの
積極的関与を導くという観点からすると、非営利法人は、提供する財・サービス内容がど
のようなものかの理解を求める、あるいは個人・法人からの寄付や労務の提供を受けるた
めに、開示・公開を求められてはいない事項(任意開示事項)を含めて、自主的・自律的
に様々な情報の開示・公開をしてゆくことになるであろう。
4
法人の機関
一般社団法人の場合
(1)社員総会
社員総会は,一般社団法人における最高必須の意思決定機関であって、一般
社団・財団法人法の定める事項及び一般社団法人の組織・運営・管理その他一般社団法人
に関する一切の事項についての決議機関である(同法35条1項)。もっとも、理事会設置一
般社団法人においては、社員総会は、一般社団・財団法人法に規定する事項及び定款で定
めた事項に限り、決議することができるとして、その権限が縮小されている(同法35条2項)。
もちろん、この法律によって、(定款の変更、事業の全部譲渡ー同法146条・147条ーなど)
社員総会の決議を必要とするとされている事項について、理事・理事会その他社員総会以
外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは効力を有しないものとさ
れる(同法35条4項)。また、社員総会は、社員に剰余金を分配する旨の決議はできないも
のとされる。これによって、一般社団法人の非営利性が確保されるのである(同法35条3項)。
社員総会は、(一般社団・財団法人法37条によって少数社員が招集する場合を別として)
理事が、毎事業年度の終了後一定の時期(定時社員総会)、そして必要がある場合にはい
つでも、招集する(同法36条)。
(2)理事・理事会
①理事
一般社団法人は,その性質上肉体や精神を有しないから,対内的には法人の業
務を執行し,対外的には法人を代表する機関を必要とする。これが理事である。一般社団
法人には,一人または二人以上の理事を置かなければならないこととされている。社員総
会と並んで必須機関である(一般社団・財団法人法60条)。理事は、社員総会の決議によ
り選任され(同法63条1項),任期は原則として選任後二年以内に終了する事業年度のうち
最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとされる(同法66条)。
理事は,理事会設置一般社団法人の場合を除き、一般社団法人の業務を執行する(一般
社団・財団法人法76条1項)。理事が二人以上いる場合には、業務は過半数をもって決定す
る(同法76条2項)。理事は、対外的関係において,代表理事その他一般社団法人を代表す
る者を定めた場合を別として、一般社団法人を代表する。理事がその資格において法人の
ために行為をしたときには、その効果は直接一般社団法人について生ずるのである。理事
が二人以上いる場合には、理事は各自一般社団法人を代表する(同法77条1項・2項)。一
般社団法人は、理事会設置一般社団法人の場合を除き、定款、定款の定めにもとづく理事
の互選又は社員総会の決議によって理事の中から代表理事を定めることができる(同法77
条3項)。代表理事は、一般社団法人の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする
権限を有する(同法77条4項)。一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行
うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う(同法78条。なお、改正前民法44条2
項に該当する規定はない)。理事は、法令及び定款並びに社員総会の決議を遵守し、一般
社団法人のため忠実に、善良な管理者の注意義務をもってその職務を行わなければならな
い(同法83条・64条)。
②理事会
一般社団法人は、理事会を置くことができる(一般社団・財団法人法60条2項。
なお、公益社団法人について、理事会は必置であるー公益認定法5条14号)。理事会が設置
された場合(理事会設置一般社団法人の場合)、理事会は、三人以上置かれるすべての理
事によって組織され(同法90条1項・65条3項)、理事会設置一般社団法人の業務執行の決
定、理事の職務の執行の監督などの職務を行う(同法90条2項)。理事会は、理事の中から
代表理事を選定しなければならない(同法90条3項)。理事会は、重要な財産の処分及び譲
受け、多額の借財、重要な使用人の選任及び解任など重要な業務執行の決定については理
事に委任することはできない(同法90条4項)。理事会の決議は代表理事、代表理事以外の
理事であって理事会の決議により業務を執行する理事として選定されたものは、理事会設
置一般社団法人の業務を執行し、原則として三か月に一回以上職務の執行状況を理事会に
報告しなければならない(同法91条1項・2項)。
(3)監事・会計監査人
①監事
監事は、一般社団法人の理事の職務の執行が適法かつ妥当に行われているかを
監査(業務監査・会計監査)する機関である。監事の設置は任意であるが、理事会設置一
般社団法人、会計監査人設置一般社団法人は監事を置かなければならないものとされる(同
法61条。なお、公益社団法人も会計監査人を原則として置かなければならないからー公益
認定法5条12号ーこれと同様である)。監事は、社員総会の決議によって選任される(同法
63条1項)。監事は、監査のために、いつでも理事又は使用人に対して事業の報告を求め、
監事設置一般社団法人の業務及び財産の状況の調査をすることができ(同法99条1項・2項)、
また、理事が目的の範囲外の行為その他法令もしくは定款に違反する行為をし、またはこ
れらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって法人に著しい損害が生ず
るおそれがあるときは、当該理事に対して当該行為をやめることを請求することができる
(同法103条)。
②会計監査人
大規模一般社団法人(貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が2
00億円以上である一般社団法人)は、会計監査人を置かなければならないとされる(同
法2条2号・62条)。会計監査人は、一般社団法人の計算書類及び附属明細書を監査する(同
法107条1項)。
(4)役員(理事・監事)・会計監査人の損害賠償責任
なお、理事、監事、会計監査人(役員等)は、その任務を怠ったときは、これによって
生じた損害につき、一般社団法人に対して賠償責任を負うものとされる(同法111条1項)。
この責任については、免除、一部免除がされることがありうる(同法112条-116条参照)。
役員等が、その職務を行うについて、悪意または重大な過失があったとき、第三者におい
て生じた損害につき賠償責任を負う。理事が計算書類などに記載すべき重要な事項につき
虚偽の記載、虚偽の登記などをしたとき、監事が監査報告に記載すべき重要な事項につき
虚偽の記載をしたとき、会計監査人が会計監査報告に記載すべき重要な事項につき虚偽の
記載をしたときも同様である(同法117条)
一般財団法人の場合
(1)評議員・評議員会
一般財団法人については、評議員、評議員会、理事、理事会および監事が必置機関であ
る(一般社団・財団法人法170条)。会計監査人は、設置が義務づけられている貸借対照表
の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上である大規模一般財団法人を別として、
定款の定めによって任意に置くことができるものとされている(同法170条2項・171条)。
評議員は、三人以上置かれる。評議員は、法人であってはならず、また、一般財団法人
の理事、監事あるいはその使用人を兼ねることはできない(同法173条)。評議員は、評議
員会を通じて理事・監事を監督する。任期は、原則として選任後4年以内に終了する事業
年度のうち最終のものに属する定時評議員会の終結の時までであるが、定款によって選任
後6年以内に終了する事業年度のうち最終のものに属する定時評議員会の終結の時までと
伸ばすことができるものとされる(同法174条)。
すべての評議員で組織される評議員会は、一般社団・財団法人法に規定する事項及び定
款に定めた事項に限り、決議をすることができる(同法178条1項)。法定事項として、た
とえば、理事・監事・会計監査人の選任・解任(同法177条・63条1項、176条)、定款変更
(同法200条)、事業の全部譲渡(同法201条)などがあるが、これらについて理事、理事
会などが決定できることを内容とする定款の定めは効力をもたない(同法178条3項)。 評
議員会は、(一般社団・財団法人法180条によって評議員が招集する場合を別として)理事
が、毎事業年度の終了後一定の時期に(定時評議員会)、そして必要がある場合にはいつ
でも、招集する(同法179条)。
(2)理事、理事会、監事、会計監査人、役員等の損害賠償責任
理事、理事会、監事、会計監査人については、一般社団法人についての規定の多くが準
用されている(一般社団・財団法人法197条)。役員等の損害賠償責任についても、同様で
ある(同法198条)。なお、一般財団法人の理事は、法人の財産のうち一般財団法人の目的
である事業を行うために不可欠なものとして定款の定めた基本財産があるときは、定款の
定めるところによりこれを維持しなければならず、かつこれについて事業を妨げることと
なる処分をしてはならないものとされていることに留意したい(同法172条2項)。
5
法人の権利能力
設立された法人は、その効果として、権利能力を取得することとなる。すなわち、法人
は、法人の名において権利を取得し義務を負担しうるのみならず、登記をすることができ、
また訴訟の当事者となりうるのである。
ところで、法人は、自然人とまったく同様の権利能力をもつのであろうか。民法は、こ
の点につき、「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範
囲内において、権利を有し義務を負う」と規定している(34条。本条は、各種の法人にお
いて準用され、あるいは同様の規定が置かれている一労働組合法12条・私立学校法29条・
社会福祉事業法28条・宗教法人法10条など)。これをうけて、法人の権利能力については、
三つの制限があると説かれてきた。
(1)性質による制限
法人には、その性質上、親権、生命権など身分上の権利義務、肉体
の存在を前提とする権利義務は帰属しえない。なお、法人も名誉権や氏名権などの人格権
をもちうることには留意したい(最判昭和39・1・28民集18巻1号136頁参照)。
(2)法令による制限
法人は、立法政策上認められるものであるから、その権利能力は法
令の制限に服するものとされる。しかし、実際上は、たとえば一般社団法人・一般財団法
人や会社が解散または破産したときは清算の目的の範囲でのみ権利を有し義務を負うとさ
れているほか(一般社団・財団法人法207条、会社法476条・645条、破産法35条)、こうし
た制限はあまりみられない。
(3)目的による制限
民法は、右にみたように「目的の範囲内において、権利を有し義務
を負う」と定めている。そこで、これまでの判例およU支配的な学説は、法人の権利能力あ
るいは権利能力・行為能力(この場合の行為能力は、自然人の場合のそれとは異なり、誰
のどのような行為が法人の行為となり法人に権利義務を帰属せしめうるかということにか
かわる)が「目的」によって制限されると解している。すなわち、法人の代表機関によっ
て「目的の範囲」外の行為がなされたときはその行為は絶対的に無効(法人にその効果が
帰属しない)であり、その行為の相手方が表見代理の成立を主張したり、法人の側が無権
代理行為の追認をしたりすることは認められないというのである。
しかし、「目的の範囲」は単に法人の代表者の代表権を制限するにすぎないとする説も
あり、むしろ現在ではこれが有力となりつつあるといってよい。この説は、代表者によっ
てなされた目的外の行為は権限外行為であって、無権代理行為として、表見代理が成立し
あるいは追認がなされない限り、その効果は法人に帰属しないこととなると説く(110・11
3条参照)。こう解さないと取引の相手方の利益を害することとなり、また前説のように解
することが必ずしも法人ないしその構成員の利益を保護することには結びつかないという
のである。
なお、「目的の範囲」の判断基準についてであるが、判例はこれを当初は厳格に解して
いた。しかし、その後、とくに営利法人については、まず、定款「記載文言より推理演繹
し得べき事項」を含むものとし、さらに「目的たる事業を遂行するに必要なる事項」をす
べて包含するものとし、しかもこれは定款の記載自体から観察して客観的抽象的に判断さ
るべきものとするにいたっている。そして、企業のなした政治献金に関する最高裁判決が
「(会社は定款に定められた目的の範囲内において権利能力を有するが)会社による政治
資金の寄付は客観的、抽象的に観察して、会社の役割を果たすためになされたものと認め
られるかぎりにおいては、会社の定款所定の目的の範囲内の行為であるとするに妨げない」
と判示するに及んで(最判昭和45・6・24民集24巻6号625頁)、この制限は事実上なきがご
とき状態に立ちいたっている。なお、商法学説においては、「目的の範囲」は代表機関の
法人に対する内部的責任を定めているにすきないとする説、34条は会社については適用な
いし準用されないとする説がきわめて有力である。
これに対して、非営利法人については、たとえば協同組合がなした組合貞以外のものに
対する貸付、組合員以外のもののためにする保証は「目的の宰囲」外の行為として無効で
あるとするなど、「目的の範囲」についてなお厳樫に解して、目的外行為によって法人が
財産を失ったり、義務を負担したりすることがないようにし、法人さらにはその構成員の
利益保護をはかっていそといえよう(なお、貞外貸付などを制限するのは、協同組合に税
法上・金融上種々の保護を与える反面として、一般金融市場を保護するためであるといっ
たことも指摘されている)(この点、学説においては、こうした保護は公益法人について
のみ考えればよく、協同組合のような中間法人については、その実質的に果たしている社
会的経済的機能、構成員資格の開放的性格などからして、このような保護の追要はないの
ではないかとする説が有力である。
※82-84頁
→
改訂の要なし
考えてみよう②
※84-91頁
6
→
以下のように改訂
対外的法律関係
法人がする第三者との取引
法人自体が現実に活動するということはありえないから、法人が第三者と取引をする場
合には、代表機関によらざるをえない。こうした代表機関の行為については、これを法人
の行為そのものとみる説(この場合には代理と似て非なる概念として「代表」を用いるこ
ととなる)と、法人の行為ということを観念する必要はないとして機関の行為を一種の代
理としてとらえようとする説とがある。しかし、この対立は具体的な問題の扱いにおいて
結果に差異をもたらすものではない。なお、代表とみる説も、その形式・要件については、
代理に関する規定に準じて扱っている(ここでは、たとえば一般社団・財団法人法77条1項
の文言に従い「代表」を用いておく)。
代表権の制限・代表権の濫用
一般社団法人及び一般財団法人の代表機関は、すでにみたように、理事または代表理事
及び代表理事以外の者であって理事会の決議によって業務を執行する理事として選定され
たものである(一般社団・財団法人法77条1項・91条1項・197条)。理事の代表行為によっ
て、法人は権利を取得し義務を負うのである。理事の代表権は、定款または社員総会によ
って制限することが可能である。しかし、代表権の制限は、善意の第三者には対抗できな
い(一般社団・財団法人法77条5項)。たとえば、定款により理事長のみが代表権をもつこ
ととされている社団法人の平理事が法人を代表して契約を締結した場合、相手方がこのこ
とを知らなかった場合には、法人は当該契約が無権代理によるものであるとの主張を相手
方に対してなすことは許されないのである。また、理事が数人ある場合においては、(別
段の定めがないとき)法人の事務は過半数をもって決められることになっているが(同法7
6条2項)、多数決によってなされなかった場合については、77条5項が類推適用されるとい
ってよいであろう。
理事が「目的の範囲」内の行為をしたのであるが、私利をはかる目的であった場合(代
表権濫用の場合)はどう扱えばよいのであろうか。これについては、相手方が理事の行為
の真意を知りまたは知りうべかりしときは、心裡留保についての93条ただし書を類推適用
して代表による行為は無効となるとする説、相手方は代表権濫用の事実を知りまたは知ら
ないことに正当の理由がないときは110条を類推適用して無権代理となり法人には効果が
帰属しないとする説、こうした行為は原則として有効であるが、相手方がその事実を知り
ながら代表行為の有効性を主張することが信義則に反し権利の濫用にあたるときは無効と
する説が対立する。判例は、93条ただし書類推適用説である(最判昭和44・4・3民集23巻4
号737頁)。こうした問題につき、一部改正前の民法44条1項(一般社団・財団法人法78条)
で処理する判例もある。
7
法人の不法行為責任
一般社団・財団法人法78条の責任
一般社団・財団法人法は、法人の代表理事その他の代表者がその職務をおこなうにつき
第三者に損害を加えた場合には、法人に賠償責任を負わせている(一般社団・財団法人法7
8条。平成18年改正前民法44条1項)。
こうした責任が法人に生ずるためには、加害行為が709条の定める不法行為の成立要件を
充たすことのほか、第1に、加害行為が法人の代表者によってなされたものでなければな
らない。法人の使用者によるものである場合には、本条ではなく、715条が適用されること
になる(→後述【他の法条にもとづく責任】)。
また、第2に、右の加害行為はその職務を行うについてなされたものであることを要す
る。「職務を行うについて」の解釈につき、判例は、理事等が代表権を踰越しあるいは濫
用して取引をなすなどの取引的不法行為、他人の名誉を毀損するなどの事実的不法行為を
区別することなく、行為の外形から判断して客観的に法人の事業活動ないし代表機関の職
務範囲と認められれば、この要件は充たされると考えている(外形理論)。とくに事実的
不法行為については外形理論に対して批判が強い。いずれにしても、代表機関がなした行
為がその職務と関連性を有するか、で判断していかざるをえない(→【Sup.5】)。
【Sup.5-2】-法人の不法行為責任に関する判例
①〔東京高判昭和63・3・11判時1271号3頁、判タ666号91貢〕
クロロキン製剤を服用したため、その副作用によって網膜症に羅患したⅩらが、製薬会
社を相手に提起した損害賠償請求事件について、東京高裁は次のように判示した。製薬会
社Yの代表者は、クロロキン製剤によってクロロキン網膜症が発症する危険があることを
予見することができ、また時の経過とともに実際に予見していたのに、これについての情
報収集、調査検討を怠り、また、同剤の使用者に対する正確かつ充分な副作用情報の徹底
した伝達を怠ったのであり、そしてYがこうした副作用情報の提供、伝達をしていたなら
ばⅩらの発症を防止しえたものと考えられるから、副作用予防の見地からする高度な医薬
品安全性確保義務を負うYの代表者に職務執行上の過失があったといわざるをえず、Yは、
この過失によってクロロキン網膜症に羅思したⅩらに対し、商法261条3項・78条2項、民法
44条1項の規定にもとづき損害賠償義務を負わなければならない。
②〔最判昭和41・6・21民集20巻5号1052頁〕
Y市の市長Aは、自己の負債の支払にあてるため、Y市議会の議決を経ることなく三通
の約束手形用紙の振出人欄に市長の公印を押印し、その他は白地のままBに交付し、金融
を依頼した。Bは、Ⅹに対して債務を負担していたので、A振出の右手形によって右債務
を決済しようと考え、前記手形につき金額および振出人Y市長等と補充してⅩに交付する
旨申し出た。Ⅹは、右手形がY市振出にかかるものかAに確かめたところAが肯定したの
で、Bの右申出に応じ、手形を受け取った。支払期日に手形を提示して支払を求めたがY
市がこれを拒絶したので、Ⅹは、Y市を相手どって、民法44条に基づく損害賠償請求をな
した。最高裁は、Ⅹにも市議会の議決の有無などについて調査しないという過失があると
して、Ⅹの請求を一部認容。
取引的不法行為の場合において、被害者たる取引の相手方が、代表機関の代表権の踰越・
濫用の事情を知っている場合あるいは知らないことにつき重過失が認められる場合には、
法人は免責されると解する判例がある(最判昭和50・7・14民集29巻6号1012頁ーY町の町
長Aが、自己の借金の返済のため、自ら代表取締役をしているB会社名義で約束手形を振
り出し、町長公印を不正に用いてY町名義で手形の裏書をしたという事案にかかわる)。
学説も、少なくとも相手方悪意の場合については、これを支持している。
なお、取引的不法行為については、場合により、一般社団・財団法人法78条(平成18年
改正前民法44条1項)の適用の他、110条の適用によっても(履行責任を負わせるという方
法で)取引の相手方の救済をはかりうるということがあるが、両規定の選択的適用を認め
ず、もっぱら110条によって、あるいは同条を優先適用して、取引上の責任(契約書任)を
負わせ、それができない場合にはじめて一般社団・財団法人法78条(同民法44条1項)の責
任を負わせることによって問題を解決すべきであるとする説もある。
他の法条にもとづ<責任
民法715条は、ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について
第三者に加えた損害を賠償する責任がある、と規定している。したがって、使用者として
の法人は、この規定にもとづいて、被用者のなした不法行為につき、不法行為責任を負担
することがありうる。
法人は、この他にも、たとえば、①民法717条により、塀庇ある土地工作物の占有者もし
くは所有者として、②自動車損害賠償保障法3条により、自動車の運行によって他人の生
命・身体を害した場合における運行供用者として、③大気汚染防止法25条1項により、事業
活動にともなう健康被害物質の大気中への排出により人の生命または身体を害した場合の
排出にかかる業者として、④私的独占の蕪止及び公正取引の確保に関する法律25条により、
私的独占もしくは不当な取引制限をし、または不公正な取引方法を用いた事業者として、
不法行為責任を負うことがありうる。
さらに、近時、法人自体の民法709条の責任という構成(いわゆる企業責任論)が強調さ
れている。これは、法人を構成する個人の過失の存否を問題としないで、組織体としての
法人自体の加害行為、過失の存否を問題にする構成であつて、下級審判例には、とくに公
害にかかる損害賠償請求につき、こうした構成により責任を認めたものがある(熊本地判
昭和48・3・20判時6966号15頁など)。
法人の理事などの責任
法人が改正前44条1項によって責任を負う場合においても、加害行為をなした理事等は、
一般規定に従って、個人としての責任を負うものと解されてきた(大判昭和7・5・27民集1
1巻1069頁「ああ玉杯に花うけて」の著作権を侵害した出版社が賠償費任を認められたが、
これと並んで、その取締役も個人として出版社と連帯して責任を負うとされた事案)。こ
の点は、一般社団・財団法人法のもとでも同様に解されよう。
平成18年改正前民法は、法人の目的の範囲外の行為によって他人に損害を加えた場合
は、その事項の議決に賛成した社員、理事およびこれを履行した理事その他の代理人は連
帯して責任を負うものと定めていた(44条2項)。一般社団・財団法人法には、この点につ
いての規定がないが、民法719条1項の共同不法行為の規定に委ねられたといってよい
であろう。
理事など(役員等)が一般社団・財団法人法111条ないし118条、同198条によ
って損害賠償責任を負うことがあることは、すでに述べた。
8
法人の消滅
解散・清算
一般社団法人・一般財団法人の消滅とは、一般社団法人・一般財団法人が法人であるこ
とをやめることであるが、これは、一定の手続を経て、段階的になされる。すなわち、一
般社団法人・一般財団法人は、定款で定めた存続期間の満了、定款で定めた解散事由の発
生、破産手続開始の決定、解散を命ずる裁判、社員総会の決議、社員の欠乏(これら二つ
は一般社団法人に固有なもの)、基本財産の滅失などによる目的である事業の成功の不能
(一般財団法人に固有なもの)など、解散事由が生ずると本来の積極的活動をやめ、清算
に入る(これを解散という)。解散したときは、二週間以内に解散の登記をしなければな
らないとされている(同法308条)。
一般社団法人・一般財団法人は、解散した場合(加えて、設立の無効の訴えもしくは設
立の取消しに係る請求を認容する判決が確定した場合)には、清算をしなければならない
(一般社団・財団法人法206条)。清算をする一般社団法人・一般財団法人は、清算の目的
の範囲内においてなお存続するものとみなされる。これを、清算法人とよぶ(同法207条)。
清算法人に一人または二人以上置かれる清算人は、理事、定款で定める者、社員総会また
は評議会で選任された者、場合によって裁判所により選任された者が就任するが、現務の
結了・債権の取立て及び債務の弁済などの職務を行う(同法212条)。清算人は清算法人の
業務を執行し、清算法人を代表する(同法213条・214条)。清算法人は、定款の定めによ
って清算人会、監事を置くことができるとされている(同法208条2項)。清算法人の財産
がその債務を弁済するに足りないことが明らかになったときは、清算人は直ちに破産手続
開始の申立てをしなければならない(同法215条1項)。残余財産がある場合、その帰属は、
定款の定めるところによるが、これによって帰属が定まらないときは清算法人の社員総会
または評議員会の決議によって定める。これらによって帰属が定まらない残余財産は国庫
に帰属するものとされる(同法239条。なお、公益法人については、定款において、残余財
産は、類似の事業を目的とする他の公益法人または国・地方公共団体などに帰属させる旨
が定められている)。
清算法人は、清算事務が終了したときは、遅滞なく決算報告を作成しなければならない。
清算人は、(清算人会設置法人においては清算人会の承認を受けた後)決算報告を社員総
会または評議員会に提出し、または提供し、その承認を受けなければならない(同法240条)。
この承認の日から二週間以内に清算結了の登記の登記をしなければならない。こうして、
清算事務が終了したときに法人の権利能力は消滅する。
9
法人格否認の法理、権利能力なき社団・財団
法人格否認の法理
法人制度は、法人の設立者もしくは構成員と別個の法人格をつくりだす法技術であるが、
実際の法適用の場面で、法人とその設立者もしくは構成員とを互いに独立した別な法的主
体として扱うことが妥当でないと考えられる場合がある。たとえば、居室の明渡し・延滞
賃料などの債務を負った会社が賃貸人の履行請求の手続を遅らせるため新会社を設立した
場合(最判昭和48・10・26民集27巻9号1240貢)や、実質的に個人企業にひとしい会社が賃
借する店舗について会社の代表者が個人の名において賃貸人との間で賃貸借契約を合意解
除する旨の和解契約がなされたのであるがその和解直後に右代表者が店舗の賃借人は会社
であると主張する場合(最判昭和44・2・27民集23巻2号511貢)がこれである。
このように、法律の規定や契約上の義務を回避し、または債権者を害するために法人格
を濫用する場合、あるいは、法人格の濫用とまではいえないが法人形式の利用者と法人と
が実質的・経済的に同一とみられる場合すなわち法人格が全くの形骸にすぎない場合には、
法人の形式を無視して、法人格濫用の効巣を否認し、あるいは実体に即した規範の適用を
することが求められる。こうした考え方は、法人格否認の法理とよばれ、判例・学説によ
って一般的に承認されているが、一般条項のひとつであるからその具体的適用にあたって
は慎重でなければならないとされる。
権利能力なき社団・財団
(1)権利能力なき社団
社団法人は、これまで公益または営利を目的とするものに限られ
ていたから、たとえば学術団体・同窓会・互助会など公益も営利をも目的としない中間的
な団体は農業協同組合法など各種の個別法によって認められるほか、法人とはなれなかっ
た(なお、一定の要件に該当する自治会・町内会については、地方自治法260条の2によっ
て、法人格取得の途がひらかれている。2001年に成立し翌年施行された中間法人法によっ
て中間的な団体が法人格を取得する途はひらかれたが、あまり利用されていない)。また、
設立過程にある団体においていまだ法人格をもたないということが当然にある。制度とし
て法人格を取得する途は開かれていても法人格を得ようとしないものもありうる。こうし
たことから、社団としての実体をもちながら法律上権利義務の帰属点としての資格をもた
ないもの、すなわちいわゆる権利能力なき社団が生ずる。
そこで、団体のなかで、社団性をもつものに対しては、法人ではないから民法上の組合
(組合型団体)として扱うよりほかないというのではなく、できるだけ法人格をもつ社団
(社団型団体)と同様な法的扱いをすべきではないかとの考え方が展開してきた(「権利
能力なき社団」論)。
まず、権利能力なき社団として扱いうる社団であるためには、団体としての組織をそな
え、そこに多数決の原則がおこなわれ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続
し、その組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点
が確定していることを要する、というのが判例である(最判昭和39・10・15民集18巻8号16
71頁)。
権利能力なき社団については、代表者によってその社団の名において構成員のために行
為がなされ、社団の財産・債務はその構成員に総有的に帰属すると考えられている(→表2
-2)。すなわち、構成員は個々の財産については持分権をもたず、債務について構成員は
責任を負わないというのである(前掲最判昭和39・10・15、最判昭和48・10・9民集27巻9
号1129頁など)。もっとも、この点については、総有概念にとらわれず、端的に権利能力
なき社団に権利主体性を認めてよいとする説、社団の類型に応じてその実体に即した法的
扱いをすればよいとする説も有力である。具体的な問題としては、社団の有する不動産の
登記について登記実務は社団名義の登記はもちろん社団の肩書付きの代表者名義の登記も
認めていない(最判昭和47・6・2民集26巻5号957貫。ただし、東京地判昭和59・1・19判時
1125号130頁は、法人は代表者個人名義の登記のままで代表者の個人債務についての差押債
権者に対抗しうるとしている)がこれでよいのか、判例は社団の債務につき個人責任を負
わないとしているがとくに収益を構成員に分配することを目的とする営利団体の場合にこ
れでよいのか、などがかまびすしく論じられている。なお、銀行実務は肩書を付した代表
者名義の預金を認めており、民事訴訟法は代表者の定めのある能力なき社団は当事者能力
をもつと規定している(民事訴訟法29条)。
(2)権利能力なき財団
右と同様に財団としての実体をもちながら、権利能力をもたない
ものがある(たとえば、設立中の財団法人に関する、最判昭和44・6・26民集2357号1175頁
参照)。
※91-92頁
【App.7】
中間法人法の成立
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