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エンベデッド製品のカスタマイズ事例

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エンベデッド製品のカスタマイズ事例
エンベデッド製品のカスタマイズ事例
Case Study of Embedded Product Customization
青木 弘 *
笹田泰嘉 **
中村洋次郎 *
花本英二 *
首藤直樹 *
Hiroshi Aoki
Yasuyoshi Shinoda
Youjirou Nakamura
Eiji Hanamoto
Naoki Syutou
番井昭彦 ***
宇都宮 智 ***
北 晋一 ***
Akihiko Ban-i
Satoshi Utsunomiya
Shin-ichi Kita
*
ProDeS グループ システムプロダクト事業部 第三技術部
**
ProDeS グループ システムプロダクト事業部 第一技術部
***
ProDeS グループ 開発技術統括部 第一開発部
PFU は顧客要求の開発期間短縮,省スペース化,設置互換を図るために,システム オン モジュール(小型
CPU モジュール)を搭載したカスタム(特注生産)製品を開発してきた.ここでは PFU が顧客装置をカスタム
化するために提供しているエンベデッド製品とシステム オン モジュールを紹介し,システム オン モジュールを
使用したカスタマイズ事例について解説する.
We develop customized products (custom-ordered products) in which a System-On-Module
(small CPU module) is installed to meet our customer's requests to shorten development
time, save space, and ensure installation compatibility for their desired products. This report
introduces our embedded products that are used to customize products for customers and our
System-On-Module. This report also provides a customization case study on using a SystemOn-Module.
1
2
まえがき
PFU は顧客装置のカスタマイズ生産に対応するため
エンベデッド製品の概要と特長
2.1 エンベデッド製品の概要
2001 年に開発,製造から保守まで一貫したサービスと
今日,工作機械,半導体製造装置,医療機器,通信機
して提供する ProDeS サービスを立ち上げ,それ以降
器など,様々な装置の制御にコンピュータが使われてい
手のひらサイズの携帯端末からラック搭載の大型ネット
る.このような用途で使用されるコンピュータは,性能,
ワーク装置に至る様々な顧客要件に沿った装置を開発し
機能,形状,供給などの面で,それぞれ要件が異なり,
てきた.BIOS,OS についても顧客要望の機能組込み
汎用の PC では対応できないものが大半を占める.
のサービスを提供し,ソフトウェア面からも ProDeS
参1)
サービスを提供してきた
.
PFU ではこれらの用途に対応して,表 - 1の各種エ
ンベデッド製品を提供している.
それと平行して顧客装置への組込みに向けた幅広い分
PFU は 50 年を超えるコンピュータの開発経験と最
野に合ったシステム オン モジュールの開発も,自主ビ
先端技術を融合して,顧客の要望に対応したエンベデッ
ジネスとして進めてきた.
ド製品を提供している.
今回は ProDeS サービスとシステム オン モジュー
性能・品質・信頼性において高いクオリティを誇る
ル開発で培ってきた技術を融合して開発したエンベデッ
PFU エンベデッド製品は,様々な分野で導入されてお
ド(組込みコンピュータ)製品のカスタマイズ事例につ
り,工作機械や半導体製造装置を始め,プラント監視機
いて紹介する.
器や通信装置など止まらないことを要求されるミッショ
ンクリティカルな分野にも多数の採用実績がある.
主な適用分野は工作機械,半導体製造装置,マシンビ
16
PFU Tech. Rev., 23, 1,pp.16-24 (05,2012)
エンベデッド製品のカスタマイズ事例
◆表 - 1 PFU のエンベデッド製品ラインナップ◆
区分
概要
システム オン モ
ジュール AM100
シリーズ
PICMG 標準規格 COM Express ※1
に対応した組込み用小型モジュール
ボードコンピュータ
AM500 シリーズ
産 業 機 器, 通 信 機 器 向 け 標 準 規 格
CompactPCI 準拠の産業用途向けボー
ドコンピュータ
組込みコンピュータ
AR シリーズ
設置場所を選ばないコンパクトな
AR2000 シリーズ,豊富な拡張性と
スケーラビリティを持つ AR8000 シ
リーズ
カスタム製品
PFU
システム オン モジュール
(COM Express 対応)をご提供
※CPU,チップセット,メモリ搭載済み
※1
顧客
キャリアボードのみの開発
顧客の要望を高次元で実現するカスタ
ム製品
※1 PICMG(PCI Industrial Computer Manufacturers
Group)は,高性能テレコミュニケーションと産業コンピュー
タの利用のために,オープンな標準規格を開発することを目的
に,450 を超える企業が参画する団体である.これまでに,
CompactPCI,AdvancedTCA,COM Express な ど を 標 準
規格化した実績がある.
COM Express は,PICMG が制定した組込み向け CPU モ
ジュール規格で,I/O 部を持ったキャリアボードと組み合わせ
ることで,マザーボード機能を実現可能である.PCI Express,
シリアル ATA 等高速インターフェースに対応している.
※必要なインターフェース,デバイスを
搭載
◆図 - 1 システム オン モジュールコンセプト◆
(Fig.1-System-On-Module concept)
る.
1)
開発期間,費用やリスクの低減
CPU やチップセット,メモリ等,高速で設計難易
度の高い部分の開発が不要となるため,開発期間,費
用,リスクの低減が図られ,差別化となるコア技術の
開発にリソースを集中することができる.
CPU だけでなくチップセットが変わった場合でも
モジュールを交換するだけで容易にアップグレードが
可能(デバイスドライバの変更は必要)
.
2)
小型で省電力のシステム構築
小型モジュールを使用することにより小型のシステ
ムが構築できるとともに,低消費電力設計により省電
ジョン,医療機器,プラント監視機器,通信機器,セキュ
力システムの構築が可能.
リティ装置,店舗システム,自動販売機がある.
3)
業界標準規格 COM Express に準拠
以降,エンベデッド製品の一つのシステム オン モ
システム オン モジュールは,組込み向け CPU
ジュールを取上げ,その概要,採用によるメリット,シ
モジュール規格 COM Express に準拠している.
ステム オン モジュールを採用に合せて開発が必要とな
COM Express に準拠した製品は,多数のベンダー
るキャリアボード開発に対するサポートや開発サービ
から提供されている.
ス,並びに最新製品ラインナップの概要を説明する.
また,カスタム製品での顧客要望対応範囲の概略も説
明する.
顧客は標準規格製品として,将来にわたって安心し
て使用することができる.
(2)
キャリアボード開発における手厚いサポートや開
発サービス
2.2 システム オン モジュールとカスタマイズ製品
2.2.1 システム オン モジュール AM100 シリーズ
システム オン モジュールとは,CPU,チップセッ
トなどの主要なコンポーネントを小型パッケージに凝
縮した小型モジュール製品(125mm × 95mm)であ
り,PICMG が制定した組込み向け CPU モジュール規
格 COM Express に準拠している.
システム オン モジュールを使用する場合,顧客の仕
様に合わせたキャリアボードの開発が必要となる.
PFU では,キャリアボードを開発される顧客に以下
の手厚いサポートを提供している.
また,PFU が顧客仕様のキャリアボードを開発,製
造するサービスも提供している.
1)
エンジニアの直接サポート
顧客の仕様に合わせて,必要なインターフェース,デ
顧客のキャリアボード開発における,様々な問題
バイスを搭載したキャリアボードと組み合わせることに
点や疑問点について,経験豊富な PFU のエンジニア
より,
マザーボードの機能を実現している(図 - 1参照)
.
が迅速に答え,顧客のキャリアボード開発を強力にサ
(1)
システム オン モジュール採用によるメリット
顧客がカスタムボードを開発する際にシステム オン
モジュールを採用することにより,以降のメリットがあ
PFU Tech. Rev., 23, 1, (05,2012)
ポート.
2)
評価ボードの提供
顧客によるモジュールの評価やアプリケーションを
17
エンベデッド製品のカスタマイズ事例
先行開発するための評価ボードを提供.
3)
充実したマニュアル
充実した内容のマニュアル,およびキャリアボード
設計において重要な参考回路図や熱設計の指針を記載
◆表 - 2 システム オン モジュールの主な製品◆
モデル名
特長と外観
AM120 モ デ ル
210G
•デジタル・ディスプレイ・インターフェー
スなどの最新テクノロジーに対応した
COM Express Type6 に準拠.
•第 2 世代インテル ® ※1 Core™ ※1プロセッ
サを搭載して高いシステム性能を提供.
•COM Express Basic フ ォ ー ム フ ァ ク タ
(サイズ:125mm × 95mm).
AM160 モ デ ル
150G
•第 2 世代インテル Core プロセッサを搭載
して高いシステム性能を提供.
•ECC メモリに対応して高い信頼性を要求さ
れるアプリケーションにも対応可能.
•COM Express Extended フォームファク
タ(サイズ:155mm × 110mm).
AM105 モ デ ル
110B
•インテル Atom プロセッサ搭載.
•高い処理性能と超低消費電力を両立.
•COM Express Basic フ ォ ー ム フ ァ ク タ
(サイズ:125mm × 95mm).
したデザインガイドを提供して,顧客の短期開発を支
援.
4)
安心のソフトウェアサポート
OS(Windows® 注1),Linux)及び BIOS カスタ
マイズによる柔軟な対応に加え,PFU 製の監視ソフ
トウェア EmbedWare/SysMon® 注2)により,
リモー
トシステム監視・電源制御機能を提供.
(3)
システム オン モジュールの製品ラインナップ
PFU では 10 年以上にわたってシステム オン モ
ジュール製品の提供を行っており,累計出荷台数は 33
万台を超える.COM Express に準拠した製品では国
内シェア No.1 注3)を誇る.
充実した製品ラインナップを取りそろえ,顧客の要望
に幅広く対応している.表 - 2に主な製品を示す.
(4)
システム オン モジュールの今後の計画
昨 年,COM Express の 新 規 格“Revision 2.0”
が制定された.この中で定義された COM Express
Type6 は,デジタル・ディスプレイ・インターフェー
ス,USB3.0 などの最新テクノロジーに対応しており,
今後 CPU モジュールの標準規格として主流になると予
想される.
PFU は 昨 年 い ち 早 く Type6 対 応 製 品 で あ る
AM120 モデル 210G を出荷しており,今後も Type6
対応製品のバリエーションを増やしていく計画である.
また,PFU では業界トップベンダーであるインテル
社が提供する最新テクノロジーを安定的に提供し,最新
プラットホームをいち早く市場へ投入すべく,同社と密
接なアライアンス関係を構築している.
今後はインテル最新プラットホームの採用による性
能,機能の向上はもちろん,より信頼性を向上したモデ
※1 インテル,インテル Core は,米国およびその他の国における
Intel Corporation の商標である.
ル,より消費電力を低減したモデルを追加して,システ
ム オン モジュールの適用範囲を拡大していく計画であ
シリーズ等のスタンダード製品だけでなく,顧客の要望
る.
を受けて,顧客専用のカスタム製品も提供している.
2.2.2 カスタマイズ製品
PFU は AM100 シリーズ,AM500 シリーズ,AR
注1)Windows は,米国 Microsoft Corporation の,米国,日本お
よびその他の国における登録商標または商標である.
注2)EmbedWare および EmbedWare/SysMon は,株式会社 PFU
の日本国内における登録商標である.
注3)出 典:( 株 ) 富 士 経 済「 エ ン ベ デ ッ ド シ ス テ ム マ ー ケ ッ ト
2009」
18
PFU のカスタマイズ開発は,マザーボードの開発か
ら I/O,筐体,BIOS や OS に至るまでシステム全体を
顧客の要望に応じて開発,製造してきた.カスタム製品
では以下の設計・評価・認証含めた開発サービスを提供
している.
(1)
ボード開発
インテル製品を中心とした各種プロセッサを搭載し
PFU Tech. Rev., 23, 1, (05,2012)
エンベデッド製品のカスタマイズ事例
て,PCI Express,USB3.0 など高速インターフェー
スに対応した,高機能,高品質のボードを提供.
況で,装置小型化の障壁となった.
この一時的に必要な電流容量を抑えるため,キャリア
また,当社システム オン モジュールを採用する顧客
ボードへ供給する電源と HDD へ供給する電源の供給順
には,システム オン モジュールの販売だけではなく,
序を制御する回路を自社開発し,スロット間の電源供給
システム オン モジュールを搭載するためのキャリア
順序を調整することにより,装置全体のピーク電流を分
ボード開発,製造も行っている.
散させ(12V 電源最大電流 22A)
,450W(ピーク時)
(2)
システム開発
操作性,保守性を考慮した筐体設計.顧客の要求する
設置環境,設置サイズをクリアする筐体を提供.
UL/CSA などの各種海外安全規格,RoHS など有害
物質の非含有証明などにも対応.
(3)
ソフトウェア開発
容量の電源を選定することで装置の小型化と電源部のコ
スト低減を実現している.
(2)
信頼性向上
本装置は信頼性向上のために次の機能を備えている.
1)
ストレージ部の信頼性
本装置のストレージ部は信頼性向上のため1スロッ
クイックブートや顧客専用カード搭載に対応するため
トごとに 2 台の HDD を搭載しており,ソフトウェ
の BIOS カスタマイズ,Windows Embedded のカ
ア RAID と組み合わせて使用することで,
RAID1(ミ
スタマイズ,Linux ドライバの開発,HDD レス運用を
ラー)による二重化を行うことができる.
行うための OS カスタマイズなどにも多数の対応実績
2)
電源部の信頼性
がある.
本装置は無停電電源装置 UPS を内蔵しており,瞬
断,
停電発生時には即時に電源状態が OS に通知され,
3
システム オン モジュールを使ったカ
スタマイズ事例
ここではシステム オン モジュールを実際に使用した
カスタム事例について紹介する.
OS 機能で自動的にシャットダウンすることで,OS
データの破壊を防ぐことができる.
3)
システムファンとシステム オン モジュールの冷
却用ファンの監視
本装置には装置全体を冷却するシステムファンと
システム オン モジュールの冷却用ファンが実装され
3.1 4CPU コントローラー
ており,各々のファン回転状態はキャリアボード上の
3.1.1 装置仕様
ハードウェアモニタを通して監視すること可能であ
本装置は大型製造装置の各制御部の状態を監視する組
み込みコントローラーであり,1 台の装置に 4 台分の
PC 機能を集約している.その装置の仕様は表 - 3,主
る.
(3)
保守性向上
本装置は顧客装置へ組み込んだ場合の保守性向上を考
要パーツの構成は図 - 2の通りである.
慮し,保守部品の約 90% のパーツを装置前面からの取
3.1.2 本装置の特長
り出しで交換保守できるよう構造的に考慮された設計と
(1)
4 台分の PC を 1 台の筐体に格納
本装置は,4 台分の PC 本体の機能を 1 台の筐体に
コンパクトに集約していることが最大の特長である.そ
している.キャリアボード,HDD 及び電源部は装置前
面にスライドして引き出すことができる.
3.1.3 採用したシステム オン モジュール
の実現にあたり,自社製システム オン モジュールを採
本装置は大型の製造装置に組み込まれるコントロー
用すると共に,CPU 周辺部品を高密度実装し搭載する
ラーであるが,スロットごとにその役割は異なり,必
キャリアボードも小型化(μ ATX サイズボードに対し
要とされる CPU 性能やストレージデバイスが違ってい
て面積比 54.2%)していることが一つの特長である.
た.システム オン モジュールと共通キャリアボードの
また,本装置の電源部は 4 スロット分の電源を一つ
構成とすることでスロットにより異なる仕様を実現し
の ATX 電源及び UPS で共用している. 通常 4 台分
ている.比較的 CPU 性能を必要としないスロット #1
の PC が同時に電源投入もしくは HDD スピンアップす
には AM100 モデル 110(CPU:Celeron M 373)
ると,一時的に大きな起動電流が発生する.この装置で
を採用し,CPU 性能が必要とされるスロット #2 ~
は当初 12V 電源に約 32A の起動電流が発生し,これ
#4 には AM120 モデル 110(CPU:Intel Core2
を許容するため 800W クラスの大容量電源が必要な状
Duo T7500)を採用して,システム オン モジュール
PFU Tech. Rev., 23, 1, (05,2012)
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エンベデッド製品のカスタマイズ事例
◆表 - 3 4CPU コントローラーの仕様◆
機能
スロット #1
スロット #2 ~ #4
筐体タイプ
カスタムフロントオペレーション筐体
システム オン モジュール
AM100 モデル 110
CPU
Intel
® ※1
キャッシュメモリ
Celeron
® ※1
AM120 モデル 110
M373(1.0GHz)
Intel Core2 Duo T7500(2.2GHz)
L2 512KB
L2 4MB
システムバス(FSB)
400MHz
800MHz
チップセット
Intel 915GME+ICH6-M
Intel GME965+ICH8M-E
メインメモリ
表示制御
1GB
(DDR2 unbuffered DIMM × 1)ECC なし
1GB/2GB
(DDR2 unbuffered DIMM × 1)ECC なし
グラフィック
コントローラ
915GME 内蔵グラフィックコントローラ
GME965 内蔵グラフィックコントローラ
CRT 最大解像度
及び表示色
QXGA(2,048 × 1,536):1,677 万色
QXGA(2,048 × 1,536):1,677 万色
HDD
内蔵 HDD
なし
250GB(SATA,7,200rpm)× 2
- RAID1(ミラー)対応,ホットスワップ対応
- ソフトウェア RAID 使用
CF
内蔵 CF
1GB × 2
なし
インターフェース
LAN
3 ポート
10/100/1000Base-T × 1
10/100Base-TX × 2
3 ポート
10/100/1000Base-T × 2
10/100Base-TX × 1
USB
4 ポート(Ver 2.0)
←
ビデオ
1 ポート(DVI-I)
←
動作周囲温度/湿度
温度:5℃~ 40℃ 湿度:20%~ 80%(結露なきこと)
騒音
音圧レベル 55dB 以下
外形寸法[W × D × H(mm)]
440 × 290 × 330
重量
29.0Kg
電源
入力電圧(周波数) AC100 ~ 240V(50/60Hz)/ 2 極接地形
消費電力
最大 350W(4.8-1.9A)
UPS
使用バッテリ:1.2V 2,000mA × 20 直列
※1 Intel,Celeron は,米国およびその他の国における Intel Corporation の商標である.
を使い分けている.このように使用用途に応じ CPU を
ており,高密度な実装形態となっている.設計段階にお
自由に選択できることも大きなメリットとなっている.
いての課題は,これら部品の配置と,複雑に流れる風の
また,CPU やチップセットが生産終息となった場合
効率の良い冷却であった.
でも,それ以外の主要部品が継続使用可能であれば,後
重要な課題として,以下 3 点がある.
継のシステム オン モジュールに切り替えることで製品
1)
システム オン モジュールの配置及び,個別の
を長期供給できるメリットがある.
3.1.4 実装面での課題と実現技術
4CPU コントローラーは顧客の設置面積から 4CPU
モジュールを 1 台の筐体にまとめて実装することが必
要で,
高密度実装(図 - 3)を実現することが課題であっ
た.
ファンモジュールの必要性.
2)
DISK の配置,間隔を最適にし,冷却必要面への
効率の良い風の流れ.
3)
低い位置に配置する UPS の使用環境温度のため
の電源と UPS のベストな位置関係の見極め.
これらの課題をクリアするため,熱解析シミュレー
本装置は,システム オン モジュール複数枚,DISK
ションを駆使して,ファンのサイズ・回転スピード・個
複数台,電源,UPS,HUB,その他基板等が搭載され
数や配置,DISK の配置や間隔,UPS の最適配置等を
20
PFU Tech. Rev., 23, 1, (05,2012)
エンベデッド製品のカスタマイズ事例
バック
パネル
各ユニット
キャリボード
(SLOT#2-#4)
電源
SATA ×2
システムファン
VGA
AM120
Core2 Duo SDVO SDVO DVI
-DVI
2.2GHz
DVI-I
#1
#2
#3
システム オン モジュール
+キャリアボード
PCI
PCI
#4
10/100
LAN
LAN
Raidカード
LAN
Giga
LAN ×2
USB2.0
×4
GPI ×2
GPO ×2
HDD
×3
UPS
キャリボード
(SLOT#1)
電源
SATA
◆図 - 3 本装置の構造◆
VGA
AM100
Celeron M
1.0GHz
SDVO SDVO
-DVI
DVI
(Fig.3-4 CPU controller structure)
DVI-I
(a)キャリアボード
SATA
to IDE
CF
×1
PCI
IDE
電源ユニット
HUB
LAN
LAN
CF
×1
Air Flow
Giga
LAN ×1
位置を下げる
10/100
LAN ×2
USB2.0
×4
風の流れる
空間を確保
(b)コネクター
前面
背面
GPI ×2
GPO ×2
(c)バック
パネル
SATA HDD ×6
電源制御ボード
ATX 電源
操作パネル
UPS
仕切り板
◆図 - 2 4CPU コントローラーの主要パーツの構成◆
◆図 - 4 本装置の風の流れ◆
(Fig.2-C onfiguration of the main parts for a 4 CPU
(Fig.4-4 CPU controller airflow)
controller)
ペースを必要最小限にし,かつ,
(b)接続コネクター
数次に渡って検証を実施した.
を下段に配置して,
(c)バックパネルの上部を空間とす
特に課題となった点は,以下の構造要件によりバック
ることで,装置の動作温度仕様に対して,素子,DISK
パネルが風の流れを阻害する要因となっていたことであ
中でマージンが一番少ない物でも,10℃のマージンを
る.
確保した.
システム オン モジュールを取り付けたキャリアボー
解析例として,図 - 5に装置内部に流れる風で,装置
ドと DISK UNIT は,ワンタッチで着脱が可能なプラ
中央部の風速分布(垂直面)と,
システム オン モジュー
グイン方式を採用したことで,風の流れを妨げるように
ル CPU 部分の風速分布(水平面)の解析結果を示す.
バックパネルが立ち塞がっていた.
3.1.5 ソフトウェア面での課題と解決手法
そこで,図 - 4に示したように装置内の風の流路を確
保するため,
(a)キャリアボードのプラグイン接続ス
PFU Tech. Rev., 23, 1, (05,2012)
(1)
課題
本装置は,Intel 社製チップセット内蔵の RAID(以
21
エンベデッド製品のカスタマイズ事例
①装置中央断面の
風速分布(垂直)
RAID
ユーティリティ
②CPU 部断面の
風速分布(水平)
Speed
高速
Speed
高速
中速
中速
低速
低速
RAIDドライバ
リビルド開始操作
イベント監視
ステータス監視
ル CPU 部分の風速分布(水平面)の解析結果◆
(Fig.5-A nalysis of airflow speed distribution
EmbedWare/
SysMon Entry
GPIO 制御
GPIO
HDD
◆図 - 5 装置中央部の風速分布(垂直面),システム オン モジュー
新規開発
常駐プログラム
LED
◆図 - 6 チップセット RAID 採用の際の課題を解決する仕組み◆
(Fig.6-Solution for chipset RAID application)
(vertical) in the central part of a 4 CPU
controller and airflow speed distribution
する常駐プログラムを新規に開発することにより,自動
(horizontal) in a System-On-Module CPU)
リビルドの機能を実現している.
本件は,チップセット RAID では提供していない機
降,チップセット RAID)機能を使用しているが,チッ
能に対して,当社の高いソフトウェア開発技術力によっ
プセット RAID を,本装置に採用するにあたっては,
て,既存ソフトウェアの,ステータス監視フレームワー
ソフトウェアで以下の二点の課題をクリアする必要が
ク,
ハードウェア制御部のカプセル化の活用により,
ソー
あった.
スコード修正を最小限にし,品質確保と開発効率を向上
注4)
1)
HDD 故障,リビルド
実施中の HDD LED 点
させると共に,顧客要求を満たす機能を実現した.
灯機能の実現
2)
HDD 交換時の自動リビルド機能の実現
3.2 1CPU コントローラー
3.2.1 本装置の概要
(2)
解決手法
前記課題を解決する仕組みを図 - 6に示す.
3.1 節で大型製造装置の事例を紹介したが,この開
前記1)項の課題に対しては,PFU の標準製品
発素材を使って 1CPU コントローラー装置を開発した
向けに準備しているハードウェア監視ソフトウェア
事例について紹介する.本装置の仕様は表 - 4の通り
(EmbedWare /SysMon Entry Ver3.2)をカスタ
である.4CPU コントローラーの 1 スロットを独立さ
®
マイズすることで対応した.
EmbedWare/SysMon Entry は,システム オン
せた装置で,4CPU コントローラーのキャリアボード
等の素材を流用し小型筐体(197mm × 205mm ×
モジュール AM シリーズ,およびエンベデッドコン
250mm)に収納したことが特長となっている.
ピュータ AR シリーズの標準監視ソフトウェアであり,
3.2.2 実装面での課題と解決手法
主要な機能として,温度,電圧,ファンや HDD の異常
監視機能を持っている.
EmbedWare/SysMon Entry に,Intel 社製 RAID
監視ユーティリティ,及び Windows イベントログから
1CPU コントローラーは,開発期間の短縮,品質確
保と低コスト開発を図るため,4CPU コントローラー
で開発したキャリアボードユニットを流用することを前
提に開発を進めた.
の情報取得機能を追加し,GPIO(General Purpose
本装置は顧客が既に使用している装置の置換えとし
Input/Output の略.汎用入出力の意味)制御機構と連
て使用されるため,装置外形寸法・内部ユニット取出し
携させることにより,LED 制御を実現した.
方向・コネクター配置面など,装置構造に対して詳細な
2)項の課題に対しては,Intel 社製 RAID 管理ユー
顧客要求事項が設定されていた.それらを実現するため
ティリティの仕様上はオペレーターによる操作が必要と
に総合的に判断した結果,バックパネルを装置前面側に
されているリビルド開始操作を,不要とする必要があっ
配置し,システム オン モジュールを搭載したキャリア
た.この課題は,Windows イベントログより HDD 交
ボードユニットは装置後面側からの実装とした.
換を検知し,RAID 管理ユーティリティの操作を自動化
注4)不良ディスク交換後に,新しいディスクにデータを保存し,
RAID を復旧する作業
22
ただし,USB コネクターを装置前面右下へ設けなけ
ればならない必須要求があり,キャリアボード前面部に
ある USB コネクターから,どのように引き回すかが最
PFU Tech. Rev., 23, 1, (05,2012)
エンベデッド製品のカスタマイズ事例
◆表 - 4 1CPU コントローラーの仕様◆
機能
仕様
筐体タイプ
小型筐体
システム オン モジュール
AM120 モデル 110E
CPU
L2 6MB
システムバス(FSB)
1,066MHz
チップセット
Mobile Intel GM45 Express チッ
プセット +ICH9M-E
メインメモリ
1GB
(DDR3 unbuffered DIMM × 1)
ECC なし
グラフィック
コントローラ
GM45 内蔵グラフィックコントロー
ラ
CRT 最大解像
度及び表示色
QXGA(2,048 × 1,536)
:1,677
万色
HDD
内蔵 HDD
250GB(SATA,7,200rpm)
インター
フェース
LAN
1 ポート 10/100/1000Base-T
USB
2 ポート(Ver 2.0)
ビデオ
1 ポート(DVI-I)
動作周囲温度/湿度
外形寸法
[W × D × H(mm)]
重量
電源
キャリアボード(流用品)
Intel Core2 Duo プロセッサ
(2.53GHz)
キャッシュメ
モリ
表示制御
装置前面側
温度:5℃~ 40℃
湿度:20%~ 80%(結露なきこと)
SOM
USB コネクター
◆図 - 7 1CPU コントローラー構造概略図◆
(Fig.7-1 CPU controller structural overview)
装置前面側
キャリアボード
バックパネル
USB コネクター
(FG 強化)
197(W)× 205(H)× 250(D)
8.5Kg
入力電圧
(周波数)
AC100 ~ 240V(50/60Hz)
余長部分
消費電力
最大 90W
UPS
使用バッテリ:1.2V 2,000mA ×
8 直列
公称バッテリ電圧:DC24.0V
定格容量:2,000mAh
USB 延長ケーブル
◆図 - 8 1CPU コントローラー内部配線図◆
(Fig.8-1 CPU controller internal wiring)
ター部と筐体を多接点接続することで FG 接続を強化
大の課題となった.様々な角度から構造検討をした結果,
し,耐静電気(ESD)及び電磁波妨害(電波)規格を
最もシンプルな形で実現できる,USB 延長ケーブルを
クリアした.
使う方式とした(図 - 7,図 - 8参照)
.
また,バックパネルが装置前面側にあることで開口部
具体的には,USB 延長ケーブルを装置後面に実装し
が減り,内部ユニットの取出し方向に制約が生じたが,
たキャリアボードの USB コネクターに接続し,更に筐
交換頻度が高い HDD 及び UPS を装置前面側,電源・
体内部を通して装置前面へ引き回して,
USB コネクター
ファン等は装置側面側から交換できるように配置するこ
を配置した.その際,
次の問題が発生したが,
コネクター
とで対応した(図 - 9参照)
.
の FG 接続を強化して解決した.
3.2.3 ソフトウェア面での課題と解決手法
装置外部に面する USB インターフェースを延長ケー
ブルで装置内部に引き込んだため,延長ケーブルの
本装置では,EmbedWare/SysMon Entry Ver4.1
をプレインストール提供している.
USB コネクター部と筐体との FG 接続が弱く,当初,
カスタム装置で EmbedWare/SysMon Entry を
耐静電気(ESD)規格をクリアできなかった.コネク
動作させる場合,ハードウェア(モニタチップ種別,
PFU Tech. Rev., 23, 1, (05,2012)
23
エンベデッド製品のカスタマイズ事例
バックパネル
ファン
電源
UPS
HDD
装置前面側
◆図 - 9 1CPU コントローラー内部ユニット取り出し方向◆
オペレーション部
(Fig.9-D irection to remove 1 CPU controller
L 字形状基板
◆図 - 10 基板レイアウト◆
components)
(Fig.10-Board layout)
FAN 構成等)
,ソフトウェア(運用条件の相違に伴う
エラー通知閾値の相違)
,両面から,EmbedWare/
164mm × 125mm のサイズに縮小して,小型筐体に
SysMon Entry 自身のカスタマイズが必須となる.
実装できた.
本ソフトウェアは,ハードウェア構成情報を独立させ
ることで,カスタマイズ案件に対しては,構成情報ファ
イルのみを変更することで,容易に監視パラメーターを
カスタマイズできるような構成としている.
3.2.4 回路設計面での課題と解決方法
(1)
課題
回路設計においても実装構造設計と同様に,前記
4
むすび
ProDeS は製品開発から評価・試験,製造,保守ま
でを一貫した体制で提供するサービスである.以下を目
指して顧客の要望にベストフィットした,信頼性の高い,
高品質のコンピュータを提供してきた.
4CPU コントローラーの回路設計素材を極力活かすこ
1)
スピーディな市場参入を実現
とを前提に開発を進めた.回路素材の流用により以下の
2)
信頼性の高い製品開発を実現
課題が生じた.
3)
トータルコストの削減を支援
キャリアボードの他に基板としては,キャリアボード
4)
長期供給,長期保守に対応
に電源供給する電源基板と各デバイスを接続するバック
システム オン モジュールを自主開発しつつ,顧客製
パネル,電源投入・状態表示のためのオペレーションパ
品のカスタム化も手がけてきたことで顧客製品の小型
ネルが必要となったが,装置サイズに制限があったため
化,設置要求に柔軟に対応でき,効率良い製品開発がで
3 基板を個々に実装するスペースが取れなかった.
きる体制を維持している.
(2)解決方法
上記課題は以下の工夫により解決した.
発,サービスの提供を通して,顧客満足度の向上に努め
基板の開発では図 - 10に示す通り,基板を L 字形
ていきたい.
状とし,オペレーション部分を装置左下部に集中配置す
ることにより電源回路とバックパネル及びオペレーショ
ンパネルを一枚化して基板枚数と部品点数を削減し,
24
今後も顧客が要求する機能,条件を満たした装置の開
参考文献
参 1)番井,宇都宮:組み込み製品における BIOS,OS カスタマイ
ズ・サービス,PFU Tech.Rev.,17,2,pp.26-30(2006).
PFU Tech. Rev., 23, 1, (05,2012)
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