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公益社団法人日本観光振興協会 第 2 回産学連携オープンセミナーin

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公益社団法人日本観光振興協会 第 2 回産学連携オープンセミナーin
公益社団法人日本観光振興協会
第 2 回産学連携オープンセミナーin 京都
第2回産学連携オープンセミナーin京都
パネルディスカッション
「京都が牽引する観光立国・日本」
コーディネーター
;
前川佳一
(京都大学大学院
パネリスト
;
横山健一郎
(ハイアット
田中誠二
(京都商工会議所
(学校法人
経営管理研究部
リージェンシー
(妙心寺
春光院
安藤啓子
(安藤人形店
京都
観光産業特別委員会
大和学園
川上全龍
特定准教授)
総支配人)
副委員長)
理事長・学園長)
副住職)
雛人形コーディネーター)
【テーマ説明】
■前川佳一
氏
「京都が牽引する観光立国・日本」ということで、今からパネルディスカッションを開
始する。
この表は観光産業の意味するところはいろいろあるという話を整理しようと、今日のパ
ネリストの皆様の位置づけを確認ができたらと思い書いてみた。
観光業の意味するところはいろいろあるが、観光アクセス、今日はこの分野は誰もいな
い。交通運輸業とか旅行業とか、そういうところから今日はパネリストとしてはいない。
観光目的、コンテンツ、何を目当てに皆が観光するのか。今日のパネリストだと妙心寺の
寺社などがここに位置する。それからエンターテインメントがあり、レクリエーション施
設があり、何を求めて行くのかというのがここである。
それで、その中間に観光地の接客というふうにタイトルを設けたが、宿泊業、これは横
山さんが該当する。宿泊業でハイアットリージェンシーの横山さん。それから飲食店、お
土産品店。ちょっと無理があるが、安藤雛人形店さんが該当する。というような立ち位置
の方がいる中で、大和学園の田中さんは、この辺り全部の人材育成に関わっておられる。
このような位置づけの4名の方々が本日はいるというようにご理解いただければと思う。
確認事項として、訪日外国人旅行者の過去最高値が、先ほども学生の発表に出ていたが、
2010年の861万人。今年が1,000万人をほぼ超えるかなというおめでたい状況
だが、2016年に1,800万人を目指している。2020年に2,500万人を目指
している。将来いつかわからないが3,000万人目指している。
京都は、言わずもがなだが、世界的に有名な観光地。ただ驚くのは、1番バンコク、イ
スタンブール、フィレンツェ、ケープタウン、それに続いて京都が今年、9位から5位に
躍進した。アジアでも3位から2位だと。東京は残念ながらアジアで6位。京都が日本一
の観光地である。(旅行雑誌 TRAVEL+LEISURE の読者投票の「人気観光都市」より)
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本日の最初のテーマ1は、「京都の伝統・魅力と私のビジネス」だ。それぞれ皆の立場か
ら見てどのように京都の魅力が見えているのかということを、お話していただく。
テーマ1のほうはスライドありで実施する。テーマ2は「訪日観光客倍増のためにでき
ること」あるいは「京都だからこそできることって何だ」というようなことを話し、最後
に、今日たくさん来ていらっしゃる学生へのメッセージをお話していただく。
余談だが、私は大阪の出身で、京都には学生の時と、それから5年前からお世話になっ
ているが、大阪人だからこそ京都のいいところが見える。今日、実は始まる前に約一時間
4人で話をして、そこでの話がとても盛り上がったので、それを皆さんにそのまま聞かせ
たいぐらいであったが、やはり京都の人には気づかない京都の良さというものがあるとい
う気がする。
【テーマ1;「京都の伝統・魅力と私のビジネス」】
■田中誠二
氏
私からはまず、自分の仕事について話をする前に、テーマである京都の魅力について、
私の思うところを話したい。
京都の魅力は何と言っても、この「都市格」にあるのではと思う。人はそれをブランド
力と呼んだりするが、都市の場合にはそこ、その都市が醸し出す品位、品格、それは恐ら
く京都人の守るべきものは守りながら、その時代時代に応じたやはり前衛、革新的なもの、
それを作り上げることによって次なる100年の伝統を作っていこうという、これ産業、
文化、学術を問わず、そういった進取の気性というものがいろいろなところに出ているの
が、京都の魅力ではないかと思う。
根底に流れている京都の精神性、それが「都市格」を形成し、それがブランド力にもな
っているのではないかというように思う。
まず、この町が持つ文化力、歴史、環境の力。これもやはり三方を山々に囲まれて、真
ん中に鴨川等美しい川が流れて、見事に新旧が、伝統と先端が自然を介して調和している
街並みや人との交流や、その歴史が息づく京都の日常というものがこの「都市格」を磨き
高めているのではないか。あまり京都のことを褒め上げるのも何かと思うが、京都の魅力
という視点ではそこにあるのではないかと思う。
それから、それが平安人の感性で、京都人というよりも京都に学び、住み、憩い、働き、
そういった人たちすべてがこの感性を持っているのではないかと思う。
それと、この町のシビックプライド。市民の京都に対する愛着、自負、誇り。これも先
ほど学生の皆さんの発表の中にもあったが、大きく京都の魅力を支えているものではない
かと思う。
もう1つが、京都流といわれる京都のライフスタイルが挙げられるような気がする。こ
れは学術、文化、芸術を尊び、自然を愛でる意識というのは、この町の大きなライフスタ
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イルの根底に流れるものではないかと思う。よって、このような精神性が京都の自然や芸
術、歴史、文化、産業、あらゆる分野において京都オリジナルというものができているこ
とではないかと思う。
それから京都の食文化は、大変重要なポイントだと思う。いま現在、京都から働きかけ
て、和食、日本人の伝統的な食文化というものを、ユネスコの無形文化遺産の登録に向け
て申請中ではあるが、京料理、京菓子を生んだ京都というのはわが国の食文化の首都であ
ることは間違いないと思うし、伝統という基本を大切に、実はお料理や京菓子というもの
を茶道や華道、陶芸を含めていわゆる総合芸術としての食文化として進化させたことは、
京都人の大変な知恵であったのではないか。それがまさに世界が共感する京料理、京菓子
を、あるいは京都の食文化を生んだのではないかと思う。
それから、京都の色も、魅力的だと思う。私はパステルが大好きなんだが、ただ京都の
町のあちこちにある、これは伝統工芸品や寺社仏閣にもあるが、萌木色とか京紫とか唐紅
とか、これは地下鉄の中にも使われている。京都の景観、街並みがさまざまな色彩で、京
都の風姿、趣が描かれていること。これに気づくと、何かしっとりとした落ち着きがあっ
て、やはり観光というのはその感動が明日への活力になって、非日常であるかもしれない。
しかし、実は京都はそこここにそれが日常であることが大きな魅力で、この京都スタイル
というものが、京都人が、あるいは先ほど話をした学生の皆さんも学者の方々も芸術家も、
あるいはサラリーマンの人たちも、何か京都流のものを実践していこうという気持ち、気
概があるからこそ、ずっとこの京都流というものがこの町に息づいて、それが大きな魅力
として発信されるようになったのではないかと思う。
最後に次の京都の魅力について話をする。
「おもてなし」という京都の日常。これは、京都人はやはりもてなし上手で、もてなさ
れることも大変上手な方がさまざまな場所で集い、交流していると思う。
主人とお客さんが常に互換していく、交代していく。その中で、上質な「おもてなし」
の空間が磨き高められるような気がする。京都の「おもてなし」は結構秘めたるものがあ
り、このしつらえをするのに多分ものすごい努力があって、大勢の人がそこに加わって、
でもあまり大げさに大上段にそれを表現せず、心を配っていくこと。その心配りがうれし
いから、ああ、またこの人に会いたいなって思わせるのが京都人の「おもてなし」の神髄。
やはり人を幸せにする気持ちがあるのかなと思った。
それぞれのこだわりがありましたけれども、皆さんはいかがでしょうか。
さて私の生業は、このホスピタリティ産業に従事する栄養士や調理師やホテルで働く人
たち、病院で働く人たち等含めて、ホスピタリティ産業に従事するスペシャリストの育成
である。専門技術、知識を学ぶのが専門学校ではあるが、われわれは、何を教え、何を学
ぶところかと一言で言われた時に、アカデミー・オブ・ホスピタリティと答える。人をも
てなし、人に奉仕し、人を幸せにする、そういう精神を持った職業人を育成したいと思っ
ている。
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「専門学校教育」、そして「生涯学習教育」、そして専門学校のする教育の中で培った職
業教育を産業界にもオープンにして、「産業支援活動」として3つの大きな柱の事業を行っ
ている。
京都に4つの専門学校を運営している。
嵯峨嵐山、四条千本、そして河原町御池で管理栄養士の養成や調理師の養成、あるいは
パティシエ、製菓技術師の養成やホテルマン、ブライダルのスペシャリストの養成を実施
し、13学科、今現在2150名の学生たちが専門学校で学んでいる。
■川上全龍
氏
まず京都の魅力ということだが、私の仕事と密接に関連している。ただ宗教家と聞くと、
多分皆さん、お葬式とかそういう行事をやっている形になると思う。
ただ宗教家の本来の仕事というのは、考え方というものを提供する、哲学者と似ている。
哲学者と宗教家は多分一緒のところである。哲学というのは、文化の形成において非常に
大切なものだ。哲学がわかることによって、文化がわかる。それによって自分の国という
ものがわかってくる。やはり、そのような哲学がわかってこそ自分の国のよさというもの
がわかってくる。それがやはり観光においても必要なことだと思う。
私がやっていることというか、私が行っているお寺がこういう場所である。妙心寺は、
ちょっとメジャーではないが、京都の北西側、龍安寺の近くにある。逆に言うと、龍安寺
はもともとは、もともとというか今でも妙心寺の一部だが、向こうのほうがメジャーにな
っている。
私が日常的にやっているのは、英語の座禅のクラスである。この場合、一般の寺院にな
ると、多分座り方とか、「禅とはこうである」、例えば心を無にしなさいとか、自分に見つ
め合うとか、そのようなことを言うと思うが、私の場合心理学とかやっていたので、それ
から宗教学、宗教紛争学という分野に移っている。よって、実際にいうと、心理学を交え
てとか、あと最近よく脳科学者と仕事をすることが多いので、脳科学、心理学を交えて、
じゃあ禅というのはどういうふうに、座禅というのはどのように脳に影響を与えるかとか、
そういうことを話している。
あともう1つは、禅というと今を生きるとか、諸行無常の考え方、非永久性の考え方、
そのようなものは非常に日本文化、そこから発生している点が多いと思う。いま皆さんが
考えている日本文化といわれるもの、華道、茶道、そういうものは室町期、特に東山文化
から来ている。東山文化というのは、やはり禅をベースにしている。そういうことを考え
てみると、日本文化というのは、やはり禅というものを非常にベースに考えていると思う。。
先ほど「おもてなし」という言葉も出たが、私も実は「おもてなし」というものを教え
ている。最近というか、去年始めたのが、トヨタの海外支部の担当者、担当者というか、
海外支部というか、海外のトヨタのセールスとマーケティングの部門の方に日本の「おも
てなし」という心を茶道を通じて教えている。茶道というのも禅と非常に密接な関係があ
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り、言ってみれば客観的な目線でお客様の欲するものを提供していく。意外と「おもてな
し」というところにおいて、主観的になりがちなところがある。自分が「これがよいので
これを提供する」と思ってしまうところがあるが、実際やはりお客様が何を欲しているか
というものを客観的に見据えることによって、最高の「おもてなし」ができる。そういう
ことを、私はこういうことを通じて実践している。
Study Abroad Programs の共催。いろいろな大学と提携して、今、秋口にもたまにはある
が、夏基本で実施している。先ほども何回も話しているように、哲学とかそういう宗教と
か、そういうものは意外と文化の中枢にある、文化の発信源にあるというというように考
えているので、例えば造園科の、オレゴン大学造園学科とか、あと最近は心理学、脳科学
のほうが多いのだが、日本文化、文化史とか美術史とか、そのようなクラスも実施してい
る。
「MBAと禅」では、私のところには結構MBAのグループが来るのが多い。写真です
けど、左がハーバードビジネスと、あと下がMITになる。あとほかにスタンフォード、
ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア、ケロッグなども来ている。
言ってみれば、俗に言う結構名の知れたMBAのグループが来ているが、MBAの方は、
最初に来た時は日本文化って禅というのがどういうものか、日本に来たんだから禅をやっ
てみようという漠然とした形で来ていた。ところが、今毎年来るようになった理由として
は、禅の考え方というか、さきほどの「おもてなし」の考え方とか、ビジネスでも結構使
えるということを考えている。主観的な考え方を捨てて客観的にものを見る、やっぱりそ
のような考え方は、宗教的なものだけではなくすべてのものに通じると思う。そういうと
ころを学ぶ。
やはり日本文化の発信源というのが禅の考え方に結びついているのではないかというこ
とを向こうの方も言い出し、日本文化、日本人というものを理解するにはまず禅というも
のを理解してみようと。そういうところから、彼らも毎年来るようになった。
日本国内だけではなく海外でのワークショップも実施している。実際私も海外で実施し
ており、ロサンゼルスの大学で講義を1週間ほどやって、あと妻の実家がシアトルで、そ
ちらのほうにしばらく行っていたので、今すごい時差ボケである。
このような形で、海外に行って日本の良さというか、興味を持ってもらえるような環境
というものを作っていこうと思っている。この場合、実は禅のワークショップなのだが、
禅をベースとしたストレス軽減法というものを実施している。いま生徒は全部プロのセラ
ピストなのだが、日本文化というものを特別なエキゾチックなものと考えるよりも、日常
生活に意外と取り込めるものだと実施している。そのような形を推していくために、例え
ば宗教とはまるで関係ないような場所で、この場合はもう完全に心理学のカウンセリング
だが、そのような分野でも実施していって、カウンセリングだけではなく、考え方とか、
仏教的な考え、相対論という考え方、日常的にも使ってストレスというのは軽減されてい
ると話をしている。
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だから言ってみれば、宗教、こういう日本文化というのは何かお茶や着物やごてごてし
たものだけではなくて、意外と日常生活というものを特別変えることなくすんなり受け入
れられるものだと。そういう考え方で日本というものを紹介していく。そういうやり方が
私のやり方である。
例えば英語で仏式結婚式などもお寺で実施するが、日本でも仏式結婚式がかなり人気が
出てきている。世界文化遺産の場所とかではやっているところもある。あと、プラス海外
の方というのも、やはり仏教徒って結構多いので、そのような方が日本で式を挙げたいと
いうこともある。
次がかなり大きいと思うが、LGBTのサポートである。LGBTってここにいられる
方でわかる方とか意外と少ないと、まだ日本もかなり浸透してないところもあると思うの
だが、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスセクシャルということになる。同性
婚のことであり、それをサポートしている。
LGBTのツーリズムというものを、多分ビジネスの分野に置いたとしても、今年雑誌
にかなり取り上げられているとは思うのだが、新しいマーケットとして考えるところもあ
ると思う。
世界基準などで見て、このようなことというものはやはり真剣に取り組んでいく。言っ
てみれば、本来の宗教家の仕事とかそのようなところを実施していこうと思っている。や
はり助けを必要としている人たちがよりよく生活できるような環境が重要。日本でもLG
BTのツーリズムを進めているが、実際そのような同性婚を認めてない国がそのようなこ
とを実施するのもおかしいと。しかし、根底から変えていきたいというのも、私の考え方
である。
■安藤啓子
氏
京人形という分野から、私は少し話をさせていただきたいと思う。今スライドで写って
いるのが、お雛様の三段飾りである。京都のお雛様は、京雛ブランドという名前が付けら
れており、特別なものとされている。それは決して私たちだけで全部できるものではなく、
頭は頭師さん、そしてその頭を髪付け屋さんが真っ黒の絹糸を植え付けてくれる。そして
手足は手足ばかり年中作っている手足屋さん、小道具屋さん、それぞれの職人さんたちが
卓越した技術と本当にこだわりを持って作っている。仕上がってきたものを、私たち着付
け師により集大成をしている。
スライドに写っているのが2代目の父で89歳、それから主人が横にいて3代目で、私
は日頃品格ある柄の生地と、それから美しい色彩を作り出すためのコーディネートを実施
している。写真にお雛様がたくさん写っているが、でき上がったお雛様には必ず、「あなた
はどこに飾られるのだろうか、どこに飾ってもらっても最後までその人をお守りして。」と
声かけをして必ず送り出している。
そもそもお雛様というのは、お子様が生まれたら、そのお嬢様の健やかなる成長と幸せ
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をお祈りするお父様お母様であったり、おじい様おばあ様であったり、その方の温かい深
い愛情と祈りをこのお雛様というお人形に託し、生涯をお守りするという大切な役目を実
施している。
よって、お店の2階に来た方は、お雛様から多数のオーラをもらい、皆、顔もほころび
優しくなる。今は核家族になり、何か個人主義とか冷たい世の中になったとかいわれてい
るが、皆さん、そのようなことはない。ここでパパやママ、おじいちゃま、おばあちゃま
や親戚の方や、皆さんが集まり、夫婦の会話であったり、それから親子の愛など、いろい
ろな会話が飛び交い、そしてその中で気に入ったものを選んでいただき、私たちは人形屋
をしていて本当によかったなと思うのはこういう瞬間でもあります。
義理人情、日本の古きよき、忘れかけていた気持ちというものを、必ずここでもう1度
甦らせて勉強させてもらっている。
ただ、そのような中ではあるが、最近少し感じるのは、以前は初節句にといって、お祝
いをもらったので、その中でお雛様は一生に1つの一生物なので、一生懸命時間をかけて
選び、そして納得するものが決まったら、自分の小遣いを足してでも、足し算をしてでも
購入していたのだが、最近の若い方は小遣いをもらったら、まず先に半分ぐらいで旅行に
行き、そしてあとの残りで、その範囲内で購入する。皆が皆そうではないが、徐々に足し
算から引き算になりつつあるということを耳にする。
その結果、やはり100%シルクの、いわゆる正絹、京都であれば西陣織の正絹の最高
の衣装であるとか、京の職人さんの技をくぐった最高のものといった本物志向というもの
が、本当に薄らいできた。
お雛様というのは、新しいうちはみんな一緒だが、10年20年30年手元に置いても
らい、その間何かあったら私たちがお直ししながら大事にしてもらうと、本当にいい絹の
持つ風合い、じわじわと重厚さが出てまいりまして、先の禅の世界だが、侘び寂びが出て
くるし、そして見えない袖の部分であるとか、それから襟、裾であるとか見えない部分に
もしっかりと手間暇かけて作っていると、やはり気品、風格、優雅さというのが必ず出て
くる。本物は絶対嘘はつかない。
これは私たち人間でも言えることかもしれない。いつもそのように思っている。
こうして海外の方も、本物を、という感じで見に来る。その中でも、宇宙人。宇宙人と
いわれているトミー・リー・ジョーンズさんが来店した。缶コーヒーのコマーシャルが流
れる前だった。もちろんでき上がったお雛様も気に入っていただいたが、その前の藁胴で
あるとか手組であるとか、袴をはかせたところであるとか、そのようなところにとても興
味を持ち、写真を何枚も撮っていた。
写真の手に取っているのは連獅子である。この連獅子が欲しいと言ったが、歌舞伎の連
獅子のお人形は、もう久しくわが店では出たことがなかった。ほかでもきっとそうだと思
う。私が、何でまた連獅子なのかと聞いたところ、カリフォルニアにいる娘にぜひ歌舞伎
を勉強してもらい、もっともっと深く興味を持ってほしいと話をした。
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連獅子は、親獅子が子獅子を谷底に落とし、はい上がってくる子獅子に再度、もう1度
教育をするという、そういう歌舞伎の内容である。この歌舞伎の内容を知っていますかと
聞いたところ、「はい、知っています。」と話をしたので、目から鱗というか、何と子ども
に心の深い部分で教育するのだろうと心を打たれびっくりした。
それから、タイの国王様にも献上した。タクシンさんが首相になった時に、一村一品運
動というのが起こり、日本にやはり農業や畜産の勉強、そして京都にも伝統工芸品の勉強
に来られたのが縁の始まりである。
平成19年という年は日タイ修好120周年、それから国王在位60周年、生誕80周
年とめでたいことが3つ重なり、その時にタイの宮内庁から何か1ついいものを作ってほ
しいということで、今まで見たことのないような生地が送られてきた。タイの仏様の金色、
それから国王様の生まれ曜日の黄色、いま王女が着ているその色だ。それからお妃様の生
まれ曜日のブルー、三色タイシルクで送られてきた。
こういうものを手掛けたのは初めてであり、父も主人も私もどうしようかと思ったが、
えい、ここでやはり日本の誇るべき京都には最高の西陣織があると思い、最高級の西陣織
を使い、また世界に誇る龍村織物も使い、嵯峨錦も使い、これぞ京都、これぞ日本という
お雛様を作った。その結果、宮内庁の方々は大変喜んでいただき、予想以上のできであっ
たと言って褒めていただいた。
それで、このまま宝物殿に入れるにはちょっとさみしいものがあるので、6月15日の
3時に献上式をしてあげるからぜひ来てくださいと招待を受けた。ちなみに私は、そのと
きに日本の国家の桜の着物に、タイの象の帯をしていったところ大変喜ばれた。
同じ平成19年の4月、温家宝様にも献上させていただいた。立命館が温家宝様を招聘
し、奥様に最高級のお人形をプレゼントしたいのでよろしくお願いしますということで、
依頼された。中国は陰陽説のルーツであり、五節句の起源である。古代中国にふさわしい
ものは何だろうと思い、シルクロードに乗ってやってきた生地が、正倉院の小切れが御物
としていっぱいあるので、その正倉院御物を使いやはり世界の龍村織物を使い、このよう
に作りあげた。
深く中国を考えて作ったということで、とっても喜ばれたと聞いている。私たちはこの
3名の例のように、京都の人形屋として、海外の方と交流している。
■横山健一郎
氏
国内需要とインターナショナルの需要が今年2013年に逆転をした。月によって、全
体の60%がインターナショナルのビジネスである。これは私たちが絵を描いていたビジ
ネスであり、まさにここを求めてこの京都で開業したということになる。
なぜ京都なのか。まさに観光都市。観光都市というのはちょっと調べてみると、観光に
よる産業が主である都市を示すと。環境と経済と社会交互に、互いに連鎖連動し、維持し
合う地域ではないかと。私たち観光というのは、これは人が安心安全に生活を送ることが
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できる豊かな環境があるからこそ、このビジネスを進めていくことができるのではないか
というように定義を考えていた。
そこで京都というのは、まさに私たちにとって打ってつけの都市であり、大変失礼では
あるが、世界にたった1つの京都であって、私たちが考えるには自然、歴史、文化、伝統、
教育、生活の中で常に革新が行われている。先ほど田中さんからも話があったように、ま
さに京都にはサステイナブルな環境が生きているんだと思う。
また、京都府には1,600社を超える企業が100年以上の歴史を持っていると。同
じことを繰り返すが、自然、歴史、文化、伝統が、伝統産業が、教育が、今のビジネスモ
デルを形成しているのではないかと。まさに環境とビジネスと社会、この3つが集合体と
して重なり合ったものででき上がっている気がする。まさにそれがこの京都というものを
示していると。そこに私たち、この観光産業、そしてホテルというものが中心として3つ
の役割を一気に集中するというか、集約するというか、そういったところの役割を持てる
のではないかと思う。
皆さんご存じのように、旅行というのはベーシックに安心、安全、快適、この地域性と
いうものを求めてくる。リゾート感覚や、あるいはリラックス、自分へのご褒美というよ
うな精神的なもの、あるいは肉体的な安らぎを求めてくる。その次の目的として、さらに
良いものを求めていくという形で、私たちにサービスを求めていると。最終的にはその日
常の中の非日常であると、非日常の中の日常を求めたり、オーナーシップや帰属意識があ
ったり、その土地やその建物に対して、サービスに対してのロイヤリティがあるのではな
いかと思う。これはまさに私たち人間の目的意識であり、デスティネーションというが、
地域を選ぶ前にホテルを選ぶことはないので、私たちが第1に目指していかなければいけ
ないのは、その地域をいかに人々に紹介をしていくかということを、デスティネーション
を売っていくということを心掛けていかなければいけないと考えている。
そのような中で、私たちハイアットリージェンシー京都としては、京都には環境社会、
ビジネスに融合する社会基盤が形成されていて、地域との連携による文化産業資本を掘り
起こすことを常に行っていきたい。革新的な技術、考え、手法を用い、新しい伝統、トレ
ンドではない今の伝統文化を発信、共有することに努める。
例えば、私たちは京都の産業、京都で事業を行っている方のカーペットを使っている。
その5,500平米のカーペットに対して、京都の着物に加工するパールトーン加工とい
う加工技術をすべてのカーペットに適用して、私たちの産業、あるいは私たちのホテルを
通して、京都の革新や技術を皆さんに紹介していきたいということを考えている。
ホテルとしては、常に競争して成長し、分配ができるホスピタリティ産業でのビジネス
モデルになりたい。また、私たちの価値は、基本であるホテルとしての役割と、京都に位
置することによる価値の融合を考えている。
私たちは地域、環境、社会、そしてビジネスの集合体を目指し、人、情報、財、商品、
文化の連鎖連動を進め、新しいビジネスモデルを確立する。これが私たちホテルとしての
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役割であると考えている。
ちょっと大きな図で申し訳ないが、まさに地域を含めた私たちのループであって、この
ホテルが成長していく、競争力を持って成長していくためには、お客様とのコミュニケー
ションを取る。そのコミュニケーションを取る人を育てていくのは地域社会であり、そし
てそれを私たちはこのループとして考えている。
そしてこのホテル、ご存じのとおりハイアットというのは京都駅から5分離れたところ
にある。ちょっと見てほしい。これは京都の町であって、山に囲まれて、先ほど田中さん
が話されたように120万の都市である。まさにこの図が、私たちのホテルの運営を明ら
かにしているようなところがあるのだと思う。
私たちのホテルという産業は、時間軸の中で、人がいろいろなブランドと遭遇し合いな
がら、そしてその旅行の先としてデスティネーションを決めていく。そしてデスティネー
ションを決めた後にどこのホテルに泊まるか、あるいはどこの施設に行くかということを
考えていくと。そういうものを各お客様が、各それぞれのところでブランドやサービスと
遭遇しながら、お客様の経験値がこのように育っていく。この経験値が、最後には同じよ
うにブランドの伝承として市場に到達する。こういうことを私たちホテルとしても行って
いく。そして地域と連携をしながら、先ほども紹介したように、地域と連携しながらこれ
を紹介していくことが必要ではないかと思う。
これが私たちのホテルであり、先ほども話をしたように、私たちは京都を販売して、販
売という言い方は大変恐縮ですが、京都という土地を紹介していく。日本という国を紹介
していくということを心掛けている。
【テーマ2;「訪日観光倍増のためにできること」または「京都だからできること」】
■田中誠二
氏
まず、日本の観光振興について課題というのは、やはりインバウンド観光振興の視点か
らは、世界にまだまだ遅れているということではないかと思う。やはりフランスやスペイ
ンというのは、国内人口を超える旅行者まで迎え入れているし、今回2030年までに3,
000万人という目標は、この島国であることを考えると、とてもとてもすごいことだな
あと。しかしながら、世界の観光の先進国を見ると、まだまだわが国は途上だなと思って、
課題としてわれわれは奮起したいなというように思っている。
ただ、国内観光市場というのは大変大きいものがあるので、京都のみならず、そういっ
た意味では、その大きな国内市場に安住して、インバウンド観光の受け入れ態勢について
は、例えば外国人のお客様をお迎えするのは、なかなか言語の問題とか習慣の問題で難し
いなというふうに思っている事業者の方々は日本全国多いとよく聞く。そういう意味では、
われわれ自身がガラパゴス化しないで、引きこもらないで、大きかった国内観光市場とい
うものも20年30年たつと今後少子高齢化は確実に進んでいく。やはり世界を受け入れ
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るしっかりとした態勢を整うべきではないかと考える。
さて、京都観光のこれからなのだが、観光分野ではやはり京都というのは、誤解を恐れ
ずに言うならば、勝ち組のまだ今は1つだなというふうに思っている。ただ、都市間、国
際競争力競争が大変高くなっていく中で、少子高齢化が進む日本で京都における観光が国
内だけに向けていては、成長が大変不安だというのは、衆目の一致するところだと思う。
狙うは、全旅行者のうち3%の富裕層を旅行者が観光全体の世界の25%を消費すると
いわれるが、このラグジュアリーマーケットを取り込む本格的な参入というものが重要で
はないかと、受け入れ態勢も含めて。ただ、富裕層という言葉、なかなか難しいのだが、
これは観光消費力のあるハイエンド層で、これを狙うという意味で、また京都に打ってつ
けの顧客だなと思うのは、やはり知的欲求が高くて、量よりも質を求めるお客様で、京都
の持つ文化や芸術や、自然伝統の趣の価値を高く評価しアプリシエイトし、長期に滞在し
ていただく方、これについてぜひオール京都の態勢で。でも今日は京都市、京都府の観光
協会、それからコンベンションビューローの皆さんが来ているので、京都は本当に産学公、
そして事業者、市民の連携がとてもうまく融合できている町ではないかなというふうに思
っている。
ただ、富裕層のマーケットとともにできることは、京都がそうした連携できる土壌を生
かしながらMICE市場への取り組み。これは国際会議やグローバル企業のインセンティ
ブ旅行、それから学会、国際学会を含めてぜひ、横浜や東京のように、5,000人を超
えるオーディトリアムの収容はない。ただ京都にはたくさん卓越した、小ぶりだけれども
「おもてなし」力や、あるいはそこにそれぞれの交流によって新しい視野、創造力が生み
出される、創出できる、そういう会場というのはたくさんあるので、それを連携させて、
しっかりとデスティネーションマネジメントしてMICEを招致することが、これからの
京都観光の大きな活力ではないかというふうに考える。
■川上全龍
氏
今、京都のよさとかずっと話をしているが、京都は確かに「TRAVEL+LEISURE」という雑
誌では5位である。全体で5位ではあるが、やはり海外とかで講演とか講義なんかに行っ
て話すと、日本というとすぐ東京になる。京都っていうと、「へっ?」という顔される方が
いる。
私のところも実は宿坊もやっており、海外の方専門でやっている宿坊だが、祇園祭の時
期とか来られたお客さん、祇園祭って何?というのがある。やはりそこは、観光というか、
京都自体というのも国内需要だけですごく満足しているところがあると思う。だから、祇
園祭のことは海外でプロモーションをほぼしてないと思う。なぜかというと、日本国内だ
けの需要で、祇園祭りの場合は120%を多分超えてしまうと思う。
やはり田中さんも話をしたように、少子化。少子化というものはかなり大きいと思う。
観光事業だけじゃなくて、生産業なども、やはりものを作る方が減っていくわけですし、
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消費する方も減ってくる。そうなってくると、やはり海外からの労働者を入れたりとか、
やはり海外からのお客様を入れてくることになる。
そうなってきた場合に、日本というのは今までは、日本人だからとか、日本に住んでい
るから全員価値というのはわかり合えるだろうという形になっていると思うが、そのよう
なことがなくなっていく。日本は今の段階では、比較的単一民族国家である。そこが重要
である。やはり日本人、日本に住んでいる、だから同じ価値を全員分かち合っている。そ
のようなことはなくなっていく。いろいろな海外からの人が入ってくると。
日本人の考え方、日本人の哲学っていうのはどういうものか。やはり日本人自体がちゃ
んと文化を知らない限り、それを将来残すこともできなくなってくるし、やはり日本人が
ちゃんと文化の価値、文化ってどういうものか知らない限り、間違った文化というものを
どんどん外に出してしまうと思う。
クールジャパン・プロジェクトなのだが、私はよく叩いてしまう。海外の人がいいと言
っているからどんどん推していこうというか、日本人がこれすごいよな、自分でこれすご
いんだよなと思って、自信を持って出しているものがないと思う。
海外の人が、これがいい、アニメが面白いと言っている、じゃあ、アニメの分野を出し
ていく、何かそういう形である。すごく受け身だ。それを指導的に戻していくのには、や
はり日本人というのは自分の文化、自分の哲学というものをどんどん知っていかないと駄
目だと思う。それはある意味、私の仕事でもあると思っているし、京都というものはそれ
を今のところはちゃんとすごく体現化していると思う。だから、そこが京都の魅力である
と思うし、やはり来てもらって日本文化はこういうものなんだとわかってもらう最高の場
所だと思う。
ただ、残念ながら、まだ訪日外国人の20%しか来ていない。そこで、訪日外国人が今
後100%来るような、まだ80%残っている状態はチャレンジするのにはいい環境であ
ると思うので、どんどん取り組んでいきたいと考えている。
■安藤啓子
氏
私たちは大変地道ではあるが、外国の方用の対策としては、やはり英語版ホームページ
を立ち上げたのと、外国の方向けの市松人形の着付け体験を実施している。外国の方が来
て、やはり店の歴史であるとか、それからお人形の歴史、由来であるとか、分業であると
か、そういうことを約30分話をして、それぞれ手に触れることができるように、着物と
か帯とか帯揚げ、帯締めをちゃんと全部柄によってセットして、そこから楽しんで選んで、
約1時間ほどかけて説明しながら楽しく優しく着付けを体験してもらう。できあがったら、
皆さん和やかにティータイムを取っていただきながら写真を撮り、お人形をその間見たり
して、全部の所要時間が約2時間かかる。
その後、お寺さんに行ったり、食事をしたり、ホテルに行ったり。その間に、私たちは
それが型崩れしないように手直しをし、機内持ち込み用に梱包する。夕方までには泊りの
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ホテルに届けることとしている。本物の生地に触れることができたと、大変喜んでもらっ
ている。
また、ホームページからの効果としては、去年の春ぐらいのことだが、フランスの婦人
から、三段飾りの注文があり、このご時世日本でもなかなか注文がないのに、「えっ?」と
思い確認したところ、決して安い金額ではないがすぐに振り込みがあった。「いやあ、本当
に欲しがってくれたのだ。うれしいことだ。」と言いながら、準備して送付した。
送付したところ、組み立てに6時間ほどかかり、檀組みから毛氈、屏風を立てて雪洞を
飾って、いよいよ親王飾りを飾り官女を飾り、
「とても楽しかった。また近い将来五人囃子
も欲しいと思っている。」と言うので、本当に結構な嬉しいことだと思って、「ところでど
んな部屋に飾るのか?」と聞いたところ、何とお茶室とのこと。フランスでお茶室でお雛
様で、幸せなお雛様だなあと皆で話をした。
また今年の4月、まだ真新しい話だ。人形屋は3月3日まではお雛様なのだが、それが
終わると5月まで鎧兜を飾る。オーストラリアのご夫妻が通訳の方と来て、とっても上手
に通訳をした効果もあるのだろうが、本当に時間をかけて、金襴の部分とか縅の糸の部分、
それから金具の部分をしっかり見て検討して、鎧を2体ほしいと言われた。じぇじぇじぇ
である、本当に。
双子なのかと聞いたところ、28歳と30歳の息子にあげるとのこと。息子は日本武道
をやっており、黒帯であると。そのご褒美と、小さくてもミニチュアでもいいから本物を
そばに置いてやりたいとのこと。先ほどのトミー・リー・ジョーンズさんと一緒である。
本当にうれしいやら、何とも涙が出そうになった。
それで終わらず、1カ月ほど経つと、この息子さんから今度は電話があり、「やはり本物
がそばにあるというのは落ち着いてありがたい。」と言い、「今度父が7月の20日に誕生
日だから、その父に僕たちから逆に鎧をプレゼントしたい。」と。まあ、何と美談ではない
か。
私は、結婚して30数年になるが、こんな美談は本当に初めてである。恐らく日本中の
人形屋さんも経験していないのではと思う。
このように私たちは、それこそ外国に向け発信するだけではなくて、外国の方からとっ
ても良い受けたことのない刺激を受けている。そして日本人としてちょっぴり何かむずが
ゆいやら恥ずかしいやらというのが、本当に今の私の正直な気持ちである。
日本の伝統文化とか日本の伝統工芸品のよさを外国の方から教えてもらっているわけで
ある。いろいろな苦労もあるが、ああ、人形屋をやっていてよかったなと、またここで再
び感じている。本当に親から子へ奥深い心の教育や、それから親孝行という教育、それか
ら本物を探求するという姿勢、これはもう本当に先ほどから述べている外国の方から学ば
せてもらっている。
よって、恥ずかしながら外国の方に本当にこの深い関心と興味と探求の心を教えてもら
ったので、本当にこの方たちの力を借りて、今日私が言いたいのはここなのだが、ぜひ日
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本の方に「本物とは何か」ということをもう一度考え直して、そういう意味でいろいろな
ことを見直してもらいたいと思っている。
実は私たち作家としても、日々心は揺らいでいる。もうこれでいいのでは、こんなこと
をしていいのか、なんて心は揺らぐが、やはり長い時間をかけて積み重ね積み重ねしてき
た伝統の技に、もう1度誇りを持ち、もっともっと勉強して、研鑽を重ね、これからもな
おいっそう精進していきたいと思う。
それをほかでもない日本の方々にこそ、理解していただき、わかっていただきたいと願
っている所存である。
■横山健一郎
氏
倍増がいいかどうか、目的もしっかりと見極める必要があると思う。京都というところ
は、山に囲まれているので、これ以上都市が大きくなることはないので、インフラの問題
もあると思うし、変えるものと変えるべきでないもの、これをしっかりと見極める必要が
あると思う。私たち観光産業、観光に携わる者たちが、やはり一番大切にしていかなけれ
ばいけないのは、先ほどからパネリストの私たち皆話していること、京都をしっかりと守
るというか、この京都の格式、伝統をしっかりと受け継いでいくということが必要だと考
える。
それから、私たち事業体としては、限りなく継続性を持って海外とのコミュニケートを
していく。入り口をしっかりとコミュニケートしていくということ。マーケティングであ
り、セールスであると。と同時に、お越しになられた方たちをしっかりと受け入れる体制
を持つこと。先ほど川上さんも話をしていたが、主客、私たちも同じようによく考えるの
が、主客が同一。
要するに、相手がどんな感情でいるのか。まさにその知識と愛情、主客が同一というよ
うな感覚をいつも身につけながら対応していく。そうすることによって、相手とのエモー
ショナルなコネクション、エモーショナルなリレーションシップを保つことができれば、
さらにその土地や建物に対して、あるいはその施設に対しての愛情が生まれてくるのでは
と考える。
そういった意味で、最終的には、それこそ川上さんも話をしている、自分に返ってくる
ということであって、自分がどれだけ勉強し、学び、経験値を高め、そして愛情を持って
接することができるかというところに最後はかかってくるのかなとは思う。
■前川佳一
氏
僕は下手なまとめをするのは嫌いなのだが、印象に残ったのは、今京都はまだ勝ち組だ
という正直な話もある。かたや、まだ20%、訪日客の20%しか呼べていない。80%
を逃しているという話もあった。とすると、やはり何かしなくてはいけないと。
一方で、私のような大阪人から見ても、京都の人は京都の魅力を本当に日本人にすら伝
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えきれているのかな、外人には伝えきれているのかなというのも、気になるところではあ
る。主客を変えてみて、こちらから見るとこのように見えるよという京都の魅力とかいう
ものが多分たくさんあって、その発信の仕方も多分それぞれの業態でたくさんあるのだと
思う。
よって、勝ち組だからとおごらずに、まだ20%しか呼べていない、何かできるはず、
皆さんのそれぞれの業態で何かできるはず。それは多分、京都にずっといる方は見えない
ことかもしれないので、誰かほかの人の意見を聞くとか、外人さんの意見を取り入れると
かいうことをぜひ実施すれば、次の皆さんの打ち手が見えてくるのかもしれないというこ
とを、今日本当に私はここで1時間話を聞かせてもらって、思ったところである。
【テーマ3;「学生へのメッセージ」
】
■横山健一郎
氏
私は、本当に大学を卒業してからずっとホテルだ。ホテルは、もう楽しくてしょうがな
い。何が楽しいか。お金を作ることが楽しい。ビジネスをすることが楽しい。そのビジネ
スで何をすることが楽しいか。ビジネスを作り出す可能性を秘めているものを探し出すの
が楽しい。そして、この土地に住むことができたことが楽しい。すべてが、私の場合はそ
のすべてがポジティブに考えているのかもしれないが、そこが楽しい。
ただよく学生の方で、
「私はホテルが天職です」とか「ホテルだけを目指しています」と
いう方がいるが、それはやってみなきゃわからなくて、これは経験値や、あるいは自分の
コンピテンシーもあると思うので、決してホテルだけが本職だと思わない、天職だと思わ
ずに、ホテルも1つの仕事のチョイスであると。そして、そのホテルで試してみて、もし
それが自分に合わなければ、またそれも1つ考えることが必要ではないかとは思う。
とにかく、私たちの仕事、私たち1人1人、あるいはその事業、事象1つ1つがすべて
リンクをしている世の中だから、どんなことに携わっていたとしても観光から外れること
はないと思う。だからこそ、学生の皆さん、いま決してあなたたちに対して無駄な時間は
ないし、何かに怒られたり失敗したりすることも決して無駄なことはない。人生にとって、
多分無駄な時間は1秒たりともなくて、これはすべて私たちの糧になることで、将来にと
って何か大きな、目標を持つのがいいのか、わからないが、先ほどの川上さんの話じゃな
いが、まず今を生きること。今で私たちが何ができるかということをとことん追求して考
えていくことが、必要ではないかなとは思う。
■安藤啓子
氏
先ほど学生も話をしていたが、観光にはいろいろな方法がある。意味もたくさんある。
やはり自分の心をもう 1 度見直してもらい、そして心を磨いてもらうことによって、観光
は広く浅くも、そして深くも狭くも、いろいろできると思う。
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第 2 回産学連携オープンセミナーin 京都
皆さん立派な経歴をお持ちだが、私は京都生まれの京都育ちで、京都以外どこにも住ん
だことがないが、ちょこちょこと海外旅行をしており、海外に出てみると、本当に日本の
良さがわかる。
よって、今日もう1度日本の良さをわかって、皆さんにもわかっていただくためにも、
今日まず京都から、パンフレットとか何とかに載っているものではなく、自分が心揺るが
されるポイントを1つ見つけていただいて、それを他の人に話をしてもらう。あそこは良
かったよ、ここは良かったよと。これが私は、私流の観光の始まりだと思っている。
訪れた先々でそういうことをすることが、私はそれがもう自分の宝であり、しいては観
光の広がりだと思う。よって、今日はまず京都から、京都を好きになっていただき、ぜひ
もっともっと日本を好きになっていただきたいと思う。
■川上全龍
氏
先ほど横山さんも話をしていたが、この業界というか、言ってみればパネリストを見て
わかると思うが、全然違う分野の人間である。またこれも横山さんが話をした「ビジネス
を作る楽しみがある」のだ。前川先生が最初に見せた表のとおり、観光業と言ったらとて
もいろいろな分野があると思う。考えてみれば、いろいろな分野もあるし、
「これが観光業」
って、1つの定義がないと思う。
そういうことを考えてみると、ほかの産業に比べてすごくクリエイティブでもあり、イ
ノベーティブなところというものがある。だから、自分というものを、自分で何か新しい
ものを作り出したいという方がいたら、観光業って非常に面白い分野だと思う。
「いい企業に入って、それで安泰だ」という神話はもう90年代で崩れたので、ある意
味いかにクリエイティブ、いかにイノベーティブに生きるかというのは、どういう産業で
も必要になってきていると思うが、この産業ほどその面白さがあるというところはないと
思う。だから、そういうことを経験されたい方はぜこの分野に異動してもらいたいと思う。
やはり先ほども、何回も言っているように、まだ80%の訪日観光客が京都に来ていな
い。日本というのはやはり、ほかのフランスやスペインとかに比べて、やはり訪れる人が
少ない。言ってみれば、少ないからこそチャンスがある。言ってみれば、レッド・オーシ
ャン(競争率の多い分野)よりも、ブルー・オーシャン(競争率の少ない分野)というの
は、どんどん探せる場所もあると思うし、そこから新しい自らの成功を作りだしていくい
い環境にもあると思うので、一応いろいろと考えてみてほしい。
■田中誠二
氏
私からは学生の皆さんに一言。日本国内に安住しないで、ぜひ世界で通じる人材となっ
て、日本から世界に発信してもらいたいと思っている。
Fellow,students,be global.
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■前川佳一
第 2 回産学連携オープンセミナーin 京都
氏
かっこいいですね。次の句がなかなか継げないので、皆様に拍手をいただいて終わりに
したいと思う。
どうもありがとうございました。
以上
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