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より市場の求めるハイブリッドを

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より市場の求めるハイブリッドを
7/1 10:34
環境側面
S
スペシャルストーリー
P
E
Environmental & Social Report 2005
C
I
A
L
S
T
O
R
Y
より市場の求めるハイブリッドを
ハイブリッドが可能にした
「環境」と「走行性能」の両立
SUVにハイブリッドを拡大
ハイブリッドによる低燃費SUV
ハリアーとクルーガーは、乗用車としての操縦性、乗り心地、静
1997年アリゾナで行われた初代プリウスの記者試乗会で最初
また、温暖化防止のためハイブリッド車を普及させるならば、
商品力が強く影響の大きいSUVをハイブリッドにしたほうが効
果は大きい。ハリアーとクルーガーは両車合わせて世界40カ国
に出た質問は「トラックやSUVのハイブリッドはいつ発売するのか」
1997年に登場したプリウスは、
「21世紀のスタンダードとなる
粛性を備えながら、一般乗用車にはない走破性能の高さ、高い視
以上で140万台以上の販売実績があったので、この点でも申し
というものであった。
クルマ」の具現化であったといえる。プリウスの発売に当たり、
点による運転のしやすさ、広い室内空間によるゆったりとした居
分がなかった。
2005年3月発売された、
トヨタ初のハイブリッドSUVである、
開発側は社内の関係部署にこう訴えた。
「プリウスは単なる新
住性、積載量の大きさなど数多くの魅力を秘めている。
メーター内にパワーメーター、エネルギーフローの表示をする
ハリアーハイブリッド(米国名:Lexus RX 400h)とクルーガー
商品ではない。プリウスは、
21世紀に求められるクルマの変革に
トラックから移行してきた従来のSUVに対しハリアーは、
セダン
ことに加え、ナビ画面には瞬間燃費と5分平均燃費の経緯を表示
ハイブリッド(同:Highlander Hybrid)はこの質問に対するひとつ
対する答えのひとつであり、問題提起でもある。そういう大き
とSUVを融合させた「スポーツユーティリティサルーン」として
することで、
ドライバーのエコドライブを強力にサポートしている。
の答えである。このSUVハイブリッドは、CO2排出量低減やクリー
な視野に立ったスタンスでプリウスをとらえてほしい」。つまり、
「ラグジュアリーSUV」という新しい市場を切り開いてきた。また、
ンな排出ガスなどエコ性能は当然として、圧倒的な動力性能を
プリウスは21世紀に求められるクルマの答えであると同時に
クルーガーも乗用車ベースのSUVとして生まれ、
「カーライクSUV」
備えている。新型プリウスで開発された ※ THSⅡ技術をベース
スタート地点でもある、
ということだ。環境対応、
ということだけ
市場の拡大に貢献してきた。
にSUV用に新開発、さらに、高出力モーターで後輪を駆動する
を考えれば電気自動車も答えになりうる。しかし当時の電気自動
しかし、
このように魅力にあふれるSUVにも克服すべき課題
※ E-Fourを組み合わせ、
0→100km/h
7.3秒という数字が動力
車は航続距離の点で、実用化にはまだ多くの問題を抱えていた。
があった。それは、高い走行性能と低燃費の両立だ。SUVは一
性能の高さを裏付ける。また、
50-80km/h追い越し加速3.6秒と
お客様に我慢を強いるクルマでは選んでいただけない、それは
般の乗用車に比べ車体がやや大きく重いので、走行性能を高め
いう性能も、実用性能としてV8エンジン搭載のSUVを上回る
結果として環境対応車が普及しないことを意味する。
るためにはエンジンの高出力化が求められ、結果として燃費が
と高い評価を得ている。
そのスタンスに立ち、ハイブリッドの改良が続いた。プリウスは
悪くなってしまう。
当初の環境性能の高さを訴求したハイブリッドから、ハイブリッド
マイナーチェンジを重ね、欧米でも販売が始まる。THSを改良し、
「燃費」と「走り」をいかに両立させるか?この課題解決に最適
技術の進化が可能にした、環境性能とクルマの魅力である動力
エスティマ、アルファードなど既存の車種にも対応可能になった。
なのがハイブリッドシステムだった。
性能の高い次元での両立、ハイブリッド・シナジー・ドライブのひと
そして2003年には、燃費を向上させながら走行性能を格段に充
つの帰結だといえる。
実させた新型プリウスが登場する。
そして、なぜ今回SUVのハイブリッドだったのか、
という点にも
この新型プリウスにより、
トヨタが社会に問うたのは、
「環境性能
注目する必要がある。
の高いだけのクルマでは、十分ではない。環境性能が高く、なお
ハイブリッドシステムは、エンジンとモーターを組み合わせて
かつクルマ本来の魅力も兼ね備えた商品を開発してこそお客
効率の良い動力分配をするとともに、減速時に、運動エネルギー
様に選んでいただけ、社会への普及につながり、
これが社会への
を電気エネルギーとしてバッテリーに回収することで燃費を大幅
共生につながる」という考え方だ。初代プリウスがハイブリッド
に向上させること、
およびクリーンな排出ガスの実現を可能にした。
量産化への扉を開いたとするならば、新型プリウスはハイブリッド
この高い環境性能をもったクルマを普及させることが、環境問題
普及の門戸を大きく開いた、ということができるだろう。下のグ
に対する自動車会社の使命であるとトヨタは考えている。普及と
ラフを見ても、新型プリウスの登場によってハイブリッド車の累積
いうことを考えれば、多くのお客様が選択する魅力のあるマーケッ
販売台数が急激に増えたことが見てとれる。
トへのハイブリッド投入が必要になる。さらに、当然ながらクルマ自
体が売れる商品でなくてはならない。いくら環境性能が高くても、
走行性能を犠牲にしたものでは選ばれない、
ということだ。
※ THSⅡ=Toyota
Hybrid System Ⅱ:燃費だけでなく走行性能も向上させたハイブリッドシステム
※ E-Four
:後輪をモーターで駆動する電気式4WD
■ ハイブリッド車の累計販売台数
︵
台
数
︶
ダイナ
ハイブリッド
累計販売数
36万台
トヨエース
ハイブリッド
エスティマ
ハイブリッド
パワーメーター
燃費情報(ナビ画面)
独立3眼メーター
エネルギーモニター
環境とハイブリッド
なるクルマを提案するためのG(グローバル)
21プロジェクト。
クルマを開発・生産・販売する企業にとって、環境問題への
とつは低燃費とクリーンを両立させるパワートレーンの開発
対応は避けて通れない課題だ。特に地球温暖化防止、化石燃
だった。どちらのプロジェクトも、
1994年には開発結果をどう
料への対応は、
クルマの性能が密接に関係している。地球温暖
量産に結びつけるか、
という段階に進んでいた。
G21では、燃費の50%アップが目標値に設定された。もうひ
化への対応、CO 2 排出量低減はすべての企業が取り組むべき
ところが1995年春、目標値が大幅にアップされる。G21の目
最優先課題であり、
クルマの環境性能を向上させることが、持続
標であった燃費50%アップが100%アップになったのだ。
21世
可能なモータリゼーションの発展につながっていく。
紀のスタンダードになるためには、画期的なイノベーションに
これら地球温暖化対策、CO 2 排出量低減についてトヨタは
よるブレークスルーでなければならない。それが数字として表
次のように考えている。
れたのが、燃費倍増だった。
現状のエネルギー体制が続く中では、内燃機関ハイブリッド
「実現するにはハイブリッド、それも全く新しい発想のハイ
の普及が必要だ。また、ハイブリッド技術は燃料電池車にも応用
ブリッドが必要でした。これが初代プリウスに搭載したToyota
可能であり、究極のエコカーへ向かうキーテクノロジーである。
Hybrid System(THS)です」。当時パワートレーン担当で、
ハイブリッドを基本技術として、ほかの燃料、技術の組み合わせ
後にプリウスのシステム側リーダーになる八重樫武久はそう語る。
を研究していく必要がある。
プリウスの登場によって、ハイブリッドシステムは環境対応へ
さらに、現在から2010年、
2020年という将来に目を向けると、
のキーテクノロジーとしての第一歩を踏み出した。
途上国でも燃料の無鉛化・脱硫黄化などの品質向上が進み、低
排出ガス車の導入が可能になる。同時に、
古い自動車が更新され、
■ 将来における環境対応の必要性(概念図)
0
'0
新型プリウス
排気ガスの問題はほぼ解決すると予測される。しかし人口増、
クラウンマイルド
ハイブリッド
プリウス
ハリアー
ハイブリッド
コースター
ハイブリッド
9
'7
ハリアー&クルーガーハイブリッド
46
クルーガー
ハイブリッド
アルファード
ハイブリッド
9
'8
9
'9
0
'0
0
'1
0
'2
0
'3
0
'4
'05(年)
排気低減
生活レベルの向上によりひとり当たりの消費が増え、CO2削減、
エネルギー需給がより大きな問題になってくると考えられている。
北米、欧州で
プリウス発売
環
境
CO2削減
1992年にトヨタは「地球環境憲章」を策定し、環境への対応
を経営の最重要課題と位置づけた。そして翌1993年、
ふたつの
プロジェクトがスタートした。ひとつは21世紀のスタンダードと
将来
エネルギー
需給
日:新長期、ディーゼル規制強化
欧:StepⅣ、
Ⅴ
米:ZEV、SULEV
1
'0
2
'0
開発途上国への拡大
日:2010年燃焼基準
欧:2008年140g/km
石油価格高騰
天然ガス、石炭
再生可能エネルギー
(1∼3月)
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スペシャルストーリー
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Environmental & Social Report 2005
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より市場の求めるハイブリッドを
ハイブリッドが可能にした
「環境」と「走行性能」の両立
SUVにハイブリッドを拡大
ハイブリッドによる低燃費SUV
ハリアーとクルーガーは、乗用車としての操縦性、乗り心地、静
1997年アリゾナで行われた初代プリウスの記者試乗会で最初
また、温暖化防止のためハイブリッド車を普及させるならば、
商品力が強く影響の大きいSUVをハイブリッドにしたほうが効
果は大きい。ハリアーとクルーガーは両車合わせて世界40カ国
に出た質問は「トラックやSUVのハイブリッドはいつ発売するのか」
1997年に登場したプリウスは、
「21世紀のスタンダードとなる
粛性を備えながら、一般乗用車にはない走破性能の高さ、高い視
以上で140万台以上の販売実績があったので、この点でも申し
というものであった。
クルマ」の具現化であったといえる。プリウスの発売に当たり、
点による運転のしやすさ、広い室内空間によるゆったりとした居
分がなかった。
2005年3月発売された、
トヨタ初のハイブリッドSUVである、
開発側は社内の関係部署にこう訴えた。
「プリウスは単なる新
住性、積載量の大きさなど数多くの魅力を秘めている。
メーター内にパワーメーター、エネルギーフローの表示をする
ハリアーハイブリッド(米国名:Lexus RX 400h)とクルーガー
商品ではない。プリウスは、
21世紀に求められるクルマの変革に
トラックから移行してきた従来のSUVに対しハリアーは、
セダン
ことに加え、ナビ画面には瞬間燃費と5分平均燃費の経緯を表示
ハイブリッド(同:Highlander Hybrid)はこの質問に対するひとつ
対する答えのひとつであり、問題提起でもある。そういう大き
とSUVを融合させた「スポーツユーティリティサルーン」として
することで、
ドライバーのエコドライブを強力にサポートしている。
の答えである。このSUVハイブリッドは、CO2排出量低減やクリー
な視野に立ったスタンスでプリウスをとらえてほしい」。つまり、
「ラグジュアリーSUV」という新しい市場を切り開いてきた。また、
ンな排出ガスなどエコ性能は当然として、圧倒的な動力性能を
プリウスは21世紀に求められるクルマの答えであると同時に
クルーガーも乗用車ベースのSUVとして生まれ、
「カーライクSUV」
備えている。新型プリウスで開発された ※ THSⅡ技術をベース
スタート地点でもある、
ということだ。環境対応、
ということだけ
市場の拡大に貢献してきた。
にSUV用に新開発、さらに、高出力モーターで後輪を駆動する
を考えれば電気自動車も答えになりうる。しかし当時の電気自動
しかし、
このように魅力にあふれるSUVにも克服すべき課題
※ E-Fourを組み合わせ、
0→100km/h
7.3秒という数字が動力
車は航続距離の点で、実用化にはまだ多くの問題を抱えていた。
があった。それは、高い走行性能と低燃費の両立だ。SUVは一
性能の高さを裏付ける。また、
50-80km/h追い越し加速3.6秒と
お客様に我慢を強いるクルマでは選んでいただけない、それは
般の乗用車に比べ車体がやや大きく重いので、走行性能を高め
いう性能も、実用性能としてV8エンジン搭載のSUVを上回る
結果として環境対応車が普及しないことを意味する。
るためにはエンジンの高出力化が求められ、結果として燃費が
と高い評価を得ている。
そのスタンスに立ち、ハイブリッドの改良が続いた。プリウスは
悪くなってしまう。
当初の環境性能の高さを訴求したハイブリッドから、ハイブリッド
マイナーチェンジを重ね、欧米でも販売が始まる。THSを改良し、
「燃費」と「走り」をいかに両立させるか?この課題解決に最適
技術の進化が可能にした、環境性能とクルマの魅力である動力
エスティマ、アルファードなど既存の車種にも対応可能になった。
なのがハイブリッドシステムだった。
性能の高い次元での両立、ハイブリッド・シナジー・ドライブのひと
そして2003年には、燃費を向上させながら走行性能を格段に充
つの帰結だといえる。
実させた新型プリウスが登場する。
そして、なぜ今回SUVのハイブリッドだったのか、
という点にも
この新型プリウスにより、
トヨタが社会に問うたのは、
「環境性能
注目する必要がある。
の高いだけのクルマでは、十分ではない。環境性能が高く、なお
ハイブリッドシステムは、エンジンとモーターを組み合わせて
かつクルマ本来の魅力も兼ね備えた商品を開発してこそお客
効率の良い動力分配をするとともに、減速時に、運動エネルギー
様に選んでいただけ、社会への普及につながり、
これが社会への
を電気エネルギーとしてバッテリーに回収することで燃費を大幅
共生につながる」という考え方だ。初代プリウスがハイブリッド
に向上させること、
およびクリーンな排出ガスの実現を可能にした。
量産化への扉を開いたとするならば、新型プリウスはハイブリッド
この高い環境性能をもったクルマを普及させることが、環境問題
普及の門戸を大きく開いた、ということができるだろう。下のグ
に対する自動車会社の使命であるとトヨタは考えている。普及と
ラフを見ても、新型プリウスの登場によってハイブリッド車の累積
いうことを考えれば、多くのお客様が選択する魅力のあるマーケッ
販売台数が急激に増えたことが見てとれる。
トへのハイブリッド投入が必要になる。さらに、当然ながらクルマ自
体が売れる商品でなくてはならない。いくら環境性能が高くても、
走行性能を犠牲にしたものでは選ばれない、
ということだ。
※ THSⅡ=Toyota
Hybrid System Ⅱ:燃費だけでなく走行性能も向上させたハイブリッドシステム
※ E-Four
:後輪をモーターで駆動する電気式4WD
■ ハイブリッド車の累計販売台数
︵
台
数
︶
ダイナ
ハイブリッド
累計販売数
36万台
トヨエース
ハイブリッド
エスティマ
ハイブリッド
パワーメーター
燃費情報(ナビ画面)
独立3眼メーター
エネルギーモニター
環境とハイブリッド
なるクルマを提案するためのG(グローバル)
21プロジェクト。
クルマを開発・生産・販売する企業にとって、環境問題への
とつは低燃費とクリーンを両立させるパワートレーンの開発
対応は避けて通れない課題だ。特に地球温暖化防止、化石燃
だった。どちらのプロジェクトも、
1994年には開発結果をどう
料への対応は、
クルマの性能が密接に関係している。地球温暖
量産に結びつけるか、
という段階に進んでいた。
G21では、燃費の50%アップが目標値に設定された。もうひ
化への対応、CO 2 排出量低減はすべての企業が取り組むべき
ところが1995年春、目標値が大幅にアップされる。G21の目
最優先課題であり、
クルマの環境性能を向上させることが、持続
標であった燃費50%アップが100%アップになったのだ。
21世
可能なモータリゼーションの発展につながっていく。
紀のスタンダードになるためには、画期的なイノベーションに
これら地球温暖化対策、CO 2 排出量低減についてトヨタは
よるブレークスルーでなければならない。それが数字として表
次のように考えている。
れたのが、燃費倍増だった。
現状のエネルギー体制が続く中では、内燃機関ハイブリッド
「実現するにはハイブリッド、それも全く新しい発想のハイ
の普及が必要だ。また、ハイブリッド技術は燃料電池車にも応用
ブリッドが必要でした。これが初代プリウスに搭載したToyota
可能であり、究極のエコカーへ向かうキーテクノロジーである。
Hybrid System(THS)です」。当時パワートレーン担当で、
ハイブリッドを基本技術として、ほかの燃料、技術の組み合わせ
後にプリウスのシステム側リーダーになる八重樫武久はそう語る。
を研究していく必要がある。
プリウスの登場によって、ハイブリッドシステムは環境対応へ
さらに、現在から2010年、
2020年という将来に目を向けると、
のキーテクノロジーとしての第一歩を踏み出した。
途上国でも燃料の無鉛化・脱硫黄化などの品質向上が進み、低
排出ガス車の導入が可能になる。同時に、
古い自動車が更新され、
■ 将来における環境対応の必要性(概念図)
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'0
新型プリウス
排気ガスの問題はほぼ解決すると予測される。しかし人口増、
クラウンマイルド
ハイブリッド
プリウス
ハリアー
ハイブリッド
コースター
ハイブリッド
9
'7
ハリアー&クルーガーハイブリッド
46
クルーガー
ハイブリッド
アルファード
ハイブリッド
9
'8
9
'9
0
'0
0
'1
0
'2
0
'3
0
'4
'05(年)
排気低減
生活レベルの向上によりひとり当たりの消費が増え、CO2削減、
エネルギー需給がより大きな問題になってくると考えられている。
北米、欧州で
プリウス発売
環
境
CO2削減
1992年にトヨタは「地球環境憲章」を策定し、環境への対応
を経営の最重要課題と位置づけた。そして翌1993年、
ふたつの
プロジェクトがスタートした。ひとつは21世紀のスタンダードと
将来
エネルギー
需給
日:新長期、ディーゼル規制強化
欧:StepⅣ、
Ⅴ
米:ZEV、SULEV
1
'0
2
'0
開発途上国への拡大
日:2010年燃焼基準
欧:2008年140g/km
石油価格高騰
天然ガス、石炭
再生可能エネルギー
(1∼3月)
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6/29 22:08
環境側面
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スペシャルストーリー
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ハイブリッド・シナジー・ドライブによる
走行性能向上
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激しく、過酷なフィールドとして知られている。このようなフィール
ドを高速で長距離走り続けることができるかどうか、開発研究目的
が参加の一番の理由だった。Lexus RX 400hはディーゼル車な
「THSⅡは応用範囲がとても広いシステムです。エコとパワー
どが参加するS1(代替燃料)クラスでの参加を許可された。
を高次元でバランスさせた上で、使い方次第でエコと走りのどち
チームはNPO法人MOTO-CP(モータースポーツ文化振興会)
らにウエイトを置くこともできる。世界に通じるSUVをつくるため
が運営しており、同チームはプリウスを使って国内のレースに参加
にはどうしても新しいパワーが欲しかったので、THSⅡは打ってつ
した経験をもつ。レースの総監督を務めたレクサス車両性能開発
けでした」と語るのは、初代よりハリアー、
クルーガーの開発に関
部の部長、
古賀裕一は、
「欧州ではディーゼル車の人気が高い一方、
わる第一トヨタセンター・チーフエンジニアの岡根幸宏だ。
ハイブリッド車は走行性能では大したことがない、
との評がある。
新型プリウスで500Vまで昇圧した電圧を、限界の650Vにまで
ニュルブルクリングで耐久評価をするとともに、走りと燃費の両
上げ、モーターの最高回転数をプリウスのほぼ2倍の12,400rpm
立を証明したかった」と語る。
まで高めたことにより、
フロントモーターの出力は50kWから123
レースでは、6時間時点でクラス3位まで順位を上げたが、その
kWに跳ね上がった。この高回転・高出力を、
リダクションギアを介
後リアをヒットするアクシデントに見舞われてパワーステアリング
してSUVに必要な大トルクに変換するとともに、V6 3.3Lエンジ
が効かなくなり、最終的にはクラス25台中13位、総合79位で24時
ン、さらにリヤパワーユニットを加え、
システムとして最高200kW
間を走り抜いた。全体で予選通過271台中完走は133台という結
の出力が可能になった。
果からすれば、初参戦にして大健闘し、ハイブリッドシステムの耐久
「最後まで苦労したのはバッテリーの搭載でした。特に3列
性の高さを実証した
シートを持つクルーガーにとっては、バッテリーの小型化と冷却
といえるだろう。
がポイントでした」
(岡根チーフエンジニア)。広い居住性を犠牲
「 次は完走だけで
にしてしまうと、ハイブリッド化はできてもSUVの機能性や快適
なく、上 位 争 いに食
さが失われてしまう。あくまで機能性を損なわずに環境性能を
い込むことで多くの
向上させるために妥協は許されなかった。
人にハイブリッドの良
もともとSUVとしてトップクラスの燃費だったハリアー、
クルー
さを知ってもらい、ハ
ガーだが、ハイブリッド化によりコンパクトカー並みの17.8km/Lを
イブリッド車がより浸
達成した。さらに排出ガスも国土交通省の「平成17年基準排出ガ
透することを目指し
ス75%低減レベル」認定を取得、生産から廃棄までの*LCA(ライ
たい 」と関係者は感
フサイクルアセスメント)においても同クラスガソリン車を上回って
想を述べている。
ニュルブルクリングで24時間走り切ったLexus RX 400h
いる。つまり、
SUVハイブリッド
はワンクラス上の走行性能を
発揮し、それでもなお「 環境
ハイブリッド車、さらなる拡販を目指す
性 能が高い 」クル マであり、
ハイブリッド・シナジー・
ドライブ
今回のSUVハイブリッド化により、
トヨタのハイブリッド車は計9
の特長をフルに活かし切った
車種となった。
2010年ハイブリッド車100万台販売を目指し、今後
クルマなのだ。
新たに開発された小型バッテリー
*LCA : 製品の一生を通じた環境影響の分析と評価。
もハイブリッド車種を市場に投入していく予定だ。
2006年にはレ
クサスブランドのGS-HVの投入が予定され、
コンパクトカーからSUV、
高級スポーティセダンへとアプリケーションの幅を拡大していく。
Lexus RX 400h 24時間耐久レースを完走
発表当時、ハイブリッド技術は究極のエコカーが登場するまで
のつなぎの技術だと言われたこともあった。しかし、ハイブリッド
48
ハイブリッドシステムを搭載したLexus RX 400hが、
2005年
車の生産台数が増えるにつれ、そうした声は小さくなっていった。
5月7∼8日(現地時間)
ドイツのニュルブルクリングで開催され
ハイブリッド技術は元々汎用性が広い。ガソリン車だけでなく、
ディー
た24時間レースに、
同レース史上初のハイブリッド車として出場し、
ゼルエンジン、代替燃料エンジンと組み合わせることも可能だし、
見事完走を果たした。
燃料電池車との組み合わせでも効果を発揮する。動力源を問わ
ニュルブルクリング24時間レースはル・マンと並ぶ欧州2大24時
ず性能を向上させるシステムがハイブリッドだとすれば、
これから
間耐久レースのひとつで、路面が荒れている上アップダウンが
も究極のエコカーへと続くコア技術であり続けるだろう。
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