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25pYG5 強制球面振り子によるカオスの実験

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25pYG5 強制球面振り子によるカオスの実験
水素エネルギー社会がやってくる
∼ 水素貯蔵材料と燃料電池 ∼
九州共立大学 工学部
牧原義一
1.はじめに
19 世紀中ごろの産業革命から今日まで,世界のエネルギー消費量は加速度的に増加してきました。
その大部分は,石油,石炭,天然ガス等の化石燃料の使用によるものです。この結果,CO 2 や NO x によ
る地 球 温 暖化 ・大 気 汚染 等 の「地球 環 境 の破壊 」が進 行 しています。また,近 い将来 に採 掘 可能 な化
石燃料が無くなってしまう「エネルギー資源の枯渇」という問題も生じています。
これらの問題を解決するためには,クリーンで豊富そしてリサイクル可能な新しいエネルギーとその利
用システムの開発が必要です。水素はいろいろな物質の中に多量に存在します。そして,エネルギーを
得るために水素を燃やしても水が生成するだけで,大気汚染物質は全く発生しません。このような理由
から,水素からエネルギー(熱や電力)を取り出して利用するための研究開発が活発に行われています。
今 回 の講 義 では,間 近 に迫 っている水 素 エネルギー社 会 を実 現 するためのキーマテリアル(重 要 な物
質)である「水素貯蔵材 料」と「燃料電池」の開 発と利用に関する最新 の情報を紹 介します。また,私の
研究室で 4 年生と大学院生が行っている水素吸蔵合金開発の実験についても少し紹介します。
2.化石エネルギー社会から水素エネルギー社会へ
水素エネルギーを利用するためのもっとも有効な方法として燃料電池 (Fuel Cell ; 以下 FC と表
す)が開発されています。FC は水素と酸素を反応させて電力を得る発電機であり,次世代の分散型発
電システムとして注目されています。反応後の生成物は電力と熱と水であり,CO 2 などの大気を汚染する
物質を発生しません。原料の酸素としては空気をそのまま利用し,水素は燃料として供給する必要があ
ります。
燃料電池自動車(Fuel Cell Vehicle; FCV)は,FC を電力源とするモーターで駆動する電気自動車
であり,CO 2 排出の無いエコカーとして世界中で開発競争が行われています。「これは究極の車だね。
閣僚はみんなこれに乗らなきゃ。」これは,2001 年 12 月に,市販車としては世界で初めて,トヨタとホンダ
が計5台の FCV を日本政府へ納入したときの,小泉首相の試乗後のコメントです。また,2000 年のシド
ニーオリンピック女子マラソンで,金メダルを取った高橋尚子選手を先導した車は,米国 GM 社の FCV
「ザフィーラ」です。家 庭 用 FC の利 用 に関 する情 報 もいろいろなメディアで報 道 されています(資 料 ;
2004 年 3 月 14 日・朝日新聞朝刊「家庭用燃料電池,普及へ「省エネ」前面」)。そのほか,パソコン,携
帯電話,デジカメ,DVD 等のモバイル型電源用 FC は,コスト的には実用化の目途がたっています。
現 在 の石 油 等 を中 心 とする化 石 エネルギー社 会 から,水 素 エネルギー社 会 へ移 行 するためには,
「原材料の採掘→水素の製造→水素の貯蔵・輸送→水素の利用→廃棄・リサイクル」というライフサイク
ル全体におけるエネルギー効率,コスト,クリーンさ(環境負荷),リサイクル性を考慮する必要があります。
また,水素供給ステーション等のインフラ整備も重要です。
3.燃料電池
燃料電池(FC)は,水の電気分解と逆の化学反応で電力を発生します。FC にはいくつかの種類があ
りますが,その中で固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell ; PEFC)は,燃料電池自
動車(FCV)用の軽量・高性能な駆動電源として,また家庭定置用の熱と電力を同時に供給するコジェ
ネレーション用電源として,活発に研究が行われ
ています。このような FC の性能は,この 10 年の
間 に急 速 に改 善 されました。このことが,水 素 エ
ネルギー利用を現実化させた大きな要因です。
右図は PEFC の模式図です。プロトン(H + )導
電 性 高 分 子 電 解 質 膜 (PEM)を,触 媒 をはさん
で,2 つの多孔質電極でサンドイッチした構造で
H
+
す。触媒としては,例えば 10∼50nm の炭素(C)
微 粉 末 表 面 上 に,1∼5nm 程 度 の白 金 (Pt)粒
子を分散させたもの(Pt-C 触媒)が使われます。
燃料の水素分子は,陰極側の Pt 上で H 原子に
解離されると同時に,水素イオン H + と電子e − が
生成します。この H + は PEM を通過し,陽極側の
酸素および負荷を経由してきたe − と陽極側のPt
+電力+熱
上で再結合して水を生じます。
4.水素貯蔵材料
水素は常温,常圧では気体であり,大きな体積を占めます。多量の水素をいかに軽量,コンパクトで
安全に貯蔵・輸送できるかは,燃料電池を実用化するための重要な課題です。その方法として,まず,
水素を高圧にして容器(ボンベ) に貯蔵する方法があります。FCV への水素搭載法としては,技術の完
成度と取り扱いの容易さから,このような高圧ボンベによる貯蔵が当面の方法として有利であることが知
られています。水素を燃料として走行するトヨタ FCHV やマツダ RX-8 ハイドロジェン RE も 35MPa(350
気圧)の高圧ボンベを積んでいます。5kg の水素(常圧で∼56000 リットル)は,20 リットルのガソリンとほぼ同
じエネルギーをもっています。超低燃費車では,5kg の水素で 500km の走行が可能となりますが,これを
達成するために,現在 700 気圧の超高圧水素ボンベの開発が進められています。次に,水素を液化し
て貯蔵する方法が開発されています。水素ガスは液化すると 1/800 の体積になります。しかし,液化ため
の設備費,および液体状態を保つ冷却(-253℃)のための費用が大きくなるという難点があります。
「水素吸蔵合金(Hydrogen Storage Alloys ; HSA)」とは,常温・常圧付近で,自分の体積の 1000
倍の水素を可逆的に貯蔵・放出することができる金属です。これまで数多くの HSA が発見されており,
FC の水素燃料タンク,Ni-水素電池の電極等で実用化されています。HSA は水素ガスや液体水素より
高密度に水素を貯蔵できますが,金属であることから重いため,FCV などで利用する際の問題点となっ
ています。このほかにも,いくつかの水素貯蔵材料の研究が行われていますが,「現状ではいずれの方
法もガソリンと比較して十分な実用性を有していない」と認識されており,今後のさらなる改良(高密度化
とコンパクト化)および新しい貯蔵材料の発見が必要とされています。
5.九州共立大学での水素吸蔵合金の開発
私の研究室では,これまで作製されていない新しい水素吸蔵合金を作製し,その水素貯蔵能力を改
善するための研究を行っています。たとえば,2 種類の金属 ZrMn 2 と Mg をいろいろな重量比で混合した
試料を,10 気圧の水素ガス中で 30 分から 8 時間のミリング処理を行ったときの吸蔵水素量を測定しま
す。ミリング処理とは,容器の中に試料粉末と鋼製のボールを封入し,容器を回転することにより,餅をこ
ねる要領で 2 種類の金属を粉砕・混合する方法です。この方法により,金属を原子の大きさの 10∼1000
倍程度の非常に小さな粒子に粉砕して,2 種類の合金をくっつけることができます(これをナノ構造化・
複合化と言います)。ZrMn 2 だけをミリングした場合は吸蔵水素量は減少しますが,Mg を加えてミリング
すると,吸蔵水素量は大幅に増加し,吸蔵速度も速いことが分かりました。これは,ZrMn 2 と Mg の結晶
粒界(ZrMn 2 と Mg が原子レベルでくっついている部分)を通して, Mg が高速かつ多量に水素を吸蔵し
たためと考えられます。現在,水素吸蔵の詳しいメカニズムを明らかにするために,さらに詳細な実験を
行 っています。水 素 吸 蔵 合 金 のナノ構 造 化 ・複 合 化 による水 素 吸 蔵 能 力 の改 善 は近 年 開 発 された手
法です。今後いろいろな新しい合金系にこの方法を適用して,実用化可能な水素吸蔵合金を開発して
ゆきたいと思っています。
参考文献
[1] 岩崎和一ほか,水素利用技術集成,エヌ・ティー・エス(2003).
[2] 田村英雄監修,内田裕之ほか編著,固体高分子型燃料電池のすべて,エヌ・ティー・エス(2003).
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