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米国 IRS による事前確認(APA)手続きに 関する新歳入手続き

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米国 IRS による事前確認(APA)手続きに 関する新歳入手続き
Transfer Pricing News
米国 IRS による事前確認(APA)手続きに
関する新歳入手続き
September 2015
In brief
2015 年 8 月 12 日、米国内国歳入庁(IRS)は、APA 手続きに関する新歳入手続き 2015-41 を公表しました。
この新手続きは、2013 年 11 月に IRS より最初に公表された修正提案をベースに、産業界等からの多くのパブ
リックコメントを踏まえた上で策定され、また、OECD の Base Erosion and Profit Shifting (BEPS)プロジェクトな
ど、現在の国際課税における世界的な動向の一部も取り入れた内容となっています。また、併せて相互協議に
かかる手続き 2015-40 も発表しました。
今後、新たな APA 申請は、原則、これらの新手続きに基づいて行う必要がありますが(※)、旧手続きから大幅
に変更されていますので、本ニュースレターでは、実務上重要と考えられる変更点について解説します。
※2015 年 12 月 29 日までの申請については、旧手続きに基づく申請も可能となっています。
In detail
1. 対象取引の拡大
旧手続きにおいては、「covered transaction」という用語が用いられ、関連者間取引が APA の対象取引とされ
ていましたが、新手続きにおいて、その対象取引は「coverable issues」という表現に変更されています。この
「coverable issues」とは、移転価格原則の適用に関わる問題を意味しています。したがって、米国内国歳入法
第 482 条(移転価格)上の問題のみならず、租税条約に基づく恒久的施設への帰属所得の問題のように、移
転価格原則の適用に関わる問題は、広く APA の対象とすることが可能となります。また、これらの問題にかか
る副次的な問題、米国での更正によるペナルティ、罰金、利子なども、APA の一部として対象に含めることが
可能となります。
2. APA 審査における新概念
新手続きにより、APA の審査場面において、新たに「interrelated matters」という概念が導入されています。
この概念は、効率的・効果的な審査を行うために導入されたもので、APA 申請内容と関連性があると判断さ
れる場合には、申請対象外の取引、年度なども含めて審査されることになります。例えば、ライセンス供与取
引について APA 申請した場合に、APA の対象とされていない過年度に関連者間でこのライセンス供与取引
に係る無形資産の移転があった場合には、「interrelated matters」として、過年度の無形資産移転取引も含め
て APA が審査される可能性が高くなります。
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3. 事前相談が必要となるケース
旧手続きにおいては、事前相談は納税者の裁量に任されていましたが、新手続きにおいては次の場合に事
前相談が義務化されることとなります。

バイラテラル APA、マルチラテラル APA の申請が可能な場合にユニラテラル APA を申請する場合

簡易 APA を申請する場合

無形資産開発契約に関する無形資産のライセンス供与・移転に関連する APA を申請する場合

グローバルトレーディング契約に関連する APA を申請する場合

事業再編又は事業再編に関する無形資産に関連する APA を申請する場合

米国税制上法人とならない支店、パススルーエンティティ、ハイブリッドエンティティ、米国の課税対象と
みなされないエンティティに関連する APA を申請する場合
4. 簡易 APA
新手続きにおいては、相互協議結果に基づく将来年度の APA、更新 APA 及び小規模事業の APA につい
ては、通常の APA に比べ提出を求められる書類が少ない簡易 APA を提出することが可能となります。
なお、この簡易 APA は、事前承認が必要で、承認を得るためには事前相談メモランダムを提出した上で事前
相談を受ける必要があります。
5. ロールバックの申請時期・義務化
旧手続きにおいては、ロールバックの明確な規定や要件はなく、納税者は APA の審査手続中であれば、ロ
ールバックの申請が可能となっていましたが、新手続きにおいては、原則、APA の申請段階においてロール
バックの申請も行うことが必要となります。また、納税者がロールバックの申請を行なっていない過年度につい
て、申請対象年度と取引の概要や機能・リスクなどの状況が十分に類似している場合には、IRS はロールバッ
クを求めることが可能となり、納税者が合理的な理由なくその求めに応じない場合には、APA 申請の棄却、
停止、取り消しを行うことも可能となります。
6. バイラテラル APA とユニラテラル APA
新手続きにおいては、バイラテラル APA が強く推奨されており、バイラテラル APA が可能の場合に、ユニラ
テラル APA は極めて限られた状況でしか許容されないこととなります。なお、ユニラテラル APA を申請するた
めには、申請許可を求める事前相談時にメモランダムを提出し、ユニラテラル APA の正当性を説明する必要
があります。また、ユニラテラル APA が一度許容された場合に、旧手続きにおいては、申請内容に関し納税
者からの事後的な相互協議依頼を排除していませんでしたが、新手続きにおいてそのような依頼は、原則認
められないこととなります。
7. APA 申請時における開示要件の増加
新手続きにおいては、旧手続きの申請段階で必要とされていなかった書類についても提出が必要となり、申
請時において提出する書類が増加することとなります。具体的には、申請対象当事者以外の者も含むグルー
プの総収入及び取引概要図、申請対象取引に関する組織図(関連組織毎に役員の職務、氏名、従業員数
を含むもの)、APA に関連するが申請に含めない取引についての説明、顧客など第三者の役割も含んだ関
連者間取引の流れなどの書類が必要となります。
8. その他
新手続きにおける主な変更は、次のとおりです。

APA 申請料は 50,000 ドルから 60,000 ドルに引き上げられます。なお、更新 APA については 35,000 ド
ルで据え置きです。

APA 審査中においては、APA 対象年度やロールバック年度の時効を延長することに同意する契約締
結を求められます。

バイラテラル APA、マルチラテラル APA においては、相手国課税当局に先に申請した APA について、
申請日から 60 日以内に IRS に申請することを求められます。
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9. 今後の納税者がとるべき対応
今回の手続きにより、納税者にとって、APA 申請時に提出が必要となる書類が増加するなど、旧手続きと比
較して前倒しで事務負担が増加しますが、APA 審査が効率化し、APA プロセス全体に係る所要時間が短縮
されることが期待できます。この APA 審査の効率化を実現するためには、納税者も新手続きにおいて導入さ
れた対象となり得る問題(coverable issues)やこの問題に関連する事項(interrelated matters)について申請
前に慎重に検討し、APA の対象とする取引の範囲を決定することが重要です。また、現在、APA 申請を考え
ている納税者は、新手続きは予測できない面もあるため、2015 年 12 月 29 日までの旧手続きに基づく APA
申請を検討することも有益であると思われます。
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