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No.102「培養室での検体取り違え防止策」

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No.102「培養室での検体取り違え防止策」
培養室での検体取り違え防止策
-トリプルチェックシステムの導入-
大泉 News Paper No. 102
今から6年前の2009年2月、香川県の医師が体外受精卵を取り違え、別の患者の受精卵を移植した可能性が高い
として、結局、中絶するに至ったという事件が報道されました。この事件は、世間そして我々生殖医療に携わる医
療関係者にも大きな衝撃を与えました。事件が起こった要因の一つとして、医師が1人で培養作業を行っており、
複数人で作業を確認する、いわゆる「ダブルチェック機能」が働いていなかったことが挙げられます。しかし、こ
のダブルチェックを義務づける基準はなく、日本産科婦人科学会の指針でも「体外受精の実施は、医師を含め複数
のスタッフで行うことが望ましい」とし強制力はなく、各施設の自主性に任されているのが現状です。
当クリニックの培養室では2005年の開院以来、患者様の精子・卵子・
受精卵を取り扱う際は、必ず2名の胚培養士が立ち会い、取り違え防止
のためのダブルチェックを徹底して行ってきました。更に、昨年よりこ
の取り違え防止策を強化するため、バーコード読み取りによる検体管理
システムを導入し、現在はダブルチェック(人によるチェック)+機械
によるチェックという「トリプルチェックシステム」を実施しておりま
す。今回のニュースペーパーでは、普段皆様の受精卵が、取り違えの無
いようどのように管理・保管されているのかを、この「トリプルチェッ
クシステム」という観点からご紹介したいと思います。
■採卵から移植までの、卵の移動のイメージ
Aさん
Aさん
採卵
胚移植
Aさん専用の
培養皿
Aさん
Aさん
Bさん専用の
培養皿
体外に取り出された卵は、採卵から胚移植までの間、受精(媒精)や培養などの過程で、様々な培養
皿を移動します。もちろん卵だけを見ても誰のものか区別かないので、一度間違った移動をしてしま
うと誰の卵かが分からなくなってしまいます。そのため取り違え防止対策がとても重要になってくる
のです。
■当院での取り違え防止対策
大泉 News Paper No. 102
・培養皿など全ての機材に「ID/名前/QRコード付シール」を添付。さらに患者様ごとに色分けをして区別。
・ご本人様および卵のデータは、培養室専用カルテと培養情報システムにより管理。
QRコードを使用することで、培養中の卵とカルテおよびシステムをリンク。
大泉
きよもり子さん
培養室専用カルテ
大泉
きよもり子さん
培養情報システム
・各作業工程に、かならず2人以上の培養士を配置し、ダブルチェックを行う。
・「誰の卵の操作を行うのか」「どの培養皿からどの培養皿へ卵を移動するのか」「誰の卵と精子を受精させるのか」
など、QRコード読み取りによって、培養室専用カルテおよびシステム上での確認を行う。
■トリプルチェックによる作業例
例)Aさんの卵を、Aさんのご主人の精子と受精させる場合
OK
NG
各
でQRコードを
読み取り、システム上で確認。
正しいQRコード同士であればOK
誤ったQRコード同士であればNGと表示される。
※Aさんを識別するためのQRコードは全て同一のものが貼られている。
★バーコード読み取りによるチェック
Aさんのカルテ
Aさんのカルテで
あることを確認。
卵が入った培養皿
Aさんの卵であることを
確認。
★培養士2名によるダブルチェック
精子が入った試験管
Aさんのご主人の精子であること
を確認する。
Aさんはこれから受精の作業
をします。
すべてのチェックを
終えてから
受精をさせる作業へ
Aさんの卵です。
Aさんのご主人の精子です。
今回ご紹介した取り違え防止策のように、私たちの目指す安全な生殖医療のためには二重三重の対策が必要です。
また、皆様に安心して当院で治療を受けて頂くため、こういった情報を発信していくことも大切なことだと考え
ております。ご不明な点、ご不安なことなどございましたら、お気軽に医師・培養士までお尋ねください。
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