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実社会・実生活との関連を図った高等学校化学教材の開発
実社会・実生活との関連を図った高等学校化学教材の開発 【研 究 者】 教科教育部 指導主事 下髙呂 元成 【研究指導者】 広島大学大学院教育学研究科 教授 磯﨑 哲夫 【研究協力員】 県立呉三津田高等学校 教諭 森田 晋也 県立三次高等学校 教諭 県立黒瀬高等学校 教諭 小西 大輔 県立廿日市西高等学校 教諭 県立広島高等学校 教諭 児玉 恭定 津村 檜山 真一郎 由美子 研究の要約 「学校理科,校門を出でず」などと,これまでも理科の学習と実社会・実生活との乖離が指摘さ れている。その原因の一つとして,理科の学習内容と実社会・実生活とを結び付ける指導場面の不 足が考えられる。そこで,本研究は,高等学校化学において,実社会・実生活との関連を図った教 材を開発することを目的とした。 まず,各調査結果から,化学教育の現状と課題について明らかにし,化学の有用性を実感させる ことを教材開発のねらいとした。次に,実社会・実生活との関連を図った教材開発において,次の 三つの視点を基に,日常生活にある物質を用いた探究活動を位置付けた。 1 生徒実験を行う,2 生徒に考察させる,3 1単位時間で完結する そして,高等学校化学Ⅰの次の三つの単元,A 単元「酸化と還元」,B 単元「無機物質(非金 属元素の単体と化合物)」,C 単元「有機化合物(酸素を含む有機化合物)」において,化学の有用 性を実感させることを意図して実社会・実生活との関連を図った三つの教材を開発し,授業実践及 びその分析から,開発した教材には一定の有効性があることを明らかにした。 キーワード :高等学校化学 教材開発 探究活動 目 次 はじめに …………………………………………77 Ⅰ 研究の概要 …………………………………78 Ⅱ 化学教育の現状と課題 ……………………78 Ⅲ 研究の基本的な考え方 ……………………80 Ⅳ 実社会・実生活との関連を図った化学教材 の開発 …………………………………………81 Ⅴ 成果と課題 …………………………………92 おわりに …………………………………………93 はじめに 「学校理科,校門を出でず」などと,これまでも 理科の学習と実社会・実生活との乖離が指摘されて いる。その原因の一つとして,理科の学習内容と実 社会・実生活とを結び付ける指導場面の不足が考え られる。 化学に関しては,日常生活には化学技術を応用し た様々な製品が豊富に存在するが,生徒にとってそ れらの製品はブラックボックスになっている。よっ て,化学の授業において,日常生活にある様々な製 品の多くに,化学技術が応用されていることを生徒 に気付かせることが必要となる。 高等学校学習指導要領理科(平成11年)の化学Ⅰで は,「ア 物質と人間生活 (ア) 化学とその役割」 が新設され,その内容の取扱いについて,「化学の 成果が人間生活を豊かにしたことを具体例を通して 扱うこと。」と示されている。 平成19年4月に「平成17年度高等学校教育課程実 施状況調査 教科・科目別分析と改善点」が公表さ れた。化学Ⅰでは,「化学」の成果が人間生活を豊 かにしてきたことを十分に理解していない状況がみ られるとある。この調査結果を踏まえた指導上の改 善点として,「化学とその役割」について十分に時 間をかけて指導することや,各単元においても学習 内容と実社会・実生活とのかかわりについて取り上 げ,「化学の役割」という視点を取り入れた指導が 求められている。(1) そこで,高等学校化学において,化学Ⅰの導入部 - 77 - 分だけでなく,他の単元の学習内容に,「化学の役 割」という視点を取り入れ,実社会・実生活との関 連を図った教材の開発が必要と考え,本研究主題を 設定した。 Ⅰ 試験に役立つ。 ⑤ 当該科目を勉強すれば,私の好きな仕事につ くことに役立つ。 ⑥ 当該科目を勉強すれば,私の普段の生活や社 会生活の中で役立つ。 研究の概要 表2 1 研究の目的 質問① 質問② 質問③ 質問④ 質問⑤ 質問⑥ 本研究では,高等学校化学において,実社会・実 生活との関連を図った教材の開発を目的とする。 なお,教材は学習展開なども含む広義の意味でと らえた。(2) 2 研究の内容と方法 ○ ○ ○ ○ 化学教育に関する各調査結果の分析 実社会・実生活との関連に関する文献研究 高等学校化学における教材の開発 開発した教材の実践及びその分析 3 研究の計画及び経過 質問① 質問② 質問③ 質問④ 質問⑤ 質問⑥ 質問① 質問② 質問③ 質問④ 質問⑤ 質問⑥ 本研究の計画及び経過について,表1に示す。 表1 研究の計画及び経過 研 究 内 容 ○ 研究計画書の作成 ○ 文献研究 ○ 第1回研究協力員会議 ○ 教材開発 ○ 第2回研究協力員会議 ○ 教材開発 ○ 第3回研究協力員会議 ○ 研究のまとめと研究報告書 の作成 期 間 4月 4月~9月 7月 6月~9月 9月 9月~11 月 12 月 12 月~3月 Ⅱ 化学教育の現状と課題 1 化学の学習に関する意識について 各質問の肯定的回答の割合 国語総合 世界史B 日本史B 47.7 45.6 52.2 86.4 53.0 60.3 82.2 46.4 53.4 68.7 32.1 38.6 50.6 23.7 22.8 80.4 35.1 38.4 倫理 政治・経済 数学Ⅰ 39.9 39.9 38.9 50.9 82.7 59.0 44.6 77.1 43.9 19.7 47.2 52.2 19.3 38.2 36.9 41.7 73.2 37.9 化学Ⅰ 生物Ⅰ 地学Ⅰ 32.4 44.9 45.8 42.9 48.5 40.5 30.4 37.5 32.8 35.3 31.5 22.6 28.5 25.9 13.3 33.8 35.8 37.8 (%) 地理B 51.2 68.8 62.3 44.0 25.5 65.1 物理Ⅰ 39.2 55.5 38.7 51.1 43.6 38.9 英語Ⅰ 40.2 83.0 75.8 66.7 48.3 64.9 化学Ⅰの結果は,質問①,③,⑥において,その 肯定的回答の割合は,調査実施科目12科目中最も低 い。 つまり,化学の学習に対する意欲は低く,化学で 学んだことが役立つと実感していない生徒が多い現 状がある。 2 平成17年度高等学校教育課程実施状況調査(以下 「教育課程実施状況調査」とする)の生徒を対象と した質問紙調査において,次の質問の結果を表2に まとめた。(3) ① 当該科目の勉強が好きだ。 ② 当該科目の勉強は大切だ。 ③ 当該科目の勉強は,入学試験や就職試験に関 係なくても大切だ。 ④ 当該科目を勉強すれば,私の入学試験や就職 理科の授業に関する生徒の認識について OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2006年調査の生 徒を対象とした質問紙調査において,学校で受けて いる理科授業に関する生徒の認識を問う次の質問に ついて,その結果を表3(4),表4(5)にまとめた。 調査結果の報告書には,「日本の生徒は,第10学 年(高校1年)に属していることから,この調査結果 は,国際比較の観点から捉えた日本の高校1年段階 の理科授業の特徴を示していると考えられる。」1)と ある。 ○ 対話を重視した理科の授業に関する生徒の認識 A 生徒には自分の考えを発表する機会が与えら れている。 B 授業は,課題に対する生徒の意見を取り入れ - 78 - て行われる。 C 生徒は課題についての話し合いをする。 D 授業ではクラス全体でディベートしたり討論 したりする。 表3 ほとんどもしくはすべての授業で各質問の事柄があ ると回答した生徒の割合 A (%) B C D OECD 平均 61 49 42 36 日本 34 17 9 4 四つの質問について,日本の肯定的回答の割合は OECD平均を大きく下回り,対話を重視した授業が国 際的に見て,活発に行われていないことが分かる。 ○ モデルの使用や応用を重視した理科の授業に関 する生徒の認識 A 先生は理科で習った考え方が,多くの異なる 現象(例:物体の運動,似た性質を持つ物質な ど)に応用できることを教えてくれる。 B 先生は,科学の考えが実生活に密接にかかわ っていることを解説してくれる。 C 先生は,理科を学校の外の世界を生徒が理解 する手助けとなるように教える。 D 先生は技術的な応用を例にして,いかに理科 が社会生活と密接に関係しているかを解説して くれる。 E 生徒は,理科で習った考えを日常の問題に応 用するよう求められる。 表4 担当する科目の授業では,1学級当たり,生徒によ る観察や実験をおおむねどの程度行っています か。」という質問に対する化学Ⅱ指導教員の回答に ついて,表5にまとめた。(6) 表5 ほぼ 週に1~ 月に1~ 数か月に 年に数回 毎時間 2回程度 2回程度 1~2回 以下 A B C D 1.47 4.58 26.47 34.15 32.52 0.82 「週1回」以上,生徒による観察,実験を行って いる化学Ⅱ担当教員の割合は,約6%である。小学 校,中学校の同様の調査結果では,週1回以上行っ ている小学校の教員は約64%,中学校の教員は約 64%であり,小学校,中学校と比べて,高等学校化 学では,観察,実験を行っていないことが分かる。 (7) ○ 観察,実験を実施する際の障害について 「実態調査」において,「あなたの担当する科目 の授業において,観察や実験を行うに当たって,障 害になっていることは何ですか。」という質問に対 する化学Ⅱ指導教員の回答について,表6にまとめ た。(8) 表6 観察,実験を実施する際の障害に関する各回答の 割合 障害あり (%) 障害なし 1 設備備品の不足 30.07 69.93 (%) E 2 消耗品の不足 17.32 82.68 3 授業時間の不足 70.75 29.25 4 準備や片付けの時間が不足 38.24 61.76 5 生徒数が多すぎる 11.76 88.24 6 生徒の授業態度の問題 12.42 87.58 7 実験室の不足 6.54 93.46 57.52 42.48 21.73 78.27 OECD 平均 59 46 38 34 30 日本 26 19 12 16 11 五つの質問について,日本の肯定的回答割合はい ずれも参加国中で最も少ない。特に,質問Eにおけ る肯定的回答の割合は約11%と低く,学んだことを 日常に応用させることが十分でないといえる。 3 無回答 程度 ほとんどもしくはすべての授業で各質問の事柄があ ると回答した生徒の割合 生徒による観察,実験の実施に関する各回答の割合 (%) 観察,実験,課題研究の実施状況 ○ 観察,実験の実施状況 独立行政法人科学技術振興機構及び国立教育政策 研究所による平成20年度高等学校理科教員実態調査 (以下,「実態調査」とする)において,「あなたの - 79 - 8 大学入試への対応のため の指導に時間が取られる 9 理科実習教員(実習助手) がいない 観察や実験を行うに当たって障害となることにつ いて,「授業時間の不足」と「大学入試への対応の ための指導に時間を取られる」という時間の不足を あげる教員の割合が高い。 ○ 課題研究の実施状況 「実態調査」において,「あなたの担当する科目 の授業では,1学級当たり,生徒による課題研究に 割り当てる授業時数は年間でおおむねどの程度です か。」という質問に対する化学Ⅱ指導教員の回答に ついて,表7にまとめた。(9) 表7 4 ~ 6 7 ~ 9 10 ~ 12 13 ~ 15 16 時 間 以下 時間 時間 時間 時間 以上 12.91 4.90 2.29 0.98 無回答 1.31 0.65 この調査結果から,生徒による課題研究に割り当 てる授業時数は,3時間以下が最も多く,その割合 は7割以上を占め,課題研究が十分に行われていな い現状がみられる。 Ⅲ 研究の基本的な考え方 1 実社会・実生活との関連を図るとは (1) 「科学的リテラシー」について 磯﨑哲夫(2009)は,「近年,欧米諸国を中心に理 科を学ぶ意義として,科学的リテラシーの育成が掲 げられている。」2)と述べており,日本においても理 科の重要な学力観として注目されている。 OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2006年調査国際 結果報告書から,PISA調査の「科学的リテラシー」 の習熟度レベルを表8にまとめた。(10) 表8 習熟度レベル レベル6 レベル5 レベル4 レベル2 レベル1 課題研究の実施状況に関する各回答の割合 (%) 3 時 間 76.96 レベル3 状況に応じて,科学的な疑問を明確に 認識すること。現象を説明するために 事実や知識を選び,簡単なモデルや探 究の方略を応用する。 身の回りの状況での説明をしたり,簡 単な調査に基づいた結論を導いたりす るための適切な科学的知識を持ってい る。 限定された状況にのみ結びついた科学 的知識を持っている。 「科学的リテラシー」の習熟度レベル 各レベルの生徒の特徴 複雑な生活の問題場面において科学の 知識と科学についての知識を一貫して 認識したり,説明したり,応用したり する。 多くの複雑な生活場面での科学的構成 要素を認識し,科学的概念と科学につ いての知識を応用する。 科学あるいは技術の役割についての推 論を必要とする現象がかかわる問題場 面や疑問に効果的に取り組む。 このように,上位レベルにおいては,複雑な生活 場面での科学的問題解決の能力を身に付けているこ とが必要とされる。 また,磯﨑(2009)は,「科学的リテラシーとは, 将来の市民としての子どもに,日常生活の文脈にお いて,自然の事物現象(科学・技術も含む)を証拠に 基づいて科学的に説明したり,科学・技術が関連す る社会的諸問題に対して意思決定するために,科学 的知識やスキルを獲得し,活用できるようにするこ と,と言えるであろう。」3)と述べている。 (2) 知識・技能の活用 中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会 「審議経過報告」(平成18年)において,「知識・技 能の確実な定着に当たっては,知識・技能を実際に 活用する力の育成を視野に入れることが重要であ る。知識・技能を生きて働くようにすること,すな わち実生活等で活用することを目指すからこそ,そ の習得に当たっても,知的好奇心に支えられ実感を 伴って理解するなど,生きた形で理解することが重 要となる。」4)とあり,習得する知識・技術は,実生 活等で活用できるように指導することが求められて いる。 (3) 学習の転移 知識・技能の活用において,学習の転移が重要な 視点となる。下田好行(平成19年)は,「知識・技能 を実生活で活用する力」に着目した教材開発におい て,その学習の根底から支える学習の理論は「転 移」の考えであることを述べ,「児童生徒は学習内 容が実際に活用されている場面を知ることにより, そうした物の見方・考え方が児童の内面に形成され ていく。学習内容の構造がそのまま児童生徒の認識 過程の構造として転移するのである。」5)と述べてい る。 蛯谷米司・木村仁泰ら(1981)は,生きてはたらく - 80 - 転移する力を育てるための指導上の工夫として,科 学的概念や原理の形成を図るには,教師が教えるよ り,子ども自ら発見させ,より身近で多様な具体物 を使って,観察,実験させるなどが大切であること を述べている。 2 化学教育の現状と課題のまとめ Ⅱの化学教育の現状と課題から,次の三つに注目 する。 ○ 生徒による観察,実験の実施が少ない。 ○ 課題研究が十分に行われていない。 ○ 学んだことを日常に応用させることが十分でな い。 これらの化学の授業に関する課題は,小学校学習 指導要領理科の目標に,今回の改訂で新たに追加さ れた「実感を伴った(理解)」の次の三つの視点に関連 している。(11) ○ 観察,実験などの具体的な体験を通して形づく られる理解 ○ 主体的な問題解決を通して得られる理解 ○ 実際の自然や生活との関係への認識を含む理解 すなわち,化学の授業に関する課題はまさに「実 感を伴った理解」を図ることが十分にできていない ととらえることができる。よって,高等学校化学に おいても,この「実感を伴った理解」の三つの視点 は,授業改善を図るうえで有効である。 Ⅳ 1 実社会・実生活との関連を図った化 学教材の開発 2 教材の開発の視点 高等学校学習指導要領理科(平成11年)の化学Ⅰの 目標には,「化学的な事物・現象についての観察, 実験などを行い,自然に対する関心や探究心を高め, 化学的に探究する能力と態度を育てる」と示してお り,観察,実験を中心とした探究的な学習が重視さ れている。また,高等学校学習指導要領解説理科 編・理 数編( 平成 17年 一 部補訂 ,以 下「 解説理 科 編」とする)には,そのねらいとして,「習得した 基本的な原理・法則を用いて,自然や身の回りにあ る物質の変化を化学の立場から解釈あるいは説明し, また化学的な問題に当面したときに,自分の力で解 決する方法を見いだす能力を育成すること」 7) と述 べられている。つまり,化学の学習において,化学 の基本となる原理・法則は単に記憶するのではなく, 日常生活において,それらが生きて働くように指導 することが求められている。 実社会・実生活との関連について,身の回りにあ る化学技術を応用した製品などを紹介するだけでは, 単なる知識の伝達で終わり,なかなか化学の有用性 を実感するまでには至らないだろう。やはり,学ん だことを活用して,身の回りにある事象について解 釈,説明するなど,生徒自身の力で問題解決できた ときに,学習に対する有用性が実感できると考えた。 これらのことから,ある学習のまとまりにおいて, 次の図1のような教材を開発する。 基本的な概念,原理・法則について, 実験を行いながら,習得する。 教材の開発のねらい 中央教育審議会答申「幼稚園,小学校,中学校, 高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善 について」(平成20年)に,「理科を学ぶことの意義 や有用性を実感する機会をもたせ,科学への関心を 高める観点から,実社会・実生活との関連を重視す る内容を充実する方向で改善を図る。また,持続可 能な社会の構築が求められている状況に鑑み,理科 についても,環境教育の充実を図る方向で改善す る。」 6) と示している。生徒に理科を学ぶ意義や有 用性を実感させ,科学への関心を高めるために,実 社会・実生活との関連を図るといえる。 なお,「教育課程実施状況調査」において,生徒 は化学で学んだことが役立つと実感していないこと から,化学の有用性を実感させることにねらいを焦 点化し,教材の開発を行う。 《探究活動》 習得した基本的な概念,原理・法則を 活用し,身の回りの物質の事象につい て解釈,説明する。 図1 開発する教材の概要 なお,探究活動については,次の三つの視点を基 に開発する。(12) (1) 生徒実験を行う 「解説理科編」には,「化学に対する興味や関心 も,観察,実験によってこそ高めることができるの である。」 8) と述べられている。生徒が化学の有用 性を実感するためには,生徒自身が物質を実際に観 - 81 - 実社会・実生活との関連を図った化学教 材の開発及び実践 知 識・ 理 解 3 ・様々な電池,電気分解の事象の中に酸 化還元反応としての規則性,共通性を見 いだし,論理的に考察し,科学的に判断 する。 観察・実験 に関する 技能・表 現 察し,物質に触れ,あるいは反応を行うなどの体験 が重要と考え,生徒実験を組み込む。 (2) 生徒に考察させる 水島裕(2008)は,「実生活と関連付けて思考させ ることで,学習したことが,実生活の中で転移可能 なものとして有効に働き,『役立ち感』をもって認 識される。」9)と述べており,化学の有用性を実感さ せるために,既習の基本的な概念,原理・法則を活 用し,身の回りにある物質の事象について考察させ ることを重視する。 (3) 1単位時間で完結する 先に述べた化学教育の現状と課題にかんがみ,実 際に導入しやすい短い時間であることを優先する。 学習の展開は,①ねらいの理解,②実験,③考察, ④まとめとする。 1単位時間と限られた時間であるため,生徒の考 察を重点化する。その時間を確保するため,実験の 操作が簡易で短時間でできる実験にする。 ・酸化還元反応の観察,実験を行い,そ の基本的操作や記録の仕方を習得すると ともに,その観察,実験の過程や結果か ら自らの考えを導き出し,的確に表現す る。 ・電池や電気分解を酸化還元反応として とらえ,観察,実験の過程や結果から自 らの考えを導き出し,的確に表現する。 ・電子の授受や酸化数の変化から酸化還 元反応を理解し,知識を身に付けてい る。 ・ファラデーの法則及び電気分解の電気 量と析出量の量的関係を理解し,知識を 身に付けている。 関心・意欲 ・態度 以上の教材の開発の視点に基づき,高等学校化学 Ⅰにおいて,教材A~Cを開発し,実践した。 (1) 開発した教材A ア A高等学校での単元の指導計画(第2学年) ○ 単元「酸化と還元」 ○ 指導計画 ○ 単元の目標 次 時 学習内容(時数) 1 1 酸化と還元(2) 酸化還元反応について観察,実験を通して探究し, 基本的な概念や法則を理解させるとともに,酸化還 ・ ●実験 酸化還元反応 元反応を電子の授受という観点で考察できるように 2 する。 2 酸化剤・還元剤 (3) ○ 単元の評価規準 ●実験 代表的な酸化剤と還元剤① 本単元の評価規準を表9に示す。 3 (KMnO4 と KI,Na2SO3,H2O2) ・ ●実験 代表的な酸化剤と還元剤② 4 (K2Cr2O7 と KI,Na2SO3,H2O2) 表9 評価規準 ・ ●実験 代表的な酸化剤と還元剤③ ・酸化還元反応に関心をもち,電子の授 5 (H2O2 と KI) 受という観点で意欲的にそれらを探究し ●探究 身近な物質の酸化還元反応 ようとする。 ・電池,電気分解を酸化還元反応と関連 3 6 金属の酸化還元反応(2) 付けて,意欲的に探究しようとする。 ・ ●実験 金属のイオン化傾向 思 考・ 判 断 ・酸化還元反応の定義と酸化数の定義の 有効性を理解し,観察,実験などを行 い,それらを基に事物・現象の中に共通 性を見いだし,酸化還元反応として論理 的に考察し,科学的に判断する。 4 - 82 - 7 8 ・ 9 ・ 10 電池(3) ●実験 局部電池 5 11 ・ 12 ・ 13 電気分解(3) ●実験 電気分解 全体で確認する。 ※網掛けの部分が開発した教材 開発した教材は,単元名「酸化と還元」の第2次 である。第3時,第4時に代表的な酸化剤・還元剤 とその反応について学習し,その反応について実験 を行う。第5時に日常にある物質を用いた探究活動 を行う。それが,身近な物質の酸化還元反応である。 イ 第5時 探究活動について ○ 本時の目標 身近な物質の酸化還元反応の実験を行い,前時に 学習した酸化還元の観点からその反応を考察し,実 験結果を解釈,説明させる。 ○ 準備物 ・清涼飲料水(スポーツドリンク) ・清涼飲料水(緑茶) ・うがい薬(ポビドンヨード含有) ・ビーカー ○ 学習の展開 本時の学習の展開を表10に,本時に使用したワー クシートを次のページの図2に示す。 表10 学習内容 《ねらいの理解》 本時のねらいの提示 『身近な物質の反応 について解釈,説明 する。』 《実験》 ・清涼飲料水(スポ ー ツ ド リ ン ク ), 清 涼 飲 料 水 ( 緑 茶 ), うがい薬の3種の水 溶液をそれぞれ混合 し,溶液の色の変化 を観察する。 ・実験の結果をワー クシートにまとめ る。 ・実験結果について 《考察》 「なぜ,溶液の色が ・各溶液の成分について 変 化 し た の か 。」 に 確認させる。 ついて考察する。 ・班内で協議して考える ように指示する。 ・班の話し合いの状況を 見ながら,次のヒントを 出す。 ①前時行った実験の結果 を振り返る。 2I-→I2+2e- (無色→褐色) ②うがい薬の褐色から, ヨウ素が含まれるのでは ないかと考えた班には, デンプン水溶液で確認さ せる。 ③清涼飲料水中のビタミ ンCの存在に気付いた班 には,ビタミンC(L- アスコルビン酸)の化学 式と次のことを伝える。 学習の展開 ビタミンC(L-アス 指導上の留意点 コルビン酸)C6H8O6 は, この反応において,デ ヒドロアスコルビン酸 C 6H 6O 6 に 変 化 し て い る。 ・ビタミンC(L-アス コルビン酸)が還元剤, ヨウ素が酸化剤としては たらいたと解釈できた班 は,その化学反応式を考 えさせる。 ・実験,考察は,班ごと に行わせる。 ・実験の準備,片付けは 班で協力して手早く行わ せる。 ・溶液の色の変化の瞬間 を見逃さないように指示 する。 《まとめ》 ・各班で考察した結 果をまとめ,発表す る。 - 83 - ・清涼飲料水中のビ タミンC(L-アス コルビン酸)が還元 剤,うがい薬中のヨ ウ素が酸化剤として はたらいたことを全 体で確認する。 ○ 本時の実験について うがい薬に清涼飲料水を混合し,溶液の色の変化 を確認させる。その実験の様子を図3に示す。 ・生徒の解釈を,代表的 な酸化剤,還元剤の試薬 を用いた実験(演示実験) で確証する。 うがい薬 清涼飲料水 《実験結果》 うがい薬の褐色が,清涼飲料 水を混合することで,無色透 明に変化した。 図3 図2 探究活動のワークシート ○ ○ アスコルビン酸について アスコルビン酸は,無色結晶,融点 190~192℃, 水に可溶,エタノールに不溶,熱に弱い,還元力の 強い物質で,酸化還元電位は+0.058V(pH7.0),水 溶液で酸性を示すのは,エノール形水酸基の一つが 解離するためであって,水溶性の中性モノアルカリ 塩などを作る。アスコルビン酸が水溶液中で還元剤 としてはたらくときの反応について次に示す。 C 6 H 8O 6 アスコルビン酸 → うがい薬と清涼飲料水の混合 C 6H 6 O 6 + 2H+ + 2e- デヒドロアスコルビン酸 アスコルビン酸が還元剤としてはたらくときの反応 生徒の考察について 学習の展開においては,①ねらいの理解(5分), ②実験(9分),③考察(30 分),④まとめ(6分)であ った。生徒の考察の時間をしっかり確保することが できた。 生徒は,課題を解決するため,前時に学習した内 容の振り返りを自ら進んで行った。本時の課題につ いて,ほぼ全員の生徒が清涼飲料水中のビタミンC (L-アスコルビン酸)が還元剤,うがい薬中のヨウ 素が酸化剤としてはたらいたことを見いだした。 さらに,既習事項である半反応式の考え方を活用 して,本時の反応について考察した。生徒のワーク シートから,代表的な記述を次に示す。 この生徒は,学習した酸化・還元の概念とうがい - 84 - 薬にヨウ素が含まれることから考察し,色の変化を 解釈し,文章で説明している。また,ヨウ素とビタ ミンC(L-アスコルビン酸)の化学式を用いて, うがい薬と清涼飲料水それぞれの反応を表現してい る。 事後 22.2 事前 33.3 10.9 0% 39.1 20% 23.9 40% そう思う どちらかといえばそう思わない 分からない 図4 生徒の考察の記述 ○ 授業後の生徒の感想 授業後のアンケートにおいて,授業の感想を記述 させた。その一例を,次に示す。 この実験を通して,より化学が身近に感じら れるようになり,食品にどんな物質が含まれて いるかを見るようになりました。その結果,海 藻類にヨウ素が含まれていることを初めて知る ことができました。 生徒の感想 生徒のこのような感想から,日常にある物質につ いて,化学の知識を活用しようすることがこの記述 から分かる。 ○ 授業アンケートの分析 教育課程実施状況調査と同様の質問「化学を勉強 すれば,私の普段の生活や社会生活の中で役立 つ。」について,授業前と授業後にアンケートを行 った。その結果を図4に示す。 図4から,授業後は,肯定的回答の割合が50.0% から,55.5%に増加しており,「思わない」と回答 した生徒の割合が減少している。 26.7 60% 2.2 15.6 10.9 15.2 80% 100% どちらかといえばそう思う 思わない 生徒の化学に対する有用感の変容 ウ 授業後に行った教師へのインタビュー ① 教材開発に関して この度用いたポビドンヨードを含むうがい薬とビ タミンCを含む清涼飲料水は,日常生活でよく見ら れるものであるが,生徒はそれぞれが酸化剤,還元 剤としてはたらくことは知らない。非常にはっきり した色の変化がある反応であるため,生徒は興味・ 関心をもつのではないかと考えた。 日常生活にある物質の反応の仕組みについて,学 習した酸化還元反応に当てはめて考察することで, 化学の学習が日常生活に結び付いていることを実感 させたい。また,日常生活にある食品や医薬品など の成分表示について,今後化学の視点で見ることが できるようにさせたいと考えた。 ② 成果と課題について 成果については,実験の結果である色の変化に生 徒はたいへん驚き,それを解明しようとたいへん意 欲的に考察していた。また,考察する時間が十分に 確保されていたので,班内で意見を出し合いながら, 考察を深めることができていた。 生徒自身が,学習した半反応式を活用しながら, この反応の仕組みについて解釈できたとき,達成感 を感じていた。 課題については,二種類の清涼飲料水は,両方ビ タミンCを含むものを用いたが,炭酸飲料水などの ビタミンCを含まない清涼飲料水を用いる方法も考 えられる。 - 85 - 表11 知 識・ 理 解 また,今回の生徒が見いだした解釈は,まだ推論 の段階である。まとめの段階で,試薬を用いた演示 実験を行い,生徒の解釈について確証したが,時間 に余裕があれば,その解釈を仮説とし,それを生徒 自身が検証する探究活動を行うことができれば,更 に化学の有用性を実感させることができるのではな いかと思う。 (2) 開発した教材B ア B高等学校での単元の指導計画(第2学年) ○ 単元「無機物質(非金属元素の単体と化合物)」 ○ 単元の目標 非金属元素の単体と化合物について観察,実験を 通して探究し,それらの性質や反応に関する基本的 な概念や原理・法則を理解させるとともに,日常生 活や化学工業と関連付けて考察できるようにする。 ○ 単元の評価規準 本単元の評価規準を表11に示す。 ○ ・非金属元素の単体や化合物の性質や反応 に関する基本的な概念や原理,法則を理解 し,知識を身に付けている。 ・非金属元素の単体や化合物について,日 常生活及び化学工業に関連付けて理解し, 知識を身に付けている。 指導計画 次 1 時 学習内容(時数) 水素と希ガス(1) 1 2 2 ・ 3 ・ 4 ハロゲンとその化合物(3) ●演示実験 塩素の製法と性質 ●実験 塩化水素の製法と性質 ●探究 学校内の水道水に含まれる 残留塩素の測定 評価規準 関 心・ 意 欲 ・態 度 思 考・ 判 断 ・非金属元素の単体や化合物の性質や反応 に関する事物・現象に関心をもち,それら に関する基本的な概念や法則を意欲的に探 究しようとする。 ・非金属元素の単体や化合物について観 察,実験を行うとともに,それらを日常生 活及び化学工業に関連付けて意欲的にそれ らを探究しようとする。 ・日常生活とかかわりの深い非金属元素の 単体や化合物について観察,実験などを行 い,規則性を見いだしたり,様々な事物・ 現象の生じる要因や仕組みを科学的に考察 する。 ・非金属元素の単体や化合物と化学工業と の関係を様々な観点でとらえ,それらの工 業的製造法などを科学的に考察する。 観察・実験 に関する 技能・表 現 ・非金属元素の単体や化合物の性質や反応 に関する観察,実験を行い,その基本的操 作や記録の仕方を習得する。 ・非金属元素の単体や化合物に関する観 察,実験の過程や結果から自らの考えを導 き出し,的確に表現する。 3 5 ・ 6 4 7 5 酸素・硫黄とその化合物(2) ●実験 硫酸の性質 窒素とリンとその化合物(1) ●演示実験 硝酸の性質 炭素・ケイ素とその化合物(1) 8 ※網掛けの部分が開発した教材 開発した教材は,単元名「無機物質(非金属元素 の単体と化合物)」の第2次である。第2時,第3 時にハロゲンとその化合物の性質,反応,その用途 など学習し,それらについて実験を行う。第4時に 日常生活に関係深い水道水に関する探究活動を行う。 それが,学校内の水道水に含まれる残留塩素の測定 である。 イ 第4時 探究活動について ○ 本時の目標 学校内の水道水に含まれる残留塩素の測定を行い, 実験結果を解釈,説明させる。 ○ 準備物 ・ビーカー,残留塩素(遊離)用パックテスト ○ 学習の展開 本時の学習の展開を表 12 に,本時に使用したワ - 86 - ークシートを図5に示す。 表12 学習内容 《ねらいの理解》 本時のねらいの提示 『学校内(校舎内)の 残留塩素の濃度を測 定しよう。』 《実験》 学校内の水道水に含 まれる残留塩素を場 所ごとに測定する。 《考察》 「なぜ,場所によ り,残留塩素の濃度 にばらつきがあるの か。」について考察す る。 学習の展開 指導上の留意点 ・残留塩素の濃度の判定 方法について説明する。 ・測定場所について,班 ごとで分担させる。 ・実験の準備,片付けは 班で協力して手早く行わ ・ そ れ ぞ れ の 班 の 結 せる。 果を発表し,まとめ る。 ・班内で協議して考える ように指示する。 ・班の話し合いの状況を 見ながら,次のヒントを 出す。 ①その場所の環境につい て考えさせる。 ②前時学んだ塩素の性質 等を振りかえる。 《まとめ》 各班で考察した結果 をまとめ,発表す る。 校内の水道水や冷水機に含まれる残留塩素の濃度 図5 探究活動のワークシート - 87 - ○ 残留塩素(遊離)について 水道水の殺菌消毒には,次亜塩素酸塩や液化塩素 などが用いられる。水の消毒に使用された塩素は, 加水分解されて次亜塩素酸あるいは次亜塩素酸イオ ンを生成する。それを一般に遊離残留塩素と呼ぶ。 水道法施行規則において,給水栓における水の遊 離残留塩素濃度は,0.1~0.2 mg/L以上とすること が規定されている。 ○ 残留塩素(遊離)用パックテストについて DPD比色法によるパックテストを使用した。 主試薬:N,N-ジエチル-p-フェニレンジアミン硫 酸塩 ○ 本時の実験について 学校内(校舎内)の水道水に含まれる残留塩素(遊 離)を場所ごとに測定する。 《実験結果》 場所によって,残留塩素(遊離)の濃度にばらつき があった。測定結果について,図6に示す。なお, 同場所で3回測定し,その平均値を測定結果とした。 図6 0.1 0.5 0.1 0.4 0.5 0.3 残留塩素の濃度の差は,人があまりいない場所 (使わない場所)と人がたくさんいる場所(毎日使 っている場所)によるものだと思います。 使わずにそのままにしておくと塩素がなくなるか らだと思います。 生徒の考察の記述 また,班での話し合いの中で,生徒は,活発に発 言していた。ある生徒の発言について,次に示す。 だから,メダカを飼うとき,汲み置きの水を使 うのか。 生徒の発言 水生動物を飼うときの水道水の処理についての発 言であり,塩素の有効性と危険性について,日常生 活の経験と関連付けて理解を深めている。 ○ 授業後の生徒の感想 授業後のアンケートにおいて,授業の感想を記述 させた。「家の水道水も調べたくなりました。」など の記述が見られた。 生徒のこのような記述から,学んだ残留塩素の測 定方法を自分の生活と結び付け活用しようとするこ とが分かる。 ○ 授業アンケートの分析 教育課程実施状況調査と同様の質問「化学を勉強 すれば,私の普段の生活や社会生活の中で役立 つ。」について,授業前と授業後にアンケートを行 った。その結果を図7に示す。 残留塩素(遊離)の測定結果(mg/L) ○ 生徒の考察について 学習の展開においては,①ねらいの理解(6分), ②実験(10分),③考察(28分),④まとめ(6分)であ った。生徒の考察の時間をしっかり確保することが できた。 生徒は,分担して測定した結果を学級全体で確認 すると自然に,「なぜ,同じ校舎内でも,場所によ り,残留塩素の濃度にばらつきがあるのか。」とい う疑問をもった。班内で話し合いながら,意欲的に 考察し,全員の生徒が自らの考えを導き出すことが できた。生徒のワークシートから,代表的な記述に ついて,次に示す。 この生徒は,塩素の性質と場所ごとの使用の状況 を関連付けて考察し,文章で表現している。 - 88 - 20.9 事後 事前 50.5 14.8 0% 25.9 20% 40.7 40% そう思う どちらかといえばそう思わない 分からない 図7 25 60% 11.1 80% どちらかといえばそう思う 思わない 生徒の化学に対する有用感の変容 03.6 7.5 100% 関 心・ 意 欲 ・態 度 思 考・ 判 断 観察・実験 に関する 技能・表 現 知 識・ 理 解 図7から,授業後は,肯定的回答の割合が40.7% より,71.4%に増加しており,否定的な回答をして いた生徒の割合が大きく減少している。 ウ 授業後に行った教師へのインタビュー ① 教材開発について 事前に学校内の残留塩素について,測定したとこ ろ,場所により,残留塩素の濃度に差があることに 驚き,生徒にこの驚きを伝えたいと思ったのが教材 の開発のきっかけである。 まず,校舎内の様々な場所の残留塩素の濃度を測 定させる。なお,時間短縮するため,測定場所は分 担し,後に学級全体で結果をまとめることで,校舎 全体の結果を生徒に確認させる。 次に,生徒自身に学校内の環境と水道水の残留塩 素の濃度を関連付けて考察させることで,学んだ化 学の内容が実生活に結び付いていることを実感させ ることができると考えた。 各班で分担して測定させ,じっくり考察に時間が 取れるようにした。 ② 成果と課題について 成果については,生徒は同じ校舎内でも残留塩素 の濃度にばらつきがあることにたいへん驚き,それ を解明しようとたいへん意欲的に考察していた。ま た,考察する時間が十分に確保されていたので,班 内で意見を出し合いながら,考察を深めることがで きていた。 生徒自身が,残留塩素の濃度のばらつきについて 解釈できたとき,達成感を感じていたようである。 課題については,今回の生徒が見いだした解釈は, まだ推論の段階である。時間に余裕があれば,その 解釈を仮説とし,それを検証する探究活動を行うこ とができれば,更に化学の有用性を実感させること ができるのではないかと思う。 (3) 開発した教材C ア C高等学校での単元の指導計画(第2学年) ○ 単元「有機化合物(酸素を含む有機化合物)」 ○ 単元の目標 酸素を含む有機化合物について観察,実験を通し て探究し,それらの構造や性質,反応性について, 日常生活と関連付けて理解させるとともに,酸素を 含む有機化合物の性質や反応性が,その官能基に特 徴付けられることを見いだし,論理的に考察できる ようにする。 ○ 単元の評価規準 本単元の評価規準について,表13に示す。 ○ - 89 - 単元の評価規準 ・酸素を含む有機化合物の性質や反応に関 する事物・現象に関心をもち,その構造や 性質,反応性について意欲的に探究しよう とする。 ・酸素を含む有機化合物の性質や反応性 が,その官能基に特徴付けられることを見 いだし,論理的に考察する。 ・酸素を含む代表的な官能基について,反 応性と有機化合物相互の関連について,観 察,実験などを行い考察する。 ・酸素を含む有機化合物に関する観察,実 験を行い,その基本的操作及び記録の仕方 を習得する。 ・酸素を含む有機化合物に関する観察,実 験の過程や結果から自らの考えを導き出 し,的確に表現する。 ・酸素を含む有機化合物について理解し, 有機化合物相互の関連性についての知識を 身に付けている。 ・酸素を含む代表的な官能基の性質に対す る知識を身に付けている。 ・酸素を含む有機化合物の性質や反応性に ついて,日常生活に関連付けて理解してい る。 指導計画 次 1 2 表13 時 1 2 ・ 3 3 4 ・ 5 ・ 6 学習内容(時数) アルコールとエーテル(1) アルデヒドとケトン(2) ●実験 アルコールとアルデヒド ●演示実験 ヨードホルム反応 カルボン酸(3) ●実験 カルボン酸の性質 ●探究 発泡入浴剤の成分(フマル 酸) 4 7 ・ 8 エステルと油脂(2) ●実験 酢酸エチルの合成 ※網掛けの部分が開発した教材 開発した教材は,単元名「有機化合物(酸素を含 む有機化合物)」の第3次である。第4時,第5時 にカルボン酸の構造や性質,反応などを学習し,そ れらについて実験を行う。第6時に日常にある物質 を用いた探究活動を行う。それが,発泡入浴剤の成 分(フマル酸)である。 イ 第6時 探究活動について ○ 本時の目標 発泡入浴剤に関する実験を行い,その成分につい て意欲的に探究しようとする。 ○ 準備物 ・ビーカー,ガラス棒,薬包紙,薬さじ ・発泡入浴剤,温水 ・フマル酸,マレイン酸,炭酸水素ナトリウムの 各試薬 ○ 学習の展開 本時の学習の展開を表14に,本時に使用したワー クシートの内容を図8,図9に示す。 表14 学習内容 《ねらいの理解》 本時のねらいの提示 『発泡入浴剤につい て探究しよう。』 《実験・考察1》 発泡入浴剤の反応の 様子を観察する。そ の後,発泡入浴剤の 成分(炭酸水素ナトリ ウム,フマル酸など) を基に,以下の課題 について考察させ る。 「なぜ,発泡入浴剤 は気体が発生するの か。」 《実験・考察2》 「なぜ,発泡入浴剤 には,マレイン酸で はなく,フマル酸が 使 用 さ れ て い る の 確認させる。 か。」この課題につい ・フマル酸とマレインの て考察する。 構造式を確認させる。 ・マレイン酸とフマル酸 の性質の違いを調べさ せ,なぜ,フマル酸が適 しているのかを考察させ る。 《まとめ》 各班で考察した結果 をまとめ,発表す る。 発泡入浴剤の成分(フマル酸) 準備物:ビーカー,ガラス棒,薬包紙,薬さじ, 発泡入浴剤,温水, フマル酸,マレイン酸,炭酸水素ナトリウム 《実験1》 発泡入浴剤をお湯にいれて,反応の様子を観察しよう。 《考察1》 「なぜ,発泡入浴剤をお湯にいれると気体が発生するのか?」 発泡入浴剤の主成分:フマル酸,炭酸水素ナトリウム など 学習の展開 図8 指導上の留意点 探究活動のワークシート1 《探究》 発泡入浴剤には,フマル酸が使用されています。 「なぜ,発泡入浴剤には,マレイン酸ではなく,フマル酸が 使用されているのか?」 ・実験は班ごとに行わせ る。 ・実験の準備,片付けは 班で協力して手早く行わ せる。 ・フマル酸の構造式に注 目させる。 マレイン酸と対比し,それぞれの性質を調べながら,なぜ, フマル酸が適しているのか考察しましょう。 フマル酸の構造式 マレイン酸の構造式 調べた方法と結果 あなたの解釈 今回の実験でわかったこと・疑問に思ったこと・今後に 役立つこと など 感想 ・班内で協議して考える ように指示する。 ・発泡の様子をもう一度 - 90 - 図9 探究活動のワークシート2 ○ フマル酸,マレイン酸について フマル酸とマレイン酸は,いずれも無色の結晶, 分子式C4H 4O4であり,幾何異性体の関係にある。 フマル酸とマレイン酸の構造式について次に示す。 フマル酸とマレイン酸の構造式 図10 マレイン酸は冷水にも溶けやすい,融点は133℃ である。フマル酸は溶解度 0.80g/100g水(30℃), 9.8g/100g水(100℃)であり,水に溶けにくい。融点 は,300~302℃(封管中),約200℃で昇華する。 マレイン酸は,次のように酸解離が進み,分子内 に水素結合をもつ安定したアニオンを形成する。こ のことが,マレイン酸がフマル酸より水に溶けやす い一因と考えられる。 C=C H COOH COOH 発泡入浴剤の反応 《実験・考察2》 「なぜ,発泡入浴剤には,マレイン酸ではなく, フマル酸が使用されているのか。」この課題に対し て,マレイン酸とフマル酸を比較しながら,それぞ れの性質について実験を通して調べ,なぜ,フマル 酸が適しているのかを考察させる。 実験例の一つである約40℃の温水にフマル酸を入 れたときのその溶解の様子について,図11に示す。 マレイン酸は水によく溶けるが,フマル酸は図11の ように,水面とビーカーの底に溶け残りが生じてい る。 +H2O O=C H O H C=O H C=C H +H3O+ O- マレイン酸の酸解離 ○ 本時の実験・考察について 《実験・考察1》 発泡入浴剤の反応の様子を観察する。その反応に ついて,図10に示す。その後,発泡入浴剤の成分 (炭酸水素ナトリウム,フマル酸など)を確認させ, 次の課題について考察させる。 「なぜ,発泡入浴剤は気体が発生するのか。」 図11 ○ フマル酸の水との溶解 生徒の実験・考察について 学習の展開においては,①ねらいの理解(6分), ②実験・考察(38分),③まとめ(6分)であった。生 徒の考察の時間をしっかり確保することができた。 《実験・考察1について》 - 91 - まず,生徒は,発泡入浴剤を温水に入れたときの 反応について,観察させた。入浴時に使用したこと がある生徒は多いが,じっくり観察することはない ようである。その観察を通して,次のことに気付い ていた。 ・固形を保ちながら,溶けていく。 ・発泡入浴剤の表面から発泡している。 など 次に,課題である発泡入浴剤の気体の発生につい て,その理由を発泡入浴剤の成分を基に考察させ た。発生している気体は二酸化炭素であることは, すぐに気付いた。そして,発泡入浴剤中に含まれる 炭酸水素ナトリウムは炭酸塩であること,フマル酸 はカルボン酸であることに気付き,この反応は,弱 酸の遊離であることを見いだした。 《実験・考察2》 まず,フマル酸とマレイン酸の構造式について, 確認させた。それぞれは,幾何異性体の関係で,同 じ分子式であることを説明した。「なぜ,発泡入浴 剤の成分には,マレイン酸ではなく,フマル酸が適 しているのだろうか。」と発問し,探究させた。 生徒は,班内で活発に議論しながら,各試薬を用 いて,フマル酸とマレイン酸の性質を調べた。実験 例としては,炭酸水素ナトリウム水溶液にフマル酸, マレイン酸それぞれを加え,発泡の様子を観察した り,フマル酸とマレイン酸の温水での溶解を確かめ たりしながら,フマル酸とマレイン酸の性質の違い について実験を通して理解していた。実験・考察1 で確かめた発泡入浴剤の観察で気付いたことと関連 付けながら考察し,自らの解釈を導き出した。 生徒の考察について,ワークシートの記述から, 代表的なものを次に示す。 ・フマル酸は二酸化炭素より強い酸なので,弱酸 の遊離により炭酸塩に反応し,二酸化炭素を発生 する。 ・フマル酸は水に溶けにくく,マレイン酸は水に 溶けやすいので,ゆっくり固型を保ちつつ,反応 後に溶けていくフマル酸の方が適している。 生徒の考察の記述 この生徒は,第一の課題に対して,学習したカル ボン酸の性質と発砲入浴剤の成分と関連付けて,説 明できている。第二の課題に対して,フマル酸とマ レイン酸のそれぞれを水に溶解する実験によって, その性質を明らかにし,発砲入浴剤の観察結果と関 連付けて解釈し,説明できている。 ○授業後の生徒の感想 授業後のアンケートにおいて,授業の感想を記述 させた。その一例を,次に示す。 ・身の回りのことをもっと化学と結び付けるのも おもしろそうだと思いました。 ・わからない物質でも,実験を通してその性質を さぐることができると実感した。 生徒の感想 生徒のこのような記述から,化学への関心を高め, 化学の有用性を実感していることが分かる。 ウ 授業後に行った教師へのインタビュー ① 教材開発について 発泡入浴剤に含まれるフマル酸と幾何異性体の関 係にあるマレイン酸は,カルボキシル基の位置の違 いにより,それぞれの性質が異なる。有機化合物の 構造が性質に大きな影響を与えていることを実感さ せたいと考え,フマル酸を含む発泡入浴剤を用いて 教材を開発した。 日常生活との関連については,導入場面で学習内 容と関連している物質を紹介することはこれまでも 多くあったが,この教材は生徒主体の探究活動によ り,日常生活との関連を生徒自身に気付かせること を重視した。 ② 成果と課題について 成果は,生徒自身に実験方法を考えさせ,見通し をもって実験を行うことで,たいへん意欲的に取り 組んでいた。また,班内で意見を出し合いながら, 意欲的に考察できていた。 生徒自身が,フマル酸とマレイン酸の構造の違い とそれぞれの性質を関連付けて考察し,課題につい て解釈できたとき,達成感を感じていたように思え る。 日常生活の化学物質について,「原料は何か」, 「どのようにしてつくるのか」等の質問が多くなり, 日常生活の化学物質について興味・関心を示し,科 学的に思考しようとする意欲が高まったといえる。 課題は,授業において,意識して日常生活の化学 物質に触れながら,化学が日常生活に役立っている ことを実感させる機会を増やしていきたい。 Ⅴ 成果と課題 本研究では,高等学校化学Ⅰの次の三つの単元, A 単元「酸化と還元」 - 92 - B 単元「無機物質(非金属元素の単体と化合物)」 C 単元「有機化合物(酸素を含む有機化合物)」 において,実社会・実生活との関連を図った教材を 開発した。 また,次の視点を基にした日常生活にある物質を 用いた探究活動をその教材に位置付けた。 1 生徒実験を行う。 2 生徒に考察させる。 3 1単位時間で完結する。 授業実践及びその分析から,開発した教材には一 定の有効性があることを明らかにした。 教材の有効性を示す事例として,ワークシートの 考察に関する記述欄に何もかいていない生徒はどの 学校においてもいなかった。その理由として,考察 に十分時間を確保できたことや,実験を通して,自 然に問題意識をもてたことなどが考えられる。ただ し,課題点として,考察を班で行うことで,他の生 徒の意見に流され,自分の考えを深めようとしてい ない生徒も見られた。個人思考と集団思考の軽重を 付けることなどの指導の工夫が必要である。 実社会・実生活との関連を図ることは,化学の学 習全体に広げていく必要がある。今回開発した単元 以外にも,今回の視点を取り入れて教材を開発して いきたい。 計画の作成についても研究を推進していきたい。 本稿を終えるに当たり,懇切丁寧にご指導,ご助 言を与えてくださった広島大学大学院教育学研究科 磯﨑哲夫教授をはじめ,ご協力をいただいた研究協 力員及び研究協力校の皆様に心から感謝申し上げ る。 【注】 (1) 国立教育政策研究所(平成19年):「平成17年度高等学校 教育課程実施状況調査 科・化学Ⅰ)」 教科・科目別分析と改善点(理 p.9 http://www.nier.go.jp/kaihatsu/katei_h17_h/h17_h/ 05001044140004000.pdf (2) 教材について,蛯谷米司・木村仁泰ら(1981)は,蛯谷米 司・木村仁泰編『理科重要用語300の基礎知識』 明治図書 出版p.117において,「素材の教材化には,学習目標と学 習者の実態の考察とともに,具体的な学習内容及び学習活 動が設定されなければならない。」と述べている。また, 山路裕昭(2005)は,野上智行編『理科教育学概論』 大学 教育出版p.127において,「教材には,学習者の学習内 容 , 学 習 対 象 や 学 習 手 段 ,教 師 の 教 授 手 段 等 が 含 ま れ る。」と述べている。 (3) 国立教育政策研究所(平成19年):「平成17年度高等学校 教育課程実施状況調査(Ⅱ質問紙調査集計結果)」を基に稿 者が作成した。 おわりに http://www.nier.go.jp/kaihatsu/katei_h17_h/h17_h/ 平成24年度入学生より実施される新学習指導要領 理科には,新たな科目として「科学と人間生活」が 設定されている。その目標は,「自然と人間生活と のかかわり及び科学技術が人間生活に果たしてきた 役割について,身近な事物・現象に関する観察,実 験などを通して理解させ,科学的な見方や考え方を 養うとともに,科学に対する興味・関心を高め る。」と示されている。また,「化学基礎」の目標に も,「日常生活や社会との関連を図りながら物質と その変化への関心を高め」と示されており,今まで 以上に実社会・実生活との関連を重視することが求 められている。 本研究は,学習内容と実社会・実生活との関連を 教師が伝えるのではなく,生徒による実験,考察を 通して,生徒自身の力で学習内容と実社会・実生活 との関連に気付くことを重視した。ただし,限られ た授業時数の中で,生徒主体の観察,実験,探究活 動などを充実させるためには,一年間又は三年間を 見通した指導の計画性が不可欠である。今後,観察, 実験,探究活動などを計画的に位置付けた年間指導 index.htm (4) 国立教育政策研究所(平成19年):『生きるための知識と 技能3 OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2006年調査国際 結果報告書』 ぎょうせい p.159を基に稿者が作成した。 (5) 国立教育政策研究所(平成19年):前掲書(4) p.162を基 に稿者が作成した。 (6) 独立行政法人科学技術振興機構及び国立教育政策研究所 (平成21年):「平成20年度高等学校理科教員実態調査集計 結果(速報) 」 p.169を基に稿者が作成した。 http://rikashien.jst.go.jp/highschool/ cpse_report_005_2.pdf (7) 独立行政法人科学技術振興機構及び国立教育政策研究所 (平成21年):「平成20年度小学校理科教育実態調査及び中 学校理科教師実態調査に関する報告書(改訂版)」 p.51 http://rikashien.jst.go.jp/investigation/ cpse_report_006.pdf (8) 独立行政法人科学技術振興機構及び国立教育政策研究所 (平成21年):「平成20年度高等学校理科教員実態調査集計 結果(速報) 」 pp.181-189を基に稿者が作成した。 (9) 独立行政法人科学技術振興機構及び国立教育政策研究所 - 93 - (平成21年):「平成20年度高等学校理科教員実態調査集計 結果(速報) 」 p.171を基に稿者が作成した。 識』 久保亮五・長倉三郎・井口洋夫・江沢洋編(1987):『岩波 (10) 国立教育政策研究所(平成19年):前掲書(4) pp.37-40を 基に稿者が作成した。 大日本図書 理化学辞典 理 pp.9-10 学序説』 目のうち,(2)物質の種類と性質においては,無機物質と 施が求められている。探究活動(科学的探究活動)の定義に ―教師とこれから教師になる人のために―』 る研究―観察,実験などを探究的に行う教材の開発 第33号』を参照 されたい。 【引用文献】 国立教育政策研究所(平成19年):『生きるための知識と 技能3 OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2006年調査国際 ぎょうせい p.163 磯﨑哲夫(2009):「改めて考える『なぜ,理科を学ぶの 属小学校 3) 4) 9月号2009 学校教育研究会 No.1106』 広島大学附 p.15 磯﨑哲夫(2009):前掲書 pp.16-17 中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会(平成 18年):「審議経過報告」 p.17 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/ toushin/06021401/all.pdf 5) 下田好行(平成19年):『学習意欲向上のための総合的戦 略に関する研究(平成18年度科学研究費補助金基盤研究 (C)研究成果最終報告書)』 6) 国立教育政策研究所 p.26 中央教育審議会(平成20年):「幼稚園,小学校,中学 校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善 について(答申)」 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/ news/20080117.pdf 7) 文部科学省(平成17年一部補訂):『高等学校学習指導要 領解説理科編・理数編』 大日本図書 p.93 8) 文部科学省(平成17年一部補訂):前掲書 9) 水島裕(2008):「理科と実生活との関わりの指導のポイ p.93 ン ト ― 化 学 領 域 を 中 心 と し て ― 」,『 理 科 の 教 育 Vol.57,No.666』 東洋館出版社 東京教学社 猿田祐嗣(2008):「理科の学力と実生活との関わりについ 理科における科学的な思考力を育成するための教材に関す か』」,『学校教育 北大路書房 八田明夫・丹沢哲郎・土田理・田口哲(2004):『理科教育学 ついては,広島県立教育センター(平成18年):「高等学校 ―」,『広島県立教育センター研究紀要 森敏昭・秋田喜代美監訳 変える―認知心理学のさらなる挑戦』 有機化合物の両方で行う必要があり,少なくとも4回の実 結果報告書』 化学同人 (2002):「転移―学んだことを活用するために」,『授業を 関連する中項目として設定されている。また,三つの大項 2) 岩波書店 米国学術研究推進会議編著 (12) 探究活動は,化学Ⅰにおいて,大項目ごとにそれぞれに 1) 第4版』 丸山和博・速水醇一・大谷晋一・児嶋真平(1980):『有機化 (11) 文部科学省(平成20年):『小学校学習指導要領解説 科編』 明治図書出版 p.11 【参考文献】 蛯谷米司・木村仁泰編(1981):『理科重要用語300の基礎知 - 94 - て」,『理科の教育 Vol.57,No.666』 東洋館出版社