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衛生学公衆衛生学研究室
衛生学公衆衛生学研究室 管理栄養士としてのレベルアップ 三宅島島民を対象とした火山性ガスの人体影響 05HE404 佐渡恵里子 2.三宅島の歴史 1.目的 噴火 噴火活動開始(海底火山噴火) 7月 火山灰が降下 8月 火山ガス放出(二酸化硫黄濃度が基準値を超える) 避難指示発令、4日には全員島外へ避難 9月 三宅島火山ガスに関する検討会設置 2002年 ある程度のリスク受容が許されれば環境基準とは異なった対応が 可能と判断 三宅島火山活動検討委員会が帰島の検討も可能と判断 2004年 三宅村安全確保対策専門会議を設置 高濃度対策や高感受性者対策についての検討 避難指示解除 2005年 総人口:2,903人(平成19年3月現在) 1983年 2000年に始まった三宅島の噴火では大量の泥流の発生と二酸化 硫黄を大量に含む火山ガスの放出が生じた。 それは避難指示が解除された現在でも続き、島民の方々は二酸 化硫黄への曝露というリスクの中で生活をしている。そのため 火山ガスの曝露と健康影響に関する研究として ・急性曝露と健康影響に関するアンケート調査 ・10年間における長期曝露影響調査に関するコホート調査 を行い 2000年6月 火山ガスに起因する健康状態の変化と二酸化硫黄曝露濃度の関 係を明らかに 二酸化硫黄に対する防災体制の確立(注意報・警報の濃度基準 変更など) を目的とした調査である。調査は11月約一週間三宅島で行なった。 昨年度検診風景 6.火山ガス内の主な有害成分 二酸化硫黄 低濃度でも呼吸器・咽頭などの粘膜を刺激・主に工 場、車からの排気に含まれる。喘息や心臓病など の疾患がある人(高感受性者)では低濃度でも発 作を誘発・増悪させる。 5.H18/8~10月までの二酸化硫黄濃度(ppm) 3.二酸化硫黄排出量推移 神着・伊豆地区 伊ヶ谷地区 平成17年 0.01, 平成18年 0.02, 平成19年 0.004 平成17年 0.01 平成18年 0.04 ※季節内変動有り 平成19年 0.02 気象庁HPより 約1000~2000トン 硫化水素→高濃度で人体に影響。卵の腐った臭 い 二酸化炭素→高濃度になると酸素欠乏を起こす ・東京都の年間排出量は約6000t・桜島では700~900t/日 ・ガスの放出は当分持続すると考えられる。 ・局所的に高い二酸化硫黄濃度が観測 →強風によりガスが拡散せずに山麓へ 7.二酸化硫黄濃度の基準値 ・環境基準値(維持されることが望ましい基準) 【短期的評価】 1時間値が0.10ppm以下であり、かつ、1日平均値が0.04ppm以下である こと。 【長期的評価】 1日平均値の2%除外値が0.04ppm以下であり、かつ、1日平均値が0.04p pmを越えた日が2日以上連続しないこと。 ・長期的影響の濃度の目安 年平均値0.04ppm、1時間値0.1ppmを超えた回数が10%以下 →せきやたんが出やすくなるなど、慢性影響を訴える人が2~3%増えると思わ れる濃度(現在の三宅島とほぼ同じ状況) 4.現在の防災体制 ・島内14ヶ所の二酸化硫黄濃度データをリアルタイムで収集 →so2濃度5分値に応じて島内に14箇所ある回転灯つきスピーカーで警報 の発令・解除が行なわれる ・立ち入り区域の設置 ・防災マップの作成 ・島内でのガスマスク常時携帯 ・気象庁による火山ガス情報 ・クリーンハウス(脱硫装置の設置)を配置 ・避難行動のシステム化 5ppm超過 2-5ppm 0.6-2ppm 0.2-0.6ppm 阿古地区 平成17年 0.03~0.06 平成18年 0.07~0.08 平成19年 0.06~0.08 坪田地区 平成17年 0.04~0.09 平成18年 0.03~0.03 平成19年 0.005~0.02 ・アメリカの許容濃度 8時間平均値2ppmから15分間曝露濃度の平均値として0.25ppmに変更 →根拠としては健康人が15分間の軽い運動を含む2時間の曝露で呼吸機能が 低下したことから 日本の許容濃度2ppmは基準が高い? 8.主観的にみる健康影響 問診・アンケート調査 慢性気管支炎症状が増加 全受診者→2%増加 普通感受性者→1.3%増加 2% % 喫煙者では症状の訴え率が明らかに増加 →喫煙と火山ガスとの相互作用によるリスクの 増加が考えられる。 40% 43.4 26.6 19年 神着・伊豆地区 35% 38.1 32.3 帰島前 →長期曝露による影響と思われるため、 今後も注目して追跡観察が必要 *慢性気管支炎 せき・たんが3ヶ月以上続くこと 10.喫煙との関連 9.自覚症状(地区別) 全受診者 7 6 5 4 3 2 1 0 阿古地区 30% 坪田地区 25% 伊ヶ谷地区 20% 15% 7 6 5 4 3 2 1 0 60 10% 普通感受性者 「せき」 「のど」 「目」 「皮ふ」 「カゼ」回数 30 20 1.3% 帰島前 刺激症状が増えたと答えた小児 19年 11.客観的にみる健康影響 12.小児への呼吸機能検査 呼吸機能検査 FVC(努力肺活量)‥肺の最大吸気位から一気にできるだ け速く、最大の呼気位まで呼出することにより得られる。 肺の容積量。気道閉塞の有無を調べ、喘息や肺気種の 場合は値が通常より低くなる。 %FVC (努力肺活量) FEV(一秒率) ‥努力肺活量の何%を1秒間に呼出するこ とができたかを表す。気管支の炎症がある場合は吐くの が辛くなるので、値が低くなる。 成人では帰島前に比べ呼吸機能の低下は見られなかった。 1 17年度 18年度 3 19年度 -4 -6 50.0 40 22.0 32.9 39.2 30 20 10 24.6 26.4 0 男性非 喫煙者 男性喫 煙者 13.結果・考察 高感受性者(喘息などの疾患有り) 2 たん 50 10 15.4 平成19年 14.9 帰島前 0 男 性 非 喫 煙 者 男 性 喫 煙 者 普通感受性者(喘息などは無い) 0 -2 60 40 0% 火山ガスが原因と思う健康被害 の経験があると答えた人 せき 50 5% 小児の高感受性者の呼吸機能への影響を確認 自覚症状が前年に比べ増加 慢性気管支炎症状の増加 喫煙による慢性気管支炎のリスクの増加 -8 1.0 FEV1.0% (一秒率) 0.0 -1.0 -2.0 -3.0 1 17年度 18年度 2 3 19年度 火山ガスによる短期的・長期的健康リスクはあると認められた。 これからも継続的な経過観察が必要 →小児高感受性者には小児呼吸器専門医による健康 診断・一酸化炭素濃度測定を実施予定