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平成27年3月15日 医療安全の視点からの患者の自殺予防 自殺対策における医療機関と 行政の連携の可能性 京都市の取組について 京都市こころの健康増進センター 波床将材 自殺の現状(概要) 全国では平成10年以後平成23年までの14年間,毎年3万人以 上が自殺:14年間の合計約45万人(1日88人、1時間3.7人) 平成24年 27,766人,平成25年 27,276人(暫定値) 京都府:平成24年 465人(全国で自殺死亡率最低値) 平成25年 518人 (以上警察統計) 京都市:毎年約300人が自殺で亡くなる 平成24年 258人(人口動態統計) 以前は中高年男性の増加,最近では若い世代が高止まり 自殺未遂者は自殺者の少なくとも10倍存在するとの報告 自殺死亡率:世界で第6位(男性7位,女性2位) 主要先進7カ国(G7)では最も高い (平成22年版自殺対策白書) 一人の自殺は少なくとも周囲の6人に深刻な影響を与える 自殺は大きな,しかし予防可能な公衆衛生上の問題である (WHO) 自殺対策は「うつ病対策」だった 「自殺対策」関連年表 昭和46年 いのちの電話(東京) 昭和52年 日本いのちの電話連盟 昭和53年 自殺防止センター(大阪) 平成10年 東京自殺防止センター 平成10年 自殺者数が3万人を超える 平成12年 「健康日本21」:休養・こころの健康づくり 平成12年 事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」 平成12年 「自殺って言えない」(自死遺児の文集)出版 平成13年 職場における自殺の予防と対応 平成14年 自殺防止対策有識者会議「自殺予防に向けての提言」 平成16年 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の 職域を中心とした(中高 手引き 平成17年 参議院厚生労働委員会「自殺問題に関する参考人質 年男性)うつ病対策 疑」 平成17年 シンポジウム「自殺を防ぐために今私たちにできることと は」 「うつ病対策」から社会的取組へ 「自殺対策」関連年表 平成17年 自殺対策関係省庁連絡会議「自殺予防に向けての政府 の総合的な対策について」 平成17年 自殺予防総合対策センター(国立精神・神経センター) 平成18年 自殺防止対策を考える議員有志の会 平成18年 自殺対策の法制化を求める要望書,自殺対策の法制化 を求める3万人署名運動(10万余の署名提出) 平成18年 自殺対策基本法(平成18年10月28日施行) 平成18年 自殺総合対策会議 「うつ病対策=医療の問題」から 平成19年 自殺総合対策大綱 「総合的な対策」へ:医療と他機 平成20年 自殺対策加速化プラン 関との連携の必要性 平成21年 地域自殺対策緊急強化基金 平成22年 いのちを守る自殺対策緊急プラン 平成23年 官民が協働して自殺対策を一層推進するための特命 チーム 平成24年 自殺総合対策大綱見直し 「自殺対策基本法」より (目的) 第一条 この法律は、近年、我が国において自殺による死亡者数が高い 水準で推移していることにかんがみ、自殺対策に関し、基本理念を定め、及び国、 地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、自殺対策の基本となる事項を定 めること等により、自殺対策を総合的に推進して、自殺の防止を図り、あわせて自 殺者の親族等に対する支援の充実を図り、もって国民が健康で生きがいを持って 暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。 (基本理念) 第二条 自殺対策は、自殺が個人的な問題としてのみとらえられる べきものではなく、その背景に様々な社会的な要因があることを踏まえ、社会的な 取組として実施されなければならない。 2 自殺対策は、自殺が多様かつ複合的な原因及び背景を有するものであること を踏まえ、単に精神保健的観点からのみならず、自殺の実態に即して実施される ようにしなければならない。 3 自殺対策は、自殺の事前予防、自殺発生の危機への対応及び自殺が発生し た後又は自殺が未遂に終わった後の事後対応の各段階に応じた効果的な施策と して実施されなければならない。 4 自殺対策は、国、地方公共団体、医療機関、事業主、学校、自殺の防止等に 関する活動を行う民間の団体その他の関係する者の相互の密接な連携の下に実 施されなければならない。 「自殺対策基本法」より (国の責務) 第三条 国は、前条の基本理念(次条において「基本理念」という。) にのっとり、自殺対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。 (地方公共団体の責務) 第四条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、自殺対 策について、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施 する責務を有する。 (事業主の責務) 第五条 事業主は、国及び地方公共団体が実施する自殺対策 に協力するとともに、その雇用する労働者の心の健康の保持を図るため必要な措 置を講ずるよう努めるものとする。 (国民の責務) 第六条 国民は、自殺対策の重要性に対する関心と理解を深め るよう努めるものとする。 自殺対策に取組むにあたって,自殺を「個人の問題」と 考えたり,「精神医療対策」という狭い範囲で捉えたりす るのではなく,社会全体にかかわる課題として,国や地 方自治体,企業などを含む国民すべてが自らの問題と して考え,それぞれができることをしていこう… という基本理念 近代的な「自殺論」の始まり デュルケム Emile Durkheim(仏,1858~1917) 「自殺論」(1897)・・・社会学の考え方を基本として 自殺という現象を整理,考察したもの 「社会的人間であることが,まさに彼らの生を価値 あるものにしていた」(デュルケム「自殺論」) 社会的・総合的な取組の推進は 当時のフランスでは自殺が急増(人口10万人当た りの自殺率・・・1841:8.2→1860:11.9/45%↑) 自殺対策の原点回帰 ヨーロッパの社会構造の変化:機械化,都市化,産 業構造の変化,資本主義化 地域による自殺率の差異(プロテスタント地域はカ トリック地域よりも自殺率が高い)等の統計資料の 活用 ⇒自殺は個人ではなく社会の問題として考えるべきである NPO法人ライフリンク 自殺実態白書2008より 職場環境 の変化 「1000人実態調査」から見えてきた 自殺の危機経路 DV 犯罪被害 アルコール 問題 仕事の 悩み DV 性暴力 身体疾患 事業不振 被虐待 自殺の背景には複数の要因が関連をもって起こっ 職場の 人間関係 過労 ている → むしろ,かかわるきっかけは多いはず いじめ どこかで相談したり,介入したりすることが,直接 失恋 関係が無いように見えても,自殺を防ぐことにつ 進路に ながっている失業 子育て 関する 悩み 負債 の悩み 家族の 死亡 精神科受診へつなぐことだけでなく, 非正規 借金の 取立苦 雇用 生活苦 病苦医療から他の機関へつなぐことも重要 うつ病 ひきこもり 介護・ 看病 疲れ 家族の 不和 精神疾患 自殺 高校中退 京都市の自殺の現状 京都市の自殺の現状 京都市の特徴と対策 (厚生労働省 人口動態統計) 平成10年以降,年間300人が自殺で亡くなる状況 近年全般的には減少傾向だが平成26年は微増 自殺死亡率(人口10万対) (平成24年以降250~270人程度で推移) 28 全国と比較すると,全体的に若年層・学生の自殺が多い傾向 26 がある 23.4 24 22.9 地域ごとの差がある 22 21.0 (東山→高齢者,南→中年男性,左京→学生・女性…) 22.5 20 京都市の特徴を生かす対策 全国 20.4 京都市 18 大学のまち,寺社のまち 17.5 ⇒若い世代への働きかけ,大学や寺社との連携 16 精神科診療所,精神科病院が多く存在 14 平 平 平 平 平 平 平 平 平 平 平 平 平 平 平 平 平 平 ⇒医療機関で取組める自殺対策 成 成 成 成 成 成 成 成 成 成 成 成 成 成 成 成 成 成 7 8 9 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 年 年 年 0内科等のかかりつけ医と精神科との連携 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 京都市の取組 京都市自殺総合対策推進計画 きょう いのち ほっとプラン(平成22年3月) (26年3月中間見直し) 自殺総合対策連絡会 市民委員,PTA,保健協議会,老人クラブ,市社協,小学校 長会,中学校長会,私立中高校連合会,商工会議所,府医 師会,府看護協会,京都弁護士会,京都府臨床心理士会, 京都司法書士会,いのちの電話,こころのカフェきょうと,京 都自死・自殺相談センター,NHK,労働局,産業保健推進セ ンター,府警,教育委員会,保健センター長会 自殺総合対策庁内推進会議 総合企画局,文化市民局,産業観光局,保健福祉局,消防 局,交通局,教育委員会 京都市の取組 こころの健康増進センターがかかわる取組 一次予防 事前予防 prevention 府民・市民公開シンポジウム こころの健康講座,アルコール関連問題講演会等の開催 リーフレット,啓発パネル等の作成 市民しんぶん 二次予防 介入 intervention 相談体制の充実(関係機関の研修) かかりつけ医・産業医うつ病対応研修会 GPネットワーク交流会(地区医師会) くらしとこころの総合相談会 京都府自殺ストップセンターとの連携 医療機関と連携したハイリスク者支援 三次予防 事後対応 postvention 自死遺族ケア 自死遺族の会支援 フリースペース:こころのカフェきょうと 自死遺族・自殺予防こころの電話(きょう・こころ・ほっとでんわ) 京都市の取組から 若い世代への対策 医療との連携 自死遺族支援 精神疾患,精神医療に関する知識の普及啓発 総合相談会 京都市の取組 くらしとこころの総合相談会について 総合相談会開催までの経過 消費生活総合センター(当時は市民総合相談課)との 協力による相談会開催(平成20~23年度) 多重債務の相談窓口開設日に,当センターの相談員が出張 して精神保健相談 過剰貸付けの禁止など,貸金業法が改正され,多重債務相 談自体が減少傾向 精神保健相談への申込みの減少 場の設定や広報のしかたなどで工夫の余地 ハローワークでの「こころの健康相談会」(平成22~23 年度) 毎回3~4名程度の相談 京都市の取組 くらしとこころの総合相談会について 「総合相談会」開催へ 京都市自殺総合対策連絡 会(当時「京都市自殺総合 対策連絡協議会」)のワー キンググループで議論 様々な問題を同時に相談で きる場を作りたい 平成24年3月に2回の試行 平成24年6月から本格実施 弁護士,僧侶,心理士,保健師, 労働問題,教育,自死遺族サ ポートチーム(7ブース) 内閣府の取組事例集にも掲載 京都市の取組 くらしとこころの総合相談会について 総合相談会の特徴:僧侶ブースについて 清水新二先生(現奈良女子大学名誉教授)の示唆 「心=スピリチュアルな問題」については,なかなか行政や医 療の相談では取り上げにくい 一方で,親族の自死や突然の死に遭遇した場合,このような 問題に対応することは,遺族がその後の生活を送るために必 要なことではないか 京都で活動されている自死遺族等の支援を行っている宗教家 の団体に依頼し,特定の宗派の考え方を説くのではなく,死者 をどう悼むかといったような心の問題を中心に傾聴,相談 開始したころにいくつかの宗教関連業界紙の取材 実際,相談会の予約状況では,弁護士,心理士,保健師と並 んで,早々に予約が入る 京都市の取組 医療機関と連携した自殺対策について 医療安全の視点からのハイリスク者支援 「自殺未遂者への支援」として,平成21年度に救急病 院との連携を企画→最初に病院職員研修 講演「自殺未遂者への対応の基本」(自殺予防総合対策セン ター 松本先生) 救急部の医師,精神科医を交えたミニシンポジウム 看護師を中心に100名以上の職員 フロアからの質問や意見でも個人的な経験を含めて熱心に 議論されるなど,充実した研修 次に病院の看護部と協同企画 まず「未遂者やその家族に相談先を知らせるリーフレットを 作ろう」 京都市の取組 医療機関と連携した自殺対策について 医療安全の視点からのハイリスク者支援 リーフレットの作成過程で… 医療現場でも自殺に関するタブーや偏見があり,医療機関と の連携には別の切り口をもって取組まないと,うまくいかない のではないか 京大病院医療安全室から「医療安全講習の一環として 自殺問題について話してほしい」との依頼(平成25年) 京都市の取組 医療機関と連携した自殺対策について 医療安全の視点からのハイリスク者支援 精神科以外の科でも患者やその家族の自殺があり,こ れは医療上の「事故」として深刻なものである ある人の自殺はご遺族にとってだけでなく,それまで関 わってきた病院スタッフにも大きなショックを与える 医療安全という視点から自殺の問題を考えてみたい 医療安全の院内研修会で自殺対策の基礎的な内容に ついて講演(平成25年6月) 100名以上の職員が参加 医療安全室と協力,継続して自殺対策に取組むことに 一般病院・総合病院の自殺 横浜自殺予防研究センター資料 身体疾患と自殺のリスク 診断 一般人口と比較した自殺のリスク(倍率) 慢性腎不全 人工透析 14.5 腎移植 3.8 頭頸部 11.4 その他の部位 1.8 癌 HIV陽性,AIDS 6.6 SLE 4.3 脊髄損傷 3.8 ハンチントン病 2.9 多発性硬化症 2.4 消化性潰瘍 2.1 Harris,E.C.: Suicide as an outcome for medical disorders. Medicine, 73(6),281-296, 1994/医師会編「自殺予防マニュアル」より がん診断と自殺のリスク Psycho-Oncology 2014年4月より 【国立がん研究センター予防研究グループ ホームページより】 京都市の取組 医療機関と連携した自殺対策について 医療安全の視点からのハイリスク者支援 実際,がんや慢性の身体疾患を抱える人の自殺は多 いようである→自殺未遂者支援とともに医療機関で取 組む課題としては重要 「自殺未遂者支援」に取組む自治体はいくつかある が,もっと広く上記のようなハイリスク者を対象として, 自治体も体制づくりに協力しようという計画 自殺未遂者対応:救急外来受診,短期入院の「一見さ ん」が多くなりがち まず,日常的な治療関係ができている患者への関わり 方を考える方が,医療者としても取組みやすいはず 京都市の取組 医療機関と連携した自殺対策について 医療安全の視点からのハイリスク者支援 入院や定期的に通院する「関係の深い患者」を中心と した対策を 日常診療の中で自殺リスクをとらえて対応することが 習慣化されれば,救急等での対応も行いやすくなると 考えられる 医療安全や事故対策という視点であれば,病院管理 者も自殺対策に取組むことができる 医師や看護師だけの問題ではなく,病院管理者を含め た医療機関全体で取組む課題 医療機関内だけではなく,外部の支援機関等との連携 他の地域での取組 全国的にみた「医療機関と連携した自殺対策」 四日市市の「アルコールと うつと自殺」対策 アルコール問題に関して一般科 医・精神科医・保健所・福祉関係者 等が,啓発や事例検討を通じた連 携強化に取り組んだ 十数年活動してきた「三重県アル コール疾患研究会」の存在,ちょう ど四日市市が独自に保健所を持つ ようになったこと,医師会が高齢者 問題を中心に福祉との連携を進め ていたことなどが背景にある 救急病院との連携による 自殺未遂者支援 救急外来に搬送された自殺未遂者 に対して,必要な相談先を示し,希 望する人については,行政機関や コーディネーターなどが相談支援に つなぐ 岩手県,山梨県,大津市,堺市等 警察,消防等と連携している地域も ある 【資料】 平成23年版 自殺対策白書 平成26年版 地域における自殺対策取組事例集 NPO法人ライフリンク 自殺実態白書2008より サポーター(社会の雰囲気づ くり=普及啓発)も重要!! 自殺対策は連携・ネットワーク チームとして取組むべき課題である 当センターFacebookのご紹介 ご清聴ありがとうございます