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事業原簿 (公開版) - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
第1回「植物機能改変技術実用化開発」 (中間評価)分科会 資料 5-1 植物機能改変技術実用化開発 植物利用エネルギー使用合理化工業原料生産技術の研究開発 (Development of Transgenic Plants for Production of Industrial Materials) 事業原簿 (公開版) 担当部 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 バイオテクノロジー・医療技術開発部 Rev1 Rev2 Rev3 Rev4 Rev5 Rev6 Rev7 平成12年4月3日 平成13年2月6日 平成13年4月2日 平成13年9月28日 平成13年11月13日 平成13年12月17日 平成16年8月5日 植物機能改変技術実用化開発 植物利用エネルギー使用合理化工業原料生産技術の研究開発 (Development of Transgenic Plants for Production of Industrial Materials) 作成 平成 16 年 8 月 5 日 担当原課 : 経済産業省 製造産業局 生物化学産業課 実施者名 : 新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO) 委託先 : バイオテクノロジー開発技術研究組合 (参加企業) 出光興産株式会社 王子製紙株式会社 サントリー株式会社 大成建設株式会社 株式会社東洋紡総合研究所 株式会社豊田中央研究所 日立造船株式会社 三井化学株式会社 (共同研究先) 奈良先端科学技術大学院大学他 財団法人地球環境産業技術研究機構 ― 目 次 ― 概要 1.プロジェクト基本計画 2.プロジェクト用語集 I. 事業の位置付け・必要性について 1.NEDO の関与の必要性・制度への適合性 1 1.1NEDO が関与することの意義 1.2 実施の効果(費用対効果) 2.事業の背景・目的・位置づけ 3 2.1 事業の背景・目的・意義 2.2 事業の位置づけ II. 研究開発マネジメントについて 1.事業の目標 7 1.1 目標 1.2 目標設定理由 2.事業の計画内容 7 2.1 研究開発の内容 2.2 研究開発の実施体制 2.3 研究の運営管理 3.情勢変化への対応 64 4.中間評価結果への対応 68 5.評価に関する事項 82 III.研究開発成果について III.研究開発成果について 1.事業全体の成果 83 2.研究開発毎の成果(公開用) 84 IV.実用化、事業化の見通しについて IV.実用化、事業化の見通しについて 1.実用化、事業化の見通し 154 参考資料 1.論文、特許等リスト 2.プロジェクト原簿 3.研究開発体制図 4.研究開発及び年度別予算推移 5.課題毎の予算配分 6.研究実施場所 7.研究開発に利用した主な施設・装置リスト 概 要 作成日 平成16 年9 月16 日 制度・施策(プログラム) ニューサンシャイン計画/生物機能活用型循環産業システム創造プログラム 名 植物利用エネルギー使用合理化工業原料生産技 プロジェクト P99025 事業(プロジェクト)名 術の研究開発/植物機能改変実用化開発 番号 P03043 担当推進部/担当者 バイオテクノロジー・医療技術開発部/大場 透・多田雄一 植物の物質生産、耐環境性等に係わる遺伝子を解明し、他の生物の遺伝子等も利用して遺伝子組換え 0. 事業の概要 等により工業原料を効率的に生産する植物を創成する技術を開発する。 従来の石油を原料とする化学プロセスから植物の生産物を原料とする製造プロセスへと産業構造の変換を図 Ⅰ.事業の位置付け・必要 り、省資源、CO2削減等、循環型社会を目指す技術開発である。しかし、植物の遺伝子組換え技術は 性について まだ充分に発展しておらず、産業界の自発的研究のみでは間に合わない。そのためNEDOが主導し て大学の基盤技術も利用する形で早急に取り組む必要がある。 Ⅱ.研究開発マネジメントについて 工業的に利用可能な工業原料生産のための植物を創成する技術を開発する。そのために植物に効率的 事業の目標 に工業原料生産性、耐環境ストレス性等を付与する遺伝組換え技術、および組換え植物創成技術を開 発する。 H11fy H12fy H13fy H14fy H15fy H16fy H17fy 主な実施事項 (1)工業原料生産のための 植物代謝利用技術の開発 (2)植物の環境ストレス耐 事業の計画内容 性向上技術の開発 (3)植物への多重遺伝子導 入技術及び発現制御技術 の開発 (4)総合調査研究 H11fy H12fy H13fy H14fy H15fy H16fy 総額 会計・勘定 開発予算 一般会計 (単位:百万円) 特別会計(エネ高) 446 492 459 434 356 150 (2,202) 総予算額 446 492 459 434 356 150 (2,202) 製造産業局生物化学産業課 経産省担当原課 プロジェクトリーダー 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス科 新名惇彦教授 バイオテクノロジー開発技術研究組合(参加8社) (出光興産㈱、王子製紙㈱、サントリー㈱、大成建設㈱、㈱東洋紡総合研究 所、㈱豊田中央研究、日立造船㈱、 三井化学㈱) 京都大学、大阪大学、近畿大学、国立岡崎共同研究機構、(財)地球環境産業 再委託先 技術研究機構 奈良先端科学技術大学院大学、東京大学、東北大学、三重大学、大阪大学、 共同研究先 石川県農業短期大学、九州大学 1.省ネルギー型工業原料生産に適した多年生工業原料植物の創成(王子製紙) モデル植物由来プロモーターがユーカリで機能しないことが明らかになったこ とから、モデル植物で有用性が検証された遺伝子に対応するユーカリ遺伝子のプ ロモーターを単離し、ユーカリ独特の遺伝子発現制御システムを開発する方針に 変更した。遺伝子組換え植物の実用化には安全性評価とパブリックアクセプタン スが必要となるが、遺伝子組換えユーカリは環境に対する影響評価が難しいこと から、遺伝子拡散を防止する措置として、地上部を野生型に接ぎ木した。また、 遺伝子組換えユーカリの実用化は海外で行うことから、ベトナムの研究機関と形 質転換の母材料となるユーカリ樹種のクローン増殖と適応性試験を実施した。 2.高度不飽和脂肪酸生産大豆の研究開発(株式会社サントリー) 当初計画になかったが、自前のダイズ形質転換系開発を確立した。ダイズの形 委託先 開発体制 情勢変化への対 応 概要1 質転換は困難であったが、東北大学、東京大学と共同研究を実施し、他の国内外 研究者とも交流・情報交換を行ってきた結果、品種 Jack の安定した形質転換系を 確立して脂肪酸合成遺伝子を導入し、アラキドン酸を蓄積させることができた。 3.耐塩性植物でのハイブリッドファイバーの生産技術開発(大成建設) 3.耐塩性植物でのハイブリッドファイバーの生産技術開発(大成建設) 当初計画では、ハイブリッドファイバーの実用化対象植物としてシロザなどの 強度耐塩性植物を選定した。しかし、中間評価でシロザは一年生草本であり、樹 木が適当ではないかとの指摘を受けた。そこで、タマリクスの遺伝子導入系確立 に注力するとともにハイブリッドファイバー適性に関して検討した。その結果、 タマリクスを用いて目標を達成した。また、多重遺伝子発現ベクターの導入で導 入遺伝子の後代での欠落や gene silencing が見出されたため、モデル植物のイネ を用いてプロモーターの改良、ベクターの再構築などを行った。また、多数の組 み換え体の作出と選抜により安定発現個体を数個体得てファイバー材料を確保し た。PHB を植物繊維素に混合するという予備的な圧縮ボード特性評価系を独自に 確立した。この方法で最終的に組換え植物体を用いたハイブリッドファイバーが、 PHB を混合した場合と同様の特性変化を示すことが確認できた。 4.イソプレノイド・天然ゴム生産植物の創成(日立造船) 特に特筆すべき情勢変化はない。 5.タンパク質組織特異的高生産植物の研究開発(三井化学) 中間評価において明瞭な定量的な目標が立てられていないとの指摘を受けたこ とから、実用場面を想定して、 「茎葉部1グラムあたり5ユニットのフィターゼ生 産」を目標とした。その値を達成すべく遺伝子導入用コンストラクトを再検討し た。また、当社で蓄積されたイネに関する技術的知見と豊富なツールを有効活用 するためにイネにおいてタンパク質組織特異的高生産技術を開発する一方、実用 植物として有望なサツマイモについても効率の良い形質転換法の開発及び外来フ ィターゼの生産を目指すことにした。さらに、フィターゼ高生産植物の実用性を 検討するために、当該植物のサイレージ化を実施し、サイレージ過程におけるフ ィターゼの安定性を評価した。 6.病害抵抗性植物の分子育種(豊田中央研究所 6.病害抵抗性植物の分子育種(豊田中央研究所) 豊田中央研究所) 高性能の抗菌ペプチド開発では、ヒト由来の抗菌ペプチドの安全性が高いと考 え、ヒト由来 CAP を構造改変前の出発物質として選択した。その後、トヨタ自動 車のサツマイモ事業の事業展開地域がイスラム圏のインドネシアに決定し、ヒト 由来のものでは宗教上の制約を受ける可能性があることから、動物由来の CAP に ついて、宗教上の制約を受けにくいものを出発物質に加えて抗菌性能評価を行っ た。この結果、ウサギ由来のものがヒト由来のものに比べ性能上も優れているこ とを見出した。本抗菌ペプチドに構造改変を加えて機能改良を図り、この遺伝子 をサツマイモに導入して、高い病害抵抗性を示す新品種の作出に成功した。 7.ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を利用した環境ストレス抵抗性改良とその利 用(東洋紡総合研究所) 特に情勢変化への対応は無し。 8.多重遺伝子導入技術および発現制御技術の開発(奈良先端大・集中研) ・中間評価における「多重遺伝子を対象植物にきちんと導入できることを早急に 示すことが重要である。遺伝子組換え植物の安全性評価上極めて大きな問題であ る」、 「応用研究課題で要求の強い成果を中心に、集中的に遂行される必要がある」 との意見に対応して、平成 13 年度末までに 10 DNA 断片の連結が可能な技術を開 発した。さらに平成 14 年度には複数の連結 DNA のバイナリーベクターへの導入系 を開発した。これら成果により、王子製紙と共同し、ストレス抵抗性遺伝子群の 多重連結を行った。 ・プロモーターカタログは、作業分科会や個別の機会を通じてその都度、最新情 報を各応用研究グループに提供し、王子製紙などのグループへは実際にプロモー ターを提供して応用研究を進めた。葉、根特異的発現プロモーターを各 50 個の発 現特性を明らかにし、実用植物に応用できるようにデータを整備した。 概要2 Ⅲ.研究開発成果に ついて (1)事業全体の成果 本事業は工業原料を生産できる植物の開発を目的に、植物代謝利用技術、環境 ストレス耐性向上技術、多重遺伝子導入技術及び発現制御技術の 3 分野の開発研 究を並列で行ってきた。 特筆すべき具体的成果は、ユーカリ事業品種への遺伝子導入技術の確立と酸性 土壌耐性固体の作出、超長鎖不飽和脂肪酸をダイズなどの異種植物で数%蓄積させ た成果、イネとタマリスクで発現させたハイブリッドファイバーの有用性確認、 複雑なポリイソプレンの生合成中間体の実植物での同定と解析、分子進化手法に よる抗カビ活性のあるタンパク質の創成、ポリアミン代謝工学による複合ストレ ス耐性サツマイモの創出、葉緑体工学によるタバコ葉の可溶性タンパク質の 38% を占める外来タンパク質の蓄積、固相法による迅速・簡便な遺伝子多重連結技術 の開発、シロイヌナズナの発現遺伝子の約半分を固定したマイクロアレイ、など がある。 研究体制面では、バイオテクノロジー開発技術研究組合に参加企業が参集し、 プロジェクトリーダーのもとに有機的な研究体制を組んだ結果、当初の予想以上 の成果を上げることに繋がったと思われる。本研究プロジェクトを契機に、わが 国において、植物代謝工学が認知され、また持続可能な社会・地球再生に植物バ イオテクノロジーの重要性が認識され、社会的インパクトも与えたことも総合的 な成果である。 (2)個別テーマの成果 1.省エネルギー型工業原料生産に適した多年生工業原料植物の創成(王子製紙) ユーカリの不良環境での生産性を向上させるため、多重遺伝子導入によるスト レス耐性品種の開発を行った。事業用のユーカリ 5 樹種に対して効率的な形質転 換技術の開発した。樹幹あるいは根特異的プロモーター候補の単離解析を行った。 これらの技術をもとに酸性土壌中の難溶性リン酸を可溶化する遺伝子群および光 酸化ストレスの軽減に関与する活性酸素消去遺伝子をユーカリに導入した。クエ ン酸合成酵素遺伝子の過剰発現により、クエン酸の放出量が増加し、リン吸収の 向上と根量増加による生育改善効果が確認できた。また、活性酸素消去に関わる カタラーゼ遺伝子を過剰発現するユーカリで光酸化ストレス耐性の強化を確認し た。さらに、組換え遺伝子の拡散防止のため、地下部だけを形質転換体とする接 ぎ木個体の難溶性リン酸の可溶化能力の解析と安全性評価を継続している。 2.高度不飽和脂肪酸生産大豆の研究開発( 2.高度不飽和脂肪酸生産大豆の研究開発(サントリー) サントリー) アラキドン酸を生産する糸状菌 Mortierella alpina 由来のΔ5、Δ6 不飽和化 酵素、鎖長延長酵素をダイズで発現させて高度不飽和脂肪酸を種子に蓄積させる ことを目的とした。モデルとしてタバコ、アズキ、ミヤコグサにΔ6 不飽和化酵 素遺伝子を導入することにより、それぞれの葉でγ-リノレン酸を生産させること に成功した。また、タバコではΔ6 不飽和化酵素と鎖長延長酵素の 2 遺伝子の同 時発現により、ジホモγ-リノレン酸の生産を確認した。同一ベクターに挿入した 3 種の酵素遺伝子の発現カセットをダイズ未成熟胚に導入して得られた系統では、 2世代目までアラキドン酸の生合成を確認できた。本研究により、ダイズの脂肪 酸代謝経路を改変し、高度不飽和脂肪酸を生産できることが示された。 3.耐塩性植物でのハイブリッドファイバーの生産技術開発(大成建設) 耐塩性植物のシロザとタマリクスで多芽体再分化系を確立し、アグロバクテリ ウム法による遺伝子導入系を開発した。Ralstonia eutropha 由来の PHB 合成遺伝 子 phbB と phbC を多重化してイネとタマリクスに導入して乾燥重量あたり 0.1%の PHB 蓄積量を蓄積させた。PHB を蓄積したイネとタマリクスの組換え体のボードで 特性を評価して、既存の工業製品 WPC に類似の特性変化を確認した。このように、 PHB 合成遺伝子を用いて塩性植物でのハイブリッドファイバー化(生物的 WPC 化) という当初目標をほぼ達成できた。 4.イソプレノイド・天然ゴム工業原料植物の創成( 4.イソプレノイド・天然ゴム工業原料植物の創成(日立造船) 日立造船) トチュウ、ペリプロカに関して高度な分析技術を開発し、それぞれの植物に関 概要3 するゴム成分の検定技術を開発した。トチュウ各採取部位でポリイソプレノイド の分子量分布が異なることと含有する脂肪酸の組成を明らかにした。また、各採 取部位ポリプレノールの幾何特異性および鎖長分布を明らかにし、長鎖のトラン ス型ポリプレノールの存在を明らかにした。トチュウ、ペリプロカにおいて、ゴ ム生産に関する IPP 異性化酵素遺伝子と FPP 合成遺伝子をクローニングし、形質 転換技術を確立した。 5.タンパク質組織特異的高生産植物の研究開発( 5.タンパク質組織特異的高生産植物の研究開発(三井化学) 三井化学) イネ Cab プロモーターを用いて、利用されない茎葉部において特異的にフィタ ーゼを発現させることが可能であることを確認した。また、タンパク質生産作物 として有望なサツマイモで高効率の再分化系を確立し、アグロバクテリウムを介 した形質転換法と2段階選抜法を組み合わせて高い形質転換率を達成した。次に、 38 種のフィターゼ発現コンストラクトをシロイヌナズナで発現解析し、高発現用 コンストラクトとしてコドン改変型酵母フィターゼ遺伝子にイネキチナーゼの細 胞外分泌シグナル配列を付加したものを選定した。同コンストラクトを導入した イネは、最大フィターゼ活性値で約 10.6U/g-FW(対照イネ比で約 273 倍)という 飛躍的上昇を示し、実用レベルの活性を達成した。本組換えフィターゼは、耐熱 性、安定性、フィチン酸の加水分解能力、サイレージ処理における安定性などか ら実用的な価値が高いことが確かめられた。 6.病害抵抗性植物の分子育種( 6.病害抵抗性植物の分子育種(豊田中央研究所) 豊田中央研究所) 植物病原菌に対する抗菌活性が高く、かつ動植物に対する毒性は低く、植物内 で安定に存在する抗菌ペプチドを得るため、ウサギ由来の抗菌ペプチド rCAP32 か ら 8 個のアミノ酸を欠失させ、ペプチド安定化配列を付加して最高性能を示す rCAP24KD を得た。本抗菌ペプチドの遺伝子をシロイヌナズナへ導入した結果、高 い病害抵抗性を示すことが明らかになり、構造改変した新規抗菌ペプチドの in vivo における有効性を確認した。さらに、本抗菌ペプチドを含む2種の抗菌ペプ チド遺伝子をサツマイモに導入し、多数の再分化個体を取得した。サツマイモの 病害抵抗性評価法を確立し、これらの再分化個体を評価した結果、病害抵抗性が 著しく向上した系統を見出し、病害抵抗性サツマイモ新品種の開発に成功した。 7.ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を利用した環境ストレス抵抗性の改良とその 利用に関する研究( 利用に関する研究(東洋紡総合研究所) 東洋紡総合研究所) ポリアミンが植物の各種環境ストレスに対する抵抗性に関与することを明らか にした。モデル植物であるシロイヌナズナに、スペルミジン合成酵素遺伝子 (FSPD1)を過剰発現させることで、低温・凍結・塩・浸透圧・乾燥・酸化などの 様々な環境ストレスに対する抵抗性が向上することが明らかになった。特に低温 ストレス下ではポリアミンレベルがシグナル調節的な機能を担っている可能性が 示唆された。工業原料植物であるサツマイモの形質転換系を確立し、FSPD1 導入 サツマイモで、低温・高温・酸化・塩・乾燥・不良環境抵抗性が改良され、特に 塩や乾燥ストレス下では塊根収量が野生株に比べて高まることが示された。 8.多重遺伝子連結技術の開発( 8.多重遺伝子連結技術の開発(奈良先端大・集中研) 奈良先端大・集中研) 植物への多重遺伝子導入技術の開発を目指し、ストレプトアビジン-ビオチン結 合による磁性粒子への DNA の固相化および非回文配列末端の使用による方向を規 制した DNA の順次連結を基本原理とする多重遺伝子連結技術を開発した。さらに、 複数の固相連結した DNA 断片セットの連結により計 30 DNA 断片のベクター導入に 成功した。多重遺伝子連結の自動化の可能性を行っている。また、多重連結した 遺伝子の導入によりジーンサイレンシングを回避できることを示した。 9.植物で機能する有用プロモーターの単離と活用( 9.植物で機能する有用プロモーターの単離と活用(奈良先端大・集中研) 奈良先端大・集中研) マイクロアレイ解析により葉・根合計 101 クローンのプロモーター領域を選定 し、一過性発現検定と組換え体植物により、各プロモーターの発現特性を解析し、 葉・根において様々な発現制御特性を有するプロモーターを効率的に多数収集し た。また、各種遺伝子・プロモーター情報のカタログ化を行った。 10.植物における高効率遺伝子発現系の構築(奈良先端大・共同研究) 概要4 Ⅳ.実用化、事業化 の見通しについて 組換体間の遺伝子発現量のバラツキの主原因が position effect ではないこと が示された。タバコ ADH5'UTR が GUS の発現を翻訳レベルで高めることを明らかに した。動物ウイルス(EMCV)と昆虫ピコルナ様ウイルス (PSIV)の IRES が植物で ポリシストロニックな遺伝子発現系として応用可能なことを示した。また、植物 ウイルス(crTMV)の IRES 活性の向上因子としてステムループ構造の挿入が有効な ことを見出した。高性能な合成介在配列の創出にも成功した。コーヒーノキより カフェイン生合成に関連する3つの新規メチル化酵素 cDNA をクローニングし、形 質転換タバコにカフェインを蓄積させて、ハスモンヨトウに対して忌避活性を示 すことを明らかにした。傷害応答型発現ベクターを構築中である。アラビカ種、 カネフォラ種コーヒー両種において効率的な形質転換系を確立した。カネフォラ 種で、RNAi によってカフェイン含量が 5∼7 割減少した苗木を得た。アラビカ種 の形質転換細胞でもカフェイン含量の減少を確認した。 10.2セレニュウム結合タンパク遺伝子導入による耐病性植物の分子育種( 2セレニュウム結合タンパク遺伝子導入による耐病性植物の分子育種(奈良 先端大・集中研) 先端大・集中研) イネいもち病菌由来エリシターで誘導されるイネのセレニュウム結合タンパク 遺伝子ホモログ(OsSBP)を過剰発現させたイネ、サツマイモで耐病性が向上する こと、該遺伝子が病害防御シグナル伝達に重要な活性酸素種の蓄積に関係するこ とを明らかにした。 11.植物葉緑体ゲノムへの複合環境ストレス耐性遺伝子群の多重導入による複 合環境ストレス耐性工業原料生産植物の作成 (RITE) レポーター遺伝子として GFP を用いてタバコ葉緑体形質転換体を作成したとこ ろ GFP 蓄積量は全可溶画分の 38%に達した。この形質転換体の生長量と光合成活 性は野生型と同程度であった。GFP,dsRed と GUS を含むポリシストロニックな発 現ベクターを葉緑体ゲノムに導入した場合、プロモーターからの距離が増すほど その産物の蓄積量が低下する傾向が見られた。紅藻 Galdieria partita の APX 遺 伝子を葉緑体に導入したところ、野生型に比べ約 200 倍の APX 活性が得られた。 この葉緑体形質転換体の解析から、ストレス環境下での water-water cycle 活性 低下の原因が APX の失活によることが初めて明らかとなった。 12.1ゼニゴケの脂肪酸代謝機能の活用(京都大学 12.1ゼニゴケの脂肪酸代謝機能の活用(京都大学) (京都大学 ゼニゴケのゲノムライブラリー、cDNA ライブラリーを構築し、飽和脂肪酸鎖長 延長酵素遺伝子を 2 個、有用高度不飽和脂肪酸であるアラキドン酸などの生合成 に関わる鎖長延長酵素遺伝子1個および不飽和化酵素遺伝子2個を同定した。 12.2アレルゲンタンパク質のマメ科植物による生産(阪大院工) ダイズ種子特異的プロモーターを単離した。遺伝子銃法によるダイズ形質転換 系を確立した。ミヤコグサへのダニアレルゲン遺伝子の導入を行いダニアレルゲ ンタンパク質の蓄積に成功した。 12.3環境ストレス(低温、光・酸素毒)耐性植物の分子育種(近畿大農) 新たに活性酸素種代謝遺伝子候補を取得し、酸化 DNA もしくはシグナル分子と しての ADP-ribose の代謝に関与することを明らかにした。藻類の GPX 様タンパク 質を植物で過剰発現させることにより膜傷害に対する防御能を向上させた。 投稿論文 「査読付き」 88 件、 「その他」 21 件 特許 「出願済」 65 件、 「登録」 0 件、 「実施」 3 件 (うち国際出願 0 件) 1.省ネルギー型工業原料生産に適した多年生工業原料植物の創成(王子製紙) 世界の耕作地面積の 30%以上を占める酸性土壌では、アルミニウムイオンが根 の伸長を阻害すると共に、難溶性リン酸塩の生成によりリン施肥効果が低下する。 本研究においてユーカリとモデル植物で酸性土壌に対する耐性付与を証明できた ことから、様々な植物への応用の可能性が示唆された。一方、遺伝子組換えによ る新品種の実用化には、遺伝子組換えによる安全性評価とパブリックアクセプタ ンスを解決する必要がある。本研究課題の難溶性リン酸可溶化ユーカリは、非食 用であること、地下部に組換え体を利用する接ぎ木により遺伝子拡散が防止でき ることから、比較的速やかに実用化できる可能性がある。 概要5 2. 高度不飽和脂肪酸生産大豆の研究開発(サントリー) 付加価値の高い高度不飽和脂肪酸は、現在の微生物培養あるいは魚油からの精 製に依存した生産では、コストとエネルギー・環境負荷の面から、健康食品素材 以外への市場拡大は期待できない。近年、アラキドン酸の健康食品素材としての 需要増加が期待され、この需要を組換え植物によりまかなうことで使用エネルギ ーと環境負荷を軽減できる。食用にはアラキドン酸などを組換えダイズから分離 精製するのではなく、組換えダイズそのものを食するか食品原料とするほうがコ スト面やエネルギー負荷を考えると実用性が高い。実用化には、マーカー遺伝子 の存在と大豆品種ジャックが商業用ダイズ品種ではないことが問題であり、その 解決のために、脂肪酸合成遺伝子群とマーカー遺伝子をコトランスフォーメーシ ョンし、組換えダイズと商業ダイズとの交配により、マーカー遺伝子の含まれな いアラキドン酸などを生産する商業大豆を得たい。 3.耐塩性植物でのハイブリッドファイバーの生産技術開発(大成建設) ハイブリッドファイバー組換え耐塩性植物による原料生産は、カタルヘナ条約 の問題もあり、短期間内での実用化は困難と判断される。しかし、本テーマで創 出したハイブリッドファイバ− 化技術は、エネルギ− や地球環境問題の角度から みて意義が大きく、実用化研究へと進展させる価値は高い。最近、京都議定書に よる炭酸ガスの削減目標を達成するために、クリーン開発メカニズム(CDM)事業 のプロジェクト化の動きが始まっている。弊社では CDM 事業化への取り組みも行 っており、ハイブリッドファイバー技術は、将来的に CDM 事業において大きな要 素技術として用いる方向で検討を行っている。ハイブリッドファイバーは、パー ティクルボードの生産を当面の開発目標とする事ができる。実際には、組換え植 物の安全性評価試験と並行して非組換えの耐塩性植物を用いて性能とコスト面の 事業性評価を重ねる必要がある。その中で PHB 基質供給系の強化が必須の課題で ある。事業化にはさらに 5 年程度の実用化研究の実施が必要であり、現在その研 究計画を策定している。 4.イソプレノイド・天然ゴム高生産植物の創成(日立造船) トチュウゴムの実用化のひとつ目標としてタイヤへの応用を考えている。中国 科学院では,トチュウ由来のトランス型イソプレノイドを利用した合成タイヤを 試作して実用化への展開が図られている。当社は本技術を実用化するべく同科学 院と提携して開発を行っている。また,トチュウゴムはトランス型ゴム由来の硬 質性や熱可塑性から車のバンパーや内装品に至る石油化学製品の代替としても有 用と考えられている。必要な原材料の確保と試験性能が確保されれば近い時期に 実現可能な事業になる。問題は,トチュウのゴム生産性であり,トチュウゴム高 含量・分子量改変された品種が要求され、中国側からは,遺伝伝子組換え技術の 適用によるトチュウゴム生産能向上が事業成功への課題として挙げられている。 既に中国西部地域では国策として黄土高原の退耕還林としてトチュウを造林・植 栽し,工業原料と農業生産品を生産するための実用化・事業化が始まっている。 5.タンパク質組織特異的高生産植物の研究開発(三井化学株式会社) 植物でフィターゼを生産する方法の実用性、事業性は、微生物培養法と比較し て評価されるであろう。微生物培養法は、天候や季節に左右されずに短時間で高 生産が可能であるが、工場建築費などの初期投資が莫大で運転コストが高い。し かしながら、生産法の改良によりコストの大幅な削減が可能である。一方、植物 生産法は、省エネルギー型・低環境負荷型の物質生産形態と言えるが、生産には 広大な栽培面積と長時間を要する。現時点において、生産コストの点では、植物 生産法は微生物培養法にやや及ばないものの、サツマイモ、トウモロコシ、ダイ ズなどの実用植物においてフィターゼの安定的高生産技術が確立され、フィター ゼ生産植物をそのまま、あるいはサイレージとして飼料に添加するという給餌方 法により、微生物培養法の代替となる可能性は高いと考えられる。 6.病害抵抗性植物の分子育種(豊田中央研究所) 新規開発した高性能抗菌ペプチド遺伝子を導入したサツマイモ新品種は、黒斑病 概要6 に対して高い病害抵抗性を示すため、栽培および保存のための農薬の使用量を軽 減でき、かつ収穫量を上げるための実用化栽培品種として市場投入することが可 能と考えられる。また、サツマイモの大規模プランテーション化への道を拓き、 安定・低コスト生産を可能とする新品種として期待され、プラスチック原料とな る乳酸の発酵生産のための競争力のある植物資源を提供することになるものと考 えられる。このためには、遺伝子組換え植物に対する安全性試験を実施し、組換 え前の品種との実質的同等性を明らかにした上で、圃場スケールにおける有効性 の検証を行う等の課題が残っている。 7.ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を利用した環境ストレス抵抗性改良とそ 7.ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を利用した環境ストレス抵抗性改良とその利 ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を利用した環境ストレス抵抗性改良とその利 用(東洋紡総合研究所) 用(東洋紡総合研究所) 最終目標である種々の環境ストレス抵抗性を付与したサツマイモを作出するこ とができ、プロジェクト終了後は実用化・事業化へ向けた検討を継続する。具体 的には閉鎖系及び開放系温室レベルでの安全性評価を石川県農業短期大学および 集中研究室と共同で実施する。得られた組換えサツマイモのストレス抵抗性を総 合的に評価し、野外試験や実用化を想定した栽培地域で実際に栽培可能かどうか を検討する。実用化・事業化については育種事業を持つような企業と共同で進め、 パブリックアクセプタンス等の社会的動向も考慮しつつステップアップ検討を行 いたいと考えている。 8.多重遺伝子連結技術の開発 (奈良先端大・集中研/バイオ組合) 奈良先端大・集中研/バイオ組合) すでに開発している多重遺伝子連結技術を自動化してプレシジョン・システ ム・サイエンス株式会社を通じて事業化予定である。 9.植物で機能する有用プロモーターの単離と活用( 植物で機能する有用プロモーターの単離と活用(奈良先端大・集中研/バイオ 組合) 組合) 本研究で取得した様々なプロモーターは、本プロジェクト内外のグループより 使用要望が相次いでいる状況であり、大いに利用される価値のあることが示され た。今後、実用的目的での使用が期待される。 10.植物における高効率遺伝子発現系の構築 植物における高効率遺伝子発現系の構築( ける高効率遺伝子発現系の構築(奈良先端大・集中研/バイオ組合) 集中研/バイオ組合) 位置効果を消去するインスレーター、翻訳効率を上げる配列、ポリシストロニ ック mRNA の翻訳、RNAi の活用等、いずれも利用価値のある技術であり、特許出 願を行った。特に、カフェイン生合成をレギュロン発現制御系により一括して制 御できることを示し、タバコにカフェインを蓄積させた。これらは、昆虫忌避効 果があることから、昆虫耐性作物の実用化が可能である。また、減カフェインコ ーヒー作出が可能になった。平成 16 年 4 月に設立されたベンチャー企業「植物ハ イテック株式会社」にて、これらを国内外で実用化する予定である。 10.セレニュウム結合タンパク遺伝子導入による病害抵抗性植物の分子育種(奈 良先端大・集中研/バイオ組合) OsSBP 遺伝子は、幅広い植物に複数の耐病性を付与し得る有用遺伝子であり、 病害抵抗性植物の分子育種に供する有用遺伝子としての潜在能力は高いと考え る。実用化事業化への課題として、過剰発現させたイネは稔性が低下することか ら、該遺伝子の発現を制御する必要があること、耐病性能を圃場スケールで確認 する必要があること、PA 問題を解決すること、が挙げられる。 11.植物葉緑体ゲノムへの複合環境ストレス耐性遺伝子群の多重導入による複 合環境ストレス耐性工業原料生産植物の作成 (RITE) 本研究で汎用的葉緑体多重遺伝子導入手法の確立と葉緑体遺伝子発現系を開発 した。葉緑体は大腸菌と同じ原核細胞型のため、大腸菌等で行われている異種タ ンパク質の大量発現系からの移行がすみやかに行われるので、複合環境ストレス 耐性植物による医薬品等工業用酵素類の生産や工業原料生産に応用できる。 12.1ゼニゴケの脂肪酸代謝機能の活用 (京都大) 京都大) 本研究で有用高度遺伝子であるアラキド酸およびエイコサペンタクエン酸の生 合成に関わる遺伝子群を得られたので、今後はダイズなどの油糧植物での発現を 通じて、有用高度不飽和脂肪酸の生産効率化が期待できる。 概要7 Ⅴ.評価に関する事 項 Ⅵ.基本計画に関す る事項 12.2アレルゲンタンパク質の( 12.2アレルゲンタンパク質の(マメ科) マメ科)植物による生産技術の開発 (阪大) 阪大) マメ科モデル植物ミヤコグサの形質転換体においてダニアレルゲンタンパク質 の蓄積に成功した。植物によるウイルスなどの抗原の発現にそのまま応用でき、 食べるワクチン生産への利用が可能となる。 12.3.環境ストレス( 12.3.環境ストレス(低温、光、酸素毒) 低温、光、酸素毒)耐性植物の分子育種― 耐性植物の分子育種―関連遺伝子の 探索と活用 (近畿大) 近畿大) 本研究で環境ストレス耐性遺伝子を新たに取得した。これらの遺伝子を多重導 入する系を構築したことにより複合ストレス環境耐性植物の作出に寄与できる。 評価履歴 平成14年度 中間評価実施 平成16年度 中間評価(事後評価)実施 評価予定 平成18年度 事後評価実施予定 作成時期 平成11年 策定 変更履歴 平成15年、 平成16年3月 変更 概要8 概要 プログラム・プロジェクト基本計画 ニューサンシャイン計画技術開発 「植物利用エネルギー使用合理化工業原料生産技術の研究開発」 基本計画 1. 研究開発期間 平成11年度から平成15年度(5年間) 2. 研究開発費総額 研究開発資金については、可能な限りの確保を図るものとする。 3.研究開発の目的 工業原料は、現在その供給の多くを化石資源に依存している。また、原 料から各種化学製品を精製・製造する化学工業プロセスではエネルギーを 大量に消費し、有害で危険な化学薬品も多量に使用する。このため、化学 プロセスは省資源、省エネルギー、環境負荷低減を図るうえで大きな課題 を残している。この化学プロセスを代替する技術のひとつとして、植物の 物質生産機能の工業的利用が従来から検討されている。 植物は、光合成により糖を生産し、これとともに各器官でアミノ酸、タ ンパク質、糖質、脂質等の有用資源を合成し、蓄積する。これらの物質の なかには、大量のエネルギーを投入して生産している化学製品や、製造に 多段階のプロセスを必要とする化学薬品等に相当する成分も多く存在して いる。植物を化学プロセスに代わる物質生産プロセスとして利用するため には、これらの物質の生産に関係する遺伝情報を解明し、さらに微生物等、 他の生物の物質生産に関連する遺伝子の利用も視野に入れて、目的とする 物質を効率よく生産するように改変することが必要である。 本研究開発は、この様な背景のもと、遺伝子組換え技術等を活用して植 物の物質生産性、耐環境性を向上させ、植物を省エネルギー型、低環境負 荷型の工業原料生産プロセスに活用するための技術の確立を図ることを目 的とする。 4.研究開発内容及び目標 各種の動植物、微生物等から物質生産に関与する遺伝子、耐環境ストレ スに関与する遺伝子及び機能発現の制御系に関与する遺伝子を取得し、こ れら多種類の遺伝子から構築されたベクター系を栽培植物に導入し、省エ ネルギー型、低環境負荷型の物質生産プロセスに利用可能な植物を創成す る。 (1) 工業原料生産のための植物代謝利用技術の開発 ゴム、炭化水素、アミノ酸、タンパク質・生分解性プラスチック原料等 を生合成する動植物、微生物の遺伝子を単離し、適切な栽培植物に導入す 概要9 るとともに、これらの物質の生産能力を高める制御系も組み合わせて、目 的とする工業原料物質の植物による生産を制御する代謝利用技術を開発す る。 (2) 植物の環境ストレス耐性向上技術の開発 上記の工業原料生産植物をエネルギー投入量の小さい粗放管理下でも生 育できるようさらに改良するために、乾燥、高・低温、光強度、土壌の塩 分、酸性雨等、各種の環境ストレスに対して耐性を示し、かつ、植物体の 生育能力を維持させる遺伝子、植物の代謝効率を向上させる機能を持つ遺 伝子、あるストレス条件下で特異的に発現したり、植物体の生長を制御し たりする遺伝子をそれぞれ探索・取得し、その機能を安定的に発現させる 技術を開発する。 (3) 植物への多重遺伝子導入技術及び発現制御技術の開発 (1)、(2)の成果を組み合わせ、工業原料生産遺伝子と耐環境性遺伝子を 機能発現制御系と一体化して(50種類程度)適切な栽培植物に付与するため の遺伝子導入用ベクター系を開発する。これを用いて実際に植物に遺伝子 を導入し、高効率工業原料生産性と環境ストレス耐性との適切な機能発現 についての評価を行ない、最終的に植物を用いた省エネルギー型・低環境 負荷型の工業原料生産プロセスを開発する。 5.研究開発の進め方 産業界及び学界を中心とする高度な研究開発能力を活用することにより、 効率的な研究開発を期す。上記研究開発を進めていく過程で、一部の技術 を活用して早期実用化が期待できる場合には、所要の研究開発を実施する。 研究開発3年度後半に中間評価、研究開発最終年度後半(又は研究開発最終 年度の次年度前半)に最終評価を行う。 6.研究開発スケジュール 11 年 12 年 13 年 14 年 15 年 16 年 17 年 研 究 項 目 度 度 度 度 度 度 度 評 価 価 概要10 終 評 3. 植物への多重遺伝子導 入技術及び発現制御技 術の開発 最 間 2. 植物の環境ストレス耐 性向上技術の開発 中 間 (一 部 事 後 )評 価 中 1. 工業原料生産のための 植物代謝利用技術の開 発 植物利用エネルギー使用合理化工業原料生産技術開発 変更基本計画 平成14年2月8日 NEDOバイオテクノロジー開発室 1.研究開発の目的・目標・内容 (1)研究開発の目的 「生物機能活用型循環産業システム創造プログラム」は、化石資源に大きく依存 した化学工業を始めとする生産システムを環境調和型循環産業システムに変革 すべく、生産プロセスに関連したバイオテクノロジー技術基盤を構築することを目 標とする。本プログラムの一環として「植物の物質生産プロセス制御基盤技術開 発」プロジェクトを実施する。 生物機能を利用したバイオプロセスは、循環型の産業システムを実現する上で 極めて重要であると考えられている。平成13年9月に取りまとめられた総合科学 技術会議の分野別推進戦略においても、「近年急速に蓄積されつつあるゲノム 情報や目覚しい進展を見せているゲノム関連技術を活用し、生物の持つ多様な 機能を高度に活用することによって、有用物質の効率的な生産技術や環境汚染 物質の分解を行うなど環境対応型の産業技術を開発する」ことの重要性が指摘さ れている。 現在、工業原料はその供給の多くを化石資源に依存している。また、原料 から各種化学製品を精製・製造する化学工業プロセスではエネルギーを大量 に消費し、有害で危険な化学薬品も多量に使用する。このため、化学プロセ スは、省資源・省エネルギー、環境負荷低減を図るうえで大きな課題を残して いる。この化学プロセスを代替する技術のひとつとして、植物の物質生産機能 の工業的利用が従来から検討されている。 植物は、光合成により糖を生産し、これをもとに各器官でアミノ酸、タンバク 質、糖質、脂質等の有用資源を合成し、蓄積する。これらの物質のなかには、 大量のエネルギーを投入して生産している化学製品や、製造に多段階のプロ セスを必要とする化学薬品等に相当する成分も多く存在している。植物を化 学プロセスに代わる物質生産プロセスとして利用するためには、これらの物質 の生産に関係する遺伝情報を解明し、さらに微生物等、他の生物の物質生 産に開連する遺伝子の利用も視野に入れて、目的とする物質を効率よく生産 するように複数の遺伝子を操作する技術開発が不可欠である。 木研究開発は、この様な背景のもと、植物の物質生産性、耐環境性を向上 させ、植物を省エネルギー型、低環境負荷型の工業原料生産プロセスとして 活用するために必要な複数の遺伝子(調節遺伝子を含む)を操作できる遺伝 子組換え技術等の確立を図ることを目的とする。 本技術の確立により、植物を利用した物質生産分野を中心に、バイオテクノロ ジーの産業化に欠かせない、高度な遺伝子組換えに関する共通基盤技術の形 成が見込まれる。 (2)研究開発の目標 ①最終目標 多重遺伝子の導入技術を確立し、各種の動植物、微生物等から物質生 産に関与する適伝子、耐環境ストレスに関与する遺伝子及び機能発現の 概要11 制御系に関与する遺伝子を取得し、これら多種頼の遺伝子から構築され たベクター系を栽培植物に導入し、省エネルギー型、低環境負荷型の物 質生産プロセスとして利用可能な植物を創成する。尚、植物体の創製につ いては、組換え当代の再生幼植物体において目的とする遺伝子の発現に より確認する。 (3)研究開発内容 上記目標を達成するために、以下の研究開発項目について、別紙の研究開 発計画に基づき研究開発を実施する。 ①工業原料生産のための植物代謝利用技術の開発 ②植物の環境ストレス耐性向上技術の開発 ③植物への多重遺伝子導入技術及び発現制御技術の開発 2.研究開発の実施方式 (1)研究開発の実施体制 ①研究開発体制 本研究開発は、NEDOが公募により選定する企業、民間研究機関、独立 行政法人、大学等がNEDOが指名した 研究開発責任者(プロジェクトリー ダー)奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科新名惇彦 の 下で、それぞれの研究テーマの達成目標を実現すべく研究開発を実施す る方式を採用する。 この場合において、各委託先は、企業、大学、民間研究機関、あるいは 独立行政法人等単位であることを原則とする(以下、「企業単位等」という)。 ただし、NEDOが、複数の企業単位等が結集して研究体を構成し、集中的 な管理体制を構築する場合も、当該研究体を委託先として認めるものとす る。 (2)研究開発の運営管理 研究開発全体の管理・執行に責任を有するNEDOは、経済産業省及び研究 開発責任者と密接な関係を維持しつつ、プログラムの目的及び目標、並びに本 研究開発の目的及び目標に照らして適切な運営管理を実施する。具体的には、 必要に応じて、NEDOに設置する技術審議委員会及び技術検討会等、外部有 識者の意見を運営管理に反映させる他、四半期に一回程度プロジェクトリーダ ー等を通じてプロジェクトの進捗について報告を受けること等を行う。 3.研究開発の実施期間 本研究開発の期間は、平成11年度から平成15年度までの5年間とする。 4.評価の実施 NEDOは、国の定める技術評価に係る指針及び技術評価要領に基づき、技 術的及び産業技術政策的観点から、研究開発の意義、目標達成度、成果の技 術的意義ならびに将来の産業への波及効果等について、NEDOに設置する 技術評価委員会において外部有識者による研究開発の中間評価を平成13年 度、事後評価を平成16年度に実施する。なお、評価の時期については、当該 研究開発に係る技術動向、政策動向や当該研究開発の進捗状況等に応じて、 前倒しする等、適宜見直すものとする。 概要12 5.その他の重要事項 (1)研究開発成果の取扱い ①成果の普及 得られた研究成果のうち、下記共通基盤技術に係る研究開発成果について は、NEDO、実施者とも普及に努めるものとする。 a)実現手法の確立、体系的整理 ・複数遺伝子の連結・導入技術 ・ユーカリ等、遺伝子組換え系および培養・再分化技術 b)新たな特性データの取得・整備 ・物質生産関連の遺伝子および遺伝子情報取得・整備 ・耐環境ストレスの遺伝子および遺伝子情報取得・整備 ・遺伝子の発現制御にかんする遺伝子情報取得・整備 ②知的基盤整備事業又は標準化等との連携 得られた研究開発の成果については、知的基盤整備または標準化等と の連携を図るため、データベースへのデータの提供、標準情報(TR)制度 への提案等を積極的に行う。 ③知的所有権の帰属 委託研究開発の成果に関わる知的所有権については、「新エネルギー・産業 技術総合開発機構産業技術研究開発等業務方法書」第 19 条(「新エネルギ ー・産業技術総合開発機構新エネルギー業務方法書」第 43 条)の規定等に基 づき、原則として、すべて受託先に帰属させることとする。 (2)基本計画の変更 NEDOは、研究開発内容の妥当性を確保するため、社会・経済的状況、内外 の研究開発動向、産業技術政策動向、プログラム基本計画の変更、第三者の 視点からの評価結果、研究開発費の確保状況、当該研究開発の進捗状況等を 総合的に勘案し、達成目標、実施期間、研究開発体制等、基本計画の見直しを 弾力的に行うものとする。 (3)根拠法 本プロジェクトは、エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律 第49号)第21条第2項第1号に基づき実施する。 (4)その他 工業原料を植物に生産させる場合、日照条件・生産経費の面から、熱帯・亜 熱帯の東南アジアでの栽培を考慮する必要がある。したがって、研究の進捗 状況に応じて、海外の適切な地域において、母材料の適応試験など、技術動 向調査や共同研究などを展開する。 概要13 (別紙)研究開発計画 研究開発項目①「工業原料生産のための植物代謝利用技術の開発技術開発」 1.研究開発の必要性 バイオマスを出発点とする産業プロセスに原料を供給するため、植物の生産 機能を活用する場合、産業プロセスに少しでも利用しやすい工業原料を生産さ せることが必要であり、そのためには目標とする物質を生産させ得る遺伝子(調 節遺伝子を含む)の取得が不可欠である。 2.研究開発の具体的内容 ゴム、炭化水素、アミノ酸、タンパク質、生分解性プラスチック原料等を生合成 する動植物、微生物の遺伝子を特定・取得し、適切な栽培植物に導入する。 3.達成目標 ・最終目標 ゴム、炭化水素、アミノ酸、タンパク質、生分解性プラスチック原料等を生合 成する動植物、微生物の遺伝子を特定、取得し、これら遺伝子の発現を調節 する調節遺伝子を組み合わせて適切な栽培植物に導入し、組換え当代の幼 植物体等においてその発現を確認する。 研究開発項目②「植物の環境ストレス耐性向上技術の開発」 1.研究開発の必要性 すぐれた工業原料を生産できても、栽培管理のために大きなエネルギー投入 を必要とする植物では、エネルギー使用の合理化が達成できない。施肥、灌水、 温度管理など栽培管理に必要なエネルギー使用量を低減するためには、植物 体そのものに、肥料養分欠乏、乾燥、高・低温、塩分等の環境ストレスに耐えて 生育する特性を付与し、あるいは目的物質の生産効率を向上させる必要があ る。 2.研究開発の具体的内容 工業原料を生産させる植物を、エネルギー投入量の小さい粗放管理下でも 生育できるように改良するために、乾燥、高・低温、光強度、土壌の塩分、酸性 雨等、各種の環境ストレスに対して耐性を示し、かつ、植物体の生育能力を維 持させる遺伝子、植物の代謝効率を向上させる機能を持つ遺伝子、あるストレ ス条件下で特異的に発現したり、植物体の生長を制御したりする遺伝子をそれ ぞれ探索・取得する。 3.達成目標 ・最終目標 各種の環境ストレス耐性遺伝子・生産効率に関わる遺伝子(調節遺伝子を 含む)を特定、取得し、必要に応じて調節遺伝子を組み合わせて適切な栽培 植物に導入し、組換え当代の幼植物体等においてその発現を確認する。 研究開発項目③「植物への多重遺伝子導入技術及び発見制御技術の開発」 概要14 1.研究開発の必要性 すぐれた工業原料を、小さなエネルギー使用において効率よく植物に生産さ せるには、研究開発項目①および②において特定・取得した物質生産に関す る遺伝子および耐環境ストレス等の遺伝子を複数連結して導入する、多重遺伝 子の連結・導入技術の開発が必要である。 2.研究開発の具体的内容 研究開発項目①、②の成果を組み合わせ、工業原料生産遺伝子と耐環境牲 遺伝子を機能発現制御系と一体化して適切な栽培植物に付与するための複数 遺伝子連結技術および遺伝子導入用ベクター系を開発する。 3.達成目標 ・最終目標 遺伝子および機能発現制御系(調節遺伝子)を一体化して50種程度、その 連結個数や順序を制御しつつ連結する技術および遺伝子導入用ベクター系を 開発する。これを用いて、研究開発項目①と②で特定・取得した遺伝子を複数 組み合わせて連結し、実際に植物に遺伝子を導入する。組換え当代の再生幼 植物体において高効率工業原料生産性と環境ストレス耐性との適切な機能発 現を確認する。 概要15 P03043 (生物機能活用型循環産業システム創造プログラム) 「バイオプロセス実用化開発プロジェクト(植物機能改変技術実用化開発)」 基本計画 バイオテクノロジー・医療技術開発部 1.研究開発の目的・目標・内容 (1)研究開発の目的 「生物機能活用型循環産業システム創造プログラム」は、化石資源に大きく依存し た化学工業を始めとする生産システムを環境調和型循環産業システムに変革すべ く、生産プロセスに関連したバイオテクノロジー技術基盤を構築することを目標とす る。本プログラムの一環として「植物機能改変技術実用化開発」プロジェクトを実施 する。 生物機能を利用したバイオプロセスは、循環型の産業システムを実現する上で極 めて重要であると考えられている。平成13年9月に取りまとめられた総合科学技術 会議の分野別推進戦略においても、「近年急速に蓄積されつつあるゲノム情報や 目覚しい進展を見せているゲノム関連技術を活用し、生物の持つ多様な機能を高 度に活用することによって、有用物質の効率的な生産技術や環境汚染物質の分解 を行うなど環境対応型の産業技術を開発する」ことの重要性が指摘されている。 現在、工業原料はその供給の多くを化石資源に依存している。また、原料から 各種化学製品を精製・製造する化学工業プロセスではエネルギーを大量に消費 し、有害で危険な化学薬品も多量に使用する。このため、化学プロセスは、省資 源・省エネルギー、環境負荷低減を図るうえで大きな課題を残している。この化 学プロセスを代替する技術のひとつとして、植物の物質生産機能の工業的利用 が従来から検討されている。 植物は、光合成により糖を生産し、これをもとに各器官でアミノ酸、タンパク質、 糖質、脂質等の有用資源を合成し、蓄積する。これらの物質のなかには、大量の エネルギーを投入して生産している化学製品や、製造に多段階のプロセスを必 要とする化学薬品等に相当する成分も多く存在している。植物を化学プロセスに 代わる物質生産プロセスとして利用するためには、これらの物質の生産に関係す る遺伝情報を解明し、さらに微生物等、他の生物の物質生産に開連する遺伝子 の利用も視野に入れて、目的とする物質を効率よく生産するように複数の遺伝子 を操作する技術開発が不可欠である。 本研究開発は、この様な背景のもと、植物の物質生産性、耐環境性を向上さ せ、植物を省エネルギー型、低環境負荷型の工業原料生産プロセスとして活用 するために必要な複数の遺伝子(調節遺伝子を含む)を操作できる遺伝子組換 え技術等の確立を図ることを目的とする。 本技術の確立により、植物を利用した物質生産分野を中心に、バイオテクノロジ ーの産業化に欠かせない、高度な遺伝子組換えに関する共通基盤技術の形成が 見込まれる。 なお、本プロジェクトは、経済産業省において研究開発の成果が迅速に事業 化に結びつき、産業競争力強化に直結する「経済活性化のための研究開発プロ ジェクト(フォーカス21)」と位置付けられており、次の条件のもとで実施する。 ・技術的革新性により競争力を強化できること。 ・研究開発成果を新たな製品・サービスに結びつける目途があること。 ・比較的短期間で新たな市場が想定され、大きな成長と経済的波及効果が 概要16 期待できる こと。 ・産業界も資金等の負担を行うことにより、市場化に向けた産業界の具体的な 取組み が示されていること。 具体的には、成果の実用化に向け、実施者による以下のような取り組みを求め る。 ・遺伝子組換えゴム生産植物を創成する。 ・汎用性のある遺伝子多重連結自動化技術を開発する。 なお、適切な時期に、実用化・市場化状況等について検証する。 (2)研究開発の目標 各種の動植物、微生物等から物質生産に関与する遺伝子、耐環境ストレスに 関与する遺伝子及び機能発現の制御系に関与する遺伝子を取得し、これら多種 類の遺伝子(約30個)を栽培植物に導入することを可能とする植物機能改変技 術の実用化を行う。また、当該技術を用いて機能改変した植物体を創製し、技術 の有効性を確認する。 工業原料生産のための植物代謝利用技術の開発においては、現状のトチュウ のゴム生産能力を1ポイント程度(含有率約4%)向上させ中国での生産可能性 のある遺伝子組換えゴム生産植物を創成する。 また、植物への多重遺伝子導入技術及び発現制御技術の開発においては、 汎用性のある遺伝子多重連結自動化技術の開発および遺伝子多重連結自動 化技術の利用のための周辺技術の開発を目指す。 (3)研究開発内容 上記目標を達成するために、以下の研究開発項目について、別紙の研究開発計 画に基づき研究開発を実施する。 ①工業原料生産のための植物代謝利用技術の開発 ②植物の環境ストレス耐性向上技術の開発 ③植物への多重遺伝子導入技術及び発現制御技術の開発 2.研究開発の実施方式 (1)研究開発の実施体制 本研究開発は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、 「NEDO技術開発機構」という)が公募により選定した企業、民間研究機関、独 立行政法人、大学等がNEDO技術開発機構が指名した研究開発責任者(プロ ジェクトリーダー)奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科 新名 惇彦 教授の下で、それぞれの研究テーマの達成目標を実現すべく研究開発を 実施する方式を採用する。 この場合において、各委託先は、企業、大学、民間研究機関、あるいは独立行 政法人等単位であることを原則とする(以下、「企業単位等」という)。ただし、NE DO技術開発機構が、複数の企業単位等が結集して研究体を構成し、集中的な 管理体制を構築する場合も、当該研究体を委託先として認めるものとする。 ただし、本研究開発は、平成11年度から平成13年度までは、「植物利用エネル ギー使用合理化工業原料生産技術開発」、平成14年度は「植物利用エネルギー 使用合理化工業原料生産技術開発/植物の多重遺伝子導入技術開発」として実 施した。平成15年度以降は、実質的に継続事業であるため、原則公募による研 究開発実施者の選定は行わない。 (2)研究開発の運営管理 概要17 研究開発全体の管理・執行に責任を有するNEDO技術開発機構は、経済産業 省及び研究開発責任者と密接な関係を維持しつつ、プログラムの目的及び目標、 並びに本研究開発の目的及び目標に照らして適切な運営管理を実施する。具体的 には、必要に応じて、NEDO技術開発機構に設置する技術審議委員会及び技術 検討会等、外部有識者の意見を運営管理に反映させる他、四半期に一回程度プロ ジェクトリーダー等を通じてプロジェクトの進捗について報告を受けること等を行う。 3.研究開発の実施期間 本研究開発は、平成11年度から平成13年度までの3年間は、「植物利用エネル ギー使用合理化工業原料生産技術開発」、平成14年度は「植物利用エネルギー 使用合理化工業原料生産技術開発/植物の多重遺伝子導入技術開発」、平成1 5年度から平成17年度までの3年間は「植物機能改変技術実用化開発」として実 施する。 4.評価の実施 NEDO技術開発機構は、国の定める技術評価に係る指針及び技術評価要領に 基づき、技術的及び産業技術政策的観点から、研究開発の意義、目標達成度、成 果の技術的意義ならびに将来の産業への波及効果等について、外部有識者による 研究開発の中間評価を平成13年度、平成16年度(プレ事後評価)、事後評価を 平成18年度に実施する。なお、評価の時期については、当該研究開発に係る技術 動向、政策動向や当該研究開発の進捗状況等に応じて、前倒しする等、適宜見直 すものとする。 5.その他の重要事項 (1)研究開発成果の取扱い ①成果の普及 得られた研究成果のうち、下記共通基盤技術に係る研究開発成果については、N EDO技術開発機構、実施者とも普及に努めるものとする。 a)実現手法の確立、体系的整理 ・複数遺伝子の連結・導入技術 ・ユーカリ等、遺伝子組換え系および培養・再分化技術 b)新たな特性データの取得・整備 ・物質生産関連の遺伝子および遺伝子情報取得・整備 ・耐環境ストレスの遺伝子および遺伝子情報取得・整備 ・遺伝子の発現制御に関する遺伝子情報取得・整備 ②知的基盤整備事業又は標準化等との連携 得られた研究開発の成果については、知的基盤整備または標準化等との連携 を図るため、データベースへのデータの提供、標準情報(TR)制度への提案等 を積極的に行う。 ③知的財産権の帰属 委託研究開発の成果に関わる知的財産権については、「独立行政法人新エネル ギー・産業技術総合開発機構新エネルギー・産業技術業務方法書」第26条の規定 等に基づき、原則として、すべて受託先に帰属させることとする。 概要18 (2)基本計画の変更 NEDO技術開発機構は、研究開発内容の妥当性を確保するため、社会・経済的 状況、内外の研究開発動向、産業技術政策動向、プログラム基本計画の変更、第 三者の視点からの評価結果、研究開発費の確保状況、当該研究開発の進捗状況 等を総合的に勘案し、達成目標、実施期間、研究開発体制等、基本計画の見直し を弾力的に行うものとする。 (3)根拠法 本プロジェクトは、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法第15条 第1項第1号ハに基づき実施する。 (4)その他 工業原料を植物に生産させる場合、日照条件・生産経費の面から、熱帯・亜熱 帯の東南アジアでの栽培を考慮する必要がある。したがって、研究の進捗状況 に応じて、海外の適切な地域において、母材料の適応試験など、技術動向調査 や共同研究などを展開する。 6.基本計画の改訂履歴 (1)平成15年3月、制定。本プロジェクトは、平成11年度から平成13年度までは、 「植物利用エネルギー使用合理化工業原料生産技術開発」、平成14年度は「植物 利用エネルギー使用合理化工業原料生産技術開発/植物の多重遺伝子導入技 術開発」として実施。平成14年度までの植物多重遺伝子導入技術開発プロジェ クトで得られた導入技術を用いて有用物質生産植物を創製し当該技術の実用性 を確認することを目的とする新規「植物機能改変技術実用化開発プロジェクト」へ の移行に伴い、プロジェクトの名称、研究開発の目標、研究開発計画等を改訂。 (2)平成16年3月、制定。独立行政法人化に係る事項、及び平成16年度からフ ォーカス21に位置付けられたことに伴い、研究開発の目標、研究開発内容、評価 の時期、研究開発計画等を改訂。 概要19 (別紙)研究開発計画 研究開発項目①「工業原料生産のための植物代謝利用技術の開発」 1.研究開発の必要性 バイオマスを出発点とする産業プロセスに原料を供給するため、植物の生産機 能を活用する場合、産業プロセスに少しでも利用しやすい工業原料を生産させ ることが必要であり、そのためには目標とする物質を生産させ得る遺伝子(調節 遺伝子を含む)の取得が不可欠である。 2.研究開発の具体的内容 ゴム、炭化水素、アミノ酸、タンパク質、生分解性プラスチック原料等の生合成 に関与する各種遺伝子を動植物及び微生物から取得し、各々適切な栽培植物 に導入し、その遺伝子の適切な発現を確認する。 3.達成目標 ・最終目標 ゴム、炭化水素、アミノ酸、タンパク質、生分解性プラスチック原料等を生合成 する動植物、微生物の遺伝子を特定、取得し、これら遺伝子の発現を調節する 調節遺伝子を組み合わせて適切な栽培植物に導入し、組換え当代の幼植物体 等においてその発現及び機能を確認する。 イソプレノイド・天然ゴム高生産植物の創成において、現状のトチュウのゴム生 産能力を1ポイント程度(含有率約4%)向上させ中国での生産可能性のある組 換え植物を創成する。 概要20 研究開発項目②「植物の環境ストレス耐性向上技術の開発」 1.研究開発の必要性 すぐれた工業原料を生産できても、栽培管理のために大きなエネルギー投入 を必要とする植物では、エネルギー使用の合理化が達成できない。施肥、灌水、 温度管理など栽培管理に必要なエネルギー使用量を低減するためには、植物 体そのものに、肥料養分欠乏、乾燥、高・低温、塩分等の環境ストレスに耐えて 生育する特性を付与し、あるいは目的物質の生産効率を向上させる必要があ る。 2.研究開発の具体的内容 工業原料を生産させる植物を、エネルギー投入量の小さい粗放管理下でも 生育できるように改良するために、乾燥、高・低温、光強度、土壌の塩分、酸性 雨等、各種の環境ストレスに対して耐性を示し、かつ、植物体の生育能力を維 持させる遺伝子、植物の代謝効率を向上させる機能を持つ遺伝子、あるストレ ス条件下で特異的に発現する遺伝子、植物体の生長を制御する遺伝子をそれ ぞれ取得し、各々適切な栽培植物に導入し、その遺伝子の適切な発現を確認 する。 3.達成目標 ・最終目標 各種環境ストレス耐性遺伝子・生産効率に関わる遺伝子(調節遺伝子を含 む)を特定、取得し、必要に応じて調節遺伝子を組み合わせて適切な栽培植 物に導入し、組換え当代の幼植物体等においてその発現及び機能をを確認 する。 概要21 研究開発項目③「植物への多重遺伝子導入技術及び発現制御技術の開発」 1.研究開発の必要性 すぐれた工業原料を、小さなエネルギー使用において効率よく植物に生産させ るには、研究開発項目①および②において特定・取得した物質生産に関する遺 伝子および耐環境ストレス等の遺伝子を複数連結して導入する、多重遺伝子の 連結・導入技術の開発が必要である。 2.研究開発の具体的内容 研究開発項目①、②の成果を組み合わせ、工業原料生産遺伝子と耐環境牲 遺伝子を機能発現制御系と一体化して適切な栽培植物に付与するために必要 な複数遺伝子連結技術および遺伝子導入用ベクター系を開発する。 3.達成目標 ・最終目標 遺伝子および機能発現制御系(調節遺伝子)を一体化して50種程度、その 連結個数(約30個)や順序を制御しつつ連結する技術および遺伝子導入用ベ クター系を開発する。これを用いて、研究開発項目①と②で特定・取得した遺 伝子を複数組み合わせて連結し、実際に植物に遺伝子を導入する。組換え当 代の再生幼植物体において高効率工業原料生産性と環境ストレス耐性との適 切な機能発現を確認するとともに、当該技術を用いて機能改変した植物体を創 製する。 工業原料生産植物を作出するにはストレス耐性遺伝子群に加え、工業原料生 産遺伝子を導入しなければならないが従来技術ではその達成が困難である。そ のために必要な多重遺伝子導入技術を簡便に利用できるようにするため、汎用 性のある遺伝子多重連結自動化技術の開発および遺伝子多重連結自動化技 術の利用のための周辺技術の開発を目指す。 概要22 プロジェクト用語集 I (植物名、微生物名編) ・アカザ(→シロザ) ・アズキ マメ科植物の中で形質転換が比較的容易にできる。アズキは脂肪酸の蓄 積量は 2%程度と低いが、種子が大きいので、マメ科植物の種子において脂 肪酸を改変する際のモデルとして使用できる。 ・イネ 双子葉植物のシロイヌナズナに対し、単子葉植物の遺伝学的研究のモデル植物。全塩基 配列が決定されている、形質転換が容易、実験材料・方法に関する情報ネットワークが整 っている等の利点がある。また工業原料生産植物としても、大規模に作付けする作物であ るため、従来破棄されてきた組織の利用価値は高い。 ・オウレン(黄連) キンポウゲ科に属する多年性薬草。その根茎は局方生薬オウレンの原材 料として、古来から使用されてきた重要な薬用資源である。主成分はイソ キノリンアルカロイドであるベルベリンであり、根茎中に乾物重あたり 3-7%含まれる。類似の生薬としてはキハダ(オウバク)がある。オウバク の主成分もベルベリンであるが、その含量ならびに成分とも生薬オウレン を下回わる。オウレンは日本特産の薬草であるが、収穫までに 5-6 年の栽 培を要する。需要の増加に伴い、外国からも輸入されるようになってきて いる。 ・クロダネカボチャ カボチャの一種で、中央メキシコから中米、チリーにかけての高地に自 生する多年生草本である。食用としては栽培されていないが、越冬性であ るために耐寒性が強く、特に根が高い低温伸長性を示すので、アジア各地 で寒冷期のキュウリ栽培の接ぎ木台木として広く用いられている。日本で は最近、果実に白粉(果粉)が出にくいブルームレス台木品種に取って代 わられつつあるが、クロダネカボチャ根の高い低温伸長性には捨てがたい ものがある。 ・コーヒー アカネ科コーヒー属の植物であり、熱帯・亜熱帯地域の主要な木本栽培 植物である。主な栽培種はアラビカ種(Coffea arabica)とカネフォラ種 (Coffea canephora、コーヒー豆として流通される場合、主にロブスタ種 と呼ばれることがある)であり、アラビカ種は 2n=44 で自家稔性であるが、 カネフォラ種は 2n=22 で自家不稔である。コーヒーは飲用として嗜好性が 高く生豆は世界的に取引されている。 ・サツマイモ 中米原産で、ヒルガオ科の1年生植物(学名は Ipomoea batatas) 。世界全 体の生産量は約 1 億 2 千万トンで、7〜8 番目に生産量の多い作物である。 中国が約7割を生産している。日本での単位面積あたり最も高いカロリー 生産作物である。用途は食用、デンプン原料、飼料用、救荒作物等。品種 改良は交雑育種、突然変異等で行われている。交雑育種は、不和合性(自 分ないし特定のグループの品種・系統とは花粉をかけても種子ができない) のため制約を受ける。栽培種は6倍体。カビによる病害として、黒斑病、 軟腐病等がある。 ・シロイヌナズナ( シロイヌナズナ Arabidopsis thaliana) プロジェクト用語集1 アブラナ科の一年性植物。世代サイクルが短い(世代時間 約6週間) こと、ゲノムサイズが小さい(約 100Mb)こと、形質転換が容易なことなどか ら、モデル植物として利用されている。2000 年に全塩基配列が決定された ことから、モデル植物としての意義はますます高まっている。 ・シロザ(アカザ) (Chenopodium album) ナデシコ目アカザ科の 1 年∼多年生草本。ユーラシア原産で、アカザは シロザの変種とされる。世界中に広く分布し、欧州では麦類の随伴雑草と して分布、栽培化を試みられた歴史もある。中近東の半砂漠地帯では多年 生の形態が多く、ラクダの牧草としても利用される。東アジアでは一年生 草本が多く、台湾では、雑穀として栽培され、日本でも、葉を食する地域 もあった。また、固い茎は軽く強靱なため、アカザの杖として珍重される。 概して耐塩性の高い種が多く、特にアカザ・シロザは海水でも生育・結実 する海水耐性種のひとつである。アカザ科植物の培養は困難とされ、遺伝 子組み換え系は確立されていないが、農作物では、ホウレンソウ、砂糖大 根などが同科の作物であり、今後開発が望まれる重要な植物群である。 ・タマリクス(Tamarix sp.) sp.) スミレ目ギョリュウ科の樹木で、多数の細い枝と針型の葉をもつ。塩腺 を持つ種が多いため耐塩性があり、乾燥にも強いため、中近東地域では街 路樹として利用される。日本では、中国原産の T.chinensis が市販されて おり、冬期には落葉し春先には淡紅色の花をつける。いずれも海水で生育 できる海水耐性種であり、繊維素が密なため、イランではパルプ用木材と しても注目される。アカザと同様に、培養系や遺伝子組み換え系が確立さ れていないが、1 科 4 属の貴重な遺伝資源である。 ・タバコ ナス科植物。ニコチンを生産する。再分化、形質転換が容易なので、形 質転換体が非常に容易にできる。植物も大きいので材料が十分量得られる。 ただし、世代時間が 3〜4 月と長いという問題がある。 ・ダイズ ダイズは脂肪酸含有量が 15〜30%と高く、ダイズ油は世界で最も大量に生 産されている。したがって、ダイズ油を改変すれば最も効率よく改変脂肪 酸が生産できる。しかし、形質転換ダイズの作成は容易ではなく、多大な 労力とノウハウを要する。 ・トチュウ(杜仲:Eucommia ulmoides Oliver) Oliver) 中国四川省を原産とする落葉性の喬木で,樹高 20m に達する。雌雄異株で 性判断は開花するまで判らない。染色体数は 2n=34 で 1 科 1 属 1 種の固有 種である。栽培面積は中国で約 370kha,本邦では約 3kha である。地質年代 の鮮新世に世界中で繁茂していたことが判っているが,ウルム氷河期に現 存1種が中国に生き残ったと考えられている。樹皮は生薬として利用され 日本では局方に指定されている。葉は杜仲茶として食品に加工されている。 本邦には 20 世紀の初めに,海底ケーブル用のゴムやゴルフボール・歯科原 料として導入された。また,電気絶縁性に優れており絶縁材としても利用 されている。最近では,中国政府がタイヤやギブスの原料としての利用価 値を創成している。 ・ペチュニア ナス科。形質転換は比較的容易。花色や花形、草姿を遺伝子組換えで改 変したものが多数報告されている。遺伝子導入による花色変化の安定性に プロジェクト用語集2 より、遺伝子の安定発現機構の解析が可能である。 ・ペリプロカ ペリプロカ属は,ガガイモ科に属し,熱帯域に12種分布する。半木性 で1年生の茎葉はツル性で高さは1m以上になる。2年枝以降は匍匐して 拡散して栄養繁殖する。地下茎は栄養器官となり肥大する。代表的な種は Priploca sepiumである。この種の特徴として、1年生の新梢または茎葉を 切断すると乳液が涎流する。乳液に含まれる炭化水素が可燃性であるため, 歴史的に万里の長城の燈火台連絡用薪炭の可燃誘導植物原料として利用さ れた。乳液に強心配糖体(ペリプロシン)やサポニンを含み,毒性作用を 有することから山羊や羊からの捕食を回避する。作用は中枢系へのアゴニ ストして働く。また,生薬用途として用いられ,生薬名をコウカヒ(香加 皮)と呼ぶ。薬剤の部位は乾燥した根皮である。薬効としてはリュウマチ 性関節炎などの主治として丸剤として用いている。 ・ホウレンソウ 中央アジアの原産で、元来冷涼な気候を好む作物であるが,世界各地に 伝播して多様な生態的特性をもつ品種が成立している。日本ではかつては 秋作が主体で夏作は困難であったが、品種改良により冷涼地では夏季の栽 培も可能になっている。一方、植物生理学の分野では、ホウレンソウは顕 著な低温馴化(低温遭遇により低温抵抗性が高まる現象)を示すために、 低温馴化機構の研究材料として広く用いられている。 ・ミヤコグサ ・ミヤコグサ マメ科植物で形質転換可能であるが、種子は小さい。マメ科植物のモデ ル植物として最近研究が盛んになっている。ゲノムサイズが小さく、世代 時間も短い。かずさ DNA 研究所でゲノム解析が進行中である。 ・ユーカリ( ユーカリ Eucalyptus spp.) オーストラリアを中心とするオセアニア地域に500種以上が自生する多 種属植物であり、多くが成長性に優れること、様々な環境に適応性がある こと、深刻な害虫被害が少ないこと、さらに産業的には木材生産、パルプ 生産、薪炭材の生産に適していることから、世界各地で植林がなされてい る。1990年の国連食糧農業機関の調べでは、世界中で推計1千万ヘクタール、 熱帯地域の人工林面積の約1/4にユーカリが植栽されており、世界の主要植 林樹木となっている。 ・ユーカリプタス・カマルドレンシス( ・ユーカリプタス・カマルドレンシス Eucalyptus camaldulensis) オーストラリアに広く自然分布する。樹皮は平滑でまだら模様があり、 黄褐色ないし灰色ではがれやすい。樹高25∼30メートル、径0.9∼2メート ルになり、成長性に優れる。成木の葉は互生、葉柄があり、細長く先がと がっている。塩害、乾燥害、冠水に対して耐性があり、不良環境に耐える 性質がある。成長性に優れることから、パルプ用材、板材として世界各地 に植林されている。王子製紙のこれまでの研究から、ユーカリ属植物の中 では組織培養による再分化率に優れることから、高効率に形質転換が可能 なユーカリの代表的存在である。 ・ユーカリ交雑種( ・ユーカリ交雑種 Eucalyptus grandis×Eucalyptus urophylla) ユーカリプタス・グランディス×ユーカリプタス・ユーロフィラ。ブラ ジルで開発された人工交雑種である。成長性が極めて高い「スーパー・ツ リー」として知られ、インドネシアでは3年生で 21 メートルに生育した報 告がある。成長性に優れることから、パルプ用材としてブラジル、中国南 プロジェクト用語集3 部、インドネシア等に植林され、その産業的価値は高く評価されている。 交雑種であることからクローンによる植林が実施されており、今後は遺伝 子組換えによって成長性以外の要因においても優れたユーカリ交雑種の開 発が期待されている。 ・アグロバクテリウム( ・アグロバクテリウム Agrobacterium tumefaciens) 土壌細菌の 1 種であるが、植物に自分の DNA を送り込み、植物ゲノムに 組み込み、自己の栄養となるアミノ酸誘導体を作らせ利用する。この仕組 みを利用して、非常に効率よく外来遺伝子を植物に導入するシステムが作 られている。 ・いもち病菌 イネの最重要病害の一つであるいもち病を引き起こす。かびの仲間であ る糸状菌で、低温多湿の冷夏に大発生する。いもち病菌には病原性の質的 に異なる系統(レース)が存在し、レースによって罹病しうるイネ品種が 変わってくる。1993 年の米不足の主原因だった。 ・ウルケニア ヤブレツボカビ科に属する海洋由来 DHA 生産菌。モルティエラとは異な る脂肪酸生合成経路を持つと考えられている。 ・クラミドモナス( クラミドモナス Chlamydomonas) 緑藻のクラミドモナスは、2 本の鞭毛を持つおよそ 10μm の単細胞真核生 物で、体細胞の約 40%を占める葉緑体を 1 つ持つ。生活環がよく研究され ており、液体培養だけでなく寒天培地上でコロニーを形成するため、オル ガネラの生合成、鞭毛運動や光走性などの細胞現象研究のモデル生物とし て使われている。従属栄養条件でも生育できるため、特に光合成機構や光 合成遺伝子の発現解析に適している。このため酵母にたとえ Green Yeast とも呼ばれている。 ・黒斑病菌( ・黒斑病菌 Ceratocystis fibtiata) サツマイモの苗、茎、塊根に発生し患部に黒斑を生じる。塊根では掘り 出し時に発病していることもあるが、多くは貯蔵中に進行する。サツモマ イモ品種の多くはこの病気に弱い。 ・白葉枯病菌 イネの重要病害の一つである白葉枯病を引き起こす。細菌の一種で、台 風や集中豪雨等でイネ葉が傷ついたところに侵入する。白葉枯病菌が感染 したイネは、葉縁に沿って基部方向に病斑が拡大黄変し、病勢が激しい場 合は枯死に至る。いもち病菌同様、病原性の質的に異なるレース(系統) が存在し、イネ品種によって罹病するかどうか決まる。 (→いもち病菌) ・ゼニゴケ ・ゼニゴケ 地球上に広く分布するコケ植物の一種であり、進化上「最初の陸上植物」 と考えられている。最初に葉緑体、ミトコンドリアゲノムの全塩基配列が 決定された植物種でもある。性染色体を有する雌雄異株植物であることか ら、性決定、生殖器官分化などの研究に用いられている。近年、ゲノミッ ク・ライブラリーが構築されるとともに形質転換法が確立されたため、遺 伝子機能の解析が可能になった。また、高等植物には見られないアラキド ン酸、エイコサペンタエン酸などの高度不飽和脂肪酸を多く含み、脂肪酸 生合成酵素の遺伝子資源として注目されている。 ・大腸菌( ・大腸菌 Escherichia coli) 腸内細菌の一種。遺伝学的、生化学的に生物のモデル系として最もよく プロジェクト用語集4 研究材料にされている微生物。4.6 Mb の全ゲノム配列が 1997 年に決定され た。 ・モルティエラ クサレケカビ科に属し、高度不飽和脂肪酸であるアラキドン酸を生産す る菌。アラキドン酸生合成系の酵素遺伝子がクローン化されている。 プロジェクト用語集5 プロジェクト用語集 II (学術用語編) あ行 ・アクティベーションタギング法 強力なエンハンサーを Ti プラスミドを介して植物ゲノム DNA にランダム に導入し、導入されたエンハンサー近くの遺伝子の転写活性化によって突 然変異体を作成し、原因となっている転写活性化された遺伝子をクローニ ングする方法である。機能増進型の変異体が得られることから、優性や半 優性の表現型を示すことが多い。 ・アグロバクテリウム法 植物への生物的遺伝子導入法の一つで、アグロバクテリウムの、自身が 持つ Ti プラスミドの T-DNA を植物の核染色体に組み込む能力を利用したも のである。直接導入法と比較して、特殊な機械を必要とせず、操作が簡単 であるという利点がある反面、植物によっては感染が困難なものがあると いう欠点もある(→パーティクルガン法) 。 ・アスコルビン酸ペルオキシダーゼ 光合成生物に広く存在するアスコルビン酸-グルタチオンサイクル(水 -水サイクルも含む)の活性酸素消去系の鍵酵素。高等植物では葉緑体スト ロマ、チラコイド膜、細胞質、ミクロボディに各アイソザイムが存在する が、最近、ミトコンドリアでの存在を示唆する報告もなされている。各ア イソザイムともに H2O2 に特異的であり脂質過酸化物は消去しない。本酵素 はアスコルビン酸非存在下では不安定であり、特に葉緑体型アイソザイム の不安定性は著しい。 ・アミラーゼ 可溶性澱粉、アミロース、グリコーゲンなど、一般にα-1-4-グルカン に作用してα-1,4-グリコシド結合を加水分解する酵素。作用様式によって α-アミラーゼとβ-アミラーゼに区別される。 ・アラキドン酸 5、8,11,14 位にシス 2 重結合を持つ炭素数 20 の直鎖不飽和脂肪酸。リ ノール酸から合成できるが、リノール酸を摂取しなければ動物体内では合 成できないので、広義の必須脂肪酸である。アラキドン酸カスケードの出 発物質であり、プロスタグランジン等の生理活性物質の出発物質でもある。 ・RNAi RNA 干渉(RNA interference)のことで、2 本鎖 RNA を細胞に導入すると、 その RNA に相同な RNA が分解される現象。この仕組みを利用して、遺伝子 をノックアウトして、機能を調べることができる。しかし、全ての遺伝子 がこの方法でノックアウトできるわけではない。植物でも RNAi がアンチセ ンス法よりも効率良く遺伝子発現を抑制できることが知られている。 ・アルコールデヒドロゲナーゼ (alcohol dehydrogenase, ADH) ADH と略され、アルコールとアルデヒド間の酸化還元を触媒する酵素の総 称で、広く生物一般に存在する酵素である。植物においても既に遺伝子が 同定されている。その中で、いくつかの ADH 遺伝子は、時期もしくは器官 特異的に高発現することから、 ADH 遺伝子のプロモーターは外来有用遺伝子 を発現させるための有用なプロモーターの候補として注目されている。 ・RTRT-PCR RNA を cDNA に逆転写した後 PCR 増幅する手法。mRNA の定量的検出、cDNA のクローニングや配列解析など、その用途は幅広い。 プロジェクト用語集6 ・α・α-ヘリックス タンパク質が取りうる構造の一つ。構造的には安定であり、アミノ酸 3.6 個毎に一回転する螺旋構造である。 ・アンチセンス →センス ・安定発現 外部から遺伝子を導入し生物内で発現させる際に、その遺伝子を染色体 に組み込み発現させることをいう。染色体に導入された遺伝子は細胞分裂 時に染色体の一部として複製され、また次世代に遺伝可能である。これに より生物個体内のすべての細胞に導入遺伝子が存在する個体が獲得できる ため、全組織において生育段階を通しての導入遺伝子発現の影響を調べる ことが可能である(→一過性発現) 。 ・EST (Expression Sequence Tag) 1 つのクローンで 1 回の塩基配列決定で読むことのできた部分塩基配列。 巨大 DNA 断片に存在する ORF を探索するために、ライブラリーの中から任 意に取り出した cDNA クローンの部分塩基配列を決定し得られた塩基配列情 報。 ・イソキノリンアルカロイド イソキノリン骨格を有する塩基性含窒素化合物(アルカロイド)であり、 インドール アルカロイドとともに最も多様なアルカロイドの一群である。 鎮痛薬モルヒネや筋弛緩剤ツボクラリン、殺菌剤ベルベリンのように極め て多様な、かつ生理活性の高い化合物が多い。生合成はチロシンに由来す るノルコクラウリンからレティクリンを経て行われる。したがって、その 生合成系の解明は多様な生理活性物質の生物的な生産系の開発につながる ものとして、近年活発な研究が展開されつつある。 ・一過的発現、一過性発現 物理的あるいは電気的方法により遺伝子を大量に細胞内に導入すると、 細胞内の RNA ポリメラーゼや転写因子が導入遺伝子のプロモーターに結合 することにより一時的に急激な遺伝子発現が起こる。これにより導入した プロモータの転写活性などを簡便に検定することができる。多くの場合、 導入された遺伝子は細胞内の DNA 分解酵素により急速に分解されるため発 現は短期間で消失する。 (→安定発現) ・遺伝子組換え植物 外来遺伝子が染色体に組込まれた細胞からなる植物個体を遺伝子組換え 植物あるいはトランスジェニック植物という。 (→形質転換体) ・遺伝子銃法 →パーティクルガン法 ・位置効果(position effect) 位置効果 細胞内で染色体はクロマチン構造を呈しているが、その構造は一様では ない。高度に凝集した不活性なクロマチン(ヘテロクロマチン)はその形 成によって、その領域内や近接する領域の遺伝子の転写を抑制する。この 抑制的な効果は、 「position effect(位置効果) 」と呼ばれている。植物細 胞に導入した外来遺伝子の発現に多様性が生じる原因の一つに、この「位 置効果」が考えられるが、植物細胞において「位置効果」の実体は明らか となっていない。 ・インスレーター プロジェクト用語集7 ヘテロクロマチンに隣接した領域での転写の抑制効果の伝搬およびエン ハンサーからの転写の促進効果の伝搬を阻害する特定の染色体領域をイン スレーターと呼ぶ。インスレーターは、遺伝子発現制御を考えた場合、転 写の抑制あるいは促進の影響が染色体上で広範囲に及ばさないように働い ている。植物細胞に導入した外来遺伝子の発現に多様性が生じる原因の一 つが「位置効果」ならば、導入外来遺伝子の安定発現に「インスレーター」 の利用は、有効な手段と考えられる。 ・イントロン、介在配列 真核生物の DNA にはタンパク質のアミノ酸配列をコードしない領域(イ ントロンまたは介在配列)とコードしている領域(エキソン)がモザイク 状になっている。一次転写産物のイントロンの相当する部分は mRNA に変化 する過程で切除される。 (→エキソン) ・インビトロ( ・インビトロ in vitro) “試験管中で(in glass) ”を意味するラテン語で、 “生体内で”の意味 に使われる in vivo の対語。器官、組織切片、培養細胞、細胞磨砕物、粗 抽出物あるいは細胞小器官を用いた生体外の条件。 ・インビボ( ・インビボ in vivo) “生体内で(in the living body) ”という意味のラテン語。生体、無傷 の器官、あるいは生きた微生物細胞を用いた条件。 ・ウエスタン解析 電気泳動によって分離されたタンパク質をニトロセルロース膜や PVDF 膜 に転写し、そのタンパク質を抗体によって検出する方法。抗体はペルオキ シダーゼ結合抗 IgG などを用いて二次的に検出する。 ・ウミシイタケルシフェラーゼ ウミシイタケ Renilla reinformis より単離されたルシフェラーゼの一種。 ホタルルシフェラーゼとは異なり、発光には ATP を必要としない。基質ル シフェリンもホタルルシフェラーゼとは異なり、交叉反応しないため、デ ュアルルシフェラーゼアッセイの際の対照遺伝子として用いられる。 ・hCAP32 ヒトの白血球に存在する抗菌ペプチド。human cationic antimicrobial peotide の略。 ・HPLC(high-performance liquid chromatography) HPLC 高性能のカラムを用い、高圧をかけて速い速度で混合物の分離・精製を 行う高性能液体クロマトグラフィー。各種の液体クロマトグラフィー(ゲ ル濾過、吸着、分配、およびイオン交換など)とともに使われる。 ・栄養生長 植物の生長相は大きく栄養生長期と生殖生長期に分けられる。栄養生長 期は、葉を発達させ、主として光合成により結実に向けての植物体の構築 とそのエネルギーの貯蔵を行う。生殖生長期は、花を分化させ、主として 開花結実にそのエネルギーを消費する。大部分の種子植物をみると、発芽 後はじめに栄養生長期があり、その後生殖生長期に移行し、開花結実する。 ・エキソン ・エキソン 真核生物の遺伝子でタンパク質をコードしている領域。 (→イントロン) ・SAMDC(S-adenosylmethionine decarboxylase) SAMDC S-アデノシルメチオニン(SAM)の脱炭酸反応を触媒する酵素。SAMDC は プロジェクト用語集8 スペルミジンおよびスペルミン合成の鍵酵素とされている。 ・SDSSDS-PAGE( PAGE(SDSSDS-polyacrylamide gel electrophoresis) electrophoresis) ポリアクリルアミドゲル中で行う電気泳動の総称。主にタンパク質およ び核酸の分離分析のために頻繁に用いられる。 ・N-末端 タンパク質またはペプチド中で遊離のα-アミノ基をもつアミノ酸残基 を N 末端とよぶ。簡単にはポリペブチド鎖の 1 番目のアミノ酸残基が N 末 端。普通のタンパク質やペプチドでは 1 個の N 末端がある。 ・mRNA →メッセンジャーRNA ・MGBG(methylglyoxalbis(guanylhydrazone)) MGBG ポリアミン合成に関与する酵素、SAMDC の強力な阻害剤。MGBG を植物体 に与えると、通常はスペルミジンやスペルミン含量が低下するので(前駆 体のプトレシン含量は増加することが多い) 、スペルミジンやスペルミンの 生理的機能の研究にしばしば用いられる。但し、MGBG 処理によってまれに SAMDC 活性が高まることがあるので、注意が必要である。 ・Fv/Fm 光合成は、葉緑体における光エネルギーの化学エネルギーへの変換反応 (光化学反応)と化学エネルギーを用いた CO2 の固定反応からなる。Fv/Fm は、光化学反応で重要な役割を果たしている光化学系Ⅱ(PS II)のクロロ フィルタンパク複合体の活性の指標となるパラメータで、葉緑素蛍光計に よって非破壊的に計測される。葉が光下で低温にさらされると PS II に不 可逆的な障害が発生して光化学反応が阻害されることがあるので、Fv/Fm は葉の光合成活性の重要な指標の一つとなる。 ・エリシター 植物の生体防御反応を誘導する活性のある物質の総称。紫外線や金属イ オンなど非生物起源のものと、生物由来のものとがある。生物由来のエリ シターの多くは、病原菌や宿主植物の細胞表層由来の断片や病原菌の分泌 物である。 ・LALA-PCR (Long and Accurate PCR) PCR 技術は 5 kbp 以上の長さの遺伝子の増幅が難しいこと、酵素の塩基取 り込みの間違いによる変異の導入が問題となって、ゲノム DNA の増幅など の応用が難しい場合がある。LA-PCR は、DNA 増幅の正確性と増幅鎖長を改 良した特殊な DNA ポリメラーゼを用いて行う PCR 法であり、ゲノム解析、 長鎖 DNA 断片のクローニングおよび変異導入などが可能である。 ・オーキシン 植物ホルモンの一種。植物の茎の先端で形成され、茎中をその基部に向 かって移動しながら成長を促進する物質についてオーキシンと命名された。 ほとんどの天然オーキシンはインドール酢酸かその類縁化合物である。合 成オーキシンとしては 2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D) 、ナフタレン 酢酸(NAA)などが知られている。オーキシンは茎の伸長成長、果実の肥大 成長、発根、頂芽優勢、細胞分裂、中性植物の花芽形成などを促進する。 高等植物の屈性の多くも茎中のオーキシンの分布の差により引き起こされ る。 ・オープンリーディングフレーム(ORF) ・オープンリーディングフレーム 終始コドンに中断されずにアミノ酸のコドンが続く遺伝暗号の読み枠を プロジェクト用語集9 いう。長い塩基配列中に終始コドン以外のコドンだけが続く確率は低く、 長い ORF は、タンパク質の遺伝情報をコードしている可能性が高い。 か行 ・介在配列 →イントロン ・開始コドン mRNA からタンパク質が翻訳される過程で、タンパク質合成の開始を指定 するコドン。例外を除きメチオニンのコドンである AUG である。 ・回文配列 →非回文配列 ・外来遺伝子 →構造遺伝子 ・核 細胞内にあって遺伝情報源である DNA の大部分を含む細胞内小器官。そ の機能は、生物の遺伝情報の貯蔵、発現及びその複製である。 ・GUS histochemistry GUS 遺 伝 子 を 導 入 し た 組 換 え 体 植 物 を 5-bromo-4-chloro-3-indolyl-b-D-glucuronide (X-Gluc)を含む発色反応液 で処理することにより生成・蓄積したインジゴン色素を指標として GUS 遺 伝子の発現している組織を検出する方法。プロモーターの活性特性を調べ る方法として用いられる。 ・カタラーゼ 動物、植物、微生物に広く分布する H2O2 消去酵素。2H2O2→2H2O+O2 の反応 を触媒する。アスコルビン酸ペルオキシダーゼやグルタチオンペルオキシ ダーゼなどの特異的ペルオキシダーゼと異なり、 NADPH などの特異的な還元 力をを必要とせずに H2O2 を消去するが、H2O2 に対する親和性は低い。高等植 物では主にミクロボディ(グリオキシゾーム、ペルオキシゾーム)に局在 し、脂肪酸β酸化系などで生成する H2O2 を消去する。 ・活性酸素 植物における一連の生体防御反応のごく初期のシグナル。植物が病原菌 の侵入を認識したとき、一過的に生成される。シグナルとして細胞内に伝 達されると、病原菌を攻撃できるタンパク質や抗菌性物質の蓄積を誘導す る。また直接病原菌を攻撃したり、細胞壁タンパク質の結合を強化したり する。 ・カナマイシン アミノグリコシド系抗生物質でグラム陽性菌、陰性菌に抗菌活性を示す。 タンパク質合成の開始およびペプチド鎖の延長を阻害する。ハイグロマイ シン同様、カナマイシン耐性遺伝子を同時に導入しておくことにより遺伝 子導入植物の選抜に使用できるが、植物種によっては抵抗性を示すため他 の抗生物質の選択が必要となる。 ・カフェイン コーヒーの種子、チャの葉などに含まれるプリンアルカロイドの一種で あり、キサンチンの誘導体(1,3,7-トリメチルキサンチン)である。カフ ェインはコーヒーやチャ植物において主に、7-メチルキサントシンから 7メチルキサンチン、テオブロミンを経て生合成される。中枢神経系に対す プロジェクト用語集10 る興奮作用、利尿作用などを生じることが知られている。カフェインの過 剰摂取は神経過敏、睡眠傷害、不整脈などを引き起こす。昆虫に対しては 殺虫効果、摂食忌避効果を示す。 ・カリクリン A フォスファターゼ阻害剤の一種。植物において外界からのストレス応答 を調べるとき、活性酸素産生量を指標にすることがあるが、活性酸素産生 に関わるリン酸化 NADPH オキシダーゼをフォスファターゼが脱リン酸化す るのを阻害し、活性酸素産生量を増幅するのに用いる。 ・カリフラワーモザイクウィルス 35S( 35S(CaMV35S)プロモーター CaMV35S)プロモーター カリフラワーモザイクウィルス(CaMV)は、アブラナ科植物に全身感染 する開環状二本鎖 DNA の遺伝子を持つ植物ウィルスである。その二本鎖 DNA から転写される mRNA は 2 種類(35S と 19S)検出され、35S RNA 用の プロモーターは強い活性を持ち、CaMV35S プロモーターと呼ばれる。この プロモーターは、高等植物への導入遺伝子の発現によく用いられる。 ・カルス 分化した植物組織(外植片)の一部を適当な培地に移して培養すると、 脱分化が起こり、細胞分裂を繰り返して無定形の組織塊を生ずる。これを カルスという。普通、外植片からカルスを誘導し、増殖させるには基本培 地にオーキシンを加えるが、植物材料によってはサイトカイニンを必要と する。 ・γ・γ-リノレイン酸 6、9,12 位にシス 2 重結合を持つ炭素数 18 の直鎖不飽和脂肪酸。リノー ル酸のΔ6 不飽和化により生成し、さらに鎖長延長により、ジホモγ-リノ レン酸、その不飽和化によりアラキドン酸になる。 ・キチナーゼ キチン(節足動物、軟体動物、外肛動物、菌類の主要な構造多糖)を加 水分解してN−アセチルグルコサミンを生成する反応を触媒する酵素。カ タツムリの胃液、昆虫の脱皮腺分泌液、脱皮液、アーモンドの果皮、糸状 菌などに見出されている。 ・キチン結合領域(chitin binding domain, CBD) ・キチン結合領域 菌類の細胞壁を構成する成分の一つにキチンという多糖が存在する。キ チンを含む細胞壁に働きかけるタンパク質の中に、キチンと結合する領域 が存在し、この領域をキチン結合領域という。 ・Cab chlorophyll a/b binding protein の略称。光合成の集光システムの構造 タンパク質で、クロロフィル a、b に結合する。Cab 遺伝子のプロモーター は 強 い 光 誘 導 型 の 性 質 を 持 っ て お り 、 PEPC ( phosphoenolpyruvate carboxylase)遺伝子のプロモーター同様、光誘導型のプロモーターとして の利用が可能である。 ・GAL4、 GAL4、GAL4 結合配列 GAL4 は遺伝子の転写を活性化する調節タンパクで、ガラクトースをグル コースに変換する酵素をコードする酵母遺伝子群の転写の活性化に関与し ている。GAL4 には独立した DNA 結合ドメインと転写活性化ドメインがあり、 DNA 結合ドメインが結合する DNA 上の配列を GAL4 結合配列という。 ・クエン酸 植物細胞内に通常存在するヒドロキシトリカルボン酸の一種であり、 プロジェクト用語集11 糖・脂肪酸・アミノ酸が代謝され生物エネルギーを獲得する過程でクレブ ス回路(クエン酸回路)の中間代謝産物として重要な役割を果たしている。 さらに、クエン酸は植物のリン酸獲得戦略においても重要な役割を担って いる。その役割とは無機態リン酸の金属をキレートすることであり、その ことでリン酸が可給態化され植物が利用できる。植物が放出する有機酸と していくつか知られているが、ほとんどはクエン酸かリンゴ酸である。し かしこれらの有機酸は金属に対するキレート力が異なっており、リンゴ酸 よりもクエン酸の方が高いことが報告されている。クエン酸放出に関する 生理・生化学的な詳細な解析から高いクエン酸放出能力とクエン酸代謝は 関係があることが明らかになってきている。そこで、本プロジェクトにお いて王子製紙はクエン酸代謝を改変することでクエン酸放出能力を増強し 難溶性無機態リン酸の利用能力を強化したユーカリの作出を実施する。 (→難溶性リン酸) ・グルタチオンペルオキシダーゼ 動物組織に広く分布する過酸化物消去酵素。基質特異性、分子特性およ び局在性の違いにより4つのファミリーに分類される。何れも、還元型グ ルタチオンを特異電子供与体として、活性中心にセレンをセレノシステイ ンの形で有する。一方、植物細胞で本酵素は存在しないと考えられていた が、最近種々の光合成生物より動物のグルタチオンペルオキシダーゼに相 同な遺伝子が見いだされている。しかし、それらの活性中心はセレノシス テインではなくシステインであり、動物のそれに比べて活性が非常に低く、 その生理的意義については不明な点が多い。 ・クロロプラスト →葉緑体 ・クローニング 組換え DNA 実験において、目的の遺伝子を含む DNA 断片をプラスミドな どのベクターに挿入し、これを宿主である大腸菌などに導入して増殖させ ることにより、その DNA を大量に取得すること。 ・クローン 分子生物学的な意味では、ある遺伝子の分離・増殖・維持を目的として 得られた、同一の塩基配列を持つ DNA 断片の均一な集団をいう。通常は DNA 断片をプラスミドなどのベクターに挿入し、大腸菌などの宿主生物に導入 して増殖させることにより製作・維持を行う。生物学的には同一遺伝情報 をもった細胞集団、個体をクローンという。 ・形質転換 細胞や生物の機能や外見(形質)が変化することをいう。形質転換には、 細胞内への DNA の取込み、細胞の DNA との組換え、形質の発現という一連 の過程が必要である。 ・形質転換体 ・形質転換体 外来遺伝子が染色体に組込まれ、その結果新しい形質が表現されるよう になり、その性質が子孫の細胞にも受け継がれるようになった個体を形質 転換体という。また、外来遺伝子が染色体に組込まれた細胞からなる植物 個体をトランスジェニック植物という。 (→遺伝子組換え植物、トランスジ ェニック植物) ・茎頂 茎の先端に位置し、茎頂分裂組織(成長点)と葉原基から形成される複 プロジェクト用語集12 合器官。植物体の多くの部分は茎頂分裂組織から分化して形成されたもの である。栄養生長期の茎頂分裂組織は、生殖生長期に移行すると生殖生長 期分裂組織(花序分裂組織)へと転換する。 ・ゲノム配列 染色体(ゲノム)DNA の塩基配列。シロイヌナズナ、イネでは、一部の領域(テ ロメア、セントロメア等)を除き塩基配列が解読された。 4 ゲノムライブラリー (→cDNA ライブラリー) ・減圧浸潤法(Vaccum infiltration) ・減圧浸潤法 アグロバクテリウム法の一つで、弱い減圧下で植物体を直接アグロバク テリウム菌液に浸し感染させる方法。組織培養によらず種子または植物体 に直接アグロバクテリウムに感染させる in planta 法の一つであるため、 高度な技術を必要とせず、組織培養過程でしばしば発生する体細胞変異を 少なく抑えることができるという利点がある。 ・公開データベース(DNA 塩基配列データベース) ・公開データベース 生物の遺伝情報が詰まった DNA の塩基配列を蓄積、整理、標準化(デー タベース化)したものを世界各国の研究者に無償で提供しているもの。日 本では、GenBank、EMBL のデータベースが供給されている。 ・光化学系 I、光化学系 II 酸素発生を行う光合成生物のチラコイド膜に存在する二種の反応中心複 合体。光照射により励起される。光化学系 II は H2O より電子を受け取り、 その電子はチトクロム b6f 複合体を介して光化学系 I に運ばれ NADP+に渡さ れる。この電子伝達に共役して ATP が合成される。光化学系 I 反応中心複 合体には反応中心クロロフィル P700、 ビタミン K1、 鉄硫黄センターなどが、 光化学系 II 反応中心複合体には反応中心クロロフィル P680、 フェオフィチ ン、プラストキノン、Mn、タンパク質のチロシン残基が働いている。 ・光合成速度 一定面積の葉が一定時間に固定する2酸化炭素(CO2)の量を光合成速度 という。植物の生長や発育に必要な有機物質はすべて光合成により生じた 糖に由来するので、光合成は植物生育の基本となる物質生産反応である。 植物が不良な環境条件下に置かれると、光合成を行う場である光合成器官 (葉緑体)に様々な障害が発生して光合成能力が減退し、作物の生産力低 下が引き起こされるので、光合成器官の環境ストレス耐性の大きさは不良 環境下での作物生産性に重大な影響を及ぼす。 ・抗菌ペプチド 抗菌性を持つペプチド(アミノ酸が数個〜数百個から構成される低分子 量タンパク質) 。細胞膜や細胞壁を破壊することにより抗菌性を発揮する。 細胞膜や細胞壁は簡単にその性質、構造自体を変化させることは難しい。 従ってこれらをターゲットにする抗菌ペプチドはその耐性を持つ菌があら われにくいといわれている。 ・構造遺伝子 転写・翻訳を受け、タンパク質のアミノ酸配列を規定している遺伝子を 構造遺伝子という。また、ある植物や生物に導入した遺伝子が、本来その 植物や生物が内的に保有していない異種生物由来のものである場合、その 遺伝子を外来遺伝子という。 ・後代 プロジェクト用語集13 対象の生物を交配して得られた子孫。遺伝子組み換え植物が実用に足る かどうかを判断するためには、導入された遺伝形質が後代に受け継がれて いることを確認することが必要不可欠である。 ・高度不飽和脂肪酸 炭素鎖長 20、2重結合 3 個以上含むものを特に高度不飽和脂肪酸と呼び、 鎖長 18 以下の多不飽和脂肪酸と区別される。 ・高発現プロモーター →プロモーター ・コサプレッション 外来遺伝子を導入した植物において、その外来遺伝子と、その遺伝子と相同 性を有する内在性の遺伝子の両方の発現が抑制される現象。その機構は現在 の所不明な点が多い。(→ジーンサイレンシング) ・コドン 遺伝子にはタンパク質合成のための遺伝暗号が塩基配列の形で保存され ている。タンパク質を構成する 20 種類のアミノ酸おのおのに 3 塩基連鎖が 対応しており、これをコドンという。例外を除き、コドンは全生物に通じ て共通である。 ・コドン利用頻度(codon usage) ・コドン利用頻度 例えば、イソロイシンには AUU、AUC、AUA の3種のコドンが対応してい るが、3種のコドンの出現頻度には生物種、オルガネラにより違いが見ら れる。この割合をコドン利用頻度という。異種生物の遺伝子を導入する際 に、コドン利用頻度を元に宿主となる生物種で出現頻度の高いコドンを見 いだし、導入遺伝子のコドンをそのコドンに改変することにより、翻訳の 至適化を行うことが可能である。 ・ゴルジ体 真核細胞の細胞小器官の一種で扁平な嚢状の重層した構造の周囲に液胞 を持つ。ゴルジ体の主要な機能は分泌である。分泌細胞では、小胞体で合 成された分泌タンパク質がゴルジ体へ輸送され、そこで化学修飾(糖の添 加)を受け、扁平嚢から小胞が形成される過程で濃縮され、分泌顆粒とし て包装される。植物細胞では多糖の合成と細胞外分泌にも寄与している。 ・コンストラスト ここでは発現ベクターと同義で使用(→発現ベクター) さ行 ・サイトカイニン 植物ホルモンの一種。タバコのカルスの細胞分裂促進物質であるカイネ チン様の生理活性を示す物質の総称である。細胞分裂、芽の伸長、葉の成 長促進作用、葉緑素形成促進、気孔開口作用などを示す。 ・再分化 脱分化によりカルスとなった細胞群を適当な培地に移すことにより、茎、 葉、根を形成するが、このことを再分化という。カルスの状態で遺伝子導 入を行った場合、再分化により遺伝子導入個体を得ることになる。 ・細胞外分泌シグナル シグナル配列のうち、前駆体タンパク質を細胞外または細胞間隙に移行 させる際の信号となるアミノ酸配列を指す。 ・細胞間隙 プロジェクト用語集14 組織を構成する細胞間に存在する間隙のこと。この間隙を通して物質の 通過あるいは排泄などが行われ、機能上の必要から拡大することが可能で ある。 ・細胞内小器官(オルガネラ) 原形質の一部が特殊に分化し、一定の機能をもつ有機的単位となった細 胞内の構造。狭義には、特殊な酵素活性と遺伝情報(DNA)を併せ持つ 構造(核、ミトコンドリア、葉緑体)を指し、広義には、膜に囲まれ細胞 基質から判然と区画された構造(核、ミトコンドリア、葉緑体、リソソー ム、ミクロボディー等)を指す。 ・サイレージ 水分含量の高い素材を踏圧、密封、嫌気条件で貯蔵した飼料を指す。サ イレージ調製の原理は、第一に嫌気的条件を保って好気性微生物による損 耗を防ぎ、第二に嫌気的条件において増殖する酪酸菌による養分の損耗、 変敗を防止することにある。従って、サイレージ調製においては密閉を完 全にすること、また、乳酸発酵を促進してpHを低下させることが重要で ある。 ・鎖延長酵素 脂肪酸の鎖長を延長する酵素。高等植物では炭素数 18(C18 と略す。以 下同様)までしか延長できないか、飽和脂肪酸しか延長できない酵素しか 持たないと言われている。 そこで、 モルティエラやウルケニアから C18→C20 や C20→C22 の鎖長延長酵素遺伝子をクローン化し、植物に導入すれば、ア ラキドン酸(C20)や DHA(C22)生産植物ができると考えられる。ただし、 鎖長延長酵素に加えて、Δ4、5,6 不飽和化酵素遺伝子も導入する必用があ る。 ・サザン解析 特定の配列を持つ DNA 断片の分子量を同定する方法。DNA を制限酵素で断 片化した後、電気泳動によって断片の長さに応じて分離し、ナイロン膜や ニトロセルロース膜に転写・固定化する。この膜を特定の塩基配列の DNA あるいは RNA 断片を含む溶液中に置くと、断片と相補的な配列を持つ DNA が膜に結合した状態で断片と2本鎖を形成する。予め断片に標識を付けて おけば、断片が結合した部分のみが膜の中から検出される。 ・サブクローニング DNA 断片をクローニング後分離し、 数種の制限酵素を用いてさらに小さい 断片に切断していく分子クローニングの変法。求める DNA 断片は適当なプ ラスミドを用いて再クローニングされる。 ・サプレッション PCR DNA 断片の両末端にある程度以上の長さの同一のリンカーが結合してい る場合、denature→renature の過程でほとんどの DNA 分子が(プライマー ではなく)自己の末端配列で会合し、フライパンのような構造を取って、 PCR による増幅を妨げること。これにより、末端が同一の配列を持つ DNA 断片の非特異的な増幅が抑制され、目的の DNA 断片のみが効率的に増幅さ れる。 ・35S コアプロモーター CaMV35S プロモーターを-90 bp まで欠失し、転写活性を低くしたプロモ ーターのことを 35S コアプロモーターと呼ぶ。 (→CaMV35S プロモーター) ・酸素毒ストレス プロジェクト用語集15 →光・酸素毒ストレス GFP( (green fluorescence protein) ・ GFP protein) 発光オワンクラゲ Aequorea victoria より単離された緑色の蛍光を発す るタンパク質。その遺伝子はレポーター遺伝子として用いられる。シグナ ルの検出に際して試料の固定や基質を必要としないため、生体観察が可能 である、などの利点がある。 ・シグナル配列、シグナルペプチド 分泌タンパク質と細胞膜タンパク質および小胞体などに局在するタンパ ク質の大部分は、合成直後小胞体膜に移行した後、膜透過の過程を経る。 これらのタンパク質を選別するシグナルは多くの場合タンパク質自身の N 末端に存在する。これをシグナル配列(シグナルペプチド)という。15-30 残基からなる疎水性を特徴とする配列であり、多くの場合小胞体の膜透過 に伴って、小胞体の内腔側に存在するシグナルペプチダーゼにより切断さ れる。 ・CHL( CHL(Chines humster lung cell line)細胞 line)細胞 チャイニーズハムスター新生児肺細胞。種々の薬剤の細胞毒性試験、体 細胞変異試験に良く用いられる。 DNA) ・cDNA(complementary cDNA 一本鎖 RNA(mRNA)を鋳型として逆転写酵素によって合成された、もとの RNA と相補的な塩基配列をもつ DNA。一本鎖 cDNA を鋳型にして DNA 合成酵 素(DNA ポリメラーゼ)によって合成された二本鎖 DNA も cDNA と呼ぶ。 ・cDNA ライブラリー ゲノムを構成している全 DNA を制限酵素を用いて適当な大きさの断片に 分断し、それらをベクターDNA につないで宿主細胞に導入して増殖させ、各 DNA 断片のクローンをつくったもの。cDNA を用いて同様に増殖させたもの を cDNA ライブラリーという。 (→ゲノムライブラリー) ・脂肪酸鎖長延長酵素(FAE ・脂肪酸鎖長延長酵素(FAE)遺伝子 FAE)遺伝子 炭素鎖が 20 以上の長鎖脂肪酸の生合成経路において、鎖長延長反応を 担う酵素遺伝子。長鎖脂肪酸は一般に、de novo 合成されたパルミチン酸 (炭素鎖 16 の飽和脂肪酸) を基質として、鎖長延長反応 (elongation) と 不飽和化反応 (desaturation) の連続した反応により生合成される。植物 の鎖長延長酵素 (fatty acid elongase; FAE) 遺伝子としては、シロイヌ ナズナ、ホホバ (Simmondsia chinensis) 等から単離された、β-ketoacyl CoA synthase (KCS) 遺伝子が知られている。この KCS 遺伝子は植物特異的 な鎖長延長酵素遺伝子と考えられている。 ・ジホモγ・ジホモγ-リノレイン酸 8、11,14 位にシス2重結合を持つ炭素数 20 の直鎖不飽和脂肪酸。アラ キドン酸同様エイコサノイド合成の前駆体となるが、アラキドン酸が2群 のプロスタグランジンを形成するのに対し、ジホモγ-リノレン酸は 1 群の プロスタグランジンを形成する。 ・GUS →β-グルクロニダーゼ ・終止コドン タンパク質の合成を終わらせるためのコドン。UAA、UAG、UGA の3種があ り、例外を除き、これらに対応するアミノ酸は存在しない。 プロジェクト用語集16 ・シュート 茎とそれについた葉の総体。苗条、枝条、芽条。 ・縮重プライマー、縮退プライマー 一つのアミノ酸には複数のアンチコドンが存在する。したがって、アミ ノ酸配列に対応した DNA は複数存在する。アミノ酸配列に対応したコドン 全てに対応させたプライマーのことを宿退プライマーという。 ・C-末端 タンパク質またはペプチド中で遊離のα-カルボキシル基をもつアミノ 酸残基を C 末端とよぶ。 簡単にはポリペブチド鎖の最後のアミノ酸残基が C 末端。普通のタンパク質やペプチドでは 1 個の C 末端がある。 ・ジーンサイレンシング ある遺伝子が、DNA レベルでは変異を起こしていないにも関わらず、染色体 上の位置関係や外来遺伝子の影響などの要因により発現が抑制される現象。 コサプレッションは外来遺伝子によるジーンサイレンシングの好例である。 (→コサプレッション) ・親水性アミノ酸 →疎水性アミノ酸 ・ストレプトアビジン Streptcoccus avidii 由来のタンパク質。ビオチンと強く結合すること から酵素や DNA の固定化や生化学標識法に良く用いられる。卵白由来のア ビジンより塩基性(正電荷)が弱く、より選択的にビオチンを結合するこ とができる。 ・ストロマ 葉緑体内部の水溶性成分。種々のイオンや糖リン酸などの低分子物質、 還元的ペントースリン酸回路の酵素が存在し、炭酸固定反応が行われる。 また DNA、mRNA、tRNA、リボソームが含まれており、タンパク質合成の場で もある。 ・ストレス応答 生物にとって有害な作用により引き起こされる生体内の緊張状態のこと。 植物の場合、環境からのさまざまなストレス(乾燥、塩、温度変化、光、 傷害など)に対する自己防御反応。 ・スペルミジン 第一級アミノ基を3個もつトリアミンで、ジアミンのプトレシンにアミ ノプロピル基が付加して合成されされる。また、スペルミジンにさらに1 個のアミノプロピル基が付加すると、テトラアミンのスペルミンになる。 これらの付加反応はスペルミジン合成酵素およびスペルミン合成酵素が触 媒する。スペルミジンは他のポリアミンと同様に細胞内ではポリカチオン として存在するため、核酸、タンパク、細胞膜、細胞壁などと結合し、そ れらの機能性や安定性を高める機能があると考えられている。 ・制限酵素 ある決まった塩基配列を認識し切断する酵素。例えば DNA 上で HindIII という酵素は「AAGCTT」 、EcoRI 酵素は「GAATTC」という配列を認識し、切 断する。 ・セレニウム結合タンパク質(SBP ・セレニウム結合タンパク質(SBP) SBP) 動物において、発ガン性物質であるセレン元素やアセトアミノフェンを 大量に投与した際、これらの物質に結合するタンパク質として単離された。 プロジェクト用語集17 その機能は明らかでないが、生体異物との結合による解毒、細胞内に発生 した活性酸素の捕捉等の働きが推測されている。植物においても類似のタ ンパク質の存在が明らかになりつつある。 ・センス、アンチセンス DNA の相補的二本鎖のうち、タンパク質をコードしている(mRNA と同一 の配列をもつ)鎖をセンス鎖、もう一方をアンチセンス鎖と呼ぶ。遺伝子 組換え技術で生体内でアンチセンス鎖を転写するようにすれば、内在性の センス鎖からの転写産物とハイブリッドを形成し、対応するタンパク質の 合成を阻害することができる。 ・疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸 アミノ酸の中には、その構造により水に溶けにくいものと、溶けやすい ものがある。前者を疎水性アミノ酸、後者を親水性アミノ酸と呼ぶ。疎水 性アミノ酸にはフェニルアラニン、プロリン等、親水性アミノ酸にはリジ ンやセリン等がある。 た行 ・多重遺伝子 植物、動物、微生物に新たな性質を加えたり、従来の性質を強化するに は一つの遺伝子を導入するだけでは効果が小さかったり、また効果が認め られない場合がある。そこで複数の遺伝子を導入する必要がある。これら 複数の遺伝子を連結したものを多重遺伝子という。 ・ターミネーター 転写を終結させるのに必要な DNA 塩基配列で、RNA ポリメラーゼの反応 を停止させるとともにこれと合成された RNA を DNA から遊離させる。 ・単胃家畜 牛などの反芻動物との対比で、単一の胃を有する家畜の総称であり、豚、 鶏等が該当する。反芻動物のルーメン(第一胃)には多数の微生物が生息 し、それにより反芻動物が摂取した飼料中成分の分解等の化学変化が起き るが、単胃家畜の胃にはそのような微生物がほとんど生息しないため、飼 料中の成分(例えばフィチン酸)はほとんど分解されずに排出される。 ・WPC Wood and Plastic Combination または Composite の略称。木質と石油系 プラスチックの複合材の事。プラスチックのモノマーを植物系バイオマス へ充填し、加熱触媒処理によるポリマー化を行う事により生産されている 製品群として知られている。また、粉体とプラスチックを混合し、押し出 し成形して生産されるものもある。特徴として、プラスチックの充填によ り木質の力学強度が増大したり、吸湿性が低下するなど、通常の建材より も優れている。問題点として、プラスチックの充填または混合にコストが かかる事、プラスチック原料には環境ホルモンやシックハウスの原因とな る VOC(揮発性有機化合物)になるものがある事、などがあげられる。 ・チオニン 抗菌性ペプチドの一種である。全体的に塩基性(正電荷)が強い。 ・チラコイド膜 葉緑体内膜の単位構造。扁平な袋状の小胞で、積み重なった層状構造(グ ラナ)を形成することが多い。光合成の初期過程、水から NADP+への電子 プロジェクト用語集18 伝達、およびそれに共役した光リン酸化の行われる場所であり、クロロフ ィルや各種酵素などが膜に機能的に組み込まれている。 ・TAC ベクター(Transformation compitent artificial chromosome ベク ベクター ター) 植物への長鎖遺伝子導入を目的に開発されたベクター。アグロバクテリ ウム法を用い 80kbp を越える遺伝子を導入することが可能であるため、一 度に多重遺伝子を導入するのに適している。セレクションマーカーとして ハイグロマイシン耐性遺伝子を持つ。 ・T-DNA Agrobacterium tumefacience の保有する Ti プラスミド上の特定領域で、 一対の 25 塩基対の配列に囲まれている。この細菌が植物に感染すると、25 塩基の内側の DNA が植物細胞に転移し、核染色体に組込まれる。 ・DNA アレイ法 多数の遺伝子が発現している様子を同時に検出するハイブリダイゼーシ ョンの 1 つ。なるべく多くの cDNA、ゲノム DNA 断片あるいはオリゴヌクレ オチドを支持体に固定して、調べたい組織から抽出した全 mRNA から合成し た cDNA をプローブとしてハイブリダイゼーションを行う。通常は小さなガ ラス上に数千から数万の DNA 断片を固定する。 (→マイクロアレイ、マクロ アレイ) ・DNA ポリメラーゼ DNA 複製において 4 種類のデオキシリボヌクレオシド3-リン酸を基質と して鋳型 DNA 鎖の塩基配列に従って DNA 鎖の伸長を触媒する酵素。DNA ポ リメラーゼは、それ自身で DNA 鎖の伸長を開始できず必ずプライマーを 必要とし、5’→3’の方向にのみ伸長するという一般特性をもつ。 ・T4DNA ポリメラーゼ 1本鎖 DNA の部分を2本鎖に合成することができる酵素。また末端まで 合成した時、アイドリング反応(合成反応と分解反応を繰り返す)になり 更に基質である dNTP を消費した時点で逆に1本鎖への分解反応に転じる。 分解反応を利用し、突出末端を作製することが可能である。 ・T7RNA ポリメラーゼ 大腸菌に感染する T7 バクテリオファージのもつ RNA ポリメラーゼ。この ポリメラーゼは、T7 ファージプロモーター認識の特異性および転写活性が 高いことから、ある特定の遺伝子の上流にこのプロモーター配列をつけ、 異種生物に導入した場合、T7RNA ポリメラーゼ存在下で、導入遺伝子産物の 高発現が期待できる。 ・テオブロミン キサンチンの誘導体で 3,7位がメチル基に置換された化合物、3,7-ジメ チルキサンチンである。コーヒーやチャ植物のカフェイン生合成経路にお ける主要な中間産物である。コーヒーでは 7-メチルキサンチンメチル化酵 素によって 7-メチルキサンチンから生成される。テオブロミンはカフェイ ン類似の作用を持つが、中枢神経系に対する作用はカフェインより弱いと される。 ・テヌアゾン酸 イネいもち病菌が産生する毒素の一つ。10 ppm でイネ種子発芽阻害の傾 向が認められ、50 ppm で完全に阻害する。また適量をイネ葉に滴下すると、 いもち病斑類似の病斑を形成することが知られている。 プロジェクト用語集19 ・転写因子 DNA から RNA を合成する転写反応において、転写酵素(RNA ポリメラーゼ) 以外に必要となるタンパク質性の因子。広義には、タンパク質因子以外で 転写に効果をもたらすものも含む。 ・転写、転写開始点 DNA を鋳型として、その塩基配列を相補的 RNA として写しとる反応を転 写という。また、RNA に転写される DNA 上の最初の塩基を転写開始点とい う。 ・点変異(point mutation) ・点変異 遺伝物質の構造変化を総称して突然変異と呼び、塩基対の変化が一対だ けに限られる突然変異を点変異という。点変異には、塩基の置換、塩基の 挿入、塩基の欠失がありうるが、普通に点変異というときは塩基の置換を さすこと場合が多い。 ・糖鎖 細胞膜上のタンパク質や分泌されるタンパク質上に付加された単糖(Nアセチルグルコサミン、マンノース、グルコース、ガラクトース等)の連 なり。糖鎖の形成の大部分は小胞体で行われる。小胞体中には 14 個の単糖 からなるオリゴ糖が準備されていて、小胞体と結合したリボソームで合成 されたタンパク質中に Asn-X-Ser/Thr (X は Pro 以外のアミノ酸)というア ミノ酸配列があると、Asn のアミノ基にオリゴ糖が付加される。この糖鎖は タンパク質がゴルジ体を通過する間に修飾される。これを N 型(又は Asn 型)糖鎖という。これとは別に、Ser または Thr の OH 基に付加される O 型 糖鎖も知られている。 ・登熟 種子が熟すること。ダイズでは脂肪酸は登熟中期(種子重 0.1 g〜0.3 g) に最も蓄積する。 ・特異的遺伝子発現 植物の遺伝子は、器官、組織、時期で特異的に発現したり、特定の環境 条件で発現したりする。外来遺伝子導入においては、植物体全体で発現さ せたり、どんな環境条件でも恒常的に発現させるのではなく、特定の器官 や環境条件で発現させることが必要である。目的に応じて発現させるため に、器官、時期特異的プロモーターやストレス応答性プロモーターが利用 される。原理的には、植物で特異的に発現している遺伝子を単離し、その プロモーター領域を利用する。 ・ドコサエキサエン酸 DHA。4,7,10,13,16,19 位にシス2重結合を持つ炭素数 22 の直鎖不 飽和脂肪酸。イワシ、アジ、サバ等に多く含まれる。抗血栓、抗動脈硬化、 抗炎症、抗ガン作用が報告されている。 ・突出末端 DNA は2本鎖でできているが、末端が1本鎖のものを突出末端という。制 限酵素等で DNA を処理した場合にこのような末端が生じる。 ・トランス因子 遺伝子の転写をトランスに活性化する因子。遺伝子上の転写活性に影響 を与える領域に結合することで作用する。それ自体が DNA 結合能をもち、 単独で転写活性作用をもつものと、単独では DNA と結合せず、他のタンパ ク質との相互作用を通じて転写を活性化するものとがある。 プロジェクト用語集20 ・トランスジェニック植物 →遺伝子組換え植物、形質転換体 な行 ・難溶性リン酸 リンは植物にとって必須多量元素であり、リン酸イオンの形で土壌から 吸収される。土壌中におけるリン酸の存在形態は①有効態リン酸(リン酸 イオン) 、②有機態リン酸、③無機態リン酸の 3 つに分けられるが、通常植 物が利用できない有機態リン酸と無機態リン酸を総称して難溶性リン酸と 呼ぶ。有機態リン酸は大部分がフィチン酸であり(20-50%) 、無機態リン酸 は Ca、Al、Fe といった金属と結合しているものが主である。土壌中の有効 態リン酸の濃度は一般に低く、多くは難溶性リン酸として存在する。これ はリン酸イオンの反応性の高さに起因するものであり、このために施肥さ れたリン酸肥料も 90-98%が難溶性リン酸として土壌中に固定されると報告 されている。また、世界の耕作可能な陸地面積の約 30%(39 億 5000 万 ha) を占める酸性土壌(世界中に広く分布している)では Al や Fe が多量に溶 出してくるために無機態塩形成によるリン酸施肥効率の低下はさらに深刻 である。こういった低リン酸ストレスに対する植物の回避機構がいくつか 知られており、1つは根からの有機酸放出である。有機酸は金属をキレー トする力が強いために無機態塩からリン酸を可溶化できる。 (→クエン酸) ・ノザン解析 特定の mRNA の発現を定性的・定量的に調べる方法。電気泳動により、鎖 長に応じて分離した RNA を、 ナイロン膜やニトロセルロース膜に転写する。 この膜を特定の塩基配列の DNA または RNA 断片を含む溶液中に置くと、断 片と相補的な配列を持つ RNA が膜に結合した状態で断片と二本鎖を形成す る。予め断片に標識を付けておけば、断片が結合した部分のみが膜の中か ら検出される。 は行 ・葉 植物体を構成する基本器官の一つで、主に光合成、栄養物質の転換、水 の蒸散などの生理機能を有する器官。一般には地上部にあって緑色を呈し、 茎の周りに規則的に配列している。 ・ハイグロマイシン ハイグロマイシンBのことを指している。アミノグリコシド系抗生物質 でグラム陽性菌、陰性菌、真菌などに抗菌活性を示す。真核細胞のリボソ ームにも作用するため、植物への遺伝子導入時に目的遺伝子と同時にハイ グロマイシン耐性遺伝子を導入しておくと、ハイグロマイシンBで遺伝子 導入植物の選抜をすることが可能となる。 ・バイナリーベクター アグロバクテリウムを用いた植物への外来遺伝子導入法に用いるプラス ミドベクターの一種。アグロバクテリウム中でも大腸菌中でも機能できる 広宿主域複製開始領域を持つことと、T-DNA 部分に 25 bp からなる繰り返し 配列を持つことが特徴である。遺伝子導入に際しては、自身の T-DNA を欠 いた Ti プラスミドをもつアグロバクテリウムを宿主に用いる。このアグロ バクテリウム中にバイナリーベクターが存在すると、 Ti プラスミド上の vir プロジェクト用語集21 領域にコードされているタンパク質がバイナリーベクター上の 25bp の繰り 返し配列に作用して、繰り返し配列に挟まれた領域が切り出され、植物核 ゲノムへ組み込まれる。 ・ハイブリダイゼーション法 一本鎖にした核酸同士の1次構造の相同性の程度を調べる技術。 2 本鎖の 相同性が大きければ大きいほど、2 本鎖の形成の度合は大きくなる。形成さ れるハイブリッドとしては、DNA/DNA、RNA/RNA、DNA/RNA の 3 つの型が ある。 ・培養細胞 生体外で培養維持されている細胞。適当な培養条件を与えることで、ほ とんどの動植物細胞は培養皿の中で生存・増殖させることができる。顕微 鏡観察や特殊な分子の添加や除去の影響を調べたりする生化学的分析等、 様々な用途がある。 ・発現ベクター 遺伝子の機能を解析するために、対象遺伝子を生物内で発現させること を目的としたベクター。遺伝子を発現させる生物の種類、目的によりその 構造は多彩であるが、高等植物の場合、基本的にプロモーター、ターミネ ーターの間に遺伝子を挿入した構造をとっている。 ・パーティクルガン法、遺伝子銃法 細胞に外来遺伝子を導入する方法の一つ。金またはタングステンの微粒 子に遺伝子をコートし、それを組織細胞に直接打ち込む。一過性発現検定 によく用いられる。また、アグロバクテリウム法などでの遺伝子導入が困 難な植物への遺伝子導入法としても有効であることが示されている。訳し て遺伝子銃法と言う。 ・パラキサンチン キサンチンの誘導体で 1,7位がメチル基に置換された化合物、1,7-ジメ チルキサンチンである。コーヒーやチャ植物においては、7-メチルキサン チンからパラキサンチンを経てカフェインを生じるカフェイン生合成経路 (副経路)が知 られている。コーヒーではパラキサンチンを基質として 7-メチルキサンチ ンメチル化酵素 (MXMT) によってカフェインが生成される。 ・パラコート 別名メチルビオローゲン。古くから除草剤として活用されてきた。殺草 機構は、1) 光合成電子伝達系からの電子伝達による1電子還元、2) パラ コートフリーラジカル形成、3) 酸素による酸化、4) 酸素の1電子還元に よるスーパーオキシド(O2-)の生成、5) O2-による葉緑体内成分の非特異的 酸化、6) 枯死、の課程で進む。従って、パラコートは高等植物を含む光合 成生物の酸化ストレスに対する耐性を評価することに頻繁に用いられる。 ・パラコート耐性 パラコートは細胞内で活性酸素種を生成するため、植物をパラコート処 理することにより活性酸素種の生成を伴う酸化ストレスに暴露された状態 を模倣することができる。したがって、リーフディスクのパラコート液へ の浸潤や葉に対するパラコートの噴霧により、その後の光照射下でのクロ ロフィルの消長、クロロフィル蛍光、光合成 CO2 固定能などを測定すること により、植物の光・酸素毒ストレス耐性の評価を行う。 ・苗条原基 プロジェクト用語集22 ユーカリは再分化が困難な植物であると言われている。このユーカリの 再分化を容易にしたのが苗条原基である。ユーカリの苗条原基は、ユーカ リの茎頂、葉等の分裂組織を含む組織片を無機塩、ビタミン、植物ホルモ ン等を添加した液体培地に入れ、回転培養することによって得られる粒状 の組織培養物である。この苗条原基は一度形成されると、継代により安定 的に増殖するとともに、苗化を誘導する培地に移行させることによって、 粒状組織から葉原基が形成され、苗条に分化する特徴を有する。この性質 を利用して、ユーカリ優良個体の増殖と遺伝子組換えが可能となった。王 子製紙ではユーカリの苗条原基を利用する増殖方法および形質転換方法を それぞれ特許出願している。 ・フィターゼ 植物種子における主要なリン酸貯蔵分子であるフィチン酸を特異的に分 解し、イノシトールおよびリン酸を生成する酵素。飼料に添加することに より、飼料中のフィチン酸を分解し単胃家畜のリン酸利用効率を高め、か つ、環境へのリン酸排出を抑制する効果があることから、環境の富栄養化 の抑制効果が期待されている。 ・フィチン酸 植物種子における主要なリン酸貯蔵分子であり、特に穀物種子、豆等に 大量に含まれている。イノシトール1分子にリン酸が 6 分子ついた構造と なっている。難分解性であり、単胃家畜はそのままでは利用することが出 来ず排泄してしまう。排泄されたフィチン酸は微生物の栄養源となるため、 大きな環境汚染問題となっている。 ・PHB Polyhydroxybutyrate(ポリヒドロキシブチレート、ポリ− 3− ヒドロキ シ酪酸エステル)の略称。生分解性プラスチック(バイオポリエステル) の 1 種。PHB は微生物の菌体内で合成・蓄積される。もっとも代表的な合成 菌 Ralstonia eutropha では、3つの遺伝子(phbA:ケトチオラーゼ、 phbB: アセトアセチル− CoA レダクターゼ、phbC:PHB シンターゼ)が関与する。 高等植物の細胞質で PHB を合成させるためには、 phbB と phbC の2遺伝子の 導入が必要とされる。 ・PPFD(photosynthetic photon flux density) PPFD 単位時間に単位面積に照射する 400∼700 nm の波長範囲の放射エネルギ ー量のことで、単位は通常μmol m-2 s-1 が用いられる。日本語では光合成 有効光子束密度といい、植物が光合成を行うのに有効な可視光の照射強度 の意味で用いられる。 ・ビオチン ビタミン H。補酵素 R ともいわれる。最初卵黄から単離されたビタミン B 群の一種。生の卵白を大量に摂取して起こる卵白障害は卵白に含まれるア ビジンが腸内でビオチンと結合してその吸収を妨げるために起こるビタミ ン欠乏症である。アビジン、ビオチンの強い結合はタンパクや DNA の固定 化や生化学標識法に用いられる。 ・非回文配列 塩基配列が相補鎖の塩基配列と同一になる塩基配列を指す。例えば、 「ACGT」はその相補鎖が「ACGT」であり、回文配列である。一方、 「非回文 配列」とは、その塩基配列が相補鎖の塩基配列と同一にならない塩基配列 を指す。例えば、 「ATCG」は、その相補鎖が「CGAT」であり、両者は同一で プロジェクト用語集23 ないため非回文配列である。また、塩基配列の塩基数が奇数の場合、塩基 の種類(A, C, G, T)に関わらず、当該塩基配列は必ず非回文配列となる。 ・光・酸素毒ストレス 光に依存して生成する活性酸素種により引き起こされる酸化的障害。つ まり、植物が光合成 CO2 固定に利用される以上の光強度の太陽光に曝される と、過剰の光量子エネルギーが生成し、葉緑体内が過還元状態になる。過 還元状態になると、O2 が容易に還元され活性酸素種(O2-、H2O2、•OH)が生 成し、細胞内成分を非特異的に酸化し、最終的に傷害をもたらす。 ・PCR(polymerase chain reaction、DNA 合成酵素連鎖反応) PCR DNA の任意の部分をポリメラーゼ(DNA 合成酵素)を用いて増殖させる反 応。これにより、数時間で 100 万倍にも増やすことができる。DNA 増幅装置 を用いて行う。 ・HisHis-Tag 作製した抗体を精製する時に用いるキャリアータンパク質(タグ)の一 つ。目的の抗体をコードした DNA 配列に 6 個のヒスチジン残基をコードす る DNA 配列も付けて大腸菌等に組み込み、ヒスチジンタグ付きの抗体タン パク質を大量に作らせる。ヒスチジンはニッケルとの親和性が強いので、 大腸菌粗抽出タンパク質をニッケルを結合させたカラム等に通すことで抗 体タンパク質のみを精製することが可能になる。 ・標準化(均一化)cDNA 標準化(均一化)cDNA ライブラリー 通常の cDNA ライブラリーでは組織や器官における各遺伝子の転写産物 (mRNA)の蓄積量に応じて、各 cDNA クローンの存在比が大きく異なる。DNA の熱変性後の再会合の特性を利用し、希少な mRNA 由来の cDNA クローンと 大量に発現する遺伝子由来 cDNA クローンの占める割合の偏りを少なくする 操作を加えた cDNA ライブラリーを標準化(あるいは均一化)cDNA ライブラ リーと呼ぶ。少ない労力で多種類の cDNA を効率的に単離するため有効であ る。 ・病害抵抗性遺伝子 病原菌がもつ特定の遺伝子(非病原性遺伝子)を認識する植物側の遺伝 子のこと。単に抵抗性遺伝子ともいう。植物が抵抗性遺伝子をもち、かつ 病原菌が非病原性遺伝子をもつ組み合わせの場合のみ、植物は病原菌の侵 入を認識し、抵抗性を示すことができる。一連の防御応答性遺伝子とは区 別する。 PEPC pyruvate carboxylase) 5 PEPC(phosphoenol フォスフォエノールピルビン酸に CO2 を付加しオキサロ酢酸を生成する 反応を触媒する炭酸固定能を有する酵素であり、C4 植物や CAM 植物の光合 成の鍵酵素の一つとなっている。トウモロコシ由来 PEPC 遺伝子のプロモー ターは強い光誘導性を示すことが報告されており、光の当たる組織にのみ 目的タンパク質を大量発現させるといった応用が可能である。 ・VP16 VP16 疱疹ウィルス由来の転写活性化因子。GAL4 の DNA 結合ドメインと VP16 の転写活性化ドメインとの融合タンパクは非常に強い転写活性化因子とし て働くことが知られており、誘導発現系等に利用されている。 ・フォスファターゼ 加水分解により基質からリン酸基を除去する酵素。タンパク質を基質と するプロテインフォスファターゼは生体内における生命活動に関わるタン プロジェクト用語集24 パク質の活性調整は主に可逆的なリン酸化によるが、タンパク質のリン酸 化にはキナーゼと呼ばれる酵素が働き、脱リン酸化にはプロテインフォス ファターゼが働く。 ・PTGS post-transcriptional gene silencing(転写後サイレンシング)の略で、 転写は通常どおり行われるが、mRNA が何らかの原因で分解されるか、ある いは翻訳が阻害されることにより、遺伝子の発現が抑えられる現象を指す。 DNA から mRNA が転写されなくなることによって、遺伝子の発現が抑制され る現象である TGS(transcriptional gene silencing、転写時サイレンシン グ)と区別される。 ・不定胚 受精卵から胚発生によってできる胚と同様な過程を経て、通常胚が形成 されない、葉、茎、未熟子葉等から形成される胚のこと。不定芽形成によ っては再分化できない場合に最後の手段として用いられる。 ・不飽和化酵素 脂肪酸に不飽和結合を導入する酵素。植物ではΔ9、12,15 の不飽和化酵 素が存在するが、Δ4、5、6 の不飽和化酵素遺伝子を持たないため、アラキ ドン酸や、DHA を生産することができない。 ・プライマー DNA ポリメラーゼを用いて生体外で DNA 合成を行う際(PCR を行う際) 、 鋳型 DNA と共に最初に加える少量・短鎖の DNA 断片。このプライマーが鋳 型となる DNA の相補部分に結合し、その 3’末端に続いて鋳型 DNA に相補な DNA がポリメラーゼにより合成される。 ・プラスミド 細胞質にあって染色体とは独立に自己増殖し、次の世代に遺伝される DNA で、核外遺伝子とも呼ばれる。普通は細胞の生存に必須ではないが、 プラスミドのもつ遺伝子によって細胞にいろいろな性質を与えることがで きる。多くのプラスミドは環状2本鎖 DNA であるが、酵母や放線菌では直 鎖状プラスミドが見いだされている。 ・プラスミドレスキュー法 タギング法などにより導入した T-DNA 付近のゲノム DNA を単離する方法 の一つ。植物より単離したゲノム DNA をランダムに消化後、自己環状化し た後に大腸菌に導入する。 T-DNA 部分には ColE1 の複製開始点および薬剤耐 性遺伝子が存在することから、 T-DNA に隣接する遺伝子を含むクローンのみ が生育することができる。 ・プロモーター 遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節する DNA 上の領域。ここに RNA ポリメラーゼや転写因子が結合することによって機 能する。タンパク質をコードする遺伝子のプロモーターは全て遺伝子の上 流に存在する。遺伝子の発現時期や発現部位を司る共通配列はまだ充分に は判明していない。これを解明することにより、任意の時期・部位に目的 のタンパク質を必要量発現させる高発現プロモータを開発することが可能 となる。 ・分子農業 これまでタンパク質や機能性分子などは、動物組織からの抽出、動物培 養細胞や微生物のタンク培養により製造されてきているが、これらの物質 プロジェクト用語集25 を遺伝子組換えした植物や動物に畑や牧場で農業の様に大量に生産させる 方法論を指す。高価な試薬については一部実用化もされ始めている。主な ターゲットタンパク質としては、抗体、食べるワクチン、その他検査用酵 素や工業原料用酵素等が挙げられ、世界中で開発が行なわれている。 ・ベクター DNA 組換え実験において目的とする DNA 断片を宿主菌などに運び込み、 増やすための DNA のこと。目的の DNA 断片を連結したベクター DNA は、 宿主菌が増殖するに連れて複製し、菌の分裂とともに各娘細胞に分配され、 目的 DNA 断片は代々維持され続ける。 ・β・β-アミラーゼ アミラーゼはデンプンを加水分解する酵素の総称で、β-アミラーゼはそ のうち非還元性末端から麦芽糖(二糖)単位で切り離すタイプの分解様式 をもつアミラーゼ。植物起源のものと微生物起源のものが知られている。 ・β・β-グルクロニダーゼ(GUS グルクロニダーゼ(GUS) GUS) 大腸菌由来の酵素で、植物自身には内在性の活性が少ないため、GUS 遺伝 子は植物でのレポーター遺伝子として用いられる。活性測定も蛍光基質を 用いることにより簡便に行え、発色基質により組織化学染色が行えるため、 遺伝子のプロモーターの機能や調節配列を一過性発現または安定発現で調 べるのに広く一般に用いられている。 ・ベルべリン キンポウゲ科のオウレンやメギ科の植物など多くの植物種に認められる イソキノリンアルカロイドであり、局方医薬品である。黄色ブドウ球菌、 赤痢菌、コレラ菌などに対して抗菌性を有するばかりでなく、近年、抗炎 症作用や lipoxygenase 阻害作用、腫瘍形成に関与する cyclooxygenase-2 阻害作用、逆転写酵素阻害作用など多様な生理作用が報告されている。す なわち、従来の殺菌・整腸薬としての利用以外の目的での利用が検討され ている。本化合物は植物においてその全生合成系が酵素レベルで解明され た最初のアルカロイドであり、植物の分子育種による改変が可能なターゲ ットでもある。 ・ホタルルシフェラーゼ ホタルより単離されたルシフェラーゼの一種。発光には基質のルシフェ リンと酸素の他、補助因子として ATP を必要とする。感度が高く検出が容 易なため、レポーター遺伝子として用いられる。 ・ホモ系統 ある個体の染色体の特定の遺伝子座に注目した場合、その遺伝子座の DNA 配列が相同染色体間で同一であるものをホモ個体といい、その個体および 自殖後代をホモ系統とよぶ(→後代) 。通常、最初に獲得される遺伝子導入 植物個体は、片方の相同染色体に遺伝子が導入されたヘテロ個体である。 これを自殖するとホモおよびヘテロ個体と非遺伝子導入個体が得られる。 このホモ個体の自殖後代は、すべて両方の相同染色体に遺伝子が導入され たホモ個体となり、これらを使用して導入遺伝子の効果を解析することに より、精度の高い評価が可能となる。 ・ポリアミン 第一級アミノ基を2個以上もつ直鎖状脂肪族炭化水素の総称で、動植物 や微生物に存在する生体アミンである。十数種類が知られているポリアミ ンのなかで、プトレシン、スペルミジン、スペルミンの3種は最も普遍的 プロジェクト用語集26 なポリアミンである。ポリアミンは、生物の生長や発育に不可欠な物質で (生物はポリアミンなしには生存することができない) 、植物では細胞分裂、 生長、形態形成、老化、生殖など様々な過程で重要な役割を果たしている。 そのほか、ポリアミンは様々な環境ストレスに対する植物の防御反応にも 関与しているが、その機構はよく分かっていない。 ・ポリクロ− ・ポリクロ− ナル抗体 抗原の刺激に対する免疫応答の一つとして、 B 細胞がつくるタンパク質を 抗体という。1個体内では、通常 1 種類の抗原分子に対して複数の抗体産 生細胞が反応するため、複数種の抗体分子がつくられるが、これらの抗体 のことをいう。 ・翻訳 mRNA 上の遺伝暗号(塩基配列)を読み取って、暗号に対応するアミノ酸 を次々と結合してタンパク質を合成する過程をいう。 ま行 ・マイクロアレイ スライドグラスなどに多数のプローブ DNA 断片をスポット・固定し、蛍 光標識したターゲット cDNA を用いて蛍光読み取り装置でシグナルを検出し、 遺伝子発現を解析する。 (→DNA アレイ) ・マクロアレイ 数千種類のプローブ DNA 断片をメンブレン上にスポット・固定し、アイ ソトープラベルをしたターゲット DNA を用いて検出するもの。マクロアレ イは特別な蛍光読み取り装置は不要で従来行われてきたブロット法に準じ た方法で遺伝子発現解析ができる。 (→DNA アレイ) ・Malic enzyme リンゴ酸の脱炭酸反応を触媒する酵素。C4 植物や CAM 植物は、炭酸固定 により蓄積したリンゴ酸等を利用する事により効率的に光合成を行なう能 力を獲得しているが、その鍵酵素の一つ。C4 植物ではこの酵素は葉緑体内 に存在する事が知られており、葉緑体へのターゲッティングシグナルを有 している。 ・マルチクローニング部位 DNA の任意の部位に人為的に配列した複数個の制限酵素認識配列のこと をいう。DNA 操作技術では、制限酵素による特定塩基配列(制限酵素認識配 列)を持つ DNA 部位を切断し、その部分に別の DNA を連結する技術が多用 されるが、 DNA を連結したい部分にマルチクローニング部位を作製しておく ことにより、選択できる制限酵素の種類が増え、連結できる DNA の幅も広 がる。 ・実生 種子植物の種子から発芽した幼植物。芽生え。一般に子葉または第一葉 を残存している時期をさす。広義には種子から発芽した植物体をいう。 ・メッセンジャーRNA ・メッセンジャーRNA (mRNA、伝令 RNA) DNA が持つ遺伝情報を写し取り、 タンパク質合成の場であるリボゾームへ と伝える RNA。それぞれの mRNA は一本鎖構造で、その上の塩基の並び方が 遺伝子産物であるタンパク質の材料であるアミノ酸の配列の順序を規定し ている。すなわち、タンパク質合成の鋳型となる。 ・7-メチルキサンチン プロジェクト用語集27 キサンチンの誘導体で7位がメチル基に置換された化合物。コーヒーや チャ植物のカフェイン生合成経路における主要な中間産物である。メチル キサントシンヌクレオシダーゼの作用によって 7-メチルキサントシンから 生成される。テオブロミン、パラキサンチンの前駆物質である。 ・モデル植物 植物の持つ様々な生物機能を理解する際に、モデルとなる特定の植物に 関して研究を行うことにより、多くの知見が集まり大系的な理解が可能と なる。この植物がモデル植物である。現代のモデル植物の持つべき条件と しては分子生物学的な研究がし易い背景(ゲノムサイズが小さい、ゲノム 解析が進んでいる、形質転換が容易である等)を持っている事である。こ の条件を満たす代表的なモデル植物として、双子葉植物ではシロイヌナズ ナ、単子葉植物としてはイネが挙げられる。もちろんモデル植物と異なる 種独自の生物機能もあるが、基本的な生物機能の多くに関しては実際の研 究対象植物にフィードバック可能となる。 や行 ・融合タンパク質 2 つ以上のタンパク質が連結されたもの。通常、融合するタンパク質の遺 伝子配列を連結しこれを細胞内に導入することにより生産することができ る。お互いの働きが阻害されないよう 2 つのタンパク質間にはリンカーと 称する短いアミノ酸配列を介し距離を保つ方法が用いられることがある。 ・UTR(untranslated region) TR mRNA 分子の塩基配列のうち、タンパク質に翻訳されない領域(非翻訳領 域) 。UTR の特定の塩基配列が mRNA の安定性を決めるシグナルや、mRNA の 細胞質特定領域への局在シグナルなどになる。 ・ユビキチン 広く生物種で保存されている比較的低分子のタンパク質で、タンパク質 分解に関与する。イネではユビキチン遺伝子のプロモーターは、特に増殖 の盛んな組織においてアクチンプロモーター等と並び非常に強い発現活性 を持っていることが知られている。 ・幼植物 植物の胚の状態に続くある期間を指し幼植物という。種子植物の場合、 実生とも言う(→実生) 。 ・葉緑体(クロロプラスト) 高等植物から紅藻までの植物に存在する細胞小器官で、光合成の全過程 が行われる光合成器官。全体が包膜と呼ばれる 2 層の膜で包まれており、 その内部はストロマと扁平な袋状の膜の重なった内膜系に分かれている。 ・葉緑体移行シグナル 光合成関連酵素に代表される葉緑体内で機能するタンパク質の多くは、 その遺伝子が核にコードされている。こうした遺伝子は、細胞質でタンパ ク質に翻訳され、葉緑体へ移行させるための短いシグナルペプチドを持つ。 このシグナルペプチドは葉緑体への移行の後、切断される。外来遺伝子に このシグナルペプチドをコードする配列を付加することにより、その産物 を葉緑体に局在させることができるため、このシグナルペプチドのことを 葉緑体移行シグナルとよぶ。 プロジェクト用語集28 ら行 ・リガーゼ 核酸断片を連結する酵素。一方の核酸のリン酸基と、他方の核酸の水酸 基を認識し結合させる。制限酵素処理の断片を繋ぐ場合等に用いる。 ・ルシフェラーゼ 生物発光を触媒するオキシゲナーゼの総称。高度の特異性を持ち、一般 に近縁種から取った基質ルシフェリンのみに作用する。 ・RuBisCO (Ribulose 1,5-bisphosphate carboxylase/oxygenase) 光合成炭素代謝系において無機炭素 CO2 と生体物質である有機化合物と の接点を触媒するのが、リブロースビスリン酸カルボキシラーゼ(通称 RuBisCO)であり、植物の独立栄養性を支える重要な酵素である。地球上の ほとんどすべての有機化合物合成の初発反応を担っていると言える。この RuBisCO の反応は核外小器官である葉緑体で行われるが、RuBisCO を構成す る小サブユニットは核ゲノム(rbcS)に、大サブユニットは葉緑体ゲノム (rbcL)にそれぞれコードされている。 ・レポーター遺伝子 プロモータの転写活性などを調べるために DNA に組み込まれる目印用の 遺伝子。検出が容易で定量化可能なものが好まれる。GUS 遺伝子、ルシフェ ラーゼ遺伝子、GFP 遺伝子などが用いられる。 ・早生分枝 早生分枝 茎頂を含む植物組織を無機塩、ビタミンを添加した液体培地に入れ、回転培養 することによって得られる多芽体状の組織培養物である。植物ホルモンを含まな い培地で生育させることから、変異の危険性が少なく、液体培地中で生育するこ とから生育速度が速い利点がある。得られた早生分枝は発根培地に置床するこ とによって発根させることができ、植物の増殖システムとしても効率がよい。特に、 ユーカリ属植物においては増殖に利用できることに加えて、アグロバクテリウム法 による形質転換の母材料として、アグロバクテリウム菌の感染効率が高いことが明 らかになっている。王子製紙ではユーカリの早生分枝を利用する形質転換方法 を特許出願している。 プロジェクト用語集29 I.事業の位置付け・必要性について 1. NEDOの関与の必要性・制度への適合性 NEDOの関与の必要性・制度への適合性 1.1 NEDO が関与することの意義 20 世紀の文明は化石資源、 エネルギーの大量消費により飛躍的に発展し、 物質的に豊かな社会を築き上げた。しかし、そのために地球規模での環境 破壊、地球温暖化、酸性雨等をもたらした。現在、化石資源の使用により 9 世界中で排出される CO2 は年間 6×10 トン(炭素換算で 1.6×109 トン)に 達している。一方、地球全体の植物の光合成反応により固定される CO2 は化 石資源エネルギーからの排出量のおよそ 10 倍に相当する。エネルギー量で 比較すれば、地球表面に到達する太陽エネルギ−、3.0×1024 ジュール/年の 僅か 0.1%が植物の光合成反応により固定に利用されるが、それでも現在の 世界のエネルギー使用量(その 95%は化石資源エネルギー)の 10 倍に相当 10 10 する。毎年生産されるバイオマスは 14∼18×10 トン、炭素換算 1.5×10 トンであるが、CO2 の吸収源である植物の光合成能の拡大はエネルギー、環 境問題解決の鍵を握っていると言っても過言ではない。 一方、工業原料は、現在その供給の多くを化石資源に依存している。ま た、原料から各種化学製品を製造・精製する化学工業プロセスではエネル ギーを大量に消費し、有害で危険な化学薬品も多量に使用する。このため、 現在の化学工業プロセスは、省資源、省エネルギー、環境負荷低減を図る うえで大きな課題を残している。このような化学工業プロセスを代替しエ ネルギー消費、廃棄物発生等を抑えた循環型社会を構築することが重要課 題である。 その解決策のひとつとして、植物の物質生産機能を活用した工業原料生 産技術の開発を挙げることができる。すなわち、植物が生産するバイオマ スの大規模な工業的利用による石油資源の消費抑制を図ると同時に、植物 の光合成による炭酸ガス吸収量の拡大を図るものである。 ところで、20 世紀は経済原則により工業原料は植物をはじめとする天然 物から石油等の化石資源への転換の歴史であった。その歴史の中で、原油 を中心とする工業原料の供給システムが構築され、その石油系原料を出発 点とする利用・加工技術として現在の化学工業システムが高度に発達して きた。これをまた逆の方向へ引き戻すことは必要ではあっても技術的、経 済的に非常な努力と時間が要求される。その上、このような発想自体が省 みられなかったため基礎研究すら十分には行われていなかった。 さらに、植物による工業原料としてのバイオマスを効率的に生産する技 術が開発されても、それによって供給されるバイオマス系工業原料を、エ ネルギー使用を抑え環境負荷の低い利用・加工プロセスで変換する、既存 の石油系化学工業とは異なる、バイオマス系化学工業とでも言うべき工業 体系までが構築されなければ、循環型の産業構造の構築は達成され得ない。 以上のことから、開発費が莫大であり、乗り越えなくてはならない技術 障壁が高くかつ多数存在していること、また、植物による工業原料生産か らバイオマス系化学工業の構築までを俯瞰しつつ、技術開発を推進する必 要があり、一研究所あるいは一企業が取り組むには、限界がある。 また、このようなプロジェクトは開発初期段階での基礎研究の成果を蓄 積し、実用化に向けた応用研究に移行するものであろう。しかし、環境問 題にしろ、資源問題にしろ早急に解決せねばならない課題であり、ステッ プをおって研究開発をしている余裕はない。そこで、産・官・学の三者が一 1 体となり、総合的な英知と技術力を発揮してこそ早急に実現可能なものと 言え、それを可能ならしめる国家プロジェクトを組織し、国が関与するこ とに大きな意味合いがあるといえる。 一方、我が国は、平成 7 年 11 月に「科学技術基本法」を交付し「科学技 術創造立国」を目指す方針を示したが、植物の遺伝子工学分野の研究開発・ 産業展開は諸外国と比較して低調な現状にある。植物バイオテクノロジー の分野は、エネルギーや工業原料生産などの産業領域のみならず、食料生 産・環境修復・医薬品製造など多くの産業領域に必須のものと目され、国 際的な技術開発競争の渦中にある。我が国の植物バイオテクノロジーの民 間企業による技術開発・製品開発が低調なのは、主に、遺伝子組換え植物 に対する社会的認知の問題に起因すると考えられるが、そのために技術開 発に遅れをとることは、 「科学技術立国」をめざす我が国としては、大きな 損失につながる。遺伝子組換え植物の社会認知が遅れることで、産業上の 実用展開が遅れることはやむをえないにしても、植物バイオテクノロジー の技術開発は、国家の技術戦略上も諸外国に遅れをとらぬよう、推進する 必要があると考えられ、国家プロジェクトとして国が関与して強力に推進 することが重要である。 以上のように、本プロジェクトは、環境保全、省ネルギー(化石燃料使用 の削減)を目的とした工業原料ソースの抜本的変換を目指し、循環型社会 へと産業構造を導く端緒となる。さらに、日本だけでなく世界的規模での、 農業とは異なった新しい植物利用産業を創造するものであり、我が国が、 植物バイオテクノロジーの分野でも国際的にリーダーシップを発揮出来る 技術力を確保するものであり、国家的視野、世界的視野での取り組みが必 要であり、国が主導して推進する意味は極めて大きい。 1.2 実施の効果(費用対効果) 現在研究開発予算としては5年間の合計で25億円程度を予定しているが、 本プロジェクトが成功し、現実に産業化され主要工業原料が植物生産物に 代替できれば非常に大きな効果が期待できる。たとえば、本プロジェクト の課題のひとつであるグッタペルカ(ゴムの一種)生産植物を創成し、こ れを産業化し現在タイヤ等の原料となっているスチレンブタジェンゴム (SBR:主要合成ゴムの一種)の10%を代替できたとして年間およそ10万kl の石油資源(現在の為替レート、原油価格で約9億円)を節約でき、約30万 トンのCO2を自然の循環系へ取り込める。この他にも生分解性プラスチック 原料(デンプンなど)やセルロース原料の効率的な生産植物の創成などの 技術開発によりさらに大きな効果が期待できる。また、本プロジェクトは 植物の遺伝子操作技術など、かなり基礎的な技術開発を含んでいるので、 その成果はさらに多くの植物種から各種の工業原料生産技術の基盤として も有用なものである。このプロジェクトを契機として多くの工業原料を植 物によって生産する研究開発が進めば、エネルギー使用合理化はもちろん、 植物による炭酸ガスの削減も果たすことが可能であり、その効果は計り知 れないものがあり、投入資源に対して十分効率的・効果的であると言える。 先に例示したSBR以外に、本プロジェクトで推進している研究開発におい て想定している直接の一次効果のみの概要は以下の通りであり、仮に一部 の研究開発が不成功に終わるとしても、十分な効果があると判断できる。 * ストレス耐性サツマイモ・・・ (前提:ポリエチレンの1%を生分解 性プラスチックに代替え) 2 * * * * * 年間、原油10.5万kl、24億円相当の省エネ・コスト削減。 ダイズによる不飽和脂肪酸生産(前提:発酵法と比較) 年間、原油0.5万kl、1億円相当の省エネ・コスト削減 ストレス耐性ユーカリ・・・ (前提:主に燐酸肥料の削減。1万haの 植林) 年間、原油1.3万kl、2.4億円の省エネ・コスト削減 フィターゼ含有作物・・・ (前提:畜産糞尿中のリン処理の低減) 年間、原油約5.7万kl、約10.6億円の省エネ・コスト削減 病害耐性サツマイモ・・・ (前提:ポリエチレンの0.4%を生分解性プ ラスチックに代替え) 年間、原油1万kl、約2億円の省エネ・コスト削減 生分解性プラスチック含有植物・・・ (合板作成時の接着剤使用削減 1〜10%、建材の断熱性向上による代替え2%) 年間、原油4.5千kl〜4.5万kl、1〜10億円の省エネ・コスト削減。 2.事業の背景・目的・位置付け 2.1 事業の背景・目的・意義 2.1.1 背景 我が国は、京都議定書に基づき、炭酸ガスの排出量を1990年比で、2008 年から2012年の第一コミットメント期間において6%削減するという目標 を掲げて、さまざまな政策や技術開発を推進している。しかしながら、主 要な温室効果ガスであるCO2は、1999年には、1990年比ですでに10%前後増 大しており、削減目標との差が拡大している。一方エネルギーの観点から は、政府は平成6年6月に石油依存度を2000年度までに52.9%、2010年には 47.7%にまで引き下げることを目標とする閣議決定を行っている。このよう な状況の中で、エネルギー使用量の削減効果のある、工業原料を植物に生 産させることは、同時に主要な温室効果ガスであるCO2の吸収固定も併せて 果たすことができる点で、大きな注目を集めている。また、平成7年11月15 日に「科学技術基本法」が公布、施行されるなど、我が国は、21世紀に向 けて「科学技術創造立国」を目指して科学技術 の振興を強力に推進してい く方針が示された。バイオテクノロジーの分野については、 「バイオテクノ ロジー戦略大綱」が平成14年12月に策定され、バイオプロセスによる物質 生産系と資源利用サイクルの革新的変化により持続可能な経済社会と地球 温暖化問題などへの対応を実現すべく、研究開発の飛躍的充実、産業化プ ロセスの抜本的強化、国民理解の徹底的浸透という三つの戦略が打ち出さ れている。 一方、植物による工業原料生産を考えるうえで、重要な植物の遺伝子組 換え技術については、除草剤耐性、昆虫耐性植物の創成など、事業展開が 成功した例があるものの、多種多様な組換え植物が実用化され、大規模な 工業原料生産が実現するには至っておらず、特に我が国では企業ベースの 研究開発も欧米に比べると活発とは言えない状況にある。これは、パブリ ックアクセプタンスというような社会的要因もあるが、現在の遺伝子組換 え技術が単一遺伝子の導入技術の域を出ていないこと、遺伝子の発現調節 を合目的に行うために必要なプロモーターや制御遺伝子等の解析が不十分 であること、導入すべき適切な遺伝子ソースが確保されていないこと、植 3 物の遺伝子組換え技術の基本的特許が欧米に抑えられていること、等の技 術的背景が、大きな要因として指摘できる。例えば、除草剤耐性、昆虫耐 性、ウイルス病耐性作物などとして開発された、遺伝子組換え植物は、単 一遺伝子の導入によるものであり、外来タンパク質の発現量は多くても除 草剤耐性大豆で0.288mg/g 生組織(0.0288%)、昆虫耐性とうもろこしで 0.047mg/g 生組織(0.0047%)と極めて微量で、工業原料の大量生産にはほ ど遠いレベルにある。また、どの生物のどのような遺伝子をどのようなプロ モーターと一緒に導入すれば、有用な工業原料生産が可能かという知見も 大いに不十分である。すなわち、直接工業原料生産を目標とするという技 術開発はまだ初歩的な段階であるといえる。 しかし、最近、ヒトゲノムはもちろん、イネやシロイヌナズナのゲノム 解析が飛躍的に進行する等、多くの遺伝子情報が整備されつつあり、これ を背景にした国際的な技術開発の競争により、この10年から20年の間に、 多重遺伝子の導入技術、プロモーターおよび制御遺伝子の解析・利用技術、 工業原料としてのバイオマス生合成系の解析・利用技術は、著しい発展を 遂げるものと予想されている。そのなかで、我が国は技術開発に出遅れる ことなく、国際的な優位性を保つべく取り組むことが求められている。 2.1.2 目的 本プロジェクトは、この様な背景のもと、植物の遺伝子組換え技術等を 開発・活用して植物の物質生産性、耐環境性を付与向上させ、植物を省エ ネルギー型、低環境負荷型の工業原料生産工場として利用する産業を創出 するための基本技術となる、工業原料生産植物の創成のための基盤技術の 確立を図ることを目的とする。 2.1.3 意義 本プロジェクトは、植物をエネルギー(石油資源)節約型工業原料生産 プロセスとして利用するプロセス技術を開発するもので、遺伝子操作等に より創成した有用植物を石油等の化石原料に代わる原料とし、環境調和型 物質生産プロセスを創成することを目指すものである。省エネルギー(省 石油資源)効果、環境問題(CO2減少)、荒れ地や未利用地の緑化・有効利 用等にも有効であり、地球温暖化をはじめとする地球環境問題に対して、 「3つのE」すなわち環境(Environment)保全、経済(Economy)成長、 エネルギー(Energy)需給安定の実現を基調としつつ、CO2排出抑制に重点 をおいた研究開発を推進するとしたニューサンシャイン計画の趣旨にそう ものであり、またCOP3での世界への公約の実現、平成6年の閣議決定による 石油依存度の引き下げ目標の実現にも資することとなる。また、植物の大 規模生産産業、植物の生産物を原料とした新しい物質生産工業の創造にも つながる。同時に、これらの技術開発を通して、科学技術立国を目指す我 が国が、国際社会において技術的優位性を確保できる。 このように本プロジェクトは、20世紀のテクノロジーでは成し得なかっ た人類未踏の技術を開発することを目指すものであり、その成果は我が国 の技術的優位性を維持しつつ、21世紀以降の環境、エネルギー、循環型社 会等現在及び近未来の重要課題の根本的解決に貢献し、人類・地球の未来 に大きな希望を与える糸口となるものである。 2.2 事業の位置付け 2.2.1 事業の類型 4 本事業は、革新的技術シーズとして多重遺伝子の連結・導入技術開発の みならず、環境ストレス耐性や有用工業原料生産関連の遺伝子情報の解 析・活用に取り組みつつ、これらの成果が、産業技術として大きなインパ クトをもつ重要な技術・知見であることを、実際の工業原料用植物栽培に おいて見極めようとするものであり、事業類型としては(1)革新的技術 シーズ発掘段階と(2)産業技術としての成立性の見極め段階の両方を含 んでいるものと言える。 2.2.2 産業技術戦略における政策的な位置づけなど 本事業は、上述の観点に加え、環境と調和した循環型経済社会の構築お よび革新的・基盤技術の涵養に相当する事業である。すなわち、循環型経 済社会の構築には、石油プロセス依存からの脱却が重要な課題として設定 されており、本事業は、バイオマスを出発点とする化学産業構築のための 原料としてのバイオマス生産に関する技術開発に取り組むものであり、重 要な位置を占めると考えられる。また、既存の製紙、製糸、油脂等の工業 原料生産植物は、幅広い植物群を含んでおり、それら広範な植物群を視野 に入れ、病虫害や環境ストレス耐性遺伝子と、物質生産関連遺伝子を組み 合わせて同時に導入して、すぐれた各種の工業原料生産植物を創生しよう とする試みは、国際的な植物バイオテクノロジーの技術競争の中でもまだ なされておらず、極めて新規性・先進性が高く、極めて広範な遺伝子組換 え関連産業に大きなインパクトを与えるものであることから、革新的・基 盤技術の涵養にも相当すると考えられる。 2.2.3 関連する国内外の研究開発動向との関係 農業分野ではトウモロコシ、ダイズ等ですでに単一の遺伝子をした作物 が実用化されている。農作物生産から一歩進んで工業原料生産のために栽 培植物等に有用遺伝子を導入し、新しい植物を創成する技術は産業上重要 な分野となろうとしている。米国では、1999年8月に大統領令13134が出さ れ、2020年までに化成品の25%、液体燃料の10%、最終的には化成品の90%、 液体燃料の50%をバイオ製品由来とする目標を掲げ、活発な研究開発が開始 された。現実の事業展開としては、カーギルとダウの合弁で年産14万t 規 模のポリ乳酸生産プラントが2002年4月に稼働し、我が国の生分解プラステ ィックの市場も1990年の60t から2001年の4,000t に飛躍的に拡大しており、 これら化学品の原料としての植物バイオマスの需要は飛躍的に高まるもの と予想される。また2004年4月にはカナダにおいて麦ワラ、トウモロコシの セルロースから燃料エタノールを生産する企業が世界で初めて設立され、 2012年には1兆円の市場を見込んでいる。これは化石資源からバイオマス資 源への転換に世界の潮流が大きく変化しつつあることを示している。これ らの動きに応じて、より効率的で合理的な遺伝子組換え植物を創生するた めに、プロモーターや制御遺伝子関連の解析が引き続き推進されるととも に、脂肪酸をはじめとする植物の有用物質生合成系の解析が始まっている。 EUにおいても、フレームワークプログラムと、市場性のある成果を指向す るユーレカプロジェクトにおいて、持続的発展と地球環境が重要なプログ ラムとして取り上げられ、植物による物質生産の研究が進められつつある。 このような状況で、工業原料生産に係わる遺伝子や環境から受ける種々 のストレスに耐性を与える遺伝子の解明、取得、またこれらの遺伝子を植 物中でその機能を発現、抑制する技術、植物に複数の有用遺伝子を一気に 導入する多重遺伝子導入技術等は植物の新しい活用方法として有望な研究 5 分野であり、各種工業原料生産植物を創成するための研究が世界的に注目 されている。 しかしながら、プロモーターや制御遺伝子の機能推測はいまだ困難であ り、これら調節遺伝子による遺伝子の合目的発現制御が可能な、複数のス テップにわたって生合成反応を制御できる多重遺伝子の連結・導入技術も 確立されていない。この技術障壁を克服する本プロジェクトのアイデアに は高い独創性が認められ、その上で、広範な実用植物群での実証を視野に 入れた本事業は、国際的にも十分な先進性、優位性をもつと判断できる。 6 II. 研究開発マネジメントについて 研究開発マネジメントについて 1.事業の目標 1.1 目標 ゴム、生分解性プラスチック、油脂、タンパク質等の工業原料の生産遺 伝子、植物の代謝効率向上遺伝子、機能発現制御遺伝子等を探索・取得し、 機能解明・改良し適切な植物に導入することにより、目的とする工業原料 の植物による生産技術を開発する(工業原料生産植物の創成) 。また、セル ロース、デンプン等の工業原料生産植物を植物生育に不向きな未利用地等 で、あるいは粗放管理下でも生育できるようさらに改良するために、高・ 低温、光、塩分、病原菌、乾燥等の環境ストレスに対して耐性を付与する 遺伝子を探索・取得し、その機能を制御しながら安定的に発現させる技術 を開発する(耐環境性工業原料生産植物の創成) 。そのために、工業原料生 産遺伝子や耐環境性遺伝子を発現制御系と一体化して遺伝子導入用ベクタ ー系を構築し、実際の植物に導入して高効率工業原料生産と環境ストレス 耐性とを同時に発現させる機能発現・制御技術を開発する(多重遺伝子導 入技術及び発現制御技術の開発) 。 なお、具体的な工業原料生産植物は多数あるが本プロジェクトでは既に ある程度の技術基盤が確立されている植物を対象に、ただし幅広い技術基 盤を確立するため、特定の分類群に属する植物種に偏らないよう留意して 選定し、成功の可能性の高いものに的を絞って研究開発を進める。個々の 研究開発目標については2.1.3研究開発項目毎の内容の詳細で説明する。 1.2 目標設定理由 すでに一部の農作物については、有用遺伝子の取得や単一の遺伝子導入 により遺伝子組換え作物の研究開発がなされている。しかし、現状では工 業原料生産に関与する遺伝子、耐環境ストレスに関与する遺伝子、および 機能発現の制御系に関与する遺伝子等、多くの有用遺伝子が解明されてい ない。これらの遺伝子を多重化して植物に導入し、工業原料生産ができれ ば、化石資源からの工業原料生産手段とは根本的に異る方法となり、化石 資源の節約(省エネルギー)だけでなく、炭酸ガス排出問題等の環境面か らも非常に好ましいものとなる。また、工業原料生産植物を塩害地のような 未利用地でも粗放管理下で生育できるよう、さらに改良すれば地球規模で の緑化にも貢献でき、肥料、農薬等の節約になり、ひいては省エネルギー、省 資源栽培が可能となる。さらに多くの有用遺伝子の多重導入技術、発現制 御技術等の高度な基盤技術の開発は、ここで設定している植物、工業原料 以外にも幅広い汎用技術となる。 2.事業の計画内容 2.1 研究開発の内容 2.1.1 事業全体の計画内容 本研究開発においては植物が有用代謝物を効率よく生産する遺伝子およ び植物が環境から受けるストレスに耐性を与える遺伝子を探索、取得し、 実用植物に導入し有用代謝物を効率よく生産する植物を創成することを目 指している。これを達成するために、本研究開発では下記の3つのサブテー マを設定している。 2.1.2 個別研究開発項目の計画内容 7 2.1.2.1 工業原料生産のための植物代謝利用技術の開発 ゴム、生分解性プラスチック、油脂、タンパク質等を生合成する遺伝子、 植物の代謝効率を向上させる機能を持つ遺伝子、特定の遺伝子の機能を発 現したり制御したりする遺伝子等を動植物、微生物から探索・取得し、適 切な栽培植物に導入し、目的とする工業原料の植物による生産能力を高め る代謝利用技術を開発する。 2.1.2.2 植物の環境ストレス耐性向上技術の開発 セルロース、デンプンなどの工業原料生産植物を植物の生育に不向きな 未利用地や粗放管理下でも生育できるようさらに、改良するために高・低 温、光強度、塩分等の環境ストレスに対して耐性を有する遺伝子を取得し、 実用植物に導入し発現させる技術を開発する。 2.1.2.3 植物への多重遺伝子導入技術及び発現制御技術の開発 工業原料生産遺伝子や耐環境性遺伝子を機能発現制御系と一体化する効 率的な遺伝子多重化技術を開発し、遺伝子導入用カセット(ベクター)に 取込み実用植物に導入する技術および導入遺伝子を目的に応じ機能を発現 させる機能発現制御技術を開発する。 8 研究開発テーマ分担図 (1)工業原料生産のための植物代謝利用技術の開発 王子製紙㈱(岐阜大学小山研究室共同研究) :省エネルギー 型工業原料生産に適した多年生工業原料植物の創成 サントリー㈱(東北大学亀谷研究室、東京大学高野研究室 共同研究) :高度不飽和脂肪酸生産大豆の研究開発 大成建設㈱:耐塩性植物でのハイブリッドファイバーの生 産技術開発 日立造船㈱(大阪大学小林研究室共同研究) :イソプレノイ ド・天然ゴム生産植物の創成 三井化学㈱:タンパク質組織特異的高生産植物の研究開発 植物利用エネルギー使用合理化工業原料生産技術の 研究開発 (2)植物の環境ストレス耐性向上技術の開発 ㈱豊田中央研究所:病害抵抗性植物の分子育種 ㈱東洋紡総合研究所(三重大学橘研究室共同研究) :ポリア ミン代謝関連酵素遺伝子を利用した環境ストレス抵抗性改 良とその利用 (3)植物への多重遺伝子導入技術及び発現制御技術の開発 バイオテクノロジー開発技術研究組合集中研究室(奈良先 端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科、横浜国立 大学平塚研究室、京都大学佐藤研究室、石川県農業短期大 学島田研究室共同研究) : ・多重遺伝子導入技術の開発 ・植物で機能する有用プロモーターの単離と活用 ・植物における高効率遺伝子発現系の構築 (4)総合調査研究 研究開発委員会(新名惇彦委員長) : (研究戦略・研究計画決定、推進)、技術動向調査 (財)地球環境産業技術研究機構:植物葉緑体ゲノムへの複 合環境ストレス耐性遺伝子群の多重導入 再委託研究 京都大学大山教授:ゼニゴケの脂肪酸代謝機能の活用 大阪大学室岡教授:アレルゲンたんぱく質の植物による生 産技術の開発 近畿大学重岡教授:環境ストレス(低温、光・酸素毒)耐性植 物の分子育種−関連遺伝子の探索と活用 9 2.1.3 個別研究開発項目毎の内容の詳細 研究分担毎の概要表 (省エネルギー型工業原料生産に適した多年生工業原料植物の創成) (王子製紙株式会社) 事業植林に利用されているユーカリ樹種を対象として、遺 伝子組換え技術の開発を行い、難溶性リン酸の利用効率向 上等の環境ストレス耐性能力を付与して、不良環境におけ る成長性の増大を図り、工業原料植物として利用する。 目的・意義 年 度 H11 H12 H13 H14 合計 H15 1)ユーカリ形質転換技術開発 2)遺伝子発現制御システム開発 研究目標 3)多重遺伝子の導入と評価 研究内容 1)ユーカリ形質転換技術開発:ア グロバクテリウム法による安定 的遺伝子導入技術の開発と形質 転換効率の向上 2)遺伝子発現制御システム開発: ユーカリでの器官特異的な遺伝 子発現プロモーターの探索 3. 3)多重遺伝子の導入と評価:環境 ストレス耐性に関与する遺伝 子の取得 1)ユーカリ形質転換技術開 発:事業植林ユーカリ樹種 において汎用性のある形質 転換技術を確立 2)遺伝子発現制御システム開 発:ユーカリの樹幹・根特異 的な遺伝子発現制御システ ムの確立 3)多重遺伝子の導入と評価: 難溶性リン酸の可溶化遺伝 子、活性酸素消去遺伝子の付 与による影響評価 1) ユーカリ形質転換技術開発 ユーカリ 2 樹種での高効率形 質転換系の開発に成功(40%) 2) 遺伝子発現制御システム開 発(50%) ・ 樹幹特異的発現プロモータ ーの単離に成功 ・根特異的発現プロモーター の機能評価を開始 3) 多重遺伝子の導入と評価 ・難溶性リン酸の利用に関与 する候補遺伝子の単離を開始 (10%) 1) ユーカリ形質転換技術開 研究成果 (達成度) 発:ユーカリ 5 樹種での形質 転換系の開発に成功(100%) 2) 遺伝子発現制御システム開 発:ユーカリ由来の樹幹特異 的・根特異的プロモーターの 機能評価を継続(90%) 3) 多重遺伝子の導入と評価: 有機酸代謝の制御により難溶 性リン酸の可溶化効果を確 認、カタラーゼ遺伝子の導入 により活性酸素消去能力の向 上を確認(100%) 24 42 51 42 33 192 研究担当人数 8 10 10 11 8 47 原著論文数 0 0 1 1 4 6 口頭発表数 1 4 0 5 9 19 特許出願数 0 2 0 1 2 5 新聞報道等数 0 0 2 0 1 3 研究予算(百万円) 10 (高度不飽和脂肪酸生産大豆の研究開発) 目的・意義 年 度 (サントリー株式会社) 微生物発酵などで生産している高度不飽和脂肪酸を 合計 遺伝子組換え大豆等で生産させることにより、単価と 使用エネルギーの大幅な引き下げを目指す。 H11 H12 H13 H14 H15 1)脂肪酸合成遺伝子群単離 2)植物の脂肪酸改変 3)遺伝子発現制御システム開発 研究目標 4)多重遺伝子連結 5)多重遺伝子の導入と評価 研究内容 研究成果 (達成度) 1)脂肪酸合成遺伝子群単離:高度 不飽和脂肪酸生産微生物から高度 不飽和脂肪酸生産に必要な酵素の 遺伝子群を取得。 2)植物の脂肪酸改変:上記遺伝子 をタバコ、アズキなどに導入し、 植物の脂肪酸組成を改変する。ダ イズ、アズキの形質転換系を開発。 3)遺伝子発現制御システム開発: 導入遺伝子安定発現と目的遺伝子 の発現を抑制する技術を開発。 4)多重遺伝子連結:高度不飽 和脂肪酸生産に必要な酵素の 遺伝子群をタイズの種子特異 的なプロモーターに連結す る。 5) 多重遺伝子の導入と評 価:上記をダイズ等に導入し、 種子特異的に高度不飽和脂肪 酸を蓄積する。 1) 脂 肪 酸 合 成 遺 伝 子 群 単 離 (100%) ・必要な酵素遺伝子群を取得した。 2) 植物の脂肪酸改変(80%) ・アズキの形質転換に成功 ・タバコとアズキでγ-リノレン酸 を生産。 ・タバコでジホモγ-リノレン酸を 生産。アズキにも導入。 ・アラキドン酸を生産するベクタ ーを構築し、タバコ、アズキに導 入。 ・ダイズの再分化に成功し、遺伝 子導入を開始。 3) 遺伝子発現制御システム開発 (80%) ・導入遺伝子の安定発現に関与す る配列を取得し、評価中。 ・遺伝子抑制には RNAi 法が優れて いることを示した。 4) MAR 配列を用い、外来遺伝 子の発現レベルを上昇させる ことができた。組換えシロイ ヌナズナを用い、ダイズ由来 の種子特異的プロモーターを 4 種同定した(80%) 。 5) ダイズ種子においてアラキ ドン酸、ジホモγ-リノレン 酸、γ-リノレン酸の生産に成 功し、この形質が次の世代に 伝わることを示した(100%) 。 22 37 36 36 30 161 研究担当人数 9 8 9 8 5 39 原著論文数 0 0 1 0 0 1 口頭発表数 0 1 1 3 12 17 特許出願数 0 0 0 0 1 1 新聞報道等数 0 0 0 0 2 2 研究予算(百万円) 11 (耐塩性植物でのハイブリッドファイバー(ポリ<(R)-3-ヒドロキシブチレート>、P(3HB)、 充填繊維細胞)の生産技術開発) (大成建設株式会社) 耐塩性植物による砂漠未利用地での植物細胞内への 目的・意義 PHB 充填繊維による WPC(ウッド&プラスチックコン 合計 ビネーション)の生物的生産 年 度 H11 H12 H13 H14 H15 1.耐塩性植物の遺伝子組換え技術の開発 2.塩ストレス下でのハイブリッドファイバー 研究目標 生産性評価 3.ハイブリッドファイバーを用いた圧縮ボード試作 最終目標:圧縮ボードによる ハイブリッド・ファイバー特性の実証 研究内容 研究成果 (達成度) 1-1.耐塩性植物での培養-再分化 1-4.耐塩性植物への PHB の生 系の確立 合成系遺伝子の導入 1-2.耐塩性植物での遺伝子組換え 2-4.耐塩性植物での PHB 蓄積 評価 系の確立 1-3.PHB 生合成多重遺伝子導入発 2-5.塩水栽培ハイブリッドフ ァイバー特性評価 現用ベクターの性能評価(イ 3-2.単独遺伝子導入によるフ ネ) ァイバー特性変化の調査 2-1.導入遺伝子の安定性評価 3-3.多重化遺伝子導入による 2-2.単独・多重化遺伝子の機能 特性変化効果の調査 評価(タンパクと PHB 蓄積) 3-4.耐塩性植物の圧縮ボード 2-3.ハイブリッド化による質的 変化確認 試作と特性評価 3-1. PHB と植物繊維混合物を用い たファイバー特性変化項目の 把握 1-1.耐塩性植物での不定芽誘導系 1-4. PHB 遺伝子導入耐塩性植 物を生産(100%)。 を確立した(100%) 。 1-2. 耐塩性植物での不定芽切片 2-4. 耐塩性植物での PHB 蓄 積を確認(100%)。 のへ遺伝子導入系を確立し 2-5. 耐塩性植物の塩水栽培に た(100%) 。 よるファイバー生産を実 1-3.多重遺伝子導入発現用ベクタ ーの構築終了と発現性能確認 施。塩水がファイバー特 2-1.モデル植物(イネ)を用いた 性に大きな影響を与えな い事を確認(95%)。 導入遺伝子の安定性評価終了 3-2. PHB 遺伝子によるファイ (100%) 。 バー特性変化を確認 2-2.単独、 多重化遺伝子による PHB (100%) (モデル植物イ 蓄積性能確認(100%) 。 ネ) 。 2-3. PHB 蓄積個体でハイブリッド 化 に よ る 質 的 変 化 を 確 認 3-3. 耐塩性植物の圧縮ボード を試作、ハイブリッド化 (100%) 。 による特性変化を確認 3-1.PHB と植物繊維混合物を用い (100%)。 たハイブリッドファイバー 特性評価方法を確立。混合に よる特性変化を確認(100%) 。 20 30 35 38 35 158 研究担当人数 7 6 8 9 7 37 原著論文数 0 0 0 0 3 3 口頭発表数 1 1 1 2 3 8 特許出願数 0 0 0 1 3 4 新聞報道等数 1 1 3 1 0 6 研究予算(百万円) 12 (イソプレノイド・天然ゴム工業原料植物の創成) (日立造船株式会社/大阪大学) 目的・意義 年 度 異種ポリイソプレン生合成酵素遺伝子を有する遺伝子組換 え植物の作出,その対照植物として,トランス型ゴム(グ ッタペルカ)産生植物のトチュウとシス型ゴム産生植物の ペリプロカを利用して,温帯圏におけるイソプレノイド・ 天然ゴムの高生産性工業原料植物を創成する。 H11 H12 H13 H14 合計 H15 1)ゴム代謝植物の機能解析 研究目標 2)ゴム関連遺伝子の解析 3)ゴム代謝遺伝子の導入と評価 研究内容 1)ゴム代謝植物の機能解析: トチュウ他の植物にいて,ゴム を代謝する機能解析や分析技法 の開発を行う。 2)ゴム関連遺伝子の解析: シス型・トランス型ゴム代謝植 物からゴム代謝に関与した遺伝 子群を探査・解析する。 3)ゴム代謝遺伝子の導入: 遺伝子導入を図る植物を定め て目的とする遺伝子の導入と形 質転換対の作出と育成を行う。 1)ゴム代謝植物の機能解析 分析技術・組織内分布など研究 達成度は 100% 2)ゴム関連遺伝子の解析 関連遺伝子の単離, クローニン グなど目標達成度は 60-70% 3)ゴム代謝遺伝子の導入 対象植物を定めて現在実施中 目標達成度は 30% 研究成果 (達成度) 1)ゴム代謝植物の機能解析: トチュウ・ペリプロカについ て,ゴム代謝の部位や分析によ りその性質を解析する。 2)ゴム関連遺伝子の解析: トチュウ・ペリプロカからゴ ム 代 謝 に関 与 した 遺 伝子群 を 探査・解析する。 3)ゴム代謝遺伝子の導入: トチュウ・ペリプロカへの遺 伝子導入を計る。ゴム生合成に 関 与 し た過 剰 発現 と 抑制の 遺 伝 子 導 入を 行 い形 質 転換対 の 作出と育成を行う。 1)ゴム代謝植物の機能解析: トチュウ・ペリプロカに関して の よ り 高度 な 分析 技 術を開 発 し,それぞれの植物に関するゴ ム 成 分 の検 定 技術 を 開発し た (100%) 。 2)ゴム関連遺伝子:トチュウ・ ペリプロカにおいて,ゴム生合 成 に 関 す る IPPisomerase と FPPsyntase をクローニングし た(100%) 。 3)遺伝子導入:トチュウに関 し て 遺 伝子 導 入は 可 能であ る が形質転換体の作出が難しい。 形質転換体 60 個体作成し遺伝 子導入個体はゼロ(達成度 10% )。 ペリ プ ロカ に 関して は IPPisomerase と FPPsyntase に お け る 遺伝 子 導入 個 体を作 成 し現在育成中(80%) 。 20 36 45 38 48 187 研究担当人数 8 10 12 9 9 48 原著論文集 0 1 2 6 12 21 口頭発表数 0 3 5 17 11 36 特許出願数 0 0 0 1 2 3 新聞報道等数 0 0 0 1 1 2 研究予算(百万円) 13 (タンパク質組織特異的高生産植物の研究開発) 目的・意義 年 度 (三井化学株式会社) 大規模に作付されている作物(イネ、サツマイモ)に ついて、これまでは有効利用されずに破棄されている 植物組織(例えば茎葉部分)に工業用酵素(フィター 合計 ゼ)を大量蓄積させる系を開発する。フィターゼは環 境の富栄養化を軽減させる効果を持つことから、世界 的に注目を集めている酵素である。 H11 H12 H13 H14 H15 1) 高発現プロモーターの開発 2) フィターゼDNA 配列の最適化 研究目標 3) タンパク質安定蓄積技術の開発 4) 高発現化と実用性検討 研究内容 研究成果 (達成度) 1) 発現プロモーターの開発 ・プロモーター配列を改変するこ とにより高活性のプロモーターを 開発する。 2)フィターゼ DNA 配列の最適化 ・生物種間でのコドン利用頻度の 片寄りを補正し、植物での発現に 適した DNA 配列に変更する。 3)タンパク質安定蓄積技術の開 発 ・細胞内少器官へのターゲッティ ング等により、タンパク質の安定 的貯蔵方法を開発する。 1)高発現プロモーターの開発 元プロモーターの約 3 倍程度の高 活性プロモーターを作出した(一 過性発現評価) (50%) 。 2)フィターゼ DNA 配列の最適化 微生物由来フィターゼの DNA 配列 を植物用に改変し、イネでのフィ ターゼ発現を確認した(一過性発 現評価) (100%) 。 3)タンパク質安定蓄積技術の開 発 フィタイーゼの安定蓄積が期待さ れる細胞内小器官候補を選定し、 移行シグナル配列を合成した (100%) 。 3)タンパク質安定蓄積技術 の開発 ・フィターゼ発現を茎葉特異的に 制御する。 ・実用植物として有望なサツマイモ の高効率形質転換法を開発す る。 4)高発現化と実用性の検討 ・フィターゼ高発現用コンストラクトを選 定する。 ・発酵飼料(サイレージ)化を行 い、サイレージ過程におけるフィター ゼの安定性を評価する。 3)タンパク質安定蓄積技術 の開発 ・Cab プロモーター利用により、フィ ターセの茎葉特異的発現に成功 した(100%) 。 ・サツマイモ茎葉切片を材料とする 高効率形質転換法を確立した (100%) 。 4) 高 発 現 化 と実 用 性 の検 討 ・酵母フィターゼ遺伝子のコドン改 変かつイネキチナーゼの細胞外分泌 シグナルの使用が高発現化に効 果的であることを確認した (100%) 。 ・イネで目標値を上回るフィターゼ 活性(10.6U/g 生重量)を達成 し、また、サイレージ化過程でも フィターゼは極めて安定であるこ とを確認した(100%) 。 20 30 20 30 32 132 研究担当人数 2 3 4 4 4 17 原著論文数 0 0 0 1 4 5 口頭発表数 0 1 1 2 6 10 特許出願数 0 1 0 1 1 3 新聞報道等数 0 0 0 0 1 1 研究予算(百万円) 14 (病害抵抗性植物の分子育種) 目的・意義 年 度 (株式会社豊田中央研究所) サツマイモを原料としたプラスチック製造事業に 向け、サツマイモの低コスト・安定供給および保 存中の腐敗防止を可能とするため、サツマイモに 合計 病害抵抗性および耐腐敗性を付与することを目的 とする。 H11 H12 H13 H14 H15 1)機能改良した抗菌ペプチドの開発 2)抗菌ペプチド遺伝子のサツマイモ等への導入と評価 研究目標 3)遺伝子発現制御システム開発と病害抵抗性品種作出 研究内容 研究成果 (達成度) 研究予算(百万 円) 1)大腸菌を用いた抗菌ペプ チド生産技術の開発 2)天然の抗菌ペプチドの性 能評価と機能改良課題の明 確化 3)抗菌ペプチドの構造改変 による機能改良 4)抗菌ペプチド遺伝子のモ デル植物への導入と病害抵 抗性の評価 5)サツマイモへの遺伝子導 入技術の開発 1)大腸菌を用いた抗菌ペプ チ ド の 生 産 技 術 開 発 (100%) 2)抗菌ペプチドの性能評価 法開発と機能改良課題の明 確化(100%) 3)目標性能を有する新規抗 菌ペプチドの創製(100%) 4)モデル植物への抗菌ペプ チド遺伝子の導入による病 害抵抗性の付与(100%) 5)サツマイモへの遺伝子導 入技術の確立(100%) 1)抗菌ペプチドの構造改 変による機能改良 2)抗菌ペプチド遺伝子の サツマイモへの導入 3)抗菌ペプチド遺伝子の サツマイモ内における発 現制御技術の開発 4)サツマイモ内における 抗菌ペプチド遺伝子の発 現解析と病害抵抗性・耐 腐敗性の評価 1)抗菌ペプチドの構造改 変による機能改良を通じ た新規高性能抗菌ペプチ ドの創製(100%) 2)抗菌ペプチド遺伝子の サツマイモへの導入 (100%) 3)抗菌ペプチド遺伝子の サツマイモ内における発 現 制 御 技 術 の 開 発 (100%) 4)抗菌ペプチド遺伝子を 導入した病害抵抗性サツ マイモ新品種の作出 (100%) 22 33 35 37 10 137 研究担当人数 5 7 7 9 3 31 原著論文数 0 0 0 1 1 2 口頭発表数 0 3 0 4 5 12 特許出願数 0 4 8 4 0 16 新聞報道等数 0 0 0 0 0 0 15 (ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を利用した環境ストレス抵抗性の改良とその利 用に関する研究) (株式会社 東洋紡総合研究所) ポリアミンによる環境ストレス抵抗性改良技術の開 目的・意義 合計 発 年 度 H11 H12 H13 H14 H15 1)ポリアミン代謝特性の解析 2)ポリアミン代謝関連酵素遺伝子群の単離 研究目標 研究内容 研究成果 (達成度) 3)遺伝子組換え植物の作出 4)遺伝子組換え植物の評価 1)低温遭遇植物のポリアミン代謝 特性の解析 ・ポリアミンによる低温耐性増大 機構の解析 2)ポリアミン代謝関連酵素遺伝子 群の単離 ・目的遺伝子の取得 3)遺伝子組換え植物の作出と遺伝 子発現解析 ・遺伝子組換えシロイヌナズナの 作製と遺伝子発現解析 ・遺伝子組換えタバコの作製と遺 伝子発現解析 3)遺伝子組換え植物の作出と 遺伝子発現解析 ・遺伝子組換えサツマイモの作出と 遺伝子発現解析 4)遺伝子組換え植物の評価と 解析 ・遺伝子組換えシロイヌナズ ナの評価と解析 ・遺伝子組換えタバコの評価 と解析 ・遺伝子組換えサツマイモの 評価と解析 1)低温遭遇植物のポリアミン代謝 特性の解析 ・ポリアミンによる低温耐性増大 機構の解析(100%) 。 2)ポリアミン代謝関連酵素遺伝子 群の単離 ・低温ストレスに関与するポリア ミン代謝関連酵素遺伝子群を単離 (100%) 。 ・ポリアミン代謝関連酵素遺伝子 群のプロモーターを単離(100%) 。 3)遺伝子組換え植物の作出と遺伝 子発現解析 ・SPDS 遺伝子を導入した遺伝子組 換えシロイヌナズナを作製 (100%) 。 ・SAMDC・ADC・SPDS プロモーター を導入した遺伝子組換えタバコを 作製(100%) 。 3)遺伝子組換え植物の作出と 遺伝子発現解析 ・SPDS・SAMDC 遺伝子を導入し た遺伝子組換えサツマイモを 作製(100%) 。 4)遺伝子組換え植物の評価と 解析 ・SPDS 遺伝子を導入した遺伝 子組換えシロイヌナズナのポ リアミンの評価(100%) 。 ・SPDS 遺伝子を導入した遺伝 子組換えシロイヌナズナの 様々な環境ストレス耐性の評 価(100%) 。 ・SAMDC・ADC・SPDS プロモー タ ー の 低 温 誘 導 性 評 価 (100%) 。 ・SPDS 遺伝子を導入した遺伝 子組換えサツマイモのポリア ミンの評価(100%) 。 ・SPDS 遺伝子を導入した遺伝 子組換えサツマイモの様々な 環境ストレス耐性の評価 (100%) 。 21 36 35 34 20 146 研究担当人数 2 4 4 4 4 18 原著論文数 0 2 2 3 2 9 口頭発表数 1 3 3 3 3 13 特許出願数 1 2 2 3 3 11 新聞報道等数 0 3 0 0 1 4 研究予算(百万円) 16 (多重遺伝子連結技術の開発) (奈良先端科学技術大学院大学・集中研究室) 目的・意義 年 度 工業原料生産植物を作成するにはストレス耐性遺伝 子群に加え、工業原料生産遺伝子を導入しなければな らない。そのため、多くの遺伝子を安定に植物へ導入 する技術の開発を目指す。 H11 H12 H13 H14 合計 H15 1)遺伝子連結基礎技術の開発 2)固相連結法による連続連結数の増加 研究目標 3)発現安定化技術の開発 研究内容 研究成果 (達成度) 研究予算(百万円) 研究担当人数 原著論文数 口頭発表数 特許出願数 新聞報道等数 1)遺伝子連結基礎技術の開発 ・遺伝子の固相化及び固相で の遺伝子連結を行う。 2)固相連結法による連続連結 数の増加 ・固相連結法により5つの遺伝 子を連結する。 3)発現安定化技術の開発 ・長鎖 DNA の導入および遺伝子 の安定発現に適したバイナリ ーベクターの開発。 2)固相連結法による連続連 結数の増加 ・固相連結法の問題点を抽 出、改良し、連結可能な遺 伝子数を増やす。 ・連結遺伝子群をさらに複 数連結する系を開発する。 3)発現安定化技術の開発 ・植物の多重遺伝子導入に 適したベクターを開発す る。 1) 遺 伝 子 連 結 基 礎 技 術 の 開 発 2) 固相連結法による連続連結 (100%) 数の増加(100%) ・固相での遺伝子連結が可能なこ ・DNA 断片の精製により連結効 とを示した。 率を向上させ、12DNA 断片の連 ・4 カラム内連結を行い、自動化 結を確認した。 ・固相連結した 9、10、11DNA の可能性を示した。 断片をさらに連結し、30DNA 断 ・固相連結を用いて植物での一 片をバイナリーベクターへ導 過性発現を確認した。 入した。 2)固相連結法による連続連結の ・有用多重遺伝子導入シロイヌ 増加(100%) ・固相連結法により 7 つの遺伝子 ナズナを作出した。 ・多重遺伝子連結自動化に必要 連結を確認した。 な基礎技術を検討した。 3) 発現安定化技術の開発(100%) ・改良 TAC ベクターの構築を終了 3) 発 現 安 定 化 技 術 の 開 発 ・導入遺伝子発現安定化に関する (100%) 改良 TAC ベクターの有効性を評価 ・改良 TAC ベクターにより、導 入遺伝子発現が安定化するこ とを確認した。 77 3 0 0 0 0 65 3 0 1 1 0 55 3 0 3 1 0 17 55 3 2 1 1 1 40 3 1 4 1 0 292 15 3 9 4 1 (植物で機能する有用プロモーターの単離と活用) (奈良先端科学技術大学院大学・集中研究室) 有用植物の分子育種において、外来遺伝子を目的とす る組織、時期に選択的かつ安定に発現させることが必 要である。多種多様なプロモーターを収集し、プロジ ェクト参加企業が利用できるようにすることが目的 合計 目的・意義 である。具体的には、モデル植物のシロイヌナズナを 材料とし、DNA マイクロアレイの技術を用いて短期間 に系統的に遺伝子の発現をモニターし、その情報に基 づいてプロモーターを単離することを目指している。 年 度 H11 H12 H13 H14 H15 1) DNA マイクロアレイ技術の開発 2) シロイヌナズナの有用プロモーターの単離と活性評価系の構築 研究目標 3) シロイヌナズナのプ ロモーターの活性評価 研究内容 研究成果 (達成度) 研究予算(百万円) 研究担当人数 原著論文数 口頭発表数 特許出願数 新聞報道等数 1) DNA マイクロアレイ技術の開 発:シロイヌナズナの cDNA を利用 し、安定した解析が可能な DNA マ イクロアレイの系を構築。 2) シロイヌナズナ由来の各種有 用プロモーターの単離と活性評価 系の構築:DNA マイクロアレイ技 術を用いて、様々な要因により発 現が変動する遺伝子を網羅的に検 出。プロモーター領域をクローン 化し、プロモーター活性の評価系 を作成する。 1. DNA マイクロアレイ技術の開 発(100%) ・均一化 cDNA ライブラリー作製と 塩基配列の決定(100%) 。 ・信頼性の高い cDNA マイクロアレ イの系を構築(100%) 2)シロイヌナズナ由来の有用プロ モーターの単離と評価系の作成 (90%) ・葉および根で特異的高発現して いる遺伝子を抽出(90%) 。 2 プロモーター断片の活性検定 用ベクターを作成し、組み込 みを順次進行中(60%) 。 3 一過性発現によるプロモータ ー活性評価を開始(80%) 。 ・組換え体植物の作成開始(10%) 。 60 3 0 0 0 0 55 4 0 1 1 0 2)シロイヌナズナ由来の各種 有用プロモーターの単離と活 性評価:プロモーターの植物 体における活性を組換え体シ ロイヌナズナを作成し、評価 する。 ・cDNA マイクロアレイを用い た解析により、葉および根で 特異的高発現している遺伝子 各 80 個を抽出(100%) ・葉・根高発現遺伝子合計 101 個についてプロモーター領域 を単離、プロモーター活性検 定用ベクターへの組み込み (80%) ・一過性発現によるプロモー ターの活性評価(100%) ・一過性発現検定で有力と判 断された遺伝子プロモーター についての組換え体植物の作 成、各種プロモーターの植物 体での発現特性検定(30%) ・解析結果を有効に活用でき るような情報カタログの構築 (30%) 48 4 0 1 0 0 18 48 4 2 5 0 0 31 3 2 2 0 0 242 18 4 9 1 0 (植物における高効率遺伝子発現系の構築) (奈良先端科学技術大学院大学・集中研究室) 目的・意義 年 度 研究目標 研究内容 研究成果 (達成度) 研究予算百万円 高等植物において外来遺伝子を安定かつ高発現させるにはプロモーターの選択 が一義的に有効であるが、それ以外の以下の要素技術を総合的に開発する。 1)インスレーターの活用 2)翻訳効率の上昇 3)ポリシストロニックな発現系の 構築 4)レギュロン発現系の構築 5)遺伝子の特異的発現抑制 H11 H12 H13 1)インスレーターの活用 2)翻訳効率の上昇 3)ポリシストロニックな遺伝子発 4)レギュロン発現系の構築 5)遺伝子の特異的発現抑制 1)インスレータの活用: Ars インスレーター、ADH200 のインスレ ーター様配列の位置効果の回避を複数 のレポーター遺伝子で評価する。 2)翻訳効率の上昇: ADH5’UTR の翻訳促進効果を示す領域 を限定すること。翻訳促進効果を種々の 植物細胞で調べること。 3)ポリシストロニックな遺伝子発現系 の構築: 高等植物においてIRES配列を利用した 系を構築し、その有効性を実証するこ と。 4)レギュロン発現系の構築: レギュロン発現系を構築するために必 要なカフェイン生合成系cDNAクローン を揃える。 5)遺伝子の特異的発現抑制: カフェイン生合成を特異的に抑制す る。そのために、コーヒー植物の安定し た不定胚培養系を開発すること。カフェ イン生合成遺伝子のアンチセンス構築 物および RNAi 構築物をコーヒー不定胚 形成組織等に導入すること。 1)インスレーターの活用 Ars インスレーター、ADH200 染色体に組 み込まれた時に下流の遺伝子の発現を 安定させることを GUS、LUC をレポータ ー遺伝子として確認した(100%) 。 2)翻訳効率の上昇 ADH5’UTR がタバコ、シロイヌナズナの プロトプラストで翻訳を顕著に高めた。 シロイヌナズナ植物体においても翻訳 促進効果を確認した(100%) 。 3)ポリシストロニックな遺伝子発現系 の構築 EMCV-IRES が植物細胞においてポリシス トロニックな mRNA の翻訳に有効である ことを示した(100%) 。 4)レギュロン発現系の構築 3 種類のカフェイン生合成系 cDNA ク ローン(XMT2、MXMT2、TCS1)を揃えた (100%) 。 5)遺伝子の特異的発現抑制 コーヒーのアラビカ、カネフォラ両種の 不定胚形成組織を誘導・増殖できる条件 を確立した。別途、RNAiベクターを構築 した(100%) 。 34 44 47 19 H14 合計 H15 発現系の構築 1)位置効果を回避するインスレータ の活用: Ars インスレーター、ADH200 効果 を植物体で評価する。 2)翻訳効率の上昇: ADH5’UTR の翻訳促進効果を種々の 植物体で評価する。 3)ポリシストロニックな遺伝子発現 系の構築: IRES 配列を利用し、少なくてとも 3 シストロンを植物体で発現させる。 4)レギュロン発現系の構築: カフェイン生合成系を単 一レギ ュロンで植物体で機能させる。 5)伝子の特異的発現抑制: カフェイン生合成を特異的に抑制 したコーヒーの作成。 1) インスレーターの活用 Ars インスレーターを持つ外来遺伝 子はタバコ植物体で高発現する傾向 が見られた(90%) 。 2)翻訳効率の上昇 促進には熱ショックタンパク質が関 与することを示した。ADH5’UTR 以 外にも翻訳を促進させる多数の H5’UTR をシロイヌナズナから単離 した。ADH5’UTR は実用植物でも有 効であることを示した(100%) 。 3)ポリシストロニックな遺伝子発現 系の構築 さらに、EMCV-IRES より優れた新規 合成配列を設計した(100%) 。 4)レギュロン発現系の構築 3 種類のカフェイン生合成遺伝子を 導入したタバコでカフェインの蓄積 を認め、昆虫忌避効果があることを 示した(100%) 。 5)伝子の特異的発現抑制 コーヒーのアラビカ、カネフォラ両 種のカフェイン生合成をRNAiで抑 え、減カフェインコーヒーの作出に 成功した(100%) 。 46 32 203 研究担当人数 原著論文数 口頭発表数 特許出願数 新聞報道等数 9 0 1 0 0 9 2 1 0 0 9 2 2 3 0 20 9 5 15 6 1 7 2 6 0 1 43 11 25 9 2 (植物葉緑体ゲノムへの複合環境ストレス耐性遺伝子群の多重導入による複合環 境ストレス耐性工業原料生産植物の作成) (地球環境産業技術研究機構) 目的・意義 年 度 乾燥、強光、塩害などに効果のある遺伝子を多重化して、 葉緑体ゲノムに一括導入する技術を開発するとともに、こ れらの複合環境ストレス耐性工業原料生産植物を作成する 基礎基盤開発を目的とする。 H11 H12 H13 H14 合計 H15 1)葉緑体多重遺伝子導入手法の確立 研究目標 研究内容 研究成果 (達成度) 2)葉緑体遺伝子発現制御系の開発 3)複合環境ストレス耐性植物の作出 1)葉緑体多重遺伝子導入手法の 確立 単一遺伝子による葉緑体遺伝子導入植物 の作成と導入遺伝子発現量、生理学的解 析を行う。この結果を踏まえ、多重化す ることにより複合環境ストレス耐性に有 効であると考えられる遺伝子の選抜を行 なう。 2)葉緑体遺伝子発現制御系の開 発 特定の組織・器官の葉緑体で導入 遺伝子の発現を行うシステムであ る。葉緑体にコードされる遺伝子 のプロモータ解析により、本目的 にあうプロモータの探索、取得を 行なう。この結果から、葉緑体遺 伝子発現制御系の構築を目指す。 1)葉緑体導入用ベクターを構築し た(100%) 。 2)レポーター遺伝子として GFP を 用いその発現総量が全可溶画分の 38 % 程 度 で あ る こ と を 確 認 し た (100%) 。 3)調節可能なプロモータとして、 rbcS プロモータを選びアグロバク テリウムにより T7RNA ポリメラ ーゼ遺伝子の核への導入を行っ た。また、T7プロモータに GFP 遺 伝子をつなげたものを葉緑体へ導 入した(100%) 。 3)複合環境ストレス耐性植 物の構築 1、2の成果をさらに発展さ せると共に、葉緑体多重遺伝 子導入体の作成と得られた導 入体の実験室内における評価 を行う。 1)GFP, dsRed に加え、GUS を レポーターとしてポリシスト ロニックな発現を期待できる ように多重化を行い、葉緑体 ゲ ノ ム へ 一 括 導 入 し た (100%) 。 2)多重化の際のプロモータか らの距離が増すほどその産物 の蓄積量が低下する傾向が見 られた(100%) 。 3)紅藻 Galdieria partita の APX の cDNA によるタバコ葉緑 体形質転換体を作出した (100%) 。 4)得られた葉緑体形質転換体 のAPX活性は野生型の約 2000 倍だった(100%) 。 5 ) ス ト レ ス 環 境 下 で は water-water cycle 活性低下の 原因が APX の失活によることを 初めて明らかにした(100%)。 研究予算(百万円) 45 26 26 26 26 149 研究担当人数 12 12 12 13 13 62 原著論文数 0 0 0 0 1 1 口頭発表数 0 1 2 1 1 5 特許出願数 0 0 0 1 0 1 新聞報道等数 0 0 1 0 0 1 21 (ゼニゴケの脂肪酸代謝機能の活用、アレルゲンたんぱく質の植物による生産技術 の開発、環境ストレス(低温、光、酸素毒)耐性植物の分子育種―関連遺伝子の探索 と活用) (再委託研究・京都大学大山教授、大阪大学室岡教授、近畿大学重岡教授) 目的・意義 年 度 植物の産生する脂肪、脂肪酸は植物の代謝および構成成分として重 要な役割を担っている。ゼニゴケの高い脂肪酸産生能に着目し、そ こから有用な脂肪酸生合成酵素関連遺伝子を単離する。マメ科植物 はたんぱく質・脂質含量が高いことから種子に有用な物質を蓄積す るための転写調節配列を利用し、形質転換植物を作出することで新 たな工業植物を創生する。低温、乾燥などの種々のストレスに由来 する光・酸素毒に対する耐性すなはち極限的な環境下でも生存でき る耐性植物の開発をする。 H11 H12 H13 H14 合計 H15 1)ゼニゴケの脂肪酸代謝機能の活用 研究目標 2)アレルゲンたんぱく質の植物による生産技術の開発 3)環境ストレス耐性植物の分子育種―関連遺伝子の探索と活用 研究内容 研究成果 (達成度) 研究予算(百万円) 1) 脂 肪 酸 生 合 成 酵 素 関 連 遺 伝 子、特にアラキド酸などの高 度不飽和脂肪酸の生合成に関 わる酵素遺伝子を単離する。 2) 主要ダニアレルゲン遺伝子を 植物ベクターに組み込み、 Agrobacterium の系を利用し ミヤコグサでの発現を試み る。ついで、ダイズ種子特異 的プロモーターを利用して、 ダイズ種子での蓄積を試み る。 3) アクティベションターギング 法による有用遺伝子の探索、 藻類グルタチオンベルオキシ ターゼ(GPX)遺伝子導入タ バコの作出とストレス感受性 の評価 1) アラキド酸やエイコサペ ンタエン酸を生成する遺 伝子を単離する。 2)平成11年度および12 年 度 に 行 っ て い る Agrobacterium の系を利用し ミヤコグサでの発現の試みる およびダイズ種子特異的プロ モーターを利用して、ダイズ 種子での蓄積を引き続き試み る。 3)酸化的ストレス、塩、低温、乾 燥ストレス耐性形質転換植物の 作出と評価 1) 脂肪酸鎖長延長酵素間で高度 1) アラキド酸やエイコサペ に保存されているアミノ酸配列部 ンタエン酸を生成するに 位を利用してゼニゴケ雄ゲノミッ は MpELO1 遺伝子および クライブラリより該当する遺伝子 MpDES6 遺伝子に加えてΔ MpFAE2 および MpFAE3 を単離した。 5不飽和酵素遺伝子が必 2) コナヒョウダニの主要アレル 要であり、MpDES5遺伝子 ゲン遺伝子を、ベクターにつなぎ、 を単離した。 pB1121-A 、 pIG121Hm-A を 作 成 し 2) 種子特異的プロモーター た。Agrobacterium 感染、カルス につないだ Der f 1 を含 培養、再生を行い、再分化を確認 む発現ベクターが作成で した。 きダイズの形質転換によ 3) アクティベーションタギング りダイズ種子における産 用ベクターからのスクリーニング 生を可能にした。 をし、チラコイド膜結合型アスコ 3) 自然環境化でのストレス ルビン酸ベルオキシターゼに類似 条件を考慮し生理的パラ した遺伝子近傍にT−DNA領域 メーターに及ぼす影響を が挿入できた。クラミドモナスW 検討し光合成活性および 80株由来GPXを葉緑体あるい PS11 活性が高く保持され は細胞質に導入した形質転換タバ た形質転換タバコを作成 コのT1 世代を作成した。 した。 15 15 15 22 15 15 75 研究担当人数 3 3 3 3 3 15 原著論文数 2 13 9 8 4 36 口頭発表数 0 15 4 5 4 28 特許出願数 0 0 0 2 4 6 新聞報道等数 0 0 0 3 0 3 23 以下、研究開発項目毎に A.目的・意義、B.研究目標、C.目標設定理由、D.ブ レークスルーポイント、E.研究計画について述べる。 24 2.1.3.1 の創成 省ネルギー型工業原料生産に適した多年生工業原料植物 (王子製紙株式会社) A. 目的・意義 事業植林に利用されているユーカリ樹種を対象として、形質転換技術 (遺伝子導入及び形質転換植物の再生)の開発を行うとともに、ユーカ リの樹幹、根等の植物器官における遺伝子発現の制御技術を開発する。 この基盤技術の応用として、難溶性リン酸の利用能力、活性酸素消去能 力等の環境ストレス耐性能力を付与して、不良環境における成長性の増 大を図り、遺伝子組換えユーカリを工業原料植物として利用する有効性 を実証する。 B. 研究目標 1) ユーカリの形質転換技術の開発 ユーカリの形質転換においては、早生分枝に対してアグロバクテリウ ム菌の感染を行う早生分枝法、さらに得られた形質転換カルスから苗条 原基の形成を介して植物体再生を行う苗条原基法を組み合わせることが 有効な手段となる。ここでは世界各地の植林事業に利用されている複数 のユーカリ樹種について高効率の形質転換系の開発をめざす。具体的に はアグロバクテリウム菌の感染率の向上、カルスからの再分化率の向上 と形質転換に要する期間の短縮を目標に形質転換技術の開発を行う。 2) 遺伝子発現制御システムの開発 モデル植物(シロイヌナズナ)において開発される遺伝子発現制御シ ステムのユーカリでの機能を検証すると同時に、多年性植物特有の器官 である樹幹で有効に機能する遺伝子発現制御システムの開発を行い、ユ ーカリにおける遺伝子発現制御システムの開発をめざす。 3) 多重遺伝子の導入と評価 ユーカリの環境ストレス耐性の付与に関しては、酸性土壌環境で難溶 性リン酸を植物が利用できるように可溶化するための遺伝子組換えを行 う。そのため、植物からクエン酸の合成と分解に関わる遺伝子を単離し、 ユーカリに導入し、形質転換ユーカリを作出して難溶性リン酸の利用効 率向上効果を検証する。その他、プロジェクトで開発された工業原料遺 伝子と環境ストレス耐性遺伝子を多重化してユーカリに導入し、遺伝子 組換えによる効果を評価し、多年生工業原料植物としての有効性を評価 する。 C. 目標設定理由 工業原料植物としてユーカリを選定した。ユーカリは成長性(年間 4∼ 5m の成長)に加えてパルプ適性に優れることから、事業植林用の木本性植 物として世界各地に植林されている。また多量のテルペン系精油を葉に含 有し、ユーカリ油は内燃機関燃料、テルペノイドは香料や医薬品、さらに ポリプレノイドは天然ゴムとして一部で実用化されている。このようにユ ーカリは二次代謝産物の生合成能力が高いことから、様々な新規工業原料 を生み出す潜在的能力が高い利点を有している。本研究ではユーカリを遺 伝子組換えすることによりパルプ資源として利用するだけでなく、将来的 25 には新たな木質材料や化学工業原料を樹幹や葉等で生産し、ユーカリを高 度利用する可能性がある。また、環境ストレス耐性の付与により植林可能 な面積を拡大でき、環境保全に適合した工業原料植物になることが期待で きる。そのため、事業植林に利用されているユーカリを対象として形質転 換系の開発および有用遺伝子を有効に機能させる遺伝子発現制御システム の開発が必要となる。 ユーカリに付与すべき特性としてリン酸の利用性向上を課題とする。ユ ーカリの植林が行われている熱帯から亜熱帯地域には酸性土壌が広く分布 し、この酸性土壌ではリン酸の不溶化が起こって、植物がリン酸を吸収で きなくなることが植物成長の律速要因となっている。遺伝子組換え技術に より根よりクエン酸を分泌させ難溶性リン酸を可溶化することによって植 物の成長性を飛躍的に高めることが期待できる。 D. ブレークスルーポイント 1)本研究を事業化する上で最も重要なことは、事業化実績のある植物を 対象にすることである。ユーカリは 500 種以上の植物種があると言われ ているが、事業上有益な樹種は 10 種程度であり、これらの有用樹種の 形質転換系の開発が世界的に望まれている。そのため、ユーカリで汎用 性のある形質転換系の開発が必要である。本研究では、ある種のユーカ リにおいて苗条原基法と早生分枝法を組み合わせた形質転換が有効で あることを見出したことから、これらの技術を基礎として事業植林樹種 を高効率かつ短期間に形質転換する技術に発展させる。 2)近年、多くの植物種で遺伝子組換えが試みられ、多数の形質転換植物 体が作出されている。外来遺伝子の発現には植物ウイルスに由来する遺 伝子発現制御システムが広く利用されているが、植物に対する負担を少 なくし、また合目的に遺伝子を機能させるためには、植物器官や組織あ るいは時期に特異的な遺伝子発現制御システムの構築が必要となる。特 に、多年生植物である樹木においては遺伝子発現制御システムの開発の 前例がなく、形質転換技術の開発に次いで必要不可欠な技術開発となっ ている。 3)根からクエン酸を排出することによって、土壌中でキレート化して難 溶化しているリン酸を可溶化することによって、リン酸の飢餓状態にあ る酸性土壌においても生育できる植物種が存在する。岐阜大学の小山助 教授はこの現象に着目し、難溶性リン酸を可溶化できるニンジン変異細 胞を解析して、複数の遺伝子がクエン酸の蓄積に関与することを捉えて いる。この基礎情報をもとに、遺伝子組換えによってクエン酸の排出量 を高め、難溶性リン酸を可溶化できる可能性が示唆され、これをユーカ リに適用する。 E. 研究計画 1) ユーカリの形質転換技術の開発: 事業植林に利用されているユーカリ樹種の形質転換系を開発する。ユー カリ(E.camaldulensis)で開発した苗条原基法及び早生分枝法を基礎とし て、他樹種についても形質転換に適した組織培養条件等を検討し、アグロ バクテリウム菌の感染率の向上、カルスからの再分化率の向上と形質転換 に要する期間の短縮をめざす。 2) 遺伝子発現制御システム開発: 26 ユーカリの樹幹及び根で機能する遺伝子発現制御システムを開発する。 そのため、ユーカリの樹幹で発現している遺伝子の cDNA 解析により、樹幹 で機能するプロモーター候補の絞り込みを行うと共に、プロモーター領域 のゲノム遺伝子の単離及び安定形質転換体の作出による機能検定を行う。 また、集中研究室におけるモデル植物(シロイヌナズナ)での根での遺伝 子発現制御システム開発と連動して、得られたプロモーター領域のユーカ リにおける検証も平行して行う。 3) 多重遺伝子の導入と評価: モデル植物(シロイヌナズナ、ニンジン変異細胞)で進行しているクエ ン酸排出の代謝メカニズムの研究を基礎として、ユーカリへの技術応用を 検討する。そのため、ユーカリから関連遺伝子の単離とユーカリでの評価 系を開発し、最終的には難溶性リン酸の利用能力を付与された形質転換ユ ーカリの作出を行う。 2.1.3.2. 高度不飽和脂肪酸生産大豆の研究開発 (サントリー株式会社) A.目的・意義 遺伝子組換え技術を用いてダイズで高度不飽和脂肪酸を生産することを目的とする。 高度不飽和脂肪酸(リノレン酸、アラキドン酸など二重結合が 2 以上の 脂肪酸の総称)は、その多彩な生理活性のために、主に食品素材として利 用されている。現在では培養微生物あるいは魚油から抽出により生産され ているため、生産コストは 1 万円/kg 程度である。このように生産コストが 高い他に、微生物培養法ではエネルギー使用量・廃棄物量が多いこと、魚 油から調製する方法では魚資源が限られていることが問題となっている。 高度不飽和脂肪酸は、分子内に二重結合を複数有するというユニークな物 性を持つため、生産コストを低減できれば工業原料用途(フィルム、生分 解性プラスチック、機能性繊維、潤滑油、洗剤の素材)にも利用可能とな る。高度不飽和脂肪酸を遺伝子組換え植物により生産することにより、生 産コストを 100 分の 1 程度にまで低減できると期待されると同時に、環境 にやさしい生産プロセスを実現できる。 B.研究目標(含省エネ目標) 本プロジェクトでは、高度不飽和脂肪酸のなかでも炭素数 20 以上あるい は不飽和度(分子内の二重結合の数)が 3 以上の超長鎖高度不飽和脂肪酸 生産を目標とする。具体的には、食品素材としてニーズの高いアラキドン 酸(炭素数 20、不飽和度 4)などをダイズ種子脂肪酸の 1-3 割程度蓄積さ せる事を目指す。 微生物培養法による高度不飽和脂肪酸の生産コスト(10,000/kg)のうち 10-20%がユーティリティーコストである。 一方、 大豆油生産コストは約 100 円/kg 程度であり、高度不飽和脂肪酸を大豆で生産することができれば、大 幅にコストダウンできるため、新しい用途、例えば、潤滑油、プラスチッ ク原料等にも使用できる。同時に、現在の製造方法よりも、環境負荷の小 さい生産プロセスを実現できる。 C.目標設定理由 27 高度不飽和脂肪酸を化学的に安価に合成することは困難であること、微 生物培養で工業原料用に大量に生産させるのは現実的ではないこと、超長 鎖高度不飽和脂肪酸(炭素数 20 以上)を蓄積する植物はないことから、遺 伝子組換え技術を用いた植物による生産を目指す。原油価格が現在の 2 倍 程度になれば、植物油は工業原料として使用できると言われていることか ら、超長鎖高度不飽和脂肪酸を植物で蓄積できれば、コスト的にも実用性 がある。また、上で述べたように環境負荷も減少できる。 D.ブレークスルーポイント 4 つのポイントについて述べる。 1)高度不飽和脂肪酸遺伝子群の取得 高度不飽和脂肪酸、特に不飽和度が高く炭素数が多いものを大豆で合成 させるためには、これら脂肪酸を合成するための遺伝子群(鎖延長酵素、 Δ5、6 などの不飽和化酵素など)が必要である。本プロジェクトでは、高 度不飽和脂肪酸を蓄積する微生物モルティエラ、ウルケニアからこれらの 遺伝子を取得する。とくに、鎖長延長酵素遺伝子の取得が必須であるが、 プロジェクト開始当時取得の報告はなかった。 下等植物のゼニゴケも高度不飽和脂肪酸を蓄積し、鎖長延長酵素や不飽 和化酵素を有する。これらの遺伝子取得は、京都大学大山莞爾教授に再委 託する。 2)ダイズ、アズキの形質転換系の開発。 ダイズの形質転換系は、Du Pont 社などが確立しているものの、形質転 換効率は極めて低く国内では例がない。ダイズは本プロジェクトでは主要 なターゲット植物であり、実用化を目指すためには効率のよいダイズの形 質転換転換系の開発が必要である。東京大学高野哲夫教授、東北大学亀谷 住寿昭教授とともにダイズの形質転換系開発を行う。アズキはダイズより も形質転換が容易であるという報告があること、ダイズと同様にマメ科植 物であること(そのため、導入遺伝子の発現様式や次世代への伝達様式を 研究するよいモデルであること) 、実用植物であることから、アズキの形質 転換系も確立し、遺伝子導入を行う。 なお、提案書提出時点では、ダイズの形質転換系開発はサントリーで行 う予定ではなかったが、実用化にはダイズの形質転換系開発が律速になる と判断し、取り組むことにした。 3)導入遺伝子の安定発現と目的遺伝子の発現を抑制する技術の開発。 遺伝子組換え植物を作製する場合、導入する遺伝子が染色体のどの部分 に挿入されるかによって、導入遺伝子がどの程度うまく発現するかは大き く異なり、これが遺伝子組換え植物の商業化に支障をきたしている。導入 遺伝子の安定発現に必要な技術開発を行う必要がある。また、目的の高度 不飽和脂肪酸を生産させるためには、ダイズ自身の酵素の発現を特異的に 抑制する必要があり、これに関してはすでに報告されている方法を比較し、 最もよい方法を特定する。 4)高度不飽和脂肪酸合成酵素遺伝子の種子特異的発現 脂肪酸は、細胞膜の重要な構成成分であるため、高度不飽和脂肪酸を植 物体全体で蓄積させることは植物体にとって不都合である。タイズでは種 子に脂肪酸が蓄積するため、上で取得した遺伝子群を種子で発現させるこ とにより、高度不飽和脂肪酸を種子に蓄積させるのがよい。そのために種 28 子特異的に高発現プロモーターを取得する。この研究は、サントリーから の出向者が奈良先端大学の集中研究室で行う。また、ダイズ種子特異的に 発現するコングリシニン(貯蔵タンパク質)遺伝子のプロモーターを大阪 大学室岡義勝教授から譲渡していただいた。 E.研究計画 3 年目終了までに、 1)高度不飽和脂肪酸生産微生物から高度不飽和脂肪酸生産に必要な酵素の 遺伝子群を取得する。 2)これら遺伝子を含む適切な発現ベクターをタバコ、アズキなどに導入し、 植物の脂肪酸組成を改変する。並行して、ダイズ、アズキの形質転換系 を開発する。 3)導入遺伝子の安定発現と目的遺伝子の発現を抑制する技術を開発する。 4)ダイズ種子特異的プロモーターを単離する(集中研究室で出向者が実施) 、 を実施する。 その後、高度不飽和脂肪酸生産に必要な酵素の遺伝子群をダイズの種 子特異的なプロモーターに連結する(3 年目から 4 年目) 。これをダイズ に導入することにより、種子特異的に高度不飽和脂肪酸をダイズ種子脂 肪酸の 10-30%程度蓄積する(プロジェクト終了時) 。 2.1.3.3 耐塩性植物でのハイブリッドファイバー(ポリ<(R)-3ヒドロキシブチレート>充填繊維細胞)の生産技術開発 (大成建設株式会社) A. 目的・意義 植物を利用した工業原料生産において、本テーマで開発目標とする工 業用原料は植物バイオマス繊維中に微生物由来の生分解性プラスチック を充填したハイブリッドファイバーである。生分解性プラスチックは 1920 年代後半に 3-ヒドロキシブチレートポリマー(PHB)を蓄積する微 生物が発見されて以来、Ralstonia eutropha など数多くの微生物での生 合成が報告され、生物分解性であるところから石油系プラスチックにか わる環境負荷の低い素材として注目された。製品群としては食器やトレ ー、農業資材などに加工成形されており、化学合成法、微生物生産法な ど確立された技術が用いられている。近年、バイオマス利用の観点から 植物性デンプンを原料に生物分解性プラスチックを生産する、あるいは より直接的に組換え植物で PHB を生産させようとする試みもなされてい る。しかし、微生物では菌体乾燥重量当たり 50-80%の蓄積が報告される にもかかわらず、植物では多くが 0.01%、最大 40%の蓄積しかなく、生 長量が減少するなどの報告もあり、抽出コストを加味すると、植物での 生分解性プラスチック生産は競争力が低く、実用性に乏しい。そこで、 本テーマでは植物に生分解性プラスチックを生産させるのではなく、植 物繊維素中に微量の生物分解性プラスチックを蓄積させた新規ファイバ ー(ハイブリッドファイバー)の創製を目指した。これは疎水性のプラ スチックと植物繊維がハイブリッド化した素材であるところから、工業 29 的に生産される WPC(wood and plastic combination)に類似した効果が期 待される。WPC は天然バイオマス材の特性を変化させた製品群である。本 テーマでは、この WPC 製品群を競合製品群として考え、その代替法とし ての生物生産をも視野に入れた技術開発を目的とした。 B. 研究目標 本テーマで開発目標とするハイブリッドファイバーにおいては、微生 物の生分解性プラスチック(PHB)合成遺伝子群を用いる事とした。具体 的には、R.eutropha 由来の phbB および phbC を植物に導入して植物細胞 中に PHB を蓄積させ、 生物的に WPC 生産を行なう技術開発を目標とした。 最終目標としては実用化を視野に入れ、PHB 含有植物繊維で圧縮ボードな どの WPC 化製品を試作し、その機能改良効果を実証する事で、ハイブリ ッドファイバーの基礎データ蓄積をはかる。 工業原料生産用植物の栽培地としては、塩害地などの未利用地の利用 が有効と考えられたので、海水レベルの塩にも耐える強度耐塩性植物を 対象植物として用いた。 技術開発ステップ概要および最終目標は下記の通り。 1) 耐塩性植物での遺伝子組換え系の確立 2) ストレス条件下でのハイブリッドファイバー生産評価 3) ハイブリッドファイバーを用いた圧縮ボード試作 最終目標:圧縮ボードを用いたハイブリッドファイバーの特性の実証 C. 目標設定理由 PHB は石油系プラスチックの代替製品として注目され、これまで多くの 技術開発がなされてきた。その中でも R.eutropha 由来の PHB 合成遺伝子 (phb A, B, C)はプラスチックの生物生産において微生物から植物まで もっとも頻繁に利用されている。しかし、組換え植物では PHB の蓄積量 が 0.01〜数%、最大でも 40%と微生物での生産量にはるかに及ばない。抽 出も困難でコスト高であるなどの問題が残り、植物での PHB 生産を目標 とした技術は実用化されていない。本テーマでは、PHB 蓄積の効率化をは かるものではなく、微量に PHB を蓄積させる事による植物繊維の質的転 換を目標とするので、設定した目標は既報の PHB 蓄積量で達成可能であ ると考えられる。また、質的転換を伴うハイブリッドファイバーの特性 は、工業的に生産される WPC に類似すると考えられる。WPC は、石油系プ ラスチックモノマーを天然材に吸収させ、加圧・加熱処理によりポリマ ー化させることにより、天然バイオマス材の特性を変化させた製品群で ある。この製品では、力学強度、低吸湿性、寸法安定性などが付与され、 建築では内装材などに使用される。この点、PHB 合成遺伝子を植物に導入 し、WPC 生産を行なう技術は皆無に等しいと考えられ、化学工業に代わる 生物的生産技術としても極めて新規性が高いと考えられた。 一方、工業原料生産に農地を利用する事は、食糧生産を減少させるリ スクが高く好ましくはない。これに対し、未利用地での生産は、新たに 炭酸ガス固定量を向上させる副次的効果も期待される。これらの観点か ら未利用地での生産を想定したが、未利用地は乾燥あるいは土壌塩集積 30 の問題から利用されないケースがほとんどの地域を占める。そこで、す でに強度耐塩性を持つ植物の利用に着目した。しかし、強度耐塩性植物 の多くは、野生植物であり、遺伝子組換え事例は報告されていなかった。 これらの調査に基づき、強度耐塩性野生植物での組換え技術の開発を第 一の技術開発項目とした。 D. ブレークスルーポイント 1)耐塩性植物での遺伝子組換え系の確立 ブレークスルーとして以下の 2 点が考えられた。 PHB 充填組換え植物を作成するには、phbB(アセトアセチル-CoA レダ クターゼ)と C(PHB シンターゼ)の 2 遺伝子が必要である。本テーマで用 いる耐塩性植物は、シロザ、タマリクスなどの野生植物であり、特に樹 木であるタマリクスでは 2 個の遺伝子を単独で導入し交配で重ね合わせ る事は困難である。そこで第 1 のブレークスルーポイントは、多重化ベ クターの構築に設定した。 第 2 点目のブレークスルーポイントは、耐塩性野生植物における遺伝 子組換え技術である。これらの植物においては、遺伝子組換え事例がな いので、新たに遺伝子導入のための培養確立から始める必要性があった。 具体的なポイントとして、1)培養系確立、2)最適導入法、導入条件の 設定、3)選抜マーカーの選定(GUS、生組織観察可能な GFP など)を順 次確立する計画とした。 (2)塩ストレス条件下でのハイブリッドファイバー生産評価 ブレークスルーポイントとして 4 ステップが考えられた。ハイブリッ ドファイバーを原料とする圧縮ボードを作成し、特性変化の評価を行な うためには、PHB を蓄積した植物体原料の確保が必要である。遺伝子を多 重化導入した場合の遺伝様式や発現効率については不明な点が多い。そ こで、多重化遺伝子の安定性の評価を第 1 のブレークスルーポイントに 設定した。 第 2 のブレークスルーポイントは、PHB 合成遺伝子の PHB 蓄積機能の評 価である。これまでの研究報告によると、PHB 蓄積量は微量であると予想 される。具体的なポイントとして、1)導入する個々の遺伝子の実機能(酵 素またはタンパクレベル)評価手法の確立、2)遺伝子産物である PHB 蓄 積量の評価技術の 2 点を抽出した。 次に、微量の PHB 蓄積により繊維の質的変化が現れるか否かについて は、不確定要素が多いと考えられたので、PHB 繊維と PHB の複合効果を、 モデル植物(イネ)において実証する事を第 3 点目のブレークスルーポ イントとした。 第 4 点目のブレークスルーポイントは、塩ストレス下でのハイブリッ ドファイバーの特性把握であると考えられた。実用化植物として設定し た耐塩性植物は、パーテイクルボードなどの板原料としてこれまで利用 された事はなく、塩害地で栽培した場合でもファイバー特性がどのよう に変化するかについても調査事例がない。そこで、具体的なポイントと しては、1)耐塩性植物繊維の圧縮ボード用原料の適性把握、2)塩(NaCl) の圧縮ボード特性に対する影響の評価が考えられた。 31 (3)ハイブリッドファイバーを用いた圧縮ボード作成 第 1 点目のブレークスルーポイントとして、 PHB による特性変化項目の把 握が挙げられる。つまり、類似研究としては、遺伝子組換えにより PHB を ワタ繊維に蓄積させ、繊維細胞の熱伝導率を低下させた報告があるのみな ので、ボードでの WPC 特性変化を目標とした場合には、ボード状態での特 性変化の評価技術を確立する必要があると考えられた。 第 2 点目のブレークスルーポイントは、組換え植物繊維での圧縮ボード の実際作成と特性変化の実証である。具体的には、1)単独遺伝子導入によ るボード特性変化項目を抽出し、2)多重遺伝子導入による特性変化の確認 を経て、3)最終的に耐塩性植物での圧縮ボードの試作と特性変化を確認す ることにより、ハイブリッドファイバ− 化の有用性を判断するステップを 設定した。 E. 研究計画 1) 耐塩性植物の組換え系の開発 中間目標までに耐塩性植物での培養系と遺伝子導入方法の検討を終了し、 導入する PHB 合成多重化遺伝子ベクターの作出とベクター性能評価をモデ ル植物で行なう。後半、確立した遺伝子導入系を用いて、実際に PHB 合成 遺伝子を導入し、圧縮ボード作成用植物体を作出する。 2) ストレス条件下でのハイブリッドファイバー生産評価 中間目標までに、PHB 多重化遺伝子の遺伝様式を評価し、遺伝子が安定に 保持されるか評価を行なう。RT-PCR レベルで発現を確認したモデル植物イ ネを用いて、単独の PHB 合成遺伝子の機能を酵素タンパクレベルで確認す る手法を確立する。次に、酵素機能を確かめた個体について、PHB の蓄積を 評価する技術を確立する。後半、確立した技術を用いて、多重化遺伝子を 用いたハイブリッドファイバーの生産性を、塩ストレス栽培との関連から 調査し、ファイバー特性を明らかにする。 3) ハイブリッドファイバーを用いた圧縮ボード試作(最終目標) 中間目標までに、質的な特性変化項目を絞り込む目的で、PHB を混合した 繊維を用いて、圧縮ボードの作成と特性の評価方法を検討する。後半、ボ ードの特性評価試験を実施する。評価項目を決定するとともに、PHB 混合率 と特性変化の量的な関係について明らかにする。 PHB による特性変化の見られた項目について、組換えイネを用いて、PHB 各単独遺伝子の効果を明らかにする。次に、多重化遺伝子でのボード特性 を明らかにする。 最後に、耐塩性植物で PHB の微量充填した組換え繊維からボードを作成 し、ボードの特性を評価する。以上の結果に基づいて、ハイブリッドファ イバ− 技術の総合評価を行なう。 <計画項目> 1) 耐塩性植物での遺伝子組換え系の確立 1-1) PHB 生合成多重化遺伝子ベクターの作出(中間目標) 1-2) ベクターの性能評価(モデル植物イネ) (中間目標) 1-3) 耐塩性植物での遺伝子導入系の確立 32 2) 塩ストレス条件下でのハイブリッドファイバー生産評価 2-1)ファイバー材料生産技術確立(導入遺伝子の安定発現評価) (中間目 標) 2-2)単独遺伝子(phbB,phbC)の PHB 生産能力評価(タンパクレベル) (中 間) 2-3) 単独遺伝子(phbB,phbC)の PHB 生産能力評価(PHB 蓄積量) (中間) 2-4)ハイブリッドファイバー化による質的変化の確認 2-5) 塩ストレス条件下でのハイブリッドファイバーの特性調査 3) ハイブリッドファイバーを用いた圧縮ボード試作 3-1)PHB 混合繊維を用いた特性変化項目の把握 3-2)phbB,phbC 各単独遺伝子導入による特性変化 3-3)phbB,phbC 多重化遺伝子導入による微量 PHB 蓄積の効果 3-4)耐塩性植物タマリクスでの圧縮ボード試作 4)ハイブリッドファイバー総合評価 表-1 実施計画表 研究計画 平成11年度 平成12年度 平成13年度 平成14年度 平成15年度 1.耐塩性植物の遺伝子組換え系の確立 PHB生合成多重化遺伝子ベクター ベクターの性能評価(イネ) 中間目標 耐塩性植物での遺伝子導入系の確立 2 . 塩 ス ト レ ス 条 件 下 で の ーーーーハイブリッドファイバー生産評価 導入遺伝子の安定発現評価 単独遺伝子の機能評価1(タンパク) 単独遺伝子の機能評価2(PHB蓄積) ハイブリッド化による質的変化確認 中間目標 塩ストレス条件下でのファイバーの特性 3 . ハ イ ブ リ ッ ド フ ァ イ バ ーを ------------用いた圧縮ボード試作 PHB混合繊維を用いた特性変化項目の把握 単独遺伝子導入による特性変化 中間目標 多重化遺伝子導入による特性変化効果 耐塩性植物の圧縮ボード試作と特性評価 最終目標 4. ハイブリッドファイバー総合評価 2.1.3.4 イソプレノイド・天然ゴム高生産植物の創成 (日立造船株式会社) A.目的・意義 異種ポリイソプレン生合成酵素遺伝子を有する遺伝子組換え植物の作出 の対象植物として、トランス型ゴム(グッタペルカ)産生植物のトチュウ 33 とシス型ゴム産生植物のペリプロカを利用して、温帯圏におけるイソプレ ノイド・天然ゴムの高生産性工業原料植物を創成する。 グッタペルカを 50% 含有するタイヤは路面との摩擦が 2 割軽減され、新規素材を提供すること ができる。また天然ゴムは現在でもゴムの 50%を占めており、この増産は 化石資源依存症を低減させる。 B.研究目標(含省エネ目標) 現在、日本においてはゴム代替材料としてのグッタペルカ生産は行われ ていないが、葉、樹皮、種子等からの抽出を行った場合、2t/ha/年の生産 量が期待される。本開発技術により遺伝子組換えを行うと約 2.5 倍の生産 量になると想定される。杜仲が成木になり、ゴムを抽出できるようになる までの生育期間は 10 年程かかるので、組換え体が完成される 2013 年頃に 植え始めて、 2020 年頃には 14,000ha (日本の森林面積約 2500 万 ha の 0.05%) の面積で年間 7 万 t のグッタペルカ生産量になると予想される。これは現 在の日本国内での SBR(styrene butadiene rubber:主要合成ゴムの一種) 生産量の 10%にあたる。その後栽培面積を拡大していき、2030 年頃には約 35 万 t/年(50%)の生産量が見込まれる。 SBR の用途はタイヤ、ゴルフボール、靴底等ゴム製品全般であり、そのう ちグッタペルカで代替できる製品は約 50%と考えられる。 エネルギー削減の資産 現在の SBR 製法である原油由来のプロセスにかかるエネルギーと、遺伝 子組換えを行った杜仲から SBR 代替物質であるグッタペルカを生産するプ ロセスにかかるエネルギーを比較して省エネルギー効果を試算する。この とき、原油使用削減効果は、原料を代替することによるものと、燃料とし てエネルギー使用が削減されることによるものがある。 〔燃料としてのエネルギー使用削減効果〕 既存の生産プロセスでは、SBR 1t はナフサ約 1t から生産され、ナフサは 原油から精製される。SBR を既存の生産プロセスで 1t 生産するために必要 な燃料としてのエネルギー消費は概略以下の通りである。 ・原油からナフサ1t を精製 原油 50l/t ・ナフサ1トンから SBR 1t を生産 原油 200l/t よって、原油から SBR 1t を生産するのに必要な燃料としてのエネルギー は 250l/t,現在の日本国内での SBR 生産量は約 70 万 t/年であり、その生 産に必要な燃料としてのエネルギーは 250l/t×70 万 t=17.6 万 kl である。 一方、グッタペルカも含め天然ゴムの生産に係る所要エネルギーは、合 成ゴム生産時と比較して一桁ほど少ないといわれている。 ここで、グッタペルカ生産時の所要エネルギーを多めに見積もり、SBR 生産時の 20%とし、現在の SBR 生産量のうち 10%をグッタペルカで代替した 場合の燃 料とし て のエネル ギー使 用 量削減効 果は 17.5 万 kl ×10%× (100-20)%=1.4 万 kl,50%を代替すると 7 万 kl の削減になる。 〔原料としての原油使用量削減効果〕 SBR を 1t製造するのに必要なナフサは約 1t である(前述) 。年間の SBR 生産量(70 万 t)の 10%(7 万 t)をグッタペルカで代替した場合の原料と してのナフサ使用量削減効果は 7 万 t である。これを原油換算(1t あたり 1.2kl)すると、7 万 t×1.2kl/t=8.4 万 kl,50%を代替すると 42.0 万 kl 34 の削減になる。 C.目標設定理由 本研究テーマは化石燃料由来の炭素化合物を低減させ地球における炭素 循環系を改善する画期的な手段と位置づけている。 具体的な目標として異種ポリイソプレン生合成酵素遺伝子を有する遺伝 子組換え植物により炭素の固定化を図る。その候補植物として温帯系に生 育するトチュウを利用している。この目標は遺伝子組換えトチュウの各部 位のグッタペルカ産生量を2割増加することや,その分子量分布を適度に 操作せしめることとしている。 D.ブレークスルーポイント これまでポリイソプレノイドの研究における問題点のひとつである分析 技術の不備を改善すべく,組織切片上の分析も含めた低分子から高分子ま での植物ポリイソプレノイドの分析技術の確立をが基本である。特に,こ れまでほとんど手のつけられていない,組織内におけるポリイソプレノイ ドの局在およびイソプレンゴム(ポリイソプレン)の生合成中間体と考え られているポリプレノールの分析技術の開発である。これらの分析技術は, 形質転換植物の詳細な評価が可能な高分解能であることが重要である。さ らに、植物におけるイソプレンゴム生産を強化したゴム増産遺伝子組換え 植物の分子育種を達成するために、ゴム生合成に関与する酵素遺伝子を単 離・同定が必須である。 E.研究計画および課題 ポリイソプレノイド分析系の確立 確立した各種分析技術による,化学的なアプローチから植物ポリイソプ レノイドの生合成の解析、ゴム生合成に関与する遺伝子の単離およびゴム 合成に関与する酵素遺伝子を改変した形質転換植物の作成の細目にわけて 研究計画を記す。 1)組織内におけるポリイソプレンの同定技術の確立 顕微分光分析による組織切片上のポリイソプレノイド分析手法の検討を 行う。それには透過式の顕微分光分析に耐えうる超薄組織切片の作製と植 物組織切片の分析にあわせた顕微分光分析条件の検討を行う。 2)ポリイソプレン生合成中間体分析技術の確立 従来法である逆相 HPLC に代わる新規ポリプレノール分析法として幾何異 性体の分離が可能な高分解能の分析系、試料中に混在する多種の夾雑物に 対する影響を受けない分析系。および、高分子量ポリプレノールの分離も 可能な分析系の確立を行う。 3)トチュウポリイソプレノイドの分析 トランス型ゴム産生モデル植物の組織学的な研究により,組織内のポリ イソプレノイドの局在を調べる。 各採取部位ポリイソプレノイドの分子量分布および鎖延長停止末端構造 の解析と各採取部位ポリプレノールの幾何異性および鎖長分布の解析を行 う。それには、生体の状態を損なわない組織切片の作製方法、各採取部位 からのポリイソプレノイドの抽出方法、定量的な NMR 分析条件および各採 35 取部位からのポリプレノールの抽出法等について検討する。 4)ペリプロカポリイソプレノイドの分析 シス型ゴム産生モデル植物として、ペリプロカの乳液およびポリイソプ レノイドを分析する。そのために幼植物体ペリプロカの乳液および幼植物 体からのポリイソプレノイドの抽出方法と抽出したポリイソプレノイドの 精製方法を検討する。 5)イソプレンゴム産生植物の探索 幅広く植物遺伝子資源を入手するためにトランス型およびシス型のイソ プレンゴムを産生する植物を探索する。 選抜のポイントは温帯域で生育し,実験植物として育種および組織培養 が可能である植物と形質転換が可能な植物の選抜である。 6)ゴム生合成に関与する遺伝子の単離 ゴム成分分析によってトチュウはトランス型ゴムを、ペリプロカとパラ ゴムノキはシス型ゴムを生産することが確認された。トランス型ゴム合成 にはトランス型ポリプレニル二リン酸合成酵素が、シス型ゴム合成にはシ ス型ポリプレニル二リン酸合成酵素が直接関与している。また、いずれの ゴム合成にもイソペンテニル二リン酸異性化酵素が重要な働きを担ってい る。これらの酵素遺伝子を上述のゴム合成が確認された植物から単離する。 手順は、①目的の植物からの mRNA の調製、②cDNA ライブラリーの作成、③ 配列情報をもとにしたプローブの作成④プラークハイブリダイゼーション による目的遺伝子の単離、⑤単離した遺伝子の DNA シークエンシング、お よび酵素活性測定等の解析、である。 7)ゴム合成に関与する酵素遺伝子を改変した形質転換植物の作成 単離した酵素遺伝子を操作することで、植物におけるゴム生産を制御す ることが可能である。トランス型またはシス型ポリプレニル二リン酸合成 酵素の発現量が増加すれば、それぞれのゴムの生産量は増大すると考えら れる。また、イソペンテニル二リン酸異性化酵素の発現量が高まればゴム の鎖長が短くなり、発現が抑制されれば長くなることが予想される。まず、 ゴム生産植物の遺伝子組換えを行うための形質転換技術の確立を行う。次 いで、単離した遺伝子を用いて形質転換を行い、トランス型またはシス型 ポリプレニル二リン酸合成酵素を高発現するゴム生産植物、イソペンテニ ル二リン酸異性化酵素の発現量が増大あるいは減少したゴム生産植物を作 成する。 2.1.3.5 タンパク質組織特異的高生産植物の研究開発 (三井化学株式会社) A.目的・意義 化石資源に全面的に依存するこれまでの動物培養細胞や微生物タンク培 養に代わり得るタンパク質の生産手段として、近年、植物に高度にタンパ ク質を蓄積させフィールドで大量生産する、いわゆる分子農業という手法 が着目されている。大規模に作付けされている作物で破棄されている組織 に目的タンパク質を蓄積させることができれば、安価でかつ大規模なタン パク質製造プロセスになり得る。本方法が実証されれば、化石資源消費型 タンパク質製造方法を太陽エネルギー利用による循環型の製造方法へ転換 する糸口となる。 36 ターゲット植物組織としてはイネ及びサツマイモの茎葉を、またターゲ ットタンパク質としては環境のリンによる富栄養化に対する軽減効果が期 待されているフィターゼを選定した。フィターゼは、リン酸化合物である フィチン酸を分解し、リン酸を遊離させる酵素である。フィチン酸は、穀 物種子中に大量に含まれる主要なリン酸貯蔵形態であるが、難分解性のた め単胃家畜はこれを消化できず、体外に排出され、環境の富栄養化の原因 として大きな問題となっている。一方、家畜はそのままではリン不足にな ってしまうので、これを補うために飼料にリン鉱石を添加しているのが現 状である。リン鉱石は、現在では安価であるものの今世紀中に枯渇するこ とが懸念され、対応も望まれている。 本研究により開発されるフィターゼ発現植物を家畜飼料中に添加するこ とにより、リン鉱石の添加無しにリンを単胃家畜に供給し、かつリンの環 境への放出減少による環境の富栄養化を防ぐことが可能になる。 B.研究目標(含省エネ目標) ・最終目標(性能等) (平成 16 年 3 月末) イネまたはサツマイモでのフィターゼタンパク質の組織特異的な大量蓄 積技術の開発 数値目標:フィターゼ 5 ユニット/グラム生重量 C.目標設定理由 分子農業(または植物工場)と呼ばれる植物の遺伝子組換え技術による タンパク質の生産は、既存のタンパク質製造法と比較して、化石資源依存 度を軽減した次世代技術として期待されている。しかしながら、その実用 化にはタンパク質発現量の増大や適用可能植物の普遍化、植物体内で産物 の安定的蓄積技術など、解決すべき課題が多い。 ターゲットとして選定しているフィターゼは、飼料に添加することによ って家畜体内における無機リン酸の吸収を高め、家畜排泄物に由来する周 辺環境の富栄養化を防止できる。特に欧州では、家畜飼料へのフィターゼ 添加の法制化が検討されるなど関心が高まっている。現在、フィターゼは 微生物によって生産され、抽出、粗精製などの処理を経て飼料に添加され るが、植物自体にフィターゼを多量に生産・蓄積させることができれば、 飼料製造工程を簡略化することが可能になる。 なお、三井化学では、遺伝子資源として既に酵母 Schwanninomyces 属由 来のフィターゼ、及びその遺伝子を所有している(特開平 08-289782) 。該 フィターゼは既存のものと比較すると、耐熱性及び分解特性において優れ ている。 リン酸の環境放出の軽減及び家畜のリン酸吸収の向上が期待できるフィ ターゼ量は、現行飼料 1kg 当たり 500 ユニット(U)であるため、フィチン態 リンに富んだ植物性飼料に加えるフィターゼ発現植物(茎葉部分)の量を 10%と想定し(飼料 1 kg 当たり 100 g) 、茎葉 1g 当たりに 5U のフィターゼ 活性を発現、維持する仕組みづくりを目標として定めた。 D.ブレークスルーポイント 1)織特異的タンパク質発現量の向上 組織特異的に蓄積したタンパク質を工業的に利用するには、まず組織中 37 に大量のタンパク質を蓄積する必要がある。これまでにタバコにおいて葉 緑体形質転換法により大量の目的タンパク質を蓄積した報告があるが、タ バコの場合にはアルカロイド等の問題がありタンパク質生産工場として最 適とはいえない。葉緑体形質転換法は大きな可能性を秘めているものの実 用植物への応用の難易度は依然として高いといわれている。またイネでは、 プロモーターを含むゲノム配列ごと PEPC タンパク質を発現させ、可溶性タ ンパク質の 12%蓄積させた例が知られているが、プロモーターと構造遺伝 子中に含まれるイントロン等との複合的な作用による効果とも予想され一 般化には至っておらず、実際の応用のためには大きなブレークスルーが必 須である。 2)タンパク質大量蓄積に適した実用植物の形質転換 植物における有用タンパク質の高生産は、最終的にはモデル植物ではな く実用植物で実施される必要がある。実用植物の一つとして有望なサツマ イモについては、形質転換系が報告されているものの、材料の調達、効率、 作業性などの問題で必ずしも一般化しておらず、より簡便で高効率のサツ マイモ形質転換系の確立が必要である。 3)組織特異的に発現したタンパク質の安定蓄積 目的植物組織において生産したタンパク質は、一定期間安定に保持され る必要がある。しかし茎葉においては登熟に伴い N 源が種子等へ転流して いくことが知られており、そのままでは発現させたフィターゼの貯蔵部位 としては適さない。そこで適切な細胞内小器官へのターゲッティング等に より、目的タンパク質の分解を抑制させ、安定的に蓄積する方法を開発す る必要がある。 E.研究計画 以下の課題についてイネおよびサツマイモを材料植物として計画を進め る。 1)組織特異的タンパク質発現量の向上 2)組織特異的に発現したタンパク質の安定蓄積 3)サツマイモの高効率の形質転換系の確立 4) 形質転換体のサイレージ化等の実用性検討 2.1.3.6.1 病害抵抗性植物の分子育種 (株式会社豊田中央研究所) A.目的・意義 植物を原料としてプラスチックを生産する試みは、化石資源に頼らない 循環型社会の実現を図る上での有望な方策である。このためには、低コス ト・低エネルギーで安定供給が可能な植物を作出する必要がある。我々は 候補植物としてサツマイモを選定した。米国ではトウモロコシを原料とし たプラスチック生産の試みがあるが、サツマイモのデンプン生産能力は、 コスト的にもエネルギー的にもトウモロコシを上回るものがある。しかし、 サツマイモを低コストで安定供給するためには、大規模なプランテーショ ンを行う必要があるが、病害虫等による被害のため大規模プランテーショ ンが成功した事例はない。また、サツマイモの最大の弱点は、保存性に劣 38 ることである。そこで、本研究開発では、これらの欠点を克服し、サツマ イモの安定供給および保存中の腐敗防止を可能とするため、サツマイモに 病害抵抗性および耐腐敗性を付与することを目的とする。 B.研究目標(含省エネ目標) 病原性の微生物や腐敗に関与する微生物に対して抗菌作用を有する抗菌 ペプチドの遺伝子をサツマイモに導入し、病害抵抗性および耐腐敗性のサ ツマイモ新品種を作出することを本研究開発の最終目標とする。また、天 然に存在する抗菌ペプチドには、抗菌活性が弱い、植物や動物に対して毒 性がある等の欠点があるので、天然の抗菌ペプチドの構造を改変し、機能 改良した抗菌ペプチドを創製することを中間目標とする。 省エネ目標として、石油由来のプラスチックをサツマイモ由来のプラス チックに置き換えることによって、年間約 1 万 kl の石油使用量の削減が可 能なサツマイモ新品種の作出を目指す。 C.目標設定理由 上記目標を達成することにより、病害による損失を防止でき、無農薬で のサツマイモの大規模プランテーションへの道を拓くことが可能になる。 また、事業展開地として想定している東南アジア地域は湿度が高く、3 割程 度のサツマイモが保存中の腐敗により失われている。この損失を耐腐敗性 サツマイモ新品種の開発によって防止することが可能となる。 これらの損失を、現在トヨタ自動車が計画しているサツマイモからプラ スチック原料となる乳酸を製造・販売する事業にあてはめ、石油削減量を 試算してみる。インドネシアにおけるサツマイモの生産性は 15∼20t/ha。 一方、日本における生産性は 30t/ha。現地調査によると、この差は病害や 保存中の腐敗に起因する部分が多い。病害および腐敗による減収分を 10t /ha と仮定し、病害抵抗性・耐腐敗性サツマイモの開発によって減収分が なくなるものとする。インドネシアでは2期作が可能であるので、年間 20t /ha のサツマイモが増産できるものと仮定する。また、事業におけるサツ マイモの栽培面積を当初規模で 3,000ha と仮定する(トヨタ自動車の新聞 発表) 。病害および保存中の腐敗によって消失するサツマイモは、20t/ha ×3,000ha = 60,000t となる。本研究開発で作出した病害抵抗性・耐腐敗 性サツマイモを事業に採用することによって、 従来品種の場合より 60,000t の増収が期待できる。 サツマイモの固形分含量は 35%(水分含量 65%) 、固形分中に占めるデ ンプン含量は 70%、デンプンからプラスチックの生産効率は 80%であるの で、サツマイモ 1kg より生産されるプラスチックの量は、1kg×0.35×0.7 ×0.8 = 0.2kg となる。従って、60,000t のサツマイモから生産されるプ ラスチックの量は、60,000t×0.2 = 12,000t となる。 ポリエチレン 1kg を生産するときに必要な石油は 2.2kg (日経サイエンス 2000 年 11 月号 p32-39) 。また、サツマイモ由来のプラスチックを生産する ときに必要な石油は 1.5kg であるので(日経サイエンス 2000 年 11 月号 p32-39) 、サツマイモ由来のプラスチック 1kg で、ポリエチレン 1kg を代替 すると、プラスチック 1kg あたり 0.7kg の石油が節約できることになる。 従って、上記 12,000t のプラスチックでは、12,000t×0.7 = 8,400t の石 油が節約できることになる。石油 1t は、1.176kl に相当するので、石油換 39 算のエネルギー節約量は、8,400t×1.176 =9,878kl となり、省エネ目標と した1万 kl を達成できる。 D.ブレークスルーポイント 病害抵抗性や耐腐敗性を付与することが可能な抗菌ペプチドを創製でき るかどうかが最初のブレークスルーポイントとなる。米国 Mycogen 社は、 米国 Demeter Biotechnologies 社の開発した抗菌ペプチドを植物の改良に 利用する権利を 125 万ドルで獲得したという記事(日経バイオ年鑑 2000、 p571)からもわかるように性能の優れた抗菌ペプチドに対する評価は高く、 抗菌ペプチドの良し悪しが研究開発の成否を握る鍵となる。また、開発し た抗菌ペプチドの遺伝子をサツマイモに導入し、サツマイモ内でこの遺伝 子を効率よく働かせる技術開発もブレークスルーポイントとなる。サツマ イモは遺伝子導入の難しい植物の一つであり、サツマイモを対象とした総 合的な遺伝子組換え技術の開発が必要となる。 E.研究計画 抗菌ペプチド遺伝子をサツマイモに導入し、病害抵抗性で耐腐敗性のサ ツマイモ新品種を以下の研究計画に沿い作出する。 1)初年度の平成 11 年度には、抗菌ペプチドの構造を人為的に改変し機能 改良を行うため、大腸菌を利用した抗菌ペプチドの生産技術を開発する。 2)平成 12 年度には、天然の抗菌ペプチドの各種性能評価(抗菌活性等) を行い、機能改良課題を明確化する。また、初年度に開発した抗菌ペプ チドの生産技術を利用して抗菌ペプチド遺伝子の構造改変を行い、各種 の機能改良を行う。さらに、これと並行して、抗菌ペプチド遺伝子を植 物体内に導入したときの効果と問題点を把握するため、抗菌ペプチド遺 伝子をモデル植物であるシロイヌナズナに導入する。 3)平成 13 年度には、抗菌ペプチド遺伝子の構造改変を続行し、さらなる 機能改良を図る。また、抗菌ペプチド遺伝子を導入したシロイヌナズナ を解析し、抗菌ペプチド遺伝子の植物導入時における効果と問題点を明 らかにする。さらに、遺伝子導入が難しいサツマイモへの遺伝子導入技 術を確立する。 4)平成 14 年度では、構造改変して各種機能を向上させた抗菌ペプチド遺 伝子をサツマイモに導入し、抗菌ペプチド遺伝子の発現解析を行うと共 に、病害抵抗性試験を実施する。また、サツマイモ内で抗菌ペプチド遺 伝子を効率的に発現させるための発現制御システムの開発を行う。 5)平成 15 年度では、これまでの研究で明らかにした最適な抗菌ペプチド 遺伝子およびサツマイモでの効率的な発現制御システムを用いたサツマ イモへの遺伝子導入を行い、病害抵抗性で耐腐敗性のサツマイモの作出 とその実証試験を行う。 2.1.3.6.2 セレニウム結合タンパク質遺伝子導入による病害抵 抗性植物の分子育種 (バイオテクノロジー開発技術研究組合、奈良先端科学技術大学院大学) A.目的・意義 工業原料生産植物の粗放栽培が可能となるよう、広範囲の病害抵抗性ス 40 ペクトルを付与しうる新規遺伝子を単離する。対象作物はイネ、サツマイ モとする。 B. 研究目標 1)病害抵抗性関連遺伝子導入イネの作出および耐病性付与 病害抵抗性関連遺伝子を導入したイネを作製し、耐病性評価を行う。エ リシターは病害防御に関わる一連の遺伝子群を活性化することが知られて いることから、エリシターを利用した遺伝子スクリーニングはこれまでに 知られていない有用遺伝子を単離できる可能性がある。イネいもち病菌由 来エリシターをイネに処理すると抗菌物質のファイトアレキシンが蓄積す ることや圃場試験で対照薬剤とほぼ同等にいもち病の発病を抑制すること が既に知られていることから、当該エリシターで活性化される遺伝子群を 単離し、形質転換イネを作出し、耐病性付与を図る。対象病害はイネの最 重要病害であるイネいもち病およびイネ白葉枯病とする。 2)病害抵抗性関連遺伝子の機能解析 イネいもち病菌由来のエリシターにより転写が活性化される新規遺伝子 のうち、1)の性能検討で有用性が認められたものについて機能解析を行う。 有用遺伝子の機能を明らかにし、当該遺伝子の用途拡大に供し得る知見の 蓄積を図る。 3)病害抵抗性関連遺伝子導入サツマイモの作出および耐病性付与 1)で有用性が認められ、かつ 2)で機能が推定された病害抵抗性関連遺 伝子を導入したサツマイモを作出し、耐病性付与を図る。 C. 目標設定理由 耐病性植物の分子育種はこれまでにも様々な試みがなされてきた。一つ に病原菌の認識に関わる抵抗性遺伝子の利用があるが、これは病原菌の特 定のレースに対してのみ抵抗性を示すにとどまり、また病原菌の変異によ り容易に抵抗性が崩壊してしまうなどの問題がある。また植物がもつ生体 防御に関係する種々のタンパク質をコードする遺伝子を導入、過剰発現さ せた植物の作出も試みられているが、単一の遺伝子では十分な耐病性を獲 得するに至っていないのが現状である。一方、本プロジェクトで開発する 多重遺伝子導入技術や高効率遺伝子発現系を利用すれば、これまでに報告 されている複数の有用遺伝子を多重化し宿主植物内で効率的に発現制御で き、より高性能な耐病性植物の作出が可能になる。したがって、上記多重 遺伝子導入に供し得る、すなわち複数の宿主植物に複数の病原菌耐性を付 与する新規な有用遺伝子を単離・解析する意義は大きい。 D. ブレークスルーポイント 1)イネいもち病をはじめとするイネ病害に耐性を付与しうる有用遺伝子 の単離。 2)有用遺伝子の機能解析による用途(対象病害、対象作物等)スペクト ルの設定。 3)サツマイモ遺伝子導入技術の確保。 E. 研究計画 41 1)イネいもち病菌由来エリシターで活性化される遺伝子群の単離および それら遺伝子導入イネの作出。 (初年度) 2)新規有用遺伝子導入イネの作出および耐病性評価(平成 12-13 年度) 3)新規有用遺伝子の機能解析(平成 12-15 年度) 4)新規有用遺伝子導入サツマイモの作出および耐病性評価(平成 14-15 年度) 2.1.3.7 ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を利用した環境ストレス 抵抗性改良とその利用 (株式会社東洋紡総合研究所) A.目的・意義 農作物や工業原料作物の生産性は、各作物が有する遺伝的な生態的特性 と様々な生育環境の相互作用によって律速されている。各種環境要因の中 で温度は、作物の栽培立地を制限するとともに、突発的な異常気象によっ て生産性に壊滅的な打撃を与えかねない最も重要な要因の一つである。最 近、各種の環境ストレスに対する植物の防御反応におけるポリアミンの役 割が注目されている。我々はキュウリでは、暗黒下での極端な低温による 障害のみならず比較的穏和な低温による光合成阻害(低温誘導光抑制)が 外生ポリアミンによって顕著に軽減されることや、低温耐性品種では低温 遭遇によってポリアミン代謝関連酵素活性が顕著に高まるとともに、酵素 阻害剤処理によって耐性が低下することなどを明らかにしている。さらに、 冷涼な気候を好むホウレンソウやコムギでは、比較的高い領域の低温に遭 遇することによって葉の内生ポリアミン濃度が著しく高まる。これらの知 見は、低温下における植物の生育の可否にポリアミンが重要な役割を果た していることを示唆している。このことから植物中のポリアミン濃度を遺 伝子レベルで制御することにより、植物に低温耐性を与えられる可能性が 高い。しかしながら、低温ストレス時のポリアミン代謝に関する分子生物 学的な解析は十分に行われていない。そこで我々は、低温耐性が異なる数 種の植物を材料にして、低温遭遇植物のポリアミン代謝特性を明らかにす るとともに、ポリアミンの低温耐性増大機構を分子生物学的に解明する。 次に、ポリアミン代謝関連酵素遺伝子の役割を明らかにして、植物の低温 耐性のみならず種々の環境ストレス耐性を改良することを目的とした。 B.研究目標 (1)最終目標 ポリアミンが低温抵抗性を高める機構及びポリアミン代謝酵素遺伝子の 発現特性などを解明するとともに、これらの知見と獲得した遺伝子を利用 して工業原料植物であるサツマイモの分子育種を行い、ポリアミン代謝酵 素遺伝子が低温その他の環境ストレス抵抗性付与効果を示すことを立証す る(平成 16 年 3 月迄) 。 種々の環境ストレス抵抗性を付与したサツマイモを作出することによっ て、栽培時期や地域の拡大、ストレス被害軽減により工業原料であるデン プンの生産性向上を目指す。デンプン生産性向上により、植物由来の生分 解性プラスチックの生産コストを下げることで石油由来プラスチックの代 替を拡大して、 石油使用量の削減を図る (事業化目標:平成 16 年 4 月以降) 。 42 (2)中間目標 キュウリを用いて低温抵抗性に品種間差異をもたらす生理生化学的機構 を研究してポリアミンの役割を解明する。同時にこれらの基礎的知見をも とに低温ストレス耐性に関与するポリアミン代謝酵素遺伝子を取得してモ デル植物であるシロイヌナズナに導入して形質転換シロイヌナズナを作出 する。 C.目標設定理由 本研究開発では、まずポリアミン代謝酵素遺伝子の機能を着実に立証す ることが求められる。ウリ科キュウリは品種の生態的分化が進んでおり、 低温抵抗性にも大きな品種間差異が見られる。この品種間差は低温遭遇時 中のポリアミン代謝が密接に関連することが明らかにされているので、キ ュウリは遺伝子機能を評価するのに好都合な対象植物である。一方、サツ マイモは、食用や家畜の飼料として利用されるばかりでなく、デンプンや カロチンなどの工業原料としても利用されている。サツマイモを工業原料 として利用する場合、特に生産費の低減が求められる。その方策の一つと して単位面積当たりの収量増加が挙げられる。サツマイモは高温性の植物 で、わが国では関東以北地域では春秋期の冷温のために栽培期間が限定さ れ、十分な収量をあげることができない。サツマイモの低温ストレス抵抗 性を高めることができれば、大規模生産が比較的容易な関東以北地域での 栽培が可能になり、また、西南暖地においても栽培期間がさらに延長して 増収を図ることができ、これによって生産コストの低減を図ることができ ると考えられる。さらに異常気候による冷害が回避できる可能性がありサ ツマイモの安定生産が期待できる。なお、本研究ではサツマイモを最終目 標植物と位置づけているが、この研究開発が成功すれば、同様の理由によ りわが国において栽培が進んでない高温性工業原料作物の生産の振興にも 役立てたいという意図がある。 他方、サツマイモの低温抵抗性付与因子としてポリアミン代謝酵素遺伝 子に注目する理由は次の通りである。植物の低温抵抗性を遺伝子工学的手 法によって高める試みは、これまで主として細胞膜脂質の脂肪酸不飽和化 酵素遺伝子を中心に行われているが、必ずしも期待されるほどの成果が挙 げられていない。最近、各種の環境ストレスに対する植物の防御反応にお いて、ポリアミンが重要な役割を担っていることが明らかにされつつあり、 キュウリでは外生ポリアミンによって、暗黒下での極端な低温による障害 のみならず、比較的穏和な低温による光合成阻害(低温誘導光抑制)を顕 著に軽減することが確認されている。特に後者は、サツマイモが生育過程 で受ける可能性のある低温抵抗性の向上による生育期間延長や栽培地の北 上を可能にするという本研究開発の目標が達成されることが期待できる。 D.ブレークスルーポイント ブレ−クスル−すべき課題としては下記の課題がある。 1)低温耐性に関与するポリアミン代謝酵素遺伝子の取得 2)形質転換サツマイモの作出 3)形質転換植物の低温耐性評価系の構築 以上の問題を解決するための技術構築と低温耐性効果評価実験設備の整 備が課題である。 43 E.研究計画 本研究開発は、㈱東洋紡総合研究所と三重大学生物資源学部園芸植物機 能学教室の橘 昌司教授と共同で実施する。東洋紡総合研究所は主に遺伝 子工学を駆使する分野、三重大学は低温耐性に関する植物の基礎的研究と 栽培評価の分野をそれぞれ担当し、効率的、有機的に研究を進める。研究 は自社および大学研究室で実施する。 1)低温遭遇植物のポリアミン代謝特性の解析 サツマイモ、キュウリ、ホウレンソウなどを材料にして気温や地温と内 生ポリアミンおよびポリアミン代謝酵素の挙動との関係、低温による高温 性作物の生育および各種生理機能の阻害に対するポリアミンの軽減作用と、 その生理生化学的機構について詳細な基礎的研究を行い、ポリアミンの低 温ストレスに対する防御機能を明らかにする。これを主として三重大学で 行う。 2)ポリアミン代謝酵素遺伝子群の単離 東洋紡ではポリアミン代謝遺伝子の低温誘導発現の様式を調べ、ウリ科 植物からのポリアミン代謝遺伝子の単離と構造の決定を行う。具体的には、 ウリ科の中で比較的低温耐性が高いクロダネカボチャを材料にしてポリア ミン代謝酵素(スペルミジン合成酵素、S−アデノシルメチオニン脱炭酸酵 素、アルギニン脱炭酸酵素など)遺伝子の中から低温遭遇時に発現誘導さ れる遺伝子を優先的にクローニングする。また、研究の進捗、必要性に応 じて低温誘導、低温高発現型プロモーターの取得も行う。 3)形質転換植物の作出と遺伝子発現解析 取得した遺伝子の機能を明らかにするために適切なプロモーターに連結 した構築物を作製する。最初に、モデル植物であるシロイヌナズナを用い て機能評価を行う。シロイヌナズナを形質転換後、PCR 法、あるいはノザン 解析法で導入遺伝子の発現解析を行う。次に、この知見をもとに形質転換 サツマイモを作製する。具体的には石川県農業短期大学農業資源研究所植 物細胞育種研究室の島田多喜子教授が開発した方法により、形質転換サツ マイモの作出を目指す。 4)形質転換植物の評価と解析 上記の方法で得たポリアミン代謝酵素遺伝子導入シロイヌナズナの評価 を行う。具体的には、内生ポリアミンレベルのおよびその代謝酵素活性、 NADPH オキシダーゼ活性、酸素ラジカル生成活性、ラジカル消去活性などの 生理生化学的特性を、形質転換植物と野生植物との間で比較する。作出さ れた形質転換植物の低温ストレス耐性及び、その他の様々な環境ストレス 耐性の実態とストレス耐性増大をもたらす生理生化学的機構を研究する。 次にポリアミン代謝酵素遺伝子の形質転換サツマイモの評価を行う。特に、 低温ストレス耐性の実態について研究する。 2.1.3.8 多重遺伝子連結技術の開発 (バイオテクノロジー開発技術研究組合、奈良先端科学技術大学院大学) A. 目的・意義 工業原料を生産する植物を創製するには、実用植物に乾燥、塩、低温、活 44 性酸素等のストレスに耐性を付与し、なおかつ工業原料生産に必要な新規 代謝遺伝子群を導入、発現させることが求められる。それには多数の遺伝 子を一度に植物に導入する(多重遺伝子導入)新規技術開発が基本となる。 既存の技術では、多数の遺伝子をベクターに連結する場合、1∼2遺伝子 をベクターに連結し、大腸菌で複製させ、ベクターを回収し、構造を確認 した後、次の遺伝子を連結し、再び大腸菌に導入するという操作を繰り返 し行うため、多くの時間と労力を要する。そこで、本プロジェクトの集中 研究室では、多数の DNA 断片を固相法で簡便かつ短時間に連結する新規技 術の開発を目的とする。 上述の既存の遺伝子多重連結以外に、 遺伝子を一つずつ別個のベクターに 組み込み、最大 12 個のベクターを遺伝子銃で植物に導入した例が米国で報 告された (ここではランダム導入法と呼ぶ) 。 多数の形質転換体の中から PCR 法で 12 遺伝子が導入された個体が選抜されたが、この方法は偶然性に期待 する面があり、目的個体が1個得られれば良いとは言うものの、同じ遺伝 子群を他の植物に導入する場合、またゼロからのスタートである。塩、乾 燥などのストレスに耐性を付与するには、複数の遺伝子が必要であり、一 群の遺伝子をカセットとして作成しておけば、種々の植物に適用が可能で あり、これには本プロジェクトで開発する多重遺伝子連結技術が効力をい かんなく発揮する。 ランダム法の最大の欠点は各遺伝子が異なる染色体の異なる場所に導入 されることである。これでは、後代における外来遺伝子の維持、すなわち 有性生殖過程で導入遺伝子の安定保持が困難になることが予想される。交 雑育種によって優良形質をさらに導入する場合には、後代への遺伝子の分 配はランダムに起こるため、選抜時に深刻な事態を招く。また、導入遺伝 子の挙動を追跡するにも、多くの異なる部位へ外来 DNA が挿入された植物 では取り扱いが極めて困難である。計画的な多重遺伝子導入においては、 ランダム導入法ではなく、単一染色体部位への導入が強く望まれる。本プ ロジェクトで開発する新規多重遺伝子連結技術は多数の遺伝子を染色体の 1ヶ所に導入できる技術であり、導入される宿主は植物に限定されず、微 生物、動物細胞、全てに適応できることにも大きな意義がある。多重遺伝 子連結技術は必ずしも異なる構造遺伝子を複数連結する場合のみならず、 プロモーター、エンハンサー、構造遺伝子、ターミネーター等の異なる DNA ユニットの連結をも含んでおり、あらゆる分野の分子生物学研究に適用で きる。 集中研究室で目指すもう一つ技術開発は、 植物に多重遺伝子を導入し適正 に機能させるのに適したベクターの構築である。現状では植物に導入され た外来遺伝子は導入される染色体の位置により、周辺の染色体構造の影響 を受け、発現は大きく変動する。 B. 研究目標 1)多重遺伝子連結技術 十数個から数十個の遺伝子(DNA 断片)を固相法で、非回文配列を利用 し連結方向を規定して、簡便かつ効率的に連結する技術の開発を目標とす る。 2)植物の多重遺伝子導入に適したベクターの開発 導入する多重遺伝子を植物で適正に機能させるためには、すべての遺伝 45 子を確実に導入し、かつ植物細胞内で安定に機能させる必要がある。 C. 目標設定理由 1)多重遺伝子連結技術 従来、多数の DNA 断片を連結する場合には、通常、一つの DNA 断片毎に、 下記のサイクルを繰り返し行なっていた。 a)DNA の制限酵素消化により生じた回文配列末端または平滑末端を DNA リガーゼで連結し、ベクターに組み込む。 b)連結した DNA 断片を含むベクターを大腸菌等に導入し、形質転換株 に目的の DNA 断片が挿入されているかを制限酵素処理により確認す る。 しかしながら、このような方法では a)DNA 断片の連結部位に回文配列末端や平滑末端を用いた場合、DNA 断 片の連結方向が一方向に特定されず、逆方向に連結されものも生じる。 b)液相反応では一連結反応毎に大腸菌等にクローニング操作を行う必 要がある。 といった問題点があり、連結断片数が増加すれば作業が煩雑になり多くの 時間と労力を要する。そこで、複数の遺伝子を簡便かつ短時間で連結する 技術が求められる。 植 物 へ の 長 鎖 DNA 導 入 の 例 と し て は 、 transformation-competent artificial chromosome (TAC)ベクターを用いて 80 kbp 断片がシロイヌナ ズナに導入できることが報告されている。これは 1 遺伝子を約 2kbp とする と約 40 個の遺伝子を導入できることを示しており、工業原料生産遺伝子、 複合環境ストレス耐性遺伝子を導入するには十分な長さであると考えられ る。 2)植物の多重遺伝子導入に適したベクターの開発 植物への長鎖 DNA の導入は技術的に困難であったが、近年開発された上 記 TAC ベクターを植物への遺伝子導入用ベクターとして選択することによ り可能となった。しかし TAC ベクターを用いても、導入遺伝子の発現が個 体間でばらつきを生じるため、導入個体のうち目的形質を持つ個体を獲得 できる確率が低いという問題は回避できない。そこで、導入遺伝子の発現 を安定化するための TAC ベクターの改良が必要である。 D. ブレークスルーポイント 1)多重遺伝子連結技術 本研究では、基礎技術としては、第 1 の遺伝子をビーズに固定化し、固相 法により非回文配列末端化した第 2, 第 3 の遺伝子を step-wise に連結する ことにより、一遺伝子連結ごとのクローニングステップを回避することを 意図している。これにより飛躍的に連結時間を短縮することが可能になる が、実用に耐える収率で何断片が連結できるか、が最大のポイントである。 さらにプロモーター、構造遺伝子、ターミネーターを連結する場合、連結 方向が重要になるが、連結部に非回文配列を用いることにより、連結方向 を規制することが可能かどうかが、次のポイントである。 2)植物の多重遺伝子導入に適したベクターの開発 導入遺伝子の染色体上での挿入部位の違いにより、近傍の発現調節配列 の有無、メチレーションの有無等に違いが生じ、導入遺伝子発現の植物個 46 体間でのばらつきが生じると考えられている。現在の技術では染色体の任 意の部位に遺伝子を挿入することは困難である。これを克服するベクター の開発がポイントである。 E. 研究計画 1)多重遺伝子連結技術 遺伝子の固相化には、ストレプトアビジン化した磁気ビーズに、ビオチン 結合 DNA を連結させる。また非回文配列末端を作製する手法としては、切 断部位に数個の N 配列を有する Sfi I(GGCCNNNN↓NGGCC、8 塩基認識、3 塩基突出末端)や Bst XI(CCANNNNN↓NTGG、6 塩基認識、4 塩基突出末端) 認識部位を用いる。突出部の N を任意に選ぶことにより連結方向を規定で きる。ビーズからの切り出しのために、rare-cut 酵素、I-Sce I 認識部位 を予めビーズとの連結部近くに設定する。連結する遺伝子として、抗生物 質耐性遺伝子やルシフェラーゼ、 GFP など活性検定が比較的容易なマーカー 遺伝子を使用する。 さらに、連結効率の向上を目指し、連結 DNA 断片の調製法についても検 討を行う。 2)植物の多重遺伝子導入に適したベクターの開発 TAC ベクターの改良を行う。さらに、改良した TAC ベクターの導入遺伝子 発現の安定化の有効性をモデル植物(シロイヌナズナ)で評価する。 2.1.3.9 植物で機能する有用プロモーターの単離と活用 (バイオテクノロジー開発技術研究組合、奈良先端科学技術大学院大学) A. 目的・意義 今後ますます重要性が高まり、多いに期待されている有用植物の分子育 種において、外来遺伝子を目的とする組織、時期に選択的かつ安定的に発 現させることが必要である。本プロジェクトの集中研究室において進めら れる多重遺伝子の導入および発現制御技術の開発において、多種多様なプ ロモーターを収集しプロジェクト参加企業が利用できるようにすることが 目的である。具体的には、モデル植物のシロイヌナズナを材料とし、DNA マイクロアレイの技術を用いて短期間に系統的に遺伝子の発現をモニター し、その情報に基づいてプロモーターを単離することを目指している。 高度不飽和脂肪酸生産のために必要な種子特異的プロモーターについて は、シロイヌナズナでは発現の詳細な検討が困難なこと等から、ダイズ種 子特異的プロモーターを単離することにした。 B.研究目標 1)DNA マイクロアレイ技術の開発 シロイヌナズナの cDNA を利用し、DNA マイクロアレイ技術を開発する。 まずシロイヌナズナの種々の器官由来で均一化の操作を加えた cDNA ライブ ラリーを作製し、効率的な遺伝子の獲得を目指す。cDNA クローンの塩基配 列を決定し、遺伝子を同定したクローンをスライドグラスに固定してマイ クロアレイを作製し、安定した解析が行える系を構築する。 2)シロイヌナズナ由来の各種有用プロモーターの単離と活性評価 DNA マイクロアレイ技術を用いて、器官、ストレスなど様々な要因により 47 発現が変動する遺伝子を網羅的に検出する。具体的には、根・葉で特異的 に高発現している遺伝子を検出する。スクリーニングされた遺伝子に対す るプロモーター領域をゲノム配列情報をもとに順次クローン化し、レポー ター遺伝子に連結し、遺伝子銃を用いた一過性発現検定により、プロモー ター活性を迅速に評価する。さらに組換え体植物作成により実際の植物体 での発現特性を評価する。 3)ダイズ種子特異的プロモーターの単離 ダイズ種子で特異的に高発現するプロモーターを公開 EST (Expression Sequence Tag)を利用して検索する。プロモーターを supression PCR によ りクローン化し、ダイズ組織における一過性発現系を確立し、プロモータ ー活性、組織特異性を評価する C. 目標設定理由 研究対象植物としては主としてシロイヌナズナを採用した。シロイヌナ ズナは植物の分子生物学研究のモデル植物として広く用いられており、栽 培法・形質転換法などの技術面が整備されている。また、2000 年に全ゲノ ム配列が公表されていることから、cDNA の発現情報に基づいてプロモータ ーを含む周辺の配列情報を検索・入手することが容易であるため、プロモ ーター配列の迅速な収集を行うのに最適の植物である。また植物には種間 のシステムの共通性、パーツの互換性が幅広く存在することから、シロイ ヌナズナで得られた知見は、各種実用植物にも応用可能であると判断され る。 解析の対象となるプロモーターの特性として、物質の貯蔵・吸収の場と しての根、光合成・物質転換の場としての葉、を中心とする器官特異発現 プロモーターを選定した。本研究を工業原料生産に応用する際には、特定 の器官に大量発現させることがコスト面でも重要である。 ダイズ種子は脂肪酸を 20〜30%含有する脂肪種子であり、また、タンパク 質含量は約 35%と高く、遺伝子組換えにより、種子に有用物質を生産させる ことに適している。しかし、ダイズ種子で組織特異的に高発現するプロモ ーターは数種類しか得られておらず、脂肪酸生合成酵素遺伝子群等を導入 するためには十分でない。そこで、ダイズの種子で高発現するプロモータ ーを多数取得することにより、種子における高度不飽和脂肪酸合成等を可 能にする。 D.ブレークスルーポイント 植物のゲノム情報が次々と明らかにされている昨今、 これらの配列情報を 物質生産など産業面に活用するためには、個々の遺伝子の発現様式に関す る情報を取得することが必要不可欠である。本研究では、一連のプロモー ターの性質を網羅的に収集・カタログ化することを目的としており、これ により物質生産の際に各々のニーズに合わせたプロモータを自由に選択出 来るようになる。 本研究を成立させるためには、 遺伝子発現パターンを短期間で大量に解析 する手法の確立が不可欠である。本研究では DNA マイクロアレイ法を採用 した。まず植物各器官から作成する均一化 cDNA ライブラリーを幅広い十分 な数のクローンを含むものにすることが第1のブレークスルーポイントで ある。次に各クローンをスライドガラス上に固定したマイクロアレイを作 製し、これにターゲット cDNA をハイブリダイズさせることにより、最大で 48 数千個の遺伝子発現のパターンが同時にモニターできる精能の高いマイク ロアレイを作成することがポイントである。この方法を確立することによ り、シロイヌナズナのみならず、各種実用植物における遺伝子発現のモニ ターも容易になる。 ダイズについてはプロモーターを単離する上でのブレークスルーポイン トは、組織・時期特異的に高発現する遺伝子の検索と未知配列を如何に効 率よくクローン化できるかである。 E.研究計画 1)DNA マイクロアレイ技術の開発 既存の花芽茎頂組織の標準化 cDNA ライブラリーに加えて、新たに栄養生 長期茎頂、葉、根の 3 つのライブラリーを作製し、プレートに整列保存す る。これらの塩基配列を決定し、相同性検索による遺伝子を同定する。続 いて cDNA マイクロアレイ系の構築のために予備的なマイクロアレイを作製 し、ターゲット cDNA 調製、ハイブリダイゼーション等の条件検討を行い、 安定した解析のできる系を確立する。 2)シロイヌナズナ由来の各種有用プロモーターの単離と活性評価 シロイヌナズナの根、葉から cDNA を調製する。これを構築したマイクロ アレイにハイブリダイゼーションさせ、発現変動遺伝子のシグナル検出を 行う。ゲノム配列情報をもとに変動が認められた cDNA のゲノム配列を同定 し、このプロモーター断片を単離する。これをレポーター遺伝子に連結し、 遺伝子銃を用いた一過性発現検定により、単離された各種プロモーターの 活性を迅速に評価する。さらに組換え体植物作成により実際の植物体での 発現特性を評価する。 3)ダイズ種子特異的プロモーターの単離 公開データベースからダイズ種子 EST を取得し、 クラスタリングにより、 高頻度に出現する EST の上流域を supression PCR により、 クローン化する。 開始コドン直前の塩基より、プロモーターを含む上流域までをクローン化 し、レポーター遺伝子に連結し、ダイズ種子に遺伝子銃で撃ち込むことに より、活性を測定する。 2.1.3.10.1 植物における高効率遺伝子発現系の構築 (バイオテクノロジー開発技術研究組合、奈良先端科学技術大学院大学) A.目的・意義 1) 外来導入遺伝子の安定発現 植物細胞の染色体は動物細胞と同様にクロマチン構造と呼ばれる凝集し た構造を呈しており、植物においても外来遺伝子を導入した際、多くの形 質転換個体において目的遺伝子が発現しないことや、個体間で発現が大き くばらつくことが問題となる。これらの要因の一つが、動物と同様に染色 体上での挿入位置(染色体高次構造)により転写レベルで影響を受けるた めと考えられている(position effect) 。しかしながら、植物においては position effect を含め、染色体高次構造と遺伝子発現に関する理解は乏し いのが現状である。本研究開発では、導入した外来遺伝子を安定に転写さ せる上での問題点を明らかにし、 「2.翻訳効率の上昇」での知見を合わせ、 「植物における高効率遺伝子発現系の構築」という基盤技術の確立を目的 49 とする。染色体高次構造と導入遺伝子発現の関係を理解することは、基礎・ 応用両面で大きな貢献が期待できる。 2) 翻訳効率の上昇 外来遺伝子から大量のタンパク質を生産させるには、翻訳の効率を上げ ることも重要であり、mRNA の有効利用という観点から意義は大きい。タバ コ ADH 遺伝子の 5'非翻訳領域(5'UTR)に翻訳上昇活性があることがタバコ 培養細胞で示唆されたので、その詳細を調べ、植物での外来遺伝子の高発 現に利用することを目的とする。遺伝子種、植物種に汎用性があれば、実 用面でも大きな貢献をする。 3) ポリシストロニックな遺伝子発現系の構築 植物の計画的改変に有用な、新規多重遺伝子発現システムの構築を目的 とする。植物への多重遺伝子導入において、プロモーターとターミネータ ーを重複して用いると、反復配列によって、染色体への DNA 挿入時の DNA 断片の脱落や組換えの頻度が高まること、あるいは、導入遺伝子の不活性 化などが考えられる。それらの問題点を克服する方法の一つとして、単一 のプロモーターに由来する単一の転写産物(mRNA)から、複数の遺伝子産 物(タンパク質)を発現させるという戦略が考えられる。一連の機能を持 つ遺伝子を一つのプロモーターとターミネーターで駆動させることがでれ ば、プロモーターとターミネーターの節約にもなる。植物の核コード遺伝 子がポリシストロニック mRNA としてが機能した例はなく、成功すれば植物 科学の画期的成果である。 4) レギュロン発現系の構築 一連の代謝反応を利用して物質を生産させるためには、複数の外来遺伝 子を同時にかつ高レベルで発現させる技術が必須である。本研究では、カ リフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S プロモーターを用いて、恒常型の レギュロン発現系を構築することを第一の目的とする。これに成功すれば、 特異的な発現様式を与えるプロモーターに連結した転写活性化因子 (GAL4-VP16 融合タンパク質)とこれが結合するシス配列(GAL4 結合配列) を利用し、発現制御型レギュロン発現系を構築することを目指す。特定の 時期や部位で、あるいは環境や傷害のストレスに応答して一連の代謝反応 を行わせることによって、植物に生産させた物質を効率的に回収できるよ うになるだけでなく、殺虫物質や摂食忌避物質を生産させた場合には、そ れらの環境に対する危険性を大幅に軽減することができる。すなわち従来 の遺伝子組換え作物が抱えていた問題を排除することに大きく貢献する。 5) 遺伝子の特異的発現抑制 アンチセンス法および RNAi 法により遺伝子発現を制御する応用例として、 減カフェインコーヒーの作出を試みる。コーヒー、茶のカフェインは興奮 作用があるため、欧米ではデカフェコーヒーが好まれ、コーヒー生産量の 10-12%を占めている。製法はコーヒー抽出物から溶媒抽出によりカフェイ ンを除去するプロセスが主であるが、溶媒の残留、カフェイン以外の成分 の除去のため、改良の余地が大いにある。近年、茶からカフェイン生合成 遺伝子が単離された。これをもとにコーヒーのカフェイン生合成遺伝子を 取得し、アンチセンス構築あるいは RNAi 構築を導入し、合理的かつ簡便に 減カフェインコーヒーを作成できれば、意義は深い。コーヒーの形質転換 系をすでに確立している(特許出願済み)ことも本計画設定の裏付けとな っている。 50 B.研究目標 1) 外来導入遺伝子の安定発現 植物の染色体に導入した外来遺伝子の発現のバラツキについて、 position effect の有無を含め、その主要因を明らかにする。 2) 翻訳効率の上昇 タバコの ADH5'UTR の翻訳上昇機構を明らかにする。翻訳上昇効果を複数 の植物種で検証する。また培養細胞のみならず、植物体においても機能す ることを検証することを目標とする。加えて、ADH 遺伝子以外の 5'UTR から 翻訳上昇効果を持つものの探索を行う。 3) ポリシストロニックな遺伝子発現系の構築 原核生物で行われているポリシストロニック mRNA から複数の翻訳産物を 植物で行うために、原核生物のリボソーム結合配列(SD 配列)に相当する、 動物の IRES(internal ribosome binding site)が植物において機能する ことを検証することが第一である。そして、少なくとも3個のシストロン を駆動すること、さらには、下流のシストロンが上流のシストロンと同程 度翻訳される系の構築を目標とする。 4) レギュロン発現系の構築 コーヒーノキよりカフェイン生合成関連遺伝子群を単離し、本来はカフ ェインを生合成しない実験植物(タバコなど)でカフェイン生合成経路を 再構築し、これにカフェインを生産させることを目標とする。 5) 遺伝子の特異的発現抑制 コーヒーのカフェイン生合成遺伝子の発現を、アンチセンス法ならびに RNAi 法で制御することにより、カフェイン含量を低下させた減カフェイン コーヒー植物体を、アラビカ種およびロブスタ=カネフォラ種について作 成することを目標とする。 C.目標設定理由 1) 外来導入遺伝子の安定発現 植物に導入された外来遺伝子は、形質転換体間で発現量が通常、1 から 1,000 倍も変動する。この要因は、動物での知見から position effect によ るものと考えられている。しかし、実際に植物の染色体に導入された外来 遺伝子の発現に及ぼす position effect の有無もしくはその大きさを明ら かにしないかぎり、この問題を解決し、導入遺伝子を安定に発現させるこ とはできない。そのため、導入した外来遺伝子を安定に転写させる上での 問題点を明らかにすることを目標とした。 2) 翻訳効率の上昇 外来遺伝子の翻訳効率を 10 倍あげることは、プロモーターの活性を 10 倍上げることに匹敵するが、高発現プロモーターの取得は必ずしも容易で はなく、しかも普遍的に翻訳効率上昇をもたらすエレメントが取得できれ ば、価値は非常に高い。mRNA の効率的利用にもなり、細胞への負担が軽減 できる。 3) ポリシストロニックな遺伝子発現系の構築 動物の IRES が植物において機能するかは未知であり、まずこれを証明し なければならない。当然、動物の IRES をもとに植物で有効な配列を幅広く 検討することになる。大腸菌においてもポリシストロニック mRNA は通常、 51 3 個程度のシストロンから成っており、植物において単一 mRNA 上の 3 シス トロンが翻訳されれば画期的な成果であり、しかも 3 シストロンが同程度 翻訳されれば実用価値は高い。 4) レギュロン発現系の構築 これまで、植物に有用物質の生合成系遺伝子群を多重導入して、生合成 経路を再構築した研究例はほとんど報告されていない。カフェインは医薬 品としての需要が大きく、今後は農薬としても利用されることが期待され ている。そこで、本研究ではコーヒーノキよりカフェイン生合成関連遺伝 子群を単離し、本来はカフェインを生合成しない実験植物(タバコなど) でカフェイン生合成経路を再構築し、これにカフェインを生産させること を目標とした。これが完成されれば、新規のカフェイン原料植物の作成法 が確立されることになり、また、新規の害虫防除法を確立することにもな り、実用的な価値は非常に高い。 5) 遺伝子の特異的発現抑制 コーヒー豆の需要は世界の穀類マーケットにおいて非常に大きい。特に 主要なコーヒー植物種はアラビカ種とカネフォラ種である。アンチセンス 法や RNAi 法を用いて、合理的かつ簡便にカフェイン生合成遺伝子の発現を 制御することにより、これら2種のカフェイン含量を低下させた減カフェ インコーヒー植物体を作出できれば、主要コーヒー種にさらに付加価値を 持たせることができ、実用レベルの形質転換植物作成例として意義深いも のとなる。 D.ブレークスルーポイント 1) 外来導入遺伝子の安定発現 導入遺伝子発現のバラツキの要因としては、position effect に加えて、 導入遺伝子のコピー数依存的なサイレンシングや組換えなどにより生じた 遺伝子断片由来のアブノーマル mRNA に起因するサイレンシングが考えられ る。これら考えられる要因をいかに区別して評価するかが最大のポイント である。 2) 翻訳効率の上昇 翻訳効率を上昇させるエレメントをタバコの ADH5'UTR に見いだしたが、 おそらくリボソームの結合に効果を発揮していると思われる。これが効果 を発揮する遺伝子、植物の種類をどこまで広げられるかがポイントである。 3) ポリシストロニックな遺伝子発現系の構築 高等植物において同一 mRNA 上の複数のシストロンを並行して翻訳させる 系は未だ存在しない。原核生物のリボソーム結合配列(SD 配列)に相当す る IRES が植物において機能するかは未知である。これを実証できるかが最 初のポイントである。次のポイントは下流のシストロンの翻訳が起こった としても上流のシストロンの翻訳に比べ低すぎれば応用価値は低いので、 高い翻訳レベルが得られるかである。さらには IRES が幅広い mRNA、種々の 植物体で機能するかも重要である。言い換えれば IRES に結合する特異的タ ンパク質が存在すると思われるが、植物界全体に存在するかは未知である。 4) レギュロン発現系の構築 タバコを含む一般的な植物では、プリン異化代謝中間産物としてキサン トシンが生成されると考えられている。コーヒーノキのカフェイン生合成 経路において、キサントシンからカフェインまでの経路は4つの酵素反応 52 で構成されている。従って、これら4つの酵素反応を担う遺伝子群を効率 的に単離すること、およびこれらの組換えタンパク質を用いて、試験管内 でキサントシンからカフェインが生成されることを実証することがブレー クスルーポイントとなる。 5) 遺伝子の特異的発現抑制 これまでに、基本となるコーヒーの形質転換系も確立している。今後、 実用化を目指してカフェイン含量の低いコーヒー植物を作成する際には、 ターゲットのコーヒー植物であるアラビカ種とカネフォラ種において、簡 便かつ植物体再生効率の高い組織培養系を確立することが最初のポイント となる。また、形質転換効率を高めるための手法改良を進めることも重要 なポイントである。 E.研究計画 1) 外来導入遺伝子の安定発現 1-1)35S-GUS (pBI121)を導入したシロイヌナズナ形質転換体を作製し、完 全なシングルコピー導入植物個体を選抜し、GUS の発現を調べる。 1-2)上記植物体を掛合せ、導入遺伝子コピー数と発現量の相関を調べる。 1-3)シロイヌナズナ内在遺伝子の発現とクロマチンの凝集度合を解析す る。 2) 翻訳効率の上昇 2-1)上昇エレメントを GUS 遺伝子以外の遺伝子(GFP など)につなぎ、植 物細胞のプロトプラストに導入し、一過性発現などにより翻訳への効 果を調べる。 2-2)植物種を広げる意味で、タバコに加えて、シロイヌナズナ、イネ培養 細胞から調製したプロトプラストを用いて調べる。 2-3)タバコ・シロイヌナズナ植物体に導入し効果を調べる。 2-4)タバコ ADH5'UTR の翻訳効率を上昇させる機構を解明する。 2-5)ADH5'UTR 以外に、翻訳上昇効果を持つ 5'UTR の探索を行う。 3) ポリシストロニックな遺伝子発現系の構築 3-1)まず、レポーターとして用いるホタルルシフェラーゼ(LUC) 、ウミシ イタケルシフェラーゼ(RLUC)の発現を発光活性検出により定量的に 扱う系を作る。 3-2) 2 シストロンの mRNA から 2 遺伝子産物が翻訳されるか否かを、 CaMV35S プロモーター/LUC/IRES/RLUC/nos ターミネーターを基本とす るベクターをパーティクルガンで種々細胞に導入し、一過性発現で IRES の有効性を検討する。 3-3) 3-2)に GUS を加え、3 シストロン mRNA の翻訳を試みる。 3-4) IRES 活性を持つ配列を植物界から広く検索する。 3-5) シロイヌナズナ、実用作物の形質転換体において、有効性を検討す る。 3-6) IRES に関連する翻訳因子を探索し、機構を解析する。 4) レギュロン発現系の構築 4-1) カフェイン生合成関連遺伝子群の cDNA をコーヒーノキあるいはその 他の生物からクローニングし、それらの組換えタンパク質について酵 素学的な特徴づけを行う。 4-2) 上記の組換えタンパク質を用いて、試験管内でカフェイン生合成経 53 路の再構築を行う。 4-3) 上記の cDNA を用いて恒常型カフェイン生合成レギュロン発現系導入 ベクターを構築し、これを用いてタバコの形質転換を行う。 4-4) 形質転換タバコからカフェイン蓄積系統を選抜し、詳細なカフェイ ン蓄積様式を解析する。 4-5) カフェイン蓄積系統を用いて忌避活性あるいは殺虫活性の有無を解 析する。 4-6) 傷害応答型カフェイン生合成レギュロン発現系を導入した形質転換 タバコを作製し、カフェイン蓄積様式や忌避・殺虫活性を解析する。 5) 遺伝子の特異的発現抑制 5-1) これまで報告されているコーヒー不定胚形成における問題点(培養 条件の複雑さ、培養に長期間を要するなど)を改善するため、アラビ カ種およびカネフォラ種の独自の新規不定胚培養系の開発を行う。 5-2) カフェイン生合成関連遺伝子のアンチセンス構築および RNAi 構築の 導入ベクターを作製する。 5-3) 5-1)で開発した不定胚培養系を用いて 5-2)の構築を効率良く導入す る手法を確立する。 5-4)トランスジェニックコーヒーを作成し、内生カフェイン量の変動を調 べる。 2.1.3.10.2 RNA 干渉(RNAi)による代謝制御法の開発 (京都大学大学院生命科学研究科 佐藤文彦) [目的] 複雑に分岐した代謝経路をトリミングし、単純な化合物組成を もつ工業原料植物、例えば、ベルベリンのみを生産するオウレン細胞を育 成することを目的に、新規な遺伝子発現制御(抑制)技術の開発を試みた。 [計画] RNAi ベクターを用いた安定形質転換体の作成により、RNAi 法の 有効性を検証するとともに、同手法を代謝工学に適用し、単純な化合物組 成をもつ工業原料植物を育成すること、さらには、より簡便な RNAi 法を確 立することを試みた。本年度は特にオウレンプロトプラストと二本鎖(ds) RNA を用いた内在遺伝子発現抑制系の確立を行なうとともに、 同遺伝子発現 抑制系を用い、これまでに単離してきたオウレンの機能未知遺伝子の機能 の同定を試みた。また、berberine bridge enzyme に対する RNAi ベクター を導入したハナビシソウ安定形質転換細胞を用いて、RNAi による代謝工学 の有効性を評価した。 2.1.3.11 植物葉緑体ゲノムへの複合環境ストレス耐性遺伝子群 の多重導入による複合環境ストレス耐性工業原料生産植物の作 成 (地球環境産業技術研究機構) A.目的・意義 植物の生産性は環境によって大きく減じられている。USA の J. Boyer によると、病害や虫害による生産性の低下よりも、乾燥、強光、塩害など が、植物が遺伝的に有している生産能力の 75%も減じる原因であると報告 54 している。省エネ型の栽培手法でありながら植物の生産性向上を目指す本 プロジェクトにおいて、このような複合環境ストレスに耐性な植物は必須 である。植物は、太陽エネルギーを化学エネルギーに変え、この化学エネ ルギーを使って第 1 次生産を行う。葉緑体におけるこの化学エネルギーを 作る過程は植物体でもっともデリケートな過程で、乾燥、強光、塩などの 環境要因はまずこのデリケートな反応過程を攻撃することが知られている。 その結果として葉の部分的枯死や全体的な枯死が起こり、生産性を減じる 原因になっている。これらの環境要因についてはこれまで、RITE における 大腸菌カタラーゼを核に導入して乾燥耐性を獲得させる例など、1遺伝子 導入研究によって部分的に克服された成功例はいくつかある。しかし、葉 緑体の化学過程の環境ストレスからの保護のために、核に遺伝子を導入し て、細胞質でそのタンパク質を作らせ、葉緑体に移行させる方法は、単一 遺伝子では容易であるが、乾燥、強光、塩害などの葉緑体への複合ストレ スを防止するには、その効果を期待できない。もっとも有効な手法は、こ れらの耐性遺伝子群を直接葉緑体ゲノムに導入して、これらの乾燥、強光、 塩害など複合環境ストレスを駆逐する方法である。本研究ではこれまで核 へ導入した単一遺伝子で乾燥、強光、塩害などに効果のあった大腸菌カタ ラーゼ、活性酸素に抵抗性を持つ過酸化水素分解酵素、温度ストレスや塩 害が起こる条件でも葉緑体を保護するベタイン合成酵素、塩害に強力に作 用すると思われるエクトイン合成遺伝子などを多重化して、葉緑体ゲノム に一括導入する技術を開発するとともに、これらの複合環境ストレス耐性 工業原料生産植物を作成する基礎基盤開発を目的とする。 B.研究目標(含省エネ目標) モデル植物(タバコ)における葉緑体多重遺伝子導入手法の確立、組織・ 器官特異的発現系の開発を本プロジェクト 5 カ年の目的としている。 C.目標設定理由 葉緑体は高等植物の細胞中に 50∼200 個存在し、それぞれが核とは異な るゲノムを持つことから、葉緑体の形質転換体では、従来の核遺伝子の形 質転換よりも多くの遺伝子コピーを一細胞あたりに維持・発現させること ができる。また、葉緑体へ導入された遺伝子は、核への導入とは異なり、 位置効果やジーンサイレンシングの影響を受けないこともあり、大量の遺 伝子発現を望むことができ、葉緑体を物質生産の場として活用することが 期待される。 また、葉緑体遺伝子はほとんどの植物で母性遺伝するので、 導入遺伝子の花粉を介した環境への飛散が防げる。こうした利点をもつ葉 緑体形質転換系は、21 世紀の遺伝子組換え植物作成の重要な手法になると 考えられ、この系の基盤技術である葉緑体多重遺伝子導入手法の確立およ び、組織・器官特異的発現系の開発は、目標とすべき指標設定及び目標水 準として極めて妥当なものだと言える。 D.ブレークスルーポイント 葉緑体多重遺伝子導入手法の確立においては、ポリシストロニック mRNA の発現を可能にする遺伝子構築とそれぞれの遺伝子の葉緑体における発現 量の関係についての詳細な知見を得ることが必要である。また、組織・器 官特異的発現系の開発においては、葉緑体にコードされる 120 とも 130 と 55 も言われる遺伝の遺伝子発現制御についての知見を集積しながら実用可能 な系を作り上げることであり、この場合、McBride ら(1994)により示され た核から恒常的に発現される T7 RNA ポリメラーゼにより、葉緑体へ導入し た T7 プロモーターをドライブさせる系を発現制御系に発展させることもブ レークスルーポイントのひとつである。 E.研究計画 1)葉緑体多重遺伝子導入手法の確立 単一遺伝子による葉緑体遺伝子導入植物の作成と導入遺伝子の発現量、 生理学的解析を行う。この結果を踏まえ、複合環境ストレス耐性に有効で あると考えられる遺伝子を多重化した上で葉緑体の形質転換を行なう。パ ーティクルガンを用いた遺伝子導入、および培養手法により形質転換体を 作出する過程の検討を行い、葉緑体の形質転換のために必要な共通基盤と なる知見を得る。 2)葉緑体遺伝子発現制御系の開発 特定の組織・器官の葉緑体で導入遺伝子の発現を行うシステムである。 葉緑体にコードされる遺伝子のプロモーター解析により、本目的にあうプ ロモータの探索、取得を行なう。この結果を踏まえ、葉緑体遺伝子発現制 御系の構築を目指す。 2.1.3.12.1 ゼニゴケの脂肪酸代謝機能の活用 (再委託:京都大学 大山莞爾(平成 11〜14 年度) 、福澤秀哉(平 成 15 年度) ) 目的・意義 大豆などの油糧植物の分子育種に利用可能な有用遺伝子が求められてい る。苔類ゼニゴケの高い有用脂肪酸の産生能に着目し、そこから脂肪酸生 合成関連遺伝子を単離し、油糧植物の分子育種に利用する。 B. 研究目標 ゼニゴケから脂肪酸鎖長延長酵素ならびに不飽和化酵素の遺伝子を単 離・同定し、油糧植物の形質転換に供する遺伝資源を獲得する。 C. 目標設定理由 ゼニゴケは脂肪酸産生能が高く、長鎖脂肪酸に加えて高度不飽和脂肪酸 も含むことから脂肪酸鎖長延長酵素および不飽和化酵素の遺伝子をもつは ずである。これらを取得し、植物に導入すれば、植物で有用な高度不飽和 脂肪酸を生産することが可能になる。 D. ブレークスルーポイント 脂肪酸鎖長延長酵素ならびに不飽和化酵素の遺伝子は、いずれも遺伝子 ファミリーを形成することが知られている。そのため、多くの候補遺伝子 から目的の遺伝子を同定する点が重要である。 E. 研究計画 1) ゼニゴケの cDNA ライブラリを作成し、他の生物種における脂肪酸鎖長 延長酵素および不飽和化酵素遺伝子の配列情報を利用してスクリーニン 56 グする。 2) ゼニゴケの形質転換系を開発する。 3) 酵母を用いて取得した遺伝子の機能を同定する。また、得られた候補遺 伝子をゼニゴケに導入し、過剰発現および発現抑制による脂肪酸組成の 変化を調べ、ゼニゴケにおける機能を同定する。 2.1.3.12.2 アレルゲンタンパク質のマメ科植物による生産 (再委託:大阪大学大学院工学研究科 室岡 義勝) 目的・意義 小児喘息の 70%を占めるダニアレルギーへの期待できる治療法は、 抗原の 投与により、アレルギー反応を抑える減感作療法である。アレルゲンペプ チドをダイズなどのマメ科植物で生産させ、直接食す方法または種子の抽 出物を添加した健康飲料を開発し、経口減感作療法に用いることを目的と する。 B. 研究目標 すでに主要ダニアレルゲンおよび新規ダニアレルゲンをコードする遺伝 子数種類をクローニングし大腸菌で発現させ、患者の IgE 抗体反応により 確認した。これら遺伝子をダイズ等で発現させることを目標とする。経口 減感作療法に使用するまでは、臨床試験等が必要で、本プロジェクト終了 以降になる。 C. 目標設定理由 広島大、小埜らは広島カキ打ち作業員の喘息(ホヤ喘息)アレルゲンを純 化し、それを利用した 10 年以上の減感作治療の実績がある。これをダニア レルゲンにも適用し、さらに植物による低コスト有用タンパク質生産の成 功例とする。 D. ブレークスルーポイント ダニアレルゲンのダイズ等のマメ科植物における効率的生産が可能か否か が、ポイントである。 E. 研究計画 1) マメ科植物の種子でアレルゲンペプチドを発現させるための種子特 異的プロモーターを取得する。 2) アレルゲン遺伝子をこのプロモーターに連結し、マメ科植物でアレル ゲンペプチドを生産させる。 3) ダイズの形質転換系を確立する。 2.1.3.12.3 環境ストレス(低温、光・酸素毒)耐性植物の分 子育種 (再委託:近畿大学農学部 重岡 成) A. 目的・意義 低温、強光、乾燥などの種々のストレスに由来する光・酸素毒に対する 耐性、すなわち極限的な環境下でも生存できる耐性植物の開発を目的とす 57 る。 B. 研究目標 1) アクティベーションタギング法による有用遺伝子の探索、2) 光合成生 物のグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)様タンパク質の分子特性の解明、 および 3) 既存の活性酸素種関連遺伝子を用いた多重遺伝子導入系の確立 を行う。 C. 目標設定理由 種々の環境ストレスによる障害のほとんどが最終的には細胞レベルでの 活性酸素種による光・酸素毒に一部起因しており、植物の物質生産の大き な律速因子となることが明らかになっている。そこで、活性酸素種を消去、 低減させる遺伝子群を多数解析し、利用することが植物の生産性向上に重 要である。 D. ブレークスルーポイント アクティべーションタギング法で有用なストレス耐性遺伝子がどれだけ 取れるかが第1のポイントである。次に複雑な酸化ストレスに関わる遺伝 子群を多数取得し、それぞれの機能および相関関係を解明することがポイ ントとなる。また、これまで全く明らかになっていない過酸化脂質代謝系 を改変することの影響の評価法を含めてどれだけ詳細にできるのかがポイ ントである。 E. 研究計画 1)アクティべーションタギング用ベクターを形質転換したシロイヌナズナ 変異体を作製する。得られた種子をストレス下でスクリーニングし、耐 性を示す変異体を取得する。 2) 耐性遺伝子の配列を決定し、遺伝子の同定を行う。 3) 耐性遺伝子の生理機能を明らかにする。 4) 藻類のグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)様タンパク質の分子特性 を明らかにする。 5) GPX タンパク質を細胞質もしくは葉緑体で発現させた形質転換植物を作 出し、それぞれの種々のストレスに対する耐性能を検討する。 6) 取得したストレス耐性関連遺伝子を多重化してタバコ、シロイヌナズナ に導入し、表現系を調べる。 58 2.2 研究開発の実施体制 2.2.1 実施体制について 本プロジェクトは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委 託事業としてバイオテクノロジー開発技術研究組合が研究開発を実施する ものである。具体的には、下図に示すように、プロジェクトリーダーとし て新名惇彦、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科教授を 迎えプロジェクト全体の推進をしていただく。具体的研究体制としては、 主として多重遺伝子導入技術の開発等の高度な基盤技術開発部分について は、バイオテクノロジー開発技術研究組合が奈良先端科学技術大学院大学 と共同研究契約を締結し大学内に集中研究室を設置して、大学の研究者、 参加企業(組合員)から派遣する研究員、バイオテクノロジー開発技術研 究組合の博士研究員、及びNEDO派遣の産業技術養成技術者等が一体となっ て集中研究を行う。また、工業原料生産、ストレス耐性付与等で特別の技 術、設備等が必要な研究については、参加企業研究所において、それぞれ の実用化研究目標毎に実施する。さらに、特殊な技術開発については関係 大学、研究機関に対する再委託又は共同研究を積極的に実施し効率化・迅 速化を図る。なお、研究の方向性に対する客観的な評価、効率的な研究開 発の推進、集中研究と参加企業研究所等との間の緊密な連携等のため、組 合内に新名プロジェクトリーダーを委員長とし専門委員から成る研究開発 委員会を置き、研究の実を挙げるよう努めている。 研究開発実施体制図 (プロジェクトリーダー) 新名惇彦(奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科教授) 共同研究 奈良先端科学技術大学院 バイオテクノロジー開発 大学バイオサイエンス研究科 技術研究組合 (大学内に集中研究室設 研究員 参加企業(8社) 置) 派遣→ 大阪大学 三重大学 東京大学 集中研究室 東北大学 参加企業研究所 横浜国立大学 (財)地球環境産業技術研究 石川県農業短期大学 機構* 岐阜大学 再委託 研究開発委員会 研究員派遣 *H11-13 年度はバイオ組合の再 委託、H14 年度は NEDO からの研 究分担先、H15 年度は NEDO から の直接委託 (再委託先) 大阪大学、京都大学、近畿大学 59 2.2.2 当該体制を取る必要性 本プロジェクトの研究開発は実用的な工業原料生産植物の創成を目指す ものであるが、多重遺伝子導入技術開発などの先端技術開発テーマを含ん でおり、高度な技術開発に挑戦するものである。そのため実用化を主眼と する個別の企業の研究、または基礎研究を中心とする大学の研究のみでは 限られた期間内に目的とする成果を得られない恐れがある。そこで、本プ ロジェクトは初期段階の基礎研究から最終段階の応用研究まで、研究の進 捗に合わせて開発体制を柔軟に運営していく必要がある。 従って、実用化を目指す民間企業単独の研究だけでなく、共同で強い連携 を持って探索研究を推進する場、ならびに大学等の基礎研究機関の参加が 必要である。さらに、大学等の基礎研究機関との連携、企業同士の協力の ために参加企業で組織する技術研究組合の存在は本プロジェクトの円滑な 運営と推進に重要である。特に、参加企業が全体で国立大学内に集中研究 室を設置し、大学と一体化して研究を進めるには企業の集合体である研究 組合の役割は欠かせないものである。この意味から、上記開発体制は非常 に好ましいものである。 60 2.3 研究開発の運営管理 「植物利用エネルギー使用合理化工業原料生産技術の研究開発」 研究開発委員会 会委員名簿 平成 16 年 3 月現在 委員長 新 名 惇 彦 奈良先端科学技術大学院大学教授 委 柴 田 大 輔 財団法人かずさDNA研究所主席研究員 〃 横 田 明 穂 奈良先端科学技術大学院大学教授 〃 佐 藤 文 彦 京都大学教授 〃 小 林 昭 雄 大阪大学教授 〃 重 岡 成 近畿大学教授 〃 河津 哲 王子製紙株式会社原料材料本部森林資源研究所 員 上級研究員 〃 田 中 良 和 サントリー株式会社基礎研究所主席研究員 〃 友 沢 大成建設株式会社土木技術研究所担当部長 〃 平 井 正 名 株式会社豊田中央研究所第 37 研究領域特命主査 〃 中 沢 慶 久 日立造船株式会社技術企画部バイオプロジェクト 孝 主任研究員 〃 行宗敬人 三井化学株式会社機能化学品研究所主席研究員 〃 春日部芳久 株式会社東洋紡総合研究所バイオ研究ラボ 〃 盛満耕造 出光興産株式会社中央研究室長 〃 富澤健一 財団法人地球環境産業技術研究機構主席研究員 〃 庄司克彦 バイオテクノロジー開発技術研究組合技術部 担当部長 以上 61 「研究開発委員会等の開催実績」 年月日 会議名 内容 (研究開発委員会) H11.12.9 11 年度第 1 回 研究計画検討 H12.3.2∼3 11 年度第 2 回 研究成果検討 H12.9.22 12 年度第 1 回 研究計画および成果検討 H13.3.12 12 年度第 2 回 研究成果検討 H13.9.3 13 年度第 1 回 研究計画および成果検討 H13.3.11 13 年度第 2 回 研究成果検討 H14.9.20 14 年度第 1 回 研究計画および成果検討 H15.3.10 14 年度第 2 回 研究成果検討 H15.9.11 15 年度第 1 回 研究計画および成果検討 H16.1.22 15 年度第 2 回 研究成果検討 (作業分科会) H11.12.29 11 年度第 1 回 研究計画検討 H12.6.12 12 年度第 1 回 海外調査報告および講習会 H12.9.21∼22 12 年度第 2 回 研究計画・成果検討および見学会 H12.10.5 12 年度第 3 回 講演会 H12.11.21∼22 12 年度第 4 回 研究計画・成果検討および見学会 H13.1.16 12 年度第 5 回 研究計画・成果検討および見学会 フィールドテスト検討 H13.3.15 12 年度第 6 回 研究成果検討 H13.4.3 13 年度第 1 回 講演会 H13.4.23 13 年度第 2 回 研究成果技術講習会および講演会 H13.11.30 13 年度第 4 回 研究成果検討 62 H14.3.20 13 年度第 5 回 研究成果検討 H14.7.17 14 年度第 1 回 研究成果検討および海外調査報告 H14.9.19 14 年度第 2 回 研究計画・成果検討および講演会 H14.12.9〜10 14 年度第 3 回 研究成果検討、講演会および見学 会 H15.3.11 14 年度第 4 回 H15.7.17〜18 15 年度第 1 回 H15.9.12 15 年度第 2 回 H15.11.26 15 年度第 3 回 H16.1.28 15 年度第 4 回 研究計画・成果検討 研究計画・成果検討および見学会 研究成果検討 研究成果検討および見学会 研究成果検討および講演会 63 3.情勢変化への対応 3.1 省ネルギー型工業原料生産に適した多年生工業原料植物の創成 (王子製紙株式会社) ・ 多年生工業原料植物としてユーカリ樹種に着目して形質転換技術開発 に取り組んだ。工業原料としての生産性の高い地域での栽培に対応する 必要性から、熱帯から温帯で事業植林に利用されているユーカリ 5 樹種 に対して形質転換技術を開発した。 ・ 工業原料植物を開発する基盤技術として、効率的な遺伝子発現制御シス テムの開発が望まれている。そのため、集中研究室ではモデル植物で遺 伝子発現制御システムを開発した。本研究課題ではモデル植物に由来す るプロモーターの機能をユーカリで検証してきた。草本性のモデル植物 由来プロモーターはユーカリで機能しないことが明らかになったこと から、モデル植物で有用性が検証された遺伝子のユーカリオーソログの プロモーターを単離し、ユーカリ独特の遺伝子発現制御システムを開発 する方針に変更した。 ・ 難溶性リン酸の利用効率を向上させるためには植物の根から有機酸を 放出させることが有効手段となる。ミトコンドリア型のクエン酸合成酵 素(CS)の過剰発現によって酸性土壌で根量の増加が証明できた。さら に、有機酸の放出量を増大させるため、クエン酸の分解に関わる細胞質 型イソクエン酸脱水素酵素(NADP-ICDH)の発現抑制についても検討を 行った。また、CS 過剰発現と NADP-ICDH 発現抑制の多重組換えについて も検討している。 ・ 遺伝子組換え植物の実用化には安全性評価およびパブリックアクセプ タンスが必要となる。遺伝子組換え樹木は長いライフサイクルから安全 性確認に長期間を要することから、プロジェクト期間内での実用化は困 難である。特に、遺伝子組換えユーカリは環境に対する影響評価が難し いことから、遺伝子拡散を防止する措置として、地上部を野生型にする 接ぎ木を行った。また、遺伝子組換えユーカリの実用化は海外で行うこ とから、海外の企業・研究機関との連携が必要となる。プロジェクトで はベトナムの研究機関に対して、形質転換の母材料となるユーカリ樹種 のクローン増殖と適応性試験を実施した。 3.2 高度不飽和脂肪酸生産大豆の研究開発 (株式会社サントリー) 当初予定では、持ち帰り研究でダイズの形質転換系開発を行う予定では なかったが、プロジェクトの成功のために必須の技術であるため、取り組 むことに変更。ダイズの形質転換は予想以上に困難で、しかも Jack という 品種しか形質転換できない。東北大学、東京大学と共同研究を実施し、他 の国内外研究者とも交流・情報交換を行ってきた結果、安定したダイズ(品 種 Jack を使用)の形質転換系を立ち上げることができ、脂肪酸合成遺伝子 を導入したダイズを得ることができた。目標どおりアラキドン酸を蓄積さ せることができた。現段階では遺伝子組換え食用作物の国内での栽培は実 64 質的に不可能な社会状況にあり、海外での生産を考慮する必要がある。 3.3 耐塩性植物でのハイブリッドファイバー(ポリ<(R)-3-ヒドロ キシブチレート>充填繊維細胞)の生産技術開発 (大成建設株式会社) (1)中間評価での指摘事項に対する対応 本テーマの当初計画では、ハイブリッドファイバーの実用化対象植物と して、耐塩性遺伝子導入を必要としない強度耐塩性植物(シロザやタマリ クスなどの海水耐性植物)を選定した。しかし、中間評価段階でシロザは 一年生草本であり、ハイブリッドファイバー生産には樹木がふさわしいの ではないかとの指摘を受けた(中間評価報告書) 。確かに日本ではシロザ (Chenopodium album)は一年生であるが、アラブ首長国連邦などでは、同 じ Chenopodium 植物が多年生潅木になっており、日本でもシロザの杖は軽 くて丈夫であるなど、材質は樹木のそれに近いなど利点もある事は事実で ある。しかし、中間評価での指摘を考慮して、中間評価後は樹木であるタ マリクスの遺伝子導入系確立に注力した。その結果、樹木であるタマリク スではシロザに比べ遺伝子導入系が確立しやすい傾向が明らかになってき た。タマリクスもシロザも遺伝子導入系に関する報告は見られなかった事 から、いずれにおいても遺伝子導入系の確立は新規性という点で優劣ない と考えられたので、ハイブリッドファイバー適性に関して検討した。その 結果、タマリクスは多年生樹木であり、イランなどの乾燥地でも街路樹と して実際に使われている(PEC 海外出張報告書) 、建材特性としても特に劣 っているわけではない事などが確認できた(大成建設 材料研究室員、私 信) 。これらの情勢を総合的に判断して、中間評価以降は遺伝子導入する対 象植物を木本類のタマリクスに注力し、最終目標を達成することができた。 (2)多重遺伝子導入に付随する遺伝子制御に関する対応 多重遺伝子発現ベクターの発現制御に関しては、多重化させるとタンパ ク質合成量の抑制現象や同じプロモーターやターミネーターを使用する場 合は欠落などの可能性もあり、中間評価以降の重要なブレークスルーポイ ントであると考えられた。そこで、これらの点を明らかにする目的で、フ ァイバーの生産評価系としてモデル植物のイネを用いた系を用いる研究計 画とした。イネを用いた他の理由としては、耐塩性が低いにもかかわらず その細胞壁組成が樹木のそれに近いこと、当研究室において確実な遺伝子 組換え系を保有すること、さらに多くの研究情報が活用できることなどが ある。実際に、phb b と phb c を多重連結したベクターをイネに導入し、T0 で PHB 合成遺伝子群の発現機能を確認したところ、有性世代を重ねる(T1、 。また、 T2)段階で、導入遺伝子が欠落する現象が見い出された(未発表) いくつかの植物で報告されている gene silencing 現象(Fojtova et al. 2003)に類似したものと推察される mRNA レベルでの発現不安定性も確認さ れた。内外の研究進展を十分考慮し、発現に関しては、プロモータの改良、 ベクターの再構築などにより柔軟に対応することができた。導入遺伝子の 欠落に関しては報告がほとんどなく、その原因解明と解決策には時間を要 すると判断された。そこで、予備的に調査した安定化発現個体の出現率に 基づき、大量個体(1,000〜5,000 個体)を作出する手法を考案し計画の達 65 成をはかった。結果的に、安定発現個体を数固体得てファイバー材料を確 保できた。具体的には、大量個体を取り扱う段階でのゲノム PCR、RT-PCR の処理法を、抽出方法や使用する酵素の種類を検討して迅速化し、ゲノム PCR の場合で 50〜100 個体/日の効率化を達成できたことが、 目標達成にお いて有力な一因となったと考えている。 (3)ハイブリッドファイバー特性評価法検討における迅速な対応 PHB 合成遺伝子群の安定発現個体の出現率が数%程度である事がわかった 段階で、文献調査を併用し情勢判断を的確に行うことができたと思う。そ の迅速な対応が、PHB を植物繊維素(イネ葉乾燥粉体)に混合することによ り予備的な圧縮ボード特性評価系確立に用いるというアイデアに至った。 ボード特性評価手法の確立と特性評価項目の絞り込みに PHB 混合粉体を実 際に使用して、PHB による圧縮ボードの特性変化を実証できた。結果的に、 量の少ない組換え体由来のファイバー材料生産を待って、特性評価に移行 するよりもボード特性の評価試験を効率的に実施することができ、予想外 の出来事であった遺伝子の不安定性に起因する材料不足の問題を克服した。 最終的に組換え植物体を用いたハイブリッドファイバーで、 PHB を混合した 場合と同様の特性変化を示すことができたことは、時間的制限をクリアー する最短の対応であったと考えている。 (4)生物分解性プラスチック蓄積量とファイバー品質改良に関する対応 本研究を開始した当初、植物での PHB 生産量を高めるための研究がシロ イヌナズナやナタネ(Houmiel et al. 1999)でなされており、最大値では蓄 積量が乾重量当たり 14%(Nawrath et al. 1994)〜40%(Bohmert et al. 2001)に達する事が報告されていた。一方で、ワタなどの繊維では 0.03〜 0.3%の微量蓄積が報告され、繊維特性が変化する事から(John & Keller, 1996)、我々の目標値は 1.0%以下と設定した。しかし、中間評価時点をこ えたころから、シロイヌナズナ以外の植物種、例えばタバコ(Nakasita et al. 1999, Nakasita et al. 2001, Bohmert et al. 2002)やジャガイモ (Bohmert et al. 2002)では 0.1%以下の蓄積量しか得られないという報 告が相次ぎ、 我々の 0.1%程度の蓄積率という研究調査結果とも極めて近い 数字である事から、高い蓄積率はアラビドプシス特有の現象であると推察 された。従って、当初目標として設定した少量の PHB 蓄積で繊維素の質的 変化(改良)を目指した本テーマの最終目標値は、現時点の研究情勢に照 らしてみても、極めて先導性の高い目標設定になっていたと考えられ、最 終的にファイバーの質的変化を示し得たことは、 PHB の蓄積量向上を目標と しなかった研究計画の妥当性を示唆していると考えられた。 は、本プロジェクトのテーマへ積極的に組み込む可能性も期待している。 3.4 イソプレノイド・天然ゴム生産植物の創成 (日立造船株式会社) 特に特筆すべき情勢変化はないが,カルタヘナ法の制定により中国国内 の遺伝資源からゴムに関する遺伝情報を入手する際にバイオパイラシー問 題に発展しないように対処する必要性がある。現在は西北農林科技大学と 共同研究することにより双方がその情報を共有することで国際問題に発展 しないように保っている。しかし,中国政府を初めとする多くの研究機関 66 が本研究成果に期待を寄せており,将来的な展望に立つと知的所有権を明 確化した契約書の締結が要求されると考えられる。また,事業化可能な栽 培地の確保には大規模な遺伝子組換え植物の栽培地が必要であり,カルタ ヘナ法を準拠して中国側と共存する手法を考えなければならない。 3.5 タンパク質組織特異的高生産植物の研究開発 (三井化学株式会社) 平成13年度に実施された中間評価において明瞭な定量的な目標が立て られていないとの指摘を受けたことから、実用場面を想定した数値目標を 新たに設定した。すなわち、 「茎葉部1グラムあたり5ユニットのフィター ゼ生産」を目標と掲げ、その値を達成すべく遺伝子導入用コンストラクト を再検討した。また、当社で蓄積されたイネに関する技術的知見と豊富な ツールを有効活用するためにイネにおいてタンパク質組織特異的高生産技 術を開発する一方、実用植物として有望なサツマイモについても効率の良 い形質転換法の開発及び外来フィターゼの生産を目指すことにした。さら に、フィターゼ高生産植物の実用性を検討するために、当該植物のサイレ ージ化を実施し、サイレージ過程におけるフィターゼの安定性を評価する ことにした。 3.6 病害抵抗性植物の分子育種 (株式会社豊田中央研究所) 高性能の抗菌ペプチド開発では、ヒト由来の抗菌ペプチドの安全性が 高いと考え、ヒト由来 CAP を構造改変前の出発物質として選択した。その 後、トヨタ自動車のサツマイモ事業の事業展開地域がイスラム圏のインド ネシアに正式決定し、ヒト由来のものでは宗教上の制約を受ける可能性が あるという情勢変化が起こった。そこで、他の動物由来の CAP について、 宗教上の制約を受けにくいものをさらに一つ出発物質に加えることに決定 し、抗菌性能評価を行った。この結果、ウサギ由来のものがヒト由来のも のに比べ性能上も優れていることを見出した。本抗菌ペプチドに構造改変 を加えることによって機能改良を図り、この遺伝子をサツマイモに導入す ることによって、高い病害抵抗性を示す新品種の作出に成功した。 3.7 ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を利用した環境ストレス抵抗性 改良とその利用 (株式会社東洋紡総合研究所) 特に情勢変化への対応は無し。今後も当初の計画通り進める予定である。 なお、3.6,3.7はサツマイモを対象植物とてしている。実用化段 階では海外で栽培する可能性が高い。高系 14 号などのわが国の栽培品種が 東南アジアでも病害等に耐え、十分生育するかを確認するため、ベトナム の Prof.Nguyen van Uyen, Inst Tropical Biology に委託し、Inst Tropical Biology, Ho chi Minh City および Dalat Experimental Station of the Saigon Biotechnology Products Co., Duc trong District, Lam dong Province にて、 高系 14 号およびベニアズマほか2品種の栽培試験を実施し た。いずれも良好に生育し,将来ベトナムで実用栽培を行う可能性が示され た。カルタヘナ条約に則り、遺伝子組換えサツマイモの野外安全性圃場試 67 験を実施した後、ベトナムでも安全性試験を行う予定である。 4.中間評価結果への対応 4.1事業全体に関する評価 (1)実用化シナリオ ○実施期間内で目標達成の見通しの立たないテーマ、市場性に疑問 のあるテーマについては、対象植物の見直し、目標の一部変更な どの措置をとることが必要 ● 脂肪酸は植物由来工業原料として、セルロース、デンプンなどと 同様きわめて重要な意味を持つと考えられる。 ● マメ科植物は窒素肥料生産に要するエネルギー使用削減につな がると考えられる。したがって、研究基盤確立としての技術開発 はほぼ計画通り継続する。 ● ハイブリッドファイバーについては、植物体内で生分解プラスチ ックが発現した場合の植物体、および生分解プラスチックそのも のについて、物性の変化などを解析し、その有効性の確認を実施 する。 (2)研究開発成果 ○良い成果が得られているので、より一層普及・広報に努めて欲し い。 ● プロジェクト期間中、原著論文 124(28)件、口頭発表 255(59) 件、特許出願 63(25)件、新聞発表 32(14)件(カッコ内は前回 中間評価時の件数)で広報・普及に努めた。 (3)事業の計画内容 ○再委託研究、共同研究の一部には、その役割、必要性が不明確な ものが見られ、事業への寄与を明確にする必要がある。 ●再委託研究、共同研究においても、中間評価以降、独自に基礎研究 の推進及び工業植物の実用化に寄与した。 4.2要素技術に関する評価 4.2.1工業原料生産のための植物代謝利用技術の開発 (1)成果に対する評価 一部に進捗の遅れが見られるものの、全体としては当初計画の目 標をほぼ達成している。製造原料として市場性がある化合物が植 物体で生産可能になれば、新たな市場拡大が期待できる。進捗が 遅れている、または実用的成果の達成に疑問のある課題について は、目標の絞り込みや方向修正を行い、より効率的に研究を行っ ていくことが臨まれる。 ○植物種によっては形質転換効率が低く、実用的利用にはさらに効 率を高める必要がある(ダイズの形質転換系は農水省にある)。 また、既存技術と変わらないものもあり、新規制にやや欠ける。 ●工業原料植物において形質転換効率を高める必要があるとの指摘 については同感である。特に、特定の植物種において形質転換が 可能であっても、実用的な品種や個体では形質転換できないケー スが多く、また事業的価値の高い形質転換個体を獲得するために は形質転換効率を高める必要がある。本技術開発ではユーカリを 68 材料に形質転換を高める工夫として組織培養条件の検討、個体選 抜を行い、形質転換効率を高めることができた。併せて、ユーカ リ属の複数の樹種で形質転換植物の作出に成功した(王子製紙) 。 ● ダイズの形質転換で実績のある農林水産省の研究者の指導を受 け、自社内で形質転換ができるようにした。その結果、形質転換 ダイズを取得でき、アラキドン酸の生産も確認できた。また、東 北大学と共同研究を行い、新しいダイズの形質転換系の開発も行 った。共同研究先の東京大学でもダイズへの遺伝子導入を実施し た(サントリー)。 ●専従研究員3名で対応した。パーティクルガン等を駆使して行ったがト チュウに於いて形質転換効率を高めることはできなかった。更に,アグ ロの改良系・プロモーターの問題等について検討を進めている(日立 造船)。 ○対象化合物によっては、目標効果の達成が不明確であり、検討が 必要。 ● PHBによるボード特性変化の目標が達成可能かについて早急に明確 にするため、植物繊維とPHBを人工的に混合した圧縮ボードでの試 験を計画した。ボードの熱特性解析より植物繊維とPHBの複合体で はPHBの融点ピークが低温側へシフトする傾向が得られ、物性変化 の起こる可能性を確認した。さらにPHBの混合により、市販のWPC 製品を想定した特性(力学強度と吸湿特性)変化が起こる事を見 い出し、目標とする効果が達成可能な事を明確にした。最終的に 耐塩性樹木タマリクスの組換え体で人工的な混合物と同様のボー ド特性変化を確認した(大成建設) 。 ○目標値達成の遅れている分野は当面の目標値の絞り込み、研究手法 の単純化とモデル化等により明確な目標を設定し、達成できるようにす べき。 ●シス型モデルのペリプロカについてはIPPisomerase,FPPsynthase の発現抑制系に関する形質転換体を作出して代謝物の評価段階に入 った(日立造船)。 ○フィターゼをイネで発現させることにより、リンの効率的利用上、 飼料として与えるのに、家畜の対象は何か不明である。 ●実用性を考慮して豚や鶏などの単胃家畜を対象動物としている。 牛などの反芻胃を持つ家畜とは異なり、これらの家畜の消化器官 内ではフィターゼ活性がほとんど検出されず、リンの利用効率が 低いことから、フィターゼを含む飼料を与える効果が期待される (三井化学) 。 (2)実用化の見通しに関する評価 現段階では多くの課題について実用化の見通しが明確になって いないが、本字業の終了時に実用化の可能性を明確に示せるよう、 研究の集中を行っていくことが望ましい。 ○どの要素技術も現段階では実用的価値が見えにくい。 ●ユーカリ、サツマイモ、ダイズ、コーヒー、イネいずれも価値の ある実用化の見通しがついた。 ●実際の栽培等で中国政府の動向から退耕還林としての利用価値が高 まっており,社会的ニーズも大きいと推定される(日立造船)。 69 ○プロジェクト終了時に目に見える成果がないことになろうと、目 先にこだわるべきでない。早期実現のため、本来の対象植物での 研究に集中すべきである。 ● ダイズの形質転換に注力した。その結果、形質転換ダイズを取得 でき、アラキドン酸の生産も確認できた(サントリー)。 ○全て意義ある課題だが、ほとんどの物質は既に他の研究対象にな っている。フィターゼを飼料で発現させるアイデアはすでにあり、 動物実験まで行われている。 ●フィターゼを植物で発現させた例はこれまでにもいくつか報告が あるが、①初めてカビ由来以外のフィターゼ(酵母由来)を用い ること、②イネおよびサツマイモを対象作物とすること、③通常 不要とされる茎葉部で安定的に高生産すること、④サイレージ化 に伴うフィターゼの安定性を評価すること、などにより新規な実 用性を示したい(三井化学) 。 ○実用化が目標となる段階では、野外栽培による大量生産のための 戦略も考慮が必要 ● 形質転換クローンの増殖が必要になる。ユーカリに関しては形質 転換技術の開発の過程で増殖方法の検討がなされており、実用化 の初期段階は組織培養による増殖を行う。さらに、事業化の大量 生産はコストを考慮して、挿し木法を併用して増殖できる(王子 製紙) 。 ●花粉飛散試験等を大規模で行っており,大量生産への応用を戦略的 に行っている(日立造船)。 (3)事業体制の妥当性 全体として事業体制は適切である。今後はより一層組織間の連携、 融合を図るとともに、外部専門家や原料ユーザーの意見も取り入 れることが望まれる。 ○研究担当者数が少なく、事業体制が十分とは言えない企業があり、 再委託先の成果が生かされているのか、効果があったのか、間に 合うのか不明なものがある。 ● 委託先(京都大学大山研究室)で得られたゼニゴケの高度不飽和 脂肪酸合成遺伝子は、従来得られていた同じ機能の遺伝子よりも、 植物で効率よく機能することが示唆された(サントリー)。 ● プロジェクトリーダーおよび外部専門家(例えばサイレージ化に ついては山形大学農学部高橋教授)の意見を積極的に取り入れる とともに研究担当者を増やして事業体制を再構築する (三井化学) 。 ○集中研の活用が重要である。 ●本技術開発では基礎研究と応用研究をスムーズに連携させるため に集中研究室が設けられた。実際、集中研究室で実施された遺伝 子の多重化技術、シロイヌナズナの器官(組織)特異的遺伝子発 現制御に関する情報が応用研究を実施する企業の持ち帰り研究に フィードバックされている(王子製紙) 。 (4)運営の妥当性 概ね予定通りに進行し、計画の一部は事前に変更され検討会も有 効に機能していることから、運営は適切に行われたと評価できる。 今後は、プロジェクト全体の運営をより密接に行い、研究の進捗 70 に応じた柔軟な見直し、変更を実施することにより、早期の実用 化を目指して欲しい。 ○進捗状況を早める手段が必要(ハイブリッドファイバー生産、天 然ゴム生産) 。 ● PHBによるボード特性変化の確認について進捗状況を早めるため、 植物繊維とPHBを人工的に混合した圧縮ボードを用いて、特性の評 価試験方法の確立とPHBによる特性変化の確認実験を先行させた。 次に組換えが容易で、バイオマス成分が木本類に一部類似してい るモデル植物イネで圧縮ボード特性の評価試験を実施し、人工的 な混合物での特性変化と同様の特性変化の起こる事を実証した。 以上の結果を受けて、最終的に耐塩性樹木タマリクスでPHB合成遺 伝子によるボード特性の変化を確認した(大成建設) 。 ● トチュウへ形質転換系を重視する対応を行った(日立造船)。 ○「目標未達が明らかになった場合を含む」への対応は適切か。 ●ユーカリの遺伝子発現制御技術開発において、ユーカリからプロ モーターを単離して利用する方針に変更(変更理由:ユーカリで は草本植物に由来するプロモーターが十分に機能しないことが明 らかになった。 ) (変更後の対応状況:モデル植物の遺伝子発現制 御に関する情報を元に器官特異的発現が確認されているユーカリ のオーソログ遺伝子プロモーターを単離して、ユーカリでの検証 実験を開始した。 ) (王子製紙) (5)今後の方向性等に関する提言 個々のテーマで目指していることは推進する価値があり、全体の 方向性はこれまで通り進めてよいと思われる。残された期間の目 標は形質転換体の作出とその評価が中心であり、当初想定した目 的化合物の効果を明確にする方向で進めて欲しい。遺伝子組換え 植物の開放系での利用に関する国際的な取り決めが進行してい るため、その点を考慮した植物材料の検討等にも真剣に取り組む 必要がある。 ○残された期間での第一目標は形質転換体の作出とその評価にある。 ○実用作物での研究を推進するべきである。 ●アズキ、タバコへの遺伝子導入の優先順位を下げ、ダイズの形質 転換に注力した。その結果、形質転換ダイズを取得でき、アラキ ドン酸の生産も確認できた(サントリー)。 ●実用性を考慮して新たに設定した定量的目標「茎葉部 1gあたり 5 ユニットのフィターゼ生産」を達成するために、まず、植物にお けるフィターゼの高発現化・高生産化を最優先課題とする。目標 とする形質転換体を取得した後は、植物で生産されたフィターゼ の安定性や効果を確認するための評価試験を行なう。材料として はイネを継続して使用する一方で、実用植物として有望なサツマ イモについても効率の良い新たな形質転換法の開発、及びフィタ ーゼ導入を試みる(三井化学) 。 ○実用化の前に当初設定された効果を検証する必要がある。 ●王子製紙が実施した難溶性リン酸の可溶化研究は実用化において は海外の事業植林地でなされる。本技術開発では時間的な制約に より事業現場での実証試験には移行できない。そこで、難溶性リ 71 ン酸の可溶化研究で得られた形質転換ユーカリの能力を評価する 目的から、リン酸の難溶化が起こっている国内の酸性土壌を使用 して評価試験を実施した(王子製紙) 。 ○第一目標は形質転換体の作出と評価である。材料の選択、目標絞 り込み、計画変更など、臨機応変な対応が必要である。 ●ゴム生合成に関与する多重遺伝子の導入には至らず IPPisomerase, FPPsynthase のみの導入を行った。研究の目的をゴム生合成に絞っ て行った(日立造船)。 ○組換え体の栽培に対する問題点をクリアする必要がある。 ●工業原料植物はその生産コスト等の経済的要因から海外で栽培さ れる場合が多いと考えられる。その問題点を明らかにするため、 形質転換母材料となる非形質転換植物を候補地で試験栽培した。 形質転換植物を海外で栽培する場合、受け入れ国側の増殖技術と パブリックアクセプタンスを得るための国際協力が重要である。 今後、パブリックアクセプタンスを得るための遺伝子組換えの安 全性を確保する技術開発が必要であるが、本技術開発ではすべて の植物種、導入遺伝子に適用できる汎用性のある技術開発は研究 対象とはなっていなかった。本技術開発で研究対象とした形質転 換ユーカリは根で難溶性リン酸を可溶化する特性を獲得できるこ とから、接ぎ木により地上部を野生型、地下部を形質転換体とす ることにより、組換え遺伝子の拡散を防止する措置を講じること はできた(王子製紙) 。 ○ハイブリッドファイバーのアイデアは良いが、実際にできるか、 物性が変化するか早急に確認する必要がある。 ● 植物繊維と PHB を人工的に混合し圧縮ボード試験体を作成した。 特性解析により、PHB を混合したボードでは市販の WPC 製品と類 似の特性(力学強度と吸湿特性)変化が起こる事を確認した。最 終的には、モデル植物イネと耐塩性樹木タマリクスの PHB 合成遺 伝子導入個体由来の圧縮ボードにおいて人工的な混合物と同様の 特性変化の起こる事を実証した(大成建設) 。 4.2.2植物の環境ストレス耐性向上技術の開発 (1)成果に対する評価 概ね計画通りに進行し目標はほぼ達成しており、一部には独創性 のある研究も見られ、研究費に比しても妥当な成果である。一部 ではすでにモデル植物での形質転換体の作出に成功し、評価の解 析も進んでいる。 ○特に新規性が高いわけではなく、倫理面や安全性面を考慮しつつ、 もう少し市場性を考慮する必要がある。 ●ヒト由来の抗菌ペプチドの利用について、倫理面でのご指摘をい ただいた。本ご指摘に対しては、倫理面での制約を受けにくいも のを選定するため、他の動物由来の抗菌ペプチドについて調査お よび抗菌性能の評価を行った。この結果、ウサギ由来のものがヒ ト由来のものに比べ性能上も優れていることを見出した。本抗菌 ペプチドに構造改変を加えることによって機能改良を図り、改良 遺伝子をサツマイモに導入することによって、高い病害抵抗性を 72 示す新品種の作出に成功した(豊田中研) 。 ●市場性を考慮しました。我々はポリアミン技術は新規性が高いと 判断(東洋紡) 。 ○実用化に際して、各種形質転換体の野外大量栽培は重要な論点で あり、開発段階から環境適合性についても十分配慮する必要があ る。 ● 野外試験を想定し(環境適合性) 、環境適合性が異なるサツマイ モ品種として、高系 14 号、ミナミユタカ、コナホマレの 3 品種を 検討した(東洋紡) 。 ○豊田と東洋紡はともにサツマイモをターゲットとしているが、連 携が感じられない。 ●石川県立農短大の島田教授を中心にして、豊田、東洋紡、三井、 出光はサツマイモに関して密接な情報交換を行った。 ○ポリアミンは、今後使用するプロモーターと導入遺伝子を評価し、 最も効率的な組み合わせを検討する必要がある。 ●プロモーターは 5 種類、導入遺伝子は 3 種類検討して、最も効率 的な組み合わせ(35S プロモーターとスペルミジン合成酵素遺伝 子)を決定した(東洋紡) 。 ○工業原料生産植物に環境ストレス耐性を付与する研究が少ない。 ●環境ストレス耐性付与の研究は、先行する砂漠プロジェクトで集 中的に取り組まれていたことから、敢えて重複を避けた(新名プ ロジェクトリーダー) 。 ●工業原料生産植物としてサツマイモをターゲットにして複合環境 ストレス耐性を付与する研究を実施した(東洋紡) 。 ○他の環境ストレス耐性技術との優劣比較が必要。 ●これまでに複数の環境ストレス耐性が付与された報告は 2、3 ある が、ポリアミン技術のように低温、塩、乾燥など 7 種類の多様な 環境ストレス耐性が同時に付与された報告はなく、優位性は高い と判断(東洋紡) 。 (2)実用化の見通しに関する評価 形質転換体の作出は可能と思われ、生分解性プラスチックの原料 など食料以外の用途への使用目的であれば実用化の可能性は高 い。今後は、導入遺伝子、植物の生育に対する影響などを検討し、 効果を得るための最適条件に近づけることが望ましい。人の遺伝 子を使うことの倫理面や抗菌ペプチドを使うことによる食品へ の混入時の安全性についても、きちんとした解析を行うことが実 用化への条件となろう。 ○自然条件に近い模擬的環境下(菌や温度等)で予定通りの効果を 示すか否かを検討する必要がある。ポリアミンの生理作用につい ては過去に多くの報告が有り、実用的な栽培場面での検討が必要 である。 ● 自然条件に近い模擬的環境下としてガラス温室を用いて、実用的 な栽培場面に近い環境ストレス条件下(塩ストレス・乾燥ストレ ス)でサツマイモの栽培試験を実施した(東洋紡) 。 ○実用化のためには、遺伝子組換え体の野外栽培をするための条件 をクリアーする必要がある。そのための基礎実験が必要。 73 ● 石川県農業短期大学の島田多喜子教授と共同で閉鎖系温室レベ ルでの安全性評価実験を実施した。基礎的なデータ取得も実施し た(東洋紡) 。 ○早期実現のために、プロジェクト後半は本来の作物での研究に集 中するべきである。 ●プロジェクト後半においては、実用植物であるサツマイモへの抗 菌ペプチド遺伝子導入および発現・抗菌性能評価に集中した結果、 黒斑病に対して高い病害抵抗性を示すサツマイモ新品種の作出に 成功した(豊田中研) 。 ● プロジェクト後半はサツマイモに注力した(東洋紡) 。 ○ どの程度の抵抗性が得られるかが問題。導入遺伝子(発現レベル、 部位、時期の制御) 、また植物の生育に対する影響などを検討し、 最適条件に近づけることが必要。 ●抗菌ペプチドを植物中でどの程度の量を蓄積させたら目的の病原 菌を防除できるかの基礎知見が必要であろうとのご指摘をいただ いた。本ご指摘を受け、抗菌ペプチド遺伝子を導入したシロイヌ ナズナおよびサツマイモを作製し、抗菌ペプチド遺伝子の発現量 と病害抵抗性強度の相関について詳細に解析した。これらの基礎 データを積み重ねた結果、黒斑病に対して高い病害抵抗性を示す サツマイモ新品種の作出に成功した(豊田中研) 。 ● ストレス抵抗性、ポリアミンレベル、生育に対するプロモーター や導入遺伝子を検討し、最適な条件を決定した(東洋紡) 。 ○低温耐性に関して、短期間処理後の短期での障害は認められない が、しばらく日数が経ってからの影響調査が必須でないか。 ●サツマイモでは設備上の問題で長期に渡る低温ストレス耐性の評 価実験はできなかった。塩と乾燥ストレス耐性については実施し た(東洋紡) 。 ○環境ストレス耐性は汎用性があるように考えられるが、実用化面 ではこれまでの栽培適地や栽培法との競合もあり、栽培不適地は 栽培以外のインフラも不適であることもあり簡単でない。 ●これまでに得られた環境ストレス耐性のスペックを総合的に評価 して、野外試験や実用化を想定した栽培地域で実際に栽培可能か どうかを今後検討する予定である(東洋紡) 。 ○目標作物と目標ターゲットを明確にする必要有り。 ●目標作物はサツマイモ、目標ターゲットは複合環境ストレス耐性 を付与すること(東洋紡) 。 (3)事業体制の妥当性 いくつかの重要な成果をすでに得ていることから、事業体制は概 ね適切だと考える。今後は、サツマイモという共通のターゲット について、連携を強化して効率化を図ることが望まれる。 ○ 共通宿主であるサツマイモについて、効率的な外来遺伝子導入法 の開発が必要と思われる。関係者間の協力と共同作業が必須であ る。 ●遺伝子導入法については石川県農業短期大学との共同作業および ご指導により効率的な遺伝子導入が可能な方法および実施体制を 構築することができた(豊田中研) 。 74 ●石川県農業短期大学や各社と連携して効率的なサツマイモの形質 転換技術を確立し、実際に形質転換サツマイモを取得した(東洋 紡) 。 ○東洋紡の事業体制は十分と言えない。 ●三重大学と石川県農業短期大学と連携して研究を進め、豊田中研 とは密接に情報交換を行った(東洋紡) 。 ○得られた低温耐性関連遺伝子を出来るだけ早くサツマイモにも導 入し、機能を検討する必要があったのではないか。 ●低温耐性遺伝子をシロイヌナズナだけでなく、工業原料植物とし てサツマイモにも導入し、種々の環境ストレス耐性の向上を確認 した(東洋紡) 。 ○植物の環境ストレス耐性に関する研究は多数行われている。この プロジェクトの特徴が必要である。 ●環境ストレス耐性に関する研究は、指摘の通り多数ある。このプ ロジェクトでは各工業植物(ユーカリ、サツマイモ)に求められ るストレス耐性に注力した。 ●工業原料植物であるサツマイモに環境ストレス耐性を付与した研 究はこれまでに無く、極めて新規性が高い研究である(東洋紡) 。 ○環境ストレス耐性植物の事業とは基本的に種苗ビジネスになろう。 その意味で事業体制は不十分ではないか。 ●育種事業を持っていないため、今後は育種事業を保有する企業と 共同で実用化を目指したいと考えている(東洋紡) 。 (4)運営の妥当性 研究の進捗状況、得られた成果、計画変更が行われたこと、など から見て、運営は妥当に行われたと評価できる。 ○倫理面や人への安全性について担当者間、リーダー等と議論する 必要がある。 ●中間評価以降、プロジェクトそれぞれについて分科会等において 十分な議論を重ねた。 ●プロジェクト内で検討した(東洋紡) 。 ○当初計画では、実用化実現時期が不明だが、テーマ間、奈良先端 大、RITE との連携が必要。 ●テーマ間では、サツマイモで豊田、東洋紡、三井、出光は情報交 換を行っている。奈良先端大の翻訳効率促進配列は三井化学に提 供し、十分な成果を収めた。 ●これまでも奈良先端大や RITE との連携や情報交換を行ってきた。 今後も情報交換を密接に行っていきたい(東洋紡) 。 ○環境ストレス耐性は作物、栽培地域で必要になる特性が異なる。 ターゲットを明確にし、それに対応するバイオアッセイ系をつく ること。 ●これまでに得られた環境ストレス耐性のスペックを総合的に評価 して、野外試験や実用化を想定した栽培地域で実際に栽培可能か どうかを今後検討する予定である(豊田、東洋紡、出光) 。 (5)今後の方向性等に関する提言 個々のテーマで目指していることは推進する価値があり、全体的 な方向性は特に問題ない。今後は、工業原料生産植物にストレス 75 耐性を付与することに研究の重点を移し、実用的な課題を解決し ていくことを望みたい。 ○遺伝子組換え生物の育成や開放形利用には倫理面や人への安全性 確保が重要課題である。十分に考慮が必要。 ●これまで倫理面や人への安全性を十分考慮して研究を進めてきた。 今後も、十分に考慮して実用化の検討を行っていきたい(東洋紡) 。 ○技術要素の第一目標は、植物の形質転換体の作出と選抜、その評 価である。これらの成就に向けて研究資源を振り向ける必要があ る。 ●中間評価以降、集中研への研究資源を実用化を目指す企業に振り 向けた。 ●ユーカリの形質転換体作出に成功し、目標を達成した(王子) 。 ●工業原料植物であるサツマイモの形質転換技術を確立して、種々 の環境ストレス耐性を付与したサツマイモを作出することができ た(豊田、東洋紡、出光) 。 ○実用植物での研究推進が必要である。 ●実用植物としてサツマイモで研究を推進した(東洋紡) 。 ○耐病性、耐冷性をこれらの遺伝子導入だけで実用レベルに高める には限界があると思われる。他の原理(機構)を通じた改良も併 せて検討する必要があろう。 ●これまでに得られた環境ストレス耐性のスペックを総合的に評価 して、野外試験や実用化を想定した栽培地域で実際に栽培可能か どうかを今後検討する予定である。必要と判断されれば他の原理 (機構)も検討したい(東洋紡) 。 ○ポリアミンと環境ストレスに関して、乾燥及び凍結ストレス処理 後、ある日数の生存は示されているが、その後の回復への有効性 はどうか。 ●サツマイモでは長期間に渡って塩と乾燥ストレス耐性の評価を行 い、最終的には塊根(イモ)収量が形質転換サツマイモでは高ま ることを確認した(東洋紡) 。 ○工業原料生産植物にストレス耐性を付与することに研究の重点を 移すのが望ましい。 ● 工業原料植物であるユーカリ、サツマイモの環境ストレス耐性を 付与する研究に注力した(王子、豊田、東洋紡、出光) 。 4.2.3植物への多重遺伝子導入技術及び発現制御技術の開発 (1)成果に対する評価 いずれのプロジェクトも当初計画の目標をほぼ達成している。多重 遺伝子連結技術や葉緑体での超高発現の成功等は新規性、汎用性も あり、国際水準からみても優れた成果をあげている。また、葉緑体 形質転換については、特許性はないものの発現レベルは世界最高水 準といえる。今後は応用研究への適用が重要な課題であり、多重遺 伝子を本プロジェクトの対象植物にきちんと導入できることを早 急に示すことが求められる。 ○多重遺伝子を対象植物にきちんと(リアレンジメントや小断片の 挿入がなく)導入できることを早急に示すことが重要である。遺 76 伝子組換え植物の安全性評価上極めて大きな問題である。 ●ユーカリに多重遺伝子導入を行った。導入状態の詳細な解析は今 後の課題である。モデル植物に関しては多重遺伝子導入シロイヌ ナズナの作製、解析を行い、きちんと遺伝子導入された個体を選 別することが重要であることを確認した(王子製紙、集中研) 。 ○基礎的成果は応用研究に結びつける必要があることから、応用研 究課題で要求の強い成果を中心に、集中的に遂行される必要があ る。 ● 多重遺伝子導入技術に関しては、中間評価までに 7 遺伝子連結、 平成 13 年度末までに 10DNA 断片連結が可能な技術を開発した。さ らに平成 14 年度には複数の連結 DNA のバイナリーベクターへの導 入系を開発した。これら成果により、王子製紙と共同し、ストレ ス抵抗性遺伝子群の多重連結を行った(集中研) 。 ● プロモーターカタログについては形式の完成が 15 年度末になっ たが、マイクロアレイおよびプロモーター解析研究の最新成果は その都度、作業分科会や個別の機会を通じて各応用研究グループ に情報提供を行っており、王子製紙などのグループへは実際にプ ロモーターの提供を行い応用研究が進んでいる(集中研) 。 ● シロイヌナズナの cDNA マイクロアレイ解析から、葉、根特異的 発現遺伝子を約 80 個同定し、それぞれのプロモーター機能をレポ ーター遺伝子に連結し、シロイヌナズナに導入した。現在、葉、 根特異的発現プロモーターを各 50 個解析しているが、組織、生育 時期での発現を明らかにし、実用植物に応用できるよう、データ を整備している(新名プロジェクトリーダー) 。 ● レギュロンにより一連の遺伝子発現を制御する系は今後有用で あると考え、タバコにカフェインを蓄積させる実験で実証した。 カフェインは昆虫忌避活性があり、それをタバコで証明した(新 名プロジェクトリーダー) 。 ● カフェイン生合成遺伝子群を取得・解析することに集中的に取り 組み、RNAi 法でカフェイン含量の低下した形質転換コーヒーを作 出した(新名プロジェクトリーダー) 。 ○研究費が高額な割に、原著論文、口頭発表が少ない。特許が少な いものが多い。 ●中間評価後、論文 3 報を発表し、口頭発表 8 回行い、特許 3 件を 出願した(集中研多重遺伝子) 。 ●中間評価以後に論文 4 報、学会発表 7 件などの成果発表を行って いる。特許についても準備中である(集中研プロモーター) 。 ●論文発表、特許出願に努力した。 ○企業への技術の提供を早期に行うために、スピードアップを図る 必要がある。 ● 多重遺伝子導入技術では、スピードアップを図り、平成 13 年度 末までに 10DNA 断片連結が可能な技術を開発し、さらに平成 14 年度には複数の連結 DNA のバイナリーベクターへの導入系を開発 した。これら技術をストレス抵抗性遺伝子群の多重連結という形 で、王子製紙に提供した(集中研多重遺伝子) 。 ● 王子製紙、三重大などのグループと連携して、ユーカリ、タバコ 77 などの実用植物での応用研究が進んでいる (集中研プロモーター) 。 ○ターゲットにしている植物への応用を早急に開始することが必要。 ●シロイヌナズナの根特異的発現プロモーターをユーカリの根で応 用する実験を早速行ったが、ユーカリでは機能しなかった。 ●翻訳効率を上げるタバコの ADH 遺伝子の 5’UTR はフィターゼ生産増 大、サツマイモの抗菌ペプチド生産増大に応用した。 ○トランス因子の遺伝子の発現を制御して代謝系の制御を行う研究 も必要である。 ●転写制御因子の網羅的解析は本プロジェクトに遅れてスタートし た PM プロジェクトで実施することにし、現在進行中である。 ○マイクロアレイ技術は既存のもので、塩ストレス誘導遺伝子の同 定・解析は他グループが実施している。特徴ある研究が必要。 ●物質生産など応用に最も身近であると考えられる器官特異的に高 発現する遺伝子およびプロモーターをターゲットとした。また単 なる遺伝子配列情報の収集ではなく、安定発現体植物シリーズを 作出することにより、種々の環境条件下での植物体内での発現を レポーター遺伝子を指標に精密に解析可能とした点が特徴である (集中研) 。 (2)実用化の見通しに関する評価 この基礎研究の完成度を一層高めるとともに、工業原料生産植物へ の適用を示すことが出来れば、十分な実用可能性があると考えられ る。今後は、特許を取得しつつ広く発表することにより、実用的な 利用の場面を明確にして欲しい。残された期間、応用研究課題への 成果の転用を考慮に入れ、当面有効と考えられる導入技術、有用プ ロモーター、トランス因子の同定と利用、高効率発現系などのモデ ル系を早急に提示することが望ましい。 ○開発された技術が多い割には特許取得(出願も含め)が少なく、 論文発表や口頭発表も少ない点が問題である。 ● 中間評価後、論文 3 報を発表し、口頭発表 8 回行い、特許 3 件を 出願した(集中研多重遺伝子) 。 ●中間評価以後に論文 4 報、学会発表 7 件などの成果発表を行って いる。特許についても準備中である(集中研プロモーター) 。 ○残された時間、応用研究課題への成果の転用を考慮に入れ、当面 有効であると考えられる導入技術、有用プロモーター、高効率発 現系などのモデル系を早急に提示すべきである。 ● 多重遺伝子導入技術を用い、シロイヌナズナにストレス抵抗性遺 伝子群を導入し、それらを解析することにより、導入遺伝子が後 代でも安定に発現することを示した。また、プロジェクトの対象 植物であるユーカリへの多重遺伝子導入も行った(集中研) 。 ●物質生産など応用に最も身近であると考えられる器官特異的に高 発現する遺伝子およびプロモーターを中心課題とした(集中研) 。 ● 有用プロモーターは形質転換シロイヌナズナでの組織、期間特異 的発現プロファイルまで行うため、時間がかかっている。ユーカ リで一部は検証したが、シロイヌナズナのプロモーターは木本植 物では機能しないことが解った。そこで、ユーカリにはユーカリ のプロモーターを利用するように方針を変更した。シロイヌナズ 78 ナのプロモーターも草本植物では利用できると考え、形質転換シ ロイヌナズナでの発現解析を続行した(新名プロジェクトリーダ ー) 。 ●翻訳効率を上げるタバコの ADH 遺伝子の 5’UTR はフィターゼ生産増 大、サツマイモの抗菌ペプチド生産増大に応用した(新名プロジ ェクトリーダー) 。 ○導入する DNA のサイズと、導入効率や個々の遺伝子発現の確実性 との関係の解明が必要。 1)シロイヌナズナライブラリーには誘導性遺伝子群が含まれにくい。 ● このライブラリーは均一化ライブラリーであり、できるだけ多く のプロモーターを単離することを目的にしている。誘導性プロモ ーターに焦点を当てずに、器官特異性を主としている。別途、こ のライブラリーから塩誘導性プロモーターを18個単離している ので、必ずしも誘導性遺伝子群が少ないとは思えない(新名プロ ジェクトリーダー) 。 2)単子葉植物体での Ars インシュレーターの効果の解析 ● 非着手(新名プロジェクトリーダー) 。 3)葉緑体からのタンパク質(有用物質)精製技術の開発 ●非着手。葉緑体分画をすれば、細胞全体から精製するより楽な場 合があることが予想される。葉緑体の分画技術はあるので、必要 な時には適用することでいいと思われる(新名プロジェクトリー ダー) 。 ○連結した遺伝子の後代での安定性確認が研究実施期間内に可能か。 ●多重遺伝子導入技術により連結しシロイヌナズナに導入した遺伝 子群に関しては、後代(T3)においても安定に保持され、発現し ていることを確認した(集中研) 。 ○葉緑体の形質転換を知的財産として形成してほしい。 ●プロジェクト内では特許出願はできなかったが、別途、奈良先端 大では、葉緑体に導入したカルビンサイクルの律速段階の遺伝子 の葉緑体への導入により光合成活性が 80%増大した結果を特許出 願した(新名プロジェクトリーダー) 。 (3)事業体制の妥当性 集中研究室方式で行うことが適切であるとともに、集中研究室と他 の研究機関との連携も取られていることから、研究推進上の体制は 適切であると評価できる。今後は実用化の可能性を高めていくため に、応用テーマとの連携をさらに深め、技術移転や実用的利用を強 く推進することが求められる。 ○本課題で開発された技術の実用化の可能性を探るため、他の実用 化を目指す課題担当者への技術移転や実質的利用を強く推進する 必要がある。 ● 多重遺伝子導入技術を、王子製紙が遂行しているストレス抵抗性 ユーカリの作出に応用した(集中研) 。 ● 王子製紙、三重大などのグループと連携して、ユーカリ、タバコ などの実用植物での応用研究が進んでいる (集中研プロモーター) 。 ● 世の中の遺伝子組換え植物への強い逆風により、実用化を目指す 企業が少なくなっているため、技術移転は進んでいないのが現状 79 である。PM プロジェクト参加企業には一部、技術移転を行ってい る(新名プロジェクトリーダー) 。 ○今後、応用課題への適用を考慮して、早期の成果の具体化と、応 用面での研究者との一体的開発が要求される。 ●多重遺伝子導入技術では、中間評価までに 7 遺伝子連結、平成 13 年度末までに 10DNA 断片連結が可能な技術を開発した。さらに平 成 14 年度には複数の連結 DNA のバイナリーベクターへの導入系を 開発した。これら成果により、王子製紙と共同し、ストレス抵抗 性遺伝子群の多重連結を行った(集中研) 。 ○超多重遺伝子連結および有用プロモーターの単離のプロジェクト は研究費の割に事業体制が不十分である。研究のスピードアップ のためにも、コストに見合った体制が望まれる。 ●多重遺伝子導入技術の開発体制として、研究の重点を多重遺伝子 連結技術に置くことにより、スピードアップを図った(集中研) 。 ●超多重遺伝子連結は現体制で研究期間内に連結効率を改善し、30 遺伝子連結まで達成した。 ●有用プロモーターの単離は奈良先端大の博士課程学生 2 名の研究 テーマにも取り上げ、1 名はすでに学位を取得し、成果を上げてい る。 ○企業間との連携が明確でない。 ●多重遺伝子導入技術の技術提供の形で、王子製紙との連携を取っ た(集中研) 。 ●説明が不足していたが、連携は図られている(新名プロジェクト リーダー) 。 ○工業原料生産植物の開発を行っている研究グループへの協力強化。 ● 2001 年スタートの PM プロジェクトと密接な連携を行っている (新名プロジェクトリーダー) 。 ○今後も奈良先端大集中型で良いか。 ●奈良先端大だけではスペースも不足である。2001 年スタートの PM プロジェクトでは集中研をかずさ DNA 研に置いた。 (4)運営の妥当性 集中研究室方式、委員会が機能しており、計画の見直しも実施され ていることから、運営は適切に行われていると評価できる。今後、 早期に応用研究課題と成果を共有するためにも、研究の絞り込み、 人的・経済的資源の集中、RITE の研究と企業の連携も強化を図るこ とが望まれる。 ○今後、早期に応用研究課題と成果を共有するためにも、研究の絞 り込み、人的・経済的資源の集中が要求される。 ● 研究の重点を多重遺伝子連結技術に置いた(集中研) 。 ● 物質生産など応用に最も身近であると考えられる器官特異的に 高発現する遺伝子およびプロモーターを中心課題とした (集中研) 。 ● 中間評価以降、企業の課題ごとに研究を絞り込んだ。プロジェク ト後半は集中研の基盤研究を圧縮し、企業の実用化研究に重点を 移した(新名プロジェクトリーダー) 。 ○企業における実用化研究の早期かつ高いレベルでの実現のために、 スピードアップを図り、成果を企業に供与するよう努める必要が 80 ある。 ● 研究の重点を多重遺伝子連結技術に置くことにより、スピードア ップを図り、王子製紙に技術提供した(集中研) 。 ● 集中研の成果を王子製紙(多重遺伝子連結、プロモーター) 、サ ントリー(多重遺伝子連結、大豆プロモーター) 、三井化学(翻訳 促進配列) 、を供与した。東洋紡、日立造船はそれぞれ再委託の大 学と連携して成果を上げている。RITE の葉緑体工学は、実用植物 ではまだ適用できる段階に至っていない(新名プロジェクトリー ダー) 。 (5)今後の方向性等に関する提言 全体的な方向性は適切で、このまま推進させることが望ましい。今 後は、より実利用に近いモデル実験の実施などが求められる。応用 研究グループと一層連携を強め、応用研究への早期適用を目指して 欲しい。 ○残された時間内で、各要素技術は応用研究に貢献できるような、 最良なベクター、プロモーターなどを構築する。 ● 多重遺伝子連結に必要となる DNA 断片、ベクターを開発した。ま た、連結した遺伝子群をバイナリーベクターに複数個導入するた めに必要な DNA 断片、ベクターを開発した。さらに、導入遺伝子 発現を安定化する改良 TAC ベクターを開発した(集中研) 。 ● 多重遺伝子導入ベクターを企業研究に提供した。プロモーターは 機能解析が完了していないので、プロジェクト終了後に各社、機 関で活用されることを希望している (新名プロジェクトリーダー) 。 ○モデル実験も、実用作物あるいはそれに近いものを用いて、実際 の利用に近い形での研究が望まれる。 ● 多重遺伝子導入技術のモデル実験にはシロイヌナズナを用いた が、ユーカリにおいても多重遺伝子導入を行うところまで行った (集中研) 。 ● 各社、基礎データはモデル植物で行い、研究期間内に実用作物で 実証した(新名プロジェクトリーダー) 。 ○RNAi、カフェインレスコーヒーは早く目的植物へ適用する必要が ある。 ● RNAi はユーカリ、大豆に適用した。カフェインレスコーヒーはコ ーヒーノキで幼植物ながら、葉のカフェイン含量が低下したこと を示した。着果には期間が必要で、プロジェクトを延長して実施 している。平成 16 年 4 月設立したベンチャー企業、植物ハイテッ ク株式会社で事業化を検討している (新名プロジェクトリーダー) 。 ○二次代謝系の網羅的解析、メタボロームが必要ではないか。 ●本プロジェクトではメタボローム解析を対象にしていなかったが、 植物もポストゲノム時代に入り、 2002 年スタートの PM プロジェク トではこれを中心に据えた植物による工業原料生産技術開発を行 っている(新名プロジェクトリーダー) 。 81 5.評価に関する事項(中間・事後評価の評価項目・評価基準・評価手法 5.評価に関する事項(中間・事後評価の評価項目・評価基準・評価手法 および実施時期 本プロジェクトは平成 11 年 10 月に開始したもので、平成 13 年 12 月に 第一回目の中間評価を受けた。この評価結果をふまえてさらに2年強の研 究開発により最終目標を達成し、今回第二回目の中間評価に臨む。なお、 一部の研究課題については事業化・実用化の可能性が高いとみなし、さら に2年間研究を延長するため、今回の中間評価は一部研究課題を除いて、 実質の事後評価となる。なお、個々の研究課題については研究開発全体の 統一性、個々の研究開発の進捗状況に合わせた年2回の研究開発委員会で の審議評価のうえプロジェクトリーダーの指導のもとに研究経費の重点配 分を行い最大の研究成果を上げるよう努めている。 82 III.研究開発成果について III.研究開発成果について 1.事業全体の成果 事業全体の成果 本事業は工業原料を生産できる植物の開発を目的に、植物代謝利用技術、 環境ストレス耐性向上技術、多重遺伝子導入技術及び発現制御技術、の 3 分野の開発研究を並列で行ってきた。対象の植物、遺伝子、生産物は多岐 にわたっており、全体を纏めて成果を論じるのは適切ではなく、それぞれ の成果は8.2で述べる。 特筆すべき具体的成果は、ユーカリ事業品種への遺伝子導入技術の確立 と酸性土壌耐性固体の作出、超長鎖不飽和脂肪酸を異種植物で数%蓄積させ た成果、ハイブリッドファイバーの有用性確認、複雑なポリイソプレンの 生合成中間体の実植物での同定と解析、分子進化手法による抗カビ活性の あるタンパク質の創成、ポリアミン代謝工学による複合ストレス耐性植物 の創出、 葉緑体工学によるタバコ葉の可溶性タンパク質の 38%を占める外来 タンパク質の蓄積、固相法による迅速・簡便な遺伝子多重連結技術の開発、 シロイヌナズナの発現遺伝子の約半分を固定したマイクロアレイ、などが ある。 研究体制面では、バイオテクノロジー開発技術研究組合に参加企業が参 集し、プロジェクトリーダーのもとに有機的な研究体制を組んだ結果、当 初の予想以上の成果を上げることに繋がったを思われる。特に奈良先端科 学技術大学院大学に集中研究室を設置し、企業派遣研究員、博士研究員、 NEDO 派遣産業技術養成技術者が、大学教官と密接な連携を保ちながら研究 企画、実施、成果の評価を行っている点は特筆に値する。これらの成果は 発足時から 2 週間に 1 回行っている研究討論会を指導している、奈良先端 大の助教授グループに負うところが大きい。また年間 5∼6 回開催する分科 会には第一線の植物分子生物学者が揃い、適切かつ前向きな意見、助言も 貴重である。さらには実験室、研究員室を提供し、多くの便宜を図ってい ただいている奈良先端科学技術大学院大学 先端科学研究調査センター、 大学事務局の存在も大きい。参加企業、大学との有機的連携の結果、大学 から企業への遺伝子・技術の提供、企業間の協力も活発である。 本研究プロジェクトを契機に、わが国において、植物代謝工学が認知さ れ、また持続可能な社会・地球再生に植物バイオテクノロジーの重要性が 認識され、社会的インパクトも与えたことも総合的な成果である。 ・論文発表、口頭発表、知的所有権、マスコミ報道等 本プロジェクトの成果はバイオテクノロジー開発技術研究組合での定例 シンポジウムをはじめとして学会、学術文献等でも積極的に報告し広く知 見が行き渡るよう広報活動に努めている。また、知的所有権に係る成果に ついては積極的に特許出願し研究成果の産業利用の準備をしている。 実績(平成 13 年 10 月以降 16 年8月現在) 特許出願 39 件、論文発表 97件、口頭発表 196 件、新聞等報道 19件(特許、論 文等リストは事業原簿参考資料1を参照) 。なお、新名惇彦、吉田和哉監修:植物代謝工学ハ ンドブック. エヌティーエス(2002 年 6 月)および新名惇彦編:特集 地球再生へ向けた植物バイ オ. BIO INDUSTRY, 9 (2002)をプロジェクト参加者が中心になって刊行した。また植物による 工業原料生産技術の開発:NEDO プロジェクトの概要(日本農芸植物学会誌)も 刊行した。 83 2.研究開発項目毎の成果 研究開発項目毎の成果( 研究開発項目毎の成果(公開版) 公開版) ・研究開発項目毎の概要 (省エネルギー型工業原料生産に適した多年生工業原料植物の創成) (王子製紙株式会社) 研究成果 成果の概要 ユーカリの遺伝子組換えによる工業原料植物の創成 1) ユ ー カ リ 形 質 転 換 のためには、効率的な形質転換技術が必要となる。プ 技術開発 ロジェクト前半(平成 13 年 10 月以前)に熱帯性のユー カリであるカマルドレンシス種(E. camaldulensis)、亜 E.grandis×E.urophylla) 熱帯性のユーカリ交雑種( ユーカリ事業用 ・ 5 樹種での形質転換 温帯性のダニアイ種( E.dunnii)で形質転換系の開発 系の開発に成功した に成功してきた。平成 13 年 10 月以降に温帯性のグラ ンディス種( E.grandis )とグロブラス種( E. globulus ) ・ ユー カリの形質 について検討した。グランディス種は形質転換効率の 転 換 系 の 開 発 で 苗 高い個体選抜に加え、苗条原基を誘導する培養にお 条 原 基 形 成 が 有 効 いて2種のサイトカイニンを組み合わせて培養すること 手段となることが明ら により形質転換植物体が得られた。グロブラス種はパ かとなった ルプ適性に優れていることから温帯に広く植栽されて いるが、発根性が問題となっており、1)発根性に優れ た個体を組織培養に利用すること、2)同個体あるいは 実生胚軸を材料として植物ホルモン条件等の培地組 成の検討、光条件等の物理的培養条件の検討を行 い、形質転換苗条を獲得した。研究対象としたユーカリ 5樹種すべてが苗条原基形成を経由する形質転換技 術が適用できることが明らかになった。 形質転換植物において目的遺伝子を植物に余分な 2) 遺伝子発現制御シ 負荷をかけることなく発現させることは、自然環境に適 ステム開発 応できる工業原料植物を開発する上で重要である。こ こでは工業原料植物ユーカリの樹幹および根で特異 ・ 樹 幹 特 異 的 発 的発現させる遺伝子発現制御システムを開発する。プ 現プロモー ターをユ ロジェクト前半にユーカリ樹幹(木部)で特異的発現が ーカリで検証している 期待できる 3 遺伝子(WIP 遺伝子:傷害誘導遺伝子との 相同性、CesA 遺伝子:セルロース合成、Xyl 遺伝子:ヘ 草 本 植 物 に 由 ミセルロースの分解)をノザン解析等によって絞り込ん ・ 来する根特異的発現 だ。14 年度からはプロモーターを含む領域をユーカリ プロモーターはユー のゲノムライブラリーから単離し、シロイヌナズナ、イネ、 カリでは機能しない ユーカリにおける機能解析を行った。WIP プロモーター 領域(約 2kb)を GUS 遺伝子と接続して、形質転換シロ ユ ー カ リ か ら イヌナズナ、イネ、ユーカリを作出したが、草本植物とユ ・ PHT1 オーソログ遺伝 ーカリ幼植物体では GUS 発現を検出できなかった。ま 子のプロモーター候 た、Xyl プロモーター候補領域(2.4kb)を GUS 遺伝子と 補領域を単離した 翻訳レベルで融合させ、プロモーター機能の解析を継 続している。また、ユーカリでの根特異的発現が期待で 84 きるシロイヌナズナ由来リン酸トランスポーター PHT1 遺 伝子、タバコ由来アルコール脱水素酵素 ADH 遺伝子の プロモーターをシロイヌナズナ、イネ、ユーカリでプロモ ーター機能を解析した。草本植物では高発現する両遺 伝子はユーカリではほとんど発現しないことが明らかと なった。これらのことから、ユーカリから PHT1 オーソログ 遺伝子を単離する方針変更を行い、ユーカリのゲノム ライブラリーから候補となるプロモーター候補領域を単 離し、塩基配列の決定を行った。さらに、プロモーター 候補領域(約 2kb)を GUS 遺伝子と接続して、形質転換 ユーカリの作出を継続して行っている。 事業植林ユーカリ樹種に (1)難溶性リン酸の利用効 3) 多重遺伝子の導入 率向上、(2)活性酸素消去能力の向上を目的とする多 と評価 重遺伝子を導入して、その効果を評価した。 (1)難溶性リン酸の利用効率向上 プロジェクト前半に植物に難溶性リン酸を可溶化する ・ CS 遺伝 子 の過 剰発 現と、NADP-ICDH 遺伝 能力を付加するためには、根におけるクエン酸の蓄積 子 の 発 現 抑 制 が 難 溶 量を高める代謝を制御することが有効であることが示唆 性リン酸の利用効率向 された。そこで、14 年度からミトコンドリア型クエン酸合 上に関与することをシ 成酵素(CS)遺伝子を過剰発現させる方法と、細胞質で のクエン酸分解に関与するイソクエン酸脱水素酵素 ロイヌナズナで証明 (NADP-ICDH)遺伝子の発現を RNAi で抑制する方法で ・CS 過剰発現ユーカリ アプローチした。シロイヌナズナで CS 遺伝子を過剰発 ではクエン酸放出量が 現、あるいは NADP-ICDH 遺伝子の発現を抑制した形質 増加し、酸性土壌でも 転換体を作出した。得られた形質転換体は対象酵素 リ ン 含 量 の 低 下 は な の代謝制御により、クエン酸放出量が増大して難溶性 く、根の重量が増加す リン酸を含む栽培で成長量の増大(酸性土壌耐性)を る 生 育 改 善 効 果 が 認 検証できた。 められた モデル植物で得られた結果から、ユーカリ交雑種に ・katE 過剰発現ユーカ それぞれの難溶性リン酸可溶化遺伝子を導入した。シ リは活性酸素消去能が ロイヌナズナと同様に CS 過剰発現ユーカリでも CS 活性 強 化 さ れ て い る こ と を とクエン酸放出量の増加が確認できた。そこで、 CS 過 剰発現ユーカリを酸性土壌条件の水耕栽培を行ったと 確認した ころ、野生型よりもリン含量が増加しており、リン吸収が 改善されたことが示唆された。この効果を土耕栽培で 検証するため、CS 過剰発現ユーカリを酸性土壌で栽培 したところ、野生型と比較して根の重量増加が顕著で あり、ユーカリにおいても CS 過剰発現は酸性土壌での 生育を改善させる効果があることが示唆された。さら に、根におけるクエン酸放出量を高める代謝制御の別 法として、ユーカリ根で発現している NADP-ICDH 遺伝子 をユーカリ根 EST から単離し、その遺伝子発現を RNAi で抑制する検討を行ったところ、野生型の ICDH 活性の 半分以下に低下した ICDH 抑制ユーカリを得た。これら の形質転換体の有機酸代謝および生育特性の調査を 85 継続している。 (2)活性酸素消去能力の向上 ストレス耐性ユーカリの作出を目的として、ユーカリの 活性酸素消去能の強化を試みた。ユーカリに対し大腸 菌由来のカタラーゼ(katE)遺伝子を導入し、カタラー ゼを葉緑体に蓄積させた。katE 過剰発現ユーカリは活 性酸素発生剤であるメチルビオローゲン処理に対する 耐性が向上し、活性酸素消去能が強化されていること を確認した。 形質転換ユーカリを事業環境に植栽するためには、 4) 形 質 転 換 ユ ー カ リ 交配が懸念される植物への遺伝子の伝搬を防止する の実用化試験 措置が必要となる。そのため組換え遺伝子の拡散を抑 ・形質転換体の接ぎ木 制する技術開発として、接ぎ木法を利用して地下部に を実施 酸性土壌に耐性を与える遺伝子(CS 遺伝子)を持ち、 地上部が野生型となるキメラ植物体を作出した。また、 ・形質転換母材料のベ トナムでの環境適応性 形質転換母材料となるユーカリ樹種カマルドレンシス 種とユーカリ交雑種のベトナムでの環境適応性試験を 試験を実施 実施して、将来的に形質転換ユーカリの隔離圃場試験 が実施できる体制にあることを確認した。 86 (高度不飽和脂肪酸生産大豆の研究開発) (サントリー株式会社) 研究成果 1) 脂肪酸合成遺伝子 群単離 ・ゼニゴ ケから高 度 不 飽 和 脂肪 酸生 産 に必 要な酵素の遺伝子群 を取得した。 2) 植物の脂肪酸改変 ・ミヤコグザでγ-リノ レン酸を生産。 ・アラキドン酸を生産 するベクターを構築 し、ダイズ、タバコに 導入。 ・ダイズの形質転換系 を確立し、ダイズ種子 の脂肪酸組成を改変。 取得。 1-アシルグリセロール -3- リ ン 酸 ア シ ル 基 転 移酵素遺伝子を利用 して脂肪酸量を増加 成果の概要 ゼニゴケからΔ6不飽和化酵素、Δ6 不飽和化酵素、 鎖延長酵素の遺伝子を取得した(京都大学福澤研究 室)。 ・Δ6不飽和化酵素遺伝子を構成的に発現するベクタ ーを構築し、ミヤコグサ(マメ科モデル植物)に導入。ミ ヤコグサでもγ-リノレン酸の生産が認められた。次の 世代でもγ-リノレン酸の生産が認められた。 ・アラキドン酸生産のために、Δ6不飽和化酵素遺伝 子、鎖長延長酵素遺伝子、Δ5不飽和化酵素遺伝子 を多重連結したバイナリーベクター(計7種で種子特異 的プロモーター、構成的プロモーターの両者を使用) を構築し、これらをタバコ、アズキに導入した。また、 Mortierella の遺伝子を用いたダイズ用の多重連結 ベクターを構築し(計16 種)、γ-リノレン酸、ジホモγリノレン酸、アラキドン酸を種子で生産するダイズを取 得した(特許出願済み)。 ・再現性よくダイズの形質転換ができるようになった。遺 伝子導入から形質転換体取得まで約 5 ヶ月。 ・アラキドン酸を生産する胚を取得。ここから再分化した 植物体の種子でもアラキドン酸が生産されていた。本 プロジェクトの目的を達成できた。 ・ダイズ発芽種子へアグロバクテリウム法による遺伝子 導入を開始。PCR で導入遺伝子の存在を検出した。 (東北大学亀谷研究室) ・Mortierella 1-アシルグリセロール-3-リン酸アシル 基転移酵素遺伝子を導入したタバコの葉ではトリアシ ルグリセロール量が約9.6倍に増加した。 87 ・ダイズのΔ12 不飽和化酵素遺伝子を RNAi で抑制す るベクターを構築し、ダイズへ導入した。導入した形質 転換体種子でαリノレン酸量の低下が見られたが、確 認のためには次世代を解析する必要がある。 ・新規、既知合わせて15種類のプロモーターをダイズ ・種子特異的ダイズプロモ から取得し、そのうち6種類について形質転換シロイヌ ーターを取得し、組換え植 ナズナで評価した。グリシニン、オレオシン B、スクロー 物で評価。 ス結合タンパク質由来の3種類のプロモーターで種子 特異性を確認できた。 ・大豆から取得したグリシニン、オレオシン A プロモータ ーにルシフェラーゼ遺伝子を連結したコンストラクトを 大豆へ導入(東京大学高野研究室)。 3) 遺伝子発現制御シ ステム開発 ・RNAi によるダイズ内 在性代謝経路の抑制 88 (耐塩性植物でのハイブリッドファイバー(ポリ<(R)-3-ヒドロキシブチレート>充 填繊維細胞)の生産技術開発) (大成建設株式会社) 研究成果 成果の概要 1) 耐塩性植物の遺伝 1-1)Ralstonia eutropha 由来の PHB 合成遺伝子 phbB と phbC を単独または、2 つを多重化した発現ベク 子組換え系の確立 ターを作出(合計5種)。モデル植物イネでベクターの PHB 合 成 遺 伝 子 群 の 性能評価を行い、ゲノム PCR による導入と RT-PCR によ 発現ベクターの構築と る発現、タンパクへの翻訳を確認した。 耐塩性樹 木タマリクス 1-2)耐塩性植物のシロザとタマリクスで多芽体再分化 の 遺 伝 子 導 入 系 の 確 系を確立。多芽体への遺伝子導入にアグロバクテリウ ム法が有効で、タマリクスへの導入効率が比較的高い 立。 ことを見い出した。耐塩性樹木タマリクスに絞って検討 を継続し、生体での発現観察が可能な intron-sGFP マ ーカーを利用した導入組織の選別と薬剤選抜による形 質転換部位の培養維持方法を確立し、PHB 遺伝子群 を導入した。 2-1)イネとタマリクスの組換え体で PHB 蓄積量を調査し 2)塩ストレス下でのハ た。通常の蓄積量は 0.1%と微量であったが、基質を外 イブリッドファイバー生 から与えると 1〜4%へ増大し、遺伝子は正常に機能す 産評価 ると考えた。組換えイネから圧縮ボードを作成し、ボー ドの示差操作熱量分析結果から、PHB の微量蓄積によ 組換え体での PHB 蓄積 るボードの質的転換が示唆された。 の 確 認 と 塩 ス ト レ ス 下 2-2)タマリクス非組換え個体の真水・海水栽培を行い、 でのファイバー性能評 ボードを作成した。真水と海水で、成形やボード特性に 大きな差は認められず、塩ストレス下でのファイバー生 価 産は可能と考えた。 3-1) PHB 混合繊維からボードを作成し、特性(熱、力 3)ハイブリッドファイバ 学、吸湿、電気)を調査。既存の工業製品 WPC に近い ーを用いた圧縮ボード 特性変化(力学強度増大と吸湿性低下)を PHB がもたら 試作 す事を見い出した。 3-2) PHB を蓄積したイネとタマリクスの組換え体のボー 圧 縮 ボ ー ド の 製 作 と ドで特性を評価した結果、混合繊維と類似の特性変化 PHB 蓄積によるボード を確認した。特性変化の程度は、PHB 蓄積量に必ずし も依存しない場合もあり、微量蓄積で強度の増大と吸 特性変化の実証 湿性の低下が認められた。このように、PHB 合成遺伝子 を用いて、圧縮ボードへ新規性能を付与できる事を実 証し、耐塩性植物でのハイブリッドファイバー化(生物 的 WPC 化)という当初目標をほぼ達成できた。 89 (イソプレノイド・天然ゴム工業原料植物の創成) (日立造船株式会社) 研究成果 成果の概要 1)ゴム代謝植物の ・ペルチェ素子を用いた凍結組織切片作製法を確立した。 ・顕微 FT-IR により組織切片上のポリイソプレノイドの同定に 機能解析 成功した。 ・マッピング解析により組織内のポリイソプレノイドの局在を トチュウ・ペリプロカ 明らかにした。 ・12 種の植物がポリイソプレノイドを産生することを明らかに に関して、 より高度な分析技術 した。 を開発し,それぞれ ・トチュウ各採取部位ポリイソプレノイドの分子量分布を調 べ,それぞれの部位で異なる分子量分布を有することを の植物に関するゴ 明らかにした。 ム成分の検 定技術 ・鎖延長停止末端構造として,脂肪酸が結合したアシル化 を開発した。 末端の存在を明らかにした。 ・トチュウ各採取部位ポリイソプレノイドに含有される脂肪酸 の組成を明らかにした。 ・幾何異性体や長鎖のポリプレノールの分離が可能な SFC 分析系を確立した。 ・各採取部位ポリプレノールの幾何異性および鎖長分布を 明らかにした。 ・ポリイソプレンの生合成中間体に由来すると考えられる長 鎖のトランス型ポリプレノールの存在を明らかにした。 ・ペリプロカ乳液中のポリイソプレノイドの含有量および分子 量分布を明らかにした。 ・ペリプロカ幼植物体中のポリイソプレノイドの含有量および 分子量分布を明らかにした。 2)ゴム関連遺伝子 ・ゴム生産植物であるトチュウ,ペリプロカ,パラゴムノキから mRNA を調製した。 の解析: ・トチュウ,ペリプロカ,パラゴムノキの cDNA ライブラリーを作 トチュウ・ペリプロ 製した。 カにおいて,ゴム生 ・トチュウ,ペリプロカ,パラゴムノキからゴム合成に関与す 合 成 に 関 す る る酵素遺伝子の部分配列を 14 種類単離,それぞれ,全 IPPisomerase と 長の配列を決定した。 FPP synthase を 単 ・トチュウから単離した IPP isomerase 遺伝子を大腸菌にて 離・クローニングし 発現させ,目的の精製酵素を取得し,抗体も作製した. た。また,EST 解析 ・精製したトチュウ IPP isomerase を用いてインビトロ反応を として完全長 cDNA 行い,その酵素活性を確認した. ライブラリーを取 ・ペリプロカから単離した IPP isomerase 遺伝子を大腸菌 得しクローニング にて発現させ,目的の精製酵素を取得し,抗体も作製し を行った。 た. ・精製したペリプロカ IPP isomerase を用いてインビトロ反応 を行い,その酵素活性を確認した. ・ペリプロカ粗酵素液を用いてインビトロゴム合成実験を行 い,高分子量ゴムの生成が認められた. 90 ・トチュウの FPPsynthase homolog および IPP isomerase, ペ リ プ ロ カ cis-prenyltransferase お よ び IPP isomerase に つ い て 形 質 転 換 用 の 構 築 (Overexpression,Antisence,RNAi)を作製した. ・シロイヌナズナからプレニル二リン酸合成酵素(トランス型 2種,シス型1種)を単離した. ・シロイヌナズナから単離した二種類のソラネシル二リン酸 合成酵素遺伝子を大腸菌にて発現させ,目的の精製酵 素を取得した. ・精製した二種類のシロイヌナズナソラネシル二リン酸合成 酵素を用いてインビトロ反応を行い,その酵素活性を確 認した. ・トチュウの樹皮および木部から mRNA を調製し,完全長 cDNA ライブラリーを作製した. ・トチュウの樹皮および木部から調製した完全長 cDNA ライ ブラリーの中から2万クローンずつワンパスシークエンス し , 樹 皮 に お い て 16,567 ク ロ ー ン , 木 部 に お い て 16,113 クローンの精度の高い配列情報が得られた. 3)ゴム代謝遺伝子 ・ゴム生産植物であるトチュウとペリプロカについてそれぞ の導入: れ 20%, 90%の形質転換技術を確立した。 トチュウに関して遺 ・トチュウのパーティクルガン法による遺伝子導入により 60 伝子導入は可能で 個体の組換え体を作成したが全てエスケープであった。 あ る が 形 質 転 換 体 ・トチュウへの GFP マーカー遺伝子導入が確認された個体 の作出が難しい。形 も数個体存在したが成長することなく枯死した。イソプレ 質転換体 60 個体作 ノイド生合成経路の操作に過敏に反応する傾向が示唆 成 し遺 伝 子 導 入 個 される。 ・ペリプロカにおいては,IPP isomerase と FPP synthase 体はゼロ ・ペリプロカに関し に関して発現抑制(RNAi, Anthsence)のみ遺伝子導入 IPP て は 個体を作出して育成中である。 isome-rase と FPP ・ペリプロカに関しては,次々と組換え体が作成できており synthase における 順次栽培を開始している。 遺伝子導入個体を 作成し現在育成 中。 (タンパク質組織特異的高生産植物の研究開発) (三井化学株式会社) 研究成果 成果の概要 1)Cab プロモーターに ルーピン由来酸性フォスファターゼ(LASAP2)遺伝子を よる茎葉特異的なフィ イネ由来 Cab プロモーター制御下で発現させたところ、 根及び種子では対照イネと同レベルの低いフィターゼ ターゼ発現制御 活性であったが、茎葉においては活性が上昇した。ま た、ウェスタン解析においても LASAP2 タンパク質は、根 及び種子では検出されず、茎葉部のみで認められたこ とから組織特異的に発現していることが明らかになっ 91 た。 2)サツマイモの高効率 サツマイモの形質転換は非常に困難とされる。そこで、 形質転換系の確立 東日本の最有力品種であるベニアズマを用いて高効 率の形質転換系の確立を試みた。まず、材料調達が 容易な茎葉切片を用いた高効率の再分化系を確立 し、さらに、アグロバクテリウムを介した形質転換法、お よびカナマイシンとハイグロマイシンによる2段階選抜 法を組み合わせることにより、最終的に 35%という高い 効率で形質転換体を得ることに成功した。 3)フィターゼ高発現用 LASAP2 および酵母由来フィターゼを中心に下記に示 コンストラクトの選定 す様々なコンストラクトを構築してシロイヌナズナへ導入 した。LASAP2 については、細胞内小器官へのターゲッ ティングによるタンパク質安定貯蔵法の開発に取り組 み、3 種類の移行シグナルを付加したコンストラクトを構 築した。一方、酵母フィターゼについては、コドンを植 物用に最適化して改変した配列や細胞間隙移行型の イネ由来キチナーゼ(cht)の細胞外分泌シグナルを付 加したもの等を構築した。全 38 種のコンストラクトを導 入したシロイヌナズナのフィターゼ活性測定結果から、 高発現用コンストラクトとして、コドン改変型酵母フィタ ーゼ遺伝子に cht のシグナル配列を付加したコンストラ クトを選定した。 4 ) イ ネ に お け る フ ィ タ 上記の高発現用コンストラクトをイネに導入したところ、 ー ゼ の 高 発 現 化 と 安 フィターゼ活性が飛躍的に上昇した。最大活性値は、 定性評価 約 10.6U/g-FW(対照イネ比で約 273 倍)であり、目標と する 5U/g-FW 以上であった。イネで発現した酵母フィタ ーゼは標品よりも糖鎖修飾レベルはかなり低いにもか かわらず、フィターゼとして望ましい耐熱性および安定 性を維持することがわかった。イネ発現型酵母フィター ゼは、飼料中のフィチン酸を加水分解する能力も標品 の同等以上の効果を示し、さらに、サイレージ処理に おいても極めて安定性が高いことがわかった。以上の ように、イネにおいては実用に見合う外来フィターゼの 安定的高発現に成功した。 92 (病害抵抗性植物の分子育種) (株式会社豊田中央研究所) 研究成果 成果の概要 1)新規抗菌ペプチドの 機能改良した新規抗菌ペプチド(rCAP24KD)遺伝子を モデル植物での有効性 モデル植物(シロイヌナズナ)に導入し、病害抵抗性評 評価 価を行った結果、病害抵抗性付与に抗菌活性および 植物内安定性を向上させた抗菌ペプチドを利用する ・ 新規抗菌ペプチド遺 ことが有効であることを明らかにした。 伝子をモデル植物に 導入することにより病 害抵抗性が向上する ことを実証 2)サツマイモの病害抵 葉柄法(葉における病害抵抗性評価法)および針接種 抗性評価法の確立 法(塊根における病害抵抗性評価法)について、高系 14 号野生株(黒斑病抵抗性:やや弱)とタマユタカ(黒 ・ サ ツ マ イ モ の 葉 お よ 斑病抵抗性:やや強)の2品種を用いて検討した結 び塊根における病害 果、いずれの方法においても、高系 14 号とタマユタカ 抵抗性評価法を確立 の間に病害抵抗性強度の差が認められ、有効な評価 法であることを見出した。 93 抗菌ペプチド(hCAP32、チオニン)遺伝子を導入したサ ツマイモの葉にお ける遺伝子発現量をリアルタイム PCR 法を用いて調べ、高発現系統の選抜を行った。選 抜した高発現系統について、病害抵抗性評価を実施 した結果、いずれの評価法においても野生株に比べ ・ 抗菌ペプチド遺伝子 て病害抵抗性の向上が認められた。 導 入 サ ツ マイ モ は野 生株よりも病害抵抗 性が向上することを実 証 4)新規抗菌ペプチド遺 機能強化した新規抗菌ペプチド(rCAP24KD)遺伝子を 伝子導入サツマイモの 導入したサツマイモの葉における遺伝子発現量をリア 発現解析および病害抵 ルタイム PCR 法を用いて調べ、高発現系統の選抜を行 った。選抜した高発現系統について、葉柄法および針 抗性評価 接種法による評価を実施した結果、rCAP24KD 遺伝子 ・ 新規抗菌ペプチド遺 導入系統には、hCAP32 遺伝子導入系統およびチオニ 伝 子 を サ ツ マ イ モ に ン遺伝子導入系統より、高い病害抵抗性強度を示す 導入することにより病 系統が存在した。また、rCAP24KD およびチオニンの両 害抵抗性が向上する 遺伝子の導入系統には、黒斑病抵抗性品種であるタ ことを実証 マユタカと同程度の高い病害抵抗性を示す系統が存 在した。 3)抗菌ペプチド遺伝子 導入サツマイモの発現 解析および病害抵抗性 評価 94 (ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を利用した環境ストレス抵抗性の改良とその利 用に関する研究) (株式会社 東洋紡総合研究所) 研究成果 成果の概要 1)低温遭遇植物のポリ ・ウリ科植物の低温抵抗性へのポリアミンの関与 キュウリを用いて低温抵抗性に品種間差異をもたら アミン代謝特性の解析 ・ポリアミンによる低温 す生理生化学的機構を研究した。その結果、低温抵 抗性キュウリ品種は、細胞のスペルミジン濃度を高める 耐性増大機構の解析 ことで低温による NADPH オキシダーゼの活性化を未然 に防ぎ、活性酸素による障害を防御していることを明ら かにした。 ・ホウレンソウの光合成器官の低温順化へのポリアミン の関与 ホウレンソウの光合成器官の低温光障害への感受性 を調べた。その結果、クロロプラストでポリアミンを高め ることによって、チラコイド膜の光化学系タンパク複合 体やストロマの炭酸同化酵素に結合することにより、低 温下でのタンパク質の構造的安定性を高めることで光 合成器官を低温光ストレスから保護していることを明ら かにした。 ・サツマイモの生育、葉の光合成に及ぼす外生的ポリ アミンの影響 サツマイモの挿し苗を育成して、ポリアミン処理を行 い、低温ストレス、塩・乾燥ストレス下での生育と光合成 活性を調べた。その結果、低温ストレス下ではポリアミ ン処理により葉の光合成活性が高く維持され、蔓の伸 長や塊根の肥大形成が優れることが明らかになった。 塩と乾燥ストレス下においても、ポリアミン処理により葉 の光合成活性の低下が抑制され、特に塊根重が大きく なった。これらのことから、サツマイモのポリアミン濃度 を高めることで、環境ストレス抵抗性が増大する可能性 は極めて高いと判断された。 2)ポリアミン代謝関連 ・低温伸長性が高いクロダネカボチャから 4 種類のポリ 酵素遺伝子群の単離 アミン代謝関連酵素(SPDS, SAMDC, ADC, ODC)cDNA を ・低温ストレスに関与する 単離した。 ポリアミン代謝関連酵素遺 ・ノザン解析の結果、3 種類のポリアミン代謝関連酵素 伝子群を単離 遺伝子、スペルミジン合成酵素 (SPDS), S-アデノシル ・ポリアミン代謝関連酵 メチオニン脱炭酸酵素(SAMDC),および アルギニン脱 素 遺 伝 子 群 の プ ロ モ 炭酸酵素(ADC)の遺伝子が低温ストレス遭遇時に特異 ーターの単離 的に発現し、低温ストレス耐性に深く関与することを明 らかにした。 ・3 種類のポリアミン代謝関連酵素遺伝子 (SPDS, SAMDC, ADC)の完全長遺伝子(cDNA)を単離 し、全塩基配列を決定した。 ・3 種類のポリアミン代謝関連酵素遺伝子 95 (SPDS, SAMDC, ADC)のプロモーター領域(ゲノム DNA) を単離し、全塩基配列を決定した。さらに、エレメント解 析の結果から、興味深い低温誘導性エレメントなどが 存在することを明らかにした。 3)遺 伝 子 組 換 え 植 物 の作出と遺伝子発現 解析 ・SPDS 遺伝子を導入し た遺伝子組換えシロイ ヌナズナを作製 ・SAMDC プロモーターを 導入した遺伝子組換 えタバコを作製 ・SPDS 遺伝子を導入し た遺伝子組換えサツマ イモを作製 ・SPDS 遺伝子を 35S プロモーター制御下で減圧浸潤法 によりシロイヌナズナに導入し、独立な数十ラインの遺 伝子組換えシロイヌナズナを取得した。 ・得られた遺伝子組換えシロイヌナズナについて PCR 法で導入遺伝子を確認、続いて、ノザン解析で全ての ラインで目的の遺伝子が非常に高いレベルで転写され ていることを確認した。さらに、ウエスタン解析で SPDS 遺伝子の翻訳産物を検出し、その発現量に応じて SPDS 活性が高まっていることも確認した。 ・SAMDC、SPDS、ADC プロモーターにレポーター遺伝子 である GUS 遺伝子を連結して、カルス法でタバコに導入 し、遺伝子組換えタバコを作製した。 ・得られた遺伝子組換えタバコについて PCR 法で目的 遺伝子が導入されていることを確認した。 ・SPDS 遺伝子、SAMDC 遺伝子を 35S プロモーターや傷 害誘導性 C2 プロモーター制御下でアグロバクテリウム 法により、サツマイモ(高系 14 号)に導入した。その結 果、全てのコンストラクトに対して独立した数十クローン の遺伝子組換えサツマイモを取得した。 ・得られた遺伝子組換えサツマイモについて PCR 法で 導入遺伝子を確認後、ウエスタン解析で SPDS 遺伝子 の翻訳産物が高いレベルで発現していることを確認し た。 96 4)遺 伝 子 組 換 え 植 物 の評価と解析 ・SPDS 遺伝子を導入し た遺伝子組換えシロイ ヌナズナのポリアミンの 評価 ・SPDS 遺伝子を導入し た遺伝子組換えシロイ ヌナズナの様々な環境 ストレス耐性の評価 ・SAMDC プロモーターの 低温誘導性評価 ・SPDS 遺伝子を導入し た遺伝子組換えサツマ イモのポリアミンの評価 ・SPDS 遺伝子を導入し た遺伝子組換えサツマ イモの様々な環境スト レス耐性の評価 ・ SPDS 遺伝子を導入したシロイヌナズナについて、内 生ポリアミン含量を分析したところ、センス制御につい ては、ポリアミン含量(特にスペルミジン)が有意に増 加、アンチセンス制御ついてはポリアミン含量が有意に 減少していた。 ・ SPDS 遺伝 子を導 入したシロイヌナ ズナにつ いて、 様々な環境ストレス耐性の評価を行ったところ、野生株 に比べて、有意に低温、凍結、塩、浸透圧、乾燥、除 草剤ストレス耐性が増大していた。さらに、ポリアミンの 低温耐性増大機構を調べたところ、低温遭遇した遺伝 子組換えシロイヌナズナでは、抗酸化酵素(特に SOD) 活性が増大し、ストレスに関与する各種転写因子の発 現が高まり、抗酸化酵素活性や転写因子の低温誘導 性が関与している可能性が示唆された。 ・SAMDC, SPDS, ADC プロモーターについて、タバコ葉を 用いて一過性評価を行ったところ、レポーター遺伝子 の発現が検出され植物でプロモーター機能を持つこと を確認した。 ・SAMDC, SPDS, ADC プロモーターを導入した遺伝子組 換えタバコを用いて、プロモーターの評価を行ったとこ ろ、いずれも常温より低温下で高い活性が検出され低 温誘導性を持つことを明らかにした。 ・SPDS 遺伝子を導入した遺伝子組換えサツマイモにつ いて、内生ポリアミン含量は、葉と塊根のいずれもスペ ルミジン含量が、野生株に比べて有意に増加(2 倍程 度)していた。 ・SPDS 遺伝子を導入した遺伝子組換えサツマイモにつ いて、様々な環境ストレス耐性の評価を行ったところ、 野生株に比べて、有意に酸化、不良環境下、低温、高 温、塩、乾燥ストレス耐性が増大していた。特に、塩、 乾燥ストレス耐性の評価では、遺伝子組換えサツマイ モはストレス環境下での塊根形成が旺盛になり、有意 に塊根収量が高まった。 97 (多重遺伝子連結技術の開発) (奈良先端科学技術大学院大学・集中研究室) 研究成果 成果の概要 1)固相連結法による 連続連結の増加 ・DNA 断片の精製により 連結効率を向上させ、 12DNA 断片の連結を確 認した。 連結効率の向上を目指し、末端が制限酵素切断され ていない DNA 断片の除去を行った。末端をビオチン化 したプライマーを用いた PCR により DNA 断片を調製し、 制限酵素処理後、ストレプトアビジンビーズにより非切 断 DNA 断片を除去したところ、連結効率が向上し、 12DNA 断片の固相上での連結を確認した。 2)多重遺伝子連結自 動化技術の開発 非公開 ・多重遺伝子連結自動 化に必要な基礎技術 を検討した。 3)連結遺伝子群のバ 4 種の rare-cut 制限酵素認識配列を挿入した TAC イナ リ ー ベ ク タ ー へ の ベクターを作製し、本ベクターに固相連結した DNA を順 導入系の開発 次導入できる系を開発した。実際に 9、10、11DNA 断片 を固相連結し、TAC ベクターに順次導入することにより、 ・30DNA 断片のバイナリ 30DNA 断片の導入を行うことに成功し、本バイナリーベ ーベクターへの導入を クターへの導入系の有効性を示した。 確認した。 また、クエン酸合成酵素遺伝子過剰発現用カセット、 ・有用多重遺伝子導入 イソクエン酸脱水素酵素遺伝子 RNA 干渉用カセット、カ シロイヌナズナを作出 タラーゼ遺伝子過剰発現用カセットを固相連結し、TAC した。 ベクターによりシロイヌナズナに導入した。遺伝子導入 個体の発現解析より、固相連結法を用いた植物への多 重遺伝子導入用ベクターの作製が可能であることを示 した。 改良 TAC ベクターによりβ-グルクロニダーゼ(GUS)遺 4)植物の多重遺伝子 伝子を導入した約 80 系統のシロイヌナズナの GUS 遺伝 導入に適したベクター 子コピー数、GUS 活性を解析することにより、改良 TAC の開発 ベクターは複数遺伝子が導入された個体において起こ ・改良 TAC ベクターによ るジーンサイレンシングを回避し、導入遺伝子発現を り、導入遺伝子発現が 安定化させることを示した。また、本ベクターが導入遺 安定化することを確認 伝子コピー数を減少させる効果があることも明らかとな した。 った。 98 (植物で機能する有用プロモーターの単離と活用) (奈良先端科学技術大学院大学・集中研究室) 研究成果 成果の概要 2)シロイヌナズナ由来 の各種有用プロモータ ーの単離と活性評価系 の作成 ・葉および根で特異的 高発現している遺伝 子を抽出。 ・プロモーター断片の 活性検定用ベクターへ の組み込み。 ・一過性発現による活 性評価。 本研究で構築した cDNA マイクロアレイを用いた解析 により、葉および根で特異的高発現している遺伝子各 80 個を抽出することができた。 これらの遺伝子のうち の葉・根合計 101 種についてプロモーター領域を単離 し、プロモーター活性検定用ベクターへの組み込みを 行った。次に、これらのプロモーターの一過性発現に よる活性評価を行った。また、一過性発現検定で有力 と判断された遺伝子プロモーターについて組換え体 植物の作成を行い、各種プロモーターの植物体での発 現特性を検定した。さらに、これまでに得られた解析 結果を有効に活用できるよう情報のカタログ化を行 った。 4 組換え体植物の作 成と GUS 検定による 発現特性の解析。 5 遺伝子プロモーター カタログの作成 99 (植物における高効率遺伝子発現系の構築) (奈良先端科学技術大学院大学・集中研究室) 研究成果 成果の概要 1)外来導入遺伝子の 35S-GUS(pBI121)導入植物個体(133 個体)の解析を 安定発現 行った結果、T1 植物では GUS の発現にかなりのバラツ キが認められたが、この中で導入遺伝子が完全に 1 コ ピーであった 11 系統は T3 植物においてすべて同程度 の GUS 活性を示した。これらのことから、外来遺伝子導 入形質転換体間でみられるバラツキの主原因は position effect ではないと結論した。 2)翻訳効率の上昇 タバコ ADH5'UTR が一過性発現実験(タバコ・シロイヌ ナズナ・イネ)と安定形質転換個体(タバコ・シロイヌナ ズナ)において GUS の発現を翻訳レベルで高めることを 明らかにし、他のレポーターGFP でもその有効性を確認 した。タバコ ADH5'UTR は翻訳エンハンサーとして知ら れるΩ配列と同等の翻訳上昇効果を持ち、Ω配列と同 じ ト ラ ン ス 因 子 HSP101 を 必 要 と す る 。 ま た 、 タ バ コ ADH5'UTR 以外に複数の新規翻訳エンハンサーを取得 した。 3)ポリシストロニックな 動物ウイルスの一種である encephalomyocarditis virus(EMCV)由来の IRES (Internal Ribosome Entry 遺伝子発現系の構築 Site)が植物細胞において有効に機能することを見出 し、ポリシストロニックな遺伝子発現系として応用可能で あることを示した。IRES と ORF の結合方法についても検 討し、IRES の内在開始コドンと ORF の相対配置につい て最適化することが出来た。さらに、EMCV-IRES が組織 特異性、種特異性を示すことを遺伝子銃による一過性 発現実験と形質転換植物を用いて明らかにした。ま た、植物ウイルス(crucifer-infecting tobamovirus; crTMV)由来 IRES 依存的翻訳効率を劇的に向上させる シス因子として、ステムループ構造の挿入が有効であ ることを見出した。一連の知見に基づいて高性能な合 成介在配列を創出することにも成功した。一方、昆虫ピ コルナ様ウイルスの一種である PSIV (Plautia stali intestine virus)の IRES についても in vitro 翻訳 系、一過性発現系、形質転換植物を用いて詳細に検 討し、EMCV-IRES よりも優れた特性を示すことを明らか にした。 より高効率な翻訳を実現するために、IRES 依存的翻 訳に関与する因子群の単離を試み、翻訳開始因子群 の完全長 cDNA を複数取得した。また、形質転換シロイ ヌナズナを用いて IRES 活性が上昇した変異体の探索 を進め、翻訳因子関連遺伝子の変異と考えられる変異 体を複数取得した。 100 4)レギュロン発現系の 2つの既知遺伝子、TCS1 と XMT の cDNA を PCR によって 構築 増幅した。また、コーヒーノキから新規メチル化酵素遺 伝子 CaMXMT1 の cDNA をクローニングした。XMT、TCS1、 CaMXMT1 の cDNA をそれぞれ CaMV35S プロモーターに 連結した融合遺伝子を構築し、これらを導入した形質 転換タバコを作製した。しかしながら、本研究によって、 XMT はカフェイン生合成とは関係のないことが明らかに なり、計画の修正を余儀なくされた。その後、コーヒーノ キよりカフェイン生合成に関連する3つの新規メチル化 酵素 cDNA をクローニングした。これらの組換えタンパク 質を用いて、試験管内でキサントシンからカフェインを 生成することに成功した。更に、恒常型カフェイン生合 成レギュロン発現系を導入した形質転換タバコの解析 を行い、葉や果実にカフェインを蓄積していること、重 要害虫のハスモンヨトウに対して忌避活性を示すことを 明らかにした。傷害応答型カフェイン生合成レギュロン 発現系導入ベクターの構築が 8 割程度進行した。 5)遺伝子の特異的発 アラビカ種、カネフォラ種コーヒーの不定胚誘導、成熟 現抑制 化および植物体再生に至る一連の培養系を確立した。 不定胚形成組織へのアグロバクテリウム感染からカナ マイシン含有の選択培地での培養に至る過程を検討 し、両コーヒー種について選択培地で増殖する不定胚 形成組織を得た。また、カフェイン含量を測定するため の HPLC 分析条件を検討し、非導入コーヒー植物体、培 養細胞等のカフェイン含量測定が可能となった。最終 的には、両種において効率的な形質転換系を確立す ることができ、開発が先行したカネフォラ種について は、RNAi によってカフェイン含量が 5~7 割減少した苗 木を多系統得ることができた。アラビカ種については現 在も形質転換体の作製を継続中である。これまでに RNAi 構築を導入したアラビカ種の形質転換培養細胞 101 系統を得ており、これらにおいて、カフェイン生合成関 連遺伝子の発現の減少、およびカフェイン含量の減少 を確認している。 102 (植物葉緑体ゲノムへの複合環境ストレス耐性遺伝子群の多重導入による複合 環境ストレス耐性工業原料生産植物の作成) (地球環境産業技術研究機構) 研究成果 成果の概要 1) 葉緑体導入用ベク 葉緑体導入手法を用い、外来タンパク質の過剰発現 ターを構築した。 はこれまで Bacillus の作り出す毒素、除草剤耐性遺 伝子ついて試みられているが、これらの場合、導入体 の選抜のための aadA 遺伝子とのポリシストーニックな 遺伝子発現を狙ったため、その発現総量は全可溶画 分の 6~7%程度であった。これに対して今回葉緑体で 強力に発現することが期待できる psbA プロモータを導 入遺伝子に単独に用い、さらに翻訳開始点上流にリボ ソーム結合部位を置くことによりタバコ葉緑体で高発現 するベクターを構築した。 2)レポーター遺伝子と レポーター遺伝子として GFP を用い pLD6 および pLD200 して GFP を用いその発 へと GFP 遺伝子の導入を行った。タバコ葉緑体導入は 現 総 量が全 可溶 画分 既知の方法によった。 の 38%程度であること 葉緑体導入体を蛍光顕微鏡下で観察した結果、野生 を確認した。 種では見られない強い蛍光が見られた。この導入体か ら蛋白質を抽出し、SDS-PAGE を行ったところ期待すべ き分子量の濃いバンドが確認された。このバンドの濃さ のデンシトメトリーから、その発現総量は全可溶画分の 38%程度であった。 ここで確立した手法を用い遺伝子導入後、実体顕微鏡 による連続観察を行い、10~14 日程度で葉緑体導入 体を検出する手法を確立した。この過程をとおして、遺 伝子銃を用いた遺伝子導入、および培養手法により導 入体を作出の検討を行い、葉緑体の導入のための基 本的プロトコールを確立した。 3) 葉緑体ゲノムへの GFP,dsRed に加え、GUS をレポーターとしてポリシストロ 多 重 遺伝 子導 入系の ニックな発現を期待できるように多重化を行い、葉緑体 開発およびその評価を ゲノムへ一括導入した。多重化の際のプロモータから 行った。 の距離と発現量の相関について検討評価を行うため、 それぞれの形質転換体における導入遺伝子のコピー 数による補正を行ったところ、GFP や dsRed の場合プロ モータからの距離が増すほどその産物の蓄積量が低 下する蛍光が見られた。 103 4)葉緑体への遺伝子 導入による複合ストレ ス耐性植物の創成を 行った。 紅藻 Galdieria partita の APX の cDNA を psbA プロ モータの下流につなぎ、タバコ葉緑体ゲノムの rbcL と accD の間に挿入した。得られた葉緑体形質転換体の 生理効果の解析を行ったところ、酸素毒ストレスのモデ ル化合物であるメチルビオローゲンを含む培地におい てこれらの形質転換タバコは強い抵抗性を示した。生 葉の粗抽出液を用いて、常法に従い APX 活性を測定し たところ、野生型に比べ約 200 倍の活性が得られた。 野生型において葉緑体 APX は細胞全体の 10%程度で あることが知られており、また、葉緑体内で発現させた タンパク質が細胞質へ移行する現象は知られていない ことから、この葉緑体形質転換体においては、葉緑体 内の APX 活性は野生型の 2,000 倍に達していると考え られる。一般に植物が乾燥等ストレス環境下におかれ ると活性酸素が生じる。通常生じる活性酸素は、植物 のもつ water-water cycle により効果的に除去される が、ストレス環境下ではこの water-water cycle 活性 の低下がおこり、この結果植物は枯死する。今回作成 した Galdieria partita 由来の APX による葉緑体形質 転換体の解析から、ストレス環境下での water-water cycle 活性低下の原因が APX の失活によることが初め て明らかとなった。 104 (ゼニゴケの脂肪酸代謝機能の活用) (再委託:京都大学大学院 大山 莞爾) 研究成果 成果の概要 1)MpDES5 遺伝子産物 が n-6 および n-3 系 列におけるΔ5不飽和 酵素をコードすることを 明らかにした。 MpDES5 遺伝子の脂肪酸不飽和化酵素活性を明らかに するため、メタノール資化性酵母 Picha pastroris に おいて MpDES5 を発現させた。ジホモ‐γ‐リノレン酸あ 2)Mpdes6 遺伝子産物 はグリセロ脂質型およ び CoA 結合型アシル 鎖のいずれをも基質に する可能性がある るいはエイコサテトラエン酸を培地に加えたところ、そ れぞれのΔ5不飽和化産物であるアラキド酸あるいは エ イ コ サ ペ ン タ ク エ ン 酸 が 生 じ た 。 さ ら に 、 MpDES6 、 MpELO1および MpDES5 遺伝子を同時に P.pastoris に 導入したところ、アラキド酸およびエイコサペンタエン酸 が生成した。従って、MpDES5 遺伝子産物がΔ5不飽和 酵素をコードすることが明らかとなった MpDES6 遺伝子を発現させたメタノール資化性酵母の 解析からΔ6不飽和化産物の基質に対する割合がリン 脂質のフォスファジルコリン画分とアシル CoA とで共に 高いことがわかった。この結果から MpDES6 遺伝子産物 はグリセロ脂質型および CoA 結合型アシル鎖のいずれ をも基質にする可能性が示唆された。 ) 糸 状 菌 糸状菌 Mortierella alpiana などのΔ6不飽和化酵 Mortierella alpiana 素 は 、 グ リ セ ロ 脂 質 型 ア シ ル 鎖 を 主 な基 質 に す る 。 3 などのΔ6不飽和化酵 素は、グリセロ脂質 型 アシル鎖を主な基質に する。 PUFA 生合成経路では、鎖長延長酵素の基質は CoA 結 合型アシル鎖であるため、M.alpina などのΔ6不飽和 化酵素よりも MpDES6 遺伝子産物の方がより効率よく、 鎖長延長酵素へアシル鎖を供給できると期待される。 (アレルゲンたんぱく質の植物による生産技術の開発) (再委託:大阪大学大学院 室岡 義勝) 研究成果 成果の概要 105 1)コナヒョウヒダニアレ コナヒョウダニアレルゲンのひつとである Der f 1 の遺 ル ゲ ン 遺 伝 子 を 植 物 伝子の遺伝子を形質転換用ベクターpIG121Hm に組み ベクターに組み込みア 込み、pIG121Hm-Def1 を構築した。 ラビドプシスおよびモ デルマメ科のミヤコグ サでの発現をした。 2)ミヤコグサの形質転 pIG121Hm-Def1 を Agrobacterium yumefaciens に導 換体の作成 入し、ミヤコグサを形質転換した。 3)ダイズ種子発現用プ ダイズのβ‐conglycinin のプロモーターであるα´プ ロモーターの置き換え ロモーターを pIG121Hm の35S プロモーターとつなぎ換 え、種子において発現を誘導できるコンストラクト作成し シロイヌナズナを形質転換し、種子において Def1 およ び GUS を発現する形質転換体を作成した。 (環境ストレス(低温、光、酸素毒)耐性植物の分子育種―関連遺伝子の探索と活用) (再委託:近畿大学農学部 重岡 成) 研究成果 成果の概要 106 カリフラワーモザイクウイルス 35S プロモーター由来の エンハンサーを 4 つ重複して有するアクティベーション タグ導入用プラスミド(pPCVICEn4HPT)をアグロバクテリ ウムを介した減圧浸潤法によりアラビドプシスに導入 し、得られた T1 種子をハイグロマイシン添加培地で選 抜を行い、自家交配後の T2種子をそれぞれのライン毎 に 6,000 粒を採取した。PCR による確認の結果、回収し た T2 種子には 95%以上の割合で遺伝子導入されてい ることが明らかになった。 得られたタグラインは、簡便なスクリーニングを行うため に、それぞれのライン毎 200 粒の種子を分取し、50 ライ ンを 1 プールとして整備した。 2)2 個のパラコート耐 一次スクリーニングとして、酸素毒ストレス耐性のモデ 性 変 異 体 ( pqr-216, ルとなるパラコートでのスクリーニングを行った。整備し pqr-236)を選抜した。 たアクティべーションタグライン 5,000 ライン(100 プー ル)を通常培地で 7 日間栽培後、パラコート(3 µM)を含 む培地へ移植し、一週間処理後、通常の培地で生育 させた結果、7 日後では野生株や他の変異株はクロロ フィルの退色が生じて枯死しているのに対し、明らかに 緑 色 を 保 っ て い る パ ラ コ ー ト 耐 性 株 ( paraquat resistant: pqr )を 2 株( pqr-216、 pqr-236)単離し た。 1)アクティベーションタ ギング用ベクターを導 入 し た シ ロ イ ヌナ ズ ナ の 形 質 転 換 種 子 (T2) を約 11,500 個得た。 3)pqr-216 のパラコー ト耐性は AtMutT1 遺伝 子の過剰発現によるも のであることが明らか になった。 4)シロイヌナズナに存 在する 8 種類の MutT 様タンパク質(AtMutT1 〜AtMutT7, AtNUDT1) の機能解析を行った。 pqr-216 におけるアクティべーションタグの挿入位置は CCAAT ボックス結合転写因子様タンパク質(AtHap3b) および MutT ドメイン様タンパク質(AtMutT1)の上流であ った。 pqr-216 の T3 世代における AtMutT1 および AtHap3b の転写量は、野生株と比較してそれぞれ 8.7 および 2.7 倍増加していることが明らかになった。それ ぞれの過剰発現形質転換体の解析から、 pqr-216 の パラコート耐性表現型の原因遺伝子は AtMutT 遺伝子 であり、その産物の AtMutT1a mRNA がコードするタンパ ク質がパラコート耐性の機能を有することが示された。 シロイヌナズナにおいて AtMutT1 以外にも 7 種類 (AtMutT2〜8) の MutT 様タンパク質ホモログが存在し た。すべての AtMutT のリコンビナントタンパク質を作製 し、基質特異性を検討した。その結果、AtMutT1, 5, 6 は、ADP-ribose 及び NADH を、AtMutT8 は 8-oxo-dGTP および NADH を加水分解する活性を有していた。また、 大腸菌 MutT 欠損株を用いた相補試験の結果、野生株 と比較して約 1,000 倍高い MutT 欠損株の突然変異頻 度 は 、 AtMutT1 を 導 入 し て も 変 化 し な か っ た が 、 AtMutT8 導入により野生株と同程度にまで抑制され 107 た。これらの結果から、AtMutT8 はヌクレオチドプール の酸化損傷の修復に機能していることが示された。一 方、AtMutT1 は酸化的ストレス耐性能の向上に関わる 新規の機能を有している可能性が示唆された。 ク ラ ミ ド モ ナ ス W80 GPX を細胞質あるいは 葉緑体に導入した形 質転換タバコを作製し た。 ク ラ ミ ド モ ナ ス W80 GPX を細胞質あるいは 葉緑体に導入した形 質転換タバコは野生株 と比較してパラコート、 塩、低温/強光処理に 対する耐性能が向上し ていた。 クラミドモナス W80 株由来 GPX(CWGPX)を細胞質あるい は葉緑体に導入した形質転換タバコ(細胞質導入株 (TcGPX):4 系統、葉緑体導入株(TpGPX):3 系統)を作 製した。野生株ではリノレン酸ヒドロペルオキシド (LinOOH)を基質とした GPX 活性は検出されなかった が 、 TpGPX と TcGPX で は LinOOH に 対 す る 活 性 ( 47.5±5.1 〜 75.3±7.9 お よ び 32.7± 4.0 〜 42.1±4.3 nmol/min/mg protein)が認められた。 TcGPX および TpGPX のリーフディスクは、パラコート処理 による膜傷害に対して野生株よりも耐性を示した。播種 後 12 週目の野生株、TpGPX および TcGPX を低温(4℃) で 6 時間処理すると、野生株の光合成活性は完全に 失活したが、TpGPX および TcGPX の光合成活性は高く 維持され、過酸化脂質量は抑制されていた。また、塩 ストレス(250 mM NaCl 潅水)に対する感受性を評価し た。その結果、野生株の光合成活性は 24 時間後に完 全に失活したが、TpGPX および TcGPX の光合成活性は 高く維持された。この際の野生株の過酸化脂質量も有 意に抑制された。 これらの結果は、CWGPX 導入による形質転換植物にお いて、種々の環境ストレスによる膜脂質の酸化的障害 に対する耐性能が野生株に比べて上昇していることを 示していた。 108 2.1 省エネルギー型工業原料生産に適した多年生工業原料植物の創成 (王子製紙株式会社) A. 研究成果 1) ユーカリの形質転換技術の開発 様々な植林環境において形質転換ユーカリを事業応用する局面を想定して、 事業植林に利用されているユーカリ 5 樹種に対して形質転換系を開発した。プロ ジェクト前半に熱帯性のカマルドレンシス種(Eucalyptus camaldulensis)、亜熱 帯性で高成長性のユーカリ交雑種(E. grandis×E. urophylla)および温帯性 のダニアイ種(E.dunnii)について、Agrobacterium 感染と再分化に優れた個体 を選抜し、その早生分枝に Agrobacterium 感染を行い、苗条原基形成を経由す る形質転換技術を確立した。平成 13 年 10 月以降は温帯地域で事業植林に利 用してい るユー カリ 2 樹種 、グラン ディス種( E.grandis )とグロブラス種 ( E. globulus)に対して形質転換系を検討した。 グランディス種は他のユーカリ樹種と同様に個体間でアグロバクテリウム感染性 に遺伝的変動が大きく、形質転換効率を指標に個体選抜することが重要であっ た。さらに、形質転換カルスの再分化においてもカルスの増殖が遅いことや苗条 原基誘導過程で黒変する問題があったが、苗条原基を誘導する培養をオーキシ ン α -naphthaleneacetic acid と サ イ ト カ イ ニ ン 2 種 thidiazuron と 1-(2-chloro-4-pyridyl)-3-phenylurea を組み合わせて培養した結果、形質 転換カルスの 1.8 %が苗条原基を形成した。アグロバクテリウム感染から約 8 カ月 で形質転換植物体が得られ、早生分枝 162 組織から 5 植物体得られたことから、 全体の形質転換率は約 3 %であった。 次いで、パルプ適性に優れていることから温帯に広く植栽されているグロブラス 種についても苗条原基形成を経由する形質転換系を検討した。まず、苗条原基 誘導と苗化の行程における光条件(光量子束密度)を他樹種で使用していた条 件より劇的に低下させることにより、それぞれの分化効率が向上した。さらに、グ ロブラス種は組織培養における発根性が低いことから、発根性を指標に個体選 抜を行い、組織培養に適した易発根性個体を母材料としてグロブラス種の再分 化条件を検討した結果、早生分枝から苗条原基様体を経由した葉原基の形成 が認められた。一方、実生の胚軸を形質転換の母材料としてアグロバクテリウム 感染を行っても、上記再分化条件で 43 個の胚軸から独立した形質転換苗条 2 個体(4.7%)が得られ、グロブラス種においても形質転換系開発の目途が立った。 プロジェクト研究を通じて、事業に利用されているユーカリ 5 樹種の形質転換系 の開発を検討した結果、再分化能力に優れ、かつアグロバクテリウムの感染に優 れた個体を母材料として、その早生分枝等の安定的に維持できる組織に対して アグロバクテリウム法で遺伝子導入を行い、得られた形質転換カルスからは苗条 原基形成を経由して再分化させることによって、高効率で短期間に形質転換植 物が得られることが明らかになった。 2) 遺伝子発現制御システムの開発 形質転換植物において目的遺伝子を植物に余分な負荷をかけることなく発現 させることは、自然環境に適応できる工業原料植物を開発する上で重要である。 環境ストレス耐性遺伝子や工業原料生産遺伝子をユーカリの樹幹および根で器 官特異的に発現させる遺伝子発現制御システムを開発することを目標に研究を 進めた。プロジェクト前半にユーカリ樹幹(木部)で特異的に高発現が期待できる 7 個の遺伝子をノーザン法で同定し、そのうちゲノム中のコピー数の少ない 3 遺 109 伝子(WIP:傷害誘導遺伝子と相同遺伝子、CesA:セルロース合成遺伝子、Xyl: ヘミセルロース分解遺伝子)についてプロモーターの単離と植物(ユーカリ、シロ イヌナズナ)での機能解析を行った。候補となる傷害誘導性タンパク質(WIP)遺 伝子のプロモーター領域(2,403 bp)を GUS 遺伝子と接続して、ユーカリへ導入し、 14 個の独立した形質転換体を取得した。しかし、遺伝子発現の樹齢に達してい ないこと、あるいは用いた断片のみでは発現誘導に十分でないことも原因かも知 れないが、GUS 遺伝子の発現を検出できなかった。また、Xyl 遺伝子について、 プロモーター候補領域(2,395 bp)を GUS 遺伝子と翻訳レベルで融合させ、プロ モーター機能の解析を行っている。また、 CesA 遺伝子についてはプロモーター 候補領域(2,912 bp)を GUS 遺伝子と翻訳レベルで融合させたベクターの構築が 終了し、ユーカリに導入中である。 一方、ユーカリの根での特異的発現を期待して、シロイヌナズナのリン酸トラン スポーターPHT1 遺伝子のプロモーターおよびタバコ由来アルコール脱水素酵素 ADH 遺伝子のプロモーターの活性をユーカリで検討したが、ユーカリでは機能し なかった。草本植物(シロイヌナズナ、イネ)ではこれらのプロモーターは根で高 い活性を示していたことから、リン酸トランスポーターPHT1 のユーカリオーソログを ユーカリのゲノムライブラリーから単離した。現在までに 5 種類のリン酸トランスポ ーター遺伝子のプロモーター領域を含む部分配列を単離し、そのうち 1 種類の EcPT1 遺伝子についてプロモーター候補領域(3,496 bp)の塩基配列決定を行 い、さらに GUS 遺伝子および GFP 遺伝子と接続した。残りの 4 遺伝子についても プロモーター領域の単離を行い、ユーカリ形質転換体による解析を継続する。モ デル植物から単離されたプロモーターの中でユーカリに適用できるプロモーター を探索する戦略から、モデル植物で器官特異性等の有効性が検証されたプロモ ーターに対して、そのユーカリオーソログのプロモーターを単離解析する戦略に 変更した。 多重遺伝子の導入と評価 事業植林に利用しているユーカリ樹種に対して、酸性土壌等で難溶化により植 物が利用できなくなっているリン酸を可溶性にすることに貢献する遺伝子(難溶 性リン酸可溶化遺伝子)群と環境ストレスに深く関与する活性酸素消去遺伝子を 多重遺伝子として導入して、工業原料植物としての遺伝子導入効果を評価した。 プロジェクト前半の研究により、シロイヌナズナでは難溶性リン酸の可溶化には根 からクエン酸の放出量を増やすことが効果的であることが明らかになっている。さ らに、細胞質型のクエン酸合成酵素(CS)の発現量増加及び NADP 特異的イソク エン酸脱水素酵素(NADP-ICDH)の発現量の低下が、クエン酸放出能力に関与 することが示唆されていたため、平成 13 年 10 月以降からそれぞれの遺伝子ある いは両遺伝子の組換えによる効果をシロイヌナズナで検証した。CS を単独で過 剰発現させた場合、CS 活性が野生型シロイヌナズナの 2 倍増加した形質転換体 においては酸性土壌からのリン酸吸収量と個体生育量がそれぞれ 30%および 40%増加することが明らかとなっている。NADP-ICDH 酵素活性の低下およびクエ ン酸の放出量が最大であった形質転換体を難溶性リン酸を含む酸性土壌で栽 培した結果、この系統の地上部の新鮮重およびリン含量は共に野生型に対し 80%の増 加 を示 し た 。このこ とから シロ イ ヌナズ ナ におい て CS 過 剰 発 現 、 NADP-ICDH 発現抑制のいずれにおいても根からのクエン酸放出能力が強化され たため、酸性土壌における難溶性リン酸からのリン吸収や Al 耐性が向上し、生 育が大幅に改善されたことが証明された。さらに、これら両遺伝子を同時に組換 110 えたシロイヌナズナも既に作出できていることから、相乗効果があるかどうかにつ いて研究を継続している。 また、モデル植物で得られた上記結果から、ユーカリ交雑種にそれぞれの難溶 性リン酸可溶化遺伝子を導入し、難溶性リン酸の可溶化効果を調査している。ま ず CS 遺伝子を過剰発現させたユーカリ形質転換体(CS 過剰発現ユーカリ)をリン 酸アルミニウムを含む水耕液で栽培した。根における CS 活性は野生型ユーカリと 比べ最大で 2.2 倍に増加していた。このとき、根のクエン酸含量に CS 過剰発現 ユーカリと野生型ユーカリとの間で差は認められなかったものの、リンゴ酸含量が CS 過剰発現ユーカリにおいて増加する傾向にあった。また、CS 活性の増加が最 大であった CS 過剰発現ユーカリでは、根からのクエン酸放出量が増加する傾向 にあった。これらのことから、ユーカリにおいて CS の過剰発現は根からのクエン酸 放出能の強化に貢献する可能性が強く示唆された。次に、リン酸アルミニウムを 含む水耕液で栽培した野生型ユーカリおよび CS 過剰発現形質転換体のリン含 量を測定した。野生型では老化葉のリン含量は若い葉の約半分に低下していた が、CS 過剰発現形質転換体では大きな低下は認められず、老化葉のリン含量は 野生型の 1.8 倍であった。リン欠乏の症状は老化葉などの古い組織から現れるこ とが知られているが、CS 過剰発現形質転換体では野生型と比べその症状が緩和 されていた。これらのことから、CS 過剰発現形質転換体でもシロイヌナズナで得ら れた結果と同様に、難溶性リン酸の可溶化能が強化されることでリン吸収が改善 されることが強く示唆された。さらに、野生型および CS 過剰発現形質転換体を酸 性土壌で栽培し、その個体生育について評価した。栽培開始後 3 ヶ月目の樹高、 枝数、葉数および最大枝長において CS 過剰発現形質転換体が野生型を上回る 傾向にあった。栽培開始後 4 ヶ月目に地上部および根の新鮮重を測定したとこ ろ、いずれも CS 過剰発現形質転換体の方が高く、特に根では 24%の重量増加 が認められた。以上より、ユーカリにおいて CS 過剰発現は酸性土壌での生育を 改善させることが示された。 さらに、ユーカリの NADP-ICDH 発現量を低下させるため、根で発現している NADP-ICDH 遺伝子をユーカリ EST 情報から単離し、その遺伝子発現を RNAi で抑 制する NADP-ICDH 発現抑制遺伝子を構築した。同遺伝子をユーカリ交雑種に導 入して得られた NADP-ICDH の発現抑制を行った形質転換体(ICDH 抑制ユーカリ) について解析した。早生分枝の段階で NADP-ICDH 酵素活性を指標にスクリーニ ングを行い、活性が低下が大きかった個体を植物体に再分化させた。その結果、 根における NADP-ICDH 活性が野生型ユーカリのそれぞれ 32%および 50%にま で低下した ICDH 抑制ユーカリを得ることができた。現在、これらの ICDH 抑制ユー カリの土耕栽培による生育調査および有機酸代謝の試験を継続して行ってい る。 カタラーゼ遺伝子導入ユーカリの評価 強光照射下の植物では細胞内で活性酸素が発生する。植物は活性酸素の消 去系を発達させているが、消去系の能力を超えて活性酸素が生成する場合、活 性酸素は植物に害を及ぼす(光阻害)。本研究では、ストレス耐性ユーカリの作 出を目的として、ユーカリの活性酸素消去能の強化を試みた。ユーカリに対し大 腸菌由来のカタラーゼ遺伝子を導入し、カタラーゼを葉緑体に蓄積させた。葉緑 体は光化学反応の場であるために活性酸素の発生部位であるが、カタラーゼは 葉緑体内に本来は存在しない。遺伝子導入の効果を解析するために活性酸素 発生剤であるメチルビオローゲン(MV)を用いた。形質転換ユーカリは MV 処理に 111 対する耐性が向上していたことから、活性酸素消去能が強化されたことを確認し た。 4) 形質転換ユーカリの実用化試験 形質転換ユーカリを事業環境に植栽するためには、交配が懸念される植物への 遺伝子の伝搬を防止する措置が必要となる。そのため組換え遺伝子の拡散を抑 制する技術開発として、接ぎ木法を利用して地下部に難溶性リン酸可溶化遺伝 子、CS 遺伝子、を持ち、地上部が野生型となるキメラ植物体を作出した。また、形 質転換母材料となるユーカリ樹種カマルドレンシス種(E. camaldulensis)とユー カリ交雑種(E. grandis×E. urophylla)のベトナムでの環境適応性試験を実施 して、将来的に形質転換ユーカリの隔離圃場試験が実施できる体制にあることを 確認した。 B. 目標の達成度 1)ユーカリの形質転換技術の開発 目標水準:事業植林に利用されているユーカリ樹種について形質転換技術を開 発する。ユーカリで開発した苗条原基法及び早生分枝法を基礎として、複数の ユーカリ樹種についてもアグロバクテリウムの感染率の向上、カルスからの再分 化率の向上と形質転換に要する期間の短縮を行う。 達成度:事業植林に利用されているユーカリ 5 樹種(E. camaldulensis、ユーカ リ交雑種 E. grandis×E. urophylla、E.dunnii、E.grandis、E. globulus)の 形質転換技術の開発を検討し、3 樹種(E. camaldulensis、ユーカリ交雑種 E. grandis×E. urophylla、E.grandis)については高効率かつ短期間に形質転 換体を得ることができる形質転換技術を確立した。この際、効率的に形質転換で きる要因として、形質転換母材料のアグロバクテリウム感染性と再分化効率を指 標とした個体選抜、再分化の組織培養における光環境が重要であることを明らか にした。また、完全な植物体の再分化には至っていないが、ユーカリ 2 樹種 (E.dunnii、E. globulus)についても形質転換植物が得られた。今後、再分化 能力に優れた形質転換母材料に対して、上記技術を応用することにより事業応 用も可能な形質転換技術となることが期待できる。以上のことから、当初目標とし た事業応用が可能なユーカリ樹種に対して、形質転換技術を確立することができ た。 2)遺伝子発現制御システムの開発 目標水準:ユーカリの樹幹と根で有効に機能する遺伝子発現制御システムを開 発する。特に根における遺伝子発現制御システムに関しては、モデル植物にお いて開発されるプロモーター領域のユーカリにおける機能を検証する。これまで 世界的にも木本植物において器官別の遺伝子発現制御システムを開発した試 みはない。 達成度:ユーカリ樹幹で特異的に遺伝子を発現する 7 遺伝子を特定し、そのうち 3 遺伝子(WIP、CesA、Xyl)についてプロモーター候補領域の単離と植物機能解 析を継続している。WIP 遺伝子プロモーターについては塩基配列の決定を行い、 形質転換ユーカリを取得したが、現在のところ、ユーカリで機能することを確認で きていない。 一方、根特異的発現プロモーターに関しては、モデル植物で根特異的発現が確 認できたリン酸トランスポーターPHT1 遺伝子プロモーターおよびアルコール脱水 112 素酵素 ADH 遺伝子プロモーターの発現をユーカリで検討したが、ユーカリでは機 能しなかった。そこで、PHT1 遺伝子のユーカリオーソログを単離し、ユーカリでの 機能性の確認を行っている。現時点でユーカリでの器官特異的なプロモーター を検証するには至っていない。しかし、草本性モデル植物のプロモーターはユー カリでは機能しない可能性が高く、モデル植物で器官特異性等の有効性が検証 された遺伝子のユーカリオーソログのプロモーターを利用することが有効手段に なると考えている。 3)多重遺伝子の導入と評価 目標水準:ユーカリの成長性を改善する多重遺伝子の導入技術を検証する。多 重遺伝子の例として、根からクエン酸を放出することにより、酸性土壌における難 溶性リン酸の利用効率向上に関わる遺伝子と活性酸素消去遺伝子を事業植林 に利用されているユーカリ樹種に導入し、不良環境での工業原料植物の生産性 改善を評価する。 達成度:植物根からクエン酸の放出量を増やすために、細胞質型のクエン酸合 成 酵 素 (CS)を過 剰発 現 さ せ 、さ ら に NADP 特 異 的 イソ ク エン酸 脱 水 素 酵 素 (NADP-ICDH)の発現を抑制する代謝制御を行った。戦略の妥当性をモデル植物 で検証するため、シロイヌナズナにおいて CS 過剰発現、NADP-ICDH 発現を抑制 して、根からのクエン酸放出量が増加し、酸性土壌における生育が大幅に改善さ れることを証明した。さらに、事業応用が可能なユーカリ交雑種でも CS 遺伝子を 過剰発現させた CS 過剰発現ユーカリを作出することに成功し、酸性土壌での生 育が改善させることを実証できた。さらにユーカリにおける NADP-ICDH の発現抑 制に関しては、ユーカリ根 EST 情報から NADP-ICDH 遺伝子を単離し、RNAi 法を 利用した ICDH 抑制ユーカリを得ることができた。ユーカリでは CS 過剰発現により 酸性土壌耐性を実証できたが、さらなる耐性能力の向上を目指して、ICDH 抑制 ユーカリおよび CS 過剰発現と ICDH 抑制の多重組換えによる効果の実証試験を 継続している。 また、ストレス耐性ユーカリの作出を目的として、ユーカリ交雑種に大腸菌由来の カタラーゼ(katE)遺伝子を導入し、活性酸素消去能の強化を確認した。最終的 に、集中研究室の遺伝子多重化技術を利用して、難溶性リン酸の可溶化に効果 がある CS 過剰発現遺伝子と NADP-ICDH 発現抑制遺伝子、活性酸素消去に効果 がある katE 遺伝子を多重化してユーカリ交雑種に導入することに成功した。 4) 形質転換ユーカリの実用化試験 目標水準:形質転換ユーカリを隔離圃場等で実用化試験するためには、安全性 評価が必要である。ユーカリでは開花に長期間を要することもあり、プロジェクト 期間中に安全性評価を完了することは困難である。本研究課題では、本プロジ ェクトで作出した難溶性リン酸の可溶化能力を強化したユーカリ樹種に対する組 換え遺伝子の拡散防止措置を提案する。また、形質転換対象の非組換えユーカ リについてフィールドテスト候補地で生育状況を調査する。 達成度:形質転換ユーカリの安全性確保で最も重要な組換え遺伝子の拡散を抑 制する技術開発として、接ぎ木による安全性確保技術を実現した。また、形質転 換母材料となるユーカリ樹種のカマルドレンシス種と交雑種のベトナムでの環境 適応性試験を実施し、期待通りの成長を確認した。 C. 成果の意義 113 1)ユーカリの形質転換技術の開発 事業植林に利用されているユーカリ樹種に対して、苗条原基法および早生分枝 法を基本とする作出効率に優れた形質転換技術を確立した。本形質転換技術 は対象としたすべてのユーカリ樹種に適応できることが証明できたことから、一般 性のある形質転換技術に発展できる可能性が示唆された。さらに、この基礎技術 を他樹種に適応させるために必要な要因についても明らかにすることができ、ユ ーカリのみならず他種植物においても事業的な形質転換技術開発に波及効果 が期待できる。 本形質転換技術開発により、産業的価値が広く認められ、植林技術が既に確立 しているユーカリに対して多種多様な有用遺伝子を導入することが可能となった。 近年、様々な環境ストレスに耐性を付与する遺伝子の単離の報告があるが、これ ら有用遺伝子をユーカリに導入することにより、環境ストレスによって抑制されて いる成長性を向上させることにより、二酸化炭素固定量を増大できる。また、乾燥 害や塩害等が原因となっている植林不適地への植林を可能にし、植林面積の拡 大による地球環境改善も期待できる。さらに、ユーカリに工業原料生産遺伝子を 効率的に導入することが可能となり、バイオマスの生産能力の高いユーカリから 様々な工業原料を生産でき、低環境負荷で省エネルギー型の工業原料生産シ ステムを構築できることが期待できる。 2)遺伝子発現制御システムの開発 本技術開発ではユーカリで器官特異的に遺伝子発現を制御できることを検証す るには至らなかった。しかし、本プロジェクトでユーカリから単離した樹幹や根で 特異的に遺伝子発現が期待できるプロモーターは遺伝子発現を可能とする樹齢 に達していなかった可能性もあるため、得られた形質転換ユーカリの遺伝子発現 状況を継続的に調査する。さらに重要なことは、草本植物と木本植物ではその遺 伝子発現制御システムに互換性がない可能性を示唆する結果を得た。従って、 本技術開発での基本戦略とした草本のモデル植物から単離したプロモーターを 木本植物であるユーカリに適用することは困難であると考えるに至った。一方、目 的器官で環境ストレス耐性遺伝子や工業原料生産遺伝子等の有用遺伝子を、 ユーカリ等の木本植物で、効率的に機能させる技術開発は外来遺伝子の不要 器官での発現の負担を軽減するためにも、将来的に必須であると考えている。そ のため、モデル植物で器官特異性等の有効性が検証された遺伝子のユーカリオ ーソログのプロモーターを利用することが有効手段になると考え、シロイヌナズナ の根で器官特異性が高かった PHT1 遺伝子のユーカリオーソログを単離し、ユー カリでの機能性を検証する研究を開始した。 3)多重遺伝子の導入と評価 本技術開発では不良環境での成長性を改善する遺伝子として、難溶性リン酸の 可溶化に関わる遺伝子群と活性酸素の消去に関わる遺伝子をユーカリに導入し た。酸性土壌ではリン酸が植物に利用されにくい難溶性リン酸となり、植物がリン 酸欠乏となる。世界の耕作地の約 1/3 で難溶性リン酸が原因で植物の成長が阻 害されていると言われている。本技術開発でユーカリのクエン酸代謝を制御する ことにより、閉鎖系温室内の酸性土壌における栽培試験で成長性の改善が証明 できたことから、開放系における難溶性リン酸の存在環境においても成長性の改 善とリン酸施肥量の軽減、ひいてはリン酸肥料製造に関わるエネルギーの削減 が期待できる。また、本技術開発で得られたクエン酸の代謝制御はシロイヌナズ 114 ナでも検証できていることから、草本性植物を含む他種属植物にも適用できる一 般性のある技術であり、工業植物のみならず農業生産にも多大なる波及効果が 期待できる。さらに、活性酸素消去遺伝子は草本性植物において、強光ストレス や塩ストレス等の環境ストレスに対して耐性能力を付与することが既に知られて いることから、本技術開発で得られた活性酸素消去能力を強化した形質転換ユ ーカリにおいても成長性の向上と栽培コストの低減が期待できる。このように、工 業原料植物に複数の有用形質を導入できることを示せたことは、形質転換樹木 の実用化に向けて重要な第一歩となった。 4) 形質転換ユーカリの実用化試験 これまで形質転換樹木では開花に長期間を要することから稔性等の遺伝子拡散 特性を調べることが困難であった。そのような状況から、形質転換樹木の試験期 間を開花するまでとの制限を設けて、閉鎖系以降の評価試験がなされてきた。本 研究課題では接ぎ木法を利用して地下部(台木)に組換え遺伝子を有する CS 過 剰発現ユーカリ、地上部(穂木)が野生型ユーカリとなるキメラ植物体を作出した。 本法は地上部の形質転換植物に適用できず、また組換え体の作出コストも上昇 するが、確実に組換え遺伝子の拡散を防止する方法として実用化できる可能性 がある。また、形質転換ユーカリの実用化のためには、フィールドテスト候補地で 形質転換対象の非組換えユーカリの生育特性を事前に調査しておく必要があり、 ベトナムにおいて実施し成果を収めた。 2.2 高度不飽和脂肪酸生産大豆の研究開発(サントリー株式会社) A.研究成果 1) 高度不飽和脂肪酸生産に必要な酵素の遺伝子群を微生物から取得。 ゼニゴケ由来Δ6 不飽和化酵素、Δ5 不飽和化酵素、鎖延長酵素遺伝子を 取得(京都大学福澤研究室) 2)上記遺伝子を含む適切な発現ベクターを導入し、植物の脂肪酸組成を改変 する、ダイズ、アズキなどの形質転換系の開発。 2-1)Δ6 不飽和化酵素遺伝子を構成的に発現するベクターをミヤコグサ(マメ科 のモデル植物)にも導入し、形質転換体を取得した。葉でγ-リノレン酸が生 産されていた。自家受粉により得た次の世代の葉を分析したところ、やはりγ -リノレン酸が生産されており、脂肪酸の改変された形質が次世代に伝わるこ とがわかった。 2-2)アラキドン酸生産のために、Δ6 不飽和化酵素遺伝子、鎖長延長酵素遺伝 子、Δ5不飽和化酵素遺伝子を含むダイズ用ベクターを 16 種類構築した。 2-3)ダイズの未熟種子から誘導した不定胚を用いて遺伝子導入する系を構築し た。構築したダイズ用アラキドン酸生産ベクターは、遺伝子銃を用いてダイズ 不定胚に導入した。 2-4)ダイズ発芽種子へのアグロバクテリウム法による遺伝子導入も開始した(東 北大学亀谷研究室)。 2-5)形質転換ダイズを 2 系統(2 種類のベクター)得ることができた。どちらの系統 も成熟胚の段階でアラキドン酸を生産しており、種子中でも生産していること が期待された。2 系統のうち 1 系統が開花、結実し、種子を得ることができ、脂 質分析を行った結果、種子中でもアラキドン酸の生産を確認した。 115 3) 導入遺伝子の安定発現と目的遺伝子の発現を抑制する技術の開発。 3-1)導入遺伝子を安定に発現しているペチュニア形質転換体から、導入遺伝子 周辺の領域をクローニングした。この領域を評価するためのベクターを構築し、 ペチュニアに導入した。導入遺伝子の転写レベルを測定したが、上昇やばら つきの減少は観察されなかった。 3-2)ダイズのΔ12 不飽和化酵素遺伝子の発現を RNAi 法により抑制するベクタ ーを作製し、大豆へ導入。導入した形質転換体種子でα-リノレン酸量の低 下が見られたが、確認のためには次世代を解析する必要がある。 4)ダイズ種子特異的プロモーターの単離 ダイズ種子由来の公開 EST データベースから出現頻度の高い EST クローン を抽出し、プロモーター領域を単離した。単離したプロモーター領域をデュア ル・ルシフェラーゼ法により解析し、ダイズ種子で発現するプロモーターを 15 種類選抜した。これらのプロモーターのうち 6 種類(グリシニン, オレオシン A, B, スクロース結合タンパク質, アルコールデヒドロゲナーゼ 2, ß-アミラーゼ) に GFP、GUS のレポーター遺伝子を連結し、形質転換シロイヌナズナでこれら の種子特異性を解析した。6 種類のうちグリシニンとオレオシン B が高い種子 特異性を示し、スクロース結合タンパク質はグリシニンやオレオシン B に比べ 活性は弱いが種子特異性を示した。一方、オレオシン A は根に、アルコール デヒドロゲナーゼ 2 は本葉にそれぞれ活性が見られ、種子以外の器官でも発 現すると考えられた。また、ß-アミラーゼプロモーターはシロイヌナズナでは機 能しなかった。 B.目標の達成度 目標を達成した。Mortierella の 3 種の遺伝子を利用し、ダイズの種子で、ダ イズが本来生産しないアラキドン酸などの高度不飽和脂肪酸を生産することに成 功した。ダイズの種子特異的プロモーターも取得した。 ダイズ発芽種子へのアグロバクテリウム法による脂肪酸Δ6 不飽和化酵素遺伝子 を導入した形質転換体を育成し、その特性について現在解析中である。(東北 大学亀谷研究室) C.成果の意義(含成果の実用化可能性、波及効果) 目標としたダイズ種子における高度不飽和脂肪酸に成功した(Mortierella の遺伝子による)。蓄積量は数%程度で、工業原料には適さないが、現在、微 生物や魚油からの生産でまかなわれている健康食品素材を、組換えダイズで まかなえる。 2.3 耐塩性植物でのハイブリッドファイバー(ポリ<(R)-3-ヒドロキシブチレート >充填繊維細胞)の生産技術開発 (大成建設株式会社) A. 研究成果 1)耐塩性植物の遺伝子組換え系の確立 1-1) ポリ<(R)-3-ヒドロキシブチレート>(PHB)生合成多重化遺伝子ベクター の作出(中間評価までの成果) 多重化遺伝子を想定した phbB と phbC 多重化ベクター(選抜用マーカーとして、 薬剤耐性遺伝子と intron sGFP(65T))を連結した 2 種のベクター(使用プロモー ターが異なる)を構築した。また、各単独遺伝子挿入ベクターも構築した。発現効 116 率を上げるために phbB と phbC にはヒマカタラーゼのイントロンを挿入した。プロ モーターとして、phbB 遺伝子では CaMV 35S、phbC 遺伝子では 35S またはトマト rbcS プロモーターを用い、多重化の場合には、35S(phbB 遺伝子)、35S(phbC 遺 伝子)または rbcS(phbC 遺伝子)を使用し、合計 5 種類の遺伝子導入用ベクター を作成した。 1-2) モデル植物イネを用いたベクターの性能評価(中間評価までの成果) ベクターの機能を確認するために、上記 5 種類のベクターをモデル植物イネへ 導入した。その結果、各単独遺伝子は高効率(60%以上)でイネに導入され、 RT-PCR で発現が確認された。phbB と phbC 遺伝子は多重連結ベクターとしても同 様の発現能を有する事が分かった。 (ただし、T0 で phbB と phbC の両方を同時に発現する個体の取得率は 30%と低い 事がわかったため、イネ組換え体の生産量を増やす事で対応した。) 1-3) 耐塩性植物での遺伝子導入系の確立 シロザ、タマリクスでの培養条件(培地成分、培養組織、培養温度など)の検討 結果から、タマリクスはシロザよりも、多芽体形成率が優れており、遺伝子導入対 象となる培養体を効率的に確保できる事を見い出した。文献調査の結果、多芽 体での遺伝子導入においては、アグロバクテリウム法が有効である事がわかった ので、この方法を採用した。intron GUS(名古屋大、中村教授より供与)をマーカ ーに用いて、アグロバクテリムの遺伝子導入効率を調査した結果、タマリクスの方 がシロザよりも導入効率の高い傾向が認められた。また、中間評価で「ハイブリッ ドファイバーの生産は木本の方がより適切である」という指摘を受け、得られた結 果でも木本の使用が望ましい事が示唆されたので、中間評価後は、耐塩性樹木 であるタマリクスに絞って研究を進めた。GUS マーカーの実験結果から、遺伝子 導入組織の選抜濃縮が必要である事がわかったので、生体での発現観察が可 能な intron sGFP(S65T)をマーカーとして、導入組織の選別と培養増殖技術を 確立した。 2)塩ストレス条件下でのハイブリッドファイバー生産評価 2-1)ファイバー材料生産技術の確立(導入遺伝子の安定発現評価) 耐塩性植物での遺伝子導入系は後半に確立する計画であったので、ファイバ ーの生産評価にはモデル植物としてイネを用いた。T0 で遺伝子発現機能を確認 した個体の後代を用いて、導入遺伝子の安定発現を調査した結果、有性世代を 重ねる段階で、導入遺伝子が欠落する現象が見い出された。また mRNA レベルも 世代を重ねると不安定である事が確認された。文献や学会での調査から、この現 象は一般的な現象と考えられたので、安定化発現個体の出現率を加味した大量 個体(1,000〜5,000 個体)を確保する事により、ファイバー材料生産を可能とし た。大量個体を取り扱う過程で、ゲノム PCR、RT-PCR の迅速処理法を改良し、50 〜100 個体/日の効率化も達成した。 2-2)PHB 合成遺伝子群(phbB,phbC)の PHB 発現評価 ファイバー材料が確保できる見通しがたったので、RT-PCR により発現を確認し た個体での酵素またはタンパク質レベルでの PHB 生産能力の評価を行なった。 phbB は PHB モノマーを生産する酵素である。まず、この酵素活性測定方法を確 立し、組換え個体が phbB の活性を保有することを立証した。 117 phbC は PHB モノマ−をポリマー化する酵素である。phbC については、文献調査 により活性測定の困難なことが分かっていたので、このタンパクの C 末端を認識 するペプチド抗体(理化学研究所高分子研究室 土肥教授より供与)を利用して ウエスタン分析を行なった。その結果、R. eutropha の抽出タンパクと同じく 66kD の位置にバンドが検出され、タンパク質合成が正常に行なわれている事が明らか となった。 2-3)PHB 合成遺伝子(phbB,phbC)の PHB 生産能力評価 導入した2つの遺伝子が酵素またはタンパク質レベルで機能している事が分か ったので、その PHB 蓄積能力について調査した。phbB と phbC の 2 遺伝子導入個 体では、乾物重あたり 0.1%程度の蓄積量であった。文献によると、遺伝子導入し た植物種により PHB 蓄積量は 0.0004~40% と幅があり、今回導入したイネやタマ リスクは、文献値の範囲に入る事が明らかになった。本テーマでは当初から微量 蓄積による植物繊維の質的転換を目指しているので、遺伝子の PHB 蓄積能力に は問題がないと結論した。 2-4)ハイブリッドファイバー化による質的変化の確認 phbB と phbC の両遺伝子が PHB 蓄積能力を有することが明らかとなったので、 微量蓄積により植物繊維の質的転換が起こるかどうかについて調査した。ワタ繊 維で実施された研究報告(Chowdhury, B. and M. E. John. 1998) を参考に、 示差走査熱量分析による PHB の Tm 値ピークを調査した。PHB 混合試料板で予備 検討した結果、Tm 値の変化が示唆された。そこで、微量に PHB 蓄積が観察された イネ個体葉で同様の試料板を作成し、Tm 値の測定をした結果、0.1%以下の微量 蓄積ながらも Tm 値を変化せしめる傾向が見い出された。以上の結果から、本テ ーマで計画した植物繊維の質的転換、すなわちハイブリッドファイバー化は可能 である事がわかった。 2-5) 塩ストレス条件下でのハイブリッドファイバーの特性調査 本テーマでは、最終的に塩ストレス条件下でのファイバー生産を行なうための 基盤技術確立を目標とするので、海水耐性樹木、タマリクスを用いて海水栽培を 行ない、その試料板の特性について検討した。イネ組換え体では、導入遺伝子 の働きにより細胞内に PHB を蓄積させた場合と PHB と植物繊維を混合した試料板 とで質的変化の方向性が一致する傾向が見い出されたので、本検討においては 材料が充分確保できる非組換えタマリクスを用いた。 海水栽培タマリクスでは、真水栽培の材料に比べ、繊維の粒度が小さくなる傾 向が認められ、栽培条件がファイバー形状に影響したものと推察された。しかし、 成形特性においてはモデル植物イネと同程度の圧力(4〜20 トン)と圧縮時間 (10 分)で行なう事ができ、海水栽培と真水栽培材料間で差がなかった事から、 植物種、栽培法の違いがあってもボード成形特性に影響するほど大きくないと判 断された。圧縮強度について海水栽培の影響を調査した結果、大きな差は認め られなかった。4%PHB の混合により、イネの場合と同様に圧縮強度と弾性率の増 加が認められた。吸湿性についても 4%PHB 混合粉体由来の圧縮ボードでは、イ ネの場合に類似して吸湿性が低下する事が認められた。 以上の結果から、一部の繊維特性(繊維の粒度)からみた塩ストレス条件での 栽培条件の検討が新たな課題として見い出されたが、強度、吸湿性および成形 特性の点からみて、耐塩性樹木タマリクスでのハイブリッドファイバーの生産は可 118 能であると判断された。 3)ハイブリッドファイバーを用いた圧縮ボード試作 3-1)PHB 混合繊維を用いた特性変化項目の把握 モデル植物イネでは、ハイブリッドファイバー化が可能である事が示唆されたの で、その質的変化の概要を把握する目的で様々な特性調査を行なった。調査に は、PHB 混合イネ繊維を用い圧縮ボードを試作した。その結果、4%PHB 混合で強 度(圧縮、曲げ)の増大、弾性率の増大(圧縮、曲げ、引っ張り)、熱膨張率の低 下と吸湿性の低下(寸法安定性)などの効果が明らかとなった。一方、熱伝導率 など断熱性については効果がないこともわかった。 次に、代表的な特性として弾性率と力学強度を選び、PHB 含有率とこれらの特 性値の定量的な関係を調査した。今回の成果で観察した組換え植物での PHB 蓄 積量と文献での PHB 蓄積量を参考に、PHB の混合率を 0.01〜4%の範囲で変えて、 圧縮試験時の弾性率と最大点荷重を調査した。その結果、0.01%の添加により弾 性率と最大点荷重は増大し、混合率の増加に応じて弾性率と最大点荷重はさら に増大する傾向が得られた。これらの事から、PHB の蓄積量の増大に応じて特性 変化の度合も大きくなる傾向がわかった。 3-2)PHB 合成遺伝子群の導入による特性変化 次に PHB ポリマー蓄積を確認した組換えイネ地上部を用いて圧縮ボードを試作 した。圧縮強度と吸湿性を調査した結果、PHB 混合繊維を用いた場合と同様の特 性変化傾向が観察された。また、混合した場合と同じ含有量でも、特性によって 混合した場合と同等以上の効果が示された。この事は混合繊維と細胞内に蓄積 した場合とでは PHB 成分のもたらす効果に違いがある事を示唆した。これらの事 から微量の PHB 含有率でも、ハイブリッドファイバー化は可能であると考えられ た。 3-3)耐塩性植物タマリクスでの圧縮ボード試作 モデル植物イネを用いてハイブリッドファイバーの特性変化について調査した 結果、当初目標を達成しうる効果が見い出された。そこで、最終的に実用化をは かる耐塩性植物(タマリクス)での圧縮ボード試作を行なった。まず、モデル植物 イネと同様に PHB 混合繊維を用いて、特性調査項目を絞り込んだ。調査には真 水栽培と塩水栽培した 2 種類のタマリクス繊維を用いた。その結果、PHB による強 度増加や弾性率の向上効果についてはイネと同様の傾向が示された。吸湿性に ついても、混合繊維の場合と同様に、組換え体で向上効果認められた。 また、特性の種類によって、同程度の PHB 含有量でも、組換え体では混合した 場合と同等以上の効果が示された。この事は混合繊維と細胞内に蓄積した場合 とでは PHB 成分のもたらす効果に違いがあり、低い含有率でも細胞内蓄積の方 が混合繊維よりも効果の現れやすいことを示唆した。これらの事から植物種により、 特性変化の程度が異なる可能性も残るが、phbB と phbC の遺伝子によるハイブリ ッド効果は新規性能として実証できたと考えられる。従って、当初計画通り耐塩 性樹木でのハイブリッドファイバー化が達成されたものと判断した。 4)ハイブリッドファイバー基盤技術確立 以上の開発研究の結果、phbB、phbC 遺伝子を用いる事により、提案したハイブ リッドファイバーの創成は可能であることが実証できた。特に、微量の PHB 蓄積で 119 も質的変化が起こる事、人工的に PHB を混合した繊維と組換えにより細胞内に蓄 積した場合とでは PHB 成分のもたらす変化の度合いに違いがあり、特性の種類に よっては、細胞内蓄積の方が混合繊維よりも効果の高くなる事が見い出された。 植物種によって、ハイブリッドファイバー特性が異なる傾向も示されたので、実用 化においては、より具体的に検討を重ねる必要がある事も分かった。PHB 蓄積量 はある程度多い方がハイブリッド効果の大きい事は確認できたが、必ずしも量的 に PHB が多ければよいという訳ではなく、微量で充分ハイブリッドファイバー化が 引き起こされている事を示している。これらの点も実用化研究において詳細に検 討すべき要素として指摘される。以上、本テーマで目標としたハイブリッドファイバ ー基盤技術確立においては、当初目的をほぼ達成したものと考えられた。 B. 目標の達成度 本テーマでは、PHB 充填繊維細胞を用いたハイブリッドファイバーの創成を最 終目標とし、ブレークスルーすべきポイントとして 3 項目を設定した。各項目毎に 達成度を自己評価すると下記のとおりである。 項目(1):耐塩性植物での遺伝子組み換え系の確立においては、ブレークスル ーポイントとして 2 点を設定した。第 1 の PHB 合成遺伝子系のベクター構築につ いては、発現性能を確認できた所から 100%達成度と考えられた。次に、耐塩性 植物での組換え技術については、検討した耐塩性植物の中で、タマリクスを選定 し、その培養再分化率と遺伝子導入率を向上させ、最終的に GFP を選抜マーカ ーとして、組み換え植物が得られた。しかしトランジェントな状態から完全に離脱 させたわけではなく、ゲノム安定性を確認するには至っていない。この点課題は 残るが、最終的に組換え個体を用いてハイブリッドファイバ−特性を評価できたの で、ほぼ目標をクリアーしたものと考えられる。 項目(2):塩ストレス条件下でのハイブリッドファイバー生産評価では、4つのス テップを設定した。第1の多重化遺伝子の安定性評価については、phbB と phbC の多重化遺伝子導入植物において、発現個体の出現率を調査把握し、大量個 体(1,000〜5,000 個体)を確保する事により、ボード作成のための原料生産を達 成できた。 第2の PHB 合成遺伝子の PHB 蓄積機能の評価において、phbB、phbC 各遺伝子 が酵素タンパク質と PHB 蓄積レベルの両方において、機能発現する事を確認で きた。2 遺伝子を導入した場合も、乾燥重量 0.1%程度と微量ではあるが PHB の蓄 積が認められた事からほぼ目標をクリアーしたものと考えられた。 第3のハイブリッドファイバー化による質的変化の確認では、PHB と混合した繊 維試料板または、PHB 合成遺伝子の多重導入イネの繊維を用いて、熱特性の変 化を見い出し、ハイブリッドファイバー化が可能な事を明らかにできた。 第4の塩ストレス下でのハイブリッドファイバーの特性評価については、実用化 植物として想定した耐塩性樹木のタマリクス繊維で圧縮ボードへの成形加工を行 なった。成形性およびボードの強度について塩水栽培の影響は少なく、タマリク ス繊維を用いてもモデル植物イネで示唆されたハイブリッドファイバー化が可能 である事がわかった。 項目(3)のハイブリッドファイバーを用いた圧縮ボードの作成においては、ブレ ークスルーポイントとして 2 点を設定した。 第1の PHB による特性変化項目の把握では、PHB 混合繊維を用いて、wood and plastic combination(WPC)に類似した圧縮ボードの強度増大効果と吸湿性の 低下を見い出した。さらに、新たな測定項目として電気抵抗および熱膨張率の低 120 下も見い出す事ができたので本ステップにおいては、達成度 100%以上と考えら れた。 第2の遺伝子組換え植物繊維を用いたボード作成と特性変化においても、ボ ード強度の増大と吸湿性の低下をイネで実証できた。最終目標である遺伝子組 換えタマリクスにおいても、少なくともボード強度の増大効果が見い出された。他 の項目については調査中である。これらの結果は、植物種でハイブリッド効果に 若干の違いはあるものの、基本的に phbB と phbC の遺伝子によりハイブリッド効果 を付与し得る事を示す。従って、新規性能を持つ WPC の生産は、本基盤技術をさ らに実用化研究に発展させる事により実現しうると考えられた。 以上より、全体として耐塩性組換え植物の選抜方法および PHB 蓄積量の安定 化に課題は残るものの、耐塩性植物繊維を用いたハイブリッドファイバー化の実 証という当初目標はほぼクリアーしたものと判断する。 C. 成果の意義 本テーマでは、植物繊維素中に微量の生物分解性プラスチックを蓄積させるこ とにより、新規ファイバー(ハイブリッドファイバー)を創成する事を目標とした。こ のファイバーは、工業的に生産される WPC に類似し、主に強度と吸湿性の向上効 果を持っていることが明らかとなった。WPC は、石油系プラスチックモノマーを天然 材に吸収させ、加圧・加熱処理によりポリマー化させ、バイオマス材の特性を変 化させている。工業的に生産される WPC 化工程はそのほとんどの部分を石油に 依存しているのに対し、本テーマで実証したハイブリッドファイバーの生物生産は、 植物代謝産物を利用する事によって、モノマーの合成・充填からポリマー化する 1連の工程を PHB 合成遺伝子群で代替する事を特徴とする。従って、技術的に みた本テーマの成果意義は、枯渇しつつある石油資源に依存した化学工業から 脱却する可能性を示し得た点にあると考えられる。 第2点目は、既存の WPC の問題点を解決する可能性を示し得た事にある。WPC には、有機性揮発物質(VOC)や場合によっては環境ホルモンの発生源としての 環境負荷が指摘されている。また、リサイクルの困難性などの問題もある。これに 対して、本テーマで想定したプラスチックは PHB のように生物分解性である所から、 環境低負荷型であり、リサイクルの問題もクリアーされる。さらに VOC 発生が抑制 できればシックハウスなど人間居住空間の問題解決への糸口が提示できる可能 性もあり、ハイブリッドファイバーは人間の健康面と環境面を配慮した新たな建築 素材として誕生しうる可能性もある。 一方、WPC 生産地として設定した砂漠地帯や塩害地などの未利用地では、通常 の作物が生育する事は極めて困難である。その点、耐塩性植物の利用は重要で ある。しかし、これら植物の多くは工業的な価値が低く、経済性に乏しいため、大 規模な原料生産事業に利用されて来なかったのが現状である。その結果、塩害 地は放置され、乾燥地での塩砂漠化が大きな地球環境問題の1つとなっている。 本テーマで目標とした耐塩性植物でハイブリッドファイバー生産技術は、耐塩性 植物利用性の拡大にも繋がり、未利用地での経済効果を生み出すのみならず、 計算外の炭酸ガス固定量増加ひいては塩砂漠化の抑制といった副次効果も期 待できる。このように地球環境問題の観点からみても、本基盤技術の確立は単に 技術的な成果にとどまらない社会的意義を有するものである。 2.4 イソプレノイド・天然ゴム生産植物の創成 121 (日立造船株式会社・大阪大学 小林研究室) A.研究成果 1.トランス型ポリイソプレン産生植物、トチュウに関する研究 中国原産の樹木であるトチュウ (杜仲:Eucommia ulmoides Oliver) は温帯 系に於いて長鎖のtrans-ポリイソプレンを産生する植物として知られている。本 研究では,トチュウにおけるポリイソプレン生合成機構を明らかにするために,ト チュウのポリイソプレン生合成関連遺伝子の取得を試みるとともにその機能の解 析を行った。また,さらに,アグロバクテリウム法およびパーティクルガン法を用い てポリイソプレン生合成関連遺伝子を導入することによる,ポリイソプレン産生能 を改変した有用工業原料植物の創成にも取り組んだ。 1-1.トチュウポリイソプレンの生合成機構の解析 トチュウ葉のcDNA ライブラリーを作成し,まず,ポリイソプレン生合成関連遺伝 子 と し て , 鎖 延 長 に 関 与 す る と 考 え ら れ る Farnesyl diphosphate (FPP) synthase homolog 1, 2 と,鎖長制御に関与すると考えられるIsopentenyl diphosphate (IPP) isomerase homolog 遺伝子の全長を得た。これらの遺伝 子をGlutathione S-transferase (GST) 融合タンパク質として大腸菌で発現を 試みた。その結果,IPP isomerase homolog 遺伝子の翻訳産物の大量調製に 成功し,精製物を用いて活性試験を行ったところ,IPP isomeraseの活性が認め られた.また,反応物を 1H-NMR 分析に供したところ,反応生成物であるDMAPPの 生成が確認された。 1-2.アグロバクテリウム法による遺伝子導入 取得した 2 種類のポリイソプレン生合成遺伝子(FPP 合成酵素ホモログ,IPP 異 性化酵素)について overexpression, antisence, RNAi 用のベクターを構築し, アグロバクテリウム法により導入を試みた。アグロバクテリウム感染後のトチュウ胚 軸および根においてカナマイシンン(50 mg/l)を含む MS 培地(BAP 3 µM,NAA 3 µM)で 30~40 日間選抜した結果,それぞれの構築を導入した個体より発根が確 認された。発根が確認された個体においては液体培養系を用いて現在でも根の 増殖を試みている。また,引き続きアグロバクテリウム法による遺伝子導入を行い, 目的遺伝子が導入された形質転換体の取得を試みている。 1-3.パーティクルガンによる遺伝子導入 アグロバクテリウム法と並行してパーティクルガンによる遺伝子導入も試みた。 まず,条件検討のために,sGFP 遺伝子および カナマイシン 耐性遺伝子を含む プラスミドをトチュウ胚軸に導入した。遺伝子導入後,選抜培地で 1-2 ヶ月おい た胚軸の一部 (3% 程度) から不定芽形成がみられた。次に,上記の2種類のポ リ イ ソ プ レ ン 生 合 成 遺 伝 子 ( FPP 合 成 酵 素 ホ モ ロ グ , IPP 異 性 化 酵 素 ) の overexpression, antisence, RNAi用ベクターの導入を試みた。得られた再分 化個体についてPCR による導入遺伝子の確認を行なったが,導入遺伝子を保持 している形質転換植物は現在得られていない。また,引き続きパーティクルガン による遺伝子導入を行い,目的遺伝子が導入された形質転換体の取得を試み ている。 1-4.組織培養系の改良 1-4-1.トチュウの再分化系の開発 中間評価時点までにトチュウ胚軸を用いた再分化が可能となっていたが,再 度,トチュウ根と胚軸を用いた再分化系の検討を行った。その結果,カルスの誘 導,不定芽の分化,多芽体の形成に適した培地を選定した。 1-4-2.トチュウ根の培養系の開発 122 これまでの研究により,トチュウ胚軸からの再分化系は既に確立されているが, この系を用いて遺伝子導入を行った場合,形質転換体の成長速度が遅く,ゴム の生合成系の評価に長時間を要することが考えられる。そこで,本研究では成長 速度の速いトチュウ根の培養系作出を目的とし,最適な培地の検索を行った。ま た,その最適培地を用いてカルスより分化した根の培養を試みた。カルスより分 化した根の液体振とう培養を行った結果,振とう培養後約 4 週間から 6 週間目に かけて根の伸長が認められた。今後,更なる検討を重ねて効率よい根の培養系 を確立させることにより,より迅速に形質転換体を作出する遺伝子導入系を検討 する。 1-4-3.試験管内接ぎ木法の開発 トチュウ再分化個体の再生の際,シュートからの発根は困難なため,接ぎ木に よる増殖の検討を行った。内径 1 mm または 0.8 mm のシリコンチューブを用い た接ぎ木法について検討を行ったところ,播種後2 ヶ月程度のトチュウ実生 (幹 の太さは 1 mm 程度) において接ぎ木に成功した。 1-5.トチュウ EST (Expression Sequence Tag(s), 発現遺伝子配列断片) 解 析 トチュウゴム産生のポリイソプレン高生産部位である師部 (樹皮) と低生産部 位である木部で発現している遺伝子を比較して、ゴム生合成関連遺伝子に関す る情報を取得する。生名島のトチュウ標準木の当年枝木部および師部 (樹皮) より全RNA を抽出した。これらについて cDNA ライブラリーを作製し、各約 20,000 クローンの シークエンス解析を行なった。得られた EST 配列のうち精度の高い もの (各 16,000 クローン) について clustering,annotation を行なってい る。 1-6.トチュウの花粉飛散試験(西北農林科技大学渭河実験圃場、陜西省・中 国) 遺伝子組換え体の野外栽培を実施するために必要な基礎データを取得する ため,春先に飛散する杜仲の花粉を採取して顕微鏡下で観察し,その飛散距離 を求めた。杜仲花粉の飛散距離の測定は,測定木(開花木)の周りに捕集トラッ プを設け,花粉の採集を行なった。距離は 5, 10, 50, 100, 200m とし東西南北 の4方位似て実施した。結果は,天候・風向き等に左右されるが計測点の 200m 以上に飛散が見られた。なお,花粉の飛散量は一日を通して午前中が多い傾向 を示した。次年度は気象データと計測距離を最大 3km と拡張して花粉トラップの 飛散距離の測定を行う。 2.シス型ポリイソプレン産生植物、ペリプロカに関する研究 ペリプロカ(Periploca sepium Bunge)は中国西北部の半乾燥地帯に生育す る矮性・半木性のツル植物である。本植物はヒツジなど動物食害がなく,根茎は 香加皮(コウカヒ)という生薬で強心作用を有する。また,古くは長城の燈火台用 薪炭発火燃料として用いられ,そのよく燃える性質から炭化水素類を多く含むと されている。本植物はミドリサンゴなどと同様に,茎等の断面からは乳白色の液が 滲出する。これまでの研究からこの白色の乳液中にはポリイソプレノイドが含まれ ている可能性が高い。そこで,本研究においてペリプロカのポリイソプレノイド生 産植物としての可能性を調べ,ゴム生合成機構解析および有用形質転換体の 作出に利用することを目的として研究を行った。 2-1.ペリプロカの産生するゴム成分の解析 ペリプロカのゴム生産植物としての可能性を調べるため乳液中に含まれるポリ 123 イソプレンの構造ならびに分子量分布について詳細に分析を行い,1.3×105 (Mn),重量平均分子量4.1×105(Mw)で,Mw/Mn 3.1の分子量分布を有するシス 型ポリイソプレンの存在を明らかにした。また,成育期間一ヶ月の幼植物体にお いてもシス型ポリイソプレンの存在を確認した。 2-2.ペリプロカの中国現地調査 本研究で用いているペリプロカは,種が未同定であったため中国現地調査を 行い種の同定を試みた。西北農林科技大学に保管されているタイプ標本と比較 した結果,Periploca sepium であることが判明した。 2-3.ペリプロカの粗酵素抽出液の調製と酵素活性測定 ペリプロカの茎および葉から粗酵素抽出液を調製し,14C-IPP とアリル基質を用 いて酵素反応を行い,生成物の解析を行った。その結果,主としてファルネシル 二リン酸およびゲラニルゲラニル二リン酸を生成する他に,長鎖プレニル二リン 酸およびゴム成分と思われる高分子の反応物が認められた。 2-4.ペリプロカのcis-prenyltransferaseおよびIPP isomerase遺伝子のクロ ーニング ペリプロカの cDNA ライブラリーを作製し,ポリイソプレン生合成関連遺伝子のク ローニングを試みた。その結果,全長 1,444 bp の cis PT 遺伝子ホモログおよび 全長 1,203bp の IPP isomerase 遺伝子を取得した。 2-5.ペリプロカ cis-prenyltransferase および IPP isomerase 機能解析 ペリプロカの cis-prenyltransferase および IPP isomerase 遺伝子のタンパ ク質大量発現用 vector を作製し,酵母および大腸菌における発現を試み, IPPsomerase は GST 融合タンパク質の大量発現に成功した。得られた融合タンパ ク質を精製した後 IPPisomerase 活性を調べたところ,至適 Mg2+濃度が 2mM,至 適 pH が MOPS Buffer pH 7.0 であった。また,最適条件下で反応を行った生成 物をプロトン NMR 分析に供し,DMPP の生成を確認した。 2-6.ペリプロカの形質転換系の構築 ペリプロカにアグロバクテリウム法を用いて GFP 遺伝子導入を行った。中間評 価時点までは蛍光顕微鏡による遺伝子発現の観察にとどまっていたが,今回の 研究において,ゲノム PCR 分析により導入遺伝子の染色体への挿入が確認され た。また,Western 分析により GFP 遺伝子の発現がタンパク質レベルで確認され た。 2-7.ペリプロカの形質転換体の作出 ペリプロカ cis PT 遺伝子および IPP isomerase 遺伝子の overexpression, antisense,RNAi 用の計 6 種類のベクターをペリプロカにアグロバクテリウム法で 導入した。蛍光反応を示す形質転換植物体として, cis PT antisense と IPP isomerase RNAi の構築が導入された計 2 個体が得られた。これらより DNA を抽 出しゲノム PCR 分析を行ったところ,sGFP 遺伝子の導入が確認された。 B. 目標の達成度 本プロジェクトの開始期には,ポリイソプレノイドの個々の化合物において天然 物化学領域で知られている程度の情報は存在したが,高分子であるゴムに関し て 1960 年代以降は世界的に研究が進んでおらず,分子生物学に対応できる分 析化学的評価系はなかった。また,ゴムの生合成遺伝子に関する研究はパラゴ ムなどを中心としたものであり,トランス型に関しては研究対象とされていなかった。 しかし,本研究によりトランス・シス型ポリイソプレノイド生合成に関与する遺伝子 解析と遺伝子導入,組換え体の解析が可能になり、研究は飛躍的に発展し期首 124 の目標に達したと判断している。しかし,ポリイソプレノイド生合成経路は非常に 複雑な生合成経路であり、生命維持活動に直結した二次代謝産物,植物ホルモ ン等の生理代謝とも関連があり,これらの複合要因から導入した個体の脱・再分 化が難しく,しかも,組換えた植物体は成長しにくいという結果が得られている。 したがって、今後はメタボローム解析,EST 解析によって,細胞や組織での詳細 な代謝プロファイルを明らかにし,導入遺伝子を目的別・機能別に細胞・組織特 異的に発現制御することが必要不可欠と考えられる。 C. 成果の意義 本グループは,世界で唯一トランス型ゴムに関する研究をおこなっており,また, ゴム成分および関連代謝物の高い分析技術を有している。トチュウのゴムの生合 成に関する遺伝子については,現在は 2 種類であるが,今後,EST 解析の成果 によってその数は飛躍的に増える。トチュウの形質転換体の作出は,他の研究機 関では積極的に取り組んでおらず,当該プロジェクトでは関連遺伝子の機能評 価を行い,有用植物体の作出も同時に行える技術の実用的開発に取り組んでい る点で評価できる。一方,トランス型ゴムの実用化面での評価や素材開発が遅れ ている。植物を利用した工業原料創成技術は GMO 食品の開発と比べ比較的容易 である。 本プロジェクトではイソプレノイド・天然ゴムの生産能の向上,すなわち炭化水 素を如何に蓄積させるかの機構を解析する技術である。しかし,これらの技術開 発にはゴム成分の分析技術の開発,ゴム代謝に関連する遺伝子の取得,取得し た遺伝子の導入と形質の発現など様々な問題が山積している。対象とする植物 は遺伝的背景が全く解析されていないトチュウとペリプロカであり,非常に困難な 点が多い。しかし,実用植物を対象とした研究開発は今後ますます重要であり, これらの研究成果をベースとしたタイヤ原料,植物性プラスチック等の開発がタイ ヤ産業,自動車産業分野で期待されている。 2.5 タンパク質組織特異的高生産植物の研究開発 (三井化学株式会社) A.研究成果 1)Cab プロモーターによる茎葉特異的なフィターゼ発現制御 本研究では不要とされる茎葉部において特異的にフィターゼを高発現させる ことを目的とする。そこでまず、フィターゼ活性を有するルーピン由来酸性フォス ファターゼ(LASAP2)について光応答型のイネ由来 Cab プロモーター(特許 2086045、Tada, Y. et al.、1991)を用いたコンストラクトを構築し、イネに導入し て LASAP2 が茎葉部特異的に発現するかどうかを調べた。 形質転換イネおよび対照の非形質転換イネについて、緑葉、根及び種子から それぞれ粗酵素液を調製し、フィターゼ活性の測定及び LASAP2 抗体を用いたウ ェスタン解析を実施した。その結果、形質転換イネの根及び種子におけるフィタ ーゼ活性は非形質転換イネと同レベルの低い活性であったが、形質転換イネの 緑葉では非形質転換イネ以上の高い活性が認められた。ウェスタン解析により、 免疫学的にも LASAP2 タンパク質は根及び種子では発現せず、茎葉においての み発現していることがわかった。以上のように光応答型の Cab プロモーターを用 いることにより、茎葉部特異的にフィターゼを発現させることが可能であることが確 かめられた。 125 2)サツマイモの高効率形質転換系の確立 シロイヌナズナ、タバコ、イネ等とは異なり、サツマイモの形質転換は非常に困 難とされる。そこで当社では、東日本の最有力品種であるベニアズマを用いて高 効率の形質転換系の確立を試みた。そこでまず、茎葉切片を用いて効率 90%以 上の再分化系を確立し、それにアグロバクテリウムを介した形質転換法、および カナマイシンとハイグロマイシンによる 2 段階選抜法を組み合わせることにより、 35%という高い効率で形質転換体を得ることに成功した。なお、この方法によれ ば、出発材料の茎葉切片は無菌苗からでも、あるいはフィールド由来のサツマイ モ塊根からシュートを出させてそれを表面殺菌しても使うことができるので、材料 の調達という面からもメリットが大きいことが判明した。 3)フィターゼ高発現用コンストラクトの選定 上記の LASAP2、及び LASAP2 よりも基質特異性と比活性が高いという点で有望 な酵母 Schwanninomyces occidentalis 由来のフィターゼについて下記に示す 様々なコンストラクトを構築し、モデル植物であるシロイヌナズナへ導入してフィタ ーゼの高発現を誘導するコンストラクトを評価・選定することにした。まず、LASAP2 については、タンパク質安定貯蔵法の検討という観点から 3 種類の移行シグナル、 すなわち葉緑体移行型のイネ由来 RubisCO small subunit、細胞間隙移行型の イネ由来キチナーゼ(cht)、そしてゴルジ体移行型の大麦由来α-アミラーゼの シグナル配列を付加したコンストラクトを構築した。一方、酵母フィターゼについ ては、全長のオープンリーディングフレームを含む酵母フィターゼの cDNA(酵母 f)、酵母フィターゼのコドンを対象植物とするイネに合せて最適化して合成したも の(改変 f)、酵母 f のアミノ酸配列を局在性プログラム PSORT で予測し、移行シ グナル付加による細胞内小器官への移行に影響を及ぼす可能性のある N 末の 15 アミノ酸部分を除去したもの(酵母 s)、同様に‘改変 f’の 15 アミノ酸部分を除 去したもの(改変 s)を使用し、安定・高発現で特に効果が期待されたイネ由来キ チナーゼ(cht)の細胞外分泌シグナルをそれぞれに付加したものを構築した。な お、LASAP2 と酵母フィターゼのコンストラクトにおいては、CaMV35S とイネ Cab のプ ロモーターを用いた。さらに Cab プロモーターに NtADH -5’ UTR(奈良先端大、加 藤先生から分与)を連結したものを用いた。以上、構築した全 38 種のコンストラク トをシロイヌナズナへ導入し、得られた形質転換体の茎葉部のフィターゼ活性を 測定した結果、非形質転換体およびベクターのみを導入した個体よりも高い活性 を示す形質転換体は全てプロモーターの種類に関わらず、全長のコドン改変型 酵母フィターゼ遺伝子である‘改変 f’、またはN末除去コドン改変型酵母フィタ ーゼ遺伝子である‘改変 s’に‘cht’のシグナル配列を付加したコンストラクトを導 入した系統であった。従って、フィターゼ高発現用コンストラクトとして当該コンスト ラクトを選定し、優先的に以後の形質転換に用いることにした。 4)イネにおけるフィターゼの高発現と安定性評価 イネにおいてフィターゼの高発現誘導が期待される<イネ由来 Cab プロモータ ー - イネ由来キチナーゼ細胞外分泌シグナル‘cht’- コドン改変型酵母フィタ ーゼ遺伝子(‘改変 f’又は‘改変 s’)>のコンストラクトを中心に 24 種のコンスト ラクトをイネへ導入し、全 114 系統についてフィターゼ活性を測定したところ、上 記の高発現用コンストラクトを導入した系統においてのみ飛躍的な活性上昇が確 認された。‘改変 f ’導入系統における最大活性値は、cht 改変 f-#3 系統にお ける約 4.6 U/g-FW(対照イネの 119 倍)であり、‘改変 s’導入系統における最大 活性値は、cht 改変 s-#11 系統における約 10.6U/g-FW(対照の 273 倍)であっ た。以上のように、高発現用コンストラクトをイネに導入することにより、当社が目 126 標と掲げた値と同等あるいはそれ以上の活性発現に成功した。また、これまでに 得られた大半の形質転換イネ系統は低コピー(1~4 コピー)の遺伝子導入であり、 これらの生育、表現系は対照イネと大差無いことがわかった。さらに、次世代にお いてもフィターゼが安定的に発現することが確かめられた。 cht 改変 f-#3 系統由来のイネ発現型酵母フィターゼ(以下、イネ発現型と略 す)の至適温度は、酵母フィターゼ標品(以下、標品と略す)と同じ 70℃であり、 至適 pH も同じ約 4.5 であった。15 分の熱処理試験でもイネ発現型と標品は同様 の安定性を示したが、70℃付近においてはイネ発現型の方が標品よりもやや高 い安定性を示した。また、cht 改変 f-#3 系統の緑葉切片および緑葉抽出液中を、 4℃、25℃、37℃、50℃で一定期間処理した場合のイネ発現型酵母フィターゼの 安定性を調べたところ、極めて高い安定性を示した。例として、37℃の4週間処 理では緑葉抽出液中の全可溶性タンパク質は 1.7%以下にまで低下したが、フ ィターゼ活性は 90%であった。また、SDS-PAGE 後のウェスタン解析において、標 品は 80-100 kDa、イネ発現型は 70 kDa を示すが、いずれも完全な脱糖鎖処理 後においてはポリペブチドのみの推定される 52 kDa に一致した。以上の結果か ら、イネ発現型は標品よりも糖鎖修飾レベルはかなり低いが、フィターゼとして望 ましい耐熱性および安定性を維持することがわかった。 次に、イネ発現型酵母フィターゼが飼料中に含まれるフィチン酸を加水分解す る能力があるかどうかを調べるため、cht 改変 f-#3 系統の茎葉を豚用混合飼料 に 10%の割合で添加し(フィターゼ約 500 U/kg 飼料に相当)、37℃の反応液中 における遊離リン酸を定量したところ、標品 500 U/kg 飼料の場合よりもフィチン酸 の加水分解能力がやや高いことを確認した。 植物由来の粗飼料は収穫後も腐敗させずに長期間安定に保存する目的でサ イレージ処理(一種の嫌気発酵)が広く行われている。そこで実用性評価という観 点から、山形大学農学部高橋先生の技術指導の下、cht 改変 f-#3 系統の茎葉 を用いてサイレージ化に伴うフィターゼ活性の消長を調べた。解析した処理後 12 週間においても、フィターゼ活性値は低下せず、当該フィターゼはサイレージ過 程でも極めて安定であることがわかった。 以上のように、イネにおいては実用に見合う外来フィターゼの安定的高発現に 成功した。 B.目標の達成度 Cab プロモーター利用による茎葉部特異的な発現を確認した。また、コドン改変 型酵母フィターゼ遺伝子と細胞外分泌シグナルを組合わせて利用することにより、 目標値として設定した5U/g 生重量を上回るフィターゼ活性を示すイネを取得す ることに成功した。さらに、イネで発現させた酵母フィターゼは飼料中に含まれる フィチン酸の分解能も優れた効果を示し、粗酵素液中あるいはサイレージ化過 程でも極めて安定であるなど、実用性が高いことが確かめられた。 当初の計画通り進捗しており、当初予定に対して 100%の進捗である。 C.成果の意義 本研究は、これまでの化石資源消費型の物質生産方法を自然エネルギー利 用による循環型に転換する試みの一環であり、既存の動物培養細胞や微生物の タンク培養による発酵法の代替として、広大なフィールドでの太陽エネルギー利 用による植物でのタンパク質大量生産方法の可能性を検証するものである。上 記の通り、フィターゼを目的タンパク質としたところ、実用的な見地から設定した 127 目標値以上の高生産を達成することができた。また、植物で発現させた場合でも フィターゼは本来の活性を保持し、極めて安定であるなど実用性が高いことが明 らかになった。従って波及効果としては、フィターゼ以外の様々な有用タンパク質 についても本研究の方法を適用することにより、化石資源への依存度を減少した 植物によるタンパク質大量生産が可能になると考えられる。また、将来植物から の安価なタンパク質抽出技術が開発できれば、植物で生産したタンパク質製剤 の輸送、保存等の問題が解決でき、さらに汎用性の高い技術になると考えられ る。 フィターゼに限定して言及すれば、フィターゼを生産する植物体を収穫後そのま ま現行飼料に混合するか、あるいはサイレージ化して長期保存し、必要に応じて 飼料に混合する利用法が適用できるので、植物体からのフィターゼ抽出過程を 省略でき、コスト的にも微生物生産法の代替技術になる可能性が高い。また、植 物で生産するフィターゼは微生物生産法によるフィターゼに劣らない活性を安定 的に示すことから実用面での効果が期待される。すなわち、飼料中に多量に含 まれるフィチン酸態リンの利用効率の改善、および資源の枯渇が憂慮されている リン鉱石使用の低減及び環境への排出抑制による富栄養化防止に寄与できると 考えられる。 2.6.1 病害抵抗性植物の分子育種 (株式会社豊田中央研究所) A.研究成果 病害抵抗性植物の作出に要求される抗菌ペプチドは、植物病原菌に対する抗 菌活性が高く、かつ動植物に対する毒性は低く、植物内で安定である必要があ る。しかし、天然に存在する抗菌ペプチドでは、これらの性能をすべて満たすも のを得ることが困難である。そこで、平成 13 年度までに、天然の抗菌ペプチドの 機能改良を目的とした各種の構造改変を実施し、ウサギ由来の抗菌ペプチド rCAP32 の C 末端側より 8 個のアミノ酸を欠失させた rCAP24 に KD(リジン‐アスパ ラギン酸)配列を付加した rCAP24KD が、抗菌活性、植物内での安定性、および 細胞毒性の目標値を全て満たすことを見出した。また、rCAP24 にチオニンを添加 すると、相乗効果により抗糸状菌活性が向上することも明らかにした。そこで、上 記 in vitro での効果をモデル植物であるシロイヌナズナで実証するため、機能 改良した抗菌ペプチド遺伝子を導入したシロイヌナズナ T3 ホモ系統を作製し、 病害抵抗性等を調べた。 シロイヌナズナの病原菌 Fusarium oxysporum に対する抗糸状菌活性がヒト由 来の抗菌ペプチド(hCAP32)に比べて約 30 倍高い rCAP24 遺伝子を導入した系 統では、hCAP32 遺伝子を導入した系統に比べ、病害抵抗性の向上が認められ た。また、rCAP24 の植物細胞間液中での安定性を強化した rCAP24KD を導入した 系統では、rCAP24 を導入した系統に比べ、病原菌感染後期における病害抵抗 性の向上が認められた。さらに、rCAP24KD とチオニンの両遺伝子を導入した系 統では、より少ない抗菌ペプチド遺伝子の発現量で rCAP24KD 遺伝子を単独で 導入した系統と同等の病害抵抗性を示した。以上のように、効率よく植物に病害 抵抗性を付与するためには、in vitro の抗菌活性および植物内安定性を指標 にして機能改良した抗菌ペプチドを利用することが有効であることを実証する結 果を得た。 サツマイモの病害抵抗性評価法を確立する目的で、葉柄法(葉における病害 128 抵抗性評価法)および針接種法(塊根における病害抵抗性評価法)の2つの方 法について、高系 14 号野生株(黒斑病抵抗性:やや弱)とタマユタカ(黒斑病抵 抗性:やや強)の2品種を用いて検討した。葉柄法は、葉柄部分に黒斑病菌 (Ceratosystis fimbriata)を接種し、葉色の変化(黄化)が起こった黄色部分 の面積比を測定する方法である。また、針接種法は、塊根に針を用いて黒斑病 菌を接種し、黒色の病斑の面積を測定する方法である。いずれの方法において も、高系 14 号とタマユタカの間に病害抵抗性強度の差が認められ、病害抵抗性 評価法として有効な方法であることを見出した。 平成 13 年度までに確立したサツマイモへの遺伝子導入技術を用いて、各種の 抗菌ペプチド遺伝子を導入したサツマイモの再分化個体を作製した。これらの再 分化個体について、葉における遺伝子発現量をリアルタイム PCR 法により調べ、 高発現系統の選抜を行った。選抜した高発現系統について、上記の病害抵抗 性評価を実施した結果、抗菌ペプチド遺伝子を導入した系統では、いずれの評 価法においても野生株に比べて病害抵抗性の向上が認められた。天然の抗菌 ペプチド遺伝子を導入した系統で、病害抵抗性強度の最も高い系統として、 hCAP32 遺伝子導入系統では No.18 系統を、チオニン遺伝子導入系統では No.1 系統を選抜した。なお、hCAP32 遺伝子導入系統については、ウエスタンブロット 法により、葉および塊根におけるタンパク質の発現を確認した。 機能改良した抗菌ペプチド遺伝子を導入した高発現系統について、葉柄法に よる評価を実施した結果、rCAP24KD 遺伝子導入系統には、hCAP32 遺伝子導入 系統およびチオニン遺伝子導入系統より高い病害抵抗性強度を示す系統が存 在した。また、rCAP24KD およびチオニンの両遺伝子の導入系統には、黒斑病抵 抗性品種であるタマユタカと同等の高い病害抵抗性を示す系統が存在すること を 見 出 し た 。 ま た 、 針 接 種 法 に よ る 評 価 で も 、 rCAP24KD 遺 伝 子 導 入 系 統 、 rCAP24KD およびチオニンの両遺伝子の導入系統には、タマユタカと同等の高い 病害抵抗性を示す系統が存在した。 以上の結果より、機能改良した抗菌ペプチド遺伝子をサツマイモに導入するこ とによって黒斑病抵抗性品種と同等の高い病害抵抗性を付与する技術および病 害抵抗性サツマイモ新品種の開発に成功した。 B.目標の達成度 中間評価では、病害抵抗性を付与可能な高性能な抗菌ペプチドの創製を目 標として、天然の抗菌ペプチドの構造改変を行った結果、抗菌活性、植物内で の安定性等の目標値をすべて満たす新規抗菌ペプチドを創製することに成功し た。次に、本抗菌ペプチドの遺伝子をモデル植物であるシロイヌナズナへ導入し、 病害抵抗性等を評価した結果、本抗菌ペプチドは低発現でも高い病害抵抗性 を示すことを見出し、in vivo での有効性を確認した。また、本抗菌ペプチド遺伝 子をサツマイモに導入し、再分化個体を得た。新たに確立したサツマイモの病害 抵抗性評価法を用い、これらの再分化個体を評価した結果、病害抵抗性が向上 し、黒斑病抵抗性品種であるタマユタカと同等の高い病害抵抗性を示すことを実 証した。これらの結果より、最終目標とした病害抵抗性サツマイモ新品種の開発 を 100%達成したものと自己評価している。 C.成果の意義 抗菌ペプチドは各種の微生物に対して広い抗菌スペクトルを有しており、本開 発技術は幅広い植物種に病害抵抗性を付与することが可能な重要技術と位置 129 付けている。本研究開発で機能改良の対象とした抗菌ペプチド CAP は、シロイヌ ナズナの病原菌 Fusarium oxysporum およびサツマイモ黒斑病菌、軟腐病菌以 外にイネいもち病菌に対しても抗菌活性を示すことを見出しており、前2者につ いては、抗菌ペプチド遺伝子導入植物が病害抵抗性を示すことを実証した。さら に、抗菌ペプチドの抗菌活性と植物内での安定性が、病害抵抗性の向上に大き く寄与していることを、遺伝子導入植物を用いて実証することにより明らかにし た。 また、サツマイモは低コスト・低エネルギー生産が可能な工業原料生産用植物 として注目されており、高デンプン含量品種である高系 14 号に黒斑病抵抗性を 付与した新品種を開発したことの実用的意義は高いものと考えている。 2.6.2 セレニウム結合タンパク質遺伝子導入による病害抵抗性植物の分子 育種 (バイオテクノロジー開発技術研究組合、奈良先端科学技術大学院大学) A.研究成果 1)病害抵抗性関連遺伝子の機能解析 平成 13 年 9 月までの研究成果として、イネいもち病菌由来エリシターで誘導さ れる Oryza sativa selenium binding protein ホモログ(以下 OsSBP)遺伝子 を過剰発現させたイネで耐病性が向上することを確認した。これを受けて、OsSBP の病害抵抗性における機能解析を行い、下記の知見を得た。 1-1)イネに内在する OsSBP 遺伝子は病害抵抗性シグナル伝達物質のサリチル 酸やジャスモン酸(JA)処理により転写が活性化され、また OsSBP 過剰発現体は 野生型に比べ低濃度の JA に応答し感染特異的タンパク質遺伝子 PBZ1 の転写 を活性化することから、OsSBP が JA を介した防御系に関与することが示唆され た。 1-2)OsSBP 遺伝子を過剰発現させたイネは親和性いもち病菌接種後のファイトア レキシン(モミラクトン A)の蓄積が野生型の 20-25 倍量も増加しており、さらに PBZ1 および PR1 の 2 つの感染特異的タンパク質遺伝子も野生型より早く転写活 性化を認めた。 1-3)イネ培養細胞系を用いて、病害防御応答のシグナル伝達に重要な活性酸 素種を生成する NADPH オキシダーゼの脱リン酸化阻害剤カリクリン A(CA)処理時 の過酸化水素生成量を調べた結果、過剰発現体は野生型に比べ有意に過酸化 水素量の増大がみられた。 1-4)CA 処理時に抗酸化酵素であるアスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)およ びカタラーゼ(CAT)の活性を調べた結果、野生型は過酸化水素生成の増大に伴 い両酵素活性も上昇したのに対し過剰発現体は CA 処理前後で酵素活性に有意 な変化はみられなかった。 2)病害抵抗性関連遺伝子導入サツマイモの作出および耐病性付与 OsSBP 遺伝子を過剰発現させたサツマイモを作出し黒斑病菌に対する耐病性 検定を行ったところ、OsSBP 遺伝子の過剰発現を確認した複数の系統で野生型 に比べ有意に病徴進展の遅延を確認した。このことから、OsSBP はイネのみなら ず他の作物種においても糸状菌およびバクテリアの病害に抵抗性を付与しうる 可能性が示唆された。尚、サツマイモへの遺伝子導入は石川県立農業短期大 学島田研究室ならびに株式会社東洋紡総合研究所で作出していただいた。ま た黒斑病菌接種試験は株式会社豊田中央研究所で確立された葉柄接種法に 130 準じて実施した。 B. 目標の達成度 1)病害抵抗性関連遺伝子の機能解析 当初目標:新規有用遺伝子の機能を解析し、当該遺伝子の用途拡大のため の知見を蓄積する。 達成度:機能解析の結果、OsSBP は抗酸化酵素の活性を低下させることで病 害防御応答のシグナル伝達に重要な活性酸素種の蓄積に関与し、その結果、 抗菌物質の生成や感染防御遺伝子の活性化を促していることが考えられた。 これより OsSBP 遺伝子を導入することでイネに限らず他の植物においても同様 の機能を付与し、耐病性を向上し得ることが示唆された。目標は 100%達成し たと評価する。 2)病害抵抗性関連遺伝子導入サツマイモの作出および耐病性付与 当初目標:新規有用遺伝子導入サツマイモを作出し、耐病性を評価する。 達成度:OsSBP 遺伝子導入サツマイモの作出に成功した。黒斑病に対して耐 病性を付与することを明らかにし、1)の機能解析の結果を実証するとともに本 プロジェクト対象作物に利用可能であることを明らかにした。以上より目標は 100%達成した。 C. 成果の意義 OsSBP 遺伝子は、(1)過剰発現させたイネおよびサツマイモでそれぞれの重要 病害に耐病性を付与したこと、(2)イネにおいてはカビ病菌(イネいもち病菌)と バクテリア病菌(イネ白葉枯病菌)の両方に耐病性を付与したこと、(3)機能解析 より病害防御応答のシグナル伝達に重要な活性酸素種の蓄積に働くこと、から 幅広い植物に複数の耐病性を付与し得る有用遺伝子であることがわかり、今後、 病害抵抗性植物の分子育種を進める上で有用な遺伝子として供しうる意義は大 きい。 2.7 ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を利用した環境ストレス抵抗性改良とその 利用 (株式会社東洋紡総合研究所、三重大学 橘研究室) A.研究成果 1)低温遭遇植物のポリアミン代謝特性の解析 1-1)ウリ科植物の低温抵抗性へのポリアミンの関与 キュウリを用いて、低温抵抗性に品種間差異をもたらす生理生化学的機構を 研究した。低温感受性キュウリでは、低温遭遇中の葉で NADPH オキシダーゼ活 性の増大とともに、多量のスーパーオキシドと過酸化水素が生成し、常温復帰 後には毒性の高いヒドロキシルラジカルの生成量が増加した。一方、低温抵抗 性キュウリではこれらの変化はほとんど起こらなかった。低温抵抗性キュウリに限 って、低温遭遇中と常温復帰後にポリアミンの一種のスペルミジンが顕著に増 加した。低温感受性キュウリにスペルミジンを前処理すると NADPH オキシダーゼ の活性や過酸化水素の増加が抑えられて低温障害が軽減した。以上の結果か ら、低温抵抗性キュウリ品種は、細胞のスペルミジン濃度を高めることで低温に よる NADPH オキシダーゼの活性化を未然に防ぎ、活性酸素による障害を防御し ていることが明らかになった。 131 1-2)ホウレンソウの光合成器官の低温順化へのポリアミンの関与 ホウレンソウを用いて光合成器官の低温光障害への感受性を調べた。低温 遭遇中のホウレンソウの葉、クロロプラストではポリアミン含量が顕著に増大した。 低温遭遇後の葉から単離したチラコイド膜にスペルミジンを処理するとその濃度 に比例して光化学活性の障害程度が低下した。以上の結果から、クロロプラスト でポリアミン含量を高め、チラコイド膜の光化学系タンパク質複合体やストロマの 炭酸同化酵素に結合することにより、低温下でのタンパク質構造の安定性を高 めることで、光合成器官を低温光ストレスから保護していることが明らかになっ た。 1-3)サツマイモの生育、葉の光合成に及ぼす外生ポリアミンの影響 サツマイモの挿し苗を育成して、ポリアミン(スペルミジン)処理を行い、低温 下での生育と光合成活性を調べた。ポリアミン処理により蔓の伸長量が対照区 よりやや大きく、葉の光合成活性は対照区より有意に高く推移した。根の生長は ポリアミン処理区では明らかに塊根肥大が見られた。 さらに、塩ストレス、塩及び乾燥ストレス下での生育と光合成活性に及ぼすポ リアミンの影響を調べた。対照区の苗はポリアミン(スペルミジン)処理の影響を 受けなかったが、ストレス処理区(塩ストレス、塩+乾燥ストレス)ではポリアミン 処理により蔓の伸長や葉の展開がやや早まり、ストレス処理による葉の光合成 速度の低下程度が対照区より小さかった。ストレス処理区の植物体各部位の新 鮮重と乾物重は、ポリアミン処理によって有意に大きくなり、特に塊根重が大きく なった。 これらのことから、植物体のスペルミジン濃度を高めることで、サツマイモの環 境ストレス抵抗性が増大する可能性は高いと推察された。 2)ポリアミン代謝酵素遺伝子群の単離 2-1)ポリアミン代謝酵素遺伝子の単離 低温伸長性が高いクロダネカボチャの根から 4 種類のポリアミン代謝酵素(ス ペルミジン合成酵素:SPDS, S-アデノシルメチオニン脱炭酸酵素:SAMDC, ア ルギニン脱炭酸酵素:ADC, オルニチン脱炭酸酵素:ODC)の cDNA の部分配列を 得た。 2-2)ポリアミン代謝酵素遺伝子の低温誘導性の確認 ノザン解析の結果、クロダネカボチャの 3 種類のポリアミン代謝酵素(SPDS, SAMDC, ADC)遺伝子が低温ストレス遭遇時に根で特異的に発現量が増加し、低 温ストレス耐性に深く関与することが明らかとなった。 2-3)完全長ポリアミン代謝酵素遺伝子の取得 クロダネカボチャの 3 種類のポリアミン代謝酵素(SPDS, SAMDC, ADC)の完全 長 cDNA を単離し、全塩基配列を決定した。 2-4)ポリアミン代謝酵素遺伝子のプロモーターの単離 3 種類のポリアミン代謝酵素(SPDS, SAMDC, ADC)遺伝子のプロモーター領域 を単離し、全塩基配列を決定した。さらに、決定した塩基配列をもとにエレメント 解析を行ったところ、アブシジン酸や乾燥ストレスで誘導される Myb 結合領域や 低温誘導に関与するエレメントが存在するという興味深い知見を得た。 3)遺伝子組換え植物の作出と遺伝子発現の解析 3-1)遺伝子組換えシロイヌナズナの作製 SPDS 遺伝子を CaMV35S プロモーター制御下で減圧浸潤法によりシロイヌナズ ナに導入し、独立した数十クローンの遺伝子組換え体を取得した。ホモラインの 確立も行った。 132 3-2)遺伝子組換えシロイヌナズナの遺伝子発現解析 得られた遺伝子組換えシロイヌナズナについて PCR 法で導入遺伝子を確認 し、ノザン解析で全てのクローンで SPDS 遺伝子の転写物が非常に高いレベル で存在していることを確認した。さらに、SPDS 合成ペプチド抗体を用いたウエス タン解析では、SPDS 遺伝子の翻訳産物を検出し、翻訳量に応じて SPDS 活性も 増加していることを確認した。 3-3)遺伝子組換えタバコの作製 SAMDC、SPDS、ADC 遺伝子のプロモーターにレポーターの GUS 遺伝子を連結 して、タバコにそれぞれ導入し、遺伝子組換えタバコを取得した。 3-4)遺伝子組換えタバコの遺伝子発現解析 得られた遺伝子組換えタバコについて PCR 法で目的遺伝子が導入されてい ることを確認した。 3-5)遺伝子組換えサツマイモの作製 SPDS、SAMDC 遺伝子を CaMV35S プロモーターまたは西洋ワサビの傷害誘導 性 C2 ペルオキシダーゼプロモーター制御下でアグロバクテリウム法により、サツ マイモ(高系 14 号)に導入し、独立した数十クローンの遺伝子組換えサツマイモ を取得した。 3-6)遺伝子組換えサツマイモの遺伝子発現解析 得られた遺伝子組換えサツマイモについて PCR 法で導入遺伝子を確認し、ウ エスタン解析で全てのクローンで SPDS 遺伝子の翻訳産物が高いレベルで発現 していることを確認した。 4)遺伝子組換え植物の評価と解析 4-1)遺伝子組換えシロイヌナズナのポリアミンの評価 SPDS 遺伝子で形質転換したシロイヌナズナについて、内生ポリアミン含量を 分析したところ、センス方向で導入した個体では、ポリアミン含量(特にスペルミ ジンやスペルミン)が有意に増加し、アンチセンス個体ではポリアミン含量が有 意に減少していることを確認した。本実験でポリアミン代謝酵素遺伝子の一つ である SPDS 遺伝子を植物に導入することによってポリアミン代謝を制御でき、ス ペルミジンやスペルミンの含量を変化させ得ることが明らかとなった。これまでに、 SPDS 遺伝子でポリアミン代謝の制御が可能であることを報告した論文や特許は 無く、貴重な知見である。 4-2)遺伝子組換えシロイヌナズナの環境ストレス耐性の評価 SPDS 遺伝子で形質転換したシロイヌナズナについて、様々な環境ストレス耐 性の評価を行ったところ、野生株に比べて、有意に低温、凍結、塩、浸透圧、乾 燥、除草剤など複合的な環境ストレス耐性が増大していることが明らかとなった。 これまでに、ポリアミン代謝酵素遺伝子を導入した形質転換植物のポリアミンレ ベルや表現型の解析に関する報告はあるが、複合環境ストレス耐性が改良され た報告は無く、今回初めて明らかになった貴重な知見である。 ポリアミンの低温耐性増大機構を調べたところ、低温遭遇した遺伝子組換え シロイヌナズナの葉では抗酸化酵素(特にスーパーオキシドジスムターゼ:SOD) の活性が顕著に高まり、SPDS 遺伝子の導入によって抗酸化酵素(特に SOD)の 低温誘導活性が増大することが示された。さらに、マイクロアレイ解析では、低 温遭遇した遺伝子組換えシロイヌナズナでは野生株に比べて、ストレスによっ て誘導される各種転写因子の発現が高まっていることも明らかとなり、SPDS 遺伝 子組換えシロイヌナズナのストレス耐性には、抗酸化酵素活性や転写因子の低 133 温誘導性が密接に関係している可能性が示唆された。 4-3)ポリアミン代謝酵素遺伝子のプロモーター活性の一過性発現評価 SAMDC、SPDS、ADC 遺伝子のプロモーターについて、タバコ葉を用いて一過性 発現評価を行ったところ、レポーター遺伝子の発現が検出され、いずれも植物 でプロモーター機能を持つことを確認した。 4-4)ポリアミン代謝酵素遺伝子のプロモーターの機能評価 遺伝子組換えタバコを用いて、SAMDC、SPDS、ADC 遺伝子のプロモーターの評 価を行ったところ、常温より低温下で高いプロモーター活性(常温に比べて 3~ 10 倍)が検出され、低温誘導性の活性を持つことが明らかになった。さらに、前 記プロモーターには低温だけでなく他のストレスでも応答するシスエレメントの 存在が確認されたことから、他の環境ストレス下でも高いプロモーター活性を有 する可能性が示唆された。 4-5)遺伝子組換えサツマイモのポリアミン分析 SPDS 遺伝子を導入した遺伝子組換えサツマイモでは、ポリアミン含量(特に スペルミジン)が野生株に比べて有意に増加していることを確認した。シロイヌ ナズナと同様にサツマイモでも、SPDS 遺伝子を導入することによってポリアミン 代謝を制御でき、特にスペルミジンの含量を高めることが可能であることが示さ れた。また、我々は花卉植物やイネにおいても同様な効果を確認しており、 SPDS 遺伝子によるポリアミン代謝の制御が幅広い植物に応用可能であり、極め て汎用性が高い技術であると判断された。 4-6)遺伝子組換えサツマイモの環境ストレス耐性の評価 SPDS 遺伝子を導入したサツマイモの酸化ストレス耐性を調べた。若葉からリ ーフディスクを調製し、パラコートを含む溶液に浮かべてクロロフィル保有量を 調べたところ、遺伝子組換えサツマイモではパラコートによるクロロフィル分解の 抑制程度が大きく、酸化ストレス耐性が高まっていることが確認された。 SPDS 遺伝子を導入したサツマイモについて不良環境下(低温・弱光条件 下)で 3 ヶ月間栽培して塊根(イモ)形成を調べたところ、野生株では根の発達 は旺盛であったが塊根は全く形成されなかった。一方、遺伝子組換えサツマイ モでは小さいながらも塊根が形成された。SPDS 遺伝子を導入したサツマイモは、 根や葉のポリアミンレベルが高まることで、根の形成層の細胞分裂機能が高ま るとともに、低温・弱光下での光合成が比較的高く維持された結果、塊根形成 が促進されたのではないかと推察された。 SPDS 遺伝子を導入したサツマイモについて高温および低温ストレス耐性の 評価を行った。45℃以上の高温ストレスにより葉の光合成活性が低下したが、 その程度は遺伝子組換えサツマイモの方が小さかった。15℃以下の低温ストレ スにより葉の光合成活性が低下したが、その程度は遺伝子組換えサツマイモの 方が小さく、低温遭遇による過酸化水素の増加も少なかった。SPDS 遺伝子を導 入した遺伝子組換えサツマイモは、光合成装置の高温および低温ストレス耐性 が増大した可能性が示唆された。また、遺伝子組換えサツマイモの葉の光合成 活性は、特に下位葉で野生株に比べて高いことが観察され、葉齢の進行に伴 う光合成能の低下が遅いことも明らかとなった。 SPDS 遺伝子を導入したサツマイモについて塩および乾燥ストレス耐性の評 価を行った。塩ストレスは培養土に NaCl を添加(21mM)し、乾燥ストレスは潅水 制限を行い、閉鎖系ガラス温室で約 4 ヶ月間栽培した。収穫時に茎葉および塊 根の新鮮重と塊根数、塊根のポリアミン含量、塊根のデンプン含量と化学的性 質について調べた。茎葉新鮮重は遺伝子組換えサツマイモでは塩ストレス区と 134 対照区との間にほとんど差異がなかったのに対して、野生株では塩ストレスによ り増加した。乾燥ストレス区では、著しく減少し、減少程度は遺伝子組換えサツ マイモの方がやや大きかった。一方、塊根生体重は遺伝子組換えサツマイモ では塩ストレス区で減少程度が小さく、1 株当たりの塊根重は野生株に比べて 約 50g 大きかった。乾燥ストレス区でも減少程度が小さく、1 株当たりの塊根重 は約 20g 大きかった。また、遺伝子組換えサツマイモはストレス処理に関わらず 1 株当たりの塊根数がかなり多かった。遺伝子組換えサツマイモの塊根と葉の ポリアミン含量を調べたところ、ストレス処理に関係なく野生株に比べてスペルミ ジン含量が 2 倍程度高まっていた。これらのことから、遺伝子組換えサツマイモ では塊根や葉のスペルミジン含量が高まることで、根の形成層の細胞分裂機能 が高まるとともに、塩や乾燥ストレス下での光合成が比較的高く維持された結果、 塊根形成が促進されて収量が増加したのではないかと考えられる。デンプン含 有率は対照区と塩ストレス区では有意な差は見られなかったが、乾燥ストレス区 では遺伝子組換えサツマイモで有意に高かった。デンプンの特性調査を行っ たところ、ストレス処理の有無に関わらず遺伝子組換えサツマイモと野生株で目 立った差異は認められず、塊根中にポリアミンを多く含んでも、デンプン特性に は影響を及ぼさないことが明らかとなった。 以上のことから、ポリアミン代謝酵素遺伝子の一つであるスペルミジン合成 酵素(SPDS)遺伝子をサツマイモに導入することで、種々の環境ストレス(酸化・ 不良環境・高温・低温・塩・乾燥)抵抗性が高まり、特に塩や乾燥ストレス下では 塊根収量が野生株に比べて増大することが示された。 B.目標の達成度 最終目標:ポリアミンが低温抵抗性を高める機構及びポリアミン代謝酵素遺伝 子の発現特性などを解明するとともに、これらの知見と獲得した遺伝子を利用し てサツマイモの分子育種を行い、ポリアミン代謝酵素遺伝子が低温その他の環 境ストレス抵抗性付与効果を示すことを立証する。 達成度:これまでの一連の研究からポリアミンが植物の各種の環境ストレスに対 する抵抗性に深く関与し、特にキュウリやホウレンソウを用いた研究では、ポリアミ ンが低温光障害から光合成器官を保護する機能を果たしていることを明らかにし た。モデル植物であるシロイヌナズナを用いた研究では、スペルミジン合成酵素 遺伝子(SPDS 遺伝子)を過剰発現させることで、ポリアミンレベルが高まり、低温・ 凍結・塩・浸透圧・乾燥・酸化などの様々な環境ストレスに対する抵抗性が向上 することが明らかになった。特に低温ストレス下ではポリアミンレベルが高く維持さ れることで、抗酸化酵素の低温誘導性や、各種ストレスに関与する転写因子の遺 伝子の低温誘導性が高まり、ポリアミンがシグナル調節的な機能を担っている可 能性が示唆された。工業原料植物であるサツマイモを用いた研究では、困難とさ れていた形質転換技術を確立することができ(石川県農業短期大学 島田研究 室との共同研究)、ポリアミン代謝酵素遺伝子の一つであるスペルミジン合成酵 素遺伝子(SPDS 遺伝子)をサツマイモに導入することで、種々の環境ストレス(低 温・高温・酸化・塩・乾燥・不良環境)抵抗性が改良でき、特に塩や乾燥ストレス 下では塊根収 量が野生株に比べて高 まることが示され、目 標の成果を達成 (100%)することができた。 C.成果の意義 これまでの成果からポリアミン代謝酵素遺伝子を利用することによって植物の 135 様々な環境ストレス抵抗性が改良できることがほぼ明らかとなった。得られた成果 は、新規性、進歩性が高く、様々な植物へ応用できる非常に汎用性が高い技術 である。今後はさらなる実用化研究として、安全性の評価試験を石川県農業短 期大学(島田研究室)と共同で進め実用化を目指す予定である。 2.8.多重遺伝子導入技術の開発 (バイオテクノロジー開発技術研究組合、奈良先端科学技術大学院大学) A. 研究成果 平成13年9月までに、植物への多重遺伝子導入技術の開発を目指し、ストレ プトアビジン-ビオチン結合により磁性粒子に固相化した DNA に、非回文配列末 端の利用により遺伝子を順次連結する多重遺伝子連結技術を開発し、7 遺伝 子の連結及びそれらが正常に機能することの確認を行った。以降、本技術の 利用価値を高いものとするため、以下の研究開発を行った。 1)固相連結効率の向上 DNA の固相連結法をより実用的なものとするために、連結効率の向上を目指 し改良を行った。連結に使用する PCR 断片の末端の制限酵素切断が不完全で、 両側又は片側の末端が制限酵素切断されていない断片が生じた場合、これら の断片は連結されないもしくは連結されても次に連結されるべき断片が連結さ れなくなるため連結効率が低下する。そこで 5'末端をビオチン化したプライマ ーを用い DNA 断片の PCR を行い、これらを制限酵素切断後ストレプトアビジンと ビオチンの結合を利用してビオチンを含む DNA 断片を除去し、両端が制限酵素 切断されている断片のみを分離し連結に使用した。約 0.5 kb の DNA 断片を各 0.6 µg 使用し 6 断片及び10断片の連結を行った場合、最終的に獲得されるク ローンに占める全断片が連結されているクローンの割合は、改良法ではそれぞ れ 80%、40%であったのに対し、従来法ではいずれも全断片が連結されたクロー ンが獲得できなかった。これまでに 12 DNA 断片の連結にも成功し、本改良によ り遺伝子連結効率が飛躍的に向上することが明らかとなった。この成果は日本 特許出願 2002-203217 を行った。 2)多重遺伝子連結自動化技術の開発 遺伝子連結を自動化することにより、連結操作を複数同時進行で行うことが可 能となり時間を節約できるとともに、自動運転が可能となり労力を節約できるよう になる。今回は、磁性体操作が可能な装置を使用し、多重遺伝子連結の自動化 を目指した検討を行った。磁性体の分注、懸濁、分離、温度処理等が複数検体 同時にできる多目的汎用装置、SX-8G(プレシジョン・システム・サイエンス株式会 社製)を使用し、2本鎖 DNA のライゲーションを試みた。磁性ビーズに固定化した リンカーDNA に対し、0.5 kbp の DNA 断片のライゲーションを繰り返し2回行ったと ころ、これら2断片の連結が確認でき、本装置による固相上での DNA のライゲーシ ョンが可能である事が示された。また、再現性が確認できたことから、多検体同時 処理が可能であることも明らかとなった。これにより、本装置の磁性ビーズ操作技 術を用い、多重遺伝子連結自動化が可能であることが示された。 3)連結遺伝子群のバイナリーベクターへの導入系の開発 固相連結法により多重化した遺伝子群をバイナリーベクターに導入する系の開 発を試みた。TAC ベクターの境界領域内に、出現頻度が極めて低い制限酵素 (I-CeuI、I-SceI、PI-PspI、PI-SceI)認識配列を挿入し、連結 DNA を複数導入 できる系とした。この系が実際に機能するかどうかを確認するために、まずシロイ 136 ヌナズナゲノムライブラリークローン K21H1 を鋳型とし 5'末端に SfiI 認識配列及 び連結の確認を行うために使用する制限酵素認識配列を付加したプライマーに より PCR を行い 30 個の約 0.5 kbp DNA 断片を作製した。これらを上記の改良を 行った固相連結法により 9、10、11 断片を別個に連結後、それぞれをベクターに クローニングした。クローニングされた連結断片をベクターから分離し制限酵素で 切断することにより、断片の連結が設計したとおりの順番、方向で行われているこ とを確認した。これら3つの連結 DNA を液相法により順次上記 TAC ベクターに導入 した。この結果 30DNA 断片(約 15 kbp)が連結されたクローンが獲得でき、本系の 有効性を確認できた。 さらに、プロジェクト参加企業である王子製紙の複合環境ストレス抵抗性ユーカ リの作出に参画し、多重遺伝子連結技術を用いた植物への多重遺伝子導入が 可能であることを証明するために、環境ストレス抵抗性遺伝子群を TAC ベクター に組み込んだベクターの構築し、これを用い実用植物およびモデル植物への遺 伝子導入を試みた。ニンジン由来 CS 遺伝子、シロイヌナズナ由来細胞質型 NADP-ICDH 遺伝子(RNAi)、大腸菌由来 KatE 遺伝子の発現カセットを固相連結 法により多重連結しこれを TAC ベクターに挿入した。本ベクターは、これを用いシ ロイヌナズナに遺伝子導入するとともに、ユーカリでの遺伝子導入用として王子 製紙に提供した。これら遺伝子が導入されたシロイヌナズナ T3 世代の遺伝子発 現解析を行ったところ、CS、katE 遺伝子の発現および細胞質型 NADP-ICDH 遺伝 子の発現抑制が認められ導入遺伝子が機能していることが示唆されたことから、 多重遺伝子連結技術を用い植物への多重遺伝子導入が可能であることが確認 された。 4)植物の多重遺伝子導入に適したベクターの開発 改良ベクターのマルチクローニング部位にレポーター遺伝子であるβ-グルクロ ニダーゼ(GUS)遺伝子を連結し、これを用い約 80 系統の遺伝子導入シロイヌナ ズナを取得した。同様に対照である TAC ベクターを用い GUS 遺伝子導入シロイヌ ナズナを取得した。これら遺伝子導入シロイヌナズナの GUS 遺伝子コピー数、 GUSmRNA 蓄積量、GUS 活性等を解析することにより、改良ベクターの導入遺伝子 発現の安定化への効果を調べた。 その結果、対照である TAC ベクターによる遺伝子導入シロイヌナズナ個体間で の GUS 活性のばらつきの主な原因は、導入遺伝子の染色体上での挿入位置の 影響(位置効果)ではなく、複数の GUS 遺伝子が導入された個体でのジーンサイ レンシングであると考えられた。これら個体では GUSmRNA 蓄積量の低下、20-25 nt の低分子 RNA が確認されたことから PTGS が起こっていると推察され、改良 TAC ベクターはこれを回避し発現を安定化していると推察した。改良 TAC ベクターを 用いた場合、導入遺伝子を 1 コピー持つ個体を対照の約2倍の確率で獲得でき ることもわかった。 この成果は日本特許出願 2004-29937 を行い、2003 年 8 月の日本植物細胞分 子生物学会大会において発表した。現在、投稿論文を作成中である。 B. 目標の達成度 1)多重遺伝子連結技術 目標:中間時において開発した多重遺伝子連結技術をさらに改良するために、 連結効率を向上させるとともに、本技術の自動化に向けた検討を行うことを目標 とした。 達成度:DNA 断片の精製により連結効率を向上させ、12 DNA 断片の連結を確 137 認した。これにより、従来法に比較し多くの DNA を短期間に順序、方向を規制し 連結することが可能になった。 以上の成果より達成度は 100%であると考えている。 2)植物の多重遺伝子導入に適したベクターの開発 目標:連結遺伝子群のバイナリーベクターへの導入系を開発し、数十 DNA 断片 の連結を目指すとともに、導入遺伝子発現の個体間のばらつきを抑制する改良 TAC ベクターの有効性を詳細に評価することを目標とした。 達成度: rare-cut 制限酵素認識配列を挿入した TAC ベクターを作製し、本ベ クターに固相連結した9、10、11 DNA 断片を順次導入することにより、30 DNA 断片 の導入を行うことに成功し、本バイナリーベクターへの導入系の有効性を示した。 また、固相連結された3種のストレス抵抗性遺伝子が TAC ベクターにより導入され たシロイヌナズナを解析することにより、固相連結法を用いた植物への多重遺伝 子導入用ベクターの作製が可能であることを示した。 さらに、改良 TAC ベクターにより GUS 遺伝子を導入されたシロイヌナズナを解析 することにより、改良 TAC ベクターは複数遺伝子が導入された個体において起こ るジーンサイレンシングを回避し、導入遺伝子発現を安定化させることを示した。 また、本ベクターの導入遺伝子コピー数を減少させる効果も明らかにした。 以上、連結 DNA 断片の数においても改良 TAC ベクターの効果においても達成 度はほぼ 100%である。 C. 成果の意義 1)多重遺伝子連結技術 多くの遺伝子を短期間に連結するための技術を確立した。この技術により、多 重遺伝子をゲノムの1ヶ所に導入でき、新規な代謝系の付加および既存の代謝 系の強化を行うことが期待できる。この技術はプロモーター、構造遺伝子、ターミ ネーターの連結や融合遺伝子の構築等、連結方向を規制しなければならない DNA 多断片の連結に有効である。また、本技術は植物だけでなく生物一般に用 いることができるためその汎用性及び重要性は極めて高い。 2)植物の多重遺伝子導入に適したベクターの開発 30DNA 断片のバイナリーベクターへの導入およびストレス抵抗性遺伝子群のシ ロイヌナズナへの導入により、連結遺伝子群のバイナリーベクターへの導入系の 有効性が確認されたことから、プロモーター、構造遺伝子、ターミネーターの 3 断 片を遺伝子の単位として考えた場合、本導入系により 10 種の遺伝子の連結、導 入が可能であることが示された。これは有用植物作出に充分の数であると考えら れる。 また、改良 TAC ベクターの有効性を確認できたことから、このベクターの使用に より、作出した多重遺伝子導入植物の導入遺伝子発現が安定し、目的の形質を 持つ個体を獲得するための労力を大幅に減少させることが期待できる。 2.9 植物で機能する有用プロモーターの単離と活用 (バイオテクノロジー開発技術研究組合、奈良先端科学技術大学院大学) A.研究成果 2)シロイヌナズナ由来の各種有用プロモーターの単離と活性評価 138 シロイヌナズナの独立した 6,347 クローンの cDNA をスライドグラスに固定し、マ イクロアレイを作製した。シロイヌナズナの各器官(茎頂、葉、根)から cDNA を調製 し、ハイブリダイゼーションを行った結果、各器官で高発現しているクローン群が スクリーニングされた。これらの中から、プロモーター領域を単離する候補クロー ンとして、葉および根の各器官で特に高発現しているクローン(他器官との蛍光 シグナル強度の比が 5 倍以上のもの)を抽出した。 単離されたプロモーターの活性強度検定を行うために、各遺伝子プロモーター 配列をレポーター遺伝子に連結し、遺伝子銃を用いた一過性発現検定を行った。 まず候補クローンに関して、公開のゲノム配列情報をもとに、同定された遺伝子 のプロモーター領域を順次 PCR 増幅し、得られた各種プロモーター断片を、既存 のベクターにマルチクローニング部位を導入した一過性発現検定用ベクター pRAB-5 にクローニングした。葉特異発現遺伝子プロモーター、根特異発現遺伝 子プロモーター併せて 101 種類のプロモーターをクローニングした。一過性発現 検定法としては、ホタルルシフェラーゼ遺伝子およびウミシイタケルシフェラーゼ 遺伝子を用いる dual-luciferase 法を用いた。遺伝子導入用植物組織として、 葉特異発現プロモーターに関しては、播種後 14-21 日目のシロイヌナズナ (Columbia)の葉組織を用いた。一方根特異発現プロモーターに関しては、一過 性発現検定に広く用いられているタバコの BY-2 培養細胞を用いた。葉、根ともに、 マイクロアレイ解析で得られた発現強度と、今回の一過性発現検定で得られたプ ロモーター活性値との間には強い相関は見られなかったが、発現誘導活性の有 無を再現性良く判別することが出来た。特に、葉で 4 区、根で 8 区、極端に活性 値の低い(pRAB5 の活性値を 1 とした場合の値が 10 以下)クローンが見られた。 これらのクローンの活性が低い理由としては、必要なプロモーター領域の範囲が 獲得した範囲(開始メチオニンより 1.5-2.0kb 上流域)から外れているか不足して いたために、完全なプロモーターの取得が出来ていないか、もしくは cDNA の発現 にプロモーター部位以外のトランス因子の影響が強く絡んでいることなどが考え られた。これらの結果は、組換え体植物作成による詳細な解析結果と併せて実 用性を考察する材料として有用であると考えられた。以上の点より、本法が詳細 な解析を行うのに先立ちプロモーターの強度を簡便に測定する検定系として有 用であることが示された。cDNA マイクロアレイ、ノザン解析の結果との整合性を調 べ、この検定法の妥当性を示すことが出来た。 続いて、一過性発現検定により充分な強度のプロモーター活性を有すると判 断された遺伝子プロモーター断片について、プロモーター/レポーター融合遺 伝子を導入した組換え体シロイヌナズナを作成し、安定発現植物体における発 現特性の検定を行った。GUS 遺伝子を配列中に含む安定発現用バイナリーベク ターpRAB-4 について、pRAB-5 の場合と同様に各種プロモーター断片をクローニ ングした。pRAB-4 ベクターにクローニングしたプロモーターDNA のアグロバクテリウ ムへの感染法としては、triparental mating 法を採用した。植物の形質転換法 としては、減圧浸潤 (vacuum infiltration) 法を用いた in planta 形質転換 法を採用した。形質転換・選抜操作の結果、葉特異・根特異併せて 50 余りのプ ロモーターに関して形質転換体植物を得た。それぞれの系統について、導入さ れたプロモーターによって遺伝子発現が誘導される組織および時期を調べるた め、植物をカナマイシン選抜平板培地および GM 斜面プレート上で栽培し、発芽 後 7 日目(子葉が展開)、14 日目(本葉 4 枚が展開)、21 日目(抽苔開始寸前) の 植 物 体 を 採 取 し た 。 そ れ ぞ れ の 植 物 体 を 5-bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-glucuronide (X-Gluc)を含む発色反応液 139 で処理し、青色のインジゴン色素の生成・蓄積を指標として GUS 遺伝子の発現し ている組織を検出した。その結果、個々の遺伝子プロモーターの発現部位およ び発現時期についての特徴を知ることが出来た。葉特異プロモーターに関して は、葉肉細胞全面に発現を示すプロモーターが多数を占め、葉脈にのみ発現を 示すプロモーターも一部に見られた。それに対し、根特異プロモーターに関して は、発現部位および時期について多様な特徴を有する個々に多様な特徴を有 することが示された。維管束 (中 心柱 )部 位に発現 が見られるものとしては、 sucrose-UDP glucosyltransferase など分泌タンパク質と考えられる遺伝子プ ロモーターが見られた。一方、表皮付近に強い発現を示すものでは trypsin inhibitor などストレス応答性と見られる遺伝子プロモーターが目立った。また、 根端付近に発現部位が局在する遺伝子プロモーターには、extensin など細胞 伸長関連遺伝子のプロモーターが見られた。その他、多くの機能未知遺伝子の プロモーターに関しての解析データを得た。これらの結果より、今回の選抜法に より、新規プロモーターを含む様々な性質を有するプロモーターが多数収集でき たことが示された。 葉および根特異発現遺伝子および遺伝子プロモーターに関して、cDNA マイク ロアレイ、一過性発現検定、GUS histochemistry 解析などによってこれまでに得 られた情報を集約した遺伝子プロモーターカタログの作成を行った。カタログ作 成 に 際 し て は 、 コ ン ピ ュ ー タ ー ソ フ ト と し て Office 2000 professional (Microsoft) および GoLive 6.0 (Adobe)の Windows 版を用いた。カタログ内 には、これまでに解析を行った葉および根特異発現遺伝子プロモーター50 余系 統の解析情報を収録すると共に、cDNA マイクロアレイによる 185 クローンの解析 情報や DNA 配列情報などの既知情報など関連情報を網羅するよう努めた。さらに インターネット上に公開されている各種データベースとのリンクを行い、本カタログ を利用することにより工業化植物育種の際に必要となる各種遺伝子プロモーター の情報が一覧できることを目指して整備した。 B. 目標の達成度 2) シロイヌナズナ由来の各種有用プロモーターの単離と活性評価 目標水準: シロイヌナズナの各器官をターゲットにしてマイクロアレイによる解 析を行い、器官特異的発現遺伝子をスクリーニングする。プロモーター単離の対 象となる葉および根に関して特異的高発現を示す上位数十クローンを抽出し、 プロモーター領域のクローン化を進め、これらのプロモーターについて、遺伝子 銃を用いた一過性発現検定により評価を行う。一過性発現検定により有効性が 確認されたプロモーターについて組換え体植物作成により植物体での発現特性 を解析する。 達成度:本研究で構築した cDNA マイクロアレイを用いた解析により抽出した、 葉および根で特異的高発現している遺伝子に関して、ゲノム配列情報よりこれら の遺伝子のプロモーター領域のクローニングを進めた結果、葉、根併せて 101 種 のプロモーター配列を収集することが出来た。続いて、これらのプロモーターに 関して一過性発現による活性評価を行い、プロモーター配列としての活性強度 を簡便に検定することが出来た。また、組換え体植物作成による発現解析につ いても 50 余りの系統について有効な結果を得られ、様々な性質を有するプロモ ーター配列を収集・カタログ化することが出来た。総じて当初の目標が充分に達 成されたといえる。 140 C. 成果の意義 2)シロイヌナズナ由来の各種有用プロモーターの単離と活性評価 組換え体植物を用いたプロモーターの発現誘導活性検定の結果より、マイク ロアレイを用いた今回のスクリーニング法により様々な性質を有するプロモーター 群が多数得られたことが示された。これらの発現特異性をより詳細に解析し、カタ ログ情報を充実させることによって、多重遺伝子連結技術などを用いた工業化植 物育種を行う際に必要となる遺伝子発現制御因子の選択の幅を大幅に広げるこ とが出来ると考えられる。また今回マイクロアレイ解析データから抽出した器官特 異的高発現のクローンの中には、既知の葉、根特異的発現遺伝子に加え、未知 の遺伝子が多数ある。これらの未知遺伝子のプロモーターに関しては、各種環 境条件下での発現解析をより詳細に進めることにより、従来知られていなかった 有用な特性が見出される可能性が期待される。 2.10.1 植物における高効率遺伝子発現系の構築 (バイオテクノロジー開発技術研究組合、奈良先端科学技術大学院大学、横浜 国立大学) A.研究成果 1)外来導入遺伝子の安定発現 1-1)単一コピーで導入された 35S-GUS 植物個体の解析 35S-GUS(pBI121)導入植物個体(133 個体)の解析を行った。T1 植物では GUS の発現にかなりのバラツキが認められたが、この中で導入遺伝子が完全に 1 コピーであった 11 系統は T3 植物においてすべて同程度の GUS 活性を示し た。これらは、すべて染色体の異なる位置に挿入されていた。このうち 5 系統 の植物から全 RNA を調製し GUS 遺伝子および選択マーカーである NPTII 遺伝 子をプローブとしたノザン解析を行った結果、GUS mRNA 量と NPTII mRNA 量は GUS 活性と同様に同程度の蓄積を示していた。一方で、多コピーで導入された 個体は概ね低い発現であった。今回取得した 35S-GUS 導入植物個体(11 系 統)は、すべてユークロマチンと予想される領域に挿入されていたが、少なくと もシロイヌナズナゲノムの大部分を占めるユークロマチン領域において導入遺 伝子の発現に及ぼす position effect は非常に小さいことが明らかとなった。 1-2) 導入遺伝子数と発現量の相関 35S-GUS 導入植物個体(単一コピー)を掛合せた個体(2 遺伝子座;4 コピー) を F3 で解析した結果、導入遺伝子数と GUS の発現には相関関係(4 コピーは 1 コピーの 4 倍)があり、4 コピーでは mRNA の閾値による発現の低下は認めら れなかった。 1-3)内在遺伝子の発現とクロマチン構造 シロイヌナズナ第 5 染色体の一部染色体領域(約 80 kb)に存在する約 30 遺伝子のうち ABC transporter 遺伝子などは高発現しており、他の遺伝子と 比べ約 100 倍程度の発現が認められる。これら領域について DNaseI 感受性 試験を 163 個のプローブ(80 kb をカバー)を用いたサザン解析により行ったと ころ、対象領域内では顕著に DNaseI 感受性が異なる領域が存在しないことが 明らかとなった。シロイヌナズナの EST 情報からは、動物のように数 100 kb にも 渡り遺伝子が発現しない領域は存在しない。これらのことから考えると、植物、 少なくともシロイヌナズナの染色体は、動物とは異なり広範囲に渡る高次構造 による発現制御は存在せず、数百〜数キロの局所的な制御(酵母に近い)し か存在しないのではないかと思われる。 141 2)翻訳効率の上昇 2-1)タバコから単離した ADH5'UTR を CaMV35S プロモーターの転写開始点と GUS レポーター遺伝子の翻訳開始点の間に挿入し、タバコ BY2 細胞から調製した プロトプラストにエレクトロポレーション法で導入した。GUS の一過性発現が、 ADH5'UTR を含まない対照の 120 倍に上昇した。この効果は、他のレポーター GFP でも認められた。 2-2)同様の構築物をシロイヌナズナ培養細胞のプロトプラストに導入し、一過性 発現を測定した結果、ADH5'UTR を含まない対照の 76 倍 GUS 活性があった。 mRNA の蓄積量には変化がないことから、翻訳段階が促進されたと結論した。 一方、イネ培養細胞のプロトプラストを用いた場合、約 1.4 倍の効果しか見出 されず、植物間(特に双子葉・単子葉)での翻訳上昇機構の違いが示唆され た。 2-3)CaMV35Sp/ADH5'UTR/GUS 構築物をシロイヌナズナおよびタバコに導入し、 形質転換体を得た。GUS 比活性の測定および GUS mRNA 量の定量を行った結 果、対照の CaMV35Sp/GUS 保有個体のそれぞれ 15 倍、40 倍の GUS 活性を示 した。これは ADH5'UTR がシロイヌナズナおよびタバコ植物体においても顕著な 翻訳促進活性を有することを示す発見であり、ADH5'UTR の有効性の特許出願 を行った(特開 2003-079372)。 2-4)ADH5'UTR の持つ翻訳上昇効果は翻訳エンハンサーとして知られるΩ配列 (タバコモザイクウイルス由来)と同等であった。このΩ配列が翻訳エンハンサ ー と し て 機 能 す る た め に は 、 ト ラ ン ス 因 子 と し て HSP101 が 必 要 で あ る 。 ADH5'UTR にもこの HSP101 がトランス因子として作用することを見出し、Ω配列 と同じ機構で翻訳エンハンサーとして機能することが示唆された。 2-5)シロイヌナズナ由来の 5’UTR(31 種類)についてシロイヌナズナ培養細胞を 用いた一過性発現実験によって ADH5'UTR を含まないものを対照として翻訳能 の評価を行った。このうち、いくつかの 5’UTR は対照とほぼ同じ翻訳能を示した が、AtHSP81-3-5’UTR は NtADH-5’UTR と同程度の高い翻訳能を、AtADH-5’UTR や AtMYB102-5’UTR などはより高い翻訳能を示した。これらは新規翻訳エンハ ンサーである可能性がある。また、ADH5’UTR について由来する植物間(タバコ・ シロイヌナズナ・イネ)の比較を行った。その結果、双子葉由来の ADH5’UTR は、 双子葉細胞で高い翻訳効率を示し、イネ由来の ADH5’UTR は、イネで高い翻訳 効率を示した。この結果は、モデル植物での知見をもとに実用植物から効率 的に翻訳エンハンサーを探索できることを意味しており、その宿主植物体に特 化した高効率導入遺伝子発現系の開発が容易になることが期待できる。 3)ポリシストロニックな遺伝子発現系の構築 3-1)13 年度夏までの研究で、 encephalomyocarditis virus(EMCV)由来の IRES (Internal Ribosome Entry Site)が植物細胞において有効に機 能することが明らかにされたが、形質転換植物を用いた実験では EMCV-IRES の活性に明瞭な組織特異性が認められ、動物組織における場合とは異なる ことなどを明らかにした。 3-2 ) 植 物 ウ イ ル ス で あ る crTMV ( crucifer-infecting tobamovirus ) の movement protein と coat protein をコードする2種類のサブゲノム RNA(MP および CP-RNA)の 5’ UTR にそれぞれ IRES(MP-IRES、CP-IRES)が存在するこ とが示されている。それら IRES 配列の植物細胞内における polycistronic 遺伝子発現への応用について検討した。レポーター遺伝子の bicistronic 発現ベクターにおける IRES の下流遺伝子発現効率について調べたところ、 142 MP-IRES あるいは CP-IRES だけでは EMCV-IRES よりも低かった。そこで、IRES の直前に安定な高次構造を形成する約 40 塩基からなる Stem-Loop 構造の 挿入を試みたところ、下流遺伝子の発現効率を大幅に上昇させることができ た。この Stem-Loop と MP-IRES あるいは CP-IRES の組み合わせは EMCV-IRES よりも強力なキャップ非依存的翻訳開始能を示し、polycistronic 遺伝子発 現ベクター構築に非常に有効な介在配列であると思われる。MP-IRES と CP-IRES の組み合わせで、tricistronic 発現ベクターも構築し、植物細胞 中で有効に機能することが示された。 3-3)昆虫ピコルナ様ウイルスの一種である PSIV (Plautia stali intestine virus)の IRES は全長 282 塩基で、EMCV-IRES(約 600 塩基)と比較してコン パクトであるため IRES として使用しやすいと考えられ、その性状に興味が持 たれた。しかし、PSIV-IRES の植物細胞における機能について in vitro 翻 訳系および一過的発現実験により検討した。その結果、in vitro 翻訳系で は、PSIV-IRES は EMCV-IRES よりも高い翻訳活性を示した。一過的発現系で は、stem-loop 構造を挿入する事によって翻訳効率が大幅に上昇し、その活 性は EMCV-IRES よりも高かった。 3-4)介在配列としての Stem-Loop 構造に着目し、IRES 依存翻訳効率の大幅な 向上をもたらす新規な配列を作成した(特許出願予定)。 3-5)高効率で外来遺伝子を発現させるためには、植物側の各種因子群(翻訳 因子、転写伸長因子等)の改変・制御が考えられる。そこで、シロイヌナズナ の翻訳関連因子群の完全長 cDNA 取得と、形質転換シロイヌナズナを用いた 変異体の取得を開始した。M2 植物約 30,000 個体をスクリーニングし、高ルシ フェラーゼ活性を示す個体を 193、デュアルルシフェラーゼ活性測定でホタ ルルシフェラーゼ活性が 10 倍以上に上昇した個体を 93、さらに IRES 依存翻 訳活性(上流 ORF に対する翻訳量比)が 10 倍以上に上昇した個体を 51 同定 した。それらのうち 2 ラインについて遺伝子マッピングを実施し、原因遺伝子 の同定を行っている。 4) レギュロン発現系の構築 4-1)カフェイン生合成系 cDNA クローンの単離 チャ由来の cDNA ライブラリーより、カフェイン合成酵素をコードする cDNA ク ローン (TCS1) を増幅した。また、コーヒー由来の cDNA ライブラリーより、7-メ チルキサントシン合成酵素をコードする cDNA クローン (XMT) の増幅を試み たところ、XMT と 96 % の相同性を有する XMT2 を増幅することができた。XMT2 は 7-メチルキサント シン合成活性を有することが推察されており、現在、 GST-XMT2 融合タンパク質を調製して機能の確認を行っている。 4-2)カフェインを生合成する形質転換タバコの作出 XMT2 cDNA、TCS1 cDNA、MXMT1 cDNA(テオブロミン合成酵素をコードする) をそれぞれ CaMV35S プロモーターに連結した融合遺伝子を構築した。現在 のところ、XMT cDNA と MXMT cDNA を導入した形質転換タバコと TCS1 cDNA を 導入した形質転換タバコを選抜中である。これらの形質転換体が得られれば、 さらに交配によって 3 種類の cDNA を含んだ形質転換体を作成し、カフェイ ンが合成されているかどうか調べる予定である。 4-3) 上記の XMT cDNA の公開情報は間違いであり、XMT は 7-メチルキサントシ ン合成酵素をコードしていないことを明らかにした。そのため、cDNA クローニン グ、ベクター構築、形質転換体作製の全てを一からやり直すことを余儀なくさ れた。 143 4-4)新規のカフェイン生合成関連遺伝子群の cDNA をコーヒーノキあるいはそ の他の生物からクローニングし、それらの組換えタンパク質について酵素学 的な特徴づけを行った。 4-5) 上記の組換えタンパク質を用いて、試験管内でカフェイン生合成経路の 再構築を試み、キサントシンからカフェインを生成することに成功した。 4-6) 上記の cDNA を用いて恒常型カフェイン生合成レギュロン発現系導入ベク ターを構築した。次に、これを用いてアグロバクテリウム法によりタバコの形質 転換を行った。 4-7) RT-PCR 解析によって導入遺伝子を全て発現している形質転換タバコ系統 を選抜し、その後、HPLC 解析によってからカフェイン蓄積系統を選抜した。更 に、カフェイン蓄積系統についてカフェイン蓄積様式を詳細に解析した。 4-8) カフェイン蓄積系統と対照系統を用いて、ハスモンヨトウの餌選択実験を 行った結果、カフェイン蓄積系統に弱い忌避活性があることが示された。 4-9) 傷害応答型カフェイン生合成レギュロン発現系導入ベクターの構成要素 となる発現カセットを構築した。全体としては、8割程度が完成した。 5)遺伝子の特異的発現抑制 5-1)アラビカ種およびカネフォラ種の新規不定胚培養系の開発 特にアラビカ種において不定胚形成組織を短期間に高頻度に誘導するため には、フェニルウレアタイプのサイトカイニン(4-CPPU:N-2-クロロ-4-ピリジル -N,-フェニルウレアや TDZ:チジアズロン)を用いることが有効であった。また、 両種の培養に対応できる簡便な基本培地として、無機塩類の濃度を 1/2 にし た改変 1/2 MS 培地(以下 m1/2 MS)を選択した。結果として 4-CPPU を 1〜10 μ M にオーキシンとして 2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)を 0〜5 μM 組み合 わせて添加した m1/2 MS 培地において、両コーヒー種の不定胚形成組織を短 期間で安定して誘導、増殖できることが明らかになった。また、カネフォラ種に ついてはアデニンタイプのサイトカイニン、2ip(2イソペンテニルアデニン)を用 いた不定胚形成系の改良に取り組んでおり、不定胚を誘導し、成熟化および 植物体再生に至る一連の培養系を確立した(特開 2003-274954)。 5-2)CaMXMT1 遺伝子のアンチセンス構築および RNAi 構築の作製 CaMXMT1 に特異的な部分配列を用いたアンチセンス構築物および RNAi 構 築物を作製し、ベクター(pIG121-Hm)に組み込んだ後、アグロバクテリウム (EHA101)に導入した。 5-3)形質転換系の効率化 不定胚形成組織へのアグロバクテリウム感染からカナマイシン含有の選択培 地での培養に至る過程を検討し、アラビカ、カネフォラ両種について選択培地 で増殖する不定胚形成組織を得た。また、前処理として前述 5-1)のように 4-CPPU で細胞増殖を促進することによって、カネフォラ種の葉切片へのアグロ バクテリウム感染を容易に行なえることが明らかになった。 5-4)遺伝子組換えコーヒーの作成および評価。 選択培地で増殖している不定胚形成組織について、ゲノム DNA を抽出し、 PCR によって導入された遺伝子を確認した。また、カフェイン含量を測定するた めの HPLC 分析条件を検討し、非形質転換コーヒー植物体、培養細胞等のカ フェイン含量測定が可能となった。カネフォラ種において GFP 遺伝子、アンチ センス構築、RNAi 構築を導入した形質転換コーヒー植物を作製した。このらの 幼葉について HPLC 解析を行ったところ、RNAi 構築導入植物ではカフェイン含 量が5~7割減少していることが明らかになった(特願 2002-207221 他)。 144 B.目標の達成度 1)外来導入遺伝子の安定発現 目標:植物で外来遺伝子の発現がバラツク要因を探り、それを回避する手法を 確立する。 達成度:外来遺伝子導入形質転換体間でみられるバラツキの主原因は position effect ではない。完全なシングルコピーで導入された外来遺伝子は 安定な発現を示し、マルチコピーで導入された個体は概ね低い発現であった。 導入した外来遺伝子を安定に転写させるためには、シングルコピーで挿入され た個体を取得することが必要であり、「バラツキ」という問題点を明らかにした点で 目標は達成された。 2)翻訳効率の上昇 目標:植物遺伝子の高発現にはプロモーター等の転写レベル以降の効率も重 要である。その可能性を探り、応用する。 達成度:タバコ ADH5'UTR が一過性発現実験(タバコ・シロイヌナズナ・イネ)と安 定形質転換個体(タバコ・シロイヌナズナ)において GUS の発現を翻訳レベルで高 めることを明らかにし、他のレポーターGFP でもその有効性を確認した。タバコ ADH5'UTR の翻訳エンハンサーとしての機能にトランス因子 HSP101 が必要である ことも明らかにした。また、タバコ ADH5'UTR 以外に複数の新規翻訳エンハンサー を取得した。達成度は 100%以上である。 3)ポリシストロニックな遺伝子発現系の構築 キャップ非依存的翻訳を可能とする動植物ウイルスゲノム由来の Internal Ribosome Entry Site (IRES)が植物細胞において機能し、単一の mRNA からの ポリシストロニックな翻訳を可能にすることを示し、多重遺伝子導入・発現に活用 できることを明らかにした。続いて、IRES の使用方法について詳細に検討し、最 適な連結方法、組織特異性、種特異性に関する知見を得た。さらに IRES 依存性 翻訳活性を数倍から数十倍向上させる新規な介在配列を開発した。これらの成 果は、当初設定していた目標を大幅に上回るものである。 4)レギュロン発現系の構築 最終目標:恒常型カフェイン生合成レギュロン発現系をタバコにおいて構築し、 タバコでカフェインを生産させる。 達成度:途中で計画の修正を余儀なくされたものの、新規カフェイン生合成関 連遺伝子 cDNA 群を速やかにクローニングすることができ、恒常型カフェイン生合 成レギュロン発現系を導入した形質転換タバコを作製することができた。この形 質転換タバコからカフェイン蓄積系統を選抜し、そのカフェイン蓄積様式と忌避 活性を解析することまでできた。従って、達成度は 100%以上である。 5)遺伝子の特異的発現抑制 最終目標:アンチセンス構築および RNAi 構築を導入した形質転換コーヒー植 物を作製し、カフェイン含量の減少した系統を得る。 達成度:アラビカ種およびカネフォラ種で効率的な形質転換系を確立すること ができた。RNAi 構築を導入したカネフォラ種の形質転換系統において、幼葉の カフェイン含量が 5〜7 割減少することを明らかにした。これらの植物が種子(豆) を形成するのは 3~4 年後であるが、種子においても幼葉と同様の割合でカフェ インが減少するものと考えられる。これらに改良の余地はあるものの、減カフェイ ンコーヒーとしては十分に実用的なものである。従って、達成度は 100%以上で 145 ある。 C.成果の意義 1)外来導入遺伝子の安定発現 植物での外来遺伝子の発現は染色体への挿入位置には依存せず、多コピー の個体は十分な発現もしくは安定な発現が期待できない。完全な単一コピー導 入植物個体が安定な発現を示すことを明らかにした点で意義は大きい。遺伝子 導入植物個体から単一コピーで挿入された個体を選択することは、労力を要す る。今後、「単一コピー導入個体を効率良く選択する系の開発」および「多コピー でも正しく挿入される系の開発」が望まれる。 2)翻訳効率の上昇 遺伝子の高発現にはプロモーター、エンハンサーなど転写を高める研究が多 いが、翻訳を高めることも重要である。これまで植物ウイルスゲノムのΩ配列が翻 訳を促進することが報告されているが、タバコの ADH5'UTR が翻訳を大幅に促進 することは、実用面では大きな意義がある。この翻訳エンハンサーを利用した発 現系では、シングルコピーからの高発現が可能となる。今後、開発した発現系は 強力なプロモーターや器官・時期特異的プロモーターと組合わせることで、有用 な基盤技術となることが期待できる。 3)ポリシストロニックな遺伝子発現系の構築 これまでの遺伝子導入発現手法では、複数の遺伝子を導入した場合、不活性 化や発現レベルの不揃いなどの問題が大きく、計画的な多重遺伝子導入は困 難であった。IRES を利用したポリシストロニックな発現系を用いれば、導入遺伝 子の翻訳レベルが予想できるのでそれらの問題点を克服できる。また、本研究か ら派生した、翻訳因子に関する知見は高効率・高性能な外来遺伝子発現系構築 への展開が期待される。 4)レギュロン発現系の構築 現在、カフェイン製造の原料としてコーヒー豆や茶葉が用いられている。カフェ インの用途としては医薬用がほとんど全てであるが、農薬としての利用法も検討 されつつある。今後、カフェインの生産量を著しく増加させるためには、栽培の容 易な新たな原料植物の開発が必要である。本研究で開発したカフェイン生合成 レギュロン発現系はそのための中核となる技術である。また、本研究は他の有用 物質に対する原料植物開発の優れたモデル研究になると思われる。その一方で、 カフェインは昆虫類に対する忌避・殺虫活性を有しているので、カフェイン生合 成レギュロン発現系は新規の害虫防除技術としても期待される。 5)遺伝子の特異的発現抑制 植物形質転換体を実用レベルで作成するためには、植物体再生効率の高い 培養系の確立が必要不可欠となる。特に育成に長期間を要するコーヒー植物に おいて、効率の良い安定した植物体再生系が確立できたことは大きな意味を持 つ。また、新たに開発したコーヒー葉切片へのアグロバクテリウム感染法は、本研 究内で活用され、形質転換組織を得るまでの期間短縮に効果的であることが示 されつつある。この方法は、独自のコーヒー分子育種技術の確立に非常に有効 であると考えられる。本研究で作製した RNAi 構築導入コーヒー植物は 5~7 割も カフェイン含量が減少しており、そのまま事業化することも可能である。 2.10.2 RNA 干渉(RNAi)による代謝制御法の開発 (京都大学大学院生命科学研究科 146 佐藤文彦) A.研究成果 1)タバコあるいは Nicotiana benthamiana における安定 RNAi ベクターもしくは 一過的 dsRNA 発現ベクターの導入による遺伝子発現抑制 タバコにおける光化学系 II の酸素発生系 23kD タンパク質(OEC23)をコードす る4つの psbP アイソジーンをモデルとして、dsRNA 発現(RNAi)ベクターの作製と その導入による遺伝子発現抑制を試みた。 psbP アイソジーンの場合、1A の 3'UTR に対する約 100bp の dsRNA の作製により 1A/5B グループ遺伝子を完全に 発現抑制できることを明らかとした。 一方、N. benthamiana 緑葉に Agrobacterium を用いて一過的に dsRNA を発 現させることにより、RNA 機能を不活化することを試み、導入した GFP 遺伝子の発 現は同時に導入した dsRNA の発現ベクターによって容易に抑制できることを明ら かとした。しかし、解析の結果は、実験に用いた一過的発現系では、共導入した 発現ベクターの発現の約 50%程度が抑制され、GUS のように安定性の高い遺伝 子産物では、遺伝子発現抑制の効果を観察することが困難であることを示してい た。すなわち、内在の遺伝子に関しては、このような一過的な RNAi 導入系の適 用は、困難であると結論した。 2)オウレンプロトプラストと dsRNA を用いた内在遺伝子発現抑制系の確立 オウレンにおけるベルべリンとコプチシンの生合成の分岐に当たる scoulerine O-methyltransferase (SMT)を標的として、dsRNA を用いた遺伝子発現抑制の 可能性を検討した。その結果、プロトプラストの単離と培養によって SMT の発現が 上昇することを認めた。一方、同条件で SMT の dsRNA を導入することにより、SMT の mRNA 増加が著しく抑制されることを半定量的 RT-PCR により確認した。また、ウ エスタン解析によりタンパク質量も抑制されていることを観察した。しかし、アルカ ロイド成分の変化としては確認できなかった。これらの結果は、dsRNA の導入によ って生合成酵素の機能を解析するには、さらなる改良が必要であることを示唆し ていた。 そこで、本システムを用いた dsRNA の配列特異性の解析を行なった。SMT の場 合、配列長(600 bp, 230 bp)、配列部位(5'CDS, CDS 内部、3'UTR)に関わらず、 mRNA 量の低下を誘導できることが示された。さらに、SMT 以外のメチル化酵素を 標的にした場合にも、dsRNA を用いて配列特異的に発現抑制を誘導できることを 確認した。以上のように、本手法が多くの内在遺伝子の発現抑制に有効であるこ とが実証された。 3)安定形質転換系を用いた RNAi による代謝工学 berberine bridge enzyme (BBE)に対する RNAi ベクターを導入したハナビシソ ウの形質転換細胞を確立し、その成分分析を行なった。その結果、RNAi ベクタ ー導入細胞株の多くにおいて、ベンゾフェナンスリジン型アルカロイドが低下して おり、より単純な組成へと成分変化していることを認めた。LC-MS 分析した結果、 RNAi ベクター導入細胞において BBE の基質であるレチクリンが多量に蓄積して いることを認めた。もっとも大量に化合物を蓄積した細胞株におけるレチクリン含 量は 0.3 mg/g FW に達していた。この結果は、RNAi 法による代謝経路の遮断に よって、代謝中間産物が効果的に蓄積できることを示したものであり、当初の目 的を証明するものであった。現在、代謝の遮断によって、新たな代謝経路が誘導 されている可能性についても検討を行なっている。 147 2.11 植物葉緑体ゲノムへの複合環境ストレス耐性遺伝子群の多重導入によ る複合環境ストレス耐性工業原料生産植物の作成) (地球環境産業技術研究機構) A.研究成果 葉緑体形質転換手法を用いた、外来タンパク質の過剰発現はこれまで Bacillus の毒素、除草剤耐性遺伝子ついてタバコで試みられているが、これら は、形質転換体の選抜のための aadA(スペクチノマイシン耐性)遺伝子とのポリシ ストロニックな遺伝子発現を狙ったため、その発現総量は全可溶画分の 6~7% 程度であった。これに対して今回葉緑体で強力に発現することが期待できる psbA(光化学系Ⅱの D1タンパク質遺伝子)プロモーターを導入遺伝子に単独に 用い、さらに翻訳開始点上流にリボソーム結合部位を置くことによりタバコ葉緑体 で高発現するベクターを構築した。 タバコ葉緑体由来の psbA プロモーター下流にマルチクローニング部位を置き、 その下流にタバコ葉緑体由来のリボソームタンパク質遺伝子のターミネーターを 配置したプラスミドを構築した。これら導入遺伝子発現カセットの上流に葉緑体形 質転換体の選抜のための aadA カセットを置いた。こうして構築したベクターを pLD6 と名付けた。またタバコ葉緑体ゲノムの rbcL 遺伝子と accD 遺伝子をふくむ 相同配列を導入したベクターpLD200 を構築した。レポーター遺伝子の GFP を pLD6 および pLD200 に導入した。タバコ葉緑体形質転換は既知の方法により行っ た。この結果、葉緑体形質転換ベクター作成過程の簡易システム化がなされた。 葉緑体形質転換体を蛍光顕微鏡下で観察した結果、野生種では見られない 強い蛍光が見られた。この形質転換体からタンパク質を抽出し、SDS-PAGE を行っ たところ期待すべき分子量の濃いバンドが確認された。このバンドの濃さのデン シトメトリーから、その発現総量は全可溶性タンパク画分の 38%であった。この結 果、葉緑体では導入遺伝子産物が従来の数十倍から数百倍の蓄積する可能性 が示され、葉緑体を物質生産の場として利用する方向性が示された。 ここで確立した手法を用い遺伝子導入後、実体顕微鏡による連続観察を行い、 10-14 日程度で葉緑体形質転換体を検出する手法を確立した。さらにこのベクタ ーにより APX 等活性酸素除去に有効であると考えられる遺伝子のモデル植物葉 緑体への導入を行った。この結果、APX については野生型にくらべ 100 倍の活性 酸素分解活性が得られた。この過程をとおして、パーティクルガンを用いた遺伝 子導入、および培養手法により形質転換体作出の検討を行い、葉緑体の形質転 換のための基本的プロトコールを確立した。また、多重化した遺伝子導入により 複合環境ストレス耐性を付与するための候補遺伝子として、上記 APX をはじめと して、共同研究等で効果が期待される大腸菌カタラーゼ、ベタイン合成酵素等を 選別した。 葉緑体を物質生産の場としてとらえる際、必要な時・器官・組織での生産が好ま しい。このシステム構築のためには、葉緑体移項シグナルをともなった T7RNA ポリ メラーゼ遺伝子を組織・器官特異的プロモータにより発現させる必要がある。こう した研究の一環として、Clp プロモータが根で特に高発現することを新たに見い だした。 また、GFP,dsRed に加え、GUS をレポーターとしてポリシストロニックな発現を期 待できるように多重化を行い、葉緑体ゲノムへ一括導入し、当初予定した 10 種類 の遺伝子コンストラクトに対応する形質転換体を獲得した。それぞれの形質転換 148 体に対し、GFP,dsRed に関しては蛍光顕微鏡観察により、GUS に関しては組織染 色により導入遺伝子の効果を定性的に碓羅できた。そこで、それぞれの形質転 換体の細胞抽出液を調整し導入遺伝子の効果を定量的に検討した。その結果、 例えば、GUS 単独で導入したものに比べ、GFF−dsRed−GUS のコンストラクトの GUS 浄性(蛍光強度)は、およそ 1/100 だった。同様の傾向は GFP や dsRed でもみら れた。多重化の際のプロモータからの距離と発現量の相関について検討評価を 行うため、それぞれの形質転換体における導入遺伝子のコピー数による補正を 行ったところ、GFP や dsRed の場合プロモータからの距離が増すほどその産物の 蓄積量が低下する蛍光が見られた。 B.目標の達成度 葉緑体多重遺伝子導入手法の確立,葉緑体遺伝子発現制御系の開発等,両 者おいて計画通りで順調に進捗た。この間,GFP の発現タンパク質量が全可溶性 タンパク質画分の 38%程度で葉緑体に局在すること、しかもこれほど多量に蓄積 しても植物体の生育に影響しないことを見い出した。ここで得られた成果は実用 化に向けた要素技術,知見としては,多くのものがあり,十二分の達成度と言え る。 C.成果の意義 医薬品等の異種タンパク質を遺伝子組換え技術を利用して大量調製する場合、 これまでは大腸菌を用いた系が広く利用されてきた。この場合、発現したタンパク 質の精製過程で有害夾雑物の除去が困難なため、動物細胞の利用が実用化さ れている。しかしながら動物細胞を利用する際の培養にかかるコストは、大腸菌 の場合の数十倍にもおよび、生産物が非常に高価なものとなっている。この点、 植物は光合成により生育するため、エネルギーの投入が少なく、生産コストが安 価になり得る。実際、遺伝子組換え産物を得るための宿主として、その生産コスト を比較した場合、動物細胞、大腸菌、植物体の順に安くなることが試算されてい る。このため、植物体を用いた異種タンパク質の大量発現系の開発が熱望されて いたが、これまでの結果は、この要求を十分に満たすものである。 また、葉緑体形質転換技術は、これまでのところタバコ等特定の植物種のみで 可能な技術である。この技術を植物種一般に適応する技術に高めることは、実用 化に向けて必須の事柄であるが、じゃがいも、シロイヌナズナで成功しているの みである。これは、葉緑体の形質転換においてその培養法の確立が必須である にも関わらず、その効果を見るために、最低1ヶ月程度が必要とされているのが 現状である。本年度の成果を用いれば、これが、2週間程度で可能となり、葉緑 体形質転換技術のさらなる発展に寄与するものである。 遺伝子組換え植物の生態系への影響の観点から:植物の遺伝子組換え技術 の実用化に際して、導入した人工改変遺伝子が交雑、交配等により環境へ拡散 していくことに対する懸念がある。このため遺伝子組換えの際の生物的封じこめ が強調されてきたのである。今回の葉緑体への遺伝子導入は、葉緑体遺伝子が 母性遺伝することから、まさに自然現象における生物的封じこめにあたり、環境 保全の観点からも意味のある技術である。 実用化の上での将来性:葉緑体の遺伝子発現系は原核細胞型のため、大腸 菌などの原核型微生物の系がそのまま利用できるので、現在、大腸菌等で行わ れている異種タンパク質の大量発現系からの移行がすみやかに行える。 149 応用範囲は、医薬品等工業用酵素類の生産、ポリエステル、生分解性プラスチ ック、油脂、タンパク質、炭化水素、テルペンの生産、家畜飼料の改良(タンパク 質、脂質、炭水化物等の成分調節により、消化、吸収されやすい植物体を作り、 これを直接食べさせる)、観葉植物等の品種改良、複合環境ストレス耐性植物の 創成など極めて多様である。 2.12.1 ゼニゴケの脂肪酸代謝機能の活用(再委託:京都大学 大山莞爾 (平成 11〜14 年度)、福澤秀哉(平成 15 年度)) A. 研究成果 1) 100kb 以上の DNA 断片をクローン化できる pCYPAC2 ベクターを用いてゼニゴ ケのゲノムライブラリーを構築した。 2) ゼニゴケの cDNA ライブラリーを作成し、約 1,000 個の cDNA を得た。シロイヌ ナズナの脂肪酸鎖長延長酵素遺伝子(FAE1)と相同な配列をもつ cDNA クロー ンを 3 個(MpFAE1, MpFAE2, MpFAE3)得た。 3) ゼニゴケの形質転換系を開発した。無性芽播種後 2 週間目の葉状体にパー ティクルガンで CaMV35S プロモーター制御下のハイグロマイシン耐性遺伝子を 導入し、ハイグロマイシン(10 µg/ml)を含む液体培地中で 4 週間培養すると、 葉状体上に緑色の細胞塊が生じた。この細胞塊をハイグロマイシンを含む固 体培地上に移し 2 週間培養すると、新しい葉状体が再分化した。 4) MpFAE1, MpFAE2, MpFAE3 遺伝子をゼニゴケで過剰発現またはアンチセンス 抑制し、脂肪酸組成の変化を調べた。MpFAE2 遺伝子は脂肪酸 20:0 から 22:0 への鎖長延長に、MpFAE3 遺伝子は脂肪酸 16:0 から 18:0 への鎖長延長に関 与していることが強く示唆された。MpFAE1 遺伝子の機能は不明である。 5) 他生物種の脂肪酸不飽和化酵素遺伝子と相同性をもつ遺伝子 MpDES6 およ び MpDES5 の cDNA を単離した。メタノール資化性酵母およびゼニゴケの形質 転換体を用いて、MpDES6 遺伝子産物がリノール酸(18:2n-6)のγ-リノレン酸 (18:3n-6)への不飽和化反応と、α-リノレン酸(18:3n-3)のオクタデカテトラ エ ン 酸 (18:4n-3) へ の 不 飽 和 化 反 応 を 触 媒 す る こ と を 示 し た 。 同 様 に 、 MpDES5 遺 伝 子 産 物 が 、 ジ ホ モ γ - リ ノ レ ン 酸 (20:3n-6) の ア ラ キ ド ン 酸 (20:4n-6)への不飽和化反応と、エイコサテトラエン酸(20:4n-3)のエイコサ ペンタエン酸(20:5n-3)への不飽和化反応を触媒することを示した。 6) 酵母の脂肪酸鎖長延長酵素(elongase:ELO)と相同性をもつが、タイプの異 なる鎖長延長酵素遺伝子 MpELO1 をゼニゴケから単離した。メタノール資化性 酵母およびゼニゴケの形質転換体を用い、MpELO1 遺伝子産物が、γ-リノレ ン酸(18:3n-6)からホモジγ-リノレイン酸(20:3n-6) への鎖長延長反応と、 オクタデカテトラエン酸(18:4n-3)からエイコサテトラエン酸(20:4n-3)への鎖 長延長反応を触媒することを示した。 7) MpDES6, MpELO1 および MpDES5 遺伝子を連結した多重遺伝子導入コンストラ クトを作製し、ゼニゴケを形質転換したところ、乾燥重量あたりのアラキドン酸 およびエイコサペンタエン酸の蓄積量が顕著に増加した。 8) MpDES6 遺伝子を発現するメタノール資化性酵母の解析から、MpDES6 遺伝子 産物はグリセロ脂質型および CoA 結合型アシル鎖のいずれをも反応基質に する可能性が示された。 B. 目標の達成度 ゼニゴケの飽和脂肪酸鎖長延長酵素遺伝子を 2 個、有用高度不飽和脂肪酸 150 であるアラキドン酸およびエイコサペンタエン酸の生合成に関わる鎖長延長酵素 遺伝子1個および不飽和化酵素遺伝子2個を同定したことから、当初の研究目 的を十分に達成した。 C. 成果の意義 有用高度不飽和脂肪酸であるアラキドン酸およびエイコサペンタエン酸の 生合成に関わる遺伝子群を得ることができたので、今後は、ダイズなどの 油糧植物での発現を通して、有用高度不飽和脂肪酸の生産効率化が期待で きる。菌類由来の遺伝子を用いた脂肪酸生産が難しい場合には、本研究で 得られたゼニゴケ由来の遺伝子群を用いることが重要な問題解決の鍵とな る可能性が高い。 2.12.2 アレルゲンタンパク質のマメ科植物による生産 (再委託:大阪大学大学院工学研究科 室岡義勝) A. 研究成果 1) ダイズ栽培品種エンレイより相同性プライマーをもちいてβ-コングリシニンの αサブユニットの遺伝子(PCONG)をクローニングした。PCONG のゲノム遺伝子、 -632b から+28b までの 660bp 断片をプロモーターとして用い、シロイズナズナの 種子で特異的に GUS 遺伝子が発現した。 2) モデルマメ科植物、ミヤコグサのアグロバクテリウム法による形質転換系を確 立した。 3) コナヒョウヒダニの主要アレルゲン Derf1 遺伝子を、pBI121 ベクターにつなぎ、 Agrobacterium 感染法でミヤコグサに導入し、カルス培養、再生を行い、T2 植物 において Derf1 が生産されていることを確認した。 4) ダイズの形質転換系を確立した。 B. 目標の達成度 ダイズ種子特異的プロモーターを単離し、ミヤコグサへのダニアレルゲン遺伝 子の導入を行った。ダイズの形質転換は容易ではないため、米国イリノイ大学の Dr. Jack M. Widholm の研究室と共同で、遺伝子銃法によるダイズ形質転換系 を確立した。一方、マメ科モデル植物ミヤコグサの形質転換体 T2 植物において ダニアレルゲンタンパク質の蓄積に成功した。このように初期の目標をほぼ達成 した。 C. 成果の意義 小児喘息および年々増加している花粉症などのアレルギー疾患は、近い将来 先進国の3人に1人が悩むと予想されている。食べるワクチンのように植物で発現 させたアレルゲンタンパクを直接食し、経口減感作療法に用いることができれば 社会的意義も大きい。 2.12.3 環境ストレス(低温、光・酸素毒)耐性植物の分子育種 (再委託:近畿大学農学部 重岡 成) A. 研究成果 1) アクティベーションタギング法による有用遺伝子の探索 アクティベーションタギング用ベクターを導入したシロイヌナズナの形質転換体 約 11,500 ラインの種子(T2)を得た。この中の 5,000 ラインから 2 個のパラコート 151 耐性変異体(pqr-216, pqr-236)を選抜した。pqr-216 では、T-DNA 領域が挿入 された近傍の 2 遺伝子の転写活性化が認められた。近傍遺伝子の過剰発現体 を解析した結果、pqr-216 のパラコート耐性は AtMutT1 遺伝子の過剰発現による ものであることが明らかになった。MutT 様タンパク質は、ヌクレオシド 2 リン酸由来 の物質(ADP-リボース, NADH, dNTPs など)を加水分解する Nudix(nucleoside diphosphate linked some moiety X)hydrolase ファミリーの一種である。そこ で、植物 MutT 様タンパク質の酸化的ストレス耐性との関連を明らかにするために、 シロイヌナズナに存在する 8 種類の MutT 様タンパク質(AtMutT1〜AtMutT8)の機 能解析を試みた。リコンビナント AtMutT 様タンパク質を作製し、各々の基質特異 性を検討した。その結果、AtMutT1, AtMutT5, AtMutT6 および AtMutT8 は、 ADP-ribose および dGTP の酸化体である 8-oxo-dGTP の加水分解活性を有して いた。大腸菌 MutT 欠損株を用いて相補試験を行った結果、AtMutT8 においての み DNA 突 然 変 異 の 抑 制 が 認 め ら れ た 。 以 上 よ り、 シ ロ イ ヌナ ズナ に お い て AtMutT8 は DNA 酸化体の修復に機能し、AtMutT1 はストレス耐性能の向上に関わ る新規の機能を有していることが示唆された。 2) 藻類のグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)様タンパク質の分子特性の解明 クラミドモナス W80 株由来 GPX(CWGPX)を細胞質あるいは葉緑体に導入した形 質転換タバコ(細胞質導入株(TcGPX):4 系統、葉緑体導入株(TpGPX):3 系統) を作製した。それぞれの T2 世代の低温および塩ストレスに対する感受性の評価 を行った。播種後 12 週目の野生株、TcGPX-1、7、9、13 および TpGPX-1、6、14 を 低温(4℃)で 6 時間処理すると、野生株の光合成活性は完全に失活したが、 TcGPX および TpGPX の光合成活性は高く維持された。低温ストレス付与 6 時間後 の過酸化脂質量は、野生株と比較して TcGPX および TpGPX では有意に抑制され た。塩ストレス(250 mM NaCl 潅水)に対しても、野生株の光合成活性は 24 時間 後に完全に失活したが、TcGPX および TpGPX の光合成活性は高く維持された。こ の際の野生株の過酸化脂質量も TcGPX および TpGPX では野生株と比較して有意 に抑制された。また、過酸化脂質量以外の全てのパラメーターにおいて、TcGPX よりも TpGPX で高いストレス耐性が認められた。また、実際の自然環境下でのスト レス条件を考慮し、長期間の酸化的ストレス、塩、低温、乾燥ストレスの植物体の 表現系を含む生理的パラメーターに及ぼす影響について詳細に検討した。播種 後 12 週目の野生株および形質転換株に 50 µM パラコートを噴霧し、光強度 350 µE/m2/s で静置したところ、野生株ではストレス付与 24 時間後で葉にネクローシ スが生じたが、各形質転換株では殆ど影響は認められなかった。また、低温 (4℃)/強光(1000 µE/m2/s)ストレス付与 144 時間後で野生株の葉のネクローシ スと植物体の萎凋が顕著に認められたが、各形質転換株のそれらは明らかに抑 制されていた。強光/乾燥状態に曝したところ、ストレス付与 72 時間後に野生株 は顕著に萎凋したが、各形質転換株の萎凋は抑制されていた。またすべての条 件下において、野生株と比較して形質転換株では光合成活性および PSII 活性 が高く保持され、過酸化脂質の増加量は抑制されていた (特許出願) 。 3) 多重遺伝子導入系の確立 H2O2 耐性のラン藻のカルビンサイクルの構成酵素である FBP/SBPase、GAPDH、PRK 遺伝子に、それぞれトマトの rbcS 遺伝子のプロモーターとトランジットペプチドの コード領域、 nos ターミネーターを連結した遺伝子カートリッジを構築した。構築 した多重遺伝子プラスミドのタバコへの導入を行ったが、PRK 遺伝子の過剰発現 152 による細胞内代謝の乱れにより、形質転換体が取得できなかった。そこで、可溶 性画分/膜画分の酸化的ストレス耐性能および光合成能を増強させた形質転換 植物の作出を目指して、大腸菌 KatE、C.W80 GPX、およびラン藻 FBP/SBPase を 植物葉緑体で発現させるための多重遺伝子を構築している。 B. 目標の達成度 1) アクティベーションタギング法による有用遺伝子の探索 これまでに取得した活性酸素種代謝遺伝子以外にアクティベーションタギング より、新たに候補遺伝子を取得し、その機能が酸化 DNA もしくはシグナル分子とし ての ADP-ribose の代謝に関与することを明らかにした。目標は十分達成してい る。 2) 藻類のグルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)様タンパク質の分子特性の解明 藻類の GPX 様タンパク質を植物で過剰発現させることにより膜傷害に対する防 御能を向上させることができた。目標は十分達成している。 3) 多重遺伝子導入系の確立 活性酸素ストレス耐性を与える複数遺伝子の多重導入を開始した。目標は十 分達成している。 C. 成果の意義 種々の環境ストレスは活性酸素代謝に帰結するものが多く、これに関わる耐性 遺伝子を新たに取得した。これらを多重導入すれば、種々のストレスに同時に強 くできる可能性が大きく、複合ストレス環境耐性植物の作出という、本プロジェクト の最終目標に一歩近づいた。 153 IV.実用化・事業化の見通しについて IV.実用化・事業化の見通しについて 1.1.省ネルギー型工業原料生産に適した多年生工業原料植物の創成 (王子製紙株式会社) ユーカリは高い生長性と優れたパルプ特性から製紙産業を中心とする産業 植林で主要樹種となっている。そのため、ユーカリを原料とするパルプ生 産体系は既に稼働しているが、遺伝子組換えの基盤技術を充実させること により、工業原料植物としてのユーカリの生産性をさらに向上させること が期待できる。また、ユーカリが二次代謝産物の生産能力が高いことを利 用して、さらに遺伝子組換えにより代謝を制御することで、パルプ生産の みならず新規工業原料生産の可能性もある。本研究開発においてユーカリ の複数樹種で形質転換系が開発できたことは、世界の様々な環境でユーカ リによる省エネルギー型の工業原料の生産体系を構築する基盤技術となる。 しかも、開発したユーカリ形質転換系は形質転換効率が高く、かつ短期間 に幼植物体が得られる特徴を有することから、開発速度が要求される実用 化において有益である。 本研究課題では酸性土壌における難溶性リン酸を可溶化する能力を強化 した。世界の耕作地面積の 30%以上を占める酸性土壌では、アルミニウムイ オンが根の伸長を阻害すると共に、難溶性リン酸塩の生成によりリン施肥 効果が低下する。酸性土壌でのリンの利用効率を上げることは、すべての 植物において不良環境での生長性を改善する技術として開発が望まれてい る技術である。本研究課題においてユーカリとモデル植物で酸性土壌に対 する耐性付与を証明できたことから、様々な植物への応用の可能性が示唆 された。一方、遺伝子組換えによる新品種の実用化には、遺伝子組換えに よる安全性評価とパブリックアクセプタンスを解決する必要がある。本研 究課題の難溶性リン酸可溶化ユーカリは、非食用であること、地下部に組 換え体を利用する接ぎ木により遺伝子拡散が防止できることから、比較的 速やかに実用化できる可能性がある。 1.2. 高度不飽和脂肪酸生産大豆の研究開発 (サントリー株式会社) 付加価値の高い高度不飽和脂肪酸は、現在の微生物培養あるいは魚油か らの精製に依存した生産では、コストとエネルギー・環境負荷の面から、 高価な健康食品素材以外への市場拡大は期待できない。 近年、アラキドン酸の効能が明らかにされつつあるので、健康食品素材 としてアラキドン酸などの需要が今後が増加することが期待される。この 需要を組換え植物によりまかなうと、微生物や魚油に頼る生産よりも使用 エネルギーと環境負荷を軽減できる。食用にはアラキドン酸などを生産す る組換えダイズから分離精製するのではなく、組換えダイズそのものを食 するか食品原料とするほうがコスト面やエネルギー負荷を考えると実用性 が高い。 また、導入する脂肪酸合成遺伝子群としては、本プロジェクトで取得し たゼニゴケ由来の遺伝子を用いる方が、アラキドン酸などの生産には適し ていることを明らかにした。今後はゼニゴケ由来の遺伝子を用いて開発を 進めたい。これによりアラキドン酸などの蓄積量が増加すれば、工業原料 154 (フィルム、生分解性プラスチック、機能性繊維、潤滑油、洗剤の素材な ど)としての利用が可能になるかもしれない。 最終的に実用化するダイズにはハイグロマイシンなどのマーカー遺伝子 が含まれないほうが良いこと、現在用いている大豆品種ジャックは商業生 産用のダイズではないことが問題である。これを解決するために、大豆品 種ジャックに脂肪酸合成遺伝子群とマーカー遺伝子をコトランスフォーメ ーションし、組換えダイズを取得する、その後商業ダイズとの交配を行い、 マーカー遺伝子の含まれないアラキドン酸などを生産する商業大豆を得た い。 1.3 耐塩性植物でのハイブリッドファイバー(ポリ<(R)-3-ヒドロ キシブチレート>充填繊維細胞)の生産技術開発 (大成建設株式会社) ハイブリッドファイバー組換え耐塩性植物で、塩害地での原料生産を行 なうためには、カタルヘナ条約の問題もあり、1〜3 年以内というような短 期間内での実用化は困難と判断される。 しかし、本テーマで創出したハイブリッドファイバ− 化技術は、エネル ギ− から地球環境問題にいたるまで、多面的な角度からみて意義が大きい と考えられるので、本基盤技術成果を実用化研究へと進展させる価値は高 いと考えている。最近、経済産業省や環境省などを中心として、京都議定 書による炭酸ガスの削減目標を達成するために、クリーン開発メカニズム (CDM)事業のプロジェクト化の動きが始まっている。この CDM 事業の試み では、通常の農業生産体制などが確立してない未利用地での炭酸ガス固定 効果、原料生産による経済効果のカップリングが目標となっており、弊社 では CDM 事業化への取り組みも行なっている。ハイブリッドファイバー技 術は、将来的に CDM 事業において大きな要素技術として用いる方向で検討 も行なっている。しかし、現実的には組換え植物の PA 問題も残り、慎重に 検討を進める必要がある。 新たに見い出されたハイブリッドファイバーの WPC 類似性能を考えると、 実用化研究では、ハイブリッド化したパーティクルボード(木材チップや 粉体を圧縮成形した建築用材で、本テーマで作成した圧縮ボード試験体の 拡大版)の生産を当面の開発目標とする事ができる。実際には、組換え植 物の安全性評価試験に最低でも 3 年以上を要するので、この間は非組換え の耐塩性植物を用いて何段階かの事業性評価を重ねる必要がある。つまり、 1)海外未利用地で栽培試験を実施し、2)植物繊維の実生産量と原料価 格を評価する。さらに、3)栽培試験で生産した繊維を用いてパーティク ルボードを作成し、4)既存のパーテイクルボード製品と性能・コストの 比較を行なう事で出口としての事業性を決定する方向となろう。 一方、経済性あるいはコスト面から本技術をみると、PHB 基質供給系の強 化が示摘される。これは、植物代謝に関わる基本的課題とも思われるが、 事業化を目指した実用化研究においては必須の課題である。 以上の状況から判断して、ハイブリッドファイバーを事業化するにはさ らに 5 年程度の実用化研究の実施が必要であり、現在その研究計画を策定 している。 1.4 イソプレノイド・天然ゴム高生産植物の創成 155 (日立造船株式会社) 植物を利用した工業原料創世技術は遺伝子組換え食品の開発と比べ容易 であり,かつ,人類にとって必要な技術開発であると考えられる。特に化 石燃料を主体とする経済活動の中で炭素をいかに固定し有効利用させるか は特別な意味を持っている。 本プロジェクトではイソプレノイド・天然ゴムの創成というテーマで取り 組んでおり,この技術開発はゴムの生産能・機能性の向上,すなわち炭化 水素を蓄積する機構を解析する技術である。これらの研究成果をベースと した工業原料製品素材のタイヤ原料,植物性プラスチック等の開発がタイ ヤ産業,自動車産業等への応用が期待されている。 トチュウゴムを利用した実用化のひとつ目標としてタイヤへの応用を考 えている。中国科学院では,対象種のトチュウ由来のトランス型イソプレ ノイドを利用した合成タイヤ(トチュウゴムを 50%含有)を試作しており, 実用化への展開が図られている。このタイヤの特性として,軽車両走行時 の路面との摩耗が従来品と比べ 20%軽減されることが報告されている。 同科 学院は本技術を実用化するべく共同開発の提携先を模索しており,実用化 を目指して弊社も開発に参加・協調している。また,トチュウゴムはトラ ンス型ゴム由来の硬質性や熱可塑性から Fiber Reinforced Platsics(FRP) の代替として車のバンパーや内装品に至る石油化学製品の代替としても有 用と考えられている。なお,社会情勢はバイオマスから自動車原料を得よ うとする時代の流れになっており,必要な現材料の確保と試験性能が確保 されれば近い時期に実現可能な事業になる。その必要年数は時代の要求が 早まれば、8 年以内に事業化の目処が立つと推察される。 さらに,この研究における問題点は,トチュウのゴム生産性であり,ト チュウゴム高含量・分子量改変された品種の誕生が育種技術により完成す ることが要求されている。特に中国側からはゴム産生を向上させる実現手 法の要求として,遺伝子組換え技術の適用によるトチュウゴム生産能が向 上した新品種の作出が事業成功への課題であるとされている。 すでに中国西部地域では国策である西部大開発政策のもと黄土高原の退 耕還林としてトチュウを大規模に造林・植栽し,工業原料と農業生産品を 生産することを目的とした実用化・事業化の事業化が始まっている。 1.5 タンパク質組織特異的高生産植物の研究開発 (三井化学株式会社) 植物でフィターゼを生産する方法の実用性、事業性は、最終的には現在 の微生物培養法と比較して優れているかどうかにより評価されるであろう。 微生物培養法は、植物生産法とは異なり、天候や季節に左右されずに短時 間で高生産が可能であるが、工場建築費などの莫大な初期投資を必要とし、 それに、維持費、運転費、人件費等が加わる。しかしながら、大型培養槽 における連続運転等の高効率生産によりコストの大幅な削減が可能である。 一方、植物生産法は微生物培養法と異なり、化石資源由来のエネルギーを 必要とせず、省エネルギー型・低環境負荷型の物質生産形態と言えるが、 生産には広大な栽培面積と長い時間を要する。現時点において、生産コス トの点では、植物生産法は微生物培養法にやや及ばないものの、サツマイ モ、トウモロコシ、ダイズなどの実用植物においてフィターゼの安定的高 生産技術が確立され、さらに、フィターゼ生産植物をそのまま、あるいは 156 サイレージとして飼料に添加するという給餌方法により、微生物培養法の 代替となる可能性は高いと考えられる。 1.6.1 病害抵抗性植物の分子育種 (株式会社豊田中央研究所) 新規開発した高性能抗菌ペプチド遺伝子を導入したサツマイモが黒斑病 に対して高い病害抵抗性を獲得することを本研究開発により明らかにした。 本病害抵抗性のサツマイモ新品種は、栽培および保存期間中における各種 微生物に起因した病害を防止できることが期待できることから、農薬の使 用量を軽減でき、かつ収穫量を上げるための実用化栽培品種として市場投 入することが可能と考えられる。また、これまでに成功事例がないサツマ イモの大規模プランテーションへの道を拓き、安定・低コスト生産を可能 とする新品種として期待され、プラスチック原料となる乳酸の発酵生産の ための競争力のある植物資源を提供することになるものと考えられる。こ のためには、遺伝子組換え植物に対する安全性試験を実施し、組換え前の 品種との実質的同等性を明らかにした上で、圃場スケールにおける有効性 の検証を行う等の課題が残っている。 1.6.2 病害抵抗性植物の分子育種 (バイオテクノロジー開発技術研究組合) 本プロジェクトの成果である OsSBP 遺伝子は(1)過剰発現させたイネ およびサツマイモでそれぞれの重要病害に耐病性を付与したこと、 (2)イ ネにおいてはカビ病菌(イネいもち病菌)とバクテリア病菌(イネ白葉枯 病菌)の両方に耐病性を付与したこと、 (3)機能解析より病害防御応答の シグナル伝達に重要な活性酸素種の蓄積に働くこと、から幅広い植物に複 数の耐病性を付与し得る有用遺伝子であることがわかり、今後、病害抵抗 性植物の分子育種に供する有用遺伝子としての潜在能力は高いと考える。 一方で実用化事業化への課題として、 (1) OsSBP 遺伝子を恒常的に過剰発現 させたイネは稔性が低下する傾向にあることから、該遺伝子の発現を制御 する必要があること、 (2) OsSBP 遺伝子の耐病性能を圃場スケールで確認し、 単独での利用か他の耐病性遺伝子と多重化して利用するか見極めが必要な こと、 (3)パブリック・アクセプタンスの問題を解決すること、など実用 化事業化への課題は残る。 1.7 ポリアミン代謝関連酵素遺伝子を利用した環境ストレス抵抗性 改良とその利用 (株式会社東洋紡総合研究所) 本研究の最終目標である種々の環境ストレス(低温・高温・塩・乾燥ス トレス)抵抗性を付与したサツマイモ(高系 14 号)を作出することができ た。2004 年 4 月以降は実用化・事業化へ向けた検討を継続する。具体的に は閉鎖系及び開放系温室レベルでの安全性評価を石川県農業短期大学(島 田研究室)および集中研究室と共同で実施する。また、本研究で得られた 環境ストレス抵抗性を付与したサツマイモ(高系 14 号)のストレス抵抗性 を総合的に評価し、野外試験や実用化を想定した栽培地域で実際に栽培可 能かどうかを検討する。実用化・事業化については育種事業を持つような 企業と共同で進め、パブリックアクセプタンス等の社会的動向も考慮しつ 157 つステップアップ検討を行いたいと考えている。 1.8 多重遺伝子連結技術の開発 (バイオテクノロジー開発技術研究組合) 実験室レベルではすでに開発している多重遺伝子連結技術を実用化する ため、自動 DNA 抽出装置等で実績のあるプレシジョン・システム・サイエ ンス株式会社と共同し遺伝子多重連結装置を作製する予定であり、事業化 の目処がある。 1.9 植物で機能する有用プロモーターの単離と活用 (バイオテクノロジー開発技術研究組合) 本研究の目標は工業化植物育種の際に必要となる様々な性質を有するプ ロモーターを取得することであり、当初はこれ自身での実用化は考えてい なかったが、プロモーターの収集と解析情報の蓄積に従い、本プロジェク ト内外のグループより使用要望が相次いでいる状況であり、大いに利用さ れる価値のあることが示された。今後更に情報の蓄積・体型化を図ること により、基礎研究分野の研究者を含む利用希望者が多数現れることが期待 される。 1.10 植物における高効率遺伝子発現系の構築 (バイオテクノロジー開発技術研究組合) 位置効果を消去するインスレーター、翻訳効率を上げるエレメント、ポリ シストロニック mRNA の翻訳、RNAi の活用等、いすれも基礎研究の要素技術 の開発であり、単独ではなく、他の事業展開プロジェクトに組込むことで 効果が出る。いずれも利用価値のある技術であり、特許出願を行った。 特に、カフェイン生合成をレギュロン発現制御系により一括して制御で きることを示し、タバコにカフェインを蓄積させ、昆虫忌避効果があるこ とを示した。人が口にしているカフェインにより、いわゆる昆虫耐性作物 の作出が穀物、野菜、花卉などで実用化が可能である。また、減カフェイ ンコーヒー作出が可能になった。平成 16 年 4 月に設立されたベンチャー企 業「植物ハイテック株式会社」にて、これらを国内外で実用化する予定で ある。 1. 11 植物葉緑体ゲノムへの複合環境ストレス耐性遺伝子群の多重導入によ る複合環境ストレス耐性工業原料生産植物の作成 (財団法人地球環境産業技術研究機構) 葉緑体形質転換技術は、これまでのところ特定の植物種のみ可能な技術であ った。本研究で葉緑体多重遺伝子導入手法の確立と葉緑体遺伝子発現系の開 発した。葉緑体の遺伝子発現系は原核細胞型のため、大腸菌などの原核型生 物の系がそのまま利用できるので、大腸菌等で行われている異種タンパク質の 大量発現系からの移行がすみやかに行われる。 複合環境ストレス耐性植物を作成し、医薬品等工業用酵素類の生産、ポリエステ ル、生分解プラスティク、油脂等の工業原料生産に応用できる。 1. 12.1 ゼニゴケの脂肪酸代謝機能の活用 (再委託:京都大学 大山 莞爾) 本研究で有用高度遺伝子であるアラキド酸およびエイコサペンタクエン酸の生 158 合成に関わる遺伝子群を得られたので、今後はダイズなどの油糧植物での発現 を通じて、有用高度不飽和脂肪酸の生産効率化が期待できる。 1. 12.2 アレルゲンタンパク質の(マメ科)植物による生産技術の開発 (再委託:大阪大学 室岡 義勝) マメ科モデル植物ミヤコグサの形質転換体においてダニアレルゲンタンパク質 の蓄積に成功した。植物によるウイルスなどの抗原の発現にそのまま応用でき、 食べるワクチン生産への利用が可能となる。 1. 12.3. 環境ストレス(低温、光、酸素毒)耐性植物の分子育種―関連遺伝子 の 探索と活用 (再委託:近畿大学 重岡 成) 種々の環境ストレスは活性酸素代謝に帰結するものが多く、本研究で環境スト レス耐性遺伝子を新たに取得した。また、これらの遺伝子を多重導入する系を構 築したことにより複合ストレス環境耐性植物の作出に寄与できる。 以上 159 論文発表数等まとめ表 成果 全期間積算 原著論文数 口頭発表数 特許出願数 新聞報道等数 王子製紙㈱ 9 19 5 6 サントリー㈱ 4 17 2 2 大成建設㈱ 3 8 4 6 日立造船㈱ 21 36 3 2 三井化学㈱ 6 10 3 1 ㈱豊田中央研究所 2 12 16 0 ㈱東洋紡総合研究所 9 13 11 4 集中研究室・その他 55 104 21 7 109 219 65 28 企業・研究機関名 合計 参考資料1 平成13年10月 以降 〔特許・実案出願〕 出願者(全員) 出願日 王子製紙株式会社、岐阜 大学 2002/11/25 ○ RNA抽出方法 2 王子製紙株式会社 2003/7/16 ○ 導入遺伝子の発現が制御され ている組換え植物およびその 作出方法 3 王子製紙株式会社 2003/7/31 ○ プロモーターDNA断片及び 遺伝子発現の制御方法 4 サントリー株式会社 2003/12/17 アラキドン酸を含有するダイ ズおよびその利用 5 サントリー株式会社 2004.9.30(予定) MAR配列を用いた植物遺伝子発 現安定化技術 6 大成建設株式会社 2003/2/24 高分子材料含植物体およびそ の製造方法 7 大成建設株式会社 2004.8予定 植物繊維の特性を変える方法 8 大成建設株式会社 2004.8予定 耐塩性植物の培養苗生産方法 9 大成建設株式会社 2004.8予定 耐塩性植物の遺伝子導入方法 10 日立造船株式会社 2002/12/13 発明の名称:杜仲ゴムの抽出 法 11 日立造船株式会社 2003/3/24 発明の名称:植物培養による ゴムの生産方法 12 日立造船株式会社 2003/10/7 発明の名称:「1ー13C」 1ーデオキシーDーキシルロー スの製造方法 13 三井化学株式会社 2002/10/30 14 三井化学株式会社 2003/11/7 15 ㈱東洋紡総合研究所 2002/3/8 植物由来のプロモーター 16 ㈱東洋紡総合研究所 2002/4/8 器官形成を改良した植物及び その作出方法 17 ㈱東洋紡総合研究所 2003/4/8 器官形成を改良した植物及び その作出方法 18 ㈱東洋紡総合研究所 2002/12/3 環境ストレス抵抗性を改良し た植物及びその作出方法 19 ㈱東洋紡総合研究所 2003/2/10 環境ストレス抵抗性を増強し た植物の作出方法 20 ㈱東洋紡総合研究所 2003/2/10 生産性を改良した植物及びそ の作出方法 1 登録日 実施(○) 出願名 サツマイモの形質転換法(特 願2002-315205) コドン改変と細胞外分泌の組 合せにより外来フィターゼを 植物で生産する方法(特願 2003-378439) 参考資料1 21 ㈱東洋紡総合研究所 22 出光興産(株)、奈良先 端科学技術大学院大学 2004/7/9 ストレス耐性を改良したイモ 類及びその作出方法 2004/3/19 病害抵抗性サツマイモ 2001/11/7 固相において二本鎖DNA分 子を順次連結する方法および その装置 2002/7/11 二本鎖DNA分子の効率的合 成方法 2004/2/5 植物において遺伝子発現を安 定化させるためのベクターお よびその利用 2002/3/27 キサントシンメチル化酵素お よびその用途 2002/3/27 コーヒー属植物の形質転換法 2002/4/17 カフェイン合成酵素及びその 用途 2002/7/16 遺伝子組換えによるカフェイ ンレスコーヒー植物の製造方 法 2002/7/23 カフェイン生合成系遺伝子群 の複合利用 奈良先端科学技術大学院 23 大学、(株)豊田中央研 24 25 26 27 28 29 30 究所 奈良先端科学技術大学院 大学、(株)豊田中央研 究所 奈良先端科学技術大学院 大学、王子製紙(株)、 出光興産(株) 奈良先端科学技術大学院 大学、日立造船(株)、 (株)豊田中央研究所 奈良先端科学技術大学院 大学、日立造船(株)、 (株)豊田中央研究所 奈良先端科学技術大学院 大学、日立造船(株)、 (株)豊田中央研究所 奈良先端科学技術大学院 大学、日立造船(株)、 (株)豊田中央研究所 奈良先端科学技術大学院 大学、(株)豊田中央研 究所 31 奈良先端科学技術大学院 大学 2003/11/25 大腸菌由来タンパク質をコー ドする遺伝子の利用 32 横浜国立大学、奈良先端 科学技術大学院大学 出願準備中 「キャップ非依存的翻訳効率 を制御可能な新規塩基配列」 33 サントリー株式会社(発 明者:大山莞爾) 2003/12/22 ゼニゴケ由来の不飽和脂肪酸 合成系酵素遺伝子およびその 利用 34 再委託先:大阪大学 2003.3.20(予定) 機能改変されたコレステロー ルオキシダーゼ 35 再委託先:大阪大学 2002.3.4 36 再委託先:大阪大学 2002.5.9 37 再委託先:大阪大学 2003.8.22 38 近畿大学、関西電力株式 会社 39 近畿大学 2003/8/29 準備中 改変型メタロチオネイン 植物における外来遺伝子発現 方法とトランスジェニック植 物 アレルゲンタンパク質の発現 ベクターおよび形質転換植 物、並びにその利用 ストレス耐性が向上した植物 及びかかる植物の製造方法 特願 2003- 209663 植物MutT様タンパク質の過剰 発現により環境ストレス耐性 能の向上させる方法 〔論文・文献発表〕 発表会社・研究機関 発表者 査読 付き は○ 発表 年 題目 発表雑誌等 1 王子製紙株式会社 S. Sato, K. Horikiri, K. Miyashita, N. Ishige, T. Asada & T. Hibino 2 王子製紙株式会社 河津 哲、小山博之 2002 遺伝子組換えユーカリによるパルプ資源の増産 BIO INDUSTRY 19 (9), 28-36 (2002) 3 王子製紙株式会社 Y.Suzuki, T.Hibino, T.Kawazu, T.Wada, ○ T.Kihara and H.Koyama Extraction of total RNA from leaves os 2003 Eucalyptus and other woody and herbaceous plants using sodium isoascorbate BioTechniques 34 (5) 3-6 (2003) 4 王子製紙株式会社 Kihara,T. Wada, T., Suzuki, Y., Hara, T. & Koyama, H. 2003 5 王子製紙株式会社 河津 哲 6 王子製紙株式会社 7 王子製紙株式会社 8 王子製紙株式会社 9 王子製紙株式会社 Michito Tsuyama. Masaru Shibata. Tetsu Kawazu. Yoshichika Kobayashi Yuji Suzuki, Tetsu Kawazu and Hiroyuki Koyama Yuji Suzuki, Tetsu Kawazu, Michito Tsuyama, Tatsumi Wada, Tetsuo Hara and Michito Tsuyama, Keigo Doi, Yuji Suzuki, Masaru Shibata, Hideyuki ○ ANALYSIS OF WOOD DEVELOPMENT WITH A GENOMIC Molecular Breeding of 2001 APPROACH: EUCALYPTUS ESTS AND TAC GENOMIC Woody Plants, 223-228 LIBRARY. (2001) Alteration of citrate metabolism in cluster Plant Cell Physiol. roots of white lupin.. 44 901-908 (2003) 2004 環境ストレス耐性ユーカリの開発と産業植林 ○ 2004 ○ 2004 ○ 投稿中 ○ 投稿中 Photosynthesis An analysis of the mechanism of the lowResearch 81, 67-76 wave phenomenon of chlorophyll fluorescence (2004) Two-step method of RNA extraction from BioTechniques in dried seeds, siliques and other tissues of press (2004) Arabidopsis thaliana Characteristics of transgenic Eucalyptus hybrids with an overexpression of a plant Plant and soil mitochondrial citrate synthase. Resistance to strong light of Eucalyptus expressing chloroplast-targeted bacterial Photosynthesis catalase: unchanged light-stress tolerance Research in contrast to enhanced oxidative-stress 植物代謝工学ハンドブッ 脂肪酸 ク 10 サントリー株式会社 水谷正子、落合美佐 2002 11 サントリー株式会社 水谷正子、落合美佐 2003 ダイズによる高度不飽和脂肪酸の生産 12 サントリー株式会社 陳任、松井啓祐、田中良 和 13 サントリー株式会社 陳任、田中良和 紙パ技協誌 58, 5561(2003) ○ Nature Production of Arachidonic acid in soybean 投稿済 seeds. み ○ Modification of the polyunsaturated fatty acid biosynthetic pathway by expression ofΔ6-fatty 準備中 acid desaturase gene from Mortierella alpina in Vigna angularis and Lotus japonicus 環境修復と有用物質生産 Plant Science 〔論文・文献発表〕 発表会社・研究機関 発表者 査読 付き は○ 大成建設(株) 吉田光毅 15 大成建設(株) K.Yoshida,M.Akiyoshi, ○ N. Endo 16 大成建設(株) N. Endo,K.Yoshida,M.Akiy ○ oshi 17 日立造船 18 日立造船 19 日立造船 20 日立造船 21 日立造船 22 日立造船 23 日立造船 24 日立造船 25 日立造船 26 日立造船 村吉 美智子(日立造 船・NEDOフェロー)・中 澤慶久(日立造船)・福 崎 英一郎・小林昭雄 発表雑誌等 Green Pla Journal 投稿準 Regeneration and transformation of Tamarix 備中 chinensis, a sea water tolerant tree Potential production of wood and plastic 投稿準 combination by the genes for hydroxy備中 butyrate synthesis in rice, Oryza sativa L. High-resolution analysis of polyprenols by Journal of Chromatography A , ○ 2001 supercritical fluid chromatography. 911(1), 113-117, The occurrence of geometric polyprenol Lipids , 3 6 , 727-732 (2001) ○ 2001 isomers in the rubber producing plant, Eucommia ulmoides Oliver. 超臨界クロマトグラフィーによるポリプレノールの 高分子論文集,5 8 (12), 642-649 (2001) 2001 構造解析 ○ 2002 ○ 2002 In-situ chemical analyses of trans-polyisoprene by Planta , 215, 934-939 histochemical staining and Fourier transform (2002) infrared microspectroscopy in a rubber-producing plant, Eucommia ulmoides Oliver 杜仲葉配糖体の機能性 馬場健史,福崎英一郎, 中澤慶久,佐藤浩昭,右 手浩一,北山辰樹,小林 昭雄 Takeshi Bamba, Ei-ichiro Fukusaki, Yoshihisa Nakazawa, Hiroaki Sato, Kouichi Ute, Tatsuki 宮柱明日香・玉泉幸一郎(九 大)・中澤慶久(日立造船)・ 福崎英一郎(阪大工)・馬場健 史(日立造船)・小林昭雄(阪 宮柱明日香・玉泉幸一郎(九 大)・山東智紀・福崎英一郎・ 小林昭雄(阪大工)・中澤慶 久・馬場健史(日立造船)・蘇 題目 2004 生物機能を利用した化学修飾木材生産技術の試み 14 Takeshi Bamba, Eiichiro Fukusaki, Kouichi Ute, Tatsuki Kitayama, Akio Takeshi Bamba, Eiichiro Fukusaki, Kouichi Ute, Tatsuki Kitayama, Akio 馬場健史,福崎英一郎, 中澤慶久,佐藤浩昭,右 手浩一,北山辰樹,小林 昭雄 Takeshi Bamba, Eiichiro Fukusaki, Yoshihisa Nakazawa, Akio Kobayashi 中澤慶久 発表 年 ファルマシア, 38(11), 1071-1074 (2002) トチュウの産生するトランス型ゴム ○ バイオサイエンスとイン ダストリー,60(7), 458-461 (2002) Analysis of long-chain polyprenols using Journal of Chromatography A, 2003 supercritical fluid chromatography and matrix-assisted laser desorption ionization 9 9 5 , 203-207 (2003) ゴム産生植物,ペリプロカ(Periploca sepium 九州大学農学部演習林報 Bunge )の茎葉からの再分化 告第84号p43-50 2003 ○ ペリプロカ(Periploca sepium Bunge)への外来 九州森林研究第56号2003 年p178-179 2003 遺伝子導入に関する研究 ○ 2003 2002 ○ トチュウの形質転換に関する研究(速報) 九州森林研究第56号2003 年P176-177 〔論文・文献発表〕 発表会社・研究機関 発表者 査読 付き は○ Biochem J ournal, 370, 679-686 (2003) Hazutake Hirooka, Yoshikazu Izumi, Takeshi Bamba, Ei-ichiro Fukusaki, Yoshihisa Cloning and characterizaion of two 2003 solanesyl diphosphate synthase form Arabidopsis in E. A. Curry (edtor), Proceedings of the plant growth regulation society of America, 28 日立造船 29 日立造船 30 日立造船 31 日立造船 32 日立造船 33 日立造船 34 日立造船 Kazutake Hirooka, Yoshikazu Izumi, Kazuaki Maeda, Chung-Il An, Yoshihisa Nakazawa, Ei- ○ 35 三井化学株式会社 Guo-qing Song,Kenichi Yamaguchi ○ 37 三井化学株式会社 38 三井化学株式会社 39 三井化学株式会社 発表雑誌等 Cloning and kinetic characterization of 2003 Arabidopsis thaliana solanesyl diphosphate synthase Introduction of the Archaebacterial 2003 Geranylgeranyl Pyrophosphate Synthase Gene into Chlamydomonas reinhardtii Chloroplast In-situ localization of polyisoprene in a 2003 rubber-producing plant, Eucommia ulmoides Oliver 不同品?杜仲叶中有效成分含量差? 性研究 2003 日立造船 三井化学株式会社 題目 Kazutake Hirooka, Takeshi Bamba, Ei○ ichiro Fukusaki, Akio Kobayashi E. Fukusaki, T. Nishikawa, K. Kato, ○ A. Shinmyo, H. Hemmi, T. Nishino, A. Takeshi Bamba, Eiichiro Fukusaki, Yoshihisa Nakazawa, Akio Kobayashi 蘇印泉,彭金年,馬希漢, 中澤慶久 ○ 27 36 発表 年 Takeshi Bamba, Eiichiro Fukusaki, Yoshihisa Nakazawa, Akio Kobayashi 中堂薗陽子・中澤慶久 (日立造船)・玉泉幸一 郎(九大) ○ ○ Guo-qing Song, Hideo Honda, Ken-ichi ○ Yamaguchi Akira Hamada, Kenichi Yamaguchi, Naoto ○ Ohnishi, Michiko Harada, Seiya Rapid and high-resolution analysis separation of geometric polyprenol geometric homologues by the connected octadecylsilylated monolithic silica columns in high-performance liquid chromatography J. Biosci. Bioeng., 95 (3) 276-282 (2003) in E. A. Curry (edtor), Proceedings of the plant growth regulation society of America, 西北植物学 報,23(12):21802183.2003 Journal of Separation Science , 27. 293-296 2004 2004 トチュウ種子へのコルヒチン処理による倍数体の作 九州森林研究第57号 217-218 2004 2004 出(速報) Functional analysis of two solanesyl 2004 diphosphate synthases from Arabidopsis thaliana Efficient Agrobacterium -mediated 2003 transient GUS expression system for assaying different promoters in rice 2004 Efficient Agrobacterium tumefaciens -mediated transformation of sweet potato (Ipomoea batatas (L.) Lam.) from stem explants using a two-step kanamycin-hygromycin selection method High-level production of yeast Schwanniomyces occidentalis phytase in 2004 transgenic rice plants by a combination of signal sequence and codon modification of Akira Hamada, Ken-ichi Production of lupin acid phosphatase in Yamaguchi, Michiko ○ 2004 transgenic rice for use as a phytateHarada, Seiya Nikumaru, hydrolyzing enzyme for animal feed Jun Wasaki, Takuro Changes in phytase activity and Toshiyoshi Takahashi, Hideo Honda, Akira fermentation quality while ensilaging ○ 準備中 Hamada, Michiko transgenic rice plants expressing a high Harada, K. Horiguchi level of yeast phytase(予定) Biochem. J. in press Plant Biotechnology, 20(3),235-329, 2003 In Vitro Plant, Vol.40 (4),xx-xx ,2004 (in press) Plant Biotechnology Journal, 2(x), xx-xx, 2004 (in press) Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 68(7), xx-xx, 2004 (in Animal Science Journal(予定) 〔論文・文献発表〕 発表会社・研究機関 発表者 査読 付き は○ 発表 年 題目 発表雑誌等 40 三井化学株式会社 Guo-qing Song, Hideo Honda, Ken-ichi Yamaguchi 41 豊田中央研究所 平井正名 2002 病害抵抗性サツマイモの創出 BIO INDUSTRY, 19(9), 46-53 42 豊田中央研究所 平井正名 2003 病害抵抗性サツマイモの創出 環境修復と有用物質生産 p218-225(シーエムシー 出版) 43 ㈱東洋紡総合研究所 He, L., K. Nada, Y. Kasukabe and S. Tachibana ○ 2002 44 ㈱東洋紡総合研究所 He, L., K. Nada and S. Tachibana ○ Effects of spermidine pretreatment through 2002 the roots on growth and photosynthesis of chilled cucumber plants (Cucumis sativus 45 ㈱東洋紡総合研究所 春日部芳久、橘 昌司 2002 46 ㈱東洋紡総合研究所 Nada, K., W. Shen and ○ S. Tachibana Polyamine are not indispensable for the 2004 cold-acclimatory increase of chilling tolerance in cucumber during exposure to 47 ㈱東洋紡総合研究所 Kasukabe, Y., L. He, K. Nada, S. Misawa, I. Ihara, S. Tachibana 48 バイオテクノロジー開発技 Sawada, K., Tokuda, 術研究組合、奈良先端科学 L., Shinmyo, A. 技術大学院大学 49 バイオテクノロジー開発技 M., Tokuda, L., 術研究組合、奈良先端科学 Kameyama, J., Kodama, 技術大学院大学、茨城大学 ○ 50 バイオテクノロジー開発技 M., Tokuda, L., 術研究組合、奈良先端科学 Kameyama, J., Kodama, 技術大学院大学、茨城大学 ○ 51 奈良先端科学技術大学院大 柴田大輔 学、かずさDNA研究所 ○ 2002 多重遺伝子導入技術 52 (株)豊田中央研究所、バ イオテクノロジー開発技術 幸田勝典、柴田大輔 研究組合、奈良先端科学技 術大学院大学、かずさDNA ○ 2002 多重遺伝子導入とDNA連結技術の開発 ○ 準備中 Expression of a Rice Cab promoter in Sweet Potato Plants.(予定) Plant Biotechnology (予定) Enhanced susceptibility of photosynthesis to lowtemperature photoinhibition due to interruption of Plant Cell Physiol., 43, 196-206 chill-induced increase of S-adenosylmethionine decarboxylase activity in leaves of spinach J. Japan. Soc. Hort. Sci., 71, 490-498 ポリアミン合成酵素遺伝子による植物の環境ストレ 月刊バイオインダスト ス抵抗性の改良 リー, 9月号 J. Japan. Soc. Hort. Sci., 73, 343-345 Overexpression of spermidine synthase enhances ○ ○ Sawada, K., Hasegawa, O., Kohchi, T., Sawada, K., Hasegawa, O., Kohchi, T., Plant Cell Physiol., 2004 tolerance to multiple environmental stress and up45, 712-722 regulates the expression of various stressregulated genes in transgenic arabidopsis thaliana Characterization of the rice blast fungal elicitor-responsive gene OsSBP encoding a Plant Biotechnology 2003 homolog to the mammalian selenium-binding 20 (177-181) proteins. Enhanced resistance to blast fungus and Bioscience bacterial blight in transgenic rice Biotechnology 2004 constitutively expressing OsSBP , a rice Biochemistry (in homologue resistance of mammalian selenium-binding press) Enhanced to blast fungus and Bioscience bacterial blight in transgenic rice Biotechnology 2004 constitutively expressing OsSBP , a rice Biochemistry homologue of mammalian selenium-binding 68(4)873-80 植物代謝工学ハンドブック、 新名惇彦、吉田和哉監修、エ ヌ・ティー・エス、pp.2 36- 243 バイオインダストリー、 Vol 19,9-15 〔論文・文献発表〕 発表会社・研究機関 53 54 55 (株)豊田中央研究所、バ イオテクノロジー開発技術 研究組合、かずさDNA研 究所 バイオテクノロジー開発技 術研究組合、奈良先端科学 技術大学院大学、かずさ DNA研究所 バイオテクノロジー開発技 術研究組合、奈良先端科学 技術大学院大学、かずさ DNA研究所 発表者 査読 付き は○ 発表 年 題目 発表雑誌等 環境修復と有用物質生産 CMC出版 pp.18 1- 187 幸田勝典、柴田大輔 ○ 2003 多重遺伝子導入とDNA連結技術の開発 幸田勝典、瀧田英司、新 名惇彦、柴田大輔 ○ 2004 Sequential connection of DNA fragments on solid phase 瀧田英司、新名惇彦、柴 田大輔 ○ 2004 Development of the binary vector for stable in preparation gene expression in plant 56 バイオテクノロジー開発技 術研究組合、奈良先端科学 瀧田英司、澤田和敏 技術大学院大学 57 奈良先端科学技術大学院大 kasaka,K.and 学 ○ 2001 58 バイオテクノロジー開発技 Dansako,T.,Kato,K.,Sa 術研究組合、奈良先端科学 toh,J.,Sekine,M.,Yosi 技術大学院大学 da,K.,and Shinmyo,A. ○ 2003 59 奈良先端科学技術大学院大 ,T.,Kato,K.,Shinmyo,A 学、大阪大学 .,Hemmi,H.,Nishino,T. ○ 2003 2004 植物機能改変のための新しい遺伝子導入法の開発 Nagaya,S.,Yosida,K.,A Sinmyo,A. Fukusaki,E.,Nishikawa ,Kobayashi,A. Kasai,K.,Yoshimura,T. 奈良先端科学技術大学院大 60 ,ishilura,K.,Takaoka, ○ 学 Y.,kato,K.,Shinmyo,A. 61 バイオテクノロジー開発技 Satoh,J.,Kato,K.,and 術研究組合、奈良先端科学 Shinmyo,A. 技術大学院大学 62 奈良先端科学技術大学院大 omiya,Y.,Sekine,M.,Yo 学 shida,K.,andShinmyo,A ○ 2003 2004 Nagaya,S.,Kato,K.,Nin ○ 準備中 . 63 奈良先端科学技術大学院大 新名惇彦、吉田和哉監修 学 64 奈良先端科学技術大学院大 新名惇彦編 学 65 奈良先端科学技術大学院大 新名惇彦 学 ○ ○ An insulator element from the sea urchin Hemicentrotus pulcherrimus suppresses variation in transgene expression in cultured tobacco cells 5'untranslation region of the HSP18.2 gene contributes to efficient translation in plant cells Introduction of the archaeal geranylgeranyl pyrophosphate synthase gene into Chlamydomonas reinhardtii chloroplast Effect of coding regions on chloroplast gene expression in Chlamydomonas reinhardtii The 5'-UTR of the Tobacco Alcohol Dehydrogenase gene Functions as an Effective Translation Enhancerin Plant Expresson of randomly integrated single complate copy transgene dose not vary in Arabidopsis thaliana in preparation バイオサイエンスとイン ダストリー(準備中) Mol.Genet.Genomics,26 5,405-413 J.Biosci.Bioeng.,95,5 2-58 J.Biosci.Bioeng.,95,2 83-287 J.Biosci.Bioeng.,95,2 76-282 J.Biosci.Bioeng.,98,1 -8 in preparation 2002 植物代謝工学ハンドブック エヌ・ティー・エス 2002 特集 地球再生へ向けた植物バイオ BIO INDUSTRY 9 (2002) 2002 植物による工業原料生産の意義-特集にあたって- BIO INDUSTRY 9, 5-8 (2002) 〔論文・文献発表〕 発表会社・研究機関 発表者 査読 付き は○ 発表 年 題目 発表雑誌等 植物バイオテクノロジーの基礎および開発研究-多 重遺伝子導入技術の開発とその応用 バイオインダストリーと バイオサイエンス vol61, No.2, 11-16 66 奈良先端科学技術大学院大 新名惇彦 学 ○ 2003 67 奈良先端科学技術大学院大 新名惇彦 学 ○ 2003 遺伝子組換え食品の必要性と安全性 68 奈良先端科学技術大学院大 新名惇彦 学 ○ 2004 69 バイオテクノロジー開発技 術研究組合、奈良先端科学 山川清栄、河内孝之 技術大学院大学 70 バイオテクノロジー開発技 術研究組合、奈良先端科学 山川清栄、河内孝之 技術大学院大学 71 バイオテクノロジー開発技 Yamakawa,Kyoko 術研究組合、奈良先端科学 Miyasita,Kazuya 技術大学院大学 ○ Yosida,Akiho Yokota, Seiyei Yamakawa,Kohei Ando,Kazuya ○ Yosida,Akiho Yokota,Atsuhiko Seiyei Yamakawa,Kohei Ando,Aya ○ Chisaka,Kazuya Yoshida,Atuhiko Ogawa M,Herai Y,Koizumi N,Kusano ○ T,Sano H 72 バイオテクノロジー開発技 術研究組合、奈良先端科学 技術大学院大学 73 バイオテクノロジー開発技 術研究組合、奈良先端科学 技術大学院大学 74 バイオテクノロジー開発技 術研究組合、奈良先端科学 技術大学院大学 75 バイオテクノロジー開発技 Uefuji H,Yamaguchi 術研究組合、奈良先端科学 Y,Koizumi N,Sano H 技術大学院大学 76 バイオテクノロジー開発技 Ogita,Hirotaka 術研究組合、奈良先端科学 Uefuji,Yube 技術大学院大学 植物による工業原料生産技術の開発:NEDOプロジェ 日本農芸化学会誌 クトの概要 78(5)491-493 2002 シロイヌナズナの遺伝子プロモーターの系統的解析 Kohei Ando,Seiyei ○ Shinjiro ○ J Appl Glycosci. 50, 345-349 BIOINDUSTRY Vol.19 No.9 2002(116-27) 環境修復と有用物質生産 2003 シロイヌナズナの遺伝子プロモーターの系統的解析 CMC出版 第III部第 3章 Journal of Bioscience Efficient construction of cDNA microarrays and 2004 utilizing normalized cDNA libraries of Bioengineering,97(1) Arabidopsis thaliana :85-88(2004) Monitoring of organ-specific expression 準備中 profiles of 6000 genes with cDNA microarray in preparation in Arabidopsis thaliana Systematic transient assays of promoter Journal of Bioscience 印刷中 activities for leaf-specific genes deduced and Bioengineering,in (2004) by gene-expression profiling with cDNA press microarrays in Arabidopsis thaliana Journal of Biological 7-Methylxanthine methyltransferase of 2001 Chemistry 276:8213coffee plants 8218 Molecular cloning and functional characterization of three distinct N Plant Physiology 2003 methyltransferases involved in caffeine 132:372-380 biosynthetic pathway in coffee plants Nature│VOL423│19 JUNE 2003 Producing decaffeinated coffee plants 2003 Yamaguchi,Nozomu 77 横浜国立大学 Matuso, N. and Hiratsuka, K. 78 横浜国立大学 松尾直子、橋本千種、市 橋茜、平塚和之 ○ 印刷中 印刷中 Characterization of the EMCV-IRES Mediated Bicistronic Translation in Plant Cells Plant Biotechnology ウイルス由来配列を利用した多重遺伝子発現系に関 ウイルス病研究会レポー する研究 ト 〔論文・文献発表〕 発表会社・研究機関 発表者 梶川昌孝、山岡尚平、大 査読 付き は○ 79 再委託先:京都大学大学院 和勝幸、金丸博幸、櫻谷 生命科学研究科遺伝子特性 英治、清水昌、福澤秀 学分野 ○ 80 再委託先:京都大学大学院 丸博幸、櫻谷英治、清水 生命科学研究科遺伝子特性 昌、阪井康能、福澤秀 学分野 ○ 81 再委託先:京都大学大学院 津嘉人、野尻増俊、櫻谷 生命科学研究科遺伝子特性 英治、清水昌、阪井康 学分野 ○ 哉、大山莞爾 梶川昌孝、大和勝幸、金 哉、大山莞爾 梶川昌孝、大和勝幸、甲 82 再委託先:大阪大学 能、福澤秀哉、大山莞爾 N. Yoshida, T. Kato, T. Yoshida, K. Ogawa, ○ M. Yamashita, and Y. Murooka. Toyama, M., Yamashita, M., Yoneda, M., Zaborowski, A., Nagato, M., Ono, H., Hirayama, ○ 発表 年 題目 発表雑誌等 Functional analysis of a b -ketoacyl-CoA 2003 synthase gene, MpFAE2 , by gene silencing in the liverwort, Marchantia polymorpha L. MpFAE3 , b -ketoacyl-CoA synthase gene in the liverwort, Marchantia polymorpha L. is 2003 preferentially involved in elongation of palmitic and acidcharacterization to stearic acid. Isolation of D 6 -desaturase, Biosci. Biotechnol. Biochem., 6 7 , 605612, 2003 Biosci. Biotechnol. Biochem., 6 7 , 16671674, 2003 5 2004 an ELO-like enzyme and D -desaturase from the Plant Mol. Biol., 2004 印刷中 Enhanced uptake of cadmium by E. coli expressing a metallothionein fused to bgalactosidase. Alteration of substrate specificity of 2002 cholesterol oxidase from Streptomyces sp. by site-directed mutagenesis. BioTechniques, 32 (3): 551-558 liverwort Marchantia polymorpha and production of arachidonic and eicosapentaenoic in the Bacterium-based heavy metal acids biosorbents: 2002 Protein Eng., 15 (6): 477-483 83 再委託先:大阪大学 84 再委託先:大阪大学 M. Toyama, M. Yamashita, N. Hirayama, and Y. Murooka. ○ 85 再委託先:大阪大学 Y. Murooka, Y. Mori, and M. Hayashi. ○ 86 再委託先:大阪大学 R. Sriprang, M. Hayashi, M. ○ Yamashita, H. Ono, K. Saeki, and Y. 87 再委託先:大阪大学 P. Kiatpapan and Y. Murooka ○ 88 再委託先:大阪大学 S. Kawamoto, T. Aki, M. Yamashita, A. Tategaki, T. Fujimura, S. Tsuboi, T. Katsutani, O. Suzuki, ○ 89 再委託先:大阪大学 室岡義勝(編集委員長) 2002 生物工学実験書(改訂版). 日本生物工学会編 培風館, pp. 1-480 Y. Murooka, H.-J. Cho, M. Tansengco, R. ○ Sriprang, Y. Mori, S.-H. Hong, M. R. Sriprang, M. Hayashi, H. Ono, M. ○ Takagi, K. Hirata, and Y. Murooka. Engineering of a green manure for sustainable food production and 2002 phytoremediation. In “Biotechnology in Sustainable Biodiversity Enhanced accumulation of and Cd2+ Food by a Mesorhizobium sp. transformed with a gene 2003 from Arabidopsis thaliana coding for phytochelatin synthase. (ed. B. N. Prasad), pp. 31-39, Science Publishers Inc., Plymouth, UK Appl. Environ. Microbiol., 69 (3): 1791-1796 90 再委託先:大阪大学 91 再委託先:大阪大学 2002 Interactions of arsenic with human metallothionein-2. Variation of the amino acid content of 2002 Arabidopsis seeds by expressing soybean aspartate aminotransferase gene. A novel bioremediation system for heavy metals using the symbiosis between 2002 leguminous plant and genetically engineered rhizobia. Genetic manipulation system in 2002 propionibacteria. 2002 Toward elucidating the full spectrum of mite allergens – state of the art. J. Biochem., 132: 217-221 J. Biosci. Bioeng., 94 (3): 225-230 J. Biotechnol., 99: 279-293 J. Biosci. Bioeng., 93 (1): 1-8 J. Biosci. Bioeng., 94 (4): 285-298 〔論文・文献発表〕 発表会社・研究機関 発表者 92 再委託先:大阪大学 M. Tansengco, M. Hayashi, M. Kawaguchi, H. Imaizumi, and Y. 93 再委託先:大阪大学 室岡義勝 査読 付き は○ 発表 題目 年 crinkle , a novel symbiotic mutant that affects the infection thread growth and alters the root hair, trichome, and seed development in Lotus japonicus. ○ 2003 ○ 2003 共生工学による環境修復. ○ 2004 ○ 2004 高機能プロバイオティクスとしての乳酸菌L137株. 発表雑誌等 Plant Physiol., 131: 1054-1063 日本農芸化学会誌,77 (2): 146-149 Uchiumi, T., Oowada, T. Itakura, M., Mitsui, H., Nukui, N., Dawadi, P., Kaneko, 94 再委託先:大阪大学 T. Tabata, S., Yokoyama, T., Tejima, T., Saeki, K., Oomori, H., Hayashi, M., Maekawa, T., Sriprang, R., Murooka, Y., Expression islands clustered on symbiosis island of Mesorhizobium loti genome. J. Bacteriol. (in press) Tajima, S., Simomura, K., Nomura, M., 95 再委託先:大阪大学 室岡義勝, 山下光雄, Yoshimura, K., Takeda, T. Miyao, K. 96 再委託先:近畿大学農学部 Gaber, A. Kanaboshi, H. Miyasaka, H. and Mohamed El-Awady, Iwaki T., Tamoi M., 97 再委託先:近畿大学農学部 Shigeoka S. and Wadano A. Takeda, T. Miyao, K. Tamoi, M. Kanaboshi, 98 再委託先:近畿大学農学部 H. Miyasaka, H. and Shigeoka, S. 99 再委託先:近畿大学農学部 石川孝博、薮田行哲、田 茂井 政宏、重岡 成 100 再委託先:近畿大学農学部 重岡 成 ○ ○ ○ Enhancement of stress tolerance in transgenic tobacco plants overexpressing 2004 Chlamydomonas glutathione peroxidase in chloroplasts or cytosol Overexpression of bacterial catalase in 2003 tomato plants chloroplasts enhances photooxidative stress tolerance Molecular characterization of glutathione 2003 peroxidase-like protein in halotolerant Chlamydomonas sp. W80 2003 レドックスと代謝エンジニアリング 2003 植物代謝工学の有用性- 遺伝子組換えによる生産性 と環境ストレス耐性能の向上- 日本乳酸菌学会誌, 14 (2) (in press) Plant J 37,12-33 Plant Cell Environ. 26, 2037-2046 Physiol. Plant. 117, 467-475 蛋白質 核酸 酵素 48 (15) 2145-2153 水 45 (9) 28-31 〔研究・学会発表〕 発表会社・研究機関 王子製紙株式会社 1 王子製紙株式会社 発表者 発表場所 石内 修、津山孝人、浅田隆 之、河津哲、小林善親 日本林学会 河津 哲 蛋白研ワークショップ 発表内容 「ユーカリ葉の光合成特性」 2002/4/2 林木育種の立場から葉緑体改良に期待すること 2002/11/8 2 王子製紙株式会社 土肥敬悟ら 日本林学会 2003.3. 3 王子製紙株式会社 鈴木雄二、日尾野 隆、河津 日本植物生理学会 哲、和田巽、木原智仁、小山博 之 王子製紙株式会社 小山貴芳、小埜俊郎、水野梨 日本植物生理学会 絵、光川典宏、河津 哲、木村 哲哉、栗冠和郎、大宮邦雄 4 5 王子製紙株式会社 河津 哲、近藤啓子、鈴木雄 二、和田 巽、小山博之 日本植物生理学会 王子製紙株式会社 河津 哲 160委員会/バイオ組合 合同シ ンポジウム 6 7 ユーカリ(Eucalyptus grandis)形質転換系の 開発 Extraction of total RNA from leaves of 2003/3/27 Eucalyptus and some other woody and herbaceous plants using sodium isoascorbate 根特異的に発現するプロモーターの開発 2003/3/27 Overexpression of mitochondrial citrate 2003/3/27 synthase in Eucalyptus improved growth when cultured by Al-phosphate as a sole phosphate source ユーカリの形質転換とストレス耐性の付与 2003/6/13 王子製紙株式会社 Kawazu, Tetsu Suzuki, Yuji Annual meeting of the Wada, Tatsumi Kondo, American Society of Plant Keiko Koyama, Hiroyuki Biologists(Hawaii, USA) Overexpression of a plant mitochondrial 2003/7/27 citrate synthase in Eucalyptus trees. 王子製紙株式会社 Michito Tsuyama, Tetsu Kawazu and Yoshichika Kobayashi Annual meeting of the American Society of Plant Biologists(Hawaii, USA) Causal Factors for Reversible Lowering 2003/7/27 of Modulated Chlorophyll Fluorescence after Saturating Pulse 王子製紙株式会社 Yuji Suzuki,Takashi Hibino,Tetsu Kawazu,Tatsumi Wada,Tomonori 小山貴芳ら Annual meeting of the American Society of Plant Biologists(Hawaii, USA) Extraction of total RNA from leaves of 2003/7/27 Eucalyptus and some other woody and herbaceous plants using sodium isoascorbate. Root specific and high level expression 2003/7/27 of the PHT1 provides a practical promoter for the expression of transgene in both monocots and dicots Characteristics of transgenic 2003/9/21 Eucalyptus hybrids with an overexpression of a plant mitochondrial citrate synthase. Characteristics of transgenic 2003/9/27 Eucalyptus hybrids with an overexpression of a plant mitochondrial citrate synthase. 8 9 10 王子製紙株式会社 11 Annual meeting of the American Society of Plant Biologists(Hawaii, USA) 王子製紙株式会社 Yuji Suzuki, Tetsu Kawazu, Phosphorus Dynamicsin the Tatsumi Wada, Tetsuo Hara Soil-Plant Continuum and Hiroyuki Koyama 王子製紙株式会社 Yuji Suzuki, Tetsu Kawazu, The 3rd International Tatsumi Wada, Tetsuo Hara Symposium on the Dynamics and Hiroyuki Koyama of Physiological Processes in Woody Roots 12 13 発表日 〔研究・学会発表〕 発表会社・研究機関 発表者 発表場所 発表日 発表内容 王子製紙株式会社 河津 哲 平成15年度 紙パルプ技術協 環境ストレス耐性ユーカリの開発と産業植林 会 年次大会 2003/10/15 王子製紙株式会社 河津 哲 バイオフォーラム 2003 大 パルプ資源の増産 阪 2003/10/23 王子製紙株式会社 鈴木雄二ら 日本植物生理学会2004年度年会 王子製紙株式会社 津山孝人ら 日本植物生理学会2004年度年会 18 サントリー 矢口敏昭ら 第18回バイオシンポジウム 2000/9/27 高度不飽和脂肪酸生産ダイズの研究開発 19 サントリー 水谷正子ら 第19回バイオシンポジウム 2001/10/31 高度不飽和脂肪酸生産ダイズの研究開発 20 サントリー・京都大学 落合美佐ら 日本農芸化学会大会 2002/3/27 遺伝子組換えによる植物脂肪酸の改変 21 サントリー 松井啓祐ら 第20回バイオシンポジウム 2002/11/5 高度不飽和脂肪酸生産ダイズの研究開発 22 サントリー 田中良和 P450ワークショップ(淡路島) 2002/11/29 RNAiによる代謝工学 23 サントリー 田中良和ら 2003年度日本農芸化学会 (藤沢) 2003/3/31 RNAiによる代謝工学 24 サントリー・京都大学 落合美佐ら 日本農芸化学会大会 2003/4/1 25 サントリー 田中良和 大阪大学理学部生物学特論(豊 中) 2003/5/30 RNAiによる代謝工学 26 サントリー 田中良和 日本学術振興会第160委員会 /NEDO植物プロジェクト合同研 究会(京都) 2003/6/13 植物による高度不飽和脂肪酸生産 14 15 16 17 Characteristics of transgenic 2004/3/27 Eucalyptus hybrids with an overexpression of a plant mitochondrial citrate synthase. クロロフィル蛍光シグナル“Low wave”による 2004/3/29 光化学系Ⅰサイクリック電子伝達の解析 Mortierella alpina由来ジアシルグリセロー ルアシル基転移酵素遺伝子のクローニングと植 物での発現 〔研究・学会発表〕 発表会社・研究機関 発表者 発表場所 発表日 発表内容 27 東北大学・サントリー 朴炳振 日本育種学会 2003/9/18 アグロバクテリウム法によるダイズ形質転換 28 サントリー 田中良和 植物科学の未来を拓く 2003/10/8 RNAiによる代謝工学 29 サントリー 松井啓祐ら 第21回バイオシンポジウム 2003/11/10 高度不飽和脂肪酸生産ダイズの研究開発 30 サントリー 田中良和 講演会「産学連携によって研究 開発はいかに進化したか」 2004/3/20 RNAiによる代謝工学 31 サントリー 田中良和 2004年薬学会シンポジウム 2004/3/29 RNAiによる代謝工学 32 東北大学・サントリー 朴炳振ら 日本育種学会 2004/3/30 アグロバクテリウム法による植物形質転換 33 サントリー・奈良先端大 松井啓祐ら 日本農芸化学会大会 2004/3/30 大豆種子特異的プロモーターの単離とシロイヌ ナズナでの機能解析 34 大成建設(株) 吉田光毅、万字角英、秋吉美 穂、遠藤昇 第18回バイオシンポジウム 2000/9/27 耐塩性植物によるハイブリッドふぁいばー生産 技術開発 35 大成建設(株) 吉田光毅、万字角英、秋吉美 穂、遠藤昇 第19回バイオシンポジウム 2001/10/31 耐塩性植物によるハイブリッドふぁいばー生産 技術開発 36 大成建設(株) 吉田光毅、万字角英、秋吉美 穂、遠藤昇 第20回バイオシンポジウム 2002/11/5 耐塩性植物によるハイブリッドふぁいばー生産 技術開発 37 第21回バイオシンポジウ ム 吉田光毅、万字角英、秋吉美 穂、遠藤昇 第21回バイオシンポジウム 2003/11/10 耐塩性植物によるハイブリッドふぁいばー生産 技術開発 38 大成建設(株) 吉田光毅、万字角英、秋吉美 穂、遠藤昇 育種学会 秋期大会 北海道 2002/8/27 PHB合成遺伝子を用いた稲ワラボードの改良 (1) 39 大成建設(株) 吉田光毅、万字角英、秋吉美 穂、遠藤昇 育種学会、春期学会 東京 2004/3/30 耐塩性樹木タマリクスの組織培養系の検討 〔研究・学会発表〕 発表会社・研究機関 40 大成建設(株) 秋吉美穂、吉田光毅、万字角 英、遠藤昇 発表場所 育種学会、春期学会 東京 発表日 2004/3/30 発表内容 PHB合成遺伝子を用いた稲ワラボードの改良 (2) 日立造船 馬場健史,福崎英一郎,梶山慎 日本農芸化学会2000年度大会 一郎,岡澤敦司,右手浩一,北 (東京,2000年4月1日) 山辰樹,小林昭雄 植物におけるPolyisoprene生合成機構の解明 2004.04.01 (第一報)―植物Polyisopreneの分析― 日立造船 馬場健史,福崎英一郎,梶山慎 日本農芸化学会2000年度大会 一郎,岡澤敦司,右手浩一,北 (東京,2000年4月1日) 山辰樹,小林昭雄 超臨界流体クロマトグラフィーを用いたポリプ 2004.04.01 レノール類の高分離分析 日立造船 福崎英一郎、西河貴史、馬場健 史、加藤 晃*、新名淳彦*、邊 見 久**、西野徳三**、小林昭 雄 (阪大院・工・応生、*奈良 馬場健史,福崎英一郎,小林昭 雄(阪大院・応生工) 「テルペノイド系生合成遺伝子のクラミドモナ 2000.08.07 ス葉緑体ゲノムへの導入」 41 42 43 日立造船 44 生物工学会 (北海道) 2000 年 8 月 日本農芸化学会2000年度関西支 トチュウの産生するゴム様高分子の化学的研究 部大会(奈良,2000年10月7 2000.10.07 日) 日立造船 馬場健史,福崎英一郎,梶山慎 日本農芸化学会2001年度大会 一郎,岡澤敦司,右手浩一,北 (京都,2001年3月24日) 山辰樹,小林昭雄 植物におけるPolyisoprene生合成機構の解明 2001.03.25 (第三報)―植物Polyisopreneの分析― 日立造船 小林昭雄,福崎英一郎,馬場健 日本農芸化学会2001年度大会 史 (阪大院・応生工) (京都,2001年3月25日) トチュウ(Eucommia ulmoides Oliver)の工 2001.03.25 業原料,ポリイソプレノイド 日立造船 馬場健史,福崎英一郎,梶山慎 第36回天然物化学談話会(瀬 一郎,岡澤敦司,右手浩一,北 戸,2001年7月15日-17日) 山辰樹,中沢慶久,小林昭雄 超臨界流体クロマトグラフィーを用いたトチュ 2001.07.15 ウ(Eucommia ulmoides Oliver)ポリプレ ノール画分の解析 日立造船 馬場健史,福崎英一郎,中沢慶 日本生物工学会2001年度大会 久,佐藤浩昭,右手浩一,北山 (甲府,2001年9月26日) 辰樹,小林昭雄 超臨界流体クロマトグラフィーを用いた長鎖ポ 2001.09.26 リプレノールの解析 日立造船 馬場健史,福崎英一郎,武野真 日本生物工学会2001年度大会 也,中沢慶久,蘇印泉,玉泉幸 (甲府,2001年9月26日) 一郎,小林昭雄 ペリプロカ(Periploca sepium Bunge)乳液中 2001.09.26 に含まれるゴム成分の解析 日立造船 宮柱明日香・玉泉幸一郎(九 大) 日立造船 馬場 健史,福崎 英一郎,中 第6回高分子分析討論会(東 沢 慶久,佐藤 浩昭,右手 京,2001年11月6日) 浩一,北山 辰樹,小林 昭雄 超臨界流体クロマトグラフィーによる植物ポリ 2001.11.06 プレノールの分析 日立造船 広岡 和丈,馬場 健史,中沢 日本農芸化学会2002年度大会 慶久,福崎 英一郎,小林 昭雄 (仙台,2002年3月26日) 長鎖イソプレノイドの生合成研究 - シロイヌ 2002.03.26 ナズナにおける1,4-ベンゾキノン類側鎖合成酵 素の解析 - 45 46 47 48 49 50 51 52 発表者 第57回日本林学会九州支部大会 クロバナカヅラ(Periploca sepium Bunge) 2001.10.02. 発表 2001.10.02 の再分化系の確立 〔研究・学会発表〕 発表会社・研究機関 日立造船 53 日立造船 54 日立造船 55 日立造船 56 日立造船 宮柱明日香・玉泉幸一郎(九 大)・小林昭雄・福崎英一郎・ (阪大)・中澤慶久・馬場健史 (日立造船) 宮柱明日香・玉泉幸一郎(九 大)・山東智紀・福崎英一郎・ 小林昭雄(阪大)・中澤慶久・ 馬場健史(日立造船)・蘇印泉 村吉 美智子(日立造船・NEDO フェロー)・中澤慶久(日立造 船)・福崎英一郎・小林昭雄 (阪大)・玉泉幸一郎(九大) 馬場健史,村吉美智子,玉泉幸 一郎,中澤慶久,奥本寛,甲藤 裕子,福崎英一郎,小林昭雄 発表場所 第113回日本林学会大会 2002.04.02. 発表 発表日 発表内容 クロバナカヅラ(Periploca sepium Bunge) 2002.04.02 の培養と組換え体の作出 第58回日本林学会九州支部大会 ペリプロカ(Periploca sepium Bunge)への 2002.10.26. 発表 2002.10.26 外来遺伝子導入に関する研究 第58回日本林学会九州支部大会 トチュウの形質転換に関する研究 2002.10.26. 発表 2002.10.26 植物化学調節学会第37回大会 (札幌,2002年10月29日,30 日) トチュウのゴム(ポリイソプレノイド)はメバ 2002.10.29 ロン酸経路で生合成される 山東智紀, 広岡和丈, 馬場健 日本生物工学会2002年度大会 史, 福崎英一郎, 中沢慶久, (大阪,2002年10月30日) 蘇印泉, 玉泉幸一郎, 小林昭雄 2002.10.30 日立造船 村吉 美智子、玉泉 幸一郎、中 日本農芸化学会2003年度大会 澤 慶久、馬場 健史、福崎 英 (東京,2003年4月1日) 一郎、小林 昭雄 トランス型ゴム産生トチュウ根の液体培養系の 2003.04.01 検討 日立造船 村吉 美智子(日立造船)・馬 場健史(阪大)・中澤慶久(日 立造船)・玉 幸一郎(九 大)・福先英一郎・小林昭雄 西河 貴史、村吉 美智子、中澤 慶久、馬場 健史、玉泉 幸一 郎、福崎 英一郎、小林 昭雄 日本農芸化学会2003年度大会 (東京,2003年4月1日) トランス型ゴム産生トチュウ根の液体培養系の 2003.04.01 検討 日本農芸化学会2003年度大会 (東京,2003年4月1日) 2003.04.01 山東 智紀、宮柱 明日香、福崎 英一郎、玉泉 幸一郎、馬場 健 史、中澤 慶久、蘇 印泉、小林 昭雄 馬場健史,中澤慶久,奈良明 司,安保寿一,福崎英一郎,小 林昭雄 日本農芸化学会2003年度大会 (東京,2003年4月1日) 日立造船 T. Bamba, E. Fukusaki, Y. Nakazawa and A. Kobayashi THE 2003 PGRSAJSCRP ANNUAL In-situ localization of polyisoprene in MEETING (Vancouver, August 2003.08.03 a rubber-producing plant, Eucommia 3-7, 2003) ulmoides Oliver 日立造船 Hazutake Hirooka, Yoshikazu Izumi, Takeshi Bamba, Ei-ichiro Fukusaki, Yoshihisa Nakazawa, Akio 馬場健史, 福崎英一郎, 中沢慶 久, 小林昭雄 THE 2003 PGRSAJSCRP ANNUAL Cloning and characterizaion of two MEETING (Vancouver, August 2003.08.03 solanesyl diphosphate synthase form 3-7, 2003) Arabidopsis 57 58 59 日立造船 60 日立造船 61 日立造船 62 63 64 日立造船 65 発表者 ペリプロカのシス型ゴム生産能の評価 トランス型ゴム産生植物トチュウの形質転換 シス型ゴム産生植物ペリプロカの形質転換 2003.04.01 2003年度サーモニコレージャパ 顕微FT-IR分光分析を用いたトチュウポリイソ ンユーザーズミーティング(大 2003.06.13 プレノイドの組織内局在解析 阪,2003年6月13日) 日本生物工学会2003年度大会 (熊本,2003年9月18日) トチュウポリイソプレノイドの組織内局在解析 2003.09.18 〔研究・学会発表〕 発表会社・研究機関 発表者 発表場所 発表日 発表内容 日立造船 中堂薗陽子・中澤慶久(日立造 第59回日本林学会九州支部大会 トチュウ種子へのコルヒチン処理による倍数体 船)・玉泉幸一郎(九大) 2003.10.14. 発表 2003.10.14 の作出 日立造船 第59回日本林学会九州支部大会 形質転換ペリプロカ(Periploca sepium 2003.10.14. 発表 2003.10.14 Bunge)におけるGFP遺伝子の発現部位の特定 日立造船 宮柱明日香・玉泉幸一郎(九 大)・山東智紀・福崎英一郎・ 小林昭雄(阪大)・中澤慶久・ 馬場健史(日立造船)・蘇印泉 村吉 美智子(日立造船)・西 河貴史・馬場健史(阪大)・中 澤慶久(日立造船)・福崎英一 郎・小林昭雄(阪大)・玉泉幸 69 三井化学株式会社 大西直人、Song, Guo-qing、 山口健一 第18回バイオテクノロジーシンポジウム (東京、京王プラザホテル) 2000/9/28 組織特異的高タンパク質生産技術の研究開発 70 三井化学株式会社 大西直人、Song, Guo-qing、 第19回バイオテクノロジーシンポジウム 藤重満吏子、麻薙峰子、山口健 (東京、虎ノ門パストラル) 一 2001/10/31 組織特異的高タンパク質生産技術の研究開発 71 三井化学株式会社 肉丸誠也、濱田玲、Song, Guo-qing、山口健一 第20回バイオテクノロジーシンポジウム (東京、虎ノ門パストラル) 2002/11/5 タンパク質組織特異的高生産植物の研究開発 72 三井化学株式会社 濱田玲、原田道子、本田秀夫 第21回バイオテクノロジーシンポジウム (東京、虎ノ門パストラル) 2003/11/11 フィターゼ高生産植物の研究開発 73 三井化学株式会社 肉丸誠也、濱田玲、Song, Guo-qing、山口健一 2002年度日本農芸化学会大 会(東京) 74 三井化学株式会社 濱田 玲、原田 道子、肉丸 誠 2003年度日本農芸化学会大 也、山口 健一、本田 秀夫 会(広島) 2004/3/30 フィターゼ高生産植物の研究開発 75 三井化学株式会社 本田秀夫、濱田 玲、原田道 子、堀口健一、高橋敏能 2003年度日本農芸化学会大 会(広島) 2004/3/30 76 三井化学株式会社 本田秀夫 2004年度日本生物工学会大会シ ンポジウム(名古屋) 2004/9/21 形質転換イネにおける酵母フィターゼの高生産 77 三井化学株式会社 Ken-ichi Yamaguchi1, Akira The International Hamada, Michiko Harada, Symposium on Organic Seiya Nikumaru and Hideo Recycling 2004(秋田) Honda 2004/10/5- Transgenic Rice Plant Expressing Yeast 7 Phytase in Stem and Leaves. 78 三井化学株式会社 山口健一、G.Q.Song、本田秀 夫 2005/4/3-4 66 67 68 第59回日本林学会九州支部大会 ゴム生合成の評価を志向した遺伝子組換えト 2003.10.14. 発表 2003.10.14 チュウの根の器官培養および液体培養系の確立 日本園芸学会 平成17年度春季 大会(筑波) 2003/4/2 外来フィターゼを発現するイネの作出 イネで高発現させた酵母フィターゼの生化学的 解析及び安定性評価 抗生物質の二段選抜によるサツマイモ形質転換 体の作出(予定) 〔研究・学会発表〕 発表会社・研究機関 発表者 発表場所 発表日 C端末の配列KDは植物内でのペプチドの分解防 御配列として機能する 79 豊田中央研究所 村本伸彦 日本農芸化学会2002年度大会 80 豊田中央研究所 嶋村隆 日本生物工学会平成14年度大会 2002/10/27 植物病害抵抗性付与に最適な抗菌ペプチドの開 発 81 豊田中央研究所 村本伸彦 日本生物工学会平成14年度大会 2002/10/27 抗菌ペプチドを導入したシロイヌナズナの病害 抵抗性の解析 82 豊田中央研究所 今枝孝夫 第20回バイオテクノロジーシン ポジウム 2002/11/5 抗菌ペプチド遺伝子を利用した病害抵抗性植物 の作出 83 豊田中央研究所 田中倫子 日本農芸化学会2003年度大会 2003/4/1 抗菌ペプチド遺伝子導入サツマイモの病害抵抗 性の獲得 84 豊田中央研究所 今枝孝夫 第21回バイオテクノロジーシン 抗菌ペプチド遺伝子を利用した病害抵抗性植物 2003/11/11 ポジウム の作出 85 豊田中央研究所 田中倫子 第21回バイオテクノロジーシン 抗菌ペプチド遺伝子を利用した病害抵抗性植物 2003/11/11 ポジウム の作出 86 豊田中央研究所 今枝孝夫 第26回日本分子生物学会年会 2003/12/10 抗菌ペプチド遺伝子の機能改良と病害抵抗性植 物創製への応用(1) 87 豊田中央研究所 田中倫子 第26回日本分子生物学会年会 2003/12/10 抗菌ペプチド遺伝子の機能改良と病害抵抗性植 物創製への応用(2) 88 ㈱東洋紡総合研究所 春日部芳久、三澤修平、猪原 泉、田口裕朗、橘 昌司、名田 第19回バイオシンポジウム 和義 2001/10/31 口頭発表、ポスター発表 89 ㈱東洋紡総合研究所 春日部芳久、賀 利雄、渡壁百 合子、猪原 泉、橘 昌司、名 第20回バイオシンポジウム 田和義 2002/11/5 ポスター発表 90 ㈱東洋紡総合研究所 春日部芳久、賀 利雄、渡壁百 合子、猪原 泉、橘 昌司、名 第21回バイオシンポジウム 田和義 2003/11/11 ポスター発表 91 ㈱東洋紡総合研究所 春日部芳久、三澤修平、猪原 泉、橘 昌司、名田和義 2002/1/11 ポスター発表 みえ研究開発シーズニーズ交流 会 2002/3/24 発表内容 〔研究・学会発表〕 発表会社・研究機関 発表者 発表場所 発表日 発表内容 92 ㈱東洋紡総合研究所 春日部芳久 日本学術振興会第160委員会シ ンポジウム 2003/6/13 口頭発表 93 ㈱東洋紡総合研究所 春日部芳久、三澤修平、猪原 泉、名田和義、橘 昌司 日本植物生理学会 2002/3/29 94 ㈱東洋紡総合研究所 賀 利雄、春日部芳久、渡壁百 合子、猪原 泉、名田和義、橘 日本植物生理学会 昌司 95 ㈱東洋紡総合研究所 He, L., K. Nada and S. Tachibana (財)地球環境産業技術 研究機構、京都工芸繊維 96 大学大学院、奈良先端科 学技術大学院大学 (財)地球環境産業技術 研究機構、京都工芸繊維 97 大学大学院、奈良先端科 学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 98 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 99 バイオテクノロジー開発 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 2nd International Symposium on Cucurbits 北島佐紀人、嶋岡泰世、富澤健 日本植物生理学会2004年度年会 一、横田明穂 および第44回シンポジウム 三宅親弘、岡村光高、宮田桃 日本植物生理学会2004年度年会 子、新崎由紀、西岡美典、北島 および第44回シンポジウム 佐紀人、横田明穂、富澤健一 澤田和敏、徳田玲奈、新名惇彦 第20回日本植物細胞分子生物学 会 澤田和敏、徳田玲奈、新名惇彦 日本植物学会第66回大会 バイオテクノロジー開発 100 技術研究組合、奈良先端 澤田和敏、徳田玲奈、新名惇彦 第25回日本分子生物学会年会 科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 101 技術研究組合、奈良先端 澤田和敏、徳田玲奈、新名惇彦 科学技術大学院大学 第21回日本植物細胞分子生物学 会 スペルミジン合成酵素遺伝子を過剰発現したシ 2003/3/27 ロイヌナズナにおける抗酸化酵素活性の低温誘 導性 Effect of spermidine pretreatment through the root on the growth and 2001/9/28 photosynthesis of cucumber plants (Cucumis sativus L.) under chilling 2004.3. H2O2による葉緑体アスコルビン酸パーオキシ ダーゼの失活に伴う活性部位の変化 2004.3. H2O2 photoproduced intrinsically in chloroplasts of higher plants inactivates ascorbate peroxidase (APX) _Galdieria partita-APX maintains the 2002/7/29 エリシター誘導性イネセレニウム結合タンパク ホモログ遺伝子の発現解析 Expression analysis of gene for 2002/9/21 elicitor-responsive selenium-binding protein homolog in rice plants Characterization of the rice blast fungal elicitor-responsive gene OsSBP 2002/12/13 encoding a homolog to the mammalian selenium-binding proteins 2003/8/8 イネセレニウム結合タンパク質OsSBPを過剰発 現させたイネ植物体における耐病性の向上 2003/12/11 イネセレニウム結合タンパク質遺伝子OsSBPを 過剰発現させたイネは耐病性が向上する バイオテクノロジー開発 102 技術研究組合、奈良先端 澤田和敏、徳田玲奈、新名惇彦 第26回日本分子生物学会年会 科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 103 技術研究組合、奈良先端 澤田和敏、徳田玲奈、新名惇彦 平成15年度日本植物病理学会関 イネセレニウム結合タンパク質遺伝子OsSBPを 2003/10/19 西部会 過剰発現させたイネは耐病性が向上する 幸田勝典、柴田大輔、新名惇彦 第19回バイオテクノロジーシ 2001/10/31 植物への多重遺伝子導入技術の開発 ンポジュム 科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 104 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 低温ストレス耐性に関与するスペルミジン合成 酵素遺伝子の機能解析 〔研究・学会発表〕 発表会社・研究機関 発表者 発表場所 発表日 発表内容 バイオテクノロジー開発 105 技術研究組合、奈良先端 106 107 108 109 110 111 112 科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学、か ずさDNA研究所 (株)豊田中央研究所、バ イオテクノロジー開発技 術研究組合 バイオテクノロジー開発 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学、か ずさDNA研究所 バイオテクノロジー開発 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学、か ずさDNA研究所 バイオテクノロジー開発 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学、か ずさDNA研究所 バイオテクノロジー開発 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学、か ずさDNA研究所 バイオテクノロジー開発 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 113 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 114 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 115 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 116 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 117 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 幸田勝典、新名惇彦、柴田大輔 日本農芸化学2002年度大会 2002/3/26 固相法によるDNA連続連結法の開発 幸田勝典、新名惇彦、柴田大輔 第20回植物細胞分子生物学会奈 良大会・シンポジュム 2002/7/29 固相法によるDNA連続連結法の開発 幸田勝典 第160委員会、日本学術振興 会 2003/6/13 多重遺伝子導入技術の開発 瀧田英司、紀美佐、新名惇彦、 第21回植物細胞分子生物学会 柴田大輔 香川大会・シンポジュム 2003/8/7 両端に長鎖DNAを付加することによる導入遺伝 子発現の安定化 瀧田英司、紀美佐、奥山恵里、 第20回バイオテクノロジーシ 2003/11/11 多重遺伝子導入技術の開発 新名惇彦、柴田大輔 ンポジュム 瀧田英司、紀美佐、奥山恵里、 日本植物生理学会2004年度 新名惇彦、柴田大輔 大会 2004/3/26 サイレンシングの回避による導入遺伝子発現の 安定化 瀧田英司、紀美佐、奥山恵里、 第56回日本生物工学会大会 新名惇彦、柴田大輔 2004/9/22 長鎖DNAを付加し遺伝子導入した植物における ジーンサイレンシングの減少 安藤候平、宮下京子、山川清 栄、吉田和哉、横田明穂、新名 第24回日本分子生物学会 惇彦、河内孝之 2001/12/11 シロイヌナズナ均一化cDNAライブラリー由来 cDNAマイクロアレイによる解析 安藤候平、宮下京子、山川清 栄、吉田和哉、横田明穂、新名 日本農芸化学2002年度大会 惇彦、河内孝之 山川清栄、宮下京子、安藤候 第20回日本植物細胞分子生物 平、吉田和哉、新名惇彦、河内 学会大会 孝之 シロイヌナズナ均一化cDNAライブラリー由来 2002/3/26 cDNAマイクロアレイによる器官特異的発現遺伝 子の同定 cDNAマイクロアレイを用いたシロイヌナズナの 器官特異的高発現遺伝子の網羅的解析とdual2002/7/29 luciferase assay法を用いたプロモーター活 性の簡易検定 安藤候平、山川清栄、宮下京 子、吉田和哉、横田明穂、河内 第54回日本生物工学会大会 孝之、新名惇彦 2002/10/1 山川清栄、安藤候平、吉田和 哉、河内孝之、新名惇彦 第55回日本生物工学会大会 cDNAマイクロアレイを用いたシロイヌナズナの 2003/9/18 器官特異的発現遺伝子同定によるプロモーター の網羅的解析 安藤候平、山川清栄、吉田和 哉、横田明穂、河内孝之、新名 第55回日本生物工学会大会 惇彦 シロイヌナズナ均一化cDNAライブラリー由来 2003/9/18 cDNAマイクロアレイによる器官特異的発現遺伝 子の系統的同定 cDNAマイクロアレイを利用したシロイヌナズナ 器官特異発現遺伝子の同定 〔研究・学会発表〕 発表会社・研究機関 バイオテクノロジー開発 118 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 119 奈良先端科学技術大学院大学 120 奈良先端科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 121 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 122 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 123 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 発表者 発表場所 山川清栄、安藤候平、千阪綾、 第26回日本分子生物学会年会 吉田和哉、河内孝之、新名惇彦 発表内容 cDNAマイクロアレイを用いたシロイヌナズナ器 2003/12/12 官特異発現遺伝子同定に基づくプロモーターの 網羅的解析 10th International Development of artificial gene Conference on the Cell and 2002.6.11regulation system in Chlamydomonas Molecular Biology of 16 reinhardtii chloroplast Chlamydomonas.Vancouver,ca 7th International Congress 2003.6.23- Expression of single transgene in of Plant Molecular 28 Arabidoposis thaliana Biology.Barcelona,Spain The 5'UTR of the BY2 alcohol 7th International Congress Ko Kato,Junko 2003.6.23- dehydrogenase gene functions as an of Plant Molecular satoh,Atsuhiko Shinmyo 28 effctive translational enhancer in Biology.Barcelona,Spain dicotyledonous and monocotyledonous 佐藤(伊藤)淳子、長屋進吾、関 タバコ培養細胞BY2由来のアルコールデヒドロ 根政美、吉田和哉、加藤晃、新 第53回日本生物工学会大会 2001/9/1 ゲナーゼ遺伝子の5’UTRを利用した高効率遺 名惇彦 伝子発現系の構築 Seitaro Kasai,Yuka Ninomiya,KO kato,and Atsuhiko Shinmyo Shingo Nagaya,Ko Kato,Yuka Ninomiya,Kazuya Yosida,Masami Sekine,Atsuhiko shinmyo 杉尾肇俊、佐藤淳子、長屋進 吾、加藤晃、新名惇彦 第54回日本生物工学会大会 2002/10/1 佐藤淳子、加藤晃、新名惇彦 第25回日本分子生物学会大会 タバコ培養細胞BY2由来のアルコールデヒドロ 2002/10/1 ゲナーゼ遺伝子の5’非翻訳領域(5’UTR)が 翻訳効率に与える影響 バイオテクノロジー開発 124 技術研究組合、奈良先端 発表日 科学技術大学院大学 植物において導入遺伝子の発現を翻訳レベルで 高める5’UTRの探索 125 奈良先端科学技術大学院大学 長屋進吾、加藤晃、二宮由佳、 吉田和哉、天谷正行、柴田大 第25回日本分子生物学会大会 輔、新名惇彦 2002/10/1 シロイヌナズナにおけるクロマチン構造と遺伝 子発現の解析 126 奈良先端科学技術大学院大学 長屋進吾、加藤晃、二宮由佳、 日本植物生理学会2003年度 吉田和哉、関根政美、新名惇彦 大会 2003/3/1 シロイヌナズナにおいて異なる染色体領域に位 置する導入遺伝子の発現 127 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 160委員会/バイオ組合 合同シ ンポジウム 2003/6/13 植物による工業原料生産植物の開発プロジェク ト概要 128 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 バイオフォーラム 2003 大 2003/10/23 NEDO工業植物プロジェクト 阪 129 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 日本生物工学会大会シンポジウ ム 2004/9/23 NEDO工業植物プロジェクト 130 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 西宮市市民セミナー第18回ライ フサイエンスセミナー「バイオ テクノロジーの最前線」 2002/10/4 グリーンバイオテクノロジー 〔研究・学会発表〕 発表会社・研究機関 発表者 発表場所 発表日 発表内容 131 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 かんかん会講演会 2002/10/8 21世紀、持続可能な社会に向けた植物バイオ 132 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 有馬啓記念バイオインダスト リー協会賞受賞講演 2002/10/24 植物バイオテクノロジーの基礎および開発研究 133 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 日本生物工学会関西支部、関西 50年後の地球のための植物バイオ、必要性と安 サイエンスフォーラム共催バイ 2002/12/21 全性 オサイエンスセミナー 134 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 日本植物工場学会-植物工場を とりまく最新テクノロジー2- 2003/1/31 植物による工業原料生産の技術開発動向 135 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 日本農学会平成15年度シンポジ ウム 2003/4/5 21世紀における循環型生物生産への提言 136 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 富山県バイオテクノロジーセン ター10周年記念講演会 2003/5/8 植物バイオテクノロジーは人類の救世主となり うるか 137 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 (財)化学技術戦略推進機構講 演会 2003/5/27 持続可能な社会を目指す植物バイオテクノロ ジー 138 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 (財)バイオインダストリー協 会バイオインダストリーII集団 研修 2003/6/27 Plant Biotechnology for Establishment of Sustainable World 139 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 京都大学大学院工学研究科特別 セミナー 2003/7/22 持続可能な社会を目指す植物バイオテクノロ ジー 140 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 奈良先端科学技術大学院大学高 校生バイオサマースクール 2003/8/2 21世紀、持続可能な社会を作る植物バイオ 141 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 平成15年度日本生物工学会シン ポジウム「環境保全における生 物工学の役割と力量」 2003/8/5 バイオの世紀の生物工学 142 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 わいわいがやがやバイオコロ ニー講演会 2003/8/6 人類の未来を支える植物バイオ 143 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 畝傍高等学校理科教育研修会 2003/8/22 植物バイオに期待する21世紀 〔研究・学会発表〕 発表会社・研究機関 発表者 発表場所 発表日 発表内容 植物バイオに期待する21世紀 144 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 奈良県大学連合公開講演会 2003/9/6 145 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 日本生物工学会市民フォーラム 2003/9/13 逆風に立ち向かう遺伝子組換え植物 146 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 日本農芸化学会関西・中部支部 合同大会シンポジウム 2003/10/4 147 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 西郷村文化講演会 2003/10/18 NEDOプロジェクト:植物による工業原料生産技 術の開発 地球の環境と日本のバイオ技術? 豊かな地球を 残すために? 日本工業新聞社、大阪科学機器 協会、近畿バイオインダスト 2003/10/23 NEDO工業植物プロジェクト リー協会振興会議主催バイオ フォーラム2003 Development of Multi-gene Ligation and UM/ NAIST Joint Symposium 2003/10/27 Control of Gene Expression (NEDO, METI Project, Japan) 148 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 149 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 150 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 天野エンザイム(株)社員講演 会 2003/11/6 遺伝子組換え植物の必要性と安全性 151 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 農林水産技術推進機構講演会 2003/11/8 食と農の未来と遺伝子組換え農作物の関わり 152 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 Taiwan/ Japan Science Summit 2003/12/1 153 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 環境管理技術研究会 2003/12/5 今求められている輸入食品の安全性 154 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 大阪商工会議所主催第二期バイ 2003/12/13 植物バイオ オビジネススクール 155 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 弁護士会、公認会計士会、弁理 士会バイオサポーターズ基礎知 2003/12/20 バイオの時代、その背景と将来 識コース 156 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 北海道バイオ産業振興会第97回 例会記念講演会「21世紀のエネ ルギー・環境・食糧」 2004/1/20 Plant Biotechnology for Establishment of Sustainable World 人類・地球の危機、2050年問題へのバイオ対応 策 〔研究・学会発表〕 発表会社・研究機関 発表者 発表場所 奈良先端科学技術大学院大学、 (財)関西文化学術研究都市推 進機構、特定非営利活動法人、 けいはんな文化学術協会主催講 弁護士会、公認会計士会、弁理 士会バイオサポーターズ基礎知 識コース 発表日 発表内容 2004/2/9 人類・地球の危機、2050年問題解決のための植 物バイオ 2004/2/28 禁断の実を口にした20世紀? 持続可能な社会を 作る植物バイオ 持続可能な社会を目指す植物バイオテクノロ ジー 157 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 158 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 159 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 内閣府総合科学技術会議 2004/4/7 160 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 バイオインダストリー協会技 術・情報部会平成15年度部会特 別講演 2004/5/12 21世紀の発想:化石資源からバイオマス資源へ 161 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 私立開明高等学校(大阪)見学 会講演 2004/5/27 バイオの世紀、その時代背景と今後 162 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 大阪中小企業投資育成株式会社 勉強会 2004/6/3 循環型社会を支えるバイオテクノロジー 163 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 JSPS Seminar "plant Science and Biotechnology for Sustainable World" 2004/6/11 Plant Biotechnology for Establishment of Sustainable World 164 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 (財)バイオインダストリー協 会バイオインダストリーII集団 研修 2004/6/22 Plant Biotechnology for Establishment of Sustainable World 165 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 大阪大学大学院工学研究科集中 2002/11/25 講義 166 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 京都大学大学院工学研究科集中 講義 2003/7/23 167 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 近畿大学農学部集中講義 2003.12.5 、12.12 168 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 徳島大学工学部集中講義 2003.12.18 -19 169 奈良先端科学技術大学院大学 新名惇彦 早稲田大学理工学部集中講義 2004/1/30 〔研究・学会発表〕 発表会社・研究機関 バイオテクノロジー開発 170 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 171 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 172 奈良先端科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 173 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 174 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 発表者 THE 5'UTR of BY2 alcohol dehydrogenase gene functions as atranslational enhancer ij plants 團迫智子、加藤晃、佐藤淳子、 日本植物生理学会2003年度 新名惇彦 大会 2003/3/1 5'untranslated region of the HSP18.2 gene contributes to efficient translation under heat stress condition 長屋進吾、加藤晃、吉田和哉、 日本植物生理学会2004年度 新名惇彦 大会 2004/3/1 Insulator of sea urchin suppresses variation of transgene expression in cultured tobacco cells 小泉望、小川幹弘、草野友延、 第19回日本植物細胞分子生物 佐野浩 学会大会・シンポジュム 2001/7/1 Coffea arabica テオブロミン合成酵素cDNA の単離と解析 上藤洋敬、山口夕、小泉望、佐 第20回日本植物細胞分子生物 野浩 学会大会・シンポジュウム 2002/7/1 コーヒーノキ由来カフェイン合成酵素cDNA の 単離と解析 上藤洋敬、荻田信二郎、佐野浩 第21回植物細胞分子生物学会 香川大会・シンポジュム 2003/7/1 コーヒーノキ由来メチル化酵素遺伝子群の多重 導入によるカフェイン生合成経路の構築 荻田信二郎、小泉望、佐野浩 第20回日本植物細胞分子生物 学会(奈良)大会 2002/7/29 コーヒーの分子育種(第3報):カフェイン生合 成を制御したコーヒー植物の創出 上藤洋敬、荻田信二郎、佐野浩 第20回日本植物細胞分子生物 学会(奈良)大会 2002/7/29 コーヒーの分子育種(第4報):コーヒーノキ由 来カフェイン合成酵素cDNA の単離と解析 Shinjirou Ogita,Hirotaka Uefuji,Yong-Eui Choi,Tomoko Hatanaka,Mikihiro 9th Symposium on Plant Biology,Korea 2002/11/1 Genetic modification of Coffee Plants バイオテクノロジー開発 科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 177 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 178 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 179 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 発表内容 2003/3/1 科学技術大学院大学 176 技術研究組合、奈良先端 発表日 佐藤淳子、二宮由佳、加藤晃、 日本植物生理学会2003年度 新名惇彦 大会 バイオテクノロジー開発 175 技術研究組合、奈良先端 発表場所 荻田信二郎、山口夕、小泉望、 日本植物生理学会2003年度 佐野浩 大会 2003/3/27 コーヒー植物のテオブロミン生成制御とプリン アルカイドの変動 2003/6/1 Three N -methyltransferases that siccessively catalyze caffeine biosynthesis in coffee plants バイオテクノロジー開発 180 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 Uefuji H,Ogita S,Sano H The 2003 annual meeting of the American society of Plant Biologists,Honolulu.USA 181 横浜国立大学 松尾直子、平塚和之 第19回日本植物細胞分子生物学 高等植物における動物ウイルス由来IRESの機能 2001/12/11 会大会 横浜 解析 182 横浜国立大学 松尾直子、平塚和之 第20回日本植物細胞分子生物学 会大会 2002年 奈良 2002/7/29 TMV由来IRESを用いた多重遺伝子発現系 〔研究・学会発表〕 発表会社・研究機関 発表者 発表場所 発表日 発表内容 183 横浜国立大学 松尾直子、平塚和之 日本植物病理学会大会 2003年 東京 2003/3/30 ウイルス由来配列を利用した多重遺伝子発現系 について 184 横浜国立大学 橋本ちぐさ、松尾直子、平塚和 第21回日本植物細胞分子生物学 之 会大会 2003年 香川 2003/8/7 昆虫ウイルス由来IRESを用いた多重遺伝子発現 系 185 横浜国立大学 松尾直子、市橋茜、平塚和之 第26回日本分子生物学会年会 2003年 神戸 2003/12/12 キャップ非依存的な翻訳関連因子変異体のスク リーニング法 186 横浜国立大学 松尾直子、平塚和之 日本植物病理学会大会 2004年 福岡 2004/3/29 TMV由来IRESを用いた多重遺伝子発現系 187 横浜国立大学 松尾直子、橋本千種、市橋茜、 ウイルス病研究会 平塚和之 188 横浜国立大学 Naoko Matsuo, Kazuyuki Hiratsuka 再委託先:京都大学大学 189 院生命科学研究科遺伝子 特性学分野 再委託先:京都大学大学 190 院生命科学研究科遺伝子 特性学分野 7th INTERNATIONAL CONGRESS OF PLANT MOLECULAR BIOLOGY. (スペイン・バルセ ロナ) 梶川昌孝、山岡尚平、大和勝 幸、金丸博幸、櫻谷英治、清水 日本分子生物学会 昌、福澤秀哉、大山莞爾 梶川昌孝、大和勝幸、甲津嘉 人、野尻増俊、櫻谷英治、清水 日本農芸化学会 昌、阪井康能、福澤秀哉、大山 莞爾 日本生物工学会平成15年度大 会、熊本 2004/3/31 2003. 6.23-28 ウイルス由来配列を利用した多重遺伝子発現系 に関する研究 DEVELOPMENT OF IRES-MEDIATED GENE EXPRESSION SYSTEM IN PLANTS. 2種のゼニゴケ脂肪酸鎖長延長酵素遺伝子は、長 2001/12/9 鎖脂肪酸生合成において初期の鎖長延長反応に 関与する。 2004/3/30 ゼニゴケ高度不飽和脂肪酸生合成経路のメタ ノール資化性酵母Pichia pastoris での再構成 2003.9.16遺伝子工学の基盤技術開発 18 191 再委託先:大阪大学 室岡義勝 192 再委託先:大阪大学 加藤智朗、後藤優治、林誠、小 日本生物工学会平成15年度大 埜和久、室岡義勝 会、熊本 2003.9.16- 経口減感作療法をめざしたミヤコグサにおける 18 ダニアレルゲンの発現 193 再委託先:大阪大学 山下光雄、筒井麻衣子、小埜和 日本生物工学会平成15年度大 久、室岡義勝 会、熊本 2003.9.16- 経口減感作療法を目指した乳酸菌L137株におけ 18 るダニアレルゲンの発現 194 再委託先:大阪大学 Y. Murooka JSPS-NRCT/DOST/LIPI/VCC Workshop for Project No. 3, Hanoi and Ho-chi-Minh, Vietnam 195 再委託先:大阪大学 室岡義勝 第3回環境微生物研究会シンポ ジューム、京都 2003.10.19 Research Network for the Nitrogen-24 Fixing Symbiosis in Southeast Asia 2003.11.24 微生物と植物の共生系を利用した環境保全 〔研究・学会発表〕 発表会社・研究機関 発表者 発表場所 発表日 発表内容 196 再委託先:近畿大学農学部 小川貴央、板倉武士、吉村和 日本農芸化学学会 2003年度年 也、田茂井政宏、武田徹、重岡 会 成 2003.4 アクティベーションタギング法による新規酸化 的ストレス関連遺伝子の検索 197 再委託先:近畿大学農学部 村本 彩、武田徹、吉村和也、 日本植物生理学会 2004年度大 金星晴夫、宮坂均、重岡成 会 2004.3 好塩性クラミドモナスW80株GPXを発現させたタ バコのストレス耐性能の向上 198 再委託先:近畿大学農学部 藤原範己、西森靖之、小川貴 央、吉村和也、重岡成 日本植物生理学会 2004年度大 会 2004.3 アクティベーションタギング法による環境スト レス耐性関連遺伝子の探索 199 再委託先:近畿大学農学部 小川貴央、上田弥生、藤原範 己、吉村和也、重岡成 日本農芸化学学会 2004年度年 会 2004.3 植物MutT様タンパク質ファミリーの特性と酸化 的ストレス耐性能に及ぼす影響 〔新聞等マスコミ発表〕 平成13年10月以降 会社・研究機関 掲載物 1 王子製紙株式会社 化学工業日報 2 王子製紙株式会社 日本経済新聞 3 王子製紙株式会社 日経バイオビジネス 4 王子製紙株式会社 掲載日 内容 ######### ユーカリの優良苗生産めど 2002/ 産業力 技術の大波動つか め 2002/6/ 製紙の仕組み応用し7兆円 の産業創出 日経バイオテク 2003/3/18 酸性土壌抵抗性ユーカリの 開発に成功 5 王子製紙株式会社 朝日新聞 2003/7/15 酸性土壌で育つユーカリ開 発 6 王子製紙株式会社 日本経済新聞 2004/8/6 遺伝子組換え樹木 接ぎ木 で種子飛散防ぐ 7 サントリー 日刊工業新聞 2002/8/18 RNAiによる代謝工学 8 大成建設株式会社 学研 1999/12/1 砂漠でイネを作る(海水灌 漑) 9 大成建設株式会社 日刊建設工業新聞 ######### 耐塩性植物で環境修復(3 面) 10 大成建設株式会社 日本経済新聞 2001/3/13 畑が工場に変わる。(1 面) 11 大成建設株式会社 日刊工業新聞 2001/8/24 砂漠防止と緑化挑戦するゼ ネコン 12 大成建設株式会社 日経バイオテク 大成建設、生プラ合成酵素 2001/2/12 遺伝子を導入した高付加価 値木材開発に着手 13 大成建設株式会社 テレビ東京株式オープニングベル 2002/6/14 14 日立造船株式会社 朝日新聞朝刊 15 日立造船株式会社 週間日経バイオ 16 三井化学株式会社 日本農芸化学会主催、科 学関係報道記者会見 農芸化学会で発表予定の 2004/3/15 「フィターゼ高生産植物の 研究開発」関連の研究成果 17 ㈱東洋紡総合研究所 日経バイオテク 2003/7/21 研究成果発表 朝日新聞 2002/8/28 カフェイン抜きの木/コー ヒー遺伝子組み換え 日経バイオテクノロ ジージャパン 2002/3/26 固相法によるDNA連続連結 法の開発 朝日新聞 地球を救う植物力①草木か 2004/3/3 ら工業原料を抽出/石油資 源の代替めざす バイオテクノロジー開発 18 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 19 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 バイオテクノロジー開発 20 技術研究組合、奈良先端 科学技術大学院大学 21 再委託先:大阪大学 産経新聞 温暖化対策もバイオで屋上 緑化から植林まで。 2004/3/5 トチュウゴムに関する記事 2002.6 2002.1.18 トチュウゴムに関する記事 減感作療法 ダイズに “薬”を貯蔵 22 再委託先:大阪大学 産経新聞 2002.3.19 土壌の根粒菌 「共生」で 重金属除去 23 再委託先:大阪大学 読売新聞 2002.7.27 ネパールにコメ収量増目指 しレンゲ畑、阪大など計画