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1 基本理念 快適で安全な暮らしを支え続ける 下水道

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1 基本理念 快適で安全な暮らしを支え続ける 下水道
2
1章
第
計画の背景と目的
1 茅野市下水道中期ビジョンとは
我が国の下水道事業は、公衆衛生の向上と浸水の防除を目的に始まり、その後、公共用
水域の水質保全を新たに目的に加え、事業を積極的に実施し効果も十分発揮してきました。
しかし、今日では、全地球規模に広がる水質保全の必要性、急速な少子高齢化の進行、
ゲリラ豪雨とも称される局所的な降雨による浸水、環境負荷に対する意識の変化等、水循
環における課題が表面化しており、その中で下水道が占める役割は益々重要なものとなっ
ています。
茅野市の下水道は、昭和 49 年度に事業に着手しました。以降毎年事業を進め、平成
23 年度末の行政区域内人口に対する下水道人口普及率が、全国値より約 20 パーセント
高い 97 パーセント(図 1 参照)となっていることに見られるように、主に公衆衛生の向上
という目的に大きな役割を果たしてきました。
図 1 下水道普及率経年推移図
下水道人口普及率が高くなったこともあり、大規模な新規の下水道建設を必要とする時
代は過ぎました。しかし、道路や地形状況等の障害による残り 3 パーセントの下水道未普
及人口への対策等、公衆衛生の向上という目的の達成には、依然として課題が残っています。
また、東日本大震災でも明らかになったように、下水道施設への自然災害による被害の軽
減策といった新たな課題も生じていることから、今後の下水道事業は、これまで以上に計
画的かつ効率的に推進していくことが重要です。
このような状況の中、茅野市の下水道における課題と下水道を取り巻く環境を整理した上
1
で、茅野市が平成 20 年に策定した第 4 次茅野市総合計画「茅野市民プラン」
(以下、
「市
民プラン」と表します。)で掲げる茅野市の将来像「人も自然も元気で豊か 躍動する高原
都市」の実現のため、下水道事業で取り組むべき「今後の下水道政策」を明示するための
計画を「下水道中期ビジョン」として策定します。
また、計画期間は、平成 24 年度以降の 11 年間とし、
「市民プラン」の目標年度である
平成 29 年度までの前期と、平成 30 年度から平成 34 年度までの 5 ヶ年の後期により構
成し、おおむね前期終了を目処に状況に応じた見直しを行うものとします。なお、この下水
道中期ビジョンは、茅野市下水道事業として今後取り組むべき施策の抽出を行い、各施策
の事業期間を想定した上で策定します。
図 2 茅野市下水道中期ビジョン計画期間図
2
2 茅野市の下水道の状況
(1)下水道事業の概要
茅野市の下水道事業は、市街地及び周辺集落を諏訪湖流域下水道の流域関連公共下水
道として、白樺湖・車山高原周辺を単独処埋区の特定環境保全公共下水道として整備を行い、
公衆衛生の向上と公共用水域の水質保全を図ってきました。
流域関連公共下水道事業は、昭和 49 年度の事業着手以来、積極的に事業に取り組み、
平成 23 年度末では下水道人口普及率は 97 パーセントに達しました。
一方、白樺湖特定環境保全公共下水道事業は、白樺湖の水質保全のため、茅野市・立
科町で一部事務組合白樺湖下水道組合を設立し、処理水を系外に放流する計画に基づき、
昭和 50 年度に事業着手し、平成元年度には必要とされる箇所の整備を完了しました。
現在では、図 3 に示すとおり諏訪湖の更なる水質向上を目指すために、平成 27 年度を
目標に諏訪湖流域下水道への接続に向けて、事業を進めています。
※BOD:生物化学的酸素要求量ともいわれ、河川や放流水中の有機物が微生物によって分解される間に消費
する酸素量を示す値です。この値が大きいほど汚濁が大きいことを意味します。
※T-N:水中に含まれる有機態と無機態の窒素の総量を示します。
※T-P:水中に含まれる有機態と無機態のリンの総量を示します。
図 3 白樺湖特定環境保全公共下水道の流域下水道への接続前後の放流水質比較図
3
茅野市公共下水道計画の処理区域及び下水道人口普及率の概要は表 1 のとおりです。
また、事業に必要な各種法令経緯を、都市計画決定(変更)及び下水道法及び都市計画法
事業認可(変更)に区分し、表 2 に示します。
なお、平成 19 年度において、白樺湖特定環境保全公共下水道区域を諏訪湖流域下水道
に接続する白樺湖汚水幹線について事業計画の変更認可を取得しました。 表 1 茅野市公共下水道の事業概要
4
表 2 茅野市流域関連公共下水道の都市計画決定(変更)及び事業認可申請の法令経緯
5
(2)下水道に関わる主な課題
茅野市の下水道に関わる主な課題としては、下水道の目的に関連する事項と今後の事業
を展望することで新たに顕在化してきた事項に区分され、次に示す 9 項目の課題が挙げら
れます。
【下水道の目的に関連する課題:4 項目】
ここでは、下水道の目的である公衆衛生の向上、浸水の防除及び公共用水域の水質保
全に関わる課題を従来からの課題として示します。なお、本課題は下水道の事業認可区域
(長野県から下水道工事の認可を受けている区域)に限定され、事業認可の未取得区域
に関わる課題は、8 ページ以降で記載している今後の事業課題の中に示します。
●事業認可区域における下水道未普及区域の解消
茅 野 市 の下水 道 は、 諏 訪 湖 流 域 関 連 公 共 下水 道と白 樺 湖 特 定 環 境 保 全 公 共 下水 道 に
より整備を進めており、平成 23 年度末現在では下水道人口普及率で 96.5 パーセントに達して
います。これを整備区域面積として捉えると、下記に示した表 3 のとおり、面積整備率は 75.6
パーセント(=整備済み面積 2,558 ヘクタール÷全体面積 3,383 ヘクタール× 100)となって
います。また、事業認可区域を基準とした場合では、面積整備率 89.3 パーセント(=整備済み
面積 2,558 ヘクタール÷事業認可面積 2,864 ヘクタール× 100)です。
事業認可区域内には、道路状況等により未だ下水道本管が布設されていない未普及区域が
10.7 パーセント(=未普及区域 306 ヘクタール÷事業認可面積 2,864 ヘクタール× 100)程度残って
いることから、こうした区域について、整備手法の検討を踏まえて対策を講じる必要があります。
表 3 茅野市公共下水道の整備状況整理表
6
●下水道未接続家屋の解消
上述した下水道整備済み区域の中には、諸々の事情から下水道への接続ができない家屋が
生じています。公衆衛生の向上や下水道使用料の確保といった面から、下水道への接続対策を
今後も継続する必要があります。
●浸水の防除
平成 18 年 7 月 15 日〜 21 日にかけての記録的な大雨(平成 18 年 7 月豪雨)により、大規
模な災害が発生しています。また、平成 21 年 8 月 8 日の大雨では、人的被害も発生したこと
もあり、降雨による浸水被害の防止策、又は軽減策を講じる必要があります。
●水質保全の向上
諏訪湖に対する更なる水質の向上のため、下水道整備が完了している白樺湖特定環境保全公
共下水道について、現在設定されている放流先河川の水質環境基準値よりも厳しい対策を講じ
る必要があります。
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【今後の事業を展望することで新たに顕在化してきた課題:5 項目】
ここからは、東日本大震災等の発生でも明らかになったように、下水道施設への自然
災害による被害の軽減策といった新たな課題を踏まえ、今後の下水道事業における課題
を示します。
●未認可区域における下水道未普及区域の解消
6 ページで記載した「事業認可区域における下水道未普及区域の解消」は、既に事業認可を
取得している区域を対象とした課題ですが、全体計画に対しては白樺湖特定環境保全公共下水
道区域の接続管きょ整備を含め約 519 ヘクタールの未認可区域が残っています。
今後は、未認可区域への下水道普及について、整備手法の検討を踏まえて対策を講じる必要
があります。
●地震による被害軽減対策
下水道施設が地震により被害を受けると、トイレの使用停止、マンホールからの未処理汚水
の流出、更には、管路破損を起因とする道路陥没等が発生し、これを基点に生じる交通障害に
よる都市機能のマヒ等、公衆衛生の悪化や市民生活に直接的な影響を及ぼすことが懸念され
ます。
(以下の事例を参照)
今後は、地震発生時における下水道施設の被害を軽減するための対策を進めていく必要があ
ります。
※写真左は東日本大震災(出典:浦安市ホームページ)
※写真右は新潟県中越沖地震(出典:民間会社からの提供資料)
(左写真)地震の際に地下水位の高い砂地盤が、振動により液状化現象を生じました。これにより比重の
軽い構造物(マンホール)が浮き上がりました。
(右写真)地震により下水道管が破損し、道路下にあった砂が管内の亀裂から流入し、道路内の空洞化を
誘発することで陥没現象が生じました。
図 4 地震災害時の下水道施設被害事例写真
8
●下水道施設の長寿命化
茅野市の下水道は、当初整備から 35 年を経過しており、管きょの老朽化や劣化が懸念される
時期を迎えています。今後深刻さを増す管路の老朽化や、それらを起因とする道路の陥没事故
に事後対応していたのでは、安定した下水道の経営が見込めません。
今後は、敷設年、管種、劣化状況、道路陥没状況、臭気の発生状況等、管路施設の現状の把握、
維持管理の状況や、管路の維持管理計画等を踏まえた、長寿命化事業計画を策定し、その計画
を基に整備を図る必要があります。
出典:国土交通省ホームページ
図 5 下水道施設の老朽化に伴う道路陥没事例写真
●下水道施設の再構築
茅野市では、下水道事業開始以降、整備済み及びその周辺地域へ新築家屋が形成されてきた
ことにより、全体計画区域を適宜拡大する手法により事業を進捗してきました。このことにより、
先行布設されている流入先の管きょ施設に能力不足が生じ、その都度、分水措置等により対応し
てきました。このことにより、今後の維持管理が困難になる状況が想定されます。
今後は、集水系統の見直しを図る等、必要に応じた幹線バイパスの建設や増設を検討する必
要があります。
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●経営基盤の強化
下水道事業の経営は、受益者負担金※ 1 や下水道使用料※ 2 収入、国や県からの交付金、地方債※ 3、
一般会計繰入金※ 4 により賄われています。費用の運用は「雨水公費、汚水私費」の考え方に
基づき、雨水に係る費用は基本的に公費(税を主な財源とする一般会計からの繰入金)で、汚水
に係る費用は下水道使用者からの下水道使用料で負担することが原則とされています。
また、下水道事業は、独立採算方式により事業を経営する地方公営企業であり、自立し、か
つ将来にわたって継続可能な経営を行うことが求められることから、事業にあたっては長期的な
視点を持ち、経営基盤の確立・強化に努めることが必要です。そのため、以上までに示した下水
道の必要施策費用に対する財務評価を行うことで、今後の経営状況を明らかとする必要があり
ます。
(※経営基盤の強化は、全ての事業運営について求められるものですが、前述のとおり、新たな
課題が生じ、これら新たな課題に関係する施策を行う上での視点も必要になることから、今後の
事業展開における課題として本項に記載しています。)
※1 受益者負担金
下水道が整備され区域の土地の所有者や権利者を受益者として、土地の面積に応じ
て事業費の一部を負担していただくものです。
※2 下水道使用料
下水道管理者が使用料を規定し、排出した汚水量に基づき徴収するもので、汚水処
理費用に充てられます。
※3 地方債
地方公共団体が建設費の資金調達のために借り入れることができる債務で、その償
還は会計年度を越えて行われるもの。
※4 一般会計繰入金
一般会計が負担することとされている経費。地方公営企業である下水道事業に係る
繰出基準については毎年、総務省より内容が見直され通知されます。
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3 茅野市の下水道をとりまく環境
茅野市下水道中期ビジョンは、
「市民プラン」で掲げた茅野市の将来像の実現に向け、下
水道における基本方針や施策の方向性について示すもので、今後の茅野市における下水道
事業を展開する上での基本になります。
一方、国の施策の方向性としては、持続可能な循環型社会を目指した『下水道ビジョン
2100 〜下水道から「循環へのみち」への 100 年の計〜』が平成 17 年 9 月に示され、
さらに、平成 19 年 6 月には、
『下水道ビジョン 2100』に示される基本方針を現実のもの
とするため、下水道政策の基本的な方向と施策ごとの整備目標及び具体的な施策の考え方
を示した『下水道中期ビジョン〜「循環のみち」の実現に向けた 10 年間の取り組み〜』が
とりまとめられています。
また、これを受けて、平成 21 年 4 月には、国土交通省関東地方整備局と管内の 1 都 8
県 4 政令都市により、関東甲信地方の特色を踏まえた『関東甲信地方下水道中期ビジョン』
が策定され、関東甲信地方の下水道の将来像及び取り組むべき施策について示されています。
これらの施策の方向性を踏まえ、茅野市下水道中期ビジョンは、
「市民プラン」に示され
る将来都市像 “人も自然も元気で豊か 躍動する高原都市 “ を実現すべく、茅野市の下水
道が抱える課題やその他の各種関連計画に基づき、下水道が目指すべき方向と取組方針等
を示すものです。
図 6 茅野市下水道中期ビジョンをとりまく環境
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2章
第
基本理念と基本方針
1 基本理念
今回の茅野市下水道中期ビジョンは、茅野市が平成 20 年に策定した「市民プラン」を
茅野市の最上位計画に位置づけ、整合性を図った上で策定します。
「市民プラン」では、
茅野市の将来像を “人も自然も元気で豊か 躍動する高原都市 ” と掲げています。
また、下水道は、これまで重要な都市基盤の一つとして、まちづくりに貢献し、市民の暮
らしを支え、市民とともに歩んできました。現在では、市民の健全で快適な都市生活を営
む上で欠かすことができないライフラインの一つとなっています。
言い換えれば、
「市民の快適な生活は、下水道があってこそ」であり、下水道は、快適な
生活の出発点となる施設としても位置づけられます。
したがって、市民が今後も快適な生活を続けていくためには、良好な生活環境の維持や
公共用水域の水質保全、災害(浸水、地震)等への備え、施設の老朽化への対応等、下水
道による質の高いサービスを提供し続けることが重要です。
以 上のことを踏まえ、茅野市下水道中期ビジョンでは、次のとおり基 本理 念を掲げ、
市民や事業者との連携のもと、安定した経営による持続可能な下水道を目指し、更なる茅
野市の発展に寄与していきます。
【茅野市下水道中期ビジョン 基本理念】
快適で安全な暮らしを支え続ける 下水道
●市民が長く住みたいまちであり続けるために、質の高い下水道サービ
スの提供を目指します。
●次世代が下水道を安心して使い続けられるよう、下水道を守り、育て、
そして引き継いでいきます。
●市民や事業者と連携して、下水道が将来あるべき姿の実現を目指し
ます。
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2 基本方針
前述の基本理念及び下水道が抱える課題を踏まえ、また、
「市民プラン」に掲げるまちづ
くりの 8 つの政策のうち、下水道を含む都市基盤整備に係る政策「快適で安らぎのある高
原都市づくり」の実現に向けて、基本方針を設定します。
この基本方針の設定に当たっては、
「市民プラン」における都市像の実現、また下水道中
期ビジョンの基本理念の実現のために下水道が貢献する役割として、今後の下水道は自然
災害等の突発的な事態へも対応すること、より安定的に経営できること、更には利用者と
供給者が一体となった適正な下水道事業の運用ができることを目指すことを念頭に、
「安全
で安心な暮らしの実現」、
「安定した経営の確保、適正な管理の推進」、
「快適な暮らしの実現」
の 3 つの項目を掲げ、下水道としての施策に取り組んでいくものとします。
また、上記基本方針の取組を行うに当たって、茅野市は諏訪湖の上流域に位置し、か
つ公共下水道の汚水は流域下水道によって処理され、この形態は今後も継続することから、
流域下水道の管理者である長野県との連携維持が不可欠となります。
そのため、下水道が貢献する 3 つのまちづくりと併せて、
「豊かな水環境の保全と再生に
貢献」についても基本方針として掲げるものとし、茅野市下水道中期ビジョンの基本方針
を下記の 4 つと設定します。
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(1)安全で安心な暮らしの実現
下水道は市民の生活はもとより、生命と財産をも守るべき重要な都市施設です。今後
は、浸水対策を進めるとともに、大規模地震時にも下水を流すという機能が停止しないよう、
対策を実施します。
関連する課題:浸水の防除、地震による被害軽減対策
(2)安定した経営の確保、適正な管理の推進
下水道として茅野市のまちづくりに貢献していくためには、下水道を持続的なものとする
必要があり、昨今の厳しい財政状況も踏まえ、限られた予算の中でいかに効率的に事業を
実施していくかがカギとなります。したがって、下水道経営の効率化・健全化を図ると共に、
収入と支出の適正化を図り、経営基盤の強化を実現していきます。加えて、良好な生活環
境や周辺環境の保全を守っていく必要から、下水道を持続的なものとするために、施設の
適正管理を図ります。
関連する課題:下水道施設の長寿命化、下水道施設の再構築、経営基盤の強化
(3)快適な暮らしの実現
茅野市は、早くから下水道整備に取り組み、行政区域内人口に対する下水道人口普及率
は平成 23 年度末で 97 パーセント以上になる等、周辺の水環境のみならず、放流先であ
る河川を含め流域としての水環境の保全に貢献してきました。
今後は、事業認可区域内に残る下水道への未接続家屋の解消や未普及区域への対策を
進めると共に、未認可区域の整備手法の検討を行い、加えて白樺湖特定環境保全公共下
水道の流域下水道接続により諏訪湖の更なる水質良化を目指すべく事業推進を図ります。
関連する課題:水質保全の向上、事業認可区域における下水道未普及区域の解消、
未認可区域における下水道未普及区域の解消、下水道未接続家屋の解消
(4)豊かな水環境の保全と再生に貢献
白樺湖特定環境保全公共下水道の諏訪湖流域下水道接続以降、公共下水道によって市
域の下水道汚水を処理する施設は、高度処理及び汚泥溶融施設を導入している流域下水道
豊田終末処理場に集約されます。茅野市としては法令等に基づいた財政負担を行うことで、
今後の処理施設の適正な整備と維持管理に貢献します。
また、処理場に流れ込む汚水には、各市町村から排除された汚水以外に、その発生原因
が分からない不明水が存在しています。不明水の減少は、処理場の処理費用抑制につなが
ることから、不明水の浸入を抑制するための老朽管きょへの対策を図ります。
関連する課題:水質保全の向上、経営基盤の強化
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3章
第
基本方針に基づく具体的な施策
本章では、最上位計画の「市民プラン」に示される下水道の施策事業を踏まえた上で、
前章で定めた「茅野市下水道中期ビジョン 基本方針」に基づく具体的な施策を示します。
1 茅野市民プランにおける下水道の施策事業
「市民プラン」では、基本計画の第 5 章「快適で安らぎのある高原都市づくり」に
「第 4 節 上・下水道の整備充実 2 公共下水道整備の充実」
「3 白樺湖特定環境保全公共
下水道の諏訪湖流域下水道への接続」の 2 つを下水道に係る細施策事業として規定してい
ます。
また、
「2 公共下水道整備の充実」に係る主要事務事業として、
●管きょの延命化等事業
●接続率向上事業
●蓼科地区下水道整備事業
●下水道整備事業
●経営健全化事業
「3 白樺湖特定環境保全公共下水道の諏訪湖流域下水道への接続」に係る主要事務事業として、
●諏訪湖流域下水道への接続事業
●維持管理事業
●浄化センター跡有効利用事業
の 8 事業を挙げています。
茅野市下水道中期ビジョンでは、
「市民プラン」で掲げた茅野市の将来像の実現のために
下水道事業が果たすべき役割と、その具体策を示している市民プランの主要事務事業を踏
まえ、当該期間内に推進すべき施策を、前章に掲げた茅野市における下水道事業の基本方
針に基づいて示します。
(※次頁以降に記載された事業費は、現時点で想定した概算数値です。各事業の実施年度や事業費は、庁議等
を経て決定するものです)
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2 基本方針と具体的な施策の関連
図 7 基本方針と具体的な施策の関連を示す図
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3 具体的な施策
(1)安全で安心な暮らしの実現に向けて
施策 1
雨水排水施設の整備推進
▶「市民プラン」の主要事務事業 ●下水道整備事業
▶現状と課題
●近年のゲリラ豪雨によるものと考えられる局所的な浸水被害が見受けられ、今後においても
浸水被害が想定される区域については、排水施設の整備を段階的に推進し、雨水排水能力
の増強を中心に、下水道計画降雨:時間降雨強度= 48.3mm/hr(10 年確率)を対象とし
て浸水被害の軽減を図る必要があります。
●雨水排水施設は、長期の整備期間と膨大な費用を要します。
▶施策目標と施策見込み量
●浸水被害が想定される地域について、排水施設の整備を段階的に推進し、雨水排水能力の
増強を中心に、下水道計画降雨を対象とした浸水被害の軽減を図ります。
※ 区分欄で記載している
「補助事業」とは、国等の補助
(交付)金の対象となる事業です。
※「単独事業」とは、市独自の財源で事業を進める事業です。
▶下水道中期ビジョンにおける施策目標と施策見込み量
●平成 34 年度末までに浸水常襲地区の対策を完了し、下水道計画降雨を対象とする浸水被
害軽減対策について、6 割程度の実施率を目指します。
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施策 2
地震対策事業の推進
▶「市民プラン」の主要事務事業 ●管きょの延命化等事業
▶現状と課題 ● 長野県による県下の地震発生状況の解析によると、茅野市は、震度が 7 相当の時、PL 値
は 5 より大きく15 以下(PL 値とは、液状化危険度を表す指標※)となり、下水道施設へ
の被害が想定されます。
● 茅野市では、管きょ施設(補完施設含む)について耐震診断を行い、必要な対策計画を
作成する必要があります。
● 事業化については、新規整備事業や改築・更新事業と併せて耐震化機能を付加することや、
下水道総合地震対策事業等を実施することで、効率的な整備を実施する必要があります。
▶施策目標と施策見込み量 ●主要な管きょを構成する幹線及び準幹線相当を想定し、管径 300mm 以上の管路に対し
地震対策を図ります。
●新規整備事業や改築・更新事業(長寿命化事業)と連携して事業を推進します。
▶下水道中期ビジョンにおける施策目標と施策見込み量 ●平成 34 年度末までに、管径 800mm 以上の管きょ施設に対して地震対策完了を目指します。
※出典は、大規模地震による下水道被害想定検討委員会から報告された
「管路施設の被害予測方法について」
であり、15<PL値は液状化の可能性が高く、5<PL値≦15は液状化の可能性有り、0<PL値≦5は液状化
の可能性が低いと示されている。
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(2)安定した経営の確保、適正な管理の推進に向けて
施策 3
下水道施設の長寿命化対策
▶「市民プラン」の主要事務事業 ●管きょの延命化等事業
▶現状と課題 ●現在では、管きょの布設延長が 500km を超え、当初に整備した管きょは、布設から 35 年
を経過しています。今後は老朽化を要因とする様々な問題が生じることが予想されます。
●今後は下水道施設の改築・更新について、適切な更新時期を設定することで、ライフサイク
ルコストの最小化を目指す長寿命化を図る必要があります。
▶施策目標と施策見込み量 ●下水道台帳の電子化された施設情報を活用し、長寿命化を図るとともに、適切な更新時期
を設定します。
●下水道施設の長寿命化や計画的な改築・更新計画により、ライフサイクルコストの最小化を
図ります。
▶下水道中期ビジョンにおける施策目標と施策見込み量 ●平成 34 年度末までには、特に老朽化リスクの高い路線について対策の完了を目標とし、
全ての現存施設を対象とする長寿命化事業の達成率としては、3 割程度を目指します。
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施策 4
下水道施設の健全化を目指した再構築対策
▶「市民プラン」の主要事務事業 ●下水道整備事業
▶現状と課題 ●整備済み及びその周辺地域において、新築家屋の形成が徐々に進行したため、下流の既設
管きょ施設に当初予定していた水量以上の汚水を見込む必要が生じています。
●能力不足解消のために、分水措置等により対応してきましたが、今後の維持管理については
困難になる状況が生じる可能性があります。
▶施策目標と施策見込み量 ●既設管きょ施設の流下能力を把握し、必要に応じて適正な管きょ施設に改めます。
●改築・更新事業(長寿命化事業)と連携して事業を推進します。
▶下水道中期ビジョンにおける施策目標と施策見込み量 ●平成 34 年度末までに、既設管きょ施設の流下能力不足延長の 5 割程度について健全化す
ることを目指します。
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施策 5
経営基盤の強化対策
▶「市民プラン」の主要事務事業 ●経営健全化事業
▶現状と課題 ●平成 19 年度に、それまでの官庁会計による方式(特別会計方式)から、地方公営企業法を
適用することにより、期間に応じた損益計算が行える公営企業会計方式に変更しました。
●一般会計からの繰入金については、一般会計繰出基準まで抑制するため徐々に削減する
必要があり、そのためにも汚水処理原価を下回らない適正な使用料収入の算定を行う必要
があります。
●健全な経営確保のため、今後の施策投資について財政シミュレーションを行い、適正な
投資計画(支出の削減)と経営状況の明確化が必要です。
▶施策目標 ●財政シミュレーションにより、今後の収入と支出について適正化を図るとともに、今後の
経営状況の明確化を図ります。
▶下水道中期ビジョンにおける施策目標 ●平成 20 年度実績を基準として、一般会計繰入金を平成 27 年度で 9 パーセント削減し、
平成 34 年度で 42 パーセント削減します。
●長期的な視点としては、一般会計繰入金は一般会計繰出基準以下を目指し、少なくとも下水
道中期ビジョン前期内において経常損失を生じさせないことを目指します。
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(3)快適な暮らしの実現に向けて
施策 6
白樺湖特定環境保全公共下水道の流域下水道接続
▶「市民プラン」の主要事務事業 ●諏訪湖流域下水道への接続事業
●浄化センター跡有効利用事業
▶現状と課題 ●白樺湖特定環境保全公共下水道の放流先河川において、水質環境基準の順守が困難な状況
にあります。
▶施策目標と施策見込み量 ●白樺湖特定環境保全公共下水道を流域関連公共下水道へ編入することで、放流先河川の水
質向上及び諏訪湖の更なる水質良化を目指します。
▶下水道中期ビジョンにおける施策目標と施策見込み量 ●平成 27 年度末までに白樺湖特定環境保全公共下水道を流域下水道へ接続します。そのた
め施策目標及び見込み量は、上記と同じ値となります。
22
施策 7
未普及区域の整備推進
▶「市民プラン」の主要事務事業 ●蓼科地区下水道整備事業
●下水道整備事業
▶現状と課題 ●下水道人口普及率は平成 23 年度末で 96.5 パーセントであり、全国値(75.8 パーセント)
及び長野県値(80.2 パーセント)を上回っています。しかしながら、未普及家屋が点在して
いることも実態であり、今後は未普及区域の解消を図る必要があります。
●今後の下水道事業は、合併処理浄化槽(個別排水処理施設事業等)との連携を視野に入れ、
経営状況を勘案しつつ、整備を図る必要があります。
表 4 茅野市公共下水道の整備状況整理表
▶施策目標と施策見込み量 ●下水道未普及区域の整備を推進します。
▶下水道中期ビジョンにおける施策目標と施策見込み量 ●未普及区域のうち、流域関連の一般区域における既認可対象の区域約 176 ヘクタールにつ
いて、
「市民プラン」と整合を図り、前期末に整備完了を目指します。
●蓼科地区を主とする流域関連の未認可対象区域及び白樺湖特環の未普及区域については、
前期末までを目途として、今後の整備方針について、下水道や浄化槽等、汚水処理に関す
る適正手法の決定を目指し、後期から適正手法に基づいて必要な汚水処理を図ります。
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施策 8
未接続家屋の解消対策
▶「市民プラン」の主要事務事業 ● 接続率向上事業
▶現状と課題 ●下水道管きょの整備済み区域において、諸々の事情から下水道への接続ができない家屋が
存在しています。今後も継続して接続率の向上を図る必要があります。
▶施策目標 ●新たな措置(補助制度等)の検討を図りながら、並行して、個別訪問等により未接続の解消
について市民のご理解を求めて参ります。
▶下水道中期ビジョンにおける施策目標 ●前期末である平成 29 年度末までに、流域関連の一般区域における事業認可区域内の接続
率 100 パーセントを目指します。
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(4)豊かな水環境の保全と再生の貢献に向けて
施策 9
長野県諏訪湖流域下水道との連携協力
▶「市民プラン」の主要事務事業 ●経営健全化事業
●維持管理事業
▶現状と課題 ● 長野県諏訪湖流域下水道豊田終末処理場で稼動している高度処理や汚泥溶融施設の維持管
理を良好に行うために、流域下水道との連携協力が必要です。
● 諏訪湖流域下水道豊田終末処理場に流れ込む不明水の処理にも費用が発生しているため、
不明水を減らす必要があります。
▶施策目標 ● 事業区分により、直接的な関与ができない処理施設には、水環境の保全や再生に深く関与
している高度処理および汚泥溶融施設が導入されており、茅野市としても適正な財政負担
と費用抑制への協力により、今後の適切な維持管理を行うための連携を図ります。
● 老朽化による管きょの損傷等による不明水流入抑制については、施策 3 の長寿命化対策に
より対応を図ります。
▶下水道中期ビジョンにおける施策目標と施策見込み量 ●維持管理負担金による流域下水道への協力もさることながら、老朽化による管きょの損傷等
による不明水流入を抑制する必要から、老朽化リスクの高い路線について前期中に調査を
完了します。
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施策 10
見えない下水道の「見える化」を目指す対策
▶現状と課題 下水道は、道路下に埋設されていてその姿が見えないため、その役割も認識しにくい状況に
あります。また、下水道事業は建設に多大な費用を要し、債務は次世代への負担となって引き
継がれていきます。このように、見えにくいものの欠かすことのできないライフラインの一つ
となっている下水道の「見える化」を目指すために、利用者である市民に下水道の運営の仕組
みを充分に理解いただく必要があります。
▶施策目標 ●ホームページや広報等の充実を図り、市民の皆様への情報提供をさらに推進します。
●下水道への理解を深めていただくための広報・イベント等を実施します。
▶下水道中期ビジョンにおける施策目標 ●生活環境における下水道の有益性について、市民の皆様の理解が深まるよう情報提供や PR
を実施します。
●市民の皆様や事業者の皆様と連携して、下水道が将来あるべき姿の実現を目指します。
●諏訪湖浄化促進イベント『よみがえれ諏訪湖ふれあいまつり』等、市民の皆様が、直接下水
道にふれあう企画を推進します。
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4章
第
施策に対する事業推進
1 整備スケジュール
具体的施策別の概算事業費に基づいて、財政シミュレーションを行った上で、整備スケジ
ュールを設定します。なお、一般会計繰入金の削減目標は維持しつつ、長期的な視点から
も一般会計繰入金は一般会計繰出基準以下を目指し、少なくとも下水道中期ビジョンの前
期内において、経常収支(下水道収益から下水道費用を差し引いた額)をプラスに保つこと
を目指します。
図 8 経常収支の推移図
シミュレーションの結果では図のとおり、下水道中期ビジョンの前期中、経常収支はプラ
スの値が確保される見通しです。しかし、後期期間である平成 30 年度以降になるとマイナ
スに転じ、経常損失を生じることを示しています。これは、事業量を増加させると、後年の
減価償却費が比例して増加することが主な要因です。
そのため、下水道中期ビジョンの前期中に、事業量の削減・選択の検討や経営合理化
を目指し、下水道費用の縮減対策を講じる必要があります。また、費用縮減と並行して、
下水道収益の大部分を占める下水道使用料の見直し検討等も行います。
なお、下水道中期ビジョンにおける施策別の整備スケジュールは、図9のとおりです。
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図9 施策別の整備スケジュール
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2 事業推進計画
事業化については、施策目標に応じた事業計画を策定(Plan)した後、事業計画に沿っ
て事業を実施(Do)し、実施後の状況について、定期的な施策目標の達成度を確認(Check)
し、実施が計画に沿っていない部分を調べて処置(Action)をします。その後、処置後の
対応を含め新たな事業計画として改訂を施すことで、より施策目標に近づけるように事業の
進捗を図ります。その際は、以下に示すスパイラルアップを意識した PDCA サイクルを運用
します。
なお、茅野市下水道ビジョンは、平成 34 年度を目標として計画期間を設けますが、
今後の社会情勢の変化によっては目標の修正が必要となる可能性があるため、この中期ビ
ジョンで設定した前期期間終了を目処に、状況に応じた見直しを行うものとします。
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