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2.52MB - 新エネルギー・産業技術総合開発機構

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2.52MB - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
バイオテクノロジー・医療技術開発プロジェクトの展開
FY2005
(H17)
FY2006
(H18)
FY2007
(H19)
トランスレーショ
ナル・リサーチ
FY2008
(H20)
FY2009
(H21)
FY2010
(H22)
FY2011
(H23)
FY2012
(H24)
基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発
化合物等を活用した生物システム制御基盤技術開発
研究用モデル細胞の創製技術開発
創薬加速化支援
技術開発
iPS細胞等幹細胞産業応用促進基盤技術開発
新機能抗体創製技術開発
健康バイオ
創薬加速に向けたタンパク質構造解析基盤技術開発
個別化医療実現に
向けた診断ツール開発
染色体解析技術開発
細胞アレイ等による遺伝子機能の解析技術開発
近い将来の
コア技術育成
機能性RNAプロジェクト
糖鎖機能活用技術開発
高精度眼底イメージング機器研究開発プロジェクト
超早期
診断技術開発
悪性腫瘍等治療支援分子イメージング機器研究開発プロジェクト
深部治療に対応した
次世代DDS型治療
システムの研究開発(F/S)
医療機器技術
新規悪性腫瘍分子プローブの基盤技術開発
●
低侵襲治療機器
開発
再生医療の早期実用化を目指した
深部治療に対応した次世代DDS型治療システムの研究開発
インテリジェント手術機器研究開発プロジェクト
再生評価技術開発(F/S)
再生医療の早期実用化を目指した再生評価技術開発
●
再生医療支援戦略
心筋再生治療研究開発
三次元複合臓器構造体研究開発
微生物機能を活用した高度製造基盤技術開発
微生物機能を活用
した環境調和型
グリーンバイオ 製造基盤技術開発
微生物群のデザイン化による高効率型環境バイオ処理技術開発
技術
(H14∼)植物の物質生産プロセス制御基盤技術開発
■バイオテクノロジー・医療技術開発の位置づけ
健康で活力に満ちた安心できる生活を実現するためには、健康・医療基盤技術、生物機能を活用する技術の開
発に取り組む必要があります。バイオテクノロジー・医療技術分野では、創薬プロセスの効率化を目標としたツー
ルの開発、およびそれらのツールにより得られた知見を基に、画期的な新薬の創製や個々人に合った投薬の実現
に資する技術開発を実施すると共に、医療現場のニーズにマッチした高度医療機器の開発に取り組みます。また、
工業プロセスや環境関連問題へのバイオテクノロジーの利用を促進することにより、環境に調和した産業システム
の創造を目指しています。
■平成21年度の取り組み
ポストゲノム時代の到来に際し、ゲノム創薬をさらに加速するための技術開発を強化します。併せて、個別化医
療の実現に向けた新たな診断ツールを開発するとともに、基礎研究の成果を医療現場に生かしていくための技術開
発を行います。また、医療現場で切望される、疾患の早期診断や低侵襲治療のための高度医療機器開発、再生医
療の実用化に向けた安全性や有効性の評価技術開発を推進します。さらに、微生物や植物機能を活用したモノづ
くり技術の開発や廃棄物処理の効率化を推進します。
64
FY2013
(H25)
■健康バイオ
1.基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発
事業期間:平成19年度~平成23年度、平成21年度予算:33.0億円
本プロジェクトでは、急速に発展している多様なバイオ技術を融合し、それらを医療現場へ円滑に橋
渡しすることにより、医療技術イノベーションの創出・加速を行います。総合科学技術会議のもと文部
科学省および厚生労働省と連携して橋渡し研究の強化に一体的に取り組みます。
基盤研究成果の臨床応用への推進により、新たな医薬・治療が期待される次の4分野において研究開
発を行います。それらは、
(1)従来にない効果が期待される創薬技術に関する研究開発、(2)がん、認
知症等の診断法に関する研究開発、(3)再生、細胞医療等、従来の医療技術では解決できない疾患治
療を可能とする研究開発、
(4)新規医療機器装置の研究開発です。またこれらの技術の臨床応用を促
進するため、有効性・安全性等の評価技術に関する研究開発も実施いたします。新規医療技術の治療
効果等の確認に目途をつけ、委託事業終了後2年程度で実用化・普及を進めるための臨床試験を開始で
きるレベルを本事業の達成目標として、実用化を推進いたします。
2.化合物等を活用した生物システム制御基盤技術開発
事業期間:平成18年度〜平成22年度、平成21年度予算:15.2億円
PL :夏目 徹(独立行政法人 産業技術総合研究所 バイオメディシナル情報
バイオテクノロジー・医療技術分野
研究センター センター長 )
タンパク質はネットワークを形成して働いています。疾患関連のタンパク質ネットワークを知ること
により、がんや生活習慣病などの多くの疾患の発症メカニズムを解明し、新しい創薬ターゲットを発見
することができます。本プロジェクトでは、我が国の強みとする完全長 cDNA リソースや、世界最高
レベルのタンパク質の相互作用解析技術等を最大限に活用し、ターゲットとなるタンパク質相互の解析
等により創薬ターゲット候補の絞り込みを行います。さらに、スクリーニングソースとしては欧米型の
巨大合成化合物ライブラリーを構築するのではなく、日本の強みである天然物を中心に据え、産官学の
総力を結集して構築した世界最大規模の天然化合物ライブラリーを最大限活用します。これにより、タ
ンパク質ネットワークを制御する新規骨格化合物等( 医薬品候補 )を効率良く取得する基盤技術を開発
します。得られた生理活性物質は、細胞あるいは個体レベルでの形態変化、細胞死、遺伝子発現パター
ンなどの生物活性などを用いて薬効や毒性評価を行うなど詳細を検討し、医薬開発のプラットフォーム
として提供します。これらの成果は、製薬企業等との強力な連携体制をもって直ちに創薬研究開発に応
用し、医薬開発の加速化につなげます。
65
■化合物等を活用した生物システム制御基盤技術開発
超高感度・高スループット
ナノLC-MS/MSシステム
ヒット天然化合物からコンビ合成
ヒト完全長cDNAクローン
約6万クローン
(世界最多)
大規模タンパク質相互
作用ネットワーク解析
薬物候補化合物
タンパク質ネットワーク解析と
次世代天然物化学
からの創薬の加速
薬効・毒性評価
疾患関連タンパク質ネットワーク
コンピュータ予測・
バーチャルスクリーニング
疾患発症メカニズムの解明
創薬ターゲットの発見
モデル生物表現型
スクリーニング
リズム障害マウス
天然化合物のスクリーニング
ハイスループット・スクリーニング
蛍光イメージング技術
産官学、日本の総力を結集した世界最大
天然化合物ライブラリー
疾患ショウジョウバエ
遺伝子破壊酵母
バイオテクノロジー・医療技術分野
3.研究用モデル細胞の創製技術開発
事業期間:平成17年度〜平成21年度、平成21年度予算: 5.0億円
PL :中辻 憲夫( 京都大学 再生医科学研究所 教授 )
ゲノム情報を利用した創薬プロセスの導入によって、新薬の開発プロセスを効率化し、安価な医薬品
を迅速に上市することが可能になると期待されていました。しかし、実際には投入する研究開発費が年々
増加しているにもかかわらず、製品化される新薬の数はむしろ減少しており、ゲノム創薬におけるギャッ
プが生じています。このため、新薬開発の効率化と上市確率の向上につながる創薬支援技術の開発が求
められています。
遺伝子機能の解明や新薬の安全性や効果を評価する際には、従来、マウスやウサギなどの動物や長期
間にわたって培養されている株化されたヒト細胞を利用して評価を行っています。しかし、これらの細
胞とヒト生体内の細胞は異なった性質を持っているため、実際に生体内で起こる反応を高い精度で予測
することは困難です。このため、臨床試験において安全性や薬効の点で開発を断念せざるを得ないケー
スが多々あり、実際の生体内の細胞に近い状態の細胞を用いた評価系の確立が望まれております。
本プロジェクトでは、無限に増殖できるとともに、あらゆる細胞組織に分化できる多能性を有するヒ
トES細胞(ヒト胚性幹細胞)由来の、均質な遺伝的背景を有したモデル細胞を樹立し利用することによっ
て、前臨床試験の段階で臨床試験に進めるかどうかを、より早期に判断することを可能とする有用な研
究用モデル細胞の構築を行います。
さらに、モデル細胞と各種デバイス技術とを融合させることにより薬物の効果・毒性・副作用等の定
量的な評価を可能とする創薬支援システムの構築を目指します。
66
■研究用モデル細胞の創製技術開発
■研究用モデル細胞の創製技術開発
探索研究
ヒトES細胞由来の
研究用モデル細胞
0.05%
探索研究での利用
前臨床試験
0.03%
・ 薬効薬理試験
・ 一般薬理試験
・ 薬物動態研究
・ 一般毒性研究
・ 特殊研究
有効性や安全性の試験
3∼5年
約25億円
の
動物
ヒトと 問題
の
種差
臨床試験
0.009%
・ 第一相試験
・ 第二相試験
・ 第三相試験
承認取得
・ in vitro試験
・ モデル動物試験
+
前臨床試験
での利用
人での有効性や安全性の確認
安全な医薬品を、安く、いち早く市場に
日本製薬工業協会
(国内企業18社の例:1995∼1999年実績)
をベースに試算
4.iPS 細胞等幹細胞産業応用促進基盤技術開発
事業期間:平成20年度~平成25年度、平成21年度予算: 5.0億円
PL :鍋島 陽一(京都大学大学院医学研究科 病理系腫瘍生物学講座 教授)
バイオテクノロジー・医療技術分野
iPS 細胞( 人工多能性幹細胞 )は、採取に差し支えのない皮膚などの組織から樹立できる、ES 細胞に
比べて倫理的な障壁が少ない、患者自身の組織から樹立することが可能であることなどから、免疫拒絶
を回避することが可能となり、再生医療への応用や病気の原因の解明、有効で安全な薬の開発といった
様々な分野で利用できる新たな細胞源として期待が高まっています。従って、世界各国で iPS 細胞に
関する研究が急速な勢いで進められている状況にあります。このプロジェクトでは、人為的操作の影響
を残さない iPS 細胞を効率よく作製するとともに、ES 細胞や組織幹細胞等様々な細胞と比較すること
によって均質な性質を持った細胞を選別・評価する技術および安定供給技術の開発を実施いたします。
また、性質と品質のそろった iPS 細胞からヒト心筋細胞を効率良く分化させる技術開発を進め、この
心筋細胞をマイクロチップ上に構成的に配置することで、モデル動物よりも高い確度で、薬( 開発候補
化合物を含む)の潜在的なヒト致死性不整脈の発生を予測する全く新しい創薬スクリーニング(毒性評価)
システムの確立を目指します。
67
■ iPS 細胞等幹細胞産業応用促進基盤技術開発
①安全かつ効率的なiPS細胞作製の
ための基盤技術の開発
②iPS細胞等幹細胞の選別・評価・
製造技術等の開発
iPS細胞を誘導する新規因子探索
約6万クローン
(世界最多)
ヒト完全長cDNAクローン
線維芽細胞
天然化合物ライブラリー
新規誘導法の開発
iPS細胞
③iPS細胞等幹細胞を用いた創薬
スクリーニングシステムの開発
iPS細胞から分化
させた心筋細胞
セミインタクト細胞による新規誘導法
センダイウイルスを用いた新規誘導法
心筋細胞を用いた創薬スクリーニングシステム
バイオテクノロジー・医療技術分野
5.新機能抗体創製技術開発
事業期間:平成18年度〜平成22年度、平成21年度予算: 9.0億円
PL :児玉 龍彦( 東京大学 先端科学技術研究センター 教授 )
近年、抗体はポストゲノム研究にとって
重要な分子です。また創薬や診断等への応
用により、抗体の幅広い産業利用が期待さ
■新機能抗体の創製基盤の確立
【抗体創製技術】
れています。しかし、産業上有用と考えられ
膜タンパク質
は発現が困難
るタンパク質やその複合体を特異的に認識す
る抗体を創製する際、抗原の産生が困難な
ことや、抗体の創製が免疫寛容等により困
難であることが技術課題となっており、技
術革新が必要とされます。また、抗体の製
膜タンパク質を
発現したウイルス
造コストの低減を図るべく、抗体の分離・精
製技術について高純度精製化、高機能化、
ウイルスに分子標
的のタンパク複合
体を効率よく発現
遺伝子改変マウス
による抗体作成
遺伝子改変マウス
低コスト化の技術革新が必要です。
・ エピトープ選択
・ 高発現技術
・ 機能検出技術
・ 免疫寛容系制御
技術開発
・ 抗原提示増強技術
・ 遺伝子改変マウス
の開発
天然のタンパク複合体を認識する
抗体作成技術の確立
本プロジェクトでは、創薬等のポストゲノ
ム研究の産業化において重要と考えられるタ
ンパク質やその複合体等について、タンパク
質を抗原として特異性の高い抗体を系統的
に創製するための抗原産生技術、抗原提示
増強や免疫寛容回避等の基盤技術の開発お
よび抗体の分離・精製を効率化するための技
【抗体製造技術基盤】
リガンド
結合
担体
抗体の分離・精製
・ クロマト担体開発
・ リガンドー担体
結合技術
・ リガンドデザイン
新機能抗体の創製基盤の確立
術を開発することを目的としています。
それらの成果は、抗体を活用した研究や創薬、診断を加速し、ポストゲノム研究の産業化を促進して
いくことになります。
68
6.創薬加速に向けたタンパク質構造解析基盤技術開発
事業期間:平成20年度〜平成23年度、平成21年度予算:10.0億円
PL :藤吉 好則( 京都大学大学院 理学研究科 教授 )
近年、製薬企業の研究開発費は増大の一途ですが、承認される薬剤の数は増えていません。また、研
究開発費の増大分は主として臨床開発費に充てられ、探索研究に回せるリソースが相対的に減少してい
ます。このため、欧米における創薬研究では、タンパク質立体構造に基づく薬剤の開発により、創薬研
究の効率化への取り組みが進みつつあります。したがって、今後の我が国における医薬品産業の国際競
争力強化に向け、タンパク質の立体構造解析技術や、計算科学による創薬候補化合物探索技術等の基
盤技術の構築が重要となっています。
特に市販薬剤のターゲットの約50%を占めている膜タンパク質は、生命現象の解明や創薬開発に
おいて重要な標的タンパク質です。また、膜タンパク質は細胞膜上において、複合体形成や構造変化等
により機能を発現していることから、細胞表層における膜タンパク質およびその複合体の立体構造解析
技術や、膜タンパク質とリガンドとの相互作用解析技術、その構造情報に基づいた計算科学的解析技術
を構築し、創薬ヒット候補化合物を効率よく絞り込むための基盤技術を開発することで、「 タンパク質
立体構造に指南された創薬戦略 」を実現し、創薬研究を効率化することが重要です。
本プロジェクトは、ポストゲノム研究の産業利用が期待される「 ゲノム創薬 」を加速するため、我が
国の強みである世界最高レベルの膜タンパク質構造解析技術、タンパク質間相互作用解析技術、高度
な計算科学技術等の研究ポテンシャルを最大限活用し、膜タンパク質およびその複合体の細胞表層にお
バイオテクノロジー・医療技術分野
ける立体構造解析、相互作用解析、計算科学を用いた創薬候補化合物の効率的な探索と更に実用性の
高いリード化合物への展開等の創薬基盤技術を開発し、我が国バイオ産業の競争力強化・新産業の創
出を図り、国際的優位性を確保することを目的としています。
創薬上重要な膜タンパク質およびその複合体の
リアルな構造情報を取得可能とする先進的基盤技術を開発
極低温電子顕微鏡
核磁気共鳴法の方法論開拓
トリプルヘリックス
コラーゲン
DDR2のDSドメイン
水チャネルAQP4の構造
膜表層タンパク質の相互作用解析 EMBO J (2007)
革新的構造解析技術
我が国オリジナルかつ世界
最高水準の極低温電子顕微鏡
を用い、電子線結晶学とトモグ
ラフィー技術等を開発すること
により、細胞表層で機能してい
るタンパク質の3次元構造や
機能を解析するための基盤技
術を開発します。
産業界のニーズを取り入れ
産業上、生物学的に重要な
標的タンパク質に対し互い
に連携研究開発を推進
革新的タンパク質
相互作用部位の解析技術
核磁気共鳴装置(NMR)により、
細胞表層の膜タンパク質およびそ
の複合体が、
リガンド分子と相互作
用する部位について、その構造情
報を取得するための基盤技術を開
発します。
計算科学
シミュレーション技術
膜タンパク質およびその複合体の構造情報を基にした、高精度in silico
スクリーニングや動的、安定性モデリング技術を開発します。
69
7.染色体解析技術開発
事業期間:平成18年度〜平成22年度、平成21年度予算: 3.4億円
PL :平野 隆(独立行政法人 産業技術総合研究所 産学官連携業務推進部門
産学官連携コーディネーター)
:稲澤 譲治( 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 教授 )
■技術融合バイオ診断技術開発
近年のゲノム解析技術の進展により、
数十万から数百万塩基対に及ぶゲノム染
■技術融合バイオ診断技術開発
色体上の大規模な異常( 増幅、欠失等 )
微量生体サンプル
(血液、組織)
が存在し、がんや遺伝性疾患と密接に関
係していることが解明され始め、診断分
血液サンプル
野のみならず治療への応用に対する期待
前処理
が高まっています。
本プロジェクトでは、こうした染色体
前処理の
効率化・
迅速化
蛍光物質
異常を高感度、高精度かつ迅速、安価で
チップによる遺伝子増幅・
欠失等の染色体構造変化
や遺伝子多型、タンパク
質の検出
ゲノム全領域にわたり検出するゲノムア
レイや解析基盤技術および全自動解析シ
蛍光物質
による高感度化
チップの高密度化/
多様なサンプルの高速解析
ステムの開発を行います。さらに、臨床
情報を有する臨床サンプルを解析するこ
解析精度の向上
高感度化と再現性
確保
とにより、ゲノムアレイを用いた染色体
バイオテクノロジー・医療技術分野
異常解析技術の有用性の検証を行い、臨
データ処理
床現場で活用できるバイオ診断機器およ
びその基盤を開発することを目的として
個人の遺伝情報と疾患の関係を解析
する基盤となる解析ツールの開発
います。
8.細胞アレイ等による遺伝子機能の解析技術開発
事業期間:平成17年度〜平成21年度、平成21年度予算:  2.7億円
PL :杉山 雄一( 東京大学大学院 薬学系研究科 教授 )
創薬プロセスを効率的に行うためには、細胞の情報伝達のネットワーク構造を解析して、整理・統合
する必要があります。そのために、細胞に刺激を与えた結果として得られた細胞応答データの解析ツー
ルの早期開発が期待されています。
本プロジェクトでは、多数の細胞に同時に異なる遺伝子を高効率で導入することにより、複数の遺伝
子発現等について細胞の時系列計測( モニタリング )を行います。得られた種々の細胞応答データから
遺伝子ネットワークを解析する細胞アレイ技術を確立し、疾患関連遺伝子等、特定の創薬ターゲット
の同定に有用な汎用性の高い解析ツールを開発します。
■細胞アレイ等による遺伝子機能の解析技術開発
■細胞アレイ等による遺伝子機能の解析技術開発
モニタリング技術
創薬ターゲット同定技術
細胞
低分子
化合物等
遺伝子発現
レポーター
<細胞アレイ>
・ 生きた細胞で連続測定
・ 遺伝子等を高効率に細胞に
導入
70
パスウェイ解析
・ 遺伝子発現を長時間リアルタイムモニタリングを
可能に
・ 数千遺伝子の相関関係を解析可能に
ゲノム創薬、
再生医療、
テーラーメイド医療
などの実現に寄与
9.機能性 RNA プロジェクト
事業期間:平成18年度〜平成21年度、平成21年度予算: 8.0億円
PL :渡辺 公綱(独立行政法人 産業技術総合研究所 バイオメディシナル情報
研究センター 研究技術統括 )
近年の研究により、我々哺乳類を含む高等生物の細胞中には、従来のタンパク質をコードする RNA
とは異なり、タンパク質をコードしていないにもかかわらず転写される non-coding RNA(ncRNA:
非コード RNA)が多数存在することが明らかになりました。これらは、機能性 RNA として、発生や細
胞分化の過程において重要な役割を果たしており、がんや糖尿病などの疾患の発生にも深く関わってい
るものと考えられています。
本プロジェクトでは、バイオインフォマティクスの活用による機能性 RNA を推定する技術の開発、
機能性 RNA 解析のための支援技術・ツールの開発、および機能性 RNA の機能を解析することにより、
本研究分野における我が国の優位性の確立を目指します。また、本プロジェクトにおける成果を素早く
特許化することにより、将来的な医療・診断分野における新産業の創出に貢献します。
■機能性RNAの機能解析
■機能性 RNA の機能解析
cDNAライブラリー
ゲノムデータ
情報技術を活用した機能性RNAの推定
バイオテクノロジー・医療技術分野
機 能 性 RNA の 機 能 解 析
siRNAやマイクロアレイの活用
新 規 DNA
翻訳調節
分化誘導
発現調節
再生医療
RNA医薬
■全体主義のセントラルドグマ
■オミクス (omics) 研究とセントラルドグマ
ゲノム
DNA
DNA
イントロン
機能性RNA
mRNA前駆体
tRNA、rRNA
mRNA、snRNA
エキソン
RNA
RNA修飾
スプライシング
RNA修飾
sncRNA、tmRNA
etc.
エディティング
スプライシング
(プロセッシング)
mRNA
トランスクリプトオーム
リボヌクレオーム
プロテオーム
Protein
タンパク質
71
10.糖鎖機能活用技術開発
事業期間:平成18年度〜平成22年度、平成21年度予算: 9.5億円
PL :成松 久(独立行政法人 産業技術総合研究所 糖鎖医工学研究センター
センター長 )
:畑中 研一( 東京大学 生産技術研究所 教授 )
糖鎖は、タンパク質を修飾し生体内で様々な機能発現の要因になっていることが判明しつつある重要
な生体分子です。本研究開発では、我が国がこれまでに糖鎖工学分野で優位に獲得した技術を活用し、
糖鎖の重要な機能解明を推進することにより産業利用に役立てるための技術開発を行います。
具体的には、生体サンプルから、種々の疾患マーカーなどになり得る極微量の特異的糖鎖を精製・特
定し、その機能を分子レベルで効率的に解明するための基盤技術を開発します。さらに、機能が解明さ
れ重要と判断された分子構造を選択的に認識させるために、特異的糖鎖認識プローブの製法等を開発
します。このようにして、疾患の診断技術の向上等を実現し、創薬や新規治療法開発に資する技術を開
発します。一方、ヒト型糖鎖の新たな大量合成法を開発し、機能解明を行いながら産業上有用な新規
糖鎖材料を開発します。
■糖鎖機能活用技術開発
■糖鎖機能活用技術開発
日本の強みを最大限活用
創薬へ応用
疾病の鍵を握る糖鎖を世界で一番早く見つけ出し、診断・
バイオテクノロジー・医療技術分野
血清糖鎖微量分析
微量分離技術とレクチン基
盤技術を駆使して機能糖鎖
病態サンプル
世界最高性能の統合構造解析
システム(レクチン、MS、DB、
を強拡大
特異的糖鎖の
抽出・
選別・
濃縮
アルゴリズム)により糖鎖の僅
網羅的な糖鎖遺伝子により、
かな変化を検出
遺伝子改変などのハンドリ
糖鎖構造解析
ングが可能に
糖鎖機能検証
質量分析による極微量解析
糖鎖認識
プローブ作製
抗体による
レクチン・
簡易診断
マーカー
ヒト型糖鎖の合成
(大量、簡易少量)
KOマウス等に
よる抗体作成
糖鎖材料
がん悪性度診断、感染症、再生医療など診断や創薬分野で
社会に還元し、更なる日本の優位性を確保
■医療機器技術
1.高精度眼底イメージング機器研究開発プロジェクト
事業期間:平成17年度〜平成21年度、平成21年度予算: 1.4億円
PL :吉村 長久( 京都大学大学院 医学研究科 教授 )
近年、高齢化・生活習慣の変化に伴い、生活習慣病( 心臓病、糖尿病、脳卒中 )が増加しており、死
亡原因において高い比率を占め、また死に至らなくとも長期にわたり患者の QOL を低下させています。
これらの生活習慣病による最大の問題は合併症であり、共通して初期の段階から細胞レベルでの形態や
72
代謝の異常を起こすことから、初期に人体の微細な変化を発見することで、超早期発見・予防が可能と
なります。
本事業では、高い国際競争力を有する我が国の光学技術を利用し、全身の循環器系の“窓”である眼底
血管とその周辺組織の形態と代謝機能を細胞レベルで観察・計測する眼底イメージング技術の開発により、
生活習慣病による血管病変等合併症の超早期発見・治療開始を可能にする高精度画像診断機器の開発を実
施します。この技術開発により、面内分解能:2μm ×2μm と深さ分解能:2μ m の高精度3次元眼底
撮影、および眼底組織の酸素分圧の異常検出を可能にすることを目指します。
■追加
■高精度眼底イメージング機器の研究開発
研究内容:眼底イメージング機器に補償光学技術を導入することにより眼の収差の影響を受けない鮮明な網
膜像を取得する技術を研究開発し、さらに分光法を利用した眼底分析イメージング技術を融合す
ることにより、生活習慣病による合併症を超早期に診断する機器の実現を目指しています。
補正前
補正後
補償光学
細胞レベルの眼底分光
機能計測の例
網膜酸素飽和度
マッピング
バイオテクノロジー・医療技術分野
微細血流解析
超高解像度眼底観察
眼は全身の窓!
眼科疾患・循環器疾患・生活習慣病に
よる合併症の超早期発見を目指して
2.悪性腫瘍等治療支援分子イメージング機器研究開発プロジェクト
事業期間:平成17年度〜平成21年度、平成21年度予算:  5.7億円
PL :平岡 真寛( 京都大学大学院 医学研究科 教授 )
政府は「 バイオテクノロジー戦略大綱 」で、がんの5年生存率の20ポイント向上を目指していますが、
その実現のためには、従来の形態診断技術では診断不可能な、悪性腫瘍を特徴付ける生体分子を検出
して画像化する分子イメージング技術が不可欠です。
本技術開発では、従来の形態診断よりも1桁小さいミリメーターサイズの腫瘍を良性/悪性の区別
も含めて検出・診断できる分子イメージング技術の開発を、厚生労働省との共同事業として実施してい
ます。そのため平成17年度から、種々の候補機器技術と分子プローブ製剤とを組み合わせた場合に得
られる検出感度、画像の解像度の高さを中心に、研究開発対象とすべき有望技術の先導研究を行って
おり、平成18年度からは、先導研究の結果に基づいて、近接撮像型PET、高分解能PET-CT/MRI
(高
機能化技術)のプロトタイプ機器試作と分子イメージング用新規分プローブ製剤技術の開発研究(PL:
平岡 真寛( 京都大学大学院 医学研究科 教授 ))を行っています。
73
■悪性腫瘍等検出能の現行技術と新技術
■悪性腫瘍等検出機能の現行技術と新技術
現 状 :CT画像等の形態画像と薬剤とPETの組合せによる機能画像の融合により腫瘍等の体内部位を描出する技術は
既に開発されているが、イメージング機器の解像度、コントラスト、薬剤の選択性等により、微小疾患の検出、腫瘍
の広がりや性状等の詳細な状況の把握が制約されている。
CT画像
画像融合
PET画像
研究開発 高検出感度化
高解像度化
高速化
高選択性
プローブ剤
新技術 :イメージング機器の高検出感度化、高解像度化、高速化と、抗体・リガンド等のプローブ剤
の利用による高選択性薬剤の開発との組合せにより、生体細胞の分子レベルの機能変化の
描出・検出を可能とし、良性/悪性の区別や進行の程度も含めた悪性腫瘍等の超早期診断
を実現する。
■分子イメージングのイメージ
バイオテクノロジー・医療技術分野
■分子イメージングのイメージ
分子・
細胞レベルの生態情報を生きたまま画像化する技術
レポーター
レポーター
吸着物質の位置を示す物質
ガンマ線核種、蛍光発光材料、
ナノ磁性体など
リガンド
リガンド
分子プローブ
バイオマーカー
細胞
<各種装置による検出可能範囲>
DNA
タンパク質
細胞
臓器
分子イメージング
マーカーや特定の細胞に吸着する
物性を持つ物質
抗体など
タンパク質解析装置
バイオマーカー
試薬
DNA解析装置
PET
蛍光イメージング
X線装置
CT
MRI
生体内に存在し、細胞間の違いを
示す目印となる物質
特異的に発現するタンパク質など
3.新規悪性腫瘍分子プローブの基盤技術開発
事業期間:平成20年度~平成21年度、平成21年度予算: 1.3億円
PL :佐治 英郎( 京都大学大学院 薬学研究科 教授 )
疾患に特異的なタンパク質分子の分布などを描出することのできる「 分子イメージング 」が、がんの
早期診断・治療において有効な手段として注目されていますが、その実現には、イメージング機器のみ
ならず、病変を可視化する分子プローブが必要不可欠であり、今後の分子イメージングの進展は、有用
な分子プローブの開発にかかっていると言っても過言ではありません。そこで、本プロジェクトでは、
分子プローブ開発の一層の強化・促進を目的とし、その基盤となる以下の要素技術開発を行います。
(1)分子プローブ要素技術の開発:
がんに特異的に発現する分子等の標的に直接作用する「 標的認識ユニット 」と、優れた蛍光特性を有
する「シグナルユニット」
、それらを一体化させ分子プローブとして機能させる「分子プローブ化技術」
の開発を行います。
(2)分子プローブ評価システムの開発:
生体内の蛍光分子プローブが発するシグナルを計測することにより、分子プローブのがん特異性を定
量的に評価するための小動物用近赤外蛍光イメージングシステムの開発を行います。
74
■新規悪性腫瘍分子プローブの基盤技術開発
(1)要素技術の開発
内視鏡
診断
蛍光
物質
新規蛍光
プローブ
分子プローブ化
標的認識
ユニット
悪性腫瘍
術中
診断
マンモ
診断
放射性
同位元素
新規PET
プローブ
PET
診断
常磁性
物質
新規MRI
プローブ
MRI
診断
(2)評価システムの開発
マルチモダリティによるがんの早期診断・治療へ
シグナル
ユニット
将来展開
蛍光分子
プローブ
定量的評価
バイオテクノロジー・医療技術分野
4.深部治療に対応した次世代 DDS 型治療システムの研究開発
事業期間:平成19年度〜平成21年度、平成21年度予算: 4.3億円
PL :橋田 充( 京都大学大学院 薬学研究科 教授 )
がんの発生部位には、体表面( 皮膚等 )と人体の深部にある臓器( 肺、膵臓等 )があります。従来の
治療法( 外科手術、化学的治療、放射線治療 )の、問題点( 薬剤が全身に行き渡るための副作用、放射
線被爆等 )を解消するため、薬剤等をがん細胞のみにピンポイントに届け、病変部位のみに選択的に薬
効を発揮させる技術(DDS:Drug Delivery System)の開発が行われています。
本プロジェクトでは、人体の深部まで届く光、超音波などの外部エネルギーと DDS を組み合わせ、
治療の効果および効率を飛躍的に高めたがん治療を可能にするシステムの開発を行います。
(1)革新的 DDS と光ファイバー技術を融合した光線力学治療システム
生体に安全な光エネルギー刺激によって薬効を発現する薬剤をがん細胞へ選択的に送達する
DDS 開発と、体内に低侵襲かつ効率的に光照射を行うことのできる光ファイバーおよび光照射装
置の開発を統合させ、正常組織にダメージを与えることなく難治性がんを根治できる治療システム
を開発します。
(2)相変化ナノ液滴を用いる超音波診断・治療統合システム
表在部・腹部・泌尿器科領域などを対象とした腫瘍部位を想定して、診断用造影剤であってかつ
治療増感剤としても機能するマイクロバブルを、あらかじめ投与されたナノ液滴前駆体の選択的活
性化により、治療ターゲットを事前に画像診断によって実時間的に確認した上で、治療用超音波
による加熱凝固作用などの物理的作用を用いて、部位選択的な治療診断・治療統合システムの研究
開発を行います。前臨床試験を開始するのに必要な薬剤構造および装置のプロトタイプを開発します。
75
■治療システムの概要
①革新的DDSと光ファイバー技術を融合した光線力学治療システム
DDS
(封入合成)
新治療システム
光増感剤
光増感剤
抗ガン剤
光の療法
光照射
レーザ光照射
ミセル分解
高分子ミセル
製剤の療法
抗がん剤放出
②相変化ナノ液滴を用いる超音波診断・治療システム
相変化用超音波
ナノ液滴
標的組織・細胞
診断装置により画像化
治療用超音波
液→気
相変化
造影剤の投与
マイクロバブル
凝固温度に至る発熱
物理刺激によ
り対象部位で
造影剤生成
造影剤を治療増感剤
とした部位選択的
加熱凝固療法
Drug (診断・治療増感剤)を物理刺激により疾病部位に選択的にデリバリーする。
5.インテリジェント手術機器研究開発プロジェクト
<主要部位対象機器研究開発>
事業期間:平成20年度〜平成23年度、平成21年度予算: 6.0億円
PL :橋爪 誠( 九州大学大学院 医学研究院 教授 )
がんと心疾患は我が国における死亡原因のそれぞれ第1位と第2位を占めています。特にがん治療に
関しては、最近、内視鏡を使った外科手術の件数が増加する傾向にあります。内視鏡手術は、手術の
バイオテクノロジー・医療技術分野
切開範囲が小さく患者への負荷の低減、入院期間の短縮等の面でメリットがある一方、病巣部を摘出
する際には、微細な作業や制限された視野内において高度な手術技術が求められるため、微細な作業を
可能とする触覚を持った処置具や必要な映像情報を適切に提供する技術などによる手術支援が必要とさ
れています。
本プロジェクトでは、医療分野において健康寿命延伸と患者 QOL( 生活の質 )の向上を図っていくた
め、内視鏡手術の利点を生かしながら、我が国が誇る高度な内視鏡技術、精密機械工学、情報工学(IT)
等の技術を総合的に結集して、病巣部のみを精度高く摘出して正常な臓器機能を可能な限り温存し、
しかも医療従事者が扱いやすく、負担を軽減する革新的な内視鏡手術支援機器を開発します。具体的
には、がんと心疾患において低侵襲の治療が特に期待される部位である脳神経外科、胸部外科および消
化器外科の領域において、健常組織と病巣の適切な検出等を行うリアルタイムセンシング技術、リアル
タイム計測したデータと内視鏡画像などの統合を行う情報処理技術、小型鉗子・力触覚フィードバッ
ク型マニュピレータ・拍動、呼吸動連動等を行う精密駆動技術等の技術確立し、さらには使用する医
師の技能を担保するためのトレーニング手法の確立も行います。
76
■主要部位対象機器研究開発
★腫瘍検出技術による腫瘍可視化
★力触覚によるリアルタイム診断
★術前・術中生体情報重畳解析
★ロボット−ナビ連携
★ヘッドクオータによる情報統括
リアルタイム計測
情報処理
★力触覚フィードバック型
マニピュレータ
★小型細径化多自由度鉗子
★拍動対応(胸部外科用)
★手術コクピット
★デザインプロセスによる
ユーザビリティ最適化設計
トレーニング
★VRトレーニング環境
★トレーニング効果の検証と
トレーニング指標
マニピュレーション
■各対象部位に特化した開発
脳神経外科用
インテリジェント手術機器
胸部外科用
インテリジェント手術機器
消化器外科用
インテリジェント手術機器
力触覚センサ,内視鏡、各種処置具
(吸引器等)を統合した内視鏡統合処置具
バイオテクノロジー・医療技術分野
毛細リンパ管
超音波
造影剤
心機能計測のための術中電気生理計測
センサ・処理システム
センチネルリンパ節可視化
および転移診断技術
電気生理計測・超音波プローブ・力触覚
センサ,
内視鏡、各種処置具(微細鉗子
等)を統合した内視鏡統合処置具
収束超音波部,
超音波プローブ・力触覚
センサ,
内視鏡、各種処置具(微細鉗子
等)を統合した内視鏡統合処置具
高い信頼性を担保する
基盤ソフトウェア技術
術室内の情報を統括するヘッドクォータ,
多地点統括に拡張されたヘッドクォータ
他部位の機器の共通基盤技術として活用
<研究連携型機器開発>
事業期間:平成20年度〜平成21年度
PL :千葉 敏雄( 国立成育医療センター 臨床研究開発部長 )
近年、非侵襲的胎児診断法( 産科的超音波など )の発展により、子宮内胎児の種々の病態観察が出
生前より可能となってきました。その結果、これまで出生後に診断・治療を受けていた小児疾患の多くは、
胎児期からさまざまな臨床経過をとっており一部は分娩前に病態が進行・増悪していることが明らかになっ
てきました。子宮内で行われる出生前の治療は胎児治療・胎児手術と呼ばれ、妊娠母体・胎児という最
も脆弱な患者を対象とする治療では、極めて高度かつ安全な手技が求められます。しかし、現行の治療
手技( 特に、胎児内視鏡付属光源に伴う高い子宮内腔照度・子宮内医療機器動作の3D 超音波ナビゲー
ション )は、この意味においていまだ極めて不十分な状況にあります。本研究開発では、これらの課題
を解決できる胎児治療を行うための新しい手術機器の開発を行います。また、本研究開発は、画像技術
等を活用した低侵襲な手術の実現を図ることを目的として厚生労働省と連携しながら開発を行います。
77
■研究連携型機器開発
■研究連携型機器開発(新しい子宮内手術システム)
内視鏡画像モニタ(FEA-HARP内視鏡画像)
新しい超音波立体表示ナビ
(3D/4D超音波のIVモニタ)
厚労省側
(動物実験)
画像用ケーブル
超高精度3D/4D
超音波診断装置
超高感度(FEA-HARP)
内視鏡
子宮内照光の低減
6.再生医療の早期実用化を目指した再生評価技術開発
事業期間:平成18年度〜平成21年度、平成21年度予算: 1.7億円
PL :大串 始(独立行政法人 産業技術総合研究所 セルエンジニアリング研
究部門 研究部門長 )
急速な高齢化社会に伴い、生活習慣病や重篤な合併症が大幅に増加している中、傷病や疾病によっ
て身体の一部の器官・機能を代替する治療方法として、再生医療技術の早期実用化、企業化、産業化
バイオテクノロジー・医療技術分野
への期待が高まっています。再生医療を早期に実用化するためには、その安全性、有効性を確保すると
同時に、再生治療デバイスなどの様々な特性を効率的に計測・評価する技術が必要です。特に、ヒトか
ら細胞を採取し、これを培養し、分化させ、また生体材料( バイオマテリアル )を足場材として一緒に
培養する一連のプロセスの中で、培養・分化された細胞が移植に適切であるか否かなどを効率的にチェッ
クし、検証を行う一連の評価プロセスの確立が必要です。すなわち、培養に使用する細胞のバリデーショ
ン( 有効性、妥当性の確認 )
、評価方法の確立、標準化等が早期の実用化、企業化を図る上で極めて重
要です。
本プロジェクトは、臨床研究が開始されている「 間葉系幹細胞 」、
「 骨 」、
「 軟骨 」、
「 心筋 」および「 角
膜 」の5分野に関して、再生評価技術ならびに計測機器を開発するとともに、これらの分野における
JIS の標準情報(TR)制度へ提案を行い、さらに国際標準原案をまとめることを目的としています。
■再生医療の早期実用化を目指した再生評価技術開発プロジェクトの概念図
〈病院〉
患者
〈細胞培養施設(CPC)〉
再生組織形成
移植
各ターゲット臓器の再生評価
【研究開発項目②:
【研究開発項目③:
【研究開発項目④:
【研究開発項目⑤:
骨再生医療プロセス】 軟骨再生医療プロセス】 心筋再生医療プロセス】 角膜再生医療プロセス】
(目 的)間 葉 系 幹 細 胞 か ら
分化した骨芽細胞による骨
基質形成量を評価
◎細胞分化度評価…
カルシウム親和性蛍光色素
による骨基質量蛍光計測
(目 的)培 養 軟 骨 組 織 の 力
学的成熟度と構造を評価
◎再生軟骨物理化学評価…
(a)DT-MRI法による構造
判定
(b)レーザー誘起光音響波
による粘弾性計測
(目 的)移 植 後 の 細 胞 シ ー
トの有効性を保証するため
に細胞の純度、分化度を評
価
◎細胞分化度評価…
◎細胞純度評価…
◎細胞機能評価…
◎細胞分化度評価…
多点基板電極培養基材を用
いた電位パターン解析
酸素飽和度、表面膜電位測
定による心機能計測
分化
細胞評価
患者
自己
細胞
採取
(目 的)角 膜 上 皮 幹 細 胞 疲
弊症の治療において、細胞
シート中の幹細胞の量・上
皮細胞への分化度を評価
【研究開発項目①:間葉系幹細胞の一次培養プロセス】
(目的)安定した細胞増殖を確保し、形質転換の発生を評価
◎細胞表面特性評価…エバネセント光を用いた蛍光計測
◎細胞増殖活性評価…光学顕微鏡を用いた細胞形態計測
◎細胞変異評価…P16遺伝子のメチル化検出
抗p63抗体を用いた幹細
胞・前駆細胞定量
定量PCR法による分化細胞
定量
分化
分化
骨格筋芽
細胞
角膜上皮
幹細胞
細胞培養(一次培養)
(プロジェクト目標)各プロセスにおける評価技術及び評価装置の開発。標準化の提案。
78
7.心筋再生治療研究開発
事業期間:平成18年度〜平成21年度、平成21年度予算: 2.9億円
PL :澤 芳樹( 大阪大学 教授、大阪大学未来医療センター センター長 )
近年、食生活の欧米化並びに高齢化に伴い今後、虚血性心疾患に伴う重症心不全患者のさらなる増加
が予想されています。これまでの補助人工心臓や心臓移植などの置換型治療の問題点を克服できる治療
として再生型治療が期待されています。本研究開発は、再生型治療として注目を集めている細胞シート
工学を応用した心筋再生治療の早期実現を目指し、重症心不全患者の日常生活や社会復帰を支援し生
活の質の著しい改善に資することを目的とします。
本研究開発では、これまで開発されている細胞シートをさらに発展させ、シート状の細胞を積層化す
ることにより内部に酸素や栄養を供給できるような血管網を有し、心筋組織の欠損部を補てんするため
の十分な強度と機能を持つ心筋再生組織( バイオ心筋 )の作製技術の確立と安全かつ有効なバイオ心筋
の製造工程のシステム化を目指します。さらに、大動物による前臨床試験を行い長期的な有効性や安全
性を評価し、臨床応用への基礎とします。
■細胞シートを応用したバイオ心筋の開発
■細胞シートを応用したバイオ心筋の開発
虚血性心疾患・
拡張型心筋症モデル
での有効性の検証・
最適化
(前臨床試験)
単離した自己細胞
(筋芽細胞、間葉系幹細胞等)
シート化技術
バイオテクノロジー・医療技術分野
心筋再生シート
有効性評価技術
移植技術
バイオ心筋組織
細胞シート積層化・高機能化技術
積層化技術、3次元組織培養技術
製造工程のシステム化
多層化
構造・機能評価技術
ナノバイオテクノロジーによる
高機能化
高機能化バイオ心筋組織評価システム
心筋再生シート・
バイオ心筋組織・製造評価システムの標準化
8.三次元複合臓器構造体研究開発
事業期間:平成18年度〜平成21年度、平成21年度予算: 2.9億円
PL :高戸 毅(東京大学医学部附属病院 ティッシュエンジニアリング部 部長)
1990年代よりティッシュ・エンジニアリング技術の開発がスタートし、関節軟骨欠損、角膜上皮、
皮膚表皮などに一定の成果を得ています。一方で、少子高齢化社会を迎え治療を必要とする疾患が種類、
数ともに増加する傾向にあるのに対し、適応できる疾患の範囲が限られるのが現状です。循環器系疾患
やがん・悪性腫瘍術後の機能再建等への対応は、医療的にも社会的にも重要なテーマであり、従来は、
移植外科、人工臓器による置換などが行われてきましたが、更なる機能再建が多くの患者より求められ
ています。
本プロジェクトでは、最新の材料・生物科学と三次元造型技術、非侵襲評価技術を駆使して、形態
的にも機能的にも生体に類似した構造体( 以下、「 三次元複合臓器構造体 」)を実現し、大量培養装置
の開発による大型三次元複合臓器構造体の作成、解剖形態に即した臓器構造体の再現、工学技術を導
79
入した機能補完を可能にし、同時に、再生された三次元複合臓器構造体の生着、自己組織化を実現す
るために必要な母床の血行再建について実現します。
三次元複合臓器構造体の対象となる臓器としては、
(1)運動器:大関節を含む荷重骨(大腿骨関節部)
、
(2)体表臓器:形態、皮下構造が複雑な体表臓器( 顔面凹凸部 )があります。また、実現するための要
素技術開発として、
(1)自己組織化機能を有し自律系機能体を構築できる新規材料の開発、(2)複合
形成の為の高度化、集積化、情報化が可能な再生エレメント技術の確立、(3)三次元臓器造形、血管
化を含む再生組織の複合組織構築技術の確立、(4)作製過程あるいは移植後生体内の非侵襲・低侵襲
的評価法の確立があります。
■三次元複合機器構造体と共通横断的要素技術
■三次元複合機器構造体と共通横断的要素技術
三次元複合臓器構造体
骨・
複合臓器
皮膚・
付属器
バイオテクノロジー・医療技術分野
共通横断的要素技術が
三次元複合臓器構造体を実現
複合人工
材料
再生組織
細胞の自
己組織誘
導材料
人工素材
栄養血管の誘導
ヒト細胞
培養装置
三次元診断・
計測
三次元造型技術
再生医療
血管化
共通横断的要素技術
■グリーンバイオ技術
1.微生物機能を活用した高度製造基盤技術開発
事業期間:平成18年度〜平成22年度、平成21年度予算: 4.2億円
PL :清水 昌(京都学園大学法人事務局調査企画部・京都大学 名誉教授・
東レ㈱ 専任理事 先端融合研究所長 )
本プロジェクトは、微生物が持つ、エネルギー消費が少なく廃棄物も少ない物質生産機能を活用した
工業原料等有用物質の製造プロセスの確立を目指しています。近年、資源枯渇や CO2等排出物の環境
への影響が懸念される中、バイオプロセス技術の開発が環境調和型循環産業システムとして必要とされ
ており、具体的には、次の3項目の研究開発を行います。
(1)高性能宿主細胞の創製技術の開発
微生物細胞への遺伝子工学による特異的遺伝子発現制御機能付与、および補酵素供給ユーティリ
ティー機能増強による有用物質の高生産を目指します。
(2)微生物反応の多様化・高機能化技術の開発
非水系反応場の構築、酵素の高機能化・多様化技術、酵素反応シミュレーション技術等のスーパー
80
酵素系により高効率バイオプロセスの実用化を目指します。
(3)バイオリファイナリー技術の開発
非可食ソフトバイオマス原料を糖化するセルソローム技術、および生成した糖等から基幹物質の高
効率生産技術の開発を目指します。
■微生物機能を活用した環境調和型製造基盤技術開発/微生物機能を活用した高度製造基盤技術開発
■微生物機能を活用した高度製造基盤技術開発
増殖/物質生産や
代謝フラックスの
切り替え
補酵素供給機能・
オルガネラ機能
増強等
高性能宿主細胞
創製技術
特異的遺伝子発現制御技術
ユーティリティ−機能増強技術
ゲノムが縮小された大腸菌・枯草菌・
分裂酵母のさ
らなる遺伝子多重削除と機能解明
微生物反応の多様化
・ 高機能化技術
非天然
非水系反応、複合酵素系
反応における構成要素の
最適統合化
バイオリファイナリー
技術
型産物
スーパー
酵素系
バイオプロセス
の生産性向上
適用範囲拡大
酵素の改変(コンピ 生合成遺伝子
ュータシミュレーシ クラスター改変
ョン利用)
各種糖化酵素
統合的
生産体系
バイオテクノロジー・医療技術分野
バイオマス糖化技術
高効率糖変換技術
天然物質
プロトポルフィリン
反応場制御技術
酵素の高機能化技術
スーパー
宿主
骨格タンパク質
セルロソームの利用
[バイオマス→糖]
増殖非依存型
糖変換
高選択性
分離膜利用
[糖→有機酸等の基幹化合物]
2.微生物群のデザイン化による高効率型環境バイオ処理技術開発
事業期間:平成19年度~平成23年度、平成21年度予算: 1.2億円
PL :藤田 正憲( 高知工業高等専門学校 校長 )
従来の産業における廃水・廃棄物処理技術は、①エネルギー多消費・廃棄物多排出、②低処理能力・
対象廃棄物限定等といった課題を抱えています。それに対して、これまで工学的なアプローチによりプ
ラントや処理条件等の高度化が行われてきたものの、汚染物質の処理を担う微生物群自体については、
依然としてほとんどブラックボックスのまま使用されていました。
このため、特定有用微生物( 群 )のデザイン化技術( 特定有用微生物( 群 )の構成や配置を考え、人
為的に制御する技術( 安定的導入・維持技術、空間配置・優占化技術 ))を開発することにより微生物
群の処理効率を大幅に向上させるなど、処理技術の課題を克服することが必要とされています。
本プロジェクトでは、我が国の有する知見を活かしつつ、微生物群のデザイン化技術等を開発するこ
とにより、省エネルギーで余剰汚泥の大幅削減、コンパクトで容易なメンテナンス、あるいは多様な廃水・
廃棄物への適用が可能な高効率型廃水、廃棄物処理の基盤技術を確立し、微生物機能を活用した環境
調和型産業システムの創造に資する技術を開発します。
研究開発の内容
(1)好気性微生物処理技術における特定有用微生物( 群 )を人為的に安定的導入・維持するための技術
の開発
(2)嫌気性微生物処理技術における特定有用微生物群を人為的に空間配置させ安定的に維持・優占化
するための技術の開発
81
■微生物群のデザイン化
微生物構成の制御
有用菌E
主要菌A
主要菌B
主要菌A
不要菌D
主要菌B
主要菌C
有用菌E
マイナー菌群
主要菌C
マイナー菌群
不要菌D
(対象廃棄物に最適化した微生物集団を構築)
<要素技術>
○コア微生物導入、安定化
○有害微生物排除
○空間的配置技術
3.植物の物質生産プロセス制御基盤技術開発
事業期間:平成14年度〜平成21年度、平成21年度予算: 3.9億円
PL :新名 惇彦( 奈良先端科学技術大学院大学 客員教授 )
植物の物質生産プロセスをシステムとして解析してデータベースを構築し、工業原料などの有用物質
バイオテクノロジー・医療技術分野
を生産させる様々な実用植物の物質生産プロセスを人為的に改変するための技術基盤を構築することを
目的としています。
本プロジェクトではこれまでに、モデル植物としてシロイヌナズナとミヤコグサを選定し、DNA マイ
クロアレイによる遺伝子発現の網羅的解析や遺伝子導入による機能解析を行い、代謝経路の解明とデー
タベース化を進めています。また、代謝系の一連の遺伝子群を制御する調節因子の探索や、タバコを材
料に葉緑体形質転換技術により基幹代謝系改変植物の作出も進めています。
モデル植物での成果を活用して、実用植物( ユーカリ、ゴム、カンゾウ、アマ等 )における目的物質
の生産経路の解析と遺伝子組換え系の構築などを行って、植物の物質生産機能の工業的利用のための
技術を開発します。
研究開発の内容
(1)モデル植物を用いた植物の物質生産機能の解析
1)
cDNA の取得及び解析
2)物質生産系の経路と機能の解析
3)物質生産系における調節遺伝子等の機能の解析
4)統合データベースの作成
(2)実用植物を用いた物質生産制御技術の開発
1)
cDNA の取得及び解析
2)物質生産系の経路と機能の解析
3)物質生産系における調節遺伝子等の機能の解析
4)目的物質生産に関する遺伝子等の解析
5)モデル植物や実用植物を用いた確認試験
82
■植物利用エネルギー使用合理化興業原料生産技術開発
■植物機能を活用した高度モノづくり基盤技術開発
植物の物質生産プロセス制御基盤技術開発
モデル植物
実用植物
cDNA解析・整備
物質生産経路等の解析
生体物質の特定
生体物質の定量
物質生産系の
経路と機能の解析
関連酵素・
遺伝子の解析
確認
物質生産経路等の解析
生体物質の特定
分析機器
生体物質の定量
物質生産調節機能解析
物質生産調節機能解析
発現・
転写制御機構解析
転写制御機構解析
発現・
目的に応じた系に絞り込んだ物質生産系の解析
関連酵素・遺伝子の解析
統合データベース
器官・組織、
ステージを対象に主要物質生産系の解析
物質生産系の
経路と機能の解析
cDNA解析
バイオテクノロジー・医療技術分野
83
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