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姫路城大天守の 保存修理工事
たてもの建材探偵団 姫路城大天守の 保存修理工事 写真1 素屋根外観 国宝であり世界文化遺産でもある姫路城の保存修理工 事が行われる,さらには,工事中の天守閣を外側から見る ことができる,という記事を見かけてから大変気になって いたところ,2012 年 6 月に訪れることができました。 JR 姫路駅を出ると,大天守にかかる素屋根が遠くに見 えてきます(写真 1) 。高さ約 53m のこの素屋根(約 800 枚 ものメッシュシートが取り付けられている)の内部に見学 施設が設けられています。 わたりやぐら まず城内に入ると,渡櫓に展示されている,これまで実 際に使われていたしゃちほこ(写真 2) ,歴代城主の家紋が そ だ 入った軒丸瓦,庇や粗朶木舞を一部切り出したもの,左官 こて かっちゅう 鏝,その他に甲冑などを見ることができ,築城 400 年とい う姫路城の歴史に触れることができます。 続いて素屋根内に入ると,2011 年にオープンした 8 階建 ての見学施設があり,シースルーのエレベーターで大屋根 と同じレベルまで昇ることができます。ガラスを挟んで, 瓦が葺き替えられたばかりの大屋根の上で作業をする職 人や片側だけにしゃちほこが載った姿を見て(写真 3) ,な かなか出会えない光景に見学者からは感嘆の声が上がっ ていました。45 年ぶりに行われた今回の工事は屋根瓦の 葺き直しや漆喰壁の塗り直しが中心であり,見学スペース 内には,使われている材料や保存修理の作業プロセスなど を紹介するパネルや展示物が多数あります。瓦は,事前調 査によると基本的に再利用し,新しいものに交換するのは 1%程度と想定されたそうです。また,外壁は,上層部(4・ 5 層)では小舞下地からはぎ取って土壁から塗り直してい ました(写真 4)。外壁の漆喰は,築城当時 3㎜ほどの厚さ だったものを昭和の大修理以降 30㎜と厚く塗り替えられ, 耐久性をもたせているそうです。 写真 3 と写真 4 は,10 月に見学された㈱工文社の T さん から写真を借用して並べてみたものです(下段) 。屋根目 地漆喰が施されることでだいぶ趣が異なります。この漆喰 は風雨や揺れに対する補強のためだけでなく,独特な幾何 学的模様を見せる美観上の効果も考えられているとの説 明に納得です。 2014 年 1 月まで“絶賛公開中”です。 (経営企画部 企画課 係長 宮沢郁子) 建材試験センター 建材試験情報 1 ’ 13 写真2 江戸時代のしゃちほこ 写真3 大天守の大屋根(上:6月 下:10月) 写真4 大天守上層部 の外壁 (上:6月 下:10月) 51