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手術説明書 手術名:ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術 患者名
手術説明書 手術名:ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術 患者名: 施行日 年 月 日 ⑴ 前立腺癌について 前立腺を詳しく検査した結果、前立腺癌が見つかりました。これまでの検査結果からは 癌病巣の広がりは前立腺内に限局していると考えています。そのため手術で前立腺を摘出 することで前立腺の癌組織をすべて取り除くことができる可能性が高いと考えています。 また近接する精嚢も同時に摘出する必要があります。 ⑵ 腹腔鏡下手術について 腹腔鏡下手術は開腹せずに体腔内の様子をビデオスクリーンに写しだし、特殊な器具を 使って手術を行う方法です。お腹に 0.5-1.5cm の小さな穴を数か所開けるのみで手術ができ、 術後の創部痛が少なく、傷が小さいことで美容上の利点もあります。また開腹手術と比べ て入院期間を短縮し、社会復帰も早くなるとされており今日では世界的に普及している手 術です。 ⑶ ロボット支援下手術について ロボット支援下手術は、基本的には従来の腹腔鏡手術と同じ手術手技ですが、ロボット の機器の助けを借りることにより、より安全かつ正確に手術を行うことが可能になります。 ロボット支援下手術と言っても、ロボットが自動的に手術を行うわけではなく、執刀医師 が操作部から自由自在に体腔内に挿入されたロボットの鉗子を動かして手術を進めます。 この手術の特徴は執刀医が手術をするときに見る内視鏡画面が 3D で立体空間表現され、 最大 30 倍の視野拡大能力があることです。加えて鉗子の動きも繊細で自由度が高いため根 治性、尿禁制を含む機能温存においてより優れていると考えられています。米国ではこれ までに 10 万件以上のロボット支援下手術が行われ、特に前立腺全摘手術においてはそ の 90%がロボット支援下に施行されています。 ⑷ ロボット支援下手術の利点と欠点 ・利点 腹腔鏡下手術と原則同じですが、腹腔鏡手術よりさらに正確で繊細な縫合が可能である ため、術後尿失禁や勃起不全の発症率が減ずる可能性が期待されます。また出血量も腹腔 鏡手術と同等あるいはそれ以上に手術中の出血が少ないことが見込まれます。 ・欠点 こちらも原則腹腔鏡下手術と同様ですが、手術時間が開放手術に比べて長いことが見込 まれます。また、皮下気腫、空気塞栓などの腹腔鏡特融の合併症があります。 ⑸ 本手術の手順 ⅰ)腹部にポートを 6 か所設置して気腹を行う ⅱ)ロボットアームを体腔内に挿入 ⅲ)前立腺・精嚢を摘除した後、膀胱と尿道を吻合 ⅳ)リスク分類に応じて骨盤内リンパ節郭清を追加 :手術時間は概ね 5-6 時間です :手術中の状況に応じて開放手術や従来の腹腔鏡手術へ変更する場合もあります。その 場合は術後に詳しく説明をさせていただきます。 :手術中の姿勢は 25 度ほど頭側を下げた姿勢(頭低位)となりますので、緑内障を患 っている方や呼吸機能が非常に低下している方などではこの方法を行えないこともあ ります。 ⑹ 術後経過 術後の経過観察は従来の開腹手術や腹腔鏡下前立腺全摘術とまったく同様です。手術後 病室に戻り問題なければ翌日歩行、飲水が開始となります。飲水後問題なければ主治医の 許可後に食事開始となります。尿道カテーテルは約 1 週間で抜去されます。抜去後排尿状 態を観察後に退院となります。 退院後もしばらくは尿失禁が継続しますが、パッドにて対応をしていくこととなります。 また外来で定期的に排尿状態、創部の評価や血清 PSA 採血を行います。 ⑺ 合併症(根治的前立腺全摘術全般に共通するもの) *手術中・手術直後 ・予想以上の出血があった場合には、輸血が必要になることもあります。 ・周囲臓器損傷:大血管、小腸、大腸、直腸、尿管などを損傷することがあります。通常 手術中に修復できますが、直腸損傷ではごくまれに一時的な人工肛門が必要になることが あります。 ・感染症:通常手術後 2-3 日は発熱します。予防的な抗菌薬投与を行いますが創感染や呼吸 器感染を起こすことがあります。 *手術後 ・尿失禁:90%以上の方が尿漏れを経験します。およそ 9 割の方は術後 1 年以内に改善し ます。 ・性機能障害:原則として両側の勃起神経は前立腺と一緒に切除しますが、癌の浸潤が限 られる場合は勃起神経の温存を行います。 ・吻合不全:通常は約 1 週間で尿道カテーテルを抜去しますが、吻合部の接合が遅い場合 は尿道カテーテルの留置期間が長くなることがあります。 ・尿道狭窄:膀胱と尿道の吻合部が狭くなり排尿困難を伴う場合は尿道を広げる追加処置 が必要となることがあります。 ・リンパ嚢胞:術後にリンパ液が貯留して嚢胞を形成することがあります。穿刺吸引など の外科処置が必要な場合もあります。 ・ヘルニア(脱腸):鼠径部や創部からヘルニアを起こすことがあります。 *その他(すべての手術に関係する合併症) ・深部静脈血栓症による肺梗塞:術中にできた深部静脈血栓(足の静脈にできる血の塊) が肺に飛んで肺塞栓を起こすことがあります。予防として弾性ストッキングやフットポン プを使用します。 ・神経障害、コンパートメント症候群:全身麻酔下に長時間同じ姿勢で手術をうけること となります。そのため神経や筋肉が圧迫され、手術後に手や足にしびれや麻痺、筋肉の挫 滅が生じることがあります。 ・腸閉塞:術後に腸が癒着し再手術が必要になったとの報告があります。 ・上記以外にも多くの合併症が報告されておりますが、それぞれ迅速に対応いたします。 香川大学医学部附属病院 泌尿器・副腎・腎移植外科