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ディジタル・ビデオ信号の基礎と シリアル伝送規格の種類 ディジタル
第1章 ディジタル・ビデオ信号の基礎と シリアル伝送規格の種類 ∼画像の圧縮や伸張による遅延が無いSDIは医療機器や業務用,産業用カメラで活動する∼ 黒毛利 学 ここでは,本特集を読み解くために必要なビデオ信号の基礎に べての色を表現しています(図 1,図 2).ここで合成とは, ついて解説する.その後,ビデオ信号をシリアル伝送するため RGB 各色を足し合わせる割合や,濃さを調整することを指 の規格を整理する. します. (編集部) カメラでは,レンズを通した光の情報を,カラー・フィ 全国の都道府県庁所在地では,2006 年 12 月までに地上 ルタを用いて RGB に分解し,撮像素子で電気信号に変換 デジタル放送が開始され,一般家庭でもハイビジョン映像 しています.また,映像表示装置であるブラウン管,液晶, を手軽に楽しめるようになりました.放送局では地上デジ プラズマなどの方式によるディスプレイでは,例外なく タル放送に合わせてスタジオ設備を一新し,ハイビジョン RGB3 色の素子を持ち,この 3 色の組み合わせでいろいろ 放送に対応していきました. な色や明るさを表現しています. その際に,従来はアナログ・ビデオ信号を同軸ケーブル を用いて引き回していた放送局内において,インフラを変 更することなくディジタル・ビデオ信号を引き回せないか ● YCbCr ;輝度と色差を表す もともと映像信号は輝度信号(Y)だけでした(白黒映像). という要望が出てきました.そこで検討,採用されたのが この信号と互換性を保ち,同時に色情報を伝えるために考 SDI(Serial Digital Interface)です. えられた信号が,輝度・色差信号である YCbCr です.この このSDI は,放送局だけに利用されるわけではありません. LED を使った大型表示装置の映像信号伝送や小型カメラなど 信号はRGB 信号から作られており,Y は輝度信号,色信号 は CbCr となります. の用途でも,従来は同軸ケーブルを利用してアナログ・ビデ Cb(PB といわれることもある)は,青色の信号から Y 信 オ信号を伝送していたため,同じようにSDI を利用し,ディ 号(輝度信号)を引いたものであり,C(P は赤色の信号 r R) ジタル・ビデオ信号を伝送したいという需要があります. からY 信号(輝度信号)を引いたものです.このC は色彩を ここでは,その準備として,ディジタル・ビデオ信号に関 表す Chroma(クロマ)という言葉に由来しています. する基礎について,簡単に説明します.本特集の第2 章以降 では,このSDI の最新版である3G-SDI について解説します. ● 分解能 8 ビット,10 ビット,12 ビット; A-D コン バータの分解能を表す 1.特集に出てくるビデオ信号の用語解説 アナログ・ビデオ信号をディジタル化する際には,A-D コンバータを用います.この A-D コンバータの分解能に ● RGB ;足し合わせるとすべての色を表現できる パソコンでは,R(赤)G(緑)B(青)の 3 色を合成し,す Keyword 84 よって,ディジタル・ビデオ信号の分解能が決まります. 一般的な動画を扱うカメラでは 8 ビットが主流です. RGB,YCbCr,輝度・色差信号,分解能,4 : 4 : 4,4 : 2 : 2,SMPTE,インターレース,プログレッシブ, フレーム・レート Design Wave Magazine 2008 January 特 集2 RGBRGBRGB RGB各色とも見 せない場合は黒 赤色部分 RGBRGBRGB RGBRGBRGB 白色部分 緑色部分 図 1(1) 図2(1) RGB の色の組み合わせでさまざ まな色ができる 液晶セルを拡大してみるとRGB1 組の画素で構成されている ● 4 :4 :4 や4 :2 :2 ;輝度に対する色の割合を表す 1 ています. 画素(ピクセル)のデータをサンプリング(量子化)すると 余談ですが,欧州では EBU(European Broadcasting き,そのピクセルがどのようなサンプリング・データを持 Union ;欧州放送連合)という団体があり,SMPTE と同じ つのかを表す方法として,4 : 4 : 4 とか 4 : 2 : 2 などと ように欧州独自の映像規格を策定しています.また,日本 表すことがあります. では ARIB(社団法人 電波産業会)があります.この 3 団体 4 : 4 : 4 とは,すべての画素が色の 3 要素(輝度・色差 信号 YCbCr または RGB)のデータをすべて含むことを意味 は,お互いに連携をとりながら映像規格の策定に取り組ん でいるようです. します.このサンプリング方式は,パソコンの表示や高度 な編集用途などで使われています. ● 1080i や 720p ;水平走査線数と走査の方式を表す 4 : 2 : 2 とは,輝度・色差信号 YCbCr の伝送で使用さ 最近,ちまたでよく聞かれるハイビジョンという言葉が れることがあります.すべての画素は輝度信号 Y を含みま あります.ハイビジョン映像には大きく分けて 2 種類あり すが,色差信号 CbCr は 2 画素に一つのデータしか含みませ ます.インターレースを基本とした1080i(i はインターレー ん.例えば,ハイビジョン映像の場合,サンプリング周波 スの頭文字)とプログレッシブの 720p(p はプログレッシブ 数(ピクセル・クロック)は,74.25MHz です.輝度信号 Y の頭文字)です. は74.25MHz でサンプリングされますが,色差信号 CbCr は 1080i は,もともと日本の ARIB で策定された規格が元に 輝度信号の半分の 32.125MHz でサンプリングされます. なっています.1080i のアクティブ・ライン数は 1035 本/フ 4 : 2 : 2 サンプリングは,放送局内の伝送などで使われて レーム,総ライン数(ブランク区間も含む)は 1125 本です. います.ちなみに RGB 4 : 2 : 2 方式はありません. NTSC と同じくインターレース方式を採用しています. このほかにも DV(ディジタル・ビデオ・ムービ)で使用 インターレースの場合,フレーム当たりのアクティブ・ される 4 : 1 : 1 や MPEG 関連で使用される 4 : 2 : 0 など ライン数が 1000 本を超えたあたりから画像改善効果がなく があります. なるという研究に基づき,総ライン数が既存の NTSC や PAL どちらとも整数比になる数として1125 本と決めました. ● SMPTE ;映像にかかわる規格を策定する 日本の規格では従来の放送(NTSC)に対して,ブランキ SMPTE と は , Society of Motion Picture and Tele ング区間と有効サンプリング数の比が同じになるようアク vision Engineers の略です.日本語で表すと,米国映画テ ティブ・ライン数を1035 本/フレームとしていました.ディ レビ技術者協会となります.SMPTE は米国の団体ですが, ジタル処理においては正方画素としたほうが処理しやすい 約 60 カ国にメンバがいて,米国だけに限らず日本でも ため,ディジタル放送ではアクティブ・ライン数を1080 本 SMPTE 規格が標準規格として取り扱われています. /フレームとしました.通常,ハイビジョンといわれるも SMPTE では,主に映像にかかわる標準規格の策定を行っ のは,このアクティブ・ライン数 1080 本/フレームのこと Design Wave Magazine 2008 January 85 2 App 1 3 4