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パネルディスカッションの要約はこちらから

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パネルディスカッションの要約はこちらから
第11 回包括的遺伝子医療研究会
『予防医学への道』
―健康寿命を延ばすために―
日 時:平成26年12月5日(金)13時~17時40分
会 場:東京女子医科大学 総合外来センター5 階 大会議室
総合司会
開会挨拶
田中
髙倉
建志
公朋
(NPO 法人イムクルス審議員)
(NPO 法人イムクルス理事長)
遺伝子に関する最近のトピックス
神田 尚俊 (東京農工大学 名誉教授 NPO 法人イムクルス審議員)
【演 題】 「ゲノムからみた遺伝子検査」
講
演:池上
(文部科学省 科学技術・学術政策研究所 客員研究官
NPO 法人イムクルス理事)
題】:「地球の時間でいのちを覧る」
【演
徹彦
講
演: 宮田
【演
温熱とからだ
座
長:東中川
満
(日経 BP 社 特命編集委員)
題】: 「皆で創る健康寿命」
講
演①
講
演②
徹
水島 徹
【演 題】
德山
聖徳
(EM 研究機構研究部
顧問)
(慶應義塾大学薬学部分析科学講座 主任教授)
「熱ショックタンパク質の機能とその応用」
(三井温熱株式会社 温熱療法師)
「高温熱刺激とは何か」
パネルディスカッション
司
会: 山田 修
(帝京平成大学教授 NPO 法人イムクルス審議員)
パネリスト:神田尚俊、池上徹彦、東中川 徹、水島 徹、德山聖徳
松岡瑠美子(若松河田クリニック院長 NPO 法人イムクルス理事)
閉会挨拶
髙倉 公朋(NPO 法人イムクルス理事長)
懇親会・石井食品試食会
(於:レストラン&カフェ
トリパーノ)
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第 11 回包括的遺伝子医療研究会
パネルディスカッション
※転載はご遠慮下さい。
日 時
:平成 26 年 12 月 5 日(金)午後4時 20 分~午後 5 時 20 分
場 所
:東京女子医科大学 総合外来センター5 階 大会議室
司 会
:山田 修(帝京平成大学教授 NPO 法人イムクルス審議員)
パネリスト:神田尚俊(東京農工大学名誉教授
NPO 法人イムクルス審議員)
池上 徹(文部科学省 科学技術・学術政策研究所 客員研究官
NPO 法人イムクルス理事)
東中川 徹(EM研究機構研究部 顧問)
水島 徹 (慶應義塾大学薬学部 分析科学講座 主任教授)
德山聖徳 (三井温熱株式会社
柔道整復師)
松岡瑠美子(若松河田クリニック院長
NPO 法人イムクルス理事)
(要 約)
司会(山田)
:今、準備されている間に会場の女性からのご質問にお答えします。
「成長ホルモンの分泌促進はアンチエイジングとなりますか」というものなの
ですが、ちょっと調べてみましたら、Annals of Intermedicine という英語の
論文のメタ解析で多くの論文を評価した論文なのですが、それによると「効
果はない」という結論となっています。成長ホルモンを化粧品の中に入れて
いるのかということについて調べましたが、唯一EGFという皮膚の細胞を
増やすサイトカインがあるというところまではチェックいたしました。です
から下手に成長ホルモンを飲んだりすることは、エストロゲンに関しても「過
ぎたるは及ばざるがごとし」であると思います。
松岡:成長ホルモンの副作用について少しお話しさせていただきたい。
背の小さいお子さんに成長ホルモンを使っています。人によっては成長ホル
モンを打つことによって心肥大などをおこす事例もあり、私共はネイチャー
誌※1などに発表していますが、安易にホルモンを外から入れるということは
心配なこともあると思います。
司会:まず神田先生にうかがいます。ゲノムから見た遺伝子検査ということですが、
経済産業省の施策として検査が盛んになるだろうというお話しでした。
人生は博打という考えもありますが検査結果をどう判断するかというリテラ
シーが問題になってくると思います。その辺の先生のお考えをお聞かせくだ
さい。また先般アンジェリーナ・ジョリーの母親が BRCA 陽性だったという
ことで乳房切除術を受けたという例がありましたが、日本ではどれくらいの
費用がかかるのかについてもお教えください。
神田:お金の話から致しますと、一番簡単な検査では 6~7 項目程度で 1 万円を切っ
ているものもあります。一方 300 項目ほどの検査では 6~7 万円かかるもの
があります。海外に行くともっと検査項目の多いものもあります。問題は何
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かというとその中身です。アンジェリーナ・ジョリーのあのケースは結果が
こうであれば乳がんになる確率が 70~80%でものすごく高い確率であり、検
査の意味があるものです。筋ジストロフィーにしても検査が陽性であれば
99%ほどの確率であり精度の高いものです。そのレベルの検査はほとんど病
院がやっています。私が今日問題にしたのは民間会社が検査ビジネスに入っ
てきている検査の項目というのは、そんな高い確率ではないということです。
具体例をいえば、肥満でしたら「100 人のうち 1 人の確率ですが、検査の結
果あなたの確率は 1 ではなく 1.2 あるいは 1.3 です」となります。見かけ上
大きな差のように見えますが正常な集団で 1 であるものが 1.2 や 1.3 になっ
たところで、それは「おまじない」でしかありません。そこのところを冷静
に判断してください。ですから病院で行う遺伝子診断で陽性となればそのリ
スクは高いものといえます。
C 型肝炎の新薬がありますが、遺伝子診断によってその薬が効くか効かない
かがわかります。このような検査は重要な意味がありますが、ビジネスの世
界で行われているものの中にはかなりいかがわしいものがあると思った方が
良いでしょう。検査している項目から何か行動を起こそうとしている時にち
ょっとリスクがあるかもしれません。つまり信頼性にかなり問題があると言
えます。既にアメリカの CDC が一部の検査会社に対して警告を発していま
す。ですが、近未来においては民間会社の検査レベルの精度は急速に上がる
と思います。すべての情報が無料で入手できるからです。それを誰でも自由
に使える。そのレベルになってくるとビジネスで行われる検査のレベルは急
速に向上します。ですから大きな会社はこの分野に入ろうとしています。そ
の目的はノウハウを手に入れるためです。
つまり膨大な情報を駆使して何ができるかということですね。一般の方にア
ンケートをとると 50%の方がそうした検査を受けたいと答え、大きなニーズ
があります。今後検査コストがどんどん下がっていくというのが現実です。
松岡:アンジェリーナ・ジョリーさんに関して少し疑問を感じています。
会場にも生まれつき遺伝子の多くに異常がある患者さんのご家族がいらっし
ゃいます。
そういう方でも環境が良ければ何の症状もなく生活をしている方がおられま
す。人間の能力とは私達が考えている以上にすばらしいものであり、しっか
りしていると思います。70%のリスクがあると言われても、30%そうならな
い可能性が残されているのであれば、冷静に対処することも考えていただき
たいと思います。
司会:池上先生の、「アクシデントを除くと人は簡単には死なない」というお話は、
私も共感いたします。老人病院に勤めておりますと不健康老人が多く、いつ
も感じるのは何をどこまでやるべきなのかということに悩みます。日本人は
生前に自分の生きざまを書くという文化が無いように思います。
それはなぜなのかということと、
「グレイト・エイジング」についてイムクル
スとして老人を大切にするためにどのような活動をしたらよいかということ
に関して先生のお考えをお聞かせください。
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池上:共同体社会~家族や恋人という小さなユニットを基本とする~がうまく機能
している生物しか残ってこなかった。
基本的に『愛』があるかどうかであり、それがないと長生きすることの意味
がないように思います。それともう一つは、きわめて無責任だと怒られるか
もしれませんが地球全体の人口調節がおこなわれてきたことです。
疫病であり、戦争であり、自然災害によるものですが、現在は結構なことで
すが戦争ができなくなり、医療がどんどん進歩していく。そうすると人口が
どんどん増えていく。これが地球にとって良いことなのかどうかが私にはよ
くわかりません。戦後 50 億人ぐらいだったのが、今は 70 億くらい、それが
90 億くらいになる。昔は自分の住んでいるところを愉しんでいたのですが光
通信やインターネットで情報があふれ、自分は不幸ではないかと思うように
なってしまった。そこをどう変えていくのかというのが大きな課題です。つ
まりリセットができなくなった社会をどう考えていくかが問題です。科学技
術の発展のスピードが地球の緩やかなスピードを超えてしまい廃棄物が溢れ
てしまい処理をすることができなくなってきています。そうしたことを前提
にして生命のことも考える必要があるのではないかと思います。
司会:先生が『愛』が大事だと言われました。現場で老人を看ていると、家族から
できるだけ生かしてくれと言われます。それが『愛』なのかなと思っていま
したが、年金をもらいたいがためにそのように言うのです。それが現場の実
態なのだと思うのです。
池上:先ほども言いましたが、ハグや握手といった皮膚的な接触が日本にはないの
です。ドイツ人と話すと、ドイツもないというのです。
皮膚的な接触が重要だというのが一つの答えではないかと思います。
宮田:もうそろそろ自覚的に自分の死を選ぶ時代が来てもいいのではないかと思い
ます。戦後復興の時のような精神のきれいさというものが失われて来たため
に私たちの社会を健全に維持するための行政コストが上がってきてしまった
と言えるのではないでしょうか。
司会:私もフランスに留学していた時にパリのラボでベーゼ(口でチュッチュッと
する)のを見て恥ずかしい思いをしました。そこまでしなくても日本では握
手をして声をかける、挨拶をするというコミュニケーションが必要かなと思
います。
フロア(女性)
:ハグとか握手と言われますけれど、相手が感染症などを患っておられたりす
る心配もあるので、頭を下げるだけで済んでコミュニケーションが図れる日
本はいいなと感じています。風邪予防のために手を洗いましょうと言ってい
るのになぜ、握手やハグを奨励するのでしょうか。私としては納得がいきま
せん。
池上:それにどうお答えすればよいかはわかりません。一つ言えることは例えば老
人が困っている時に手を差し伸べるという習慣が今の日本にはありません。
直接サポートするということに関して日本人は得意ではないように思います。
感染症の場合は別として、老人が何かあった場合にインフラで対処するので
はなく、そこに駆けつけるという感覚を育てるためにハグとか握手といった
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皮膚的な接触が重要だと考えています。
司会:宮田先生に質問です。健康管理をきちんとしている人は国のガイドラインで
保険料を安くするなどのインセンティブがあっても良いのではないかと思う
のですが、いかがでしょうか。
宮田:国民皆保険制度というのは感染症を中心とした医療の段階でできたものだと
いうことがポイントです。後に免疫力の個人差というものもわかってきまし
たが、その当時の理解では、全員同じに外部から来たリスクに感染するとい
う考えでした。ですから同じお金を払ったら同じ給付でよい、しかも集団と
して感染の機会を抑止すれば皆がハッピーになるというものです。
今私たちが直面している疾患構造というのは、それぞれジェノミックの違い
とかライフスタイルの違いによって生ずるので同じ保険料を納めて同じ給付
でよいのかという国民皆保険制度に対する疑惑がでてきています。それでよ
く努力した人は保険料を安くするということに関しては選挙の争点にしなけ
ればいけないような事柄ではありますが、どうやったら国民的な合意がとれ
るのかということです。官僚制度は大きな変化を嫌うので、弱者救済という
ことを考えると、健康強者に合わせるという議論はなかなか難しいことです。
私たちがもしやれるとしたら今の保険でカバーしていない治療法の料金に対
して負担をするということです。タバコを吸っている人たちの健康保険料を
増やすというよりも、タバコを 1 万円くらいにするということを考えるべき
でしょう。非常に良いメカニズムは保険料以外の悪いことをしている事柄に
課税することです。今、炭酸ガス税、ソーダ税を導入したアメリカの市があ
ります。これは炭酸飲料を飲みすぎて太ることを抑止するために作られたも
のであり、これからたぶん「肥満税」というようなものができるのではない
でしょうか。
司会:ありがとうございました。もう一つ宮田先生が日本はワクチンの後進国であ
るというお話をなさいました。B型肝炎のワクチンでさえも自治体からの補
助がでる定期接種になっていない。ジェノタイプ A という欧米型の
B 型肝炎が増えてきています。
外国では赤ちゃんの時に接種をするようになっているのに比べると確かに遅
れています。
あともう一つうかがいたいのは、ジフテリア・破傷風・百日咳は混合ワクチ
ンで行われていますが、今後どこまでの混合接種をやろうとしているのでし
ょうか。
宮田:下世話な話ですが、混合接種ではなく、個々に何回も接種したほうが医師が
儲かるという構造を変えなくてはいけません。もう一つは混ぜて接種して何
らかの副反応が起こった時に一体どれのせいなのかという科学的な研究を進
める必要があります。
松岡:ワクチンとタバコの話について意見を申し述べます。人種によって遺伝子が
だいぶ違うという話がありましたが、私も本当にそうだと思っています。タ
バコについて言えば、毛髪を調べることによって 7 種類の有害ミネラルを検
索するということを行っています。私の例を申し上げれば、私はタバコを吸
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ったことが一度もありません。ところが間接喫煙で増える鉛、カドミウム、
アルミニウムが異常高値を示し、慢性呼吸障害=閉塞性気管支障害(COPD)
となり体重は 37kg まで落ち、車椅子生活を余儀なくされました。調べてみ
たところヘビースモーカーが住んでいた建物に転居したことが原因だとわか
りました。第三次受動喫煙被害です。一方、毎日 40 本以上吸い続けていた
100 歳の方がいらっしゃいます。その方の毛髪を調べてみるとそれぞれの値
は一番低いレベルであり、何の健康被害もありません。
同じ日本人でありながら人によってこれだけ体質によって差が出るというこ
とを考えておく必要があると思います。ワクチンについても同様であり、ア
メリカでは確かに 3 種同時接種が行われており、特段の問題はないと言われ
ておりますが、日本では 2 種類までは良いが、3 種類を導入する前に日本人
の体質を慎重に検討していただきたいと考えています。
宮田:確かに慎重にやらなければいけませんが、今後の混合ワクチン化は避けられ
ないと思います。
司会:水島先生に質問です。セルベックスがアルツハイマーに効くということでし
たが、同様にセルベックスが女性の肌年齢、アンチエイジングに貢献したと
いうことはあるのでしょうか。
水島:そういうデータは残念ながらありません。ただしセルベックスを飲むと、血
中を回って作用しますので胃などでの臓器で熱ショックタンパク質(HSP)
が上がるので皮膚でも同様のことが起こる可能性はあります。マウスで HSP
を上げるとシミ、シワに対して有効であるということから人に効いてもおか
しくはないと思います。
ただエビデンスは今のところないという状況です。
松岡:先生に 2 つ質問があります。一つは私どもと三井温熱さんとの共同研究で 10
人の方に 3 週間やって、きちんとした熱についての前後のデータをとってい
ます。ホルモン、サイクリック AMP、免疫、HSP70 を調べています。有意
差をもって上がっていたのがサイクリック AMP だけで HSP はむしろ下がっ
ていました。先生の HSP の Study の中で、血中レベルで実際上がるのかど
うか、その過程はどのようになっているのか。がん治療に使っていらっしゃ
る先生に聞いてみたところ、HSP は 70 や 72 があったりして難しい。良さは
わかるが、どの HSP が上がっているのかがわからない。その前の Second
Messenger としてのサイクリック AMP を測ってみたら確かに上がっていた。
そのあたりのことをどのように考えたらよいのでしょうか。
もう一つは先生のご著書を読ませて頂きましたが、胃のペプシノーゲンを介
して HSP が上がっていくということはないのでしょうか。人間において細胞
ではなく、血液中のレベルが上がるのでしょうか。
水島:測っていらっしゃるのは血液細胞の中の HSP なのか外に出てきたものなのか。
外のものであるならば中のものと外のものとは関係がない。外のものは細胞
が壊れた時に出るものです。ある臨床検査会社と協力して細胞の中の
Messenger RNA のレベルで HSP を測るシステムを作り、もうすぐできると
思いますので、それを見ていただきたい。これは確かに有益な HSP が増えて
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いるという証拠にもなりますし、皮膚や胃などの他の臓器でもたぶんパラレ
ルに動きますので、違った結果になる可能性があると思います。基本的には
HSP は一つのタンパク質によって制御されていますので HSP70 でも 90 で
も 47 でも同じように増えるはずですので一つのものをみていただいたら、他
のものも増えているだろうと類推していただいて構わないだろうと思います。
松岡:HSP70、HSP72 の増加には熱や熱以外のいろいろなショックを与える影響
を示唆している論文もあるのですが・・・。
水島:そのあたりはたぶん同じだと思います。ヒトだと 72 といったり、マウスだと
70 だといったりと混沌としている部分はありますが、基本的には熱でもアル
コールでもあるいは薬でもだいたいほとんどのものを増やしていきます。中
には特殊なものもありますが基本的にはストレスがかかってタンパク質が変
性して、それによって HSP が増えていきますので全般的にあげていくという
ことで、お風呂であれ、スポーツであれ全般的に高めていくことが体にとっ
て良いということが言われます。
東中川:お風呂に入って HSP が上がるレベルと、セルベックス投与によって上がるレ
ベルには差があるのでしょうか。もう一つは猛暑や酷暑の中でセルベックス
というものは効果をもつのでしょうか。
水島:後半のご質問にはどうもよくわからないとお答えするしかありません。
暑い夏の体に対するダメージというものと、単純に細胞を熱してタンパク質
が変性するということは違う現象のような気がします。 脱水やホルモンバ
ランスなどの要因もありますので、夏の暑さと HSP を関連付けている研究は
ありません。これからそういった研究があれば面白いとは思います。
セルベックスとお風呂の話ですが、ざっくり言いますと皮膚においてはセル
ベックスと同じようなレベルまでお風呂で増やすことはできます。
ただしそれ以外の臓器の場合は温まった血液が体の中を周って温められると
いうことですので、時間もかかるしレベルも低いといえます。
例えばアルツハイマーを狙って頭で HSP を増やすことは不可能だと思いま
す。他の臓器に関してはセルベックスや超音波などの機器を用いて温めると
いう様な方法が必要だろうと思います。
司会:徳山先生に質問です。熱いとか痛いとかいうことを感じる体性神経に対して
交感神経・副交感神経といった自律神経はわれわれは自覚できません。
熱いということが自覚できない交感神経にどのレベルで胸髄の神経幹のレベ
ルなのか、どの辺のレベルで連携して熱いということが自律神経の方に伝わ
るのでしょうか。
徳山:わかる範囲でお答えします。例えば背中の皮膚を手でポーンと叩いた瞬間で
も交感神経が動いているという実験が電気生理学的なものだと思いますがわ
かっています。ただ本人はわからない。もっともよくわかるのは侵害刺激で
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あり、不快感を伴いますので本人が感じられる。あとは侵害刺激が強ければ
強いほど当然脊髄反射を介して運動神経が動くはずです。おそらく屈曲反射
というのは必ず起こるはずで、その部分で運動神経も動くというのは間違い
がありません。そういった情報を突き詰めると特に胸髄レベルでは脊髄の灰
白質の部分に感覚神経の細胞体、交感神経の細胞体、運動神経の細胞体があ
り、刺激を加えた時に確実に刺激レベルに応じて反射が起こることがわかっ
ています。
司会:熱いという感じまでいかないと効かないといえるわけですね。
徳山:正確にいうと、例えばお灸の刺激というのは急にガッと熱くならないわけで、
だんだん熱くなってきた、我慢できる、熱くて声を出すというようなレベル
であっても十分に自律神経系は動きますので、運動神経反射が起こらないよ
うな刺激でも効果は出せると思います。
司会:温熱療法の場合は局所的な熱刺激なのでしょうが、温泉に入るということの
理論的根拠と考えて良いのではないかと思います。
松岡:私も温泉が大好きですが、2014 年の 1 月からずっと德山先生の温熱療法を 1
週間に 1 度経験いたしました。結果、35 度台であった体温が 1 度ほど上がり
ました。何がはっきり違ったかというと、私共のクリニックでは、免疫細胞
(T細胞)を直接調べています。免疫細胞(T細胞)というのは理想的には
2500 あってほしい。1000 以上あればまあまあ、900 以下だと何か腫瘍細胞
でもあればドーンと癌化しやすくなると観ています。私はこのT細胞が、い
つも 400 とか 500 というようにすごく少なかったのですが、今は 1000 から
1200、1300 という数値を示しており、それ以下にはなっていません。それ
は一つには体温が 1 度上がったことによるものだろうと思います。さらに足
がいつもしびれていたのが、ほとんどなくなりました。温泉に毎週行っても
同じような結果が得られる人はそれでも良いと思います。私は食事療法など
何年にもわたって続けて来ていましたが免疫細胞のT細胞だけはどうしても
1000 以上に上がらなかったのが、温熱療法を受けることによって改善しまし
た。
司会:会場で受けた方のご意見をどうぞ。
フロア(女性)
:手軽に持ち運びのできるもの~家庭で使うことのできるものがあるのか、ま
た遠赤外線を出す効果があるのかなど温熱器についての製品説明をお願い
したい。
徳山:遠赤の効果を謳っていますし、効果があります。
フロア(女性):電磁波についてはどうなのでしょうか。
徳山:これは医療機器ですので国の基準に則っています。だからと言って全く電
磁波をカットしているかというとおそらく蛍光灯 1 本位の電磁波は出てい
るのではないかと思います。
神田:科学者の一人としてこの器械は非常に興味があり、また効果があると思い
ます。
徳山:先ほど本の話が出ましたが、
「癌が治る」と書かれているのは三井先生の本
であり、私の本は薬事法に抵触しないように、そうしたことは書いており
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ません。
田中:B 型肝炎について言っておかなければいけないことがあります。日本と欧
米の B 型肝炎の状況が異なり、日本の場合は母子感染によるものであり、
生まれるときに母親からうつってくるわけですが、欧米の場合は成人にな
ってからうつるものが多いという状況です。
フロア(男性):水島先生に質問です。主鎖がβ1,3 グルカン、側鎖のβ1,6 グルカンのキノ
コはどんなキノコなのでしょうか。
水島:私はその点、あまり詳しくありません。私が今回使用したのは黒酵母由来
のものでして黒カビなのですが、イメージがあまり良くないのでキノコと
申し上げており、どういう種のキノコが HSP を産生するかについてはやっ
ておりません。
フロア(男性):セルベックスは皮膚のランゲルハンス細胞を活性化させるのでしょうか。
プロポリスは活性化させるということを聞いたことがあるのですが・・。
水島:セルベックスを飲ませたマウスやヒトで皮膚を調べたというのは今のとこ
ろありません。これまでいろいろな細胞でセルベックスの HSP に対する効
果を見てきておりますが、どのような細胞でも HSP を上げておりますので
HSP は上げると思いますが、上げた結果何が起こるかについてはわかりま
せん。
フロア(男性):松岡先生に質問です。C-AMP はどのようなことで測定し、数字としてださ
れているのでしょうか。
松岡:水島先生も私共の実証実験と同じく、HSP は血中レベルを調べてもあまり
意味がないという話をしてくださいましたが、HSP の血中レベルを測定し
た他の先生によると水島先生と同様とのことでした。そこで、HSP 血中濃
度の測定のかわりに HSP の代謝に関わっている血中サイクリック AMP
(C-AMP)を計測すると良いという情報をいただきました。私共は、温熱
療法の前後で C-AMP の血中濃度を測定したところ、C-AMP の血中レベル
は有意差を持って下がっており、温熱と C-AMP との関係が確認されました。
又、癌の治療に C-AMP を投与すると癌細胞が繊維芽細胞に変わってしまう
という研究がいくつかありました※2※3。現在私どもは、癌細胞に C-AMP を
用いた基礎研究と臨床面での有用性を検討する意味で C-AMP の蓄積性と癌
への効果について調べています。
フロア(女性)
:私は松岡先生の患者です。関節リウマチで苦しみ肝臓も悪くなりリウマトレ
ックスを飲み、痛みと腫れが酷くどうにもならなくなって受診しました。
昨年の 11 月からリューマチの薬をやめ、その代わり食事療法・温熱療法・
高濃度 Vitamin C 点滴を受けています。温熱が不思議なのは痛いところに
はあてないのですが、指もよくなり先日の検査では炎症反応がゼロに近く
なり、もうリューマチとはいえないねと言われるほど改善しました。松岡
先生とであって私の人生が変わったなと思っています。
松岡:補足をいたします。彼女が飲んでいたのは抗がん剤の一種であるリウマト
レックスでした。3 年以上リューマトレックスなどの免疫抑制剤を処方さ
れている人がリンパ腫になりやすいという報告もあります※4。長期投与に
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関しては慎重に取り組む必要があると思います。彼女の場合は現在リウマ
チ因子だけではなくその他の異常値が全くありません。
フロア(女性)
:医学や化学がかなり発達しているということはわかっているのですが、結局
食べたものが自分の体をつくるというところが一番大事なところではない
かと思っています。本日のプログラムの中に『動物性タンパク質・油脂を
使っていないお食事と新商品』という記述があり、なぜ今日のような研究
会の中に食品のことがありましたが、今回のお話の中には全然出ていなか
ったので試食会のときに説明があればよいなと思っています。
松岡:健康食とは何ですかというご質問もいただいておりました。今日のお食事
会をサポートしてくださっている石井食品さんと女子医大のグループであ
るイレイムスが 10 年かけて一緒に作り上げてきたというのが「治療食」と
いう名前で提供しているものであり、パンフレットをご覧ください。基本
は癌などを病んでいる人がそれを食べて体調が良くなるものでなければい
けないということです。塩も砂糖も精製されていないものを使い、添加物
はゼロ、酸化しやすい油も入れず、美味しいものを作ってくださいとお願
いしました。また抗酸化力の強いお野菜を供給してくださるベジマルシェ
さんという野菜屋さんなども紹介しています。基本は食です。去年、一昨
年は「食」についてしっかりとやりました。日本の土壌は残念ながら、ほ
とんどがアンモニアが検出されない良質の土のような完熟堆肥ではできて
いないという状況にあるとの報告があります※5。肥沃で有用微生物がしっ
かりとある土壌で育てられたものを提供しており、そういったものを「健
康食とか治療食」といっています。
司会:よく You are what you eat といわれますが、まさしく食べるものが大事な
のですね。ありがとうございました。
参考文献
※1 Razzaque.et al. Nat.Genet.39,1013-1017(2007)
※2 Hisae,A.W.et al.P.N.A.S.68(1971)
※3 Krystosek.A .et al 87(1990)
※4 Hashimoto.A.et al. J Rheumatol.2015:42:4-8
※5「データが語るおいしい野菜の健康力」及川紀久雄 丹羽真清 霜多増雄 著 P138
丸善出版㈱ 2005 年発行
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