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地方における視覚障害者のバリアフリーの課題と提案 〜柏崎市のケース
地方における視覚障害者のバリアフリーの課題と提案 〜柏崎市のケーススタディー〜 200914027 田村 真大 指導教員 黒木 宏一 1. 背景、目的 上記表 1 から、柏崎市内の駅は無人駅が多く、駅を単身 目の不自由な方々にとって聴覚情報、触覚情報は大変重要 利用する際にはソフト面のフォローが受けられない場合が である。特に、視覚障害者が交通機関を利用する際、正確な 多い。そのためハード面の設備を充実させる必要があるの 情報入手が阻害された場合には、死亡事故などの大きな事故 だが、ほとんどの駅において点字ブロックが敷かれている にも直結する。視覚障害者にとって、情報収集のサポートは暮 のはホームのみで、券売機をはじめ、ベンチや改札口を探 らしや生命の維持において、重要な役割を果たす。 すのが困難な状況である。よって現存する駅において視覚 視覚障害者の情報入手法として誘導ブロック、音声機、点字 障害者が利用可能な駅は少ない。 などがあり、こういった情報の支援は JR の駅、及びその周辺を 3-2. 都市部と地方のバリアフリーの差の把握 中心として整備が進んでいる。しかし、こうした交通機関のバリ 都市部のバリアフリーが進んでいる原因には、施設の数 アフリー化は、地方においては、その整備が遅れているという が大きく影響している。誘導ブロックは国道や、福祉施設、 課題が挙げられる。 公共施設の周辺に敷かれている。柏崎を例に挙げると柏崎 そこで、本研究は視覚障害者の歩行や公共機関の利用を対 駅〜市役所の間、または国道8号線に集中している(図2)。 象として問題点を明らかにし、地方でも実現可能なバリアフリ 一方、都市部である大阪は、駅周辺に多くの公共、福祉 ーを提案するのが本研究の目的である。 施設が存在し、駅を起点として主要施設まで点字ブロック 2. 研究のフロー が敷設されており、バリアフリーの普及率も高い(図 3)。 本研究の流れを右の図 柏崎市役所 に示す。まず、柏崎市 • 国道 内の JR のバリアフリ ー状況を把握する。次 に、都市部と地方のバ リアフリーの差を調査 • 介護福祉施設 えみふる プラザ柏崎 県道 • 点字ブロック 柏崎中央病院 する。そして、調査で 柏崎駅 にヒアリングを行う。 視覚障害者の抱えてい 図 1 研究のフロー る問題や意見を聞きだし、改善策を考案し、今後の提案 へと導く。 3-1.JR のバリアフリー状況の把握 表 1 柏崎市内のバリアフリー状況 図 2 柏崎駅周辺の施設及び点字ブロックの敷設状況 済生会 中津病院 介護老人保健施設 青美 阪急三番街診療所 阪急ターミナルビル 大阪駅 阪急グランドビル 老人ホーム 淳風おおさか ヒルトンプラザ WEST 大阪中央病院 桜橋渡辺病院 KEC 介護福祉学院 ◎・・・構内、ホームとも ▲・・・ホームだけ コスモホームヘルプサービス 図 3 大阪駅周辺の公共、福祉施設 4-1.柏崎市在住の視覚障害者へのヒアリング である。ヒアリングの結果から見ても柏崎駅は視覚障害者 視覚障害者福祉協議会に連絡をとり、柏崎在住の視覚障 であっても利用頻度が高い。よって進行方向の維持という 害者に接触することができた。ヒアリング対象者は計4名、 意味でも点字ブロックが必要である。点字ブロックは本来、 内3名は柏崎市の福祉団体「希望の光」の方たちである。 要所要所に敷設することで情報を正確に伝えることができ ヒアリングの結果、視覚障害者については以下のことが る。しかし、点字ブロックはあくまで要所要所なので、細 わかる。 かい情報は伝わりにくく結果、情報が得られない恐れがあ 柏崎市はバリアフリーの普及が遅い。既存のバリアフリ る。そこで音、つまり「聴覚」によるサポートを加えるこ ーでも情報が正確でないものがあるうえに、主に国道しか とによって、自分の位置や障害物の情報をより正確に知る 整備されておらず、外出するにも国道を経由しなければな ことができる。図 6 には音響ポールを設置し、ポールに点 らない。したがって、視覚障害者の外出先は主に国道や、 字を振って触ることによって自分の位置を確認できると歩 市内といった点字ブロックが敷かれている箇所に集中して きやすい。 いる(図 4) 。外出頻度は 4 人ともほぼ毎日で、家の周辺は 以上、これらの提案をもとに柏崎市が視覚障害者にとっ 道を覚えていて点字ブロックなしでも歩くことができる。 て住み良い街になることを望む。 しかし、覚えていない道では点字ブロックに頼らざるを得 • ない。柏崎市内は点字ブロックの範囲が狭い、その背景に 点字ブロック は視覚障害者が社会の表に立てなかったことが伺える。つ まり視覚障害者が町づくりの設計に関われずに晴眼者のみ イトーヨーカドー で設計してしまったことが原因である。 視覚障害者の情報源としては、点字ブロックをはじめと する「触覚」と直接触れずともわかる「聴覚」があり、視 柏崎駅 ホームセンター ムサシ ウオロク 覚障害者は外出の際、この二つを主に使っている。 「触覚」 では点字ブロックだけでなく白杖を使い周りの障害物を捉 ジョーシン ケーズデンキ えることができ、 「聴覚」は周りの会話から交通状況まで分 かる。 図 4 視覚障害者の主な外出先 4-2.結論 JR については既存の改良はコストの面から見ても難しい 状況であることから大きな改良を加えることはできない。 ただ、古い駅にもきれいな点字ブロックがあることから 遅れながらも整備はされてきていることがわかる。しかし、 点字ブロックがあるからといって安全というわけではなく、 重要なのは点字ブロックの先になにがあるか、である。点 字ブロックの上を歩いていても、自動券売機を利用するこ とは難しい。しかし音声の補助、 「聴覚情報」を提供するこ とで自動券売機を使うことが可能である。現在の柏崎市に 図 5 駅の改善例 おいても普及されているバリアフリーは点字ブロック、つ まりは「触覚情報」が多い。そこに「聴覚情報」を加える ことで視覚障害者にとって今まで以上に住みやすい環境に なることは間違いない。 えきまえ 5.提案 音響ポール上部 点字ブロックに頼ってばかりだと目先の障害物や人にぶ つかってしまう恐れがあるため、点字ブロックの「触覚」 に音の「聴覚」を合わせる。点字ブロックの上を歩いてい てもその先になにがあるのかはわからない。よって、直接 触れずとも安全地帯の位置が分かるよう音をだし、視覚障 害者をひきつけるものがよい。 (図 5) 商店街についてはまず、点字ブロックを敷くことが先決 図 6 柏崎商店街の改善例