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分散電源対応型 SVR制御方式の開発

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分散電源対応型 SVR制御方式の開発
梶田 寛※1 神部 晃※1
分散電源対応型
SVR制御方式の開発
Hiroshi Kajita
Akira Kanbe
Kenji Fugawa
Shinya Kadokura
苻川 謙治※2 角倉 慎哉※3
Development of SVR control system for dispersed power supply
1. まえがき
一次側
系統接続
二次側
近年、高圧(6.6 kV)配電線には、太陽光発電、熱併給発
SVR
電(Co-generation)など分散電源の連系が増えてきている。こ
順
送
変電所側(電源)
末端側(負荷)
の背景には、地球規模の温暖化防止対策として CO 2 排出抑
逆
送
末端側(負荷)
変電所側(電源)
制のための太陽光や風力などの自然エネルギーの利用や、
ループ
電力自由化に伴う各自治体や企業の発電事業への参入など
がある。今後、こうした分散電源はさらに増加していく傾
向にある。
変電所側(電源)
(a)系統接続
一次側
電力潮流
二次側
SVR
一方、電力の安定供給とその品質管理は、今日の高度情
順潮流
電力潮流方向
報化社会を支える重要な役割を果たしている。特に、配電線
系統はユーザに直結しており、電力会社では電力の品質向上
逆潮流
電力潮流方向
に対し様々な施策が行なわれている。その一つに、配電線系
(b)電力潮流
の
統への自動電圧調整器(以下、SVR:Step Voltage Regulator)
設置がある。SVR は、配電線の電圧降下を補償するため、
運転モード
系統接続
電力潮流
系統の途中に直列に設置され、自動的に変圧器のタップを
Ⅰ
順 送
順潮流
Ⅱ
逆 送
逆潮流
が、近年の分散電源連系に伴い、系統が変化してきたた
Ⅲ
順 送
逆潮流
め、SVR の電圧調整が適切に行えないという問題が懸念さ
Ⅳ
逆 送
順潮流
切換えて電圧を調整する装置である。
従来の系統では SVR は有効に電圧調整を行なっていた
れている。この問題は、系統状態により複雑な様相を示
し、各電力会社や関係企業で研究が行われている。当社に
おいても、かねてより「配電線系統の電圧解析手法(1)」な
ど、複雑化する配電線系統に対する解析手法の構築を行な
ってきた。
今回、分散電源に対応した SVR 制御方式の開発にあた
り、現状の問題点と既に実用化されている制御方式の整理
を行なうとともに、配電線系統の状態を把握するための基
礎解析を行なった。それらの結果をもとに、独自の制御方
式を開発し(特許出願中)、検証機の製作を行なって新制御
方式の妥当性を確認した。
なお、本開発は、中部電力株式会社殿との共同研究で実
施したものである。以下にその内容を紹介する。
2. 従来型制御方式と問題点
2.1 従来型SVRの制御方式
(1)系統接続と電力潮流
SVR は、配電線の系統接続と SVR を通過する電力の方向
すなわち電力潮流により、最適となるタップへの制御の仕
方が異なる。SVR の運転状態の定義を図 1 に示すが、系統接
続状態と電力潮流状態の組合せで、運転モードはⅠ∼Ⅵの6
※1 開発環境事業部 新技術開発G
※3 中部電力株式会 販売本部 配電部
10
変電所側(電源)
Ⅴ
(c)運転モード
ループ
図1 SVRの運転状態
順潮流
種類に分類される。このなかで、系統接続がループの状態
(ⅤとⅥ)は、系統切替作業中の短時間の状態で、通常は
SVRの動作に影響はない。
(2)運転モードと電力潮流
従来の系統であれば、配電線に分散電源が連系されてい
ないので、運転モードはⅠかⅡ、すなわち「順送−順潮
流」か「逆送−逆潮流」モードしかなかった。このため、
交流電力方向リレー(67リレー)にて、電力潮流を調べ、運
転モードがⅠかⅡかを判定して、SVR の制御方向を切換え
ることにより良好に電圧調整を行なうことができた。
ところが、近年、分散電源が多く連系されるようにな
り、運転モードがⅢかⅣの状態の発生が考えられるように
なった。このような場合に SVR の制御をどのようにしたら
良いかが、近年浮上してきた問題である。この問題の解決
方法を本稿で検討する。
(3)従来型の制御方式
従来型の制御方式には 2 種類の方式がある。いずれの方式
でも、運転モードⅠの場合は二次側電圧調整を行ない、タッ
プ切換により二次側を設定電圧に近づける制御動作をする。
※2 電力事業部 変圧器設計G
愛知電機技報 No. 26 (2005)
分散電源対応型SVR制御方式の開発
運転モードⅡの場合に、次の 2 種類の制御方式がある。
Ⅲ、Ⅳの場合には正常な動作とならないことがわかる。
① 逆送タップ固定方式
(3)問題解決方法の方針検討
逆送時の場合にタップを固定する方式。一般的には素通
基本的に SVR は、系統に接続されて自律的に電圧調整を
しタップか一次側昇圧のタップ位置に固定する。
② 双方向電圧調整方式
行なう機器であるので、従来の SVR 単体では系統接続状態
の判断が困難とされていた。
逆送時の場合にも、電圧調整を行なう方式。すなわち、
これを解決する方法として、配電線自動化システム等
この場合には一次側電圧調整を行なうことになり、タップ
の上げ下げ操作が順送制御とは逆になる。
の、系統全体を把握できるシステムからの遠隔情報を受け
2.2 従来型制御の問題点
には SVR の遠制化や、自動化システムへの SVR の取込みな
て、接続を判断する方法も考えられる。しかし、このため
どでコストアップとなる。
一方、自律制御を崩すのであれば、配電線系統全体の電圧
(1)電力潮流による系統接続判断
調整をするシステムを新しく考えなければとの議論もある。
従来の 67 リレーによる検出は、電力潮流によって順送か
さらに、次に述べるように、系統接続状態による SVR 電
逆送かの判断をしているため、運転モードⅢとⅣでは順送
圧制御の問題だけでなく、電源と負荷のインピーダンス比
と逆送を逆に判断してしまうという問題がある。
により逆制御となる問題も検討のなかで判明してきた。
(2)逆判断時のSVR動作例
そこでさらに検討を進め、SVR 自体で自律的に最適な制
実際の問題がどのように発生するかを図 2 に示す。運転モ
御方法を判断できる検出方式を探求することにした。
ードⅠ、Ⅱの場合には正常に電圧調整をするが、運転モード
系統モデル図
潮流
S/S
一次側
入
負
荷
変電所A
管理電圧上限
二次側
SVR
FCB
切
S/S
負
荷
変電所B
管理電圧上限
SVR 基準電圧
SVR 基準電圧
管理電圧下限
変電所A
< 順送判断:正 >
SVR 設置点
負荷側
切
負
荷
変電所A
管理電圧上限
二次側
SVR
入
負
荷
負荷側
管理電圧上限
SVR 基準電圧
FCB
S/S
変電所B
系統電圧
逆送ー逆潮流
(系統切替)
S/S
一次側
SVR 設置点
SVR二次側電圧を一定に調整する。
潮流
運転モードⅡ
管理電圧下限
変電所A
SVR二次側電圧を一定に調整する。
FCB :フィーダ用遮断器
FCB
双方向電圧調整方式
系統電圧
FCB
系統電圧
運転モードⅠ
順送ー順潮流
逆送タップ固定方式
昇圧固定時
< 逆送判断:正 >
管理電圧下限
素通し固定時
負荷側
SVR 設置点
系統電圧
運転モード
変電所B
管理電圧下限
負荷側
SVR一次側を昇圧固定または素通しタップへ固定する。
SVR 設置点
変電所B
SVR一次側電圧を一定に調整する。
管理電圧上限
分散電源
入
一次側
負
荷
変電所A
G
二次側
SVR
FCB
切
負
荷
S/S
変電所B
< 逆送判断:誤 >
SVR 基準電圧
電圧が異常低下
下
管理電圧下限
変電所A
管理電圧上限
変電所A
SVR 設置点
下限タップ
SVR 設置点
昇圧動作
昇圧固定時
管理電圧下限
系統電圧
順送ー逆潮流
(分散電源連係)
FCB
S/S
素通し固定時
系統電圧
運転モードⅢ
潮流
系統電圧
SVR 基準電圧
分散電源 負荷側
連系点
連系点
SVR一次側を昇圧固定または素通しタップへ固定する。
電圧が異常上昇
昇
SVR 基準電圧
管理電圧下限
変電所A
SVR 設置点
降圧動作
固定タップ位置は本来一次側を考慮して決められるた
分散電源 負荷側
連系点
上限タップ
分散電源 負荷側
連系点
SVR一次側を一定に調整する。
しかし一次側は変電所が
め、
二次側電圧が意図した電圧にならない場合がある。
SVR 一次側を一定に調整する。しかし一次側は変電所が接続されているため電圧はほ
とんど変化せず、二次側電圧が変化してしまう。これによりタップは極
限まで移行
接続されているため電圧はほとんど変化せず、
二次側電圧
し、結果的に二次側電圧が異常に低下または上昇してしまうこととなる。
が変化する。
これによりタップは極限まで移行し、
結果的に
二次側電圧が異常に上昇または低下することとなる。
管理電圧上限
分散電源
逆送ー順潮流
(分散電源連係)
S/S
切
変電所A
昇圧動作
一次側
負
荷
二次側
SVR
負
荷
< 順送判断:誤 >
FCB
入
S/S
系統電圧
FCB
「逆送固定タップ方式」
「双方向電圧調整方式」共に
電圧が異常低
上限タップ
下
負荷側
分散電源連系
管理電圧下限
SVR 設置点
変電所B
降圧動作
共に通常の順送-順潮流制御を行ためSVR 二次側
を一定に調整する。しかし二次側は変電所が接
定に調整する。
しかし二次側は変電所が接続されてい
続されているため電圧はほとんど変化せず、一
次側電圧が変化してしまう。これによりタップ
るため電圧はほ
とんど変化せず、
一次側電圧が変化す
SVR 基準電圧
に低下または上昇してしまうこととなる。
る。
これによ
りタップは極限まで移行し、
結果的に一次
は極限まで移行し、結果的に一次側電圧が異常
電圧が異常上
昇
側電圧が異常に上昇または低下することとなる。
管理電圧下限
負荷側
「逆送固定タップ方式」「双方向電圧調整方式」
通常の順送-順潮流制御を行う
ためSVR二次側を一
下限タップ 管理電圧上限
点
変電所B
系統電圧
運転モードⅣ
SVR 基準電圧
潮流
G
分散電源連系点 SVR 設置点
変電所B
図2 各系統状態におけるSVR動作
愛知電機技報 No. 26 (2005)
11
3. SVR電圧制御の基礎解析
3.1 電圧計算
った。結果を図5 に示す。
この場合は、 k = 1 付近で中間制御となり、 k > 1 で不足
制御となることがわかる。逆制御は存在しない。
まず、SVR による電圧制御の原点に戻って、解析検討を
I0
行なうこととした。
分散電源の有無など、異なった系統で、SVR の二次側に
対する一次側のインピーダンスの比( k )を変えて、SVR の
SVR
V 0
一次側
Z 1
二次側
V 1
V 2
1: m
Ia
Za
CV
電圧制御結果がどのようになるかを調べた。
素通しタップから二次側電圧を 1 タップ上げる操作をし
て、その操作前後の電圧を計算して比較した。計算に際し
CV:定電圧電源(変電所)
V 0:送出電圧
I0 : 送出電流
ては、変電所を定電圧電源、分散電源を定電力電源として
扱った。各運転モードの計算結果を、図 3 ∼ 5 に示す。な
V1 : SVR一次側電圧
V2 : SVR二次側電圧
Ia : 負荷電流
m : 1タップ分の変圧比
Z 1: 一次側線路インピーダンス
Za : 負荷インピーダンス
(a)
系統モデル
お、分散電源のインピーダンス表現などの計算方法は、参
考文献(1)を参照されたい。
200
150
(1)運転モードⅠ/Ⅱ
100
電圧変化量[V]
3.2 計算結果
50
0
-50
運転モードⅠ
(Ⅱも同様)の計算結果を図3 に示す。
二次側電圧変化量
-100
計算結果より、インピーダンス比 k の値が大きく(電源側
一次側 〃
-150
0.001
のインピーダンスが大きく)なると、タップ上げ操作後の電
0.01
圧変化量が小さくなる。k> 0.3 で、二次側の上昇値より一次

【計算条件】V0=6600[V]
側の降下値のほうが大きい不足制御となり、さらに k > 1 に
1
10
jθ
 a k=ke

Z1=kZ
θ=0 m=1.023
(b)
計算結果
なると一次側、二次側ともに電圧が下がってしまう逆制御
となることがわかる。
0.1
インピーダンス比 k
図3 運転モードⅠの電圧計算結果
このような不足制御や逆制御は、非常に亘長の長い配電
線の末端に SVR が設置され、その二次側に大容量の負荷が
接続された場合に発生する。
I0
しかし、電圧管理がなされた現実の配電線系統では、ほ
とんどが k < 0.3 以下であると推測される。仮に不足制御の
SVR
V 0
CV
一次側
Z 1
V 1
圧が調整され、系統全体としては正常に電圧調整が行なわ
れていると考えられる。
この場合は、系統接続と電力潮流が逆転する場合で、分
100
域であることがわかる。運転モードⅢにおける不足制御や
逆制御は、亘長の長い配電線の末端に大容量の分散電源が
連系された場合に発生する。こうした現象は、今後の配電
線系統の構築や運用において考慮すべき事象の一つとなっ
てくる。
(3)運転モードⅤ/Ⅵ
基礎解析の目的で、系統ループ状態についても計算を行な
12
電圧変化量[V]
150
制御となる領域は k > 0.7 、逆制御となる領域は k > 1.1 の領
Ia
Za
CP
Ic
Zcp
200
運転モードⅢ
(Ⅳも同様)
の計算結果を図4 に示す。
計算結果は、分散電源の容量により多少異なるが、不足
V 2
(a)系統モデル
(2)運転モードⅢ/Ⅳ
の容量は負荷容量の 1.1 倍と 1.4 倍の2 種類で計算した。
1: m
CP:定電力電源(分散電源)

Ic:分散電源送出電流

Zcp:分散電源のインピーダンス表現
領域が存在したとしても、前段に設置された SVR により電
散電源の容量を負荷容量よりも大きくしている。分散電源
二次側
50
0
-50
-100
-150
0.001
CP容量小の場合の二次側電圧変化量
CP容量大 〃
CP容量小の場合の一次側電圧変化量
CP容量大 〃
0.01
0.1
1
10
インピーダンス比 k
【計算条件】
V0=6600[V] Z1=kZa′ Za′:ZaとZ cpの並列インピーダンス
2
V2
ja


  c=ce
a=π
k=ke jθ θ=π m=1.023  =一定 Zcp=cZa
Z cp
CP 容量小:c=0.9(タップ切換前)
CP 容量大:c=0.7(タップ切換前)
(b)
計算結果
図4 運転モードⅢの電圧計算結果
愛知電機技報 No. 26 (2005)
分散電源対応型SVR制御方式の開発
SVR
V 01
I01
一次側
Z 1
V 1
CV
二次側
V 2
1: m
Z 2
4. 分散電源対応SVR制御方式
V 02
I02
CV
V01,V02:送出電圧
I01 , I02 :送出電流
Z2:二次側線路インピーダンス
分散電源に対応した SVR の制御方式として、現在までに
次のような方式が提案されている。
(a)
系統モデル
(1)電圧変化量判定方式(2)
200
SVR のタップ切換時に電圧変化量を計測し、SVR の制御
電圧変化量[V]
150
方法を決定する。
100
50
(2)インピーダンス判定方式(3)
0
SVR のタップ切換時に電圧・電流変化量を計測し、それ
-50
らから系統のインピーダンスを計算し、SVR の制御方法を
二次側電圧変化量
-100
-150
0.001
4.1 既存の制御方式
一次側 〃
0.01
0.1
1
10
インピーダンス比 k
jθ
 2 k=ke

【計算条件】 V01=V02=6600[V]Z1=kZ
θ = 0 m=1.023
(b)計算結果
決定する。
(3)遠方制御判定方式(4)
遠方からの素通し制御の有無により、逆送を判断する方
法である。逆送する場合に一旦 SVR を素通し制御すること
を利用し、SVRの制御方法を決定する。
図5 運転モードⅤの電圧計算結果
(4)各方式のまとめ
3.3 解析結果のまとめ
各方式の比較を表 1 に示す。いずれも、一長一短あり、
SVR単独でかつ確実に判定できる方式が望まれている。
解析の結果、SVR の二次側に対する一次側のインピーダ
ンスの比 k の値により、SVR の制御結果の様相が変化するこ
とがわかる。このことは、系統接続や電力潮流の如何にか
かわらず、インピーダンス比で判断すれば、SVR の制御方
法が決定できることを示唆している。
4.2 インピーダンス比判定方式
筆者らは、SVR 単独でかつ確実に判定できる新しい方式
として、「インピーダンス比判定方式」を考案した。
計算結果のまとめとして、SVR の制御結果とインピーダ
ンス比との関係を、図 6 に示す。
この結果より、逆制御となる k の領域が明確になった。す
なわち、SVR による電圧制御が正常となる領域(不足制御も
は、k<1 の領域としてさしつかえない。これに
正常範囲内)
(1)制御判定原理
この方式は、SVR の二次側に軽負荷を短時間挿入し、そ
の時の電流値のみの変化でもって、SVR の一次側と二次側
とのインピーダンス比を求めて制御を判定する方式であ
より、SVR の電圧調整は、k < 1 であれば、通常の順送制御
る。微少な電圧変化量の測定を必要としないところが、本
(二次側電圧調整)とし、k > 1 であれば、逆送制御(固定タ
表1 分散電源対応電圧制御方式の現状比較
ップまたは一次側電圧調整)とすれば良いことがわかった。
SVR 電圧制
御
電圧変化(タップ上げ操作)
(操作前)
Ⅰ/Ⅱ
運転モード
Ⅲ/Ⅳ
Ⅴ/Ⅵ
k<0.3
k<0.7
k<1.0
k≒0.3
k≒0.7
k≒1.0
(操作後)
二次側
正常制御
一次側
方 式
判定方法
特徴
SVRのタップ切換時に、一次側 ・SVR単独での判定が可能。
と二次側の電圧変化量を計測す ・判定にタップ切換を必要とす
電 圧 変 化 量 る。負荷側の電圧変化量に比べ
る。
判定方式
て変電所側の電圧変化量が小さ ・微小な電圧変化を測定する必
くなることに着目して、電圧変
要がある。
化量の大きい方を調整する。
二次側
中間制御
一次側
二次側
不足制御
0.3<k<1.0 0.7<k<1.1
k>1.0
一次側
分散型電源が連系された場合で
も、負荷側のインピーダンスに
インピーダンス
比べて変電所側のインピーダン
判定方式
スが小さいことに着目して、イ
ンピーダンスの大きい方を調整
する。
二次側
逆制御
k≧1.0
一次側
図6 SVR制御結果一覧
愛知電機技報 No. 26 (2005)
k≧1.1
-
遠方制御
判定方式
・インピーダンス検出方式のた
め信頼性は高い。
・SVR単独での判定が可能。
・判定にタップ切換を必要とる。
・微少な電圧変化量を測定する
必要がある。
・配電線自動化システムによる
配電線のループ切替・切戻の際、
制御のため信頼性はきわめて
遠方からの素通し制御により
高い。
SVRのタップを一旦素通しにし
・遠制化対応SVRしか適用でき
ている。この素通し制御の有無に
ない。
より、制御方法を決定する。
・SVR単独では判定できない。
13
方式の優れた特徴である。本方式による制御判定原理を図 7
合でも、インピーダンス比を判定条件としているため、適
に示す。インピーダンス比k< 1 で二次側電圧調整、k≧ 1 で
切なSVR制御が可能となる。
一次側電圧調整とする。
5. 模擬配電線での性能検証
(2)本方式の特長
① 系統に対して大きな電圧変動を与えない
電圧変化量判定方式や、インピーダンス判定方式に見ら
れるような大きな電圧変化は発生させない。判定用負荷は
軽負荷で良く、電圧変動は無視できる。
電圧変化量判定方式やインピーダンス判定方式は、判定
動作にタップ切換を必要とするので、判定結果によっては、
タップの切戻しが発生する。本方式では、このようなタップ
の切戻しがないため、タップ切換回数は従来の SVR と同じ
になり、切換器の寿命に影響を与えるようなことはない。
③ 電流のみの判定で良い
インピーダンス判定方式では、タップ切換時の、一次側
および二次側の電圧・電流変化量を計測する必要がある。
これに対して、本方式では、電流のみの測定で、インピー
ダンス比が求められる。
分散電源が大容量で、かつ定電圧制御されるような場合
は、図5 に示すループ送電に近い系統状態になるが、その場
SVR
I0 a
二次側
・
・
・
・
1:1
・
検証機のシステム構成を図 8 に、概略仕様を表 2 に示す。
模擬 SVR 本体として、従来の SVR を模擬したタップ変圧
器とタップ切換器を製作し、SVR 制御箱は製品実機を使用
した。負荷投入装置は、投入抵抗とサイリスタ SW で構成
ピーダンス比判定ユニットでは、A / D 変換器や CPU を使用
して、今回考案した演算・判定処理を行なう。
3φ275V 系
Iaa
u
V2
(計算式の簡易化のため、SVR 変圧器比は 1:1 とした)
(a) Zb(負荷)接続前
I0b
CV
Z 1
二次側
V 1b
・
・
・
・
V 2b
1:1
V1b = V0 − Z1 ・ I 0b ……(3)
・
V1b = Z a ・ I ab
Ib
Zb
CPU
A/D 変換回路
メモリ
表示
回路
投入抵抗
インターフェース
回路
(2)、(4)式から
V − V1b
Z a = 1a
I0 a − Iab
0b
判定式
負荷投入装置
I2:抵抗電流
V2:SVR 二次側電圧
図8 検証機のシステム構成
0a
構成装置
SVR本体
概略仕様
タップ変圧器
タップ切換器
SVR制御箱
負荷投入装置
インピーダンス比
判定ユニット
275V 仕様 6タップ付き
6段切換(素通しタップ4)
中部電力殿既設5000kVA仕様(シーケンス回路改造)
サイリスタSW
投入抵抗
定格入力
……(5)
k<1 の時、SVR 二次側電圧調整
k≧1 の時、SVR 一次側電圧調整
サイリスタ
SW
サイリスタ
制御信号
表2 検証機の概略仕様
(1)、(3)式から
Z1
I0 a − Iab
∴k =
=
Z a
I0b − I0 a
14
フィルタ回路
インピーダンス比判定ユニット
V − V1b
Z1 = 1a
I − I
図7 制御判定原理 CT
I1:SVR 二次側線路電流
Zb(負荷)接続後
(c)
CT
CT
Za
……(4)
(計算式の簡易化のため、SVR 変圧器比は 1:1 とした)
(b)
Iab
I2
電源回路
.
・
・
I1
PT
SVR
一次側
w
インピーダンス比判定
67 動作(逆潮流)
結果
SVR 制御箱
(実機)
・
V1a = Z a ・ I aa = Z a ・ I 0 a ……(2)
V 0
v
(275V 仕様)
Za
……(1)
・
二次側
模擬 SVR 本体
V
W
・
・
電線試験装置(中部電力株式会社殿 技術研究所設備)で試
験が行なえるように製作した。
U
V 2 a
V1a = V0 − Z1 ・ I 0a
CV
検証機は、模擬 SVR 本体、SVR 制御箱、負荷投入装置、
インピーダンス比判定ユニットの構成とし、3 Φ 275V 模擬送
一次側
一次側
V 1a
(1)システム構成
し、模擬系統に抵抗を短時間投入できるようにした。イン
④ ループ送電に近い場合にも対応可能
Z 1
今回考案したインピーダンス比判定方式を搭載した検証
機を製作した。
② 判定にタップ切換を必要としない
V 0
5.1 検証機の構成と動作概要
定格電流 150A(実機用)
200Ω∼750Ω
電流(I1、I2)
:AC5A、電圧(V2)
:AC110V
定格周波数
60Hz( 57Hz ∼ 63Hz)
制御電源
AC110V (AC80V ∼ 137.5V)35VA以下
CPU
A/D変換器
32bit RISC マイコン
分解能12bit
検出抵抗接続時間
0.1秒∼0.5秒 (可変)
67検出用タイマー(67T)
10秒∼180秒(既設67仕様)
愛知電機技報 No. 26 (2005)
分散電源対応型SVR制御方式の開発
(2)判定動作
化させた。また、分散電源連系時には、その容量を変化さ
インピーダンス比判定時の演算・判定シーケンスを図 9 に
示す。判定の動作開始は、SVR 制御箱の 67 動作信号をトリ
ガとしている。67 動作信号が有効となった後、投入抵抗を
模擬系統へ所定の短時間接続する。接続中の SVR 二次側線
路電流( I1 )と抵抗電流( I2 )の波形と開放後の線路電流( I1' )
波形を記憶した後、図 9 の演算式に従ってインピーダンス比
kを求め、制御方法を判定する。
判定タイミングについては、今回のトリガ(67動作信号)
とは別に、各種要因をトリガとすることも可能である。例
えば、タップ切換時の信号をトリガとすることでタップ切
換前後に判定を実施したり、タイマーなどを用いた定期的
な判定、さらには数回の連続判定動作などが可能である。
せて行なった。こうした条件においてインピーダンス比判
定結果と SVR 制御動作について確認を行ない、良好な結果
が得られた。
また、本試験では、各運転モードにおいて、投入する抵
抗値および投入時間を変化させて、抵抗投入時の系統変動
の確認も行なった。分散電源連系時の判定動作波形の一例
を図11に示す。
本方式は、短時間ながら配電線系統に抵抗を投入するの
で、系統に悪影響を与えないためには、投入する抵抗値は
極力大きくし、投入時間は極力短くすることが理想的であ
る。今回は実配電線系統へ適用するためのこうした各種デ
ータ収集も行なうことができた。
定期的な判定の実施は、逐次変化する系統状態に対し柔軟
に対応できるとともに、検出信頼度の向上にもつながる。
運転モード
試験回路・試験概要
【試験回路】
判定周期(1 秒以内)
所内電源
275V 模擬送電線:#1
T1
検証機
#2
一次
負荷投入装置
判定ユニット
固定模擬負
荷
67 動作信号
(逆潮流検出で ON)
運転モード Ⅰ
抵抗接続中
順相ー順潮流
抵抗投入指令
(サイリスタ ON)
I2 電流取得処理
(抵抗電流)
#3
~
T2
I1 電流取得処理
(SVR 二次側線路電流)
二次
模擬 SVR
可変模擬負
荷
Z1
Z a
【試験概要】
SVR一次側に変電所が接続された標準的な系統運用状態。
この状態に
おいて可変模擬負荷の容量、
力率を変化させて、
インピーダンス比判定動作
を手動にて実施した。
【判定基準】
インピーダンス比判定:
I1 波形サンプリング処理 I1'波形サンプリング処理
I2 波形サンプリング処理
<1
【SVR制御動作】
:二次側電圧調整
I2=0A
T3
Z1
Z a
【試験回路】
T3
検証機
一次
#2
二次
模擬 SVR
#3
所内電源
模擬送電線:#4 275V
~
演算処理 演算処理
固定模擬負荷
結果出力
T1=500ms:波形取込み期間(可変設定)
T2=250ms:抵抗投入時間(T1 連動可変)
T3=166ms:波形演算範囲(T2 連動可変)
J1 = I1'− I1 + I2
k < 1 ・・SVR 二次側電圧調整
J a = I1 − I1'
k ≧ 1 ・・SVR 一次側電圧調整
k=
J1
J
a
逆相ー逆潮流
(系統切換)
Z1
Z a
【試験概要】
系統切替によりSVR二次側に変電所が接続された状態で、
電力がSVR二
次側から供給されている状態。
この状態において可変模擬負荷の容量、
力率
を変化させて、
インピーダンス比判定動作を手動にて実施した。
【判定基準】
インピーダンス比判定:
Z1
Z a
>1
【SVR制御動作】
:一次側電圧調整
【試験回路】
I1:SVR 二次側線路電流(接続中)
〃
(開放
I1':
所内電源
275V 模擬送電線:#1
検証機
#2
一次
模擬 SVR
二次
#3
#4
分散電源
~
後)
I2:抵抗電流(接続中)
図9 演算・判定シーケンス
可変模擬負
荷
運転モード Ⅱ
判定式
演算式
負荷投入装置
判定ユニット
G
固定模擬負
荷
運転モード Ⅲ
負荷投入装置
判定ユニット
可変模擬負
荷
Z a
Z1
順相ー逆潮流 【試験概要】
(分散電源連係) SVR一次側に変電所が接続された標準的な系統運用状態においてSVR
5.2 検証結果
検証試験は、運転モードⅠ
(順送−順潮流)とモードⅡ
(逆
送−逆潮流)およびモードⅢ(順送−逆潮流)の 3 つの運転モ
ードについて行なった。試験の概要を図10に示す。
試験は、各運転モードにおいて、負荷の容量や力率を変
愛知電機技報 No. 26 (2005)
二次側に分散電源が連系された状態。
この状態において分散電源の出力を
徐々に上げ、
SVRの67を動作させた時のインピーダンス比判定動作を確認し
た。試験は可変模擬負荷の容量、
力率を変化させて行なった。
【判定基準
インピーダンス比判定:
Z1
<1
Z a
【SVR制御動作】
:二次側電圧調整
図10 検証試験概要
15
SVR二次電圧
I1電流
7.5
100
5.0
50
2.5
0
0.0
電圧[V]
10.0
150
-50
-2.5
-100
-5.0
-150
-7.5
-200
-10.0
-0.10
0.00
0.10
0.20
参考文献
I2電流
0.30
0.40
(1)佐藤、他 :
「配電線系統の電圧解析手法」愛知電機技
電流[A]
投入抵抗接続指令
200
(2)佐々木、他:「高速応答を可能にしたTVRとその実証試
験」 電学論 B Vol.123 No.9 (2003)
(3)平野、平井:
「分散電源対応型新制御方式SVRの開発」
0.50
電気現場技術2 月号(電気情報社 2003)
時間[s]
(a)全体波形
(4)松浦、松嶋:
「デジタル制御型高圧電圧調整器の開発」
200
10.0
150
7.5
100
5.0
50
2.5
0
0.0
-50
-2.5
-100
-5.0
-150
-7.5
-200
電気評論 4 月号(電気評論社 2003)
電流[A]
電圧[V]
報No.23(2000)
-10.0
-0.05
0.00
0.05
0.10
0.15
時間[s]
200
10.0
150
7.5
100
5.0
50
2.5
0
0.0
-50
-2.5
-100
-5.0
-150
-7.5
-200
電流[A]
電圧[V]
(b)抵抗投入時の波形
-10.0
0.20
0.25
0.30
0.35
0.40
時間[s]
(c)抵抗引外し時の波形
図11 判定動作時の過渡波形(運転モードⅢ)
6. あとがき
分散電源が連系した場合に発生する、従来型 SVR の制御
方式の問題点を整理するとともに、SVR 電圧制御の基礎解
析を行なった。この解析により、二次側インピーダンスに
対する一次側インピーダンスとの比 k と、SVR 制御による電
圧変化の様相を把握した。こうした検討を踏まえ、新しい
SVR 制御方式として独自の「インピーダンス比判定方式」
を考案し、検証機を製作してその妥当性を確認した。
今後は、本方式を採用した分散電源対応型 SVR の実用化
検討を進めていく予定である。さらに、各電力会社や関係
企業の動向を十分調査した上で、適切なタイミングを見計
らって、本方式を採用した新型 SVR の製品開発を行ない、
市場投入を図っていく予定である。
最後に、本方式の開発および性能検証のための試験設備
の使用などに御協力いただいた中部電力株式会社殿、なら
びに関係各位に感謝する次第である。
16
愛知電機技報 No. 26 (2005)
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