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議事要旨 - 国土交通省
第 1 回環境不動産普及促進検討委員会 議事要旨 (平成 27 年 7 月 16 日 於:中央合同庁舎第 3 号館 11 階特別会議室) Ⅰ.報告概要 1)「諸外国におけるグリーンリース・ガイド等の整理」 〔事務局〕 本年度の取組事項であるグリーンリース・ガイドの作成に先立ち、参考として諸外国(オーストラリア・イギリ ス・アメリカ・カナダ・シンガポール・フランス)のグリーンリース・ガイドを整理した。 =ポイント= 〇グリーンリース・ガイドの作成背景 諸外国の事例をみると、行政機関の賃貸借契約(グリーン調達)の雛型、およびエネルギー効率を高める 施策ツールとしてグリーンリース・ガイドを作成している(オーストラリア・アメリカ)。また、環境不動産マスタ ープラン(シンガポール)や、EU による 2020 年までの温室効果ガス削減目標達成のための地球温暖化 対策(フランス)の一環としてグリーンリースを位置づけている国もある。 日本では、業務部門の CO2 削減という大前提がある中で、環境不動産が適正に認識・評価される市場の 形成やサステナブルな不動産ストックの形成を図る手段のひとつとして、グリーンリース・ガイドの作成を 進めている。 〇グリーンリース・ガイドの編集主体 諸外国では、関係行政機関または不動産関連団体が編集主体である。一方、日本では、環境不動産普 及促進検討委員会および関係省庁のよる編集を予定し、詳細はワーキンググループにて今後検討して いく。 <ディスカッション> 〇オブザーバー フランスの制度の中に、オーナーとテナントの義務として温室効果ガスの削減が挙げられているが、これ は誰の誰に対する義務か。環境付属書類の添付が義務付けられるとのことなので契約の内容を構成する ことになるのではないかと思うが、違反した場合に解除事由になるなどの効果を生じさせるものなのか。 〇事務局 エネルギー消費量の削減義務は国からオーナーに対して課される。具体的には、オーナーはエネルギ ー診断書(EPD(Energy performance diagnosis))を売買契約に添付すること、物件を売買、賃貸する際の 広告に表示することが求められている。EPD には、建築物の設備状況、年間概算エネルギー消費量、等 といった情報が含まれている。そして、2,000 ㎡以上のオフィスや小売店舗を賃借するテナントは環境付 属書類に基づき、グリーンリース契約を締結が義務づけられ、エネルギー削減等についてオーナーとの 協力義務が課される。 1 Ⅱ.話題提供の概要 2)「環境マネジメントの経済性分析」 〔(株)ザイマックス不動産総合研究所 取締役主幹研究員 吉田淳 氏〕 =ポイント= 〇環境認証の有無による新規成約賃料への影響 東京 23 区内に立地するオフィスビルのデータを用い、環境マネジメントの状態を端的に表す「環境認証 の有無」が、経済性(=マーケットでの評価)を端的に表す「新規成約賃料」にプラスの影響を与えるかと いう点に関して分析を行った。 環境認証を取得したオフィスビルは、未取得オフィスビルと比較して新規成約賃料が 4.4%程度高い1との 分析結果を得た。 〇物件の特徴による影響度の違い データサンプルを似たような特徴をもつグループに層別化して追加の分析を行った。 全体の 4.4%に対して、中規模の物件が多いグループでは、環境認証を取得したオフィスビルは未取得オ フィスビルと比較して+9.6%2程度新規成約賃料が高いとの分析結果を得た。規模や新しさ、性能などが 標準的な物件では、環境認証が環境マネジメントの品質を表すものとして評価されていると言える。 一方、大規模・築浅物件が多いグループでは、環境認証の有無による新築成約賃料への影響は、明確 には確認されなかった。このグループは、規模や新しさ、グレードなど既にテナントにとって魅力に感じる 要素を十分に備えており、環境認証が加わることによる更なる賃料上昇には結びつきにくいなどの背景が あるため、と考えられる。 <ディスカッション> 〇信託銀行 昨年度の第 3 回委員会にて経済効果調査ワーキンググループの調査成果を発表した。この調査結果で は CASBEE 関連の認証・届出の有無により 3.6%程度の賃料格差が認められたと報告したが、今回の調査 報告では+4.4%との結果に共感した。経済効果調査ワーキンググループでは認証・届出の有無のほかに 環境性能のランクやスコアとの相関も分析しているが今後そのような調査成果についても期待が持てる。 昨年、環境認証をベンチマークとして主導的に活用している年金基金とミーティングする機会があり、その ミーティングの中で、アメリカやオーストラリアでは環境認証の経済性分析に関する研究事例(成果)があ るが、日本はこの分野の研究が十分ではない印象があるとの意見が出た。環境認証取得の経済効果を 把握したいという投資家の意向は高まりを見せており、その中で、日本における経済効果調査の結果が 相次いで発表されるのは良い動きだと思う。 ○ビルオーナー団体 今回の発表内容は我々の肌感覚と合致している。我が国では環境認証制度が十分に普及しておらず、 一部のビルしか認証を取得していないという状況である。環境認証の取得の有無でビルが差別化されるく らい環境認証制度が不動産市場に定着することを期待したい。 1 95%信頼区間+2.1~+6.7% 2 95%信頼区間+4.1~+15.0% 2 ○環境投資顧問会社 (本日の発表内容に関連して)GRESB と、REIT が保有する不動産ポートフォリオ単位での ROA および ROE 等との関係に関する研究が、ケンブリッジ大学から発表された。その研究では、ESGパフォーマンス が高い企業の方がリターンは高いという分析結果3が出ている。このような分析結果は、個別の不動産に おいて環境不動産はリターンが高いと同時に、ESG パフォーマンスが高い会社もリターンが高いことを示 唆している。 ○官民ファンド 東京の物件を対象とした分析で、環境認証の有無が有意となった結果は注目できる。一方、地方ではど のような結果になるのだろうか。「環境」が地方でも響くのか、興味深い。今後の分析予定などあれば教え てほしい。 ○ザイマックス不動産総合研究所 吉田氏 地方も確かに興味深いが、環境認証を取得している件数が少ないという制約もあり分析が難しい。地方で も環境不動産は大事なテーマであると認識しており、今後分析を検討しても良いと思う。 3)「建築物省エネ法の表示制度について」 〔国土交通省 住宅局住宅生産課 宮森課長補佐〕 2015 年 7 月 8 日に公布された「建築物のエネルギー消費性能向上に関する法律」(建築物省エネ法)では、 規制的措置として大規模非住宅建築物の適合義務化を図るとともに、誘導的措置として、容積率特例制度や 表示制度を創設した。なお、国会では、環境性能の見える化や表示制度の普及が重要である旨のご審議が あった。本日は、環境不動産と関係の深い表示制度を中心に説明する。 =ポイント= 〇販売・賃貸事業者の表示の努力義務 第 7 条では、建物の販売・賃貸を行う事業者は、その建物の省エネ性能を表示するよう努めなければなら ないとの努力義務を設けた。現在、一次エネルギー消費量などの省エネ性能の表示方法等に関して検 討をしており、関係団体や有識者意見を踏まえ、できれば年内にガイドラインを提示する予定である。 〇建築物のエネルギー消費性能に係る認定 第 36 条では、建物の所有者は申請により建物が省エネ基準に適合している旨の行政庁の認定を受ける ことができるとの規定を設けた。この認定を受けた建物は、建物や広告物等にその認定を受けた旨(基準 適合マーク)を表示することができる。 〇BELS 制度の概要 BELS(Building Energy-efficiency Labeling System)は平成 26 年 4 月に創設した建築物の省エネルギー 性能に特化した表示制度であり、省エネ性能を 5 段階で表示するもの。BELS は、新法7条に基づくガイド ラインに沿ったものとして、位置づけられることが想定される。 3 GRESB のスコアが1%上昇した場合、ROA は 1.3%上昇(ROE は 3.4%上昇) http://gresb-public.s3.amazonaws.com/2015/Green%20REITs.pdf 3 <ディスカッション> 〇座長 カーボンメトリックという国際規格では、建物がどれだけグリーンガスを出しているかという表示を自己宣言 して検証結果を開示するか、第三者機関の検証結果をもって表示するかで議論があった。今回の制度で は個別に物件を評価するのか、それとも信頼性の高いビルオーナーはパッケージで評価するのか、いず れか。 〇国土交通省 住宅局住宅生産課 宮森課長補佐 この制度は第 7 条、第 36 条ともに建物個別に性能を評価する仕組みである。 第 36 条(建築物のエネルギー消費性能に係る認定)は行政庁が認定するという仕組みであることから、 「第三者認証」に該当する。 第 7 条(販売・賃貸事業者の表示の努力義務)に関しては、第三者認証までは求めていないが、第三者 評価(認証)を行った場合は、第三者認証であることを明示する、自己評価の場合には自己評価の数値 であることわかるようにすることが望ましいと考えているが、こうしたことを議論してガイドラインに位置づけ たいと考えている。 〇オブザーバー 第 7 条の表示努力義務について、表示しなければいけないタイミングはいつか。重説などの契約締結時 であればあまり意味がないし、他方で、広告などの時期であれば事業者の負担がかなり大きくなってしまう と思われる。 〇国土交通省 住宅局住宅生産課 宮森課長補佐 テナントや住宅購入者等が建築物の省エネ性能を理解した上でビルや住宅を選択できるよう、販売・賃 貸等の取引が行われるタイミングで示されることが望ましいと考えている。 〇仲介会社 エネルギー燃費がわかるとビル選択に役立つ。省エネルギー性能を重要事項説明で行うのはタイミング 的に遅い。耐震性能やアスベストも重要事項説明の前に行っているのだから、案内の前くらいに教えてほ しいというのが実際のニーズだと思う。また、オフィスビルは 1 棟ではなく、主にフロア単位(もしくはフロア 区画割単位)で賃借するため、賃貸部分相当のエネルギー表示をするのが実務的と考える。 以 上 4