帝国ニュース サマリー記事

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2016/03/03 t
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EIKOKUNEWS
￨ 第三種郵便物認可
取材記者が行く!
現場
。
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ワボード
実録!情報記者の事件簿
第 1回
乗っ取り屋に出会ったら
帝国データバンク情報部には、毎日企業にまつわる数多くの信用情報が集まってくる。時には、噂の
域を出ないゴシップネタや怪文書、匿名のタレコミ電話もあるが、大半は全国の調査員が自らの目と耳
と足で集めてきた情報、大手から中小企業まで、経営者や審査・債権回収担当者から直接寄せられる照
会など、まさにタイムリーに巻き起こっている有形無形な業界の話題が飛び交う。
そうしたなかで我々情報記者は、常識では考えられないような、アブノーマルなシーン・人物・企業
に遭遇することも多い。 2016年の現場リポートは、情報記者が出会ってきた“事件"にフォーカスし、
そこで繰り広げられた多くの物語をまとめた「実録!情報記者の事件簿 j を全 5回(予定)にわたって
連載する。
ま
さー
に無法、力技の乗っ取り
創業 5
0年を超える老舗の調理器具メーカー「越
後屋金属工業」は、ある夏の日に突如として大河
原と名乗る人物によって乗っ取られた。支払いが
在どこに置かれているのか、不動産の名義は書き
換えられていないかなどである。実力行使で、乗っ
取りをかけてきた場合、その対応にはとにかくス
ピードが重視される。
1日に前代表から大河
越後屋金属の場合、 7月3
一時的に滞ったこ とで集まった債権者に対し、 一
原に代表権が移っており、
l人を除いて役員は全
人一人を事務所に招き入れ、いかにも威圧的な服
員解任。大河原の自宅住所は大阪のとある料亭で、
装をした「新社長」を名乗る大河原ほか数名が、
経歴は一切不明。経営しているとされる不動産会
たばこをふかしながら「この会社は大河原社長が
社も、商業登記は見つからず、ホームページは 1
買い取った。従業員が造反したので全員解雇し、
日もあれば作れてしまうようなお粗末なものだ、
っ
当面は大河原社長が経営している不動産会社から
たO 在庫は荒川沿いの倉庫に入っているとのこと
人を回す。支払いに関しては、その会社から資金
だが、カギがかかっており中を見ることができな
を借り入れる形で 9カ月先の分までは手当てがつ
い。社有不動産の所有権は、 7月 5日にサンライ
いているので、後ほど未払い分の請求書を再送す
ズという別の会社に移っていた O 会社の資金は、
るように」と告げた。食い下がる債権者もいたよ
大半がラトピアの金融機関を通じて海外へ送金さ
うだが、しばらくするとみな一様に粛々と帰社し
れていた。
ていく。案の定、翌日から事務所は開くことなく、
全額とはいかないまでも、債権回収に成功した
大河原氏の名刺に記載された携帯番号もつながる
石野松商事(年商 1
0
億の中小企業)の支庖長の話。
ことはなかった。
「そろえられる情報について入手できる限りのもの
乗っ取り屋に出会ったら、まず確認すべきは登
を集め、その日のうちに顧問弁護士に相談しまし
記簿謄本と資産の行方。新社長は代表権を持って
たO 時間がかかりましたが、先取特権などを駆使
いるのか、住まいはどこなのか、扱いの物品は現
して何とか形だけは整えることができまし t
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ごろから、我々の納めた材料がどこへ流れている
のか、この会社の商流を担当者レベルで把握して
いたのがよかったのだと思っています」
数日後、未明のうちに大型トラックが本社事務
所に横付けされ、会社資産がすべて搬出されたと
の情報が寄せられた。この時は既に債権者からの
申し立てにより、保全命令が下りていたにもかか
わらずである。今回のような無法な力技で、の乗っ
.自 主
取りには、事後ではなかなか対抗できる手段はな
い。しかし、石野松商事のように、普段から取引
先企業と良好な関係を構築し常に新しい情報を仕
入れておくこと、いち早くアクションを起こすこ
とで、軟着陸できる可能性があることは知ってお
くべきだろう。
れしていました O こちらが理詰めで正当性を伝え
Case
.
2 有名な整理屋が介入
ても、まさに馬耳東風。同じ土俵に上がらず、ひ
たすら強引に大声で自分の主張をし続けるだけで
「諸星次郎って、確か有名な整理屋だったよ
した O こちらとしては粛々と法的な手段で回収し
ね?
J。とある産業機器販売業者から問い合わせが
ましたけどね。督促電話の勢いに押され尻込みし
あったのは、初夏の昼下がり。ザーサイの輸入会
て行動が遅れたり、泣き寝入りするのは相手の思
社である四川フードサービスに、諸星次郎が社長
うつぼですよ」
として就任しているという話だった O 諸星の手法
巧妙なのは、事務所にいる従業員は皆中国人で
としては、再生コンサルタントとして介入し経営
ほとんど言葉が通じず、全く解決能力を有してい
権を取得、その後第二会社を新設し事業譲渡、債
ないこと。諸星自身は事務所におらず、やり取り
務はすべて旧会社に残し、破産させるかそのまま
は電話のみなので、こうした状況に慣れていない
放置するか、いずれにしても計画的な債務逃れを
債権者はなかなか状況を打開できないことも多い。
するというものだ。既に、 2
0社近い“実績"を有
しかし、法に則って手続きを進めれば一切文句は
していることもあって、債権回収の世界では要注
言ってこないのが諸星。この事実を知っておくだ
意人物として知られる。
けでも重要だろう。
今回、四川フードサービスにリースしている機
今回の場合、諸星が有名な整理屋であるとの情
械のリース代金が支払われなくなった。会社側に
報を持っていたことがキーポイントだったと前出
督促の電話をかけると、普段事務所には一切顔を
の担当者は話す。「情報は集めるだけではなくて、
1
1円たりともおたくに
生かさなければ意味がありません O 日ごろの情報
出さない諸星につながれ、
支払う気はない!
機械を返却する気もない!J
という無茶なことをとにかく高圧的にまくし立て
収集で彼の手法をよく理解していましたので、い
ち早く行動を起こせました J(同氏)
てくる。
しかし、当然ながら債権者側には所有権があり、
{なお、内容は実際に起こった複数の事件をフィクショ
ンの形でまとめています。モデル企業や仮名について
正当な手順を踏めば物件の回収などの手を打つこ
のご質問には、一切お答えできませんのでご了承くだ
とはそれほど難しいことではない。産業機器販売
さい}
業者の談。「初対決でしたが、諸星はさすがに場慣
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