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詳細(PDF 349B) - 群馬県立産業技術センター

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詳細(PDF 349B) - 群馬県立産業技術センター
群馬県立産業技術センター研究報告(2011)
アルミニウム、銅及び SUS304 板材の塩水噴霧・キャス試験結果
に基づく腐食データベースの作成
小松秀和、田島 創
Development of corrosion database of aluminum, copper and SUS304
Hidekazu KOMATSU and So TAJIMA
アルミニウム、銅及び SUS304 板材に対し、耐食性試験の塩水噴霧試験及びキャス試験を実施した。
外観写真及び重量変化量からなる簡易な腐食データベースを作成した。本データベースを利用すること
で、試験依頼企業に対し、より適切な試験方法や試験時間の提案や、重量変化量に基づき腐食の進行を
定量化する手法の提供など技術支援の充実を図ることができた。
キーワード:腐食データベース、塩水噴霧試験、キャス試験、アルミニウム、銅、SUS304
Corrosion of plate materials of aluminum, copper and SUS304 during salt spray testing and
CASS testing was investigated. Corrosion database based on appearance and weight change of
those materials was developed.
Keywords:corrosion database, salt spray testing, CASS testing, aluminum, copper, SUS304
1
はじめに
定を行った。これらの結果をデータベースに
まとめることで、企業への利便性向上に資す
金属製品に求められる重要な性能の一つに
ることを目的とした。
耐食性がある。これらの耐食性を向上させる
ためにめっきや塗装などの表面処理が行われ
2
実験及び腐食データベースの作成
ているが、素材の耐食性を調べることは、表
面処理条件を検討するためにも重要である。
試験素材は、Al、Cu、SUS304、Zn、Fe の金
群馬産業技術センターでは塩水噴霧試験及び
属板材(寸法 120mm×45mm、厚さ1mm)を用
キャス試験によって金属製品の耐食性評価を
いた。試験に用いた素材の規格を表1に示す。
行っている。近年耐食性に関する相談が多い
塩水噴霧試験は、 株式会社東洋精機製作所製
材料に、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ステン
塩水噴霧試験機 S-800
レス(SUS)及びこれらの表面処理品があるが、
に準拠して実施した。キャス試験は、スガ試
これら材料の標準品の耐食性試験結果があれ
験機株式会 社製 キャ ス試験機 CAP-90 を 使
ば、より適切な試験方法及び試験時間の提案
用し、JIS Z 2371 に準拠して実施した。本研
などの技術支援が可能になると考えた。
究で行った塩水噴霧試験及びキャス試験の詳
を使用し、JIS Z 2371
そこで、本研究では Al、Cu、SUS304 及び比
細な条件を表2に示す。前述の金属板材に対
較のため亜鉛(Zn)、鉄(Fe)について塩水噴霧
し、塩水噴霧試験またはキャス試験を積算時
及びキャス試験を行い、外観観察及び重量測
間で 240 時間行い、①8,24,48,72,96,120 及
環境・省エネ係
表1
試験に用いた金属板材
素材
Fe
Zn
Al
Cu
SUS
規格
G3141
Cu0.30~0.50%
Ti0.02~0.04%
A1050
C1100P
SUS304BA
表2
塩水噴霧及びキャス試験の試験条件
試験法
試験液組成
試験液pH
試験槽温度
準拠JIS
塩水噴霧試験
5%NaCl
6.5~7.1(中性)
35℃
Z2371
キャス試験
5% NaCl,
0.26g/L CuCl2, 酢酸
3.0~3.1(酸性)
50℃
H8502
び 240 時間後における外観写真及び②重量測
定結果からなる腐食データベースを作成した。
塩水噴霧試験及びキャス試験における外観
観察結果のみから、腐食量について定量的に
述べることは難しいが、両試験において外観
3
結果と考察
上の腐食の進行とともに重量が増加する傾向
が見られたことから、重量変化量は腐食を簡
金属板材に塩水噴霧試験を 240 時間行った
ときの外観を図 1 に示す。Fe と Zn は 8 時間、
便に定量評価する方法として有効であること
がわかった。
Alは 48 時間から腐食生成物が見られ、時間
次に、キャス試験の腐食促進性を把握する
と共に腐食生成物が増加した。一方 Cu では腐
ため、重量増加量から、下式でキャス試験の
食生成物は確認されなかったものの光沢の低
塩水噴霧試験に対する促進倍率を求めたとこ
下が観察され、SUS304 は 240h 時間以内では
ろ、Fe、Zn、Al についてそれぞれ、1.50, 1.94
腐食はほとんど進行しないことが分かった。
及び 49 であった。
次に、各金属板の塩水噴霧試験時間に対する
促進倍率
= キャス試験における 240 時間
重量変化を図 2 に示す。腐食生成物が見られ
後の重量増加量/塩水噴霧試験における 240
た Fe、Zn 及び Al で、48 時間後及び 240 時間
時間後の重量増加量
後 の 重 量 増 加 量 ([] 内 ) を 示 す と 176[723],
2
2
Al で促進倍率が大きかったのは、Al は pH4
75[239], 0.9g/m [3.2g/m ]と、時間とともに
以下ではイオン化(Al→Al 3+ +3e)が進みやす
重量が増加することがわかった。
いため、pH 約 3 のキャス液の接触によって Al
次に、同金属板材にキャス試験を行ったと
のイオン化が促進されて、それに伴い酸化物
きの外観を図 3 に示す。塩水噴霧試験と同様
などが生成しやすくなるためと推測された。
に Al、Fe、Zn 及びで腐食生成物が見られ、塩
水噴霧試験では光沢の低下しか見られなかっ
4
まとめ
た Cu でも腐食生成物が観察された。一方、
SUS304 では腐食物の生成は見られなかった
耐食性に関する相談が多く寄せられる Al、
が、光沢の低下が確認された。腐食生成物が
Cu、SUS304 について塩水噴霧試験及びキャス
見られた Al、Fe、Zn 及び Cu では時間と共に
試験を積算時間として 240h 時間実施し、外観
腐食生成物が増加した。各金属板材のキャス
写真と重量測定結果からなる腐食データベー
試験時間に対する重量変化を図 4 に示す。腐
スを作成した。本データベースを利用するこ
食生成物が見られた Fe、Zn、Al 及び Cu で、
とで、試験依頼企業に対し、より適切な試験
48 時間後及び 240 時間後の重量増加量を同様
方法や試験時間の提案ができるようになり、
の表記で示すと、273[1088], 150[463],
さらに重量変化量によって腐食の進行を定量
2
2
43[157], 3.1g/m [26]g/m と、時間とともに
的に評価する方法の提案など技術支援の充実
重量が増加することがわかった。
を図ることができた。
図1
塩水噴霧試験における金属板材の外観変化
図3
キャス試験における金属板材の外観変化
1000
1000
Zn
800
Cu
600
Al
400
SUS304
Fe
200
重量増加量(g/m2)
1200
重量増加量 (g/m2)
1200
800
600
400
200
0
0
0
48
96
144
192
0
240
時間 (h)
図2
Zn
Cu
Al
SUS304
Fe
塩水噴霧試験における金属板材の重量変化
48
96
144
192
240
時間(h)
図4
キャス試験における金属板材の重量変化
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