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地方公共団体実行計画 (事務事業編) 策定・改訂の手引き

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地方公共団体実行計画 (事務事業編) 策定・改訂の手引き
地方公共団体実行計画
(事務事業編)
策定・改訂の手引き
平成26年3月
環
地球環境局
境
省
地球温暖化対策課
地方公共団体実行計画(事務事業編)策定・改訂の手引き
目次
第1章 実行計画策定の背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
第1節
地球温暖化問題の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
第2節
地球温暖化対策の背景等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
第2章 実行計画の策定・改訂・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
第1節
実行計画策定の全体像・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
第2節
実行計画策定・改訂に当たっての基本的事項の決定・・・・・・・・・15
第3節
温室効果ガスの総排出量の把握・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
第4節
温室効果ガスの総排出量に関する数量的な目標の検討・・・・・・・・31
第5節
実行計画の進行管理の仕組みの整備・・・・・・・・・・・・・・・・52
第6節
実行計画及び点検結果の公表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60
第3章 実行計画の進行管理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62
第1節
実行計画の進行管理の考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62
第2節
実行計画の進行管理の流れ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64
参考 温室効果ガスの総排出量の算定を支援するツール・・・・・・・・・・・
70
【地方公共団体実行計画(事務事業編)策定・改訂の手引きの見方について】
地方公共団体実行計画(事務事業編)策定・改訂の手引き(以下、「本手引き」という。)
では、実行計画(事務事業編)を初めて策定する団体と改訂を行う団体に、解説項目の内容
を区分しています。
該当頁には、以下の見出しマークを付けています。
共通・策定・改訂
共通・策定・改訂
共通・策定・改訂
:新規策定および既存計画を改訂する場合に共通した項目
:新規に実行計画(事務事業編)を策定する団体向けの解説
:既往の実行計画(事務事業編)を改訂する団体向けの解説
本手引きの解説パート見出し区分
章
節
参照ページ
項
1地球温暖化問題
第1節
第1章
実 行 計 画 策 定 地球温暖化問題 2国際的な動向と我が国の
の概要
の背景
対応
3我が国における温室効果
ガス総排出量の推移
1実行計画策定の根拠
第2節
地球温暖化対策 2その他の関連事項
の背景等
1実行計画を策定する主体
第1節
第2章
実行計画策定の 2実行計画に必要な要素
実行計画の
全体像
策定・改訂
3実行計画の構成
4実行計画の策定・改訂手順
5実行計画の策定・改訂のため
の体制づくり
6実行計画の策定・改訂
スケジュール
1実行計画の目的
第2節
実行計画の
2実行計画の対象とする
策定・改訂に
事務・事業の範囲
当たっての
3実行計画の対象とする組織
基本的事項の
や施設等の範囲
決定
4実行計画の対象とする温室
効果ガスの種類
5実行計画の期間
6基準年度の設定
7上位計画や関連計画との
位置づけ
共通
P.1
策定
―
改訂
―
P.1~3
―
―
P.3
―
―
P.4
―
―
P.4~7
―
―
―
―
P.10
―
―
―
P.10
―
P.8
P.9
―
P.11
P.12
―
P.14
―
―
P.15
―
―
―
P.16
P.13
P.16~17
P.17~19
―
―
P.20~21
―
―
―
P.22
―
P.23
―
―
P.22
―
P.23
章
節
1温室効果ガスの総排出量の
第3節
把握の考え方
温室効果ガスの
総排出量の把握 2活動量を把握するための
実態調査の準備
3活動量を把握するための
実態調査の実施
4温室効果ガスの総排出量
算定
1目標設定手法
第4節
温室効果ガスの 2温室効果ガスの総排出量に
総排出量に関す
関する数量的な目標設定
る数量的な目標 3温室効果ガスの総排出量に
の検討
関する数量的な目標設定の
工夫
4目標達成に向けた具体的な
取組項目
1実行計画の実施・運用の
第5節
仕組み
実行計画の進行
管理の仕組みの 2実行計画の点検・評価の
整備
仕組み
3実行計画の進行管理の
仕組みの見直し
1実行計画の公表
第6節
実行計画及び
2実行計画の点検結果の公表
点検結果の公表
第1節
第3章
実 行 計 画 の 進 実行計画の進行
管理の考え方
行管理
1計画段階(PLAN)
第2節
実行計画の進行 2実行段階(DO)
管理の流れ
3点検・評価段階(CHECK)
4公表・見直し段階(ACT)
第2章
実行計画の
策定・改訂
参照ページ
項
共通
策定
改訂
P.24~25
―
―
P.25~27
―
―
P.28
―
―
―
P.31~35
P.29
―
P.36
P.29~30
―
P.36
P.37~39
―
―
P.40~50
―
P.50~51
P.52~53
―
―
P.54~55
―
―
―
―
P.55~59
P.60
―
P.60
―
P.60~61
P.62~63
―
―
P.64
P.64~65
P.65~67
P.68~69
―
―
―
―
―
―
―
―
【本手引き及び関連ツール等の位置づけ】
実行計画(事務事業編)は、地球温暖化対策の推進に関する法体系に基づき、地方公
共団体への策定が義務付けられています。計画策定に当たっては、策定を支援する各種
ツールが整備されていますので、これらを有効に活用し、円滑な取組の継続及び更なる
取組を図ることが期待されています。
法体系
実行計画(事務事業編)の
地球温暖化対策の推進
に関する法律
策定・実施を義務付け
策定ツール
地方公共団体実行計画(事務事業編)
策定・改訂の手引き〈本書)
・地球温暖化問題の基礎
・計画書の構成・記載内容の解説
・計画の実施(進行管理)方法の解説 など
温室効果ガス総排出量に係
地球温暖化対策の推進
に関する法律施行令
る温室効果ガスの排出量の
算定方法を規定
策定ツール
温室効果ガス総排出量
かんたん算定シート
算定方法ガイドライン
地球温暖化対策の推進
に関する法律施行規則
・温室効果ガスの総排出量
の算定に係る実績データ
・温室効果ガスの算定に関
の収集・算定を支援する
する具体的な対象、方法、
表計算ソフト
留意事項等を解説
(Microsoft Excel)
その他のツール
・地球温暖化対策の推進に関する法律施行令第三条
(平成 22 年 3 月 3 日一部改正)に基づく排出係数一覧
・電気事業者毎の排出係数一覧
・平成 14 年施行令改正による排出係数及び
平成 18 年施行令改正による排出係数
※本手引きを含む各種ツールは、地球温暖化対策地方公共団体実行計画(事務事業編)策
定支援サイト(下記アドレス)より、ダウンロードできます。
URL:http://www.env.go.jp/policy/local_keikaku/jimu/pub/download.html
第1章
実行計画策定の背景
第1節 地球温暖化問題の概要
1
地球温暖化問題
地球温暖化とは、地球表面の大気や海洋の平均温度が長期的に上昇する現象であり、
その主因は人為的な温室効果ガスの排出量の増加であるとされています。地球温暖化は、
地球全体の気候に大きな変動をもたらすものであり、我が国においても平均気温の上昇、
農作物や生態系への影響、暴風、台風等による被害も観測されています。
世界の政策決定者に対し正確でバランスの取れた科学的知見を提供する「気候変動に
関する政府間パネル(IPCC)」は、平成 25 年9月に最新の知見をとりまとめた第5次評
価報告書の第1作業部会報告書(自然科学的根拠)を公表しました。この中では観測事
実として、気候システムによる温暖化については疑う余地がないこと、人間による影響
が 20 世紀半ば以降に観測された地球温暖化の支配的な要因であった可能性が極めて高
いことなどが示され、早い段階での CO2 の排出削減の必要性を訴えています。
地球温暖化対策は、国、都道府県、市区町村が、それぞれの行政事務の役割、責務等
を踏まえ、相互に密接に連携し、施策を実施して初めて実施することができます。東日
本大震災後のエネルギー政策の見直しなどもあり、低炭素社会の実現に向けて、地方公
共団体の役割の重要性は高まってきています。
2
国際的な動向と我が国の対応
地球温暖化防止に関する対策として国際的には、1992 年に国連気候変動枠組条約が
採択され、同年の国連環境開発会議(地球サミット)では、世界中の多くの国が署名を
行い、1994 年には条約が発効いたしました。
また、これを受けて締約国会議が第1回目のドイツのベルリン(COP1)から始まり、
「温室効果ガスの排出および吸収に関し、特定された期限の中で排出抑制や削減のため
の数量化された拘束力のある目標」を定めることが決められました。1997 年には、地
球温暖化防止京都会議(COP3)が開催され、京都議定書が採択されました。この中で
我が国については、温室効果ガスの総排出量を「2008 年から 2012 年」の第一約束期間
に、1990 年レベルから6%削減するとの目標が定められました。
-1-
京都議定書の概要
対象となる温室効果ガス
①二酸化炭素(CO2)
②メタン(CH4)
③一酸化二窒素(N2O)
④ハイドロフルオロカーボン(HFC)
⑤パーフルオロカーボン(PFC)
⑥六フッ化硫黄(SF6)
削 減 目 標
基 準 年 は
1990 年
(HFC,PFC,SF6 は 1995 年とす
ることも可)
②目標期間は、2008 年から 2012
年の5年間
③削減目標は基準年に比較して
日本▲6%、米国▲7%
EU▲8%など。
先進国(先進国-旧ソ連、東欧
を含む)全体で、5.2%の削減目標。
①
吸収源(シンク)の取り扱い
1990 年以降の新規の植林や土地利用の変
化に伴うCO2の吸収排出を考慮する。
柔軟的措置 国際的な協力・協調によって削減目標を達成するための手段
排出量取引
関係国において、各国の数
値目標の一部を「排出量」と
して取引できる仕組み。
共同実施
関係国において相互のプ
ロジェクトで得られた排出
削減量を関係国間で配分で
きる仕組み
クリーン開発メカニズム
関係国とそれ以外の国との
間のプロジェクトによる削減
量を一定の認証手続きを経て
配分できる仕組み。
これらの国際的動きを受けて、我が国では「地球温暖化対策の推進に関する法律」が
平成 10 年 10 月に公布され、平成 11 年4月に施行されています。この法律では、地球
温暖化対策への取組として、国、地方公共団体、事業者及び国民それぞれの責務を明ら
かにするとともに、国、地方公共団体の実行計画の策定、事業者による算定報告公表制
度など、各主体の取組を促進するための法的枠組みを整備するものとなっています。ま
た、地球温暖化対策に関する具体的な取組については、平成 10 年6月に「地球温暖化
対策推進大綱」
(旧大綱)が策定され、平成 14 年3月に新大綱が策定され、その後、京
都議定書の発効を受けて、平成 17 年4月に「京都議定書目標達成計画」が定められま
した。京都議定書目標達成計画においては、京都議定書で定められた 1990 年度比6%
削減の目標達成に向けた対策の基本的な方針が示されると共に、温室効果ガスの排出削
減、吸収等に関する具体的な対策、施策が示され、特に地方公共団体に期待される事項
も示されました。
我が国は京都議定書第二約束期間には参加せず、「京都議定書目標達成計画」は平成
24 年度末を以て終了しましたが、平成 25 年度以降、国連気候変動枠組条約締約国会議
(COP16)のカンクン合意に基づき、平成 32 年(2020 年)までの削減目標の登録と、
その達成に向けた進捗の国際的な報告・検証を通じて、引き続き地球温暖化対策に積極
的に取り組んでいくものとしています。
また、新たな地球温暖化対策計画の策定までの間の取組方針として、地球温暖化対策
を切れ目なく推進する必要性に鑑み、当該計画の策定に至るまでの間においても、地方
公共団体、事業者及び国民には、それぞれの取組状況を踏まえ、
「京都議定書目標達成
計画」に掲げられたものと同等以上の取組を推進することを求めることとし、政府は、
地方公共団体、事業者及び国民による取組を引き続き支援することで取組の加速を図る
-2-
方向としています。
(平成 25 年3月 15 日地球温暖化対策推進本部決定「当面の地球温
暖化対策に関する方針」
)
3
我が国における温室効果ガス総排出量の推移
温室効果ガスの総排出量(各温室効果ガスの排出量に地球温暖化係数(GWP)を乗じ合
算したもの)は、平成 24 年度(速報値)で二酸化炭素換算 13 億 4,100 万トンであり、
京都議定書の基準年の排出量である二酸化炭素換算 12 億 6,100 万㌧と比べると、6.3%
の増加となっています。
代表的な温室効果ガスである二酸化炭素についてみると、平成 24 年度(速報値)に
おける我が国の排出量は、12 億 7,500 万㌧であり、基準年度と比べて 11.4%
(1 億 3,000
万㌧)増加となっています。また、前年度と比べると、主に火力発電における化石料消
費量の増加等によりエネルギー起源 CO2 が 2.8%(3,330 万㌧ 2)増加し、CO2 排出量全
体で 2.7%(3,360 万㌧)増加しました。
このように、増加傾向にある温室効果ガスの排出量をまず減少基調とさせ、継続的な
排出削減を図っていかなければなりません。
温室効果ガス排出量の推移(2012 年速報値)
出典:環境省
-3-
第2節 地球温暖化対策の背景等
1
実行計画策定の根拠
「地球温暖化対策の推進に関する法律」
(以下、本手引きにおいて「法」という。
)第
20 条の3第1項に基づき、都道府県及び市町村は、当該都道府県及び市町村の事務及
び事業に関し、温室効果ガスの排出の量の削減並びに吸収作用の保全及び強化のための
措置に関する計画(以下、本手引きにおいて「実行計画」という。
)を策定するものと
されています。また、同条第8項、第9項に基づき、都道府県及び市町村は、実行計画
を策定し、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表し、同条第 10 項に基づき、実
行計画に基づく措置の実施の状況(温室効果ガス総排出量を含む)を公表しなければな
らないとされています。
地球温暖化対策の推進に関する法律第 20 条の3
第二十条の三
都道府県及び市町村は、地球温暖化対策計画に即して、当該都道府県及び
市町村の事務及び事業に関し、温室効果ガスの排出の量の削減並びに吸収作用の保全及
び強化のための措置に関する計画(以下「地方公共団体実行計画」という。
)を策定する
ものとする。
2~7 (省略)
8
都道府県及び市町村は、地方公共団体実行計画を策定したときは、遅滞なく、これを
公表しなければならない。
9 第五項から前項までの規程は、地方公共団体実行計画の変更について準用する。
10
都道府県及び市町村は、毎年一回、地方公共団体実行計画に基づく措置及び施策の実
施の状況(温室効果ガス総排出量を含む。
)を公表しなければならない。
11~12 (省略)
注:「地球温暖化対策計画」は、今後、エネルギー政策の検討が進展し、確定的な目標を設
定できるようになった時点において策定し、閣議決定することとしています。
(平成 25 年 11 月 15 日 地球温暖化対策推進本部議事要旨(抄))
2
その他の関連事項
(1)実行計画と関連制度の特徴について
実行計画は、全ての地方公共団体が策定義務を負うものですが、その他、事業者とし
ての温室効果ガスの総排出量の報告等を行う「算定・報告・公表制度」や「エネルギー
使用の合理化に関する法律」(以下、「省エネ法」と表記)における定期報告等、関連
する制度及びその義務について、理解することが重要です。
以下に、各制度の特徴等をとりまとめています。また、都道府県では、地球温暖化に
関する条例を制定している場合もありますので、それらとの整合を踏まえるとともに、
その他の関連法規制等の遵守と併せて、取組を推進する必要があります。
-4-
参考:実行計画及び関連制度の比較
実行計画(事務事業編)
の策定・公表
地球温暖化対策の推進に関
する法律第 20 条の3
根拠
エネルギー使用の合理化に関する
法律(省エネ法) に基づく報告等
地球温暖化対策の推進に関す
る法律第 21 条の2
エネルギー使用の合理化に関する
法律第7条の1
・全ての事業所のエネルギー年間使
用量が原油換算で、1,500kℓ 以上
である事業者
・全ての事業所のエネルギー年間使
・エネルギー起源 CO 以外の温室効 用量が原油換算で、1,500kℓ 以上
2
果ガスでは、全ての事業所にお である事業者
ける特定の温室効果ガスの排出
量合計が、3,000t-CO 以上であ
地方公共団体
対象者
算定・報告・公表制度に基づく
特定事業者としての報告等
2
る事業者
二酸化炭素(CO )
二酸化炭素(CO )
メタン(CH )
メタン(CH )
一酸化二窒素(N O)
一酸化二窒素(N O)
ハイドロフルオロカーボン(HFC)
パーフルオロカーボン(PFC)
六ふっ化硫黄(SF )
ハイドロフルオロカーボン(HFC)
パーフルオロカーボン(PFC)
六ふっ化硫黄(SF )
三ふっ化窒素(NF ) (注)
三ふっ化窒素(NF ) (注)
2
4
対象ガス
4
2
6
3
義務
2
・「実行計画(事務事業編)」の
策定・公表
・温室効果ガス排出量の公表
2
建物において使用する燃料、熱、
電気
*自動車に使用する燃料は対象
外
6
3
定期報告書の作成・提出
・「エネルギー使用状況」の届出
・「エネルギー管理統括者」、「エネ
ルギ管理企画推進者」の選任、届
出
・「中長期計画書」の作成・提出
・判断基準の遵守(管理標準の作
成、省エネ措置の実施等)
・「定期報告書」の作成・提出
*年平均1%以上のエネルギー消
費原単位の低減(努力目標)
注:三ふっ化窒素を対象ガスに加える規定は、平成 27 年4月1日から施行されます。
-5-
参考:実行計画策定の適用区分
実行計画(※1)
事務事業編
の策定
地方公共団体
法の
規定
計画策定・計画公表・
実施状況の公表
(年一回)
(参考)区域施策編
の策定
法の
規定
計画策定・計画公表・
実施状況の公表
都道府県
●
●
政令指定都市
●
●
中核市
●
●
特例市
●
●
その他の市町村
●
○
一部事務組合等(※2)
●
-
【凡例】●:義務、○:努力義務
※1.実行計画は、実行計画(事務事業編)のほかに、区域全体における温室効果ガ
スの総排出量を削減するための地球温暖化対策を推進する「実行計画(区域施策編)」
があります。実行計画(区域施策編)の概要等に関しては、以下のアドレスを参照く
ださい。
地球温暖化対策地方公共団体実行計画(区域施策編)策定支援サイト↓
http://www.env.go.jp/policy/local_keikaku/kuiki/index.html
※2.都道府県又は市町村の規定の準用により、実行計画(事務事業編)の策定義務
があります。(地方自治法 第 292 条)
-6-
(2)実行計画の策定による効果
地方公共団体は、当該行政区域において、温室効果ガス排出量の比較的大きい経
済主体となるため、自らの事務・事業により排出される温室効果ガスの排出量を抑
制することは、地域全体における温室効果ガス排出量の実質的な削減に寄与するも
のであり、また、地方公共団体自身が率先的な取組を行うことにより地域の模範と
なることが求められます。
実行計画の策定により期待されるその他の効果として、以下が挙げられます。
①
グリーン調達の推進
実行計画には、低公害車・低燃費車や太陽光等の自然エネルギーの導入といった
温室効果ガス排出抑制のための措置に関する目標が盛り込まれます。すべての都道
府県や市町村が具体的な目標を掲げて環境への負荷の少ない製品やサービスを計
画的に導入することで、政府の取組と相まって、我が国全体としてみると、大きな
マーケットを創出することができます。
②
事務経費の削減
紙、電気、水の使用量、廃棄物の発生量などを抑制することは、事務経費の削減
にもつながります。実行計画の策定や実施により、地球温暖化防止上の効果と経済
効果を同時に達成することができます。
③
温室効果ガス排出抑制対策に関する経験・知見の蓄積
地方公共団体には、事業者や住民に身近な公共セクターとして、地球温暖化対策
に関する情報提供等の支援を行うことが期待されています。自らの取組を通じて、
取組実施上の課題や効果などについて経験や知見が蓄積され、具体例を含め、事業
者や住民に対する情報提供や助言をより効果的に行うことができます。
-7-
第2章
実行計画の策定・改訂
第1節 実行計画策定の全体像
本手引きは、実行計画を初めて策定する団体を対象とした策定手順や解説を基本とし
ています。
しかし、多くの地方公共団体にあっては、既に実行計画を策定するとともに、継続的
な運用を進めていることから、現行の実行計画をより良いものに改訂するためのポイン
ト等についても解説します。
なお、本手引きの公表以前(~平成 26 年 3 月)に、旧マニュアルに基づき実行計画
を策定・改訂した地方公共団体は、少なくとも次期計画策定時までに、本手引きに準じ
て、必要な事項等を反映するようにしてください。
1 実行計画を策定する主体
共通・策定・改訂
法第 20 条の 3 に基づき、都道府県及び市町村は、実行計画を策定するこ
とが義務付けられています。
〇都道府県及び市町村
法第 20 条の3において、当該都道府県及び市町村の事務及び事業に関し、温室効
果ガスの排出の量の削減並びに吸収作用の保全及び強化のための措置に関する計画
(実行計画)を策定することが定められています。
〇一部事務組合等の地方公共団体の組合
一部事務組合等の地方公共団体の組合についても、地方自治法 292 条に基づき、都道
府県又は市町村の規定の準用により、実行計画を策定しなければなりません。
なお、一部事務組合等の事務所や事業所が当該一部事務組合を設立した地方公共団体
と一体である場合などには、共同で実行計画を策定することもできます。
地方自治法第 292 条
地方公共団体の組合については、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあ
るものを除くほか、都道府県の加入するものにあっては都道府県に関する規定、
市及び特別区の加入するもので都道府県の加入しないものにあっては市に関する
規定、その他のものにあっては町村に関する規定を準用する。
-8-
2 実行計画に必要な要素
共通・策定・改訂
実行計画には、庁内における地球温暖化対策を具体的に推進していくため
に必要となる事項を盛り込みます。
(1)実行計画に記載すべき事項
実行計画の策定・改訂に当たっては、法が求める以下の事項を踏まえた構成とする必
要があります。
法第 20 条の3第2項
一
計画期間
二
地方公共団体実行計画の目標
三
実施しようとする措置の内容
四
その他地方公共団体実行計画の実施に関し必要な事項
これを踏まえ、実行計画に最低限盛り込むべき要素としては、以下の 4 点が挙げられ
ます。
【実行計画に盛り込むべき要素】
① 計画の基本的事項(目的、計画期間、対象範囲等)
② 温室効果ガスの総排出量
③ 温室効果ガスの総排出量に関する数量的な目標
④ 目標達成に向けた具体的な取組項目
また、実行計画を実施していくために、計画の進行管理(実施・運用、点検・評価、
公表内容)に関する事項を盛り込みます。
【進行管理に関し盛り込むべき事項】
① 実行計画の進行管理
② 実行計画の点検・評価結果の公表
-9-
3 実行計画の構成
共通・策定・改訂
実行計画には、目標を設定し、それを達成するための取組項目を示すとと
もに、計画の進行管理体制や点検・評価方法等についても記述します。
以下に、標準的な実行計画の目次構成を示します。
実行計画書の構成例
1.背景
○地球温暖化問題や国内対策の動向
○当該自治体の上位理念
2.基本的事項
○計画の目的
○計画の範囲
○対象とする温室効果ガス
○計画期間
○基準年度
○上位計画や関連計画との位置づけ 等
3.温室効果ガス排出量
○当該自治体の事務・事業の範囲における温室効果ガス排出量の
算定方法
○算定結果(ガス別、エネルギー種別、施設分類別、所管部局別等)
4.目標と基本方針
○数量的な目標
5.取組項目
○目標達成に向けた取組の基本方針
○目標達成に向けた具体的な取組項目
6.計画の推進
○推進体制
○点検・評価・見直し・公表の手順
等
共通・策定・改訂
実行計画の改訂に当たっては、現行の実行計画が、分かりやすい構成
となっていたか、必要な要素を網羅していたかを再確認します。
実行計画の改訂に当たり、現行の実行計画は、当該地方公共団体の職員にとって分か
りやすい構成となっていたか、目標設定や取組項目のほか、進行管理体制や点検・評価
方法等の必要と考えられる事項が、過不足なく網羅されていたかを再確認し、必要に応
じて見直しを行います。
-10-
4 実行計画の策定・改訂手順
共通・策定・改訂
実行計画の策定・改訂作業を円滑に進めるための具体的な検討手順を、
事前に決定します。
実行計画は、全庁的な取組であることから、策定・改訂を進めるに当たって、必要と
なる個別の検討事項を整理するとともに、適切な段階で関係各課等との調整を行い、円
滑に検討が進められるようにすることが重要です。
当該地方公共団体の実情に応じ、下図のような庁内における検討手順を定めて、合意
形成を図っていきます。
実行計画の策定(改訂)手順
STEP
1
体制づくり
(第2章第1節5項 )
実行計画を策定・改訂
するために整備した検
討体制は、実施・運用
体制に移行させること
が可能
基本的事項の決定
(第2章 第2節)
STEP
2
温室効果ガス総排出量の把握
(第2章 第3節)
温室効果ガスの総排出量に
関する数量的な目標の検討
(第2章 第4節)
STEP
3
進行管理の仕組みの整備
(第2章 第5節)
実行計画及び点検結果の公表
(第2章 第6節)
-11-
5
実行計画の策定・改訂のための体制づくり
共通・策定・改訂
関係各課との個別の調整や全庁的な合意形成を図るため、検討業務を担当
する組織を事前に明確にします。
実行計画の策定・改訂においては、具体的な作業を始める前に、実行計画の検討・協
議や合意形成を図るための検討体制を整備することが重要です。
検討体制の整備は、以下の手順により実施します。
【実行計画の検討体制整備の手順】
①
検討業務を担当する組織の位置づけや役割を明らかにします。
②
計画の対象とする組織等を踏まえて、その構成を明らかにします。
③
上記①,②の考え方に基づきメンバーの選出を行います。
④
計画の内容を検討するための検討組織を設置します。
※①,②の段階で、必要に応じて設置要綱等を文書化し、庁内周知を図ります。
人口の少ない市町村(例えば人口5万人以下の市町村)における留意点
人口の少ない市町村において、新たに実行計画の検討組織を整備することが困
難である場合は、庁内における既往の合意形成の仕組みを活用することが考えら
れます。
例えば、実行計画案の作成を担当課※が関係課等と連携しながら実施し、定例
の課長会議の議案として報告・協議を行うことにより、庁内合意形成を図ります。
検討組織体制図(例示)
情報の共有
協力
関係課等
計画案の策定
報告
担当課
依頼
計画の検討・決定
定例課長会等
指示
※実行計画の性格を勘案し、電気使用量等のデータ収集を効率的に実施する視点か
ら、総務課等の庁舎管理所属が担当することも可能です。
-12-
共通・策定・改訂
実行計画の改訂に当たっては、現行の実行計画策定時に整備した進行管
理の仕組みが効果的・効率的に機能してきたかを再確認し、必要に応じて
見直しを行います。
【実効性の高い計画とするためのポイント】
○既往の環境保全組織の活用
検討体制の整備に当たっては、既存の組織を活用する場合と、新たに組織を整備
する場合が考えられます。庁内に既に環境基本計画など環境保全に係る組織体制が
整備されている場合は、その組織体制を活用し計画の検討を行うことが効率的です。
○関係課等の参加
実行計画を策定し、必要な取組を推進するためには、財政部門や建設部門といっ
た地球温暖化対策の推進における重要な役割を担う部課等からもメンバーを選出
すると効果的です。
○組織の構成
検討業務を担当する組織は、一つの組織である必要はありません。複数の職階層
による検討体制を整備し、それぞれの担うべき役割を明らかにする方法もあります。
必要に応じてテーマ別ワーキンググループを設置することも効果的です。
○全庁的な合意形成
検討組織のメンバーが、実行計画の内容を検討した結果について、それぞれの所
属する組織に持ち帰り、当該組織内における合意形成を図ります。
検討組織体制図(例示)
市長
地球温暖化対策検討会議
(部課長級会議)
… 計画の承認
… 計画策定の検討・部局間調整
地球温暖化対策推進事務局
(環境担当部課)
…情報提供、連絡調整
地球温暖化対策検討
ワーキンググループ会議
(係長級会議)
-13-
… 具体的な対策の検討
6
実行計画の策定・改訂スケジュール
共通・策定・改訂
事前に決定した検討手順、体制に基づき、
・誰が(who)
・何を(what)・
いつまでに(when)検討するかを、あらかじめ想定します。
実行計画の策定・改訂作業では、計画書の原案は担当課が作成しますが、温室効果ガ
スの総排出量実態調査や目標の検討等に際して、関係する部課等、あるいは全庁的な協
力・協議等が必要となります。作業を進める前に、既に決定した検討手順、体制に基づ
き、どのような事項について・いつまでに行う必要があるかを想定し、実行計画の策定
スケジュールを定めます。このスケジュールを全庁で共有することが重要です。
以下に標準的なスケジュールを示します。
実行計画の策定スケジュール(例示)
地球温暖化対策地方公共団体実行計画
(事務事業編)検討スケジュール
平成26年度
〈担当課〉
関係
各部課
1.策定の体制づくり
◎
○
2.基本的事項の検討
◎
3.温室効果ガス総排出量把握
◎
4.目標と取組の検討
◎
○
○
5.推進・点検体制の検討
◎
○
○
6.計画の策定
◎
○
○
◎
4月
5月
6月
7月
8月
9月
事務局
10月 11月 12月
7.計画の公表
1月
2月
3月
★
検討組織
○
会議等
■検討組織による協議
○
○
○
○
凡例:◎主、○従
※実行計画の検討段階におけるスケジュールだけでなく、策定後の年間の実施・運用、点検・評価、
公表に係るスケジュールについても別途検討する必要があります(具体的な内容は、第3章を参照)。
-14-
第2節 実行計画の策定・改訂に当たっての基本的事項の決定
実行計画には、計画の期間や対象範囲、対象とする温室効果ガスなど、計画の基本的
事項を定める必要があります。
また、実行計画の改訂に当たっては、現行の実行計画に定めた基本的事項の考え方を
基礎として、当該地方公共団体の状況の変化等を踏まえた見直しを行います。
以下に、実行計画の基本的事項の検討方法を解説します。
1
実行計画の目的
地方公共団体は、当該行政区域において、温室効果ガス排出量の比較的大きい経済主
体となるため、自らの事務・事業により排出される温室効果ガスの排出量を抑制するこ
とは、地域全体における温室効果ガス排出量の実質的な削減に寄与するものであり、ま
た、地方公共団体自身が率先的な取組を行うことにより地域の模範となることが求めら
れます。
共通・策定・改訂
実行計画を策定すべき根拠や目的等を具体的に記載します。
実行計画の目的としては、下記の事項を記載する必要があります。
【記載事項(必須)
】
・実行計画は、法第 20 条の3に基づき、都道府県及び市町村の事務及び事業に関
し、策定が義務付けられていること。
・実行計画は、温室効果ガスの排出の量の削減並びに吸収作用の保全及び強化のた
めの措置について定めることが義務付けられていること。
【その他の記載事項(任意)】
計画の目的に併記する事項として、当該地方公共団体の地球温暖化対策の基本的な
方針や実施状況等といった、これまでの経緯を明記しておくことも考えられます。
-15-
2
実行計画の対象とする事務・事業の範囲
共通・策定・改訂
実行計画の対象とする事務・事業の範囲を記載します。
実行計画の対象とする事務・事業の範囲は、原則として、地方自治法に定められた行
政事務すべてとなります。地方公共団体の事務・事業には、庁舎におけるもののみなら
ず、廃棄物処理、水道、下水道、公営交通、公立学校、公立病院等が実施するものも含
まれます(一部事務組合等の地方公共団体の組合が運営する廃棄物処理や水道、下水道
等の事業に関しては、当該組合等が個別に実行計画を策定する必要があります。
)。
実行計画では、各地方公共団体の職員が直接実施する事務・事業を対象としており、
正規・臨時的雇用・非常勤職員を問わず、すべて対象となります。ただし、他団体に派
遣されている地方公共団体職員は派遣先の職員とみなすので、対象とはなりません。
人口の少ない市町村(例えば人口5万人以下の市町村)における留意点
計画の当初から関連するすべての事務・事業を対象とすることが困難な場
合は、スケジュールを定めて段階的に対象とする事務・事業を拡大していく
方法も考えられます。この方法を採用する場合には、対象となる組織や施設
について明記するとともに、個別の事務・事業と組織や施設の関連性につい
て明らかにしておかなくてはなりません。
なお、計画の対象とすることが難しいと判断される施設等であっても、エ
ネルギー使用量等の実績を把握できるようにするとともに、温室効果ガスの
排出の削減等の措置を講ずるよう要請することが望まれます。
共通・策定・改訂
現行の実行計画の期間中における当該地方公共団体の事務・事業の変化等
を踏まえ、必要に応じて対象範囲を見直します。
実行計画の改訂では、現行の実行計画の事務・事業の範囲が、当該地方公共団体の現
状に照らして適切といえるかを確認します。例えば、現行の実行計画の期間中において
組織や施設の変化等があった場合などは、現状を踏まえ対象範囲を見直します。
なお、指定管理者制度により施設運営を外部に委託した場合であっても、施設の所有
権は当該地方公共団体にあるため、実行計画の対象となります。現行の実行計画におい
-16-
て、指定管理者制度施設を対象外としていた場合は、改訂時に新たに対象として追加し
なくてはなりません。
【組織や施設の変化(例示)】
・事務・権限の移譲(廃棄物処理の一部事務組合化など)
・市町村合併等による事務事業範囲の大幅な変化
・大規模な施設の建築、あるいは、廃止
3
実行計画の対象とする組織や施設等の範囲
共通・策定・改訂
事務・事業の範囲に基づき、対象とすべき組織や施設等を具体的に把握・
整理します。
実行計画では、地方公共団体の事務・事業を行うすべての組織や施設が対象となりま
す。
これらの組織や施設は、温室効果ガスの総排出量の把握に必要な基礎的な要素となる
ことから、一覧表等で管理することが計画を推進する上で重要です。
実行計画の改訂では、計画期間中における事務・事業範囲の変更や公共施設の増減(新
築や廃止)等を踏まえ、必要に応じて対象とする組織や施設について見直しを行います。
-17-
参考:実行計画の対象範囲の設定について
組織
対象の
有無
一般廃棄物の
処理主体
対象
一般廃棄物の
処理委託
対象
教育委員会
対象
議会・委員会
対象
指定管理者制
度施設
対象
委託する事務
事業
対象外
テナント
対象
対象外
無人施設
対象
地方公共団体
が設立する公
社、法人
対象外
根拠
備考
一般に、市町村の一般廃棄物焼却
施設においては、市役所等から排出
される廃棄物だけでなく、一般家庭
等から排出される廃棄物を焼却して
いる。この場合、当該市町村の実行
計画では、焼却施設で処理されてい
る廃棄物全体が対象となる。
市町村の一般廃棄物を委託によ
り、近隣市町村や民間事業者等が処
理を行っている場合でも、地域のご
み処理対策の実施主体は、当該市町
村となるので、処理を委託した廃棄
物全体が対象となる。
都道府県内の市区町村立の小中学
校は各市区町村教育委員会が運営・
管理しており、これらの市区町村立
の小中学校は、管理している市区町
村の行う事務・事業とみなして市区
町村の実行計画において対象とす
る。
地方公共団体に所属する組織であ
るため、対象となる。
一般廃棄物の収集を市町
村で行い、焼却は一部事務組
合で行っている場合は、収集
は市町村の対象、焼却は一部
事務組合の対象となる。
指定管理者に施設運営を委託して
いる場合であっても、施設の所有権
は、当該地方公共団体にあるため対
象となる。
指定管理者制度施設を除き、外部
に委託する事務事業は対象外とす
る。
民間ビル等のテナント内であって
も、自ら事務・事業(管理)を行っ
ている場合には対象とする。
公共施設にテナントとして入居し
ている他の事業者は、対象外とする。
職員が常駐しない施設であって
も、自ら事務・事業(管理)を行う
場合には対象とする。
土地開発公社、住宅供給公社等は、
法人格が異なる組織であるため、対
象外となる。
-18-
近隣市町村から廃棄物処
理を受託している場合は、受
け入れによる廃棄物処理分
を除外することができる。
省エネ法では、教育委員会
は、異なる部局とされるの
で、区別して管理しなくては
ならない。
-
省エネ法における特定事
業者である地方公共団体は、
指定管理者制度施設も管理
の対象としなくてはならな
い。
例えば、公共工事や各種調
査業務の委託等。
例えば、民間ビルにテナン
トとして入居している所属
がある場合。
庁舎内に入居している売
店や銀行等。
例えば、公園、公衆トイレ、
街路灯、ポンプ場、電気室等。
-
組織
対象の
有無
水道事業
対象
下水道事業
対象
公営交通事業
対象
公立学校
対象
公立病院
対象
職員寮、公営
住宅
庁舎の管理を
外部に委託し
ている施設
地方公共団体
の施設に入居
している公
社、財団
対象外
対象
対象
対象外
地方公共団体
と他の団体で
分割して使用
している施設
地方公共団体
の所有物では
ない施設
根拠
備考
当該地方公共団体によって所管さ
れる水道事業は、当該地方公共団体
に帰属するため、対象となる。
当該地方公共団体によって所管さ
れる下水道事業は、当該地方公共団
体に帰属するため、対象となる。
当該地方公共団体によって所管さ
れる公営交通事業は、当該地方公共
団体に帰属するため、対象となる。
当該地方公共団体によって設立さ
れた公立学校は、当該地方公共団体
に帰属するため、対象となる。
当該事業を一部事務組合で
行う場合は、一部事務組合の
対象となる。
当該事業を一部事務組合で
行う場合は、一部事務組合の
対象となる。
当該事業を一部事務組合
で行う場合は、一部事務組合
の対象となる。
地方独立行政法人法(平成
15 年法律第 118 号)に基づ
いて設立された公立大学法
人立の学校を除く。
-
当該地方公共団体によって設立さ
れた公立病院は、当該地方公共団体
に帰属するため、対象となる。
個人の生活に伴うものに関して
は、対象外となる。ただし、施設管
理に係る事務所の部分は対象とな
る。
庁舎の設備・機器等の保守管理等
を委託した場合であっても、電気を
直接使用するのは地方公共団体であ
るため、対象となる。
公社・財団等で使用した料金を地
方公共団体が支払っている場合は、
対象となる。
公社・財団等で使用した電気等の
料金を当該公社・財団が全て支払っ
ている場合は、対象外となる。
当該地方公共団体が使用している
電気使用量等は対象となる。
対象
対象
地方公共団体の所有物ではない施
設であっても、地方公共団体職員が
事務・事業を行っている場合は対象
となる。
-19-
地方公共団体の福利厚生施
設は対象となる。
-
-
-
電気使用量等を分けて把
握できない場合、例えば、床
面積の比率や人員数の比率
による按分等、適切な方法で
推計する。
電気使用量等を分けて把
握できない場合、例えば、床
面積の比率や人員数の比率
による按分等、適切な方法で
推計する。
4 実行計画の対象とする温室効果ガスの種類
共通・策定・改訂
実行計画において対象とする温室効果ガスを記載します。
温室効果ガスの総排出量の算定にあたり、対象とする温室効果ガスは、法第2条第3
項において規定されている次の7種類の物質となります。
【温室効果ガスの種類】
・二酸化炭素(CO2)
・メタン(CH4)
・一酸化二窒素(N2O)
・ハイドロフルオロカーボン(HFC)のうち政令で定めるもの
・パーフルオロカーボン(PFC)のうち政令で定めるもの
・六ふっ化硫黄(SF6)
・三ふっ化窒素(NF3)
(※平成 27 年4月1日以降)
温室効果ガスの種類(法第2条第3項)
ガス種類
二酸化炭素
(CO2)
メタン(CH4)
人為的な発生源
電気の使用や暖房用灯油、自動車用ガソリン等の使
用により排出される。 排出量が多いため、京都議定
エネルギー起源
書により対象とされる 6 種類の温室効果ガスの中では
温室効果への寄与が最も大きい。
非エネルギー起源 廃プラスチック類の焼却等により排出される。
自動車の走行や、燃料の燃焼、一般廃棄物の焼却、廃棄物の埋立等により
排出される。
二酸化炭素と比べると重量あたり約 21 倍の温室効果がある。
自動車の走行や燃料の燃焼、一般廃棄物の焼却等により排出される
二酸化炭素と比べると重量あたり約 310 倍の温室効果がある。
カーエアコンの使用・廃棄時等に排出される。
二酸化炭素と比べると重量あたり約 140~11,700 倍の温室効果がある。
一酸化二窒素
(N2O)
ハイドロフル
オロカーボン
(HFC)
パーフルオロ 半導体の製造、溶剤等に使用され、製品の製造・使用・廃棄時等に排出され
カ ー ボ ン る(地方公共団体では、ほとんど該当しない)。
二酸化炭素と比べると重量あたり約 6,500~9,200 倍の温室効果がある。
(PFC)
電気設備の電気絶縁ガス、半導体の製造等に使用され、製品の製造・使
六ふっ化硫黄
用・廃棄時等に排出される(地方公共団体では、ほとんど該当しない)。
(SF6)
二酸化炭素と比べると重量あたり約 23,900 倍の温室効果がある。
三ふっ化窒素 半導体製造でのドライエッチングや CVD 装置のクリーニングにおいて用い
(NF3)
られている(地方公共団体では、ほとんど該当しない)。
*実行計画で対象とする温室効果ガスのうち、HFC 及び PFC は物質群であり、法の対象となる
具体的な物質名は施行令第1条(HFC 13 物質)及び第2条(PFC 7物質)に掲げられてい
る。
-20-
参考:算定対象活動と排出される温室効果ガスの種類
算定対象活動
CO2
CH4
N2 O
燃料の使用(ガソリン、灯油、重油、都市ガス等)
○
他人から供給された電気の使用
○
他人から供給された熱の使用
○
一般廃棄物の焼却
○
○
○
産業廃棄物の焼却
○
○
○
ボイラー・家庭用機器での燃料の使用
(〇)
○
○
ディーゼル機関における燃料の使用
(〇)
○
○
(〇)
○
○
自動車の走行
(〇)
○
○
船舶における燃料の使用(軽油、重油)
(〇)
○
○
HFC
PFC
SF6
(自動車、鉄道車両または船舶用を除く)
ガス機関・ガソリン機関における燃料の使用
(航空機、自動車または船舶用を除く)
家畜の飼養(消化管内発酵)
○
家畜の飼養(ふん尿処理)
○
水田の耕作
○
牛の放牧
○
○
農業廃棄物の焼却
○
○
埋立処分した廃棄物の分解
○
下水・し尿・雑排水処理
○
○
○
耕地(畑・水田)への化学肥料の使用
○
耕地(農作物)への肥料(化学肥料以外)の使用
○
笑気ガス(麻酔剤)の使用
○
カーエアコンの使用、廃棄
○
噴霧器・消火器の使用、廃棄
○
SF6 が封入された電気機械器具の使用、点検、廃棄
○
(○):二酸化炭素排出量は「燃料の使用」項目として算定対象。
注1:三ふっ化窒素の算定対象活動については、平成 26 年度中に定められる予定です。
注2:二酸化炭素以外の温室効果ガスについては、排出量全体に占める割合が極めて小さ
くなる半面、その排出源が多岐にわたるケースがあるため、計画当初から対象とすること
が困難と判断される場合は、スケジュールを定めて段階的に対象を拡大していく方法も考
えられます。
-21-
5
実行計画の期間
共通・策定・改訂
実行計画の対象とする期間を記載します。
実行計画は、一定の期間を定め、地球温暖化対策の推進状況を定期的に見直し、新た
な方向性等を検討することが重要です。
実行計画の期間に関して、法による定めはありませんので、総合計画や環境基本計画、
実行計画(区域施策編)等の上位計画や関連計画と期間を整合させるなど、当該地方公
共団体の状況に応じて設定します。
実行計画の期間は、概ね5年程度とすることが適当です。
6
基準年度の設定
共通・策定・改訂
計画の対象とする事務・事業の実績(温室効果ガス総排出量)が適
切に把握できる年度を基準年度として記載します。
初めて実行計画を策定する場合、温室効果ガスの総排出量に係る実績として把握可能
な直近の年度を基準年度に設定します。
ただし、平時と比較して、温室効果ガスの総排出量の大幅な増減がない年度を基準年
度とすることが重要です。
以下に、温室効果ガスの総排出量の増減に影響を与えることが考えられる事項を例示
します。
【平時と比較して温室効果ガスの総排出量に大幅な影響を及ぼす例】
・他都市からの廃棄物を一時的に受け入れている(排出量の増加)。
・廃棄物処理施設の改修のため、一時的に他都市へ処理を委託している(排出量
の減少)。
・施設の新築が重なったため、エネルギー使用量等が大きく増加した(排出量の
増加)。
・災害等により、多数の施設が一定期間休止・停止した(排出量の減少)。
-22-
共通・策定・改訂
実行計画の改訂では、当該地方公共団体の現在の状況が、現行の実行計画を策定した
当初と比べ、温室効果ガスの総排出量の量そのものや事務・事業の構成等が大きく変化
している場合は、適切な評価が難しくなることを考慮し、基準年度を新たに設定するこ
とが考えられます。
一方、実行計画の継続性の観点から、上記事項を踏まえた上で、現行の実行計画に定
めた基準年度とすることも可能です。なお、必ずしも我が国の温室効果ガス削減目標の
基準年度と整合させる必要はありません。
7
上位計画や関連計画との位置づけ
共通・策定・改訂
当該地方公共団体における実行計画の位置づけを明確にします。
環境分野における地方公共団体の責務は、実行計画に基づく地球温暖化対策の推進だ
けではありません。そのため、実行計画の意義を明記するとともに、当該地方公共団体
の環境行政の中における位置づけ等を明らかにすることも重要です。
【実行計画の位置づけの考え方】
国の環境基本法や省エネ法、グリーン購入法、環境配慮契約促進法といった関連法、
都道府県の環境基本条例、地球温暖化対策に関する条例との関わりや当該地方公共団
体における総合計画、環境基本計画等の上位計画や実行計画(区域施策編)などとの
関わりについて、関連図等でわかりやすく示すことにより、実行計画の位置づけを明
確にします。
実行計画の位置づけ(例示)
根拠法 等
地球温暖化対策の
推進に関する法律
関連条例
Z 県地球温暖化対策条例
関連計画
A 市環境基本計画
A 市環境基本条例
地球温暖化対策
実行計画
A 市地球温暖化対策実行計画
(事務事業編)
-23-
A 市地球温暖化対策実行計画
(区域施策編)
第3節 温室効果ガスの総排出量の把握
地方公共団体は、実行計画を策定し、毎年一回、温室効果ガス総排出量を含めて、実
行計画の実施状況を公表する必要があります。従って、温室効果ガスの総排出量に関す
る数量的な目標を実行計画に定めるとともに、毎年の温室効果ガスの総排出量の実績に
ついても継続して把握する必要があります。
ここでは、温室効果ガスの総排出量を把握するために実施すべき事項について解説し
ます。
1
温室効果ガスの総排出量の把握の考え方
共通・策定・改訂
まず、「電気使用量」等、算定対象となる活動を特定します。
次に、算定対象となる活動の量(活動量)の把握方法を決め、実態調査
を行います。
各種の活動量に基づき、算定対象となる活動ごとに、法施行令で定めら
れている排出係数を用いて、温室効果ガス排出量を算定します。
【実施手順】
・算定対象となる活動量を把握するための実態調査の準備
・実態調査の実施
・収集した個別データの確認・精査
・温室効果ガス総排出量の算定
・温室効果ガス総排出量の実行計画への記載
算定した温室効果ガスの総排出量は、実行計画の目標設定の基礎となります。当該地
方公共団体の温室効果ガスの総排出量の特性等を把握するため、以下の事項について把
握・分析し、実行計画内に記載します。
【記載事項(必須)】
・温室効果ガス総排出量
・温室効果ガス種別の排出量
・温室効果ガスを排出する活動項目ごとの実績及び排出量
・主として排出される温室効果ガスの種類
温室効果ガスの総排出量の詳細について、上記項目を詳細に分析し、現状の課題及
び計画の方向性を明らかにすることにより、重点を置くべき取組等を検討する際の参
考とすることができます。
-24-
【記載事項(任意)
】
・温室効果ガス排出量への影響が大きいエネルギー等
・温室効果ガス排出量の多い組織や施設等
など
【排出係数についての留意事項】
温室効果ガス総排出量の実績を把握するためには、算定の対象となる活動項目の活
動量のそれぞれについて、最新の排出係数を使用し、算定する必要があります。
2
活動量を把握するための実態調査の準備
共通・策定・改訂
基本的事項で定めた対象範囲の考え方に基づき、実績を把握すべき組織や
施設を設定し、算定の対象とする活動項目等を設定します。
以下に、活動量の調査の実施に必要となる事項について解説します。
【調査実施に当たって事前に決定すべき事項】
・調査の対象とする施設等の決定
・調査の対象とする活動項目の設定
・実績を把握する対象時期(前年度1年分の実績が基本)
・調査実施期間
調査を実施するための作業手順について、以下に例示します。
① 調査の対象とする施設と活動項目を設定します。
(P.20「参考:算定対象活
動と排出される温室効果ガスの種類」、「温室効果ガス排出量算定支援ツー
ル」及び「算定ガイドライン」※1 を参照)
。法で定められている算定対象活
動のなかには、一部の地方公共団体等、あるいは一部施設等でしか該当し
ない項目もあり得ます。実際の行政事務と照らし合わせ、遂行されている
活動について調査項目を設定します。調査対象の活動項目と施設・組織名
を組み合わせたマトリックス表を作成しておくと効率的です。
-25-
参考:マトリックス表(例示)
算定対象活動/対象施設・組織
本庁舎
(○=調査対象
無印=調査対象外)
燃料の使用(ガソリン、灯油、重油、都市ガス等)
○
公立
学校
○
公立
病院
○
廃棄物
処理場
○
他人から供給された電気の使用
○
○
○
○
他人から供給された熱の使用
○
○
○
○
一般廃棄物の焼却
○
産業廃棄物の焼却
○
ボイラー・家庭用機器での燃料の使用
○
ディーゼル機関における燃料の使用
(自動車、鉄道車両または船舶用を除く)
ガス機関・ガソリン機関における燃料の使用
(航空機、自動車または船舶用を除く)
自動車の走行(メタン・一酸化二窒素の算定)
○
○
○
○
○
○
○
○
○
カーエアコンの使用、廃棄
○
○
○
○
噴霧器・消火器の使用、廃棄
○
○
○
○
船舶における燃料の使用
家畜の飼養(消化管内発酵)
家畜の飼養(ふん尿処理)
水田の耕作
牛の放牧
農業廃棄物の焼却
埋立処分した廃棄物の分解
下水・し尿・雑排水処理
耕地(畑・水田)への化学肥料の使用
耕地(農作物)への肥料(化学肥料以外)の使用
笑気ガス(麻酔剤)の使用
○
SF6 が封入された電気機械器具の使用、点検、廃棄
② 算定の対象とする活動項目に基づき、温室効果ガスの総排出量に係る現況
を把握するための調査票※2(以下「調査票」という。
)を作成します。
③ 上記事項と合わせて、調査の実施方法、実施期間、実施要領(調査の趣旨、
実施事項、調査票記入上の留意点など)を作成することで、調査を円滑に
実施することができます。
④ 特に、調査票への記載漏れや単位誤りなどの誤記入※3 が生じた場合、活動
量実績に基づく温室効果ガス排出量が正確に算定できず、実態と異なる排
出量となる可能性があります。そのため、調査票への記載上の留意事項に
関する説明資料を配布することが、人為的なミスを未然に防止する上で大
変重要です。
⑤ 調査の実施にあたっては、事前に、関係各課へ調査実施について周知しま
す。調査実施に関する説明会を開催することも考えられます。
-26-
※1.
「かんたん算定シート ver3.0」および「温室効果ガス総排出量算定方法ガ
イドライン」
環境省では、温室効果ガスの総排出量を算定するための支援ツールとして
「かんたん算定シート ver3.0」を公表しています。本ツールは、下記の実行
計画(事務事業編)策定支援サイトからダウンロードできます。また、「温室
効果ガス総排出量算定方法ガイドライン」も同サイトに公表しています。↓
http://www.env.go.jp/policy/local_keikaku/jimu/pub/download.html
※2.算定対象とする活動の特定
法で定められている温室効果ガス排出量の算定対象活動は、必ずしも全ての
地方公共団体の事務・事業において遂行されているとは限りません。当該地
方公共団体の実際の行政事務を的確に把握し、活動実績のある項目に絞って
実行計画を策定します。
※3.よくある誤記入の例
・記入漏れ(本来記載すべき欄に、電気使用量の数値が入力されていない)
・桁数の間違い(エネルギー使用量等の単位を取り違えて、1,000 倍あるいは
1,000 分の1の値で入力している)
・記入欄の間違い(例えば、電気の記入欄に入力すべきところを、都市ガス
の記入欄に誤って入力している)
・単位の間違い(LPG 使用量など、「kg」単位で記入する欄に、「㎥」単位で
記入している)
【その他の留意事項】
温室効果ガスの総排出量の把握は、計画の毎年の点検・評価、温室効果ガス総
排出量実績の公表でも必要となります。このため、本作業を実施する場合に、ど
こまで把握が可能かを確認するとともに、どのような手法を用いて、どのように
把握することが最も効率的であるかについても、検討することが重要です。
人口の少ない市町村(例えば人口5万人以下の市町村)における留意点
人口の少ない市町村では、温室効果ガスの総排出量を把握するための人
員・作業時間の確保が困難である場合、できるだけ作業負担を軽減できるよ
うなデータ収集の手法を採用することも考えられます。
例えば、庁用車の燃料(ガソリン・軽油等)の使用実績については、所定
のガソリンスタンドに依頼し、年間の給油量を年 1 回報告してもらうことが
考えられます。また、庁用車の年間走行距離に関しては、前年度と当該年度
初めの走行距離の差を把握することで、温室効果ガス排出量を把握すること
も可能です。
-27-
3
活動量を把握するための実態調査の実施
共通・策定・改訂
算定対象活動量を把握するための調査票を対象施設等へ配布します。
実態調査の準備が完了したら、対象となる組織・施設等へ協力依頼を行い、調査票を
配布します。
事例: 神奈川県横浜市
統合的なエネルギー集計システムの構築による効率管理
横浜市では、温対法に基づく実行計画だけでなく、省エネ法や市条例(横浜市生活環境
の保全等に関する条例)などに整合しつつ、市が所管する多数の施設の温室効果ガス排出
量等を把握し、見える化による自主管理を進めるための「エネルギーカルテシステム」
を構築・運用している。
「エネルギーカルテシステム」は、全ての対象施設のエネルギー使用量及び温室効果ガ
ス排出量に関わる情報を一元管理する市独自の集計システムであり、市役所内のイントラ
ネット上のオンラインシステムとして整備し、平成 22 年度より運用を開始している。
本システムは、法令等により対象範囲や算定単位が異なる、複雑多様な状況にも対応で
きるよう基礎的な数値情報や計画等を一元管理し、各種法令等が定める提出様式にアウト
プットするなど、効率的な管理ができる仕組みとなっている。
エネルギーカルテシステムの概要
※各地方公共団体において独自に温室効果ガス排出量の集計システム・ツールを構築するため
には、費用や人員等を確保しなくてはならず、困難であると思われます。そこで、例えば環境
省が公表している「簡単算定シート ver.3.0」等の既往のツールを活用することで、集計や管
理を容易に行うことができます。
-28-
4
温室効果ガスの総排出量算定
調査により収集した個別のデータについて、記載内容が適切か確認し、必要に応じ
て、調査対象施設等の記入者へ内容の照会を行うなど、データの精査を行います。
活動量データが確定した後、温室効果ガスの総排出量の算定を行います。
共通・策定・改訂
回収した調査票を基に活動量を集計し、精査の上、温室効果ガスの総排
出量を算定(※)します。
※活動項目ごとの具体的な温室効果ガス総排出量の算定方法については、温室効果ガ
ス総排出量算定方法ガイドラインを参照ください。また、「かんたん算定ツール
ver3.0」を活用してデータ収集を行う場合は、温室効果ガス排出量を自動計算機能
により算定することができます。
共通・策定・改訂
温室効果ガスの総排出量等について、直近の実績だけでなく、現行の実
行計画における実績の推移についても把握します。
実行計画の改訂に際しては、現行の実行計画の進捗状況について、総括的にとりま
とめることが重要です。
実行計画の改訂は、計画期間の最終年度に実施することが基本となるため、最終年
度の実績は算定できません。改訂計画の中に、現行計画の目標の達成状況を記載する場
合、最終年度の実績は前年度実績から推測した上で、計画期間の目標達成の見込みを示
すこととなります。最終年度の実績の算定が可能となった後に実際の目標の達成結果に
ついても算定し、毎年行っている実績の公表などにより周知します。
【改訂計画への記載事項】
・温室効果ガスの総排出量の推移
・削減目標の達成状況
・個別の取組目標の達成状況(設定している場合)
・これまでの取組推進における課題
・実行計画の改訂方針
-29-
【法施行令の改正における排出係数及び算定区分の追加・削除について】
法施行令の改正により、排出係数が変化した場合、既に算定・公表している過年度の
排出量(実行計画の基準年度の排出量を含む)まで遡って再算定をする必要はなく、改正
された法施行令の施行日以後に算定・公表する排出量について、最新の排出係数を適用
します。
また、法施行令の改正による算定区分の追加・削除についても同様に過去に遡って再
算定を行う必要はありません。
-30-
第4節 温室効果ガスの総排出量に関する数量的な目標の検討
実行計画には、温室効果ガスの総排出量に関する数量的な目標を定める必要がありま
す。目標の設定に当たっては、実行計画の期間中に基準年度と比較してどの程度温室効
果ガスの排出量を削減・抑制すべきかという視点に基づき、検討を行うことが重要です。
以下に、目標設定の手法等に関連する事項を示すとともに、目標を達成するために実施
すべき取組項目についても解説します。
1 目標設定手法
共通・策定・改訂
温室効果ガスの総排出量に係る数量的な目標をどのような手法で設定す
るか検討し、決定します。
温室効果ガスの総排出量に関する数量的な目標の検討には、以下の2つの方法があり
ます。
(1)トップダウン方式による目標の設定
トップダウン方式は、最初に当該地方公共団体において定めた計画期間で、現在か
らどの程度、温室効果ガスの総排出量を抑制するのかについて、政策的な判断を行う
ことにより数量的な目標を設定する方法です。例えば、「5年後に基準年から5%削
減する」といった数量的な目標を設定し、その目標の達成に向けて、特定分野におけ
る目標を設定し、あらゆる取組を実施する方法です。
【トップダウン方式による検討時の留意点】
・当該地方公共団体の裁量により、政策的な視点から目標を設定するので、意欲
的な数値を立てることが可能です。
・政策的な視点から高い目標を達成する場合、その実現可能性について十分に考
慮します。
トップダウン方式の手順
トップダウン方式の場合は、最初に温室効果ガスの総排出量に関する数量的な目標
を設定する手順となります。
①
温室効果ガスの総排出量に関する目標を定めます。
②
取組項目を踏まえ、温室効果ガスの総排出量に関する目標の達成に必要な
特定分野における目標を検討し、設定します。
-31-
トップダウン方式による目標の検討の考え方
政策的な判断による検討
●%削減
目標を達成するために
必要な取組等を検討、設定
する
電気使用量の削減
燃料使用量の削減
公用車の適正利用
など
・
・
・
・
取組A
取組B
取組C
取組D
基準年度
目標年次
事例: 京都府京都市
実効性のある目標設定と様々な対策の実施
京都市では、京都市地球温暖化対策条例に基づく温室効果ガス排出量削減目標(平
成 32 年度までに 25%削減)の達成に向け、市内有数の大事業所として、市民、
事業者の方の先頭に立って取組を推進するため、関係各部局と連携して「京都市役
所 CO2 削減率先実行計画」を策定し、総排出量の削減目標を掲げ、様々な対策に
積極的に取組んでいる。
●目標設定:政策的な視点から達成すべき目標
「基準年度(平成 16 年度)比で、
平成 23 年度から平成 32 年度までに 25%以上」
※条例と同じ削減率を目標としているが、基準年度については、エネルギー使用
量等が把握できる最も古い年度である平成 16 年度としている。
●実現可能性の確保:事務事業の分類と前計画の総括、関係部署との連携
事務事業の内容や施設の特性に応じた取組を実施することが排出量削減に有効で
あるため、事務系部門、事業系部門(廃棄物処理事業、上下水道事業、市場運営事
業)、市民サービス系部門(交通事業、学校・園、福祉施設等)に分類している。ま
た,前計画(京都市役所 CO2 削減アクションプラン)を総括、取組の実行可能性
等を検討した上で、事業系部門、市民サービス系部門の削減目標の設定について、
事業を実施する各局から削減目標、様々な対策を挙げてもらうなど、調整を図り、
事業に支障がない範囲での最大限の削減取組を盛り込んでいる。
●取組成果の評価方法
 目標の管理について、将来の電気の排出係数の変動を想定することが困難である
こと、市役所の取組成果を適切に評価する視点から、当面の間、電気の排出係数
は固定して算定することとしている。
-32-
(2)ボトムアップ方式による目標の設定
ボトムアップ方式とは、特定分野における目標を積み上げて最終的な温室効果ガス
の総排出量に関する数量的な目標を設定する方式です。例えば、「5年後に電気使用
量を現状比5%削減する」「5年後にエネルギー使用量を現状比 10%削減する」など
特定分野における目標を設定し、目標達成が図られた場合の温室効果ガスの総排出量
を算出し、数量的な目標を設定する方法です。
【ボトムアップ方式による検討時の留意点】
・実行可能な取組を設定することにより目標を積み上げるため、実現性を高めるこ
とが可能です。
・「なすべきこと」よりも「できる範囲」での検討が基本となることから、意欲的
な目標値の設定が難しくなります。このため、当該地方公共団体の率先的な姿勢を
示す意味で、妥当性が確保できているかについても考慮することが重要です。
ボトムアップ方式の手順
ボトムアップ方式の場合は、特定分野における目標から検討を進める手順となりま
す。
①
それぞれの特定分野における目標を検討します。
②
取組項目を踏まえて、それぞれの特定分野における目標を設定します
③
設定した特定分野における目標を積み上げ、温室効果ガスの総排出量に関
する数量的な目標を定めます。
ボトムアップ方式による目標の検討の考え方
どの程度削減できるか
積み上げる
実施可能な取組等を検討する
電気使用量の削減
燃料使用量の削減
公用車の適正利用
など
取組A
取組B
取組C
取組D
●%削減
・
・
・
・
基準年度
-33-
目標年次
(3)特定分野における具体的な目標の設定
温室効果ガス総排出量に関する数量的な目標は、実行計画において必ず定める必要
があります。しかし、「温室効果ガスの総排出量」は、市町村における様々な事務・
事業活動の総体として表されるものであるため、温室効果ガスそのものを削減すると
いう考え方を理解することは容易ではありません。
そのため、日常業務の中で、実際にはどのような取組を推進していけば温室効果ガ
スの削減に効果的であるかについて、特定分野における「具体的な活動量」の目標が
示されれば、取組を促進するための推進力として機能することが期待できます。また、
こうした目標は、実行計画の点検・評価や見直しを行う際、取組の進捗状況を把握す
るための重要な指標にもなります。
例えば、以下に示すような特定分野における具体的な活動項目別の目標を設定します。
① 活動項目別の目標の設定
温室効果ガスの総排出量を抑制するための取組は、地方公共団体の多くの職員に
とっては、電気や燃料等の省エネルギーを推進することと同義であるため、日常的
な省エネルギー活動に関する項目についての個別の目標を設定することが、取組を
効果的なものとしていく上で重要です。また、温室効果ガスの排出量削減に間接的
に寄与する省資源やリサイクル等の取組についても、目標として設定することが効
果的です。
活動項目別の目標の設定(例示)
活動項目
目標
電気使用量
基準年度比 10%削減
燃料使用量
基準年度比5%削減
公用車燃料使用量
基準年度比5%削減
公用車走行距離数※
基準年度比5%削減
水使用量
基準年度比8%削減
紙使用量
基準年度比 10%削減
※法施行令の定めにより、自動車から排出される CH4、N2O は、走行距離に基づき算
定されることから、走行距離についても、漏れなく対象とすることが望まれます。
② 組織や施設区分による目標の設定
事務・事業の内容や施設の規模によって、実施すべき取組も異なります。そこで、
施設形態ごとに具体的な目標や重点目標を設定することにより、計画の実効性を高
めることができます。
-34-
組織や施設区分による目標(例示)
対象
区分
目標
部局単位
での設定
市長部局
・基準年度比で、温室効果ガス排出量を8%削減する
教育委員会
・基準年度比で、温室効果ガス排出量を5%削減する
大規模
施設での
設定
清掃センター
・基準年度比で温室効果ガス排出量を 15%削減する。
・基準年度比で、ごみ全体の3%を減量化する。
下水処理場
・基準年度比で、下水放流量(㎥)あたりの温室効果
ガス排出量を5%削減する。
事例:東京都千代田区
温室効果ガス総排出量の削減目標を達成するための「削減
シナリオ」を設定
「千代田区地球温暖化対策第3次実行計画(事務事業編)」におけ
る目標は、区条例に定められた「2020 年(平成 32 年)までに区内
の CO2 排出量を 1990 年(平成 2 年)比で 25%削減」することを見
据え設定した。
第 3 次実行計画では、温室効果ガスの削減目標を達成するための
4 つの「削減シナリオ」として、①(ハード対策)「区有施設の建築・
設備改修等の実施」、「街路灯・橋梁灯・公園灯の高効率化」、②(ソ
フト対策)「職員の省エネルギー行動の推進」、「施設の設備機器
等の運用改善」、③「排出係数の少ない電力供給への切り替え」、④
「その他の取組み」を設定し、それぞれの取組の実効性を検証した削
減量を積み上げている。
4つの削減シナリオの概要
削減シナリオ1
施設・設備等における
省エネルギー等の推進
高効率設備機器の積極的な導入
高効率照明の導入
再生可能エネルギーの導入
削減シナリオ2
庁舎・施設管理におけ
る 省 エネ ルギ ーの 推
進
職員の省エネルギー行動の推進
庁舎・施設の設備機器等の運用改善
削減シナリオ3
低炭素型エネルギー
供給の導入促進
低炭素型の特定規模電気事業者からの電力購入
を促進
削減シナリオ4
カーボンオフセット等の取組みの推進
その他の対策の推進
-35-
2
温室効果ガスの総排出量に関する数量的な目標設定
共通・策定・改訂
温室効果ガスの総排出量に関する数量的な目標を記載します。
温室効果ガスの総排出量に関する数量的な目標は、当該地方公共団体としての実現可
能性及び妥当性を踏まえたものであることが重要です。また、目標の設定に当たっては、
庁内における合意形成を図ること、住民・事業者の理解が得られることなどにも配慮し
ます。
【記載事項(必須)
】
・基準年度における当該地方公共団体の温室効果ガスの総排出量
・計画期間における評価対象年度(目標年度)における温室効果ガスの目標総排出量
・基準年度と比較して、どの程度排出量を抑制するか
【記載事項(任意)
】
・目標を達成するために講ずべき取組等の方向性
【省エネ法の特定事業者の指定を受けている場合の目標設定のポイント】
省エネ法上の特定事業者の指定を受けている地方公共団体では、省エネ法に規定された
目標(年平均1%以上のエネルギー消費原単位の低減)を達成する必要があります。また、
実行計画と省エネ法では、算定の対象や対象施設の範囲が一部異なることから、省エネ法
における目標値を踏まえた上で、実行計画での目標値を設定する必要があります。
共通・策定・改訂
実行計画の改訂に当たっては、現行の実行計画における取組項目の実施内容や達成状
況を踏まえ、新たな目標の設定や取組項目等の検討を行います。
目標の見直しは、現行計画における達成度を踏まえ、達成率が低いものについては、
達成に向けて新たな取組等の導入を検討するとともに、目標そのものに無理がなかった
かを確認します。また、達成率が高いものについては、より高い目標や新たな目標を設
定することが可能かどうか検討します。
その上で、実行計画の期間中に、基準年度と比較して、どの程度温室効果ガスの総排
出量を削減することが可能(あるいは、削減すべき)か、当該地方公共団体における地
球温暖化対策の現状及び今後の動向を踏まえながら、削減目標を定めることが重要です。
-36-
3
温室効果ガスの総排出量に関する数量的な目標設定の工夫
共通・策定・改訂
(1)将来推計の実施に基づく目標の設定の考え方
温室効果ガスの総排出量に関する数量的な目標は、実行計画に定めた期間における
温室効果ガスの排出量の増減の見込みを把握(将来推計)した上で、トップダウン方
式やボトムアップ方式などの手法により検討を行うことが、実行計画の実効性を高め
る上で有効です。
将来推計は、公共施設の新築や廃止、大規模改修などの計画期間中に見込まれる
施設の増減等を対象として実施します。
将来推計の実施による目標設定のイメージ
将来推計によ
り排出量の増
減の見込みを
把握
基準年度
計画期間中に
見込まれる温
室効果ガス排
出量
将来推計の結果を踏ま
え、どの程度温室効果
ガスの総排出量を削減
すべきか、「トップダ
ウン方式」や「ボトム
アップ方式」により、
目標を検討する。
目標年度
※グラフは、計画期間中に温室効果ガス排出量が増加するケースで示している。
-37-
(2)増減要因の把握
当該地方公共団体における計画期間中の温室効果ガス排出量の増減にかかわる
事項について、当該地方公共団体における施設整備計画を参考とするほか、関係課
等へのヒアリング等を実施することにより、施設の新築や廃止など、今後の動向に
ついて把握します。
特に、温室効果ガス排出量の大きな部門や施設における今後の動向を把握するこ
とが重要です。
将来推計における温室効果ガス排出量増減の推計
温室効果ガス排出量の増減
増加要因
内容
増減把握の考え方
新規施設の建設
既存施設の増改築
減少要因
既存施設の解体
(廃止・休止)
類似同規模施設の温室効果ガス排出量
の床面積等により原単位を算出し、増加
分に応じて、排出量を予測する。
当該施設の温室効果ガス排出量の床面
積等により原単位を算出し、増加分に応
じて、排出量を予測する。
当該施設における基準年度温室効果ガ
ス排出量分が減少する。
参考:将来推計の算定のイメージ
排出量
施設
基準
年度
施設 A
-
施設 B
50
合計
50
H25
H26
H27
H28
合計
備考
・H26 年度に開設予定
・予定床面積:1,000 ㎡
+100
・類似施設の排出量:100t-CO2、
床面積:1,000 ㎡
+100
+100
H29
-50
-50
-50
+50
-38-
平成 25 年度に廃止
事例:東京都中央区
政策的観点及び実現可能性の両面による目標の検討
東京都中央区では、実行計画の目標設定にあたり、前年度実績を把握
し、分析・評価するとともに、主要施設におけるヒアリング調査等を行
い、計画期間における温室効果ガス排出量の増加を見込んだ上で、政策
的観点から複数の総排出量の削減に関する目標案を設定し、全庁的な検
討を実施している。また、それぞれの目標について、職員による環境配
慮行動や設備更新・大規模改修などの主な取組項目により削減効果を試
算し、詳細に検証することにより、計画の実現可能性を最大限に高めて
いる。
なお、同区の実行計画は、温室効果ガスの総排出量の削減目標を基準
年度比で 3%削減することを目標としているが、将来推計の結果、約 5%
の増加が見込まれるため、実質的には、約 8%を削減することとしてい
る。
目標達成の考え方
-39-
4 目標達成に向けた具体的な取組項目
共通・策定・改訂
実行計画における取組項目は多岐にわたり、全庁的に職員が実施すべき
取組や施設管理担当職員が実施すべき取組、財政措置が必要な取組等、取
組種別に応じ、体系づけて分かりやすく記載することが適切です。
また、温室効果ガス排出量の削減に間接的に寄与する、ごみの減量や省
資源、グリーン購入に関する取組等も位置づけることも有効です。
(1)取組項目の検討
実行計画における温室効果ガスの総排出量に関する数量的な目標を達成するた
め、どのような取組が効果的でかつ実施可能であるかを検討し、実行計画において
実施すべき取組項目を決定します。
当該地方公共団体において実施可能な取組項目に関し、以下の分類で整理してい
ますので、取組項目の検討の参考として下さい。
【取組項目の分類】
・日常業務に関する取組
・設備・機器の保守・管理に関する取組
・設備・機器の運用改善に関する取組
・設備・機器の導入、更新に関する取組
・再生可能エネルギーに関する取組
・その他の温室効果ガスの削減に資する取組
① 日常業務に関する取組
職員による節電や燃料の使用抑制など、日常業務における環境配慮活動を推進す
ることにより、温室効果ガスの排出量削減に寄与することができます。個々の取組
による削減効果は大きくありませんが、全ての職員が容易に実施できることが見込
まれるため、共通のルールとして周知し、全庁的な取組へと展開します。
-40-
参考:主な取組(例示)
項目
空調
給排水・給湯
照明
昇降機
事務機器
公用車
参考:環境省 HP
取組内容
空調設定温度・湿度の適正化
使用されていない部屋の空調停止
換気運転時間の短縮等の換気運転の適正化
夜間等の外気取入れ
冬季以外の給湯供給期間の短縮
照明を利用していない場所におけるこまめな消灯
照明を利用していない時間帯におけるこまめな消灯
利用の少ない時間帯における一部停止
使用しない時間帯における電源の遮断
エコドライブの推進
温室効果ガス「排出抑制等指針」-業務部門における排出の抑制等
http://ghg-guideline.env.go.jp/business/measures
② 設備・機器の保守・管理に関する取組
設備の保守・管理を適切に実施することにより、エネルギー消費効率の低下を
防ぐことができ、温室効果ガスの排出量削減に寄与することができます。
参考:主な取組(例示)
項目
取組内容
密閉式冷却塔熱交換器のスケール除去
冷却塔充てん剤の清掃
冷却水の適正な水質管理
温湿度センサー・コイル・フィルター等の清掃
照明器具の定期的な保守及び点検
熱源
空調
照明
参考:環境省 HP
温室効果ガス「排出抑制等指針」-業務部門における排出の抑制等
http://ghg-guideline.env.go.jp/business/measures
③ 設備・機器の運用改善に関する取組
施設で運用している既往の設備・機器の運用改善を行うことにより、温室効果
ガスの排出量削減に寄与することができます。運用改善を行うにあたっては、計
測等により現状を把握・分析した上で、設備・機器の調整や制御を行います。
-41-
参考:主な取組(例示)
項目
熱源
空調
給排水・給湯
受変電
参考:環境省 HP
取組内容
冷温水出口温度の適正化
熱源台数制御装置の運転発停順位の適正化
冷温水ポンプの冷温水流量の適正化
蓄熱システムの運転スケジュールの適正化
熱源機の運転圧力の適正化
熱源機の停止時間の電源遮断
熱源機のブロー量の適正化
燃焼設備の空気比の適正化
ウォーミングアップ時の外気取入停止
空調機設備・熱源機の起動時刻の適正化
冷暖房の混合使用によるエネルギー損失の防止
除湿・再熱制御システムの再加熱運転の停止
給排水ポンプの流量・圧力の適正化
給湯温度・循環水量の適正化
コンデンサーのこまめな投入及び遮断(力率改善)
変圧が不要な時期・時間帯における変圧器の停止
温室効果ガス「排出抑制等指針」-業務部門における排出の抑制等
http://ghg-guideline.env.go.jp/business/measures
事例: 高知県庁
省エネサポーター制度による施設の運用改善の促進
高知県庁は、高知県庁環境マネジメントシステムに基づき実施する施設の省エネ
ルギー活動を促進させ、地球温暖化対策を推進することを目的として、
「省エネサ
ポーター」を派遣する「省エネサポーター制度」を推進している。
省エネサポーター(省エネ技術手法の提案、その他のアドバイス等ができる有識
者(県庁職員)
)は、施設の省エネルギー活動を促進させるための省エネ技術手法
の提案等を行うとともに地球温暖化に関する現状や対策及び具体的な地球温暖化
防止活動について取り組むためのアドバイス等を実施する。
省エネサポータ―派遣申請書
■助言内容
・電気機器類等の運転状況の確認
・エネルギー使用の実態の把握
・施設と業務に合った省エネ手法の検討
・省エネ検討会への参加・提案
など
省エネサポーターの派遣は、年間のCO2削
減実績について、目標(自施設目標)を達成でき
なかった施設や、庁舎管理責任者が派遣を希望
する施設を対象に実施する仕組みとしている。
-42-
事例:山梨県庁
デマンド監視装置の活用によるピークカット対策
山梨県庁が所管する一部の施設においては、デマンド監視装置を活用したピー
クカット対策を実施しており、設定したデマンド値を超えると警報が鳴る仕組み
としている。
施設 A では、設備機器の使用予定表によ
所内ホームページトップ画面
り事前調整を行ったうえで、さらに警報が鳴
った際は職員が見回りを行い、優先度の低い
機器の電源を切るなどの対応を行っている。
また、電力計を Web カメラで撮影し、所内
HP のトップ画面に掲載し、電力需給状況を
把握できるようにしている。職員はこれを参
考に、電力使用量が多い時には、設備機器の
使用時間を控える、使用時間をずらすなどの
適宜適切な対応をとっており、ピークカット
やピークシフトに役立てている。
施設 B では、受変電設備から事務室まで
の距離が近く見通しが良い環境を生かし、コ
ストのかかる配線工事が不要な、無線を利用
したデマンド監視装置を導入している。
-43-
無線によるデマンドデータ通信
④ 設備・機器の導入、更新に関する取組
施設の新設・改修時や老朽化した設備・機器等を更新する際、従来よりも高効率
のものを導入することにより、温室効果ガスの排出量削減に寄与することができま
す。大きな削減効果が見込まれる半面、応分の費用が必要となるため、財政・建築
部門等の理解・協力・連携を図ることが重要です。
参考:主な取組(例示)
項目
熱源
空調
受変電
照明
昇降機
建物
参考:環境省 HP
取組内容
エネルギー消費効率の高い熱源機への更新
経年劣化等により効率が低下したポンプの更新
ヒートポンプシステムの導入
ポンプ台数制御システムの導入
ポンプの可変流量制御システムの導入
熱源機の台数制御システムの導入
大温度差送風・送水システムの導入
配管・バルブ類又は継手類・フランジ等の断熱強化
空調対象範囲の細分化
可変風量制御方式の導入
ファンへの省エネベルトの導入
エネルギー消費効率の高い空調機設備への更新
全熱交換器の導入
スケジュール運転・断続運転制御システムの導入
エネルギー損失の少ない変圧器への更新
デマンド制御の導入(ピーク電力の削減)
高周波点灯形(Hf)蛍光灯への更新
照明対象範囲の細分化
初期照度補正又は調光制御のできる照明装置への更新
人感センサーの導入
高効率ランプへの更新
LED照明への更新
インバータ制御システムの導入
人感センサーの導入
高断熱ガラス・二重サッシの導入
温室効果ガス「排出抑制等指針」-業務部門における排出の抑制等
http://ghg-guideline.env.go.jp/business/measures
-44-
事例: 神奈川県庁
リース契約による LED 照明の導入
神奈川県庁では、平成 24 年度夏の節電対策として、県税事務所や保健福祉
事務所、図書館といった出先機関や県立高校、警察署など 170 施設の県有施
設の照明約6万8千本を対象として、発光ダイオード(LED)照明をリース
で導入した。
LED 照明のリースによる導入の考え方は、照明の入れ替えによる電気使用
量の削減分(電気使用料金の削減分)をリース料に充てるため、予算を増額せ
ずに照明設備の更新ができる仕組みとなっている。これにより、年間の電気料
金の削減見込みの7,000 万円分からリース料を拠出している。
リースによる LED 照明導入の考え方
-45-
事例: 静岡県富士市
施設の設備・機器の更新を推進するための仕組みの構築
富士市では、温室効果ガスの削減・省エネルギー推進の実効性を高める手段とし
て、計画的な施設の改修・設備の更新が必須となることから、市独自の「省エネル
ギー確認書制度」を確立している。
「省エネルギー確認書制度」は、原課が施設の改修・設備更新に関する設計を施
設建築課へ依頼する際、環境総務課(教育委員会は教育総務課※)において、導入
による省エネ効果を確認し、
「省エネルギー確認書」を発行する。原課は、予算要求
の際には、当該資料を添付しなくてはならず、省エネ効果が計算された施設の建築
あるいは設備の導入が確実になされることになることから、着実な省エネ改善を後
押しする仕組みとしている。なお、この仕組みは、環境部門と財政、建築部門が、
その趣旨・必要性について合意した上で設計したものである。
省エネルギー確認書制度の流れ
※省エネ法では、市長部局と教育委員会が特定事業者となっている。
-46-
⑤ 再生可能エネルギーに関する取組
太陽光発電や風力、小水力、地熱・地中熱、バイオマス等の再生可能エネルギー
を導入し、創エネルギーによる温室効果ガスの排出量の抑制を図ることが望まれま
す。
参考:主な取組(例示)
項目
取組内容
再生可能エネルギー
の導入
太陽光・太陽熱の導入
風力の導入
小水力の導入
地熱・地中熱等の導入
バイオマスの導入
事例: 神奈川県茅ヶ崎市
市民との協働による公共施設への太陽光発電の導入
茅ヶ崎市と NPO 法人ちがさき自然エネルギーネットワークが協働で、市民から
の寄付金(マイナス6%基金)と助成金((財)広域関東産業活性化センター「平
成 20 年度グリーン電力基金助成(地域協働プロジェクト)
」により、茅ヶ崎市市
民活動サポートセンターの屋根に、太陽光発電システムを設置した。この発電シス
テムにより、市民活動サポートセンターの使用電力量の約 16 パーセントを賄って
いる。また、売電収入ならびに市民からの寄附金及びその同額を市が拠出し、「茅
ヶ崎市太陽光発電設備普及啓発基金」に寄附される仕組みとなっている。
市民活動サポートセンターに太陽光発電システムを導入したことにより、発電量や電
気使用量等について、訪れる市民の関心が高まった。この関心を具体的な省エネの取組
につなげるために、各部屋の照明にキャノピースイッチを取り付け、使用後の消灯を呼
びかけるなど、さらなる取組を推進することにより、大幅な節電を実現している。
太陽光発電システムの導入の概要
茅ヶ崎市
市民・事業者
グリーン電力基金
1号・2号
グリーンエネルギー
認証センター
申請
設置工事費
8 5 % 助成
①+②と同額程度を
マッチングギフト
認証
環境価値購入者
証書販売
NPO法人太陽光発電ネットワーク
(グリーン電力証書発行事業者)
証書代金
グリーン電力発電委託(1号・2号)
寄付金
ちがさき自然エネルギーネットワーク(REN)
太陽光発電設備
普及啓発基金
「マイナス6%基金」
市民立太陽光発電所設置のための特別会計
維持管理
設置
補助金交付
①余剰電力
設置
維持管理
れんこちゃん1号
れんこちゃん2号
(市民活動サポートセンター)
2 0 0 9年7 月設置
(茅ヶ崎市こどもセンター)
2 0 1 1年3 月設置
②余剰電力
太陽光発電設備設置者
( 住宅用を除く) (予定)
証書代金
れんこちゃん3号
-47-
事例:山梨県甲府市
新庁舎建築における地中熱利用等の再生可能エネルギー導入
甲府市では、平成 25 年 5 月より業務を開始した本庁舎の建設において、地域の地理
的特性を踏まえ、様々な再生可能エネルギーが積極的に導入されている。
新庁舎では、1 階スペースの床冷暖房システムに、当市の豊かな資源である地中熱が
熱源として導入されており、熱交換用のパイプを垂直孔の中に挿入し、地中と熱交換を
行うことにより得られた冷水・温水を冷暖房に活用している。また、地下部に外気取り
入れ用の換気ダクト(クールウォームピット)を設け、地熱を利用した外気と室内の温
度差の緩和により、年間を通じて安定した温度を保つことを可能とするなど、空調設備
の更なる省エネルギー化が図られている。
そのほか、地域の日射量の多さを活かした 300kW 規模の太陽光発電システムの設置
や、屋上緑化、雨水利用、自然採光・自然通風を活用しやすい設計、日射環境に応じた
外装デザインなど、様々な環境配慮がなされている。なお、市民の安全を確保する災害
に強い庁舎として、免震装置の採用や災害時の防災拠点としての機能も充実が図られて
いる。
自然環境を活かした環境配慮型新庁舎(図は実施設計時のイメージ)
⑥ その他の温室効果ガスの削減に資する取組
温室効果ガス総排出量を抑制するためのその他の取組として、以下のような取組
を導入することが考えられます。また、ごみの減量・リサイクルや省資源(用紙や
水)
、公共工事など建築物の建築、施工、管理等に関する取組なども実行計画に位
置付けることが望まれます。
-48-
参考:主な取組(例示)
項目
取組内容
電気事業者の選択 (※) 電気事業者の選択により排出係数を改善
エネルギー転換
二酸化炭素排出量の少ないエネルギーへの転換
一般廃棄物の削減
一般廃棄物の焼却量の削減
廃棄物エネルギーの利用
省エネ効果を再投資す
る仕組みの構築
グリーン購入の促進
環境配慮契約の促進
省エネルギー・省資源対策による光熱水費等の削減額の一部
を設備・機器の改修・更新に再投資する仕組みを導入
環境物品等及びその調達目標を定めた方針を策定し、グリー
ン購入を実施
電気や自動車等の温室効果ガス等の排出の削減に配慮する契
約の種類を定めた方針を策定し、環境配慮契約を実施
※電気の使用に伴う温室効果ガス排出削減目標値を設定する際の留意点
電気の使用に伴う温室効果ガス排出量は、以下の算定式で計算します。
[電気使用量(kWh)×排出係数(kg-CO2/kWh)]
実行計画は、最終的には温室効果ガス排出量の削減を目指すものであるため、
上記算定式のうち、活動量である「電気使用量」の削減だけを目標値とすることは
適切ではありません。そのため、電気事業者ごとに毎年変動する「排出係数」につい
ても、当該地方自治体ごとの実情に応じて取組を検討し、目標を設定することが望ま
れます。
事例: 群馬県館林市
「新電力」の選択による温室効果ガス総排出量の削減
特定規模電気事業者(新電力)の導入は、東京電力や関西電力などの一般電気事業
者の電気料金の値上げに対応するための経営的(コスト削減)な観点から、昨今では、
積極的に選択されるようになってきている。また、コスト対策のみならず、電気事業
者の変更により排出係数の少ない電気の供給を受けることも可能であることから、温
室効果ガス総排出量(CO2 排出量)の削減を推進する上でも有効な対策として注目さ
れている。
館林市では、平成 25 年度、本庁舎をはじめとする 36 の市有施設に関し、新電力
会社(A 社)との契約に切り替えることにより、これまでの大手電力会社よりも排出
係数の少ない電力の需給を開始している。これに伴い、新電力導入施設における前年
度(平成 24 年度)の電気使用量実績を電力事業者ごとの CO2 排出量で比較すると、
CO2 排出量は約 12%削減される見込みである。
-49-
事例:三重県庁
品目を絞ったグリーン購入実績の強化
(グリーン購入実績報告の効率化)
三重県「みえ・グリーン購入基本方針」に基づき、長年グリーン購入を積極的に推進し
てきた。こうした取組の成果もあり、購入実績は多くの品目等において高い数値を維持で
きるようになった。しかし、「購入実績調査」に多くの時間を要する等により、業務の非
効率化、職員のモチベーション低下等の課題が挙げられていた。
こうした課題を踏まえ、事務の効率化を図るため、平成 23 年度から、調達比率の高い
品目等(昨年度実績で適合品の購入実績が95%以上であったもの)については、実績調
査を行わない方針に変更した。
一方で、全年度実績で適合品の購入実績が95%未満であった品目については、実績調
査を継続し、調達比率の引き上げに向けて働きかけを強化する制度としている。
また、引き続き、物品購入や役務の調達において、高い購入実績が維持できるよう、会
計規則運用方針の中で、「みえ・グリーン購入基本方針」に基づく「環境物品等の調達方
針」に則ることを明記している。
グリーン購入の品目(平成 24年度)
品目
物品
役務
24年度実績
95.6%
照明
制服・作業服
99.3%
作業用手袋
64.2%
その他繊維製品
45.9%
自動車整備
75.1%
共通・策定・改訂
実行計画の改訂では、現行の実行計画の策定時に定めた取組項目の実施状況を踏まえ、
取組内容等の見直しを実施します。
【取組項目の見直し手順】
①
現行の実行計画で定めた取組項目について見直すべき項目を検討します。
②
取組項目の見直しの方針を検討し、決定します。
③
取組項目の具体的な見直しを行います。
-50-
【取組項目の見直しの留意事項】
・実行計画に定めた取組項目で徹底されていないものはないか。
・実行計画に定めた取組項目について、十分な定着が図られているものは何か。
・実行計画に定めた取組項目で事業として完了しているものはないか。
・計画期間中に開始した取組項目等で、実行計画改訂後も継続していくものが
あるか。
・一部の施設等のみで実施している取組項目等で、全庁に水平展開することが可能
な効果的なものがあるか。
・さらなる削減を図る上で、国(都道府県等)や近隣市町村の取組を参考として、
今後新たに実施すべき取組項目として追加すべきものはあるか。
・削減効果をデータ把握(見える化)し、取組成果を適切に評価できるような取組
項目があるか。
取組については、その実施状況を踏まえ、実施状況が低いものについては、その理由
を明らかにするとともに、実施率が高まるような工夫や、実施可能な取組への変更等を
行います。また、実施状況が高いものについては、それらの取組が確実に実施されてい
るかを確認し、確実に実施されている場合は、新たな取組項目を検討します。
目標については、その達成度を踏まえ、達成率が低いものについては、達成に向けて
新たな取組等の導入を検討するとともに、目標そのものに無理がなかったかを確認しま
す。また、達成率が高いものについては、より高い目標や新たな目標を設定することが
可能かどうか検討します。
また、目標の達成度と取組項目の実施状況を比較し、取組項目の実施率が高いにもか
かわらず、目標の達成への寄与が十分でない場合には、目標や取組項目そのものを見直
すことも検討します。
【実効性の高い取組を展開する上での留意事項】
温室効果ガス総排出量を抑制するための取組としては、日常業務に関する取組(p40
~41)が、最も身近で実行しやすいものとなります。これらの徹底を図ることは、職
員一人ひとりの意識を向上させる上でも重要ですが、取組が一定レベルに達すると、
大きな削減効果は見込めなくなります。
こうした状況のもとで、更なる削減を図っていくためには、高効率型設備・機器へ
の更新や再生可能エネルギーの導入 (p43~48)を重点的に実施することが最も効果
的ですが、相応の費用が必要となるため、長期的に取り組んでいくことになります。
その間は、限られた予算の範囲で効率的に取り組むことができる、設備・機器の保
守・管理及び運用改善(p41~43)を着実に推進していくことが望まれます。
-51-
第5節 実行計画の進行管理の仕組みの整備 (詳細:第3章)
実行計画は、策定するだけでなく、確実に取組を推進し、温室効果ガスの総排出量に
関する数量的な目標を達成する必要があります。このための進行管理の仕組みを確立す
ることが重要です。実行計画には、目標値や取組項目だけでなく、進行管理方法につい
ても記載します。実行計画の進行管理は、実施・運用段階と点検・評価段階に区分する
ことができます。
1 実行計画の実施・運用の仕組み
共通・策定・改訂
実行計画の実施・運用体制を整備し、組織構成や職員の役割を定めます。
実施・運用体制図等を記載することにより分かりやすく示します。
全庁的な取組を推進するための職員意識の啓発に関する方法等も記載し
ます。
(1)実行計画の実施・運用体制の整備
実行計画の実効性を高めるためには、全ての職員が、温室効果ガスの総排出量に
関する数量的な目標の達成に向け、関連する取組項目を実践することが重要です。
各主体の役割を明確化した運用・実施推進体制を整備し、記載します。
【記載事項】
・実行計画の実施・運用体制と構成職員の役割
【実施・運用体制の整備に当たってのポイント】
・実行計画の実効性を確保するため、計画に関連する全ての部局のメンバーで構成
することが重要です。なお、実行計画の策定時における検討体制を実施・運用体
制に移行させることも効果的です。この場合、計画策定時における検討体制づく
りは、計画を実行するための組織としても位置づけ、予め合意形成を図ります。
・地方公共団体においては、部課等が多岐にわたっているところも多いため、部局
単位で推進責任者を設置し、課単位で推進員を設置するなど、複数の職階層によ
る推進体制を整備する方法も考えられます。この場合、職階層によって異なる役
割を担うことから、各自の役割を明確化することが重要です。
-52-
(2)職員意識の啓発
実行計画に定めた温室効果ガス総排出量削減目標を達成するためには、職員一人
ひとりが、計画の目的を十分に理解し、取組を実施することが重要です。そのため、
職員の意識啓発を実施し、意識の向上及び実践の促進を図ります。
【記載事項】
・職員意識の啓発に関する実施手法及び内容
実行計画の推進に係る意識啓発については、日常的な意識向上のための啓発が必要と
なります。そのための手法として以下が考えられます。
【職員意識の啓発手法の例】
○計画書、概要版の配布
計画書等を全職員に配布することで、確実に情報を伝達できます。全職員へ配布
する場合は、計画書の内容をコンパクトにとりまとめた概要版を作成することも有
効です。
○職員だよりの発行
全職員を対象に定期的に発行している刊行物がある場合は、そこで取り上げても
らうことも有効です。また、意識啓発の呼びかけだけでなく、具体的な取組事例等
も紹介することができれば、さらに効果は高まります。
○職員研修の実施
研修の実施は、職員の役職等や年間の業務の流れなどを踏まえ、適切な時期に実
施することが重要です。例えば、新職員を含めた一般研修などは、速やかに実施す
ることが効果的です。
○館内放送の活用
館内放送を用いて適時適切な取組等を促すことが効果的です。しかし、毎回同じ
内容の放送では職員の耳に残らない状況も生まれます。また、一度に伝えることが
可能な情報量も限られます。
○ポスターの活用
ポスターを作成して、職員の目に留まる場所に提示することは、日常的な環境配
慮の取組を推進する上で有効です。
【職員意識の啓発にあたっての留意事項】
出先機関等の職員に対する周知・徹底についても十分に留意します。
実行計画の目標や取組項目をわかりやすく伝える工夫をするとともに、全職員の計
画への参加が、計画の成否を左右することを継続して伝えていくことが重要です。
-53-
2 実行計画の点検・評価の仕組み
共通・策定・改訂
実行計画に定めた目標や取組項目の進捗状況をどのように把握し、評価を
行うかを明らかにするため、点検項目や様式、点検方法、点検者、点検時期
などを決定します。
(1)点検の方法
実行計画における点検は、
「温室効果ガスの総排出量」及び「実行計画に定めた
取組項目」を対象とします。
これらの進捗状況を適切に点検するために、点検項目や様式、点検方法、点検者
など必要と考えられる事項を検討し、実行計画に記載します。
点検の実施手順は、点検担当者の負担を著しく増大させないように、できるだけ
簡素で効率的なものとして整備することが、継続的な運用を図る上で重要です。
【記載事項】
・点検の項目・点検の様式
・点検の実施方法
・点検の実施者
・点検の時期
(2)点検結果の評価
実行計画の進捗状況について、点検結果に基づき、「温室効果ガスの総排出量に
関する数量的な目標の達成状況」及び「実行計画に定めた取組項目の実施状況」の
総括的な評価を定期的(年1回以上を目安)に実施します。
総括評価は、法に基づく毎年の公表の基礎資料ともなりますので、分かりやすく
且つ今後の課題や改善点も把握できる形式とすることが重要です。
【記載事項】
・点検結果に基づく総括的な分析、評価方法
-54-
【 温 室 効 果 ガス の 総 排 出 量 の 評 価 方 法 に つ い て 】
法は、毎年の温室効果ガスの総排出量の点検・評価(算定)に関し、法施行令に定め
られた最新の排出係数を使用することを求めています。
温室効果ガスの総排出量の算定は、この考え方に基づき実施することが基本となり
ます。ただし、法施行令はこれまで数回の改正が行われており、その際に排出係数の
値が変化することがあります。
そのため、当該地方公共団体において、毎年度の排出係数をそのまま算定に用いた
場合、温室効果ガスの総排出量は、排出係数の増減に影響を受けるため、自らが講じ
た実行計画のための取組の実施状況が適切に反映されないことがあります。
上記の事項を踏まえ、地方公共団体が策定する実行計画について、その実施状況を
適正に評価する視点において、法施行令に基づく排出係数を用いて算定する排出量
(実際の排出量)のほか、自らが講じた実行計画のための取組成果を把握するため、
基準年度の排出係数で固定して算定する排出量(実行計画の評価のための排出量)と
合わせて把握することも考えられます。
3 実行計画の進行管理の仕組みの見直し
共通・策定・改訂
実行計画策定時に整備した進行管理の仕組みについても、改訂において見
直しを図ります。
実行計画の進行管理の仕組みの見直しは、実施・運用体制や構成員の役割、点検・評
価の実施に関わる各種調査票、さらには職員意識の啓発の方法や実行計画の公表に関す
る事項などが対象となります。
進行管理の仕組みを整備した時点の狙いに立ち戻り、狙いが充足されているかを確認
し、仕組みが十分に機能していないと考えられる場合は、仕組みそのものの見直しを行
うことが重要です。必要に応じて、関係者等からヒアリングを行い、効果的な進行管理
の仕組みに改善します。
【記載事項】
見直し後の各項目及び見直し理由について、必要に応じて記載します。
○実施・運用の仕組み
・実行計画の推進体制と構成員の役割
・職員意識の啓発に関する実施手法及び内容
○点検・評価の仕組み
-55-
・点検の実施方法
・点検結果に基づく総括的な分析、評価方法
事例: 北海道千歳市
計画の改訂に伴うエネルギー管理マネジメントの強化
千歳市は、既往の環境マネジメントシステム(EMS)を温対法や省エネ法の関連
法令に対応した仕組みとして再構築し、目標設定及び進行管理を一体的に推進でき
るようにしている。
前期の実行計画までは、ISO14001 を進行管理ツールとして活用していたが、
現行計画の策定に当たっては、環境マネジメントシステムを地球温暖化対策・省エ
ネルギーに特化した市独自のシステムとして再構築している(ISO14001 の認証
は返上し、自治体エコステージ規格に基づく EMS として整備した)。具体的には、
温対法と省エネ法の対象範囲及び目標設定、取組内容、進行管理まで一体的に推進
することができるよう整合を図っている。
また、進行管理の再構築と合わせ、職員の取組に係る「職員等環境配慮行動ガイ
ドライン」
、設備の運用管理に係る「管理標準」
(平成 24 年度中に作成予定)
、設計・
施工時に係る「公共建築物の整備における環境配慮ガイドライン」といった、取組
を具体的に実施するためのガイドラインや手順書等を整備している。
計画の進行管理の流れ
-56-
事例: 静岡県藤枝市
実効性の高い計画とするための推進体制の見直し
藤枝市は、
「藤枝市役所地球温暖化防止実行計画(第 3 期)
」の策定に際し、それ
までの実績や課題を踏まえた改善を図ることにより、より効果の高い改善提案等を
行える体制とした。
「藤枝市役所地球温暖化防止実行計画(第 3 期)
」では、前計画の改訂検討段階
において、計画推進上の課題となっていた「実効性のある進行管理の仕組みの構築」
や「職員参加意識の向上」に対応するための見直しを図った。
具体的には、それまでの事務局主導から、各部局が環境方針を策定、各課が環境
目標を設定・管理するというように、各部局の取組責任を強化する体制に変更した。
また、エネルギー使用量の多い部署の係長級職員で構成する「庁内省エネルギー
推進部会」を新たに設置し、効果的な温室効果ガス削減対策に向けた具体的な検討
を進めるための体制を再構築し、取組推進上の課題や新たな対策の協議等を定期的
に行う体制とした。
なお、本実行計画では、温室効果ガス削減を全庁的に実施するための実効性の高
い取組として重点的な取組(5 つの戦略的マネジメント)を位置づけているが、そ
の中で、上記の「部局別環境方針の策定と進行管理」及び「庁内省エネ推進部会の
設置」について明記している。
計画の推進体制図
Do(実行)
【温暖化防止に向けた取組】
Plan(計画)【実行計画の策定及び改訂】
環境推進本部
報告
報告
各実行部門の長
環境行動推進会議
取組実施・
意見
方針
庁内省エネ
推進部会
報告
各実行部門
方針
方針
施設管理部署
報告
方針
計画策定・
指示
エコアップリーダー・
職員
各実行部門
各部局:環境方針設定
各 課:環境目標設定
報告
報告
庁内省エネ推進部会
報告
Action(見直し)【内容の見直し】
環境行動推進会議
Check(点検)【取組についての評価】
環境推進本部
報告
事務局
指示
内部監査員
報告
-57-
報告
各実行部門
内部監査
(自己点検)
事例: 山口県下関市
点検・評価の仕組みを強化し重点的な施設管理を推進
下関市は、市独自の環境マネジメントシステムの導入により、実行計画の対象施
設における取組の進捗管理の仕組みとして、PDCA サイクルの点検(CHECK)、
見直し(ACT)の強化を図っている。
『しものせきエコマネジメントプラン』において、排出量の多い複数の施設は、
「改善施設」※1 に指定され、年間の削減計画を立てて、市独自の「エコマネジメン
トシート」を作成・提出(年 2 回進捗状況を報告)する体制としている。
(改善施
設の合計のエネルギー使用量は、全体の 80%を占める。)
全体のエネルギー使用量の残りの 20%の施設は、
「維持管理施設」※2 に区分され、
報告を不要とし、自己管理による削減の取組を推進することとしていたが、エネル
ギー使用量が増加傾向にある施設も少なからず見られることが課題となっていた。
そのため、削減計画を立てる施設を「改善施設」に限定せず、著しいエネルギー使
用の増加が見られた施設に対しては、計画を立て報告するよう依頼をする仕組みに
転換している。
計画の進行管理の流れ
著しく増加した施設
へ、年間計画の提出を
求める。
※1.改善施設:エネルギー使用量等が大きい施設で削減計画等により重点的な管理の対
象となる施設
※2.維持管理施設:自主的な取組によりエネルギー使用量の削減を推進する施設。
-58-
事例: 東京都港区
施設の設備・機器の更新を推進するための仕組みの構築
港区は、区有施設全体における省エネルギー及び地球温暖化対策の推進、光熱水費の削減を
確実に実施するため、平成 24 年 4 月、
「港区区有施設環境配慮ガイドライン」を整備し、適
用対象施設や適用段階、関係者の役割、新築・改築時や運用における環境配慮の実施に係る基
準等について定め、適切な施設維持やエネルギー管理を推進している。
○施設整備
区有施設の新築・改築時における環境性能の確保
区有施設の新築・改築
時には、施設整備の各段
階で作成する主な文書
に、目標とする環境性能
を記載し、基本構想の作
成などの企画段階から
次の段階へ確実に伝達
するとともに、その過程
で作成される基本設計
書や実施設計書、エネル
ギー管理標準(原案)等
の設計図書等の各種文
書を確認することとし
ている。
また、委託に際しては、仕様書の特記事項としての記載を定めており、例えば、施設整備
に係るプロポーザル選定においても、本ガイドラインが示す環境性能の基準を満たす技術提
案を受託事業者に求めることで、確実な環境配慮の実施を担保している。
○施設の運用
区有施設の運用時には、下記のフロー図に示すように、施設の運用に係る省エネルギー管理
の手順を定め、エネルギー管理標準に従った施設運用を推進している。なお、施設所管
課は、施設管理業務委
託に際し、エネルギー
管理のための定期的
な打合せとしての「省
エネ推進委員会」(年間
4 回)への参加や報告
書の提出(年間 2 回)
を委託仕様書に盛り
込むことで、エネルギ
ー消費の継続的な改
善を確実に推進でき
る仕組みとしている。
区有施設の運用時におけるエネルギー管理
-59-
第6節 実行計画及び点検結果の公表 (詳細:第3章)
法に基づき、実行計画を策定・改訂した場合は速やかに公表することが求められて
おり、毎年の実行計画の進捗状況についても、公表する必要があります。
実行計画に、公表の内容、方法について記載します。
1 実行計画の公表
共通・策定・改訂
法第 20 条の3第8項、第9項に基づき、実行計画を策定又は改訂した時
は、遅滞なく公表することが義務付けられています。
実行計画を策定した場合、当該地方公共団体における広報紙やホームページにおい
て、広く住民や事業者に公表する必要があります。
実行計画を改訂した場合も、同様に公表する必要があります。
2 実行計画の点検結果の公表
共通・策定・改訂
法第 20 条の3第 10 項に基づき、毎年一回、実行計画に基づく措置の実
施の状況(温室効果ガス総排出量を含む)を公表することが義務付けられて
います。
【記載事項】
・実行計画の点検結果の公表内容
・実行計画の点検結果の公表時期
・実行計画の公表媒体
共通・策定・改訂
実行計画の改訂においては、これまでの公表方法について見直しを行い、必要に応じ
てその理由を記載します。
実行計画のこれまでの点検・評価の結果について、毎年適切に公表を行ってきたか、
また、公表内容は住民・事業者に対して分かりやすいものとなっていたか、などといっ
-60-
た視点から検討することが重要です。
【記載事項】
・見直し後の実行計画の点検結果の公表内容
・見直し後の実行計画の点検結果の公表時期
・見直し後の実行計画の公表媒体
-61-
第3章
実行計画の進行管理
第1節 実行計画の進行管理の考え方
実行計画は、PDCA サイクルの考え方に基づき、組織的、継続的な取組と
して推進します。
実行計画の進行管理の考え方
実行計画の策定・改訂
目標や取組内容の見直し
進行管理の仕組みの見直し
点検結果の公表
計画
(Plan)
見直し
(Act)
点検
(Check)
目標の達成状況及び取組項目
の実施状況の点検
点検結果に基づく総括的な評価
-62-
実行
(Do)
取組の推進
職員意識の啓発
実行計画の年間の運用スケジュール及び各主体の役割(例示)
実施項目
取り組みの推進
職員への情報提供
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
事
務
局
各
所
属
責
任
者
随時実施→
各
所
属
当
・
者
施
設
担
一
般
職
員
庁
内
推
進
組
織
○
随時実施→
○
○
(
)
D実
O行
職
員
啓
発
各所属の責任者向け研修
必要に応じて実施
各所属・施設担当者向け研修
必要に応じて実施
一般職員研修
(
)
C
H
点
E
検
C
K
(
)
A見
C直
T し
実
績
及
び
進
捗
状
況
の
把
握
取組の点検
・エネルギー使用量等の実績報
告
とりまとめ・総括
点検
○
○
必要に応じて実施
○
○
○
点検
○
当該年度
前期分
前年度
後期分
前年度
総括
○
とりまと
め
評価の実施
計画の見直し・改善
(実行計画推進組織)
○
必要に応じて実施
※目標年次は必須
計画及び取組状況の公表
○
○
○
○
○
○
○
-63-
第2節 実行計画の進行管理の流れ
1 計画段階(PLAN)(※)
※第2章を参照。
2 実行段階(DO)
実行計画に定めた「温室効果ガスの総排出量に関する数量的な目標」等を
達成するため、全ての職員が取組を実行します。
【計画を効果的に実施・運用するためのポイント】
実効性の高い実施・運用体制とするためには、必要に応じて、実行計画を補完する
ものとして、実行計画の運用・実施の手引き・マニュアル等の整備を検討することが
重要です。手引き等の作成に当たっては、職員がそれぞれの役割を理解し、主体的に
行動することができるよう、必要な情報を掲載する必要があります。
運用の手引き・マニュアルの構成例
1.推進員の役割
2.個別の取組の方法
3.点検調査票の記入方法
4.具体的点検の方法
5.点検結果のチェックと報告
【計画を効果的に推進するためのポイント:職員意識の啓発】
職員意識の啓発手法としては、研修の実施による情報提供が、有効な手法の一つで
す。研修の実施に当たっては、実行計画の運用・実施における役割に応じて、目的、
内容、スケジュール、実施方法等を整備します。
参考:役割に応じた職員研修の実施(例示)
種別 対象者 目的 推進責任者研修
推進責任者
及び管理職
実行計画の重要性と
それぞれの役割の認識
・推進・点検体制と役割
・職員の指導・育成
推進員研修
推進員
実行計画の重要性と
それぞれの役割の認識
・推進・点検体制と役割
・点検の手順と方法
・一般職員への呼びかけ
一般研修
全職員
環境に対する自覚と
取組への理解
・地球温暖化関連情報
・取組の内容と方法
新人研修
新規採用
職員等
環境に対する自覚と
取組への理解
・地球温暖化関連情報
・取組の内容と方法
-64-
内容
その他、効果的な職員意識の啓発を推進するため手法として、以下の事項が考えら
れます。
●庁内 LAN を活用した情報提供
職員意識啓発に係る定期的なお知らせ等、職員全体で共有することが効果的であ
ると考えられる場合、庁内 LAN により情報の共有を推進します。
●E-ラーニングを活用した自主学習の推進
各職員を一堂に集めることが難しい場合、E-ラーニングを導入し、各職員が本来
業務の空いた時間を使って、自主的に学習できるツールを活用します。
●体験型研修等の実施
通常の集合座学型の研修とは異なる手法の研修(例えば、新人研修で庁内におけ
るごみ分別のルールを実演しながら実施する方式や、推進員研修において実際の職
場の状況を想定したロールプレイング形式で実施する研修など)を実施することが
職員の意識向上を図る上で効果的です。
3 点検・評価段階(CHECK)
実行計画に定めた点検・評価体制に基づき、構成職員は、実績の報告、
取組の進捗状況の点検・評価を実施し、環境担当部課等が総括評価をとり
まとめ、庁内全組織に報告します。
点検結果の評価に当たっては、全庁の総括評価に加え、活動内容別・組織別・施設
別などの実行計画で定めた目標項目ごとに評価を行うことが重要です。
(1)実行計画に定めた取組項目の実施状況の評価
① 実際の温室効果ガスの総排出量の算定
実行計画の推進に当たっては、温室効果ガスを排出させる活動項目の実績に基づ
き、毎年の温室効果ガスの総排出量を算定することが求められています。なお、毎
年の温室効果ガスの総排出量は、施行令に基づき、最新の排出係数を使用して、算
定を行う必要があります。
② 実行計画の進行管理のための温室効果ガスの総排出量の算定
最新の排出係数を使用する場合、当該地方公共団体の温室効果ガス排出量は、排
出係数の増減の影響を受けるため、取組成果を適切に把握できない可能性がありま
す。そのため、実行計画の進捗状況や目標の達成状況等を適切に管理するための手
法として、排出係数を実行計画の基準年度の値で固定して算定を行うことも考えら
れます。
ただし、この場合は、上述①の「実際の温室効果ガスの総排出量」についても併
せて管理していくことが必要です。
-65-
【温室効果ガスの排出量の増減要因分析】
毎年の温室効果ガスの排出量は、「活動量×排出係数」の2要素の積数で算定
されますが、電気使用に伴う排出量の場合、電気の使用量(活動量)と電気事業
者ごとの排出係数のどちらの要素も毎年変動するため、排出量の増減理由の分析
に当たっては、増減量を要素別に分解し、各々の影響度合いを正確に把握した上
で評価を行うことが望まれます。
参考:要素別 増減量分解方法
縦軸:排出係数
YH25
YH17
XH17
XH25
横軸:電気使用量
電気使用量増減によるCO2増減量=(XH25-XH17)×YH17
排出係数変化によるCO2増減量=(YH25-YH17)×XH25
*上記グラフは、基準年度(平成 17 年度)に対して、評価対象年度(平成 25 年度)
における電気使用に伴う温室効果ガス排出量の増減量を比較したもの。
(2)実行計画に定めた取組項目の実施状況の評価
実行計画に定めた取組項目について、調査票や点検票等を用いて点検・評価を行
います。評価は、実行計画で定めた取組項目に基づき、実施状況を判定する基準等
を設け、実施率により定着度合を図ることが考えられます。なお、全ての取組項目
について点検・評価を行うことによる職員の負担感に配慮して、所属単位で取組の
優先順位を検討し、重点的に取り組むべき事項を設定し、実施状況を評価すること
も考えられます。
-66-
事例:愛媛県内子町
点検・評価の徹底と職員意識の啓発
●進捗管理の徹底
実行計画の管理手段である環境マネジメントシステム(EMS)として、LAS-E
(環境自治体スタンダード)を活用しており、
「内子町エコオフィスプラン
実施手
順書」を作成し、職員が取り組むべき事項や実施手順を明確にしている。各所属・
施設における取組の進捗状況については、四半期ごとに取組結果を報告しており、
目標達成できなかった分野については、その原因を把握させるようにしている。
さらに、各所属における取り組み状況を点検するための仕組みとして、内部監査
や外部監査も実施している(監査については、「監査実施手順書」に基づく)
。
内部監査は、各所属のエコアップ推進員及び所属長を内部監査員に任命し、全て
の所属・施設において実施している。内部監査の実施に当たっては、事前の研修を
実施している。また、外部監査は、町民及び町職員で監査チームを構成し、毎年全
体の 3 分の 1 程度で実施している。
●職員意識の啓発の工夫
内部監査の実施結果に基づき、
「幼稚園・保育園」、
「小中学校」、
「自治センター」、
「その他の事務系施設」の 4 つに区分して、毎年優良部署の表彰を行うなど、職員
の取組み意欲の向上を高めるための配慮にも心がけている。
4
見直し段階(ACT )
優良部署の表彰
実行計画の点検結果の公表に当たっては、総排出量のみならず、取組項目ごとの進
捗状況、施設単位あるいは組織単位の進捗状況について目標値や過去の実績値等との
比較を行うなどの評価を行い、これを合わせて公表することが期待されます。
-67-
4 公表・見直し段階(ACT)
毎年一回、当該地方自治体の住民・事業者に分かりやすい情報として、実
行計画の実施状況を公表します。
また、実施状況の評価に基づき、翌年度以降の取組内容について、必要に
応じて見直します。
実行計画の点検結果の公表に当たっては、総排出量のみならず、取組項目ごとの進捗
状況、施設単位あるいは組織単位の進捗状況について目標値や過去の実績値等との比較
を行うなどの評価を行い、これを合わせて公表することが望まれます。
(1)実行計画の点検・評価結果の公表
実行計画の点検結果について、公表すべき具体的な内容を検討します。公表内容
は、温室効果ガスの総排出量だけでなく、当該地方公共団体の住民・事業者に分か
りやすい情報として発信することが重要です。
公表の時期については、年間のどのタイミングで公表すべきかを決定し、毎年確
実に実施する必要があります。
公表媒体としては、例えば、広く配布する広報や当該地方公共団体のホームペー
ジ等の媒体を活用する他、当該地方公共団体において作成している環境に関する年
次報告書(環境白書)等への掲載や環境審議会への報告等などが考えられます。
【公表の内容】
・当該年度の温室効果ガスの総排出量※1
・実行計画に定めた温室効果ガスの総排出量の目標※2
・その他、温室効果ガスの総排出量に関する詳細な内訳※3
※1.毎年の温室効果ガスの総排出量は、施行令に基づき、最新の排出係数を使用し、
算定した値を公表します。
※2.実行計画の進行管理のための手法として、排出係数を固定して温室効果ガスの
総排出量を算定している場合、併せて公表することも考えられます。
※3.温室効果ガスの総排出量については、できる限り詳細な内訳等を示すことが望
まれます(以下、例示)
。
○温室効果ガス総排出量の推移
基準年度からの温室効果ガスの総排出量の推移を公表することにより、目標達
成に向けた取組の進捗を説明することができます。
○組織・施設単位の排出量
当該地方公共団体の組織単位あるいは、施設単位の温室効果ガスの排出量の状
況を公表します。特に、算定・報告・公表制度の対象となっている施設がある場
合は、当該施設の排出量も対象とします。
-68-
○活動区分に基づく排出量
温室効果ガスの種類ごとに、各活動の区分(施行令第3条第1項各号にイ、ロ、
ハ等で示される区分)ごとの排出量及び算定式(第2条第1項の各号の末尾及び
第3条第2項を適用した場合については、その排出係数等の情報を含む。)などの
算定の考え方についても、公表します。
○事務・事業の変更や施設等の増減による影響
実行計画における取組項目の実施状況と直接に係わらない温室効果ガスの総排
出量の増減影響(事務・権限の移譲や施設増減など)について公表することも効
果的です。
(2)実行計画の見直し
実施・運用体制や点検・評価方法など、実行計画に定めた事項に関し、必要に応
じて見直しを行います。
実行計画の計画期間の終了年度には、実行計画の改訂を行います。ここでは、現
行の実行計画に定めた全ての事項が見直しの対象となります。
【見直しのポイント】
○進行管理の仕組み
・進行管理の仕組みは有効に機能しているか
・点検・評価の実施方法は適切か
・特定の組織や職員に過度な負担を生じさせていないか
○点検・評価結果の公表
・毎年の公表の実施状況
・公表内容の分かりやすさ
・公表時期の適切さ
・公表媒体の適切さ
なお、進行管理の仕組みに関する課題は、組織や施設等によって異なることも予
想されます。仕組みの見直しは全庁的な視点で一律に行うのではなく、組織や施設
ごとに柔軟な対応をすることが望まれます。
-69-
参考
温室効果ガスの総排出量の算定を支援するツール
温室効果ガスの総排出量の算定を支援するツール(「かんたん算定シート Ver,3.0」)
についての概要説明です。実際の算定支援ツールは環境省ホームページにて公開してい
ます。
1 算定支援ツール開発背景
法に基づき、都道府県及び市町村は、実行計画を策定し、その中で温室効果ガスの総
排出量を算定することが義務づけられています。しかしながら、2章に示したように算
定すべき温室効果ガスは多種多様な活動から排出され、また算定方法も複雑になってい
ます。
そこで、排出量集計等の事務を支援するため、表計算ソフト(Microsoft Excel)を利用し
たツールを開発しています。
2 算定支援ツールの目的
本ツールを用いることにより、実行計画策定担当者の事務を軽減することと、排出量
算定等に伴う計算ミスの防止を目的としています。
なお、本ツールは環境部門担当者の少ない小規模の自治体においても手軽に利用でき
るように作成されています。
3 算定支援ツールの概要
本ツールは、管理ツールブック・集計ブック・入力ブックの3つから構成されてい
ます。
平成 26 年 3 月時点で本ツールにおいて算定対象としている温室効果ガスは、二酸化
炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、
パーフルオロカーボン(PFC)、六ふっ化硫黄(SF6)です※。
入力ブックでは、燃料や電力使用量、ごみの焼却量等を入力するだけで、自動的に、
これら温室効果ガス排出量を算定することができます。
集計ブックは、複数の入力ブックの入力値(燃料等の使用量)を合算する機能を持
ちます。全入力ブックまたは任意の入力ブックを合計し、温室効果ガス総排出量を算定
することができます。
管理ツールブックは、項目や排出係数の変更、項目の表示/非表示設定を全ての入
力ブックに一括反映する機能や、本ツールの初期化機能を持ちます。
※地球温暖化対策の推進に関する法律の改正により、平成27年4月1日より、三ふっ化
-70-
窒素(NF3)が追加されますので、施行後、速やかに本ツールに反映させる予定です(現
行の「かんたん算定シートVer3.0」を使用している場合でも、移行プログラム等により
反映できるよう対応します)。
4 算定支援ツール活用の手順
本ツールは図(参考)-2 に示す流れで作業を行います。
施設ごとに入力ブックが必要となるため、ツール管理者は、全ての入力担当者がアク
セス可能な共有フォルダを準備することが適当です。
図(参考)-1 本ツール使用の手順
ステップ1:
集計ブックの編集
入力ブック
集計ブック
自動反映
→編集はツール管理者が実施
入力ブック
入力ブック
ステップ2:
施設毎に入力
入力ブック
年度ごと のグラフ表示
入力ブック
→施設の入力担当者が実施
入力ブック
入力ブック
ステップ3:
全体集計
集計ボタ ン
→集計はツール管理者が実施
集計結果の
年度ごと のグラフ表示
入力シート
入力シート
集計ブック
ツール管理者がアクセス可能な共有フォルダを準備できない場合は、編集した入力ブ
ックをコピーして施設名などを含めたファイル名に変更したファイルを、メールなどに
添付して配布します。
図(参考)-2 入力ブックを配布・回収する場合
③ファイルを上書き
管理者
①メールなどで配布
②メールなどで受け取り
-71-
入力担当者
5 入力ブック
温室効果ガス排出量を算定する上で必要となる活動量について入力します。本ツール
にあらかじめ用意した項目は表(参考)-1に示す通りですが、必要な項目があれば、項目
と排出係数を追加することができます。
表-1 算定支援ツールにあらかじめ用意した活動量入力項目
算定対象項目
一般炭
ガソリン(公用車)
ガソリン(公用車以外)
ジェット燃料油
灯油
軽油(公用車)
燃料の燃焼
軽油(公用車以外)
A重油
B重油またはC重油
液化石油ガス(LPG)(公用車)
液化石油ガス(LPG)(公用車以外)
液化天然ガス(LNG)
都市ガス
電気事業者(その1)
電気事業者(その2)
他人から供給された
電気事業者(その3)
電気の使用
電気事業者(その4)
電気事業者(その5)
蒸気
他人から供給された
温水
熱の使用
冷水
廃プラスチック類(合成繊維の
廃棄物に限る)
廃プラスチック類(合成繊維の
廃棄物を除く)
廃棄物を原材料とする固形燃
一般廃棄物の焼却
料
連続燃焼式焼却施設
准連続燃焼式焼却施設
バッチ燃焼式焼却施設
紙くず又は木くず
廃油
廃プラスチック類
産業廃棄物の焼却
汚泥(下水汚泥を含む)
下水汚泥
汚泥(下水汚泥を除く)
一般炭
ボイラーにおける
木材
燃料の使用
木炭
B重油またはC重油
灯油
軽油
ディーゼル機関
A重油
における燃料の使用 B重油またはC重油
液化石油ガス(LPG)
都市ガス
ガス機関またはガソリ 液化石油ガス(LPG)
ン機関における燃料
都市ガス
の使用
灯油
家庭用機器
における燃料の使用 液化石油ガス(LPG)
都市ガス
算定対象項目
ガソリン・ LPG 乗用車
バス
軽乗用車
自
普通貨物車
ガソリン
動
小型貨物車
車
軽貨物車
の
特殊用途車
走
乗用車
行
バス
ディーゼル
普通貨物車
小型貨物車
特殊用途車
軽油
船舶の航行
A重油
B重油またはC重油
牛
馬
家畜の飼養
めん羊
(消化管内発酵)
山羊
豚
牛
馬
家畜のふん尿処理等
めん羊
山羊
豚
鶏
放牧地における牛の
ふん尿
水田の耕作
耕地に使用された
化学肥料
放牧地における牛のふん尿
水田の耕作
畑
水田
野菜
水稲
農作物の栽培に
果樹
使用された肥料
茶樹
ばれいしょ
飼料作物
農業活動に伴う
殻
殻・ わらの焼却
わら
食物くず
紙くず
廃棄物の埋立処分
繊維くず
木くず
終末処理場
下水又はし尿の処理
し尿処理施設
浄化槽によるし尿 浄化槽によるし尿及び雑排水
及び雑排水の処理 の処理
麻酔剤(笑気ガス)の
麻酔剤(笑気ガス)の使用
使用
自動車用
使用時
エアコンディショナー 廃棄時
噴霧器・消火器の 噴霧器
使用又は廃棄
消火器
使用時
六ふっ化硫黄が
点検時
封入された電気器具
廃棄時
-72-
図-3 入力ブック画面
6 集計
回収した全入力ブックのデータは、
「集計実行ボタン」を押すことで、全体の合算値
を自動的に集計することができます。また、特定のフォルダ内に保存した入力ブックの
みを対象として集計することも可能です。
集計結果は、自動的にグラフ化され、温室効果ガス排出量毎に推移を確認すること
ができます。
図-4 集計ブック画面
-73-
図-5 集計結果の表示(二酸化炭素の場合)
CO2排出量
700 600 600 600 500 510 480 500 550 560 590 610 2019年度
2020年度
410 400 tCO2
300 200 100 0 2011年度
2012年度
2013年度
2014年度
2015年度
2016年度
2017年度
2018年度
2011年度
2012年度
2013年度
2014年度
2015年度
2016年度
2017年度
2018年度
2019年度
2020年度
合計
500
600
480
410
510
550
600
560
590
610
5,410
7 設定の一括反映
本ツールは、調査項目の追加や変更、表示/非表示(折り畳み)設定、係数値の変
更などが発生した際に、それらを全ての入力ブックに手作業で行わなくてもよいよう、
変更を一括反映する機能を持っています。
調査項目の追加や変更、係数の変更などを行った場合は、
「管理ツールブック」の「一
括反映」ボタンを押し、反映する内容や年度等を選択することで、各入力ブックへ変更
内容を反映することができます。
図-6 管理ツール画面
-74-
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