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3Dプリンターを応用した医療技術 第1章 はじめに 第2章 研究の展開

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3Dプリンターを応用した医療技術 第1章 はじめに 第2章 研究の展開
3Dプリンターを応用した医療技術
所属: 医学・歯学・医療ゼミ
2年8組8番
岩崎 竜也
第1章 はじめに
第1節 主題設定の理由
今年の夏休みにネットニュースを見ていたら、NHK がまとめた記事に「3D プリンタ
ー
医療現場で活躍」というのがあった。何か医療界の新しく、面白い話題がないか調べ
ていたので詳しく調べてみた。
内容は、京都大学附属病院で患者の夫の右下葉(肺)を摘出し、妻である患者の左肺と
して移植するというのであった。この時にこの難しい手術の成功の要因となったのが、2
人の患者の臓器そのままのモデルを3D プリンターで製作し、実際に手に取り、切断をし
てみることで、事前に手術のイメージを構築することができたことが大きかったのだ。実
際の手術では予想していた通りに肺の大きさが一致しており、あまりの正確さに驚いたよ
うだ。
このような記事から現在の医療界における3D 技術の応用がどこまで実現しているのか
を調べ、医学部志望の自分としては、将来、自分が医師になったときに知っておいて何か
為になる事はあるのかを調べてみたいと思ったからだある。
第2節 研究のねらい
現在における、医療分野での様々な3D技術の応用を全体的に考察し、3D プリンターを応
用した医療技術の長所・短所を把握する。
第3節 研究の見通し
まずは、入手している記事について詳しく調べ、特徴をまとめていく。その後、関連した
出来事はないのか、海外を含めて調べていく。最後に自分のアイデアを構想し、まとめる。
第4節 研究の内容と方法
第1項 研究の内容
3D プリンターを応用した医療技術の現在の実態を調べる。
第2項 研究の方法
①インターネット検索。
②本を読む
第2章 研究の展開
1
第1節
3D技術について
第1項 3D技術の歴史
皆さんは、3D技術という言葉自体は御存じだと思うが、実際のところはいったいどの
ようなものが存在しているのかを知っている人は少ないと思う。そこで、まず、この第一
節では、そもそも世間で騒がれている3D技術について解説していく。
3Dを活用したビジネスは最先端のデジタル技術を駆使したものと思われがちであるが、
実は、3Dビジネスのルーツはなんと150年以上も前からあったステレオ写真の出版ビ
ジネスなのだ。このビジネスは、1850年代後半から1930年代前半までの約70年
間もの長い年月にわたって「ステレオカード」という名で親しまれてきた。ステレオカー
ドとは、2台のカメラで撮影した写真を左右に並べたもので、その大きさは規格化されて
おり、絵が立体的に見えるというものだそうだ。
↑ 「ステレオカード」
このような絵をステレオカードビューワーに装着し、見て楽しんだ。
http://www.gizmodo.jp/img/080619stereophotos.jpg
ここで、なぜ私が3D技術の歴史から説明し始めたかというと、このステレオカードビ
ジネスには、現代にも生かせる大きな3つの特徴があったからである。それは、
「コンテン
ツ」
、
「ハードウエア」
、
「デリバリ」である。
①コンテンツ
「TOUR
OF
THE
WORLD」など、世界旅行をテーマにしたコンテンツが主
流であり、当時、世界中にステレオカメランを派遣して撮影していた。その他、戦争や政
治、陶器や芝居物などあらゆる種類があった。
②ハードウエア
ハードウエアとはそもそも「金物類、金属製品」の意味の英語で、歴史的には「木製」な
どとの対比語であった。そこから転じて、コンピューター、などの分野で、
「ソフトウエア」
の対比語として、個々の物理的な機械部品(CPU、ハードディスク、ケースなど)や、
2
それらの集合体である。ステレオカードでは、ステレオカードフォーマットという7イン
チ×3.5インチの既定サイズのフォーマットになっており、ビューアーはステレオカー
ドを挟み、レンズとの間を見やすい位置に移動できる仕組みであった。
③デリバリ(流通)
世界中から集められた写真の複製を作成し、それらをシリーズ化して本を真似たケースに
入れてパッケージ化、主に訪問販売により売られていた。
①~③を現代のビジネスモデルに当てはめると分かりやすいだろう。
第2項 3D技術の整理
次に、現代の「3D」というものを整理してみよう。最近では3Dと言えば「3D映画」
について指すのが一般的かもしれないが、実は、
「3D映像」の専門家と「3DCG」の専
門家が集まるとお互いで使う「3D」の意味が混乱することがある。つまり、立体視と3
DCGがごっちゃになっているということだ。そのために専門家の間では、立体視のこと
を3DS(3D
Stereogram)ということがあるようだ。念のために言っておくが、これ
は、ニンテンドーのゲーム機のことではない。そこで、今回は様々な分類方法のうちから、
「3D映像」
、
「3DCG」
、
「3Dモバイル」の3つに分けたいと思う。
3D製品というのは、私たちの身の回りにたくさん普及している。


独占市場

3D映像市場

3DCG市場

3Dモバイル市場
融合市場

3DAR市場

モバイル3DCG市場

モバイル3D映像市場

モバイル3DAR市場
第1目 3D映像市場
立体映像が立体的に感じられるかどうかは、個人差がある。日本人の場合は、約10%
の人が、左右の視力差が多きというような理由で立体視に感じにくいと言われている。
「3D」で一番歴史があるのがこの3D映像の分野である。
ここでの3D映像市場の製品としては、3Dテレビだけではない。その他にも、3D対
応の携帯電話や携帯ゲーム機、ノートPC、デジタルカメラや、ビデオカメラのモニター
などがあげられる。
3
↑ 様々な3Dハードウエア
第2目 3DCG市場
ここで言う3DCGとは、コンピューター上に3D空間のデータを持っており、その3
Dデータによって表示を行うことを指す。また、CGとは、Computer Graphics の短縮系
である。したがって、3DCAD(Computer Aided Design)や、3DVR(Virtual Reality)
なども3DCGの分野である。3D映像との違いは、表示は2Dでもよく、必ずしも立体
視を伴わないというところである。
3DCGは、映画、印刷、教育、医療などあらゆる分野で広く使われるようになった。
現在では3DCGだけで作られるより、2DCGやビデオ映像と伏せて使用されることが
多い。映画などで3DCGと実写を、見わけがつかないほど見事に合成する場合は、2D
CGと3DCGの両方の技術が使われ、VFX(Visual Effects:映像の特殊効果)とし
て利用される。また、実写と3DCGを合成しないで3DCGだけで製作される作品は、
「フ
ルCG作品」と言われる。
さらに、もうひとつ伸びが期待されている分野として、医学分野として利用されるボリ
ュームデータ(2Dの画像を積層したボリュームとして扱う)分野がある。
4
↑ 医学分野 ボリュームデータの例
http://image.gihyo.co.jp/assets/images/dennou/2013/153/153-08-01.png
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/2d/8ab9db96f7142e329c1ad46ff53245e8.jpg
3DCADは、製品製造するときに製品の立体形状を扱う。設計やデザインに用いる道
具として自動車や飛行機、家電、建築などあらゆる分野で使われる。
5
http://3dcad.up.n.seesaa.net/3dcad/onespacemodelinghouryuji03.jpg?d=a0
http://www.c-ace.net/assets/test.png
http://static-dc.autodesk.net/content/dam/autodesk/www/products/autodesk-simulat
ion-family/images/screenshots/nissan_image.jpg
3DVRとは、あたかもコンピューター上にある仮想の空間に入ったように感じられる
技術のことを言う。特徴として、人の反応に対してリアルタイムに表示が変わること(イ
ンタラクティブ性)が挙げられる。つまり、3DVRは、人が参加することが前提となっ
たシステムで、人間に疑似体験をさせることが目的である。例として、車や飛行機の操縦
訓練を行うシミュレータや空間を再現して行う3Dゲーム等がある。
←
3DVRを用いた自動車の
シミュレーションシステム
https://www.mpcnet.co.jp/product/simulation/searchpurpose/training/images/pic_ds
600001.jpg
また、
「3D映像」と「3DCG」が融合して生まれた市場を「3DAR」と呼ぶ。最近
では販売促進用のキャンペーンなどでスマートフォンを使った仕掛けとして用いられるこ
とが多くなっている。
http://ord.yahoo.co.jp/o/image/_ylt=A3J
uMEPpWslUtl8ACSyU3uV7/SIG=13idlaeg4/EXP
=1422568553/**https%3a//lh3.ggpht.com/l
Rn0xBa_Ww358lau5ze3FxGsF8t9kfHLUQhVmDk3
-QXwNJ_RutCNejBL_fUSzqDkJNM=h900
http://www.iizuna-shoten.com/html/uploa
ds/japanese/46.png
↑ どちらの参考書もAR機能付きの学年教材である。
6
第3目 3Dモバイル市場
現在のモバイル機器は、単に持ち運べる小型のデジタル機器というだけでなく、内蔵さ
れた各種センサーによって場所や空間の特定ができる高度な位置空間センシングマシン
となっている。この分野が発展すると表示装置やコンピューター上の仮想空間の世界とい
うものが人間の暮らす実空間に解き放たれることを意味する。つまり、エポックメイキン
グとして今後の活躍が期待できるということだ。
ここまで説明してきた3Dについてベン図を用いて表すと下図のようになる。
モバイル3D 映像
3DAR
モバイル3D 映像
モバイル3DCG
(自作)
(注)

3D映像:3D表示にまつわること。

3DCG:3D仮想空間にまつわること。

3Dモバイル:位置/空間にまつわること。
7
第2節 そもそも3Dプリンターとは?
3D プリンター(英語: 3D printer)とは、通常の紙に平面的に印刷するプリンターに対して、
3DCAD、3DCG データを元に立体(3 次元のオブジェクト)を造形する機器。産業用ロボットの一
種。
通常は積層造形法(additive manufacturing)[1]によるものを指し、切削造形法によるものは 3D プロ
ッター(英: 3D plotter)と呼ぶ。3 次元のオブジェクトを造形することを、3D プリント(三次元造形、
英: 3D printing)と呼ぶ[2][3]。
機種によって多少の違いはあるが、基本的な仕組みは、コンピュータ上で作った 3D データを設計
図として、断面形状を積層していくことで立体物を作成する。液状の樹脂に紫外線などを照射し少
しずつ硬化させていくインクジェット方式、熱で融解した樹脂を少しずつ積み重ねていく FDM 方式
(Fused Deposition Modeling, 熱溶解積層法)、粉末の樹脂に接着剤を吹きつけていく粉末固着方
式などの方法がある[13]。
製造業を中心に建築・医療・教育・先端研究など幅広い分野で普及している。用途は業界によっ
て様々である。製造分野では製品や部品などの「デザイン検討」「機能検証」などの試作やモック
アップとして、建築分野ではコンペやプレゼン用の「建築模型」として、医療分野ではコンピュータ
断層撮影や核磁気共鳴画像法などのデータを元にした「術前検討用モデル」として、教育分野で
は「モノづくり教育のツール」として、先端研究分野ではそれぞれの研究用途に合わせた「テストパ
ーツ」「治具」などの作成用途で使用されている[14]。
3D プリンターの使用用途としては、実際に製品を作る前にそれぞれの部品を 3D プリンターで出力
できるサイズに縮小して出力して、デザインの検証・機能検証などの試作に使われることが多い。
大手建設会社では建物の模型を 3D プリンターで出力して客に説明する際に使われている。この
3D プリンターを使用するメリットとしては、安いものでは 1cm2 あたり 20 円という安価(メーカーによ
って多少のばらつきはある:但し溶融物堆積法。)で試作できる、今までパソコンの画面上でしか
見ることができなかったものが、実際に手に取ることができるため、完成したときのイメージが非常
にしやすくなる、などが挙げられる。完成したときのイメージがしやすいということは、実際に製作
している過程でも、完成形のイメージがしやすいため製作者に迷いが生じにくいということを意味
し、作業効率の向上にも繋がりうる。
↑ Wikipedia 引用 「3D プリンター」
※蛍光マーカー・下線は作者編集
8
第1項 3Dプリンターの基礎知識
ここからは、3Dプリンターに焦点を絞って説明していく。まず基本的なこととして、
「3Dプリンター」があれば魔法のようにあらゆるものを作れるというわけではない。ま
た、「3Dプリンター」とは、デジタルファブリケーション(デジタル技術を活用したも
のづくり)における4種の神器である、「3Dプリンター」、「3Dスキャナー」、「レ
ーザーカッター」、「CNC装置(切除加工機)」のうちの一つである。「3Dスキャナ
ー」とは3次元でイメージを読み込む装置、「レーザーカッター」及び「CNC装置」と
は物質を削って造形する「引き算」の装置である。
では、「3Dプリンター」とは何かを説明する。「3Dプリンター」とは物質を積み上
げて造形する、いわば「足し算」の装置である。製造業の専門用語ではこれを「積層造形
装置」と呼ぶ。
第2項 3Dプリンターのポイント
次に、「3Dプリンター」のポイントについてまとめていく。
I. 100V電源で稼働する
これが意味していることが分かるだろうか?つまり、業務用の200V電源が無くとも、
家庭用の100V電源で動かすことができる。ここに3Dプリンター普及の一つの鍵があ
ると言えるだろう。
II. 専任のオペレータや特別な免許は不要
3Dプリンターは、特殊技能を必要とせずに、使いかたさえ覚えれば、誰でも使えるこ
とも重要である。もちろん、誰でもできるが、品質の良いものをつくるプロ的存在はいる
ようだ……。
III.一般的なオフィスや家庭でも使える
これはⅠにも関連しているが、電源の他に重要なポイントが、サイズがコンパクトであ
ることと、特殊な環境を必要としていないことが挙げられる。
第3項 積層造形装置とは?
積層造形装置とは」、読んで字のごとく、「材料を1層ずつ積み上げて形を造る」装置
のことである。基本的には、様々な方法で薄い層をつくり、それを積み重ねることで目的
の形をつくるというものである。1層あたりの厚みは精度の粗いもので0.4㎜、高精度
のもので15㎛である。
次に積層造形の種類について調べる。8つの方式があった。以下の通りだ。
①光造形方式
②粉末焼結積層造形方式
③インクジェット方式
④樹脂溶解積層方式
9
⑤石膏パウダー方式
⑥シート成形方式(LMO)
⑦フィルム転写イメージ方式
⑧金属光造形複合加工方式
たくさんあった。重要だと思う4つだけ解説を載せておく。
①光造形方式
光造形は、1980年、小玉秀男が世界に先駆けて発明・出願した、積層造形機の中で
最も歴史の古い方式である。
この方式は、液体状の光硬化樹脂にレーザー光線や紫外線を当てて1層ずつ硬化させ、
それを積層させて立体物を作成する。光を当てるのは、液体の表面部分のみで、ひとつの
層の硬化が終わると、造形台(テーブル)を液体の中に沈めることで、次の層の造形を行
う。非常に微細な造形が可能だが、多くの機種が200V電源を必要とし、サイズは大型
で、家庭やオフィス向きではない。
この方式は、日本のメーカーが得意とする分野である。代表的なメーカーはシーメット
である。また、材料(樹脂)の技術進歩も著しく、関連技術の特許の多くを、日本のメー
カーが保有する。
http://www.japanese-makers.com/wp-content/uploads/2013/10/353fc8d3155ee3a4f8357d
57b8aa0bf01.png
②粉末焼結積層造形方式
この方式は、セラミックや樹脂、金属の粉末に強力なレーザーを照射し、粉末を焼きつ
けることで固め、それを1層ずつ積み上げて立体物を作成する方式である。ローラーで粉
末を敷き詰めてあるところにレーザーを当て、焼結したら、またローラーで粉末を敷き詰
めるという作業の繰り返しである。材料としては、ナイロン樹脂の粉末がよく使われるそ
うで、柔軟性の高いパーツとして仕上がる。また、費用を安価に抑えやすいという特徴を
持つ。
10
https://www.ricoh.co.jp/
3dp/what/images/im_02L.j
pg
③インクジェット方式
この方式は、液状化した樹脂をインクジェットプリンターのように吹きかけ、堆積させて
立体物を作成する方式。光硬化性の樹脂を使い、紫外線などの特定波長光を当て硬化させ
る。一般的に細かな造形が可能で、表面の仕上がりも滑らかになる。
この方式は、造形物を支えるロウなどのサポート材が伏せて出力されるのが特徴。サポ
ート材が造形物を包み込んで出力され、熱を加えてサポート材を溶かすことで、樹脂の部
分を取り出すことが可能。そのため、複雑な形状や中空構造の立体物の作成に適している。
アクリル系の樹脂がよく使われる。欠点は、ABSと呼ばれる樹脂に比べると粘りに欠
け、力が加わるとその部分が破損してしまうという弱点があることだ。
http://www.nextmed.co.jp/service/images/modeling_fig3b.jpg
④樹脂溶解積層方式
この方式では、リール巻かれたワイヤ状の樹脂を熱で溶かし、ヘッドから押し出してプ
ラットフォームと呼ばれる台の上に面上に積層することで立体物を成型形する。
X軸、Y軸、Z軸にヘッドが動くものと、Z軸に対してヘッドが固定され、プラットフ
ォームが上下に動くものがある。樹脂は、ABSやPLAといった汎用性が高く、取り扱
いが容易なものが使用される。
11
ABSは強度と粘りがあるが、表面の仕上がりがほかの方式と比べると粗くなり、積層
の縦縞が目立つ傾向があるため、細かな造形や精度が求められる場合にはあまり向いてい
ない。
http://ww
w.03trade
.com/mail
maga/mark
et/img/mk
_130823_0
1_01.gif
第3節
3D プリンターを応用した医療技術
ここまで、第1節、第2節を通して「3D 技術について」、「そもそも3D プリンターと
は何だ?」ということを調べてきた。
さて、ここからが本題の3D プリンターを利用した医療技術についてまとめていく。いろ
いろと調べてみたところ、3D プリンターを使った医療技術を4つに大別して説明していく。
以下の通りだ。
① インプラント系
② 体外装着系
③ モデル系
④ バイオ3D プリンター系
①インプラント系
インプラントとは、体内に埋め込まれる器具の総称である。
医療目的で多く使われ、失われた歯根に代えて顎骨に埋め込む人工歯根(デジタルイン
プラント)、骨折・リウマチ等の治療で骨を固定するためのボルトなどがある。
心臓ペースメーカー、人工内耳の埋め込み部分のように電力が必要なインプラントもあ
る。通常の機械のような有線での電力供給はできず、電池交換も難しいため、電磁誘導や
長寿命の原子力電池などが使われる。
美容目的、特に豊胸目的で乳房に埋め込むインプラントやファッション目的で皮下浅く
に埋め込むインプラントもある。
↑ Wikipedia 引用 「インプラント」
私が知っていたインプラントとは「歯」のイメージしかなかったのだが、「体内に埋め
込まれる器具」を総称しているそうで、私が調べた多くの記述の中で「インプラント」と
いう言い方を使用していたため、「インプラント系」と名付けた次第だ。
では、具体的にはどのようなものがあるのだろうか?
12
主に骨を3D プリンターで印刷できるというものであった。骨の箇所は様々だ。頭蓋骨、
顔の骨、歯、顎骨、肩の骨、尻の骨、足の骨等々だ。
↑ 頭蓋骨のインプラント
↑ 顔の骨のインプラント
↑ 顎骨のインプラント
↑ 背骨のインプラント
また、インプラントに使われる材料の粉に重要なポイントがある。骨の成分である「リ
ン酸カルシウム」を使うため、委書記したインプラントは、患者本人の骨と3カ月ほどで
くっつき、移植後2~3年で本人骨と置き換わるというのもあるのだ。
②体外装着系
基本的には「インプラント系」と同じであるが、違いは体外に装着するという点である。
具体的に以下の通りだ。
1. 補聴器
耳の形は人それぞれであり、その人のために作られた補聴器が必要である。既に約10
00万人の人が利用している。
↑ 3Dプリンターを使って作られた補聴器
13
↑オーダーメイド補聴器
2. 体の動きをサポートするシステム
全身の関節が動きにくくなる難病「先天性多発性関節拘縮症(アラトリグリポージス)
に苦しむ Emma Lavelle という少女は、自らの体のサイズにぴったりと合った補助器具(W
REX)を3Dプリンターで印刷した。従来までは、CNCカッティングでつくられるよ
うだが、3Dプリンターを使うことで、より軽く、小さく、体に合ったものを作れるとい
う利点がある。
↑ 体をサポートする装置(WREX)
http://livedoor.blogimg.jp/ihayato/imgs/a/7/a7d6083e.jpg
3. カスタム義足
自分の足と、既に使っている義足をスキャンする。これにより、画一的ではない、ユー
ザーの足によりフィットした義足をつくることが可能となる。テンプレート、材質などを
選択することも可能である。3Dプリンターでプリントアウトし完成である。
価格は 4000~5000 ドル。サッカーをプレイすることができるようになった人もいる。
http://www.ikedahayato.com/index.php/archives/8664
14
③モデル系
1. 世界初の手術成功!
2014 年 3 月に世界で初となる、左右異なる肺の「生体肺移植」に京都大学附属病院が成
功した。「生体肺移植」とは、「脳死移植」を待つことができない、肺の重い病気にかか
っている患者に対して多く行われる。通常「生体肺移植」では、患者の左の肺には提供者
の左の肺を移植するのだが、今回は大きさが合わなかったために、患者の夫の右の肺を用
いた。この場合、右下葉の左右を反転させて移植するため、血管や空気が通る気管支の位
置はずれ、手術は複雑になるのは想像に難くないだろう。つまり、血管や気管支をうまく
縫合できるかが手術の成功の鍵を握っていた。
伊藤洋至(呼吸器外科)の移植チームは、「3Dプリンター」を使って、夫婦の肺など
を再現した立体模型をつくり、事前にシミュレーションを行った。CTスキャンによって
撮られ、石膏の層によって重ねられたモデル(模型)は、肺を切除する際、外科医ならど
のくらいの長さで血管や気管支を残すのか、そういった細かい部分まで再現されていた。
実際に手術を行ってみると、事前のモデル(模型)による検討結果と全く同じだったの
だ。だから、手術中に迷いなく、正確かつ迅速に進めることができたそうだ
。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/events_news/department/hospital/news/2014/images/
140514_1/01.jpg
15
↑ 肺の一部と胸のモデル
↑ 気管支モデル
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/events_news/department/hospital/news/2014/imag
es/140514_1/03.jpg
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/events_news/department/hospital/news/2014/imag
es/140514_1/03.jpg
2. 胎児の心臓奇形早期発見法
川崎医科大学産婦人科の福家信二先生は、胎児に悪影響を与えない超音波画像診断を使
い、妊婦のおなかの中にいる胎児の心臓を3Dプリンターでモデル化することに成功した。
胎児の心臓ほどの小さな臓器を3Dプリンターで立体造形した例は初めてであり、学会で
も話題になった。この成功で、100 人に 1 人の確率でいるとされている胎児の心臓奇形を早
期発見することが期待されている。
ちなみに、胎児の心臓は小さく、心拍数は大人の 2~2.5 倍の速さであるので出生前に心
臓奇形の診断をするのは難しいことであった。データを挙げると、胎児の心臓奇形の出生
前診断の成功率は日本で 5%程度、技術の進んでいるイギリスでもたったの 20~30%程度
と低いのだ。
④バイオ3D プリンター系
1. 血管
佐賀大学とバイオベンチャー企業「サイフューズ」が共同で開発した3Dプリンターは、
患者の皮膚細胞などから血管を作成することに成功した。この装置が材料に使っているの
は「生きた細胞」である。「3Dプリンター」の技術を使って、細胞を立体的に積み上げ、
それを基に移植できる臓器や組織をつくるという研究である。
この装置で重要なのが、生け花に使う剣山のような針の山である。太さ 0.1 ㎜、長さ1
0㎜程度の針が、およそ 3.5mm 四方の中に 81 本並べられる。剣山のような針が使われるの
は、細胞を崩さずに積み上げていくためである。
3 次元データを基に、アームが細胞塊の 1 粒ずつを吸い上げ、非常に小さい針の山に次々
と刺し細胞の立体物をつくる。複数の種類の立体物を積み上げていくことも可能である。
16
血管のもとになる細胞の塊を筒状に積み上げたものを、倍液中におよそ 1 週間入れてお
く。すると、細胞は「自己組織化」という働きによって互いにくっつき、血管のような形
をした組織が出来上がる。直径は約 2~3 ㎜、針から抜いても形が崩れることなく、手術用
の針と糸で縫合できる程度の弾力や固さがある。
http://3-d-craft.com/press/2305
2. 皮膚
イギリスのリバプール大学が人間の皮膚を3Dプリントすることに成功した。
既に実験的に患者のために提携供されていたようだが、一般的普及はまだ。どうやら、
皮膚の伸縮や歪みの性能がまだ基準を満たしていないようだ。もちろん方法としては患
者の皮膚を3Dスキャンしてプリントするようだ。
その研究チームの最終目標は患者の性別、民族、年齢が一致する「カスタムスキン」
を医師が作れるようになることと、3D スキャンしたデータをデータベースに蓄積し、骨
髄バンクならぬ、「スキンバンク」を稼働させることである。
17
http://3-d-craft.com/press/2229
3. 臓器
臓器の印刷は 2 種類あった。1 つ目は中が空洞になっている胃や膀胱の印刷。2 つ目は肝
臓や腎臓、心臓といった、内部が詰まった複雑な構造を持った臓器の印刷である。
昨年の総合レポートの時に題材の源として紹介した「TED」で3Dプリンターを利用
して臓器をつくることについて発表していた人がいたので、簡単に紹介しておく。
アンソニー・アタラという外科医が「3Dプリンターで臓器を印刷する仕組み」という
テーマで発表した。また、「TED」については後ろで説明しておく。
アンソニー・アタラによると、現在、臓器移植を必要とする人の数は増加している。そ
の一方で臓器提供者の数は殖えておらず、圧倒的に臓器不足の状態だという。
また、彼は臓器の印刷という考え方の分野は新しい分野ではないとも言っていた。1938
年出版の「臓器の培養(THE CULTURE OF ORGANS)」という本の中で書かれているそうだ。
しかも、この本の著者は二人いて、一人目はアレクシス・カレルで、現でも使われている
血管縫合の方法を考えたとんでもないひとであった。二人目はかの有名なチャールズ・リ
ンドバーグという、ニューヨーク・パリ間の大西洋単独無着陸飛行を達成した人である。
ちなみに彼は、人工心臓の開発も行っていたという。つまり、このプレゼンが発表された
70 年以上前には既にされていたのだ。
ではなぜ、長い歴史があるにも関わらず、今まで発展・普及してこなかったのか。彼は 3
つの理由を言っていた。一つ目は、体内で長期間利用可能な素材の開発ができなかったこ
と。二つ目が、体外でうまく培養できない細胞が多かったこと。三つ目は、実際の移植に
おいて、血管やリンパ管といった脈管をどのようにつなげればよいかの開発が遅れていた
こと。しかし、彼は、20 年以上の研究を経て、その課題をほぼクリアしたようだ。ただし、
どうしても二つ目の理由で挙げた、体外で培養しにくい細胞のうち、肝細胞、神経細胞、
膵臓細胞はまだ培養が難しいようだ。
※「TED」とは?
18
Our organization
TED is a nonprofit devoted to spreading ideas, usually in the form of short, powerful talks (18
minutes or less). TED began in 1984 as a conference where Technology, Entertainment and Design
converged, and today covers almost all topics — from science to business to global issues — in
more than 100 languages. Meanwhile, independently run TEDx events help share ideas in
communities around the world.
Our Mission: Spread ideas
TED is a global community, welcoming people from every discipline and culture who seek a deeper
understanding of the world. We believe passionately in the power of ideas to change attitudes, lives
and, ultimately, the world. On TED.com, we're building a clearinghouse of free knowledge from the
world's most inspired thinkers — and a community of curious souls to engage with ideas and each
other, both online and at TED and TEDx events around the world, all year long.
In fact, everything we do — from our TED Talks videos to the projects sparked by the TED Prize,
from the global TEDx community to the TED-Ed lesson series — is driven by this goal: How can we
best spread great ideas?
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↑「TED」のホームページ「Our organization」より引用。
もうひとつ付け加えておきたいことがある。東京慈恵会医科大学の森川利昭先生が言う
には、「将来、3Dプリンターは医療の重要な柱になる。」ようだ。その理由について、
3Dプリンターは「少量多品種」を得意とするという特徴があり、患者ごとに最適な治療
を目指す医療現場のニーズにマッチしているからだ。以前からそのようなニーズはあった
が、大量生産・大量消費が中心だったため、企業からあまり関心が寄せられなかったので
ある。企業側が医療の現場でまだ何が求められているか正確に理解されていない部分もあ
るため、医療現場のニーズと企業の技術をうまく結びつける取り組みが必要であるとし、
医工連携の重要性がうかがえた。
19
第3章
感想
今回のレポートは昨年に比べてもなかなか大変であったが、将来における、つまり私た
ちの世代において急速な進歩を遂げる可能性がある分野について調べることができてよか
った。最終的に3Dプリンターの長所とは「少量多品種」であり、一人一人の患者さんの
最適な治療法を見出すのに役立つというのは、心惹かれる部分があった。欠点や改善点が
まだまだ存在する分野だとは思うが、未来において「3Dプリンターを応用した医療技術」
というものが当たり前のように患者さんの選択肢の一つとして存在していて、医療の柱に
なることに期待する。
第4章
参考文献
1. 文献

3D技術が一番わかる
著者:町田聡

出版所:技術評論社
3D プリンター導入&制作 完全活用ガイド
著者:原雄司
出版所:技術評論社
2. インターネット

NHK NEWS WEB 「3Dプリンター 医療現場で活躍」

デジタルヘルス
https://www.ted.com/about/our-organization

NAVER まとめ
http://matome.naver.jp/odai/2137749241316676201

Wikipedia

TED ホームページ
https://www.ted.com/about/our-organization
20
レポート 概要
1
第1章
はじめに
2~19
第2章
研究の展開
2~7
7~12
12~19
20
第1節
第2節
第3節
3D技術の整理
そもそも3Dプリンターとは?
3Dプリンターを応用した医療技術
第3章
感想
第4章
参考文献
21
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