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育児期の女性における母娘関係と育児性 -出産・育児経験の影響

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育児期の女性における母娘関係と育児性 -出産・育児経験の影響
育児期の
育児期の女性における
女性における母娘関係
における母娘関係と
母娘関係と育児性
-出産・育児経験の影響-
Mother-Daughter Relationship and Aptitude of Child Care in Women Bringing up Their
Children:The Influence of Childbearing and Childrearing.
臨床心理学研究科 臨床心理学専攻 0606-0701 間 美枝子
問題と
問題と目的
今日、ライフサイクルと社会の変動によって、女性の人生は大きく変化している。岡本
(2002)は、女性のアイデンティティの発達をライフサイクル的視座からみたときに、
「他
者との関係性」によってアイデンティティを確認し、成就させていく側面が強いというこ
とを見出している。特に女性の場合、親との結びつきが幼少期はもちろんのこと、青年期
以降においても維持され、その関係のあり方が影響を及ぼすことが明らかにされている。
そこで本研究では、成人期以降の女性、なかでも育児期にある女性に焦点をあて、身体
的にも心理的にも大きな変化を体験するとされる出産・育児経験により、母娘関係および
育児性がどのような発達的移行をたどるのかについて検討を行なっていく。具体的には、
第一子出産というライフイベントに注目し、現在から回想した第一子出産以前と現在にお
ける心理的状態の変化を量的にとらえ、育児期の女性における母娘関係および育児性のあ
り方を明らかにすることを目的とする。なお、本研究における課題を検討するために、対
象者の年齢、出生順位、第一子年齢、子どもの人数、職業の有無、学歴、母親との生活形
態(同居か別居か)
、母親の家からの距離およびソーシャル・サポートのエージェント数と
いった変数を設定し、母娘関係および育児性に関連する要因について探索的な検討を試み
る。また、生涯にわたり娘にとって重要な意味をもつ母娘関係が育児期の娘の育児性にど
のような影響を及ぼすのかについても検討していく。
方法
調査対象は、保育園、幼稚園、小学校に通う児童の母親 525 名である。調査は、個別自
記入形式の質問紙を用いて実施した。尺度は、藤原・伊藤(2007)が作成した「母娘関係
尺度」ならびに鈴木・清水・伊藤(2005)が作成した育児性尺度を用い、それぞれ回想し
た第一子出産以前と現在について 2 度回答を求めた。育児性尺度については、原著者の了
解を得て、本研究の対象者において適当でないと思われる項目については表現に修正を加
えるか、もしくは削除した。
結果および
結果および考察
および考察
まず、対象者の年齢、出生順位、第一子年齢、子どもの人数、職業の有無、学歴、母親
との生活形態(同居か別居か)
、母親の家からの距離およびソーシャル・サポートのエージ
ェント数といった変数により対象者を群分けした。それぞれの群間で第一子出産以前と現
在における下位尺度の得点差の平均値を比較することにより、母娘関係および育児性にお
ける変化に影響を与える要因を探索した。母娘関係においては、年齢、学歴およびソーシ
ャル・サポートのエージェント数との関連がみられた。年齢は「母への依存」と関連して
いた。年齢があがるにつれて、
「母親への依存」の意識は減じてゆき、特に 40 代において
はその傾向が顕著であった。また、学歴は「被支配感」および「過去の対立・葛藤」と関
連していた。学歴が高いほど、母となる前に比べて現在において認知される「被支配感」
を低いと感じていた。
「過去の対立・葛藤」については、中間層である短期大学・専門学校
群が第一子出産以前に母親との対立・葛藤が高かったことが示された。ソーシャル・サポ
ートのエージェント数は「母への親和性と保護意識」と関連がみられた。
育児性については、第一子の年齢が「子どもへの接近感情」に影響しており、第一子の
年齢が低いほど、つまり子どもへの関心が高い時期において「子どもへの接近感情」が最
も高く認知されていた。また、母となった現在の育児性のみの下位尺度得点について検討
したところ、ソーシャル・サポートのエージェント数が多いほど「子どもへの接近感情」
が高く、
「育児不安」は低く認知されていた。
母娘関係と育児性の関連については、第一子の年齢により 0~3 歳群、4~6 歳群、7~9
歳群、10 歳以上群の 4 群に分けて検討した。4 群を通して寄与する因子やその影響力に変
化はあるものの「母への親和性と保護意識」が高まると子どもや育児への肯定的な感情が
高まる傾向があることがわかった。母娘関係の否定的な因子については、7~9 歳群におい
て「過去の対立・葛藤」が「育児不安」に、
「被支配感」が「育児への期待感」と関連して
いた。
第一子が 7~9 歳の群においては母娘関係における否定的な感情の影響力が増してお
り、この時期に育児期の女性に何らかの発達的変化が起こる可能性が示唆された。10 歳以
上群においては、
「母への依存」を低く認知しているほど、
「子どもへの接近感情」および
「育児への期待感」
が高まるという関係が見出され、
育児期にある女性が他者性を獲得し、
母親との適切な心理的距離をとることが、子どもや育児への肯定的感情を高めるというこ
とがわかった。
今後の
今後の課題
本研究では質問紙調査法によって得られた回顧的資料を用いたが、データの信頼性を検
討する意味でも、また育児期の女性の母娘関係および育児性における質的変化を検討する
うえでも半構造化面接法による調査研究が望まれる。さらに、既婚の女性において夫との
関係が重要な意味を持つことは先行研究においても指摘されており(高木・柏木,2000)
、
育児期の女性における母娘関係および育児性と、夫との関係との関連についても検討して
いくことが必要であると思われる。以上については、今後の課題としたい。
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