...

消費税課税の見直し - 税理士法人エスネットワークス

by user

on
Category: Documents
12

views

Report

Comments

Transcript

消費税課税の見直し - 税理士法人エスネットワークス
税理士法人
国境を越えた 役務 の 提供 に対 する
消費税課税の見直し
電 子 書 籍 ・音 楽 ・広 告 の 配 信 な ど の インターネット等 を 介 し て 行 わ れ る 役 務 の 提 供 を
「 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 」と 位 置 付 け 、
申告納税方式」が採用され、国外の事業者が日本の税務署へ納付・申告することとされました。消 費 者 向 け 電 気 通 信
役務の提供とは、具体的には、その性質から、インターネット上の音楽の配信、音楽・映像の視聴、および、ソフト
国外事業者申告納税方式
ウエアを利用させる役務の提供が想定されています。なお、経過措置により、事業者が行った国内での課税仕入れの
うち、国外事業者から受けた「消費者向け電気通信役務の提供」については、当面の間、登録国外事業者からの役務
提供のみ、仕入税額控除が認められています(消費税法附則第 38 条 第1項、消費税法基本通達 11-1-3(注2 )
)。
5. 登録国外事業者制度
国外の事業者が行う消費者向け電気通信役務の提供については、
「登録国外事業者」から受けたものについては、
仕 入 税 額 控 除 の 適 用 が 認 め ら れ ま す(消費税法附則
その役務の提供が消費税の課税対象となる国内取引に該当するか否かの判定基準が、
第 38 条第1項但書)
。登録国外事業者は国税庁HPにて確認することができます。
(https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shohi/cross/touroku.pdf)
これは、国外の事業者については、当局における納税状況の把握が困難であることから、法令によりその要件が厳格に定められている登録国外事業者については、
「 役 務 の 提 供 を 行 う 者 の 事 務 所 等 の 所 在 地 」か ら
事業者側で消費税を納めているものとして、仕入税額控除が認められているものです。
「役務の提供を受ける者の住所地等」に見直されました。
事業者向け電気通信利用役務の
提供に係る課税方式
リバースチャージ方式
1. 電気通信利用役務提供とは
提供を受けた国内事業者に申告納税義務を課す方式(対象取引例:広告の配信)
他の資産の譲渡等の結果の通知その他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供以外のものをいいます(消費税法第 2 条第 1 項第 8 の 3 号)。
1 インターネットを介した電子書籍の配信
4 インターネットのウェブサイト上に他の事業者等の商品販売の
3 インターネットを介してソフトウエアを利用させる役務の提供
5 インターネットのウェブサイト上に広告を掲載する役務の提供
※
「事業者向け電気通信利用の役務の提供」とは、役務の性質又は当該役務の提供に
役務の提供
国内事業者
納税
義務者
場所を提供する役務の提供
6 電話、電子メールによる継続的なコンサルティング
2. 改正前における内外判定の取扱い
には課税され、国外の事務所等から役務提供には課税されないという点で整合が取れていないという問題がありました。
申告
納税
ただし、経過措置により、平成 27 年 3 月 31 日までに締結した電気通信利用
役務の提供で、平成27年10月1日前から引き続き国外事業者が行う電気通信
利用役務の提供については、改正前の消費税法が適用されます。
4. 電気通信利用役務提供とは
1
14
役務の提供
国内事業者
国外事業者
税務署
国内事業者が申告・納税を行います。
当該役務の提供に係る課税仕入れは、
仕入控除税額の計算の基礎となります。
国外
国外事業者が日本の税務署に申告・納税
国内
を行います。当該国外事業者も事業者
免税点制度の適用対象となります。
3
5
消費者
国外事業者から国内において電気通信利用役務の提供を受けた事業者の取り扱い
契約日
契約日
平成 27年 3 月 31日まで
平成 27 年 4 月 1日以降
4
例:音楽・映像の配信、商品販売の場所を提供 など
リバースチャージ方式
国外事業者申告方式
取引
1
2
3
4
5
改正前
国内取引:課 税
国外取引:不課税
国内取引:課 税
国外取引:不課税
国内取引:課 税
課税売上割合
仕入税額控除の適用あり
仕入税額控除の適用なし
95%未満
国外
改正後
国外取引:不課税
国内取引:課 税
国外取引:不課税
国内取引:課 税
国内取引:課 税
図1 電気通信利用役務の提供に係る内外判定の見直し
※改正前の取引1及び 3は、輸出証明書の保存などの所定の要件を満たすことで輸出免税の対象となります。
出典:国税庁ホームページ
不課税
平成 28 年 3 月 31日まで
消費者向け電気通信利用役務の提供
例:広告、事業者向けクラウド など
課税売上割合
消費者
国内
国外
出典:国税庁ホームページ
2
課税方式の見直し(リバースチャージ方式と国外事業者申告納税方式)今回の改正に合わせて、一部、課税方式の見直しが行われました。
リバースチャージ方式
消費者
税務署
国外事業者
1
第 3 号、第 4 項)が国 内 に 該 当 す る 場 合 、 消 費 税 の 課 税 対 象 となります。
る者が国内にいるかどうかが判定の基準になります。
国外事業者
事業者向け電気通信利用役務の提供
国内事業者
今回の改正により、平成 27 年 10 月 1 日以後に行われるこれらの役務提供
したがって、改正後は、役務提供を行う事業者ではなく、役務提供を受け
利用役務の提供」以外のものについて、国外事業者に申告納税義務を課す方式。
(対象取引例:電子書籍・音楽の配信)
図 2 課税方式の見直し
この仕組みは、消費地課税主義を採用している消費税にあって、いずれも国内消費者が役務提供を受けている場合においても、国内の事務所等からの役務提供
居 所 又 は 本 店 若 しくは主 た る 事 務 所 の 所 在 地 」
(消 費 税 法 第 4 条 第 3 項
国外事業者が行う「電気通信利用役務の提供」のうち、「事業者向け電気通信
申告納税
改正前のこれらの役務提供については、
「役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地」が国内である場合、消費税の課税対象とされていました。
については、「当 該 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 を 受 け る 者 の 住 所 若 し く は
左記以外の電気通信利用
役務の提供
係る取引条件などから、
当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるもの。
国内
3. 改正後における内外判定の取扱い
国外事業者申告納税方式
国外事業者が行う
「事業者向け電気通信利用役務の提供」について、当該 役務の
電気通信利用役務の提供とは、資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物の提供その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供で、
2 インターネットを介して音楽・映像を視聴させる役務の提供
2
一方で、事業者向け電気通信利用役務の提供以外の役務提供(消費者向け電気通信役務の提供)については、
「国外事業者
(税込、課税仕入)
国外事業者はリバースチャージ方式により申告・納税
95%以上
(税抜、対象外)
※経過措置として当面の間
その他の事業者
登録国外事業者
仕入税額控除の適用あり
(税込、課税仕入)
仕入税額控除の適用なし
(税抜、対象外)
※経過措置として当面の間
図 3 事業者が国外事業者から国内において電気通信利用役務の提供を受けた場合の取扱い
6. おわりに
本改正については、「電気通信利用役務の提供」や「事業者向け電気通信利用役務の提供」といった定義について、実務上の取引に当てはめた場合に必ずしも
明確ではない部分があり、また、「電気通信利用役務の提供」に該当する取引についても複雑な課税関係を判定する必要があります。
実務上の疑問点が多々生じることが予想されますので、ご不明点がある場合にはお早めに弊社までご相談ください。
国外事業者が行う「事業者向け電気通信利用役務の提供」については、その役務の提供を受けた事業者が申告・納税を
行うこととされました(「リバースチャージ方式」)。事業者向け電気通信利用役務の提供とは、具体的には、インターネット
のウェブサイト上への広告の掲載のようにその役務の性質から通常事業者向けであることが客観的に明らかなものなどと
されています(消費税法第 2 条第 1項第 8 号の 4、消費税基本通達 5-8-4)。ただし、経過措置により当面の間、その課税期間の
課税売上割合が 95 %以上、または、簡易課税が適用される課税期間については、「事業者向け電気通信利用役務の提供」は
なかったものとされ、リバースチャージ方式による申告を行う必要はありません(また、その仕入税額控除も行えません)
(消費税法附則第 42 条、第 44 条第 2 項)。
■ 執筆者プロフィール
税理士法人エスネットワークス
タックスチーム マネージャー
樋口 雄介
中央大学大学院経済学研究科修士課程修了。都内大手税理士法人を経て、税理士法人エスネットワークスに
入社。日 系 企 業 を 中 心 と し た 税 務 内 製 化 支 援 業 務 及 び 法 人 申 告 業 務 を 中 心 に、税 務 デューデリジェンス
や税 務 ス ト ラ ク チ ャ リ ン グ 業 務、中 堅・中 小 オ ー ナ ー 企 業 に 対 す る 事 業 承 継 ・相 続 コ ン サ ル テ ィ ン グ
業務等に従事。
お問い合わせはこちら : ml-post @ esnet . co. jp
15
Fly UP