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このページを読む - 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
NCNPの活動
遺伝カウンセリング
NCNPの活動
遺伝医学の研究成果を必要としている方に。
相談者への支援と、セミナーによる他施設への還元。
遺伝カウンセリング室の取り組み
研究倫理
適正な医療研究を行うための
NCNP の取り組み。
倫理委員会
発症前診断の意義と実践
医学研究推進と被験者保護のバランスを
■ 発症前診断とは
■ 第三者の立場で公正に審査する
近年、医療分野における遺伝学的検査は神経・
医療(診断、手術、投薬などの技術)の質や水準を高めるためには、
筋疾患の診断に不可欠となっています。患者さん
医学研究活動が必要です。しかし、医師などの医療スタッフは、そう
が診断されると、未発症のご家族の方も検査を希
した「研究者としての立場」
と同時に、自分の目の前の患者さんを治療・
望されることがあります。未発症者を対象とした遺
ケアするという
「医療従事者としての立場」にあります。この2つの立場
伝学的検査を
『発症前診断 』
と呼びます。
を両立するために、医療スタッフは時に深刻なジレンマに陥ります。例
未発症の方に病気の原因となる遺伝子の変化
えば、自分がベストを尽くして治療したい患者さんに、医学の発展と
が見つかった場合、将来発症するということは分
将来同じ病気で苦しむ患者さんのため、効果が不確かな研究への協
かります。ですが、発症時期や症状の経過などに
ついては具体的には予測出来ないことがほとんどです。
「将来設計の
遺伝カウンセリング室とリーフレット
(見本)
力を求めなくてはいけない場合などがあります。そのような研究を実施
して良いかどうかを判断するのが、医療スタッフでも患者さんでもない、
参考にしたい」
と発症前診断を希望する方もいれば、「先に知ること
第三者的な立場にある「倫理委員会」です。
は不安」という方もいます。
委員には、内部の医療従事者以外に、法律・倫理・一般市民を代表
一般的に、有効な治療法や予防法が確立されていない疾患の発症
する方々を外部から招いています。審査の観点は、研究計画が医学
前診断については、慎重な対応が求められています。
的に認められる内容か、研究協力してくれる被験者の人権(生命、身
体、自発的な協力の気持ちなど)
を守ることができるか、という2点です。
■ NCNP病院の取り組み
研究推進と被験者保護とのバランスをとることが委員会の使命です。
NCNP病院では2009年に発症前診断の実施手順を定め、遺伝カウ
倫理委員会の様子
ンセリング室、神経内科、精神科が連携して対応しています。2009年
4月から2016年3月末までに発症前診断に関する相談を希望した50例
の方が遺伝カウンセリング室を受診し、14例の方が発症前診断を実施
スタッフによる模擬遺伝カウンセリングの場面
臨床試験審査委員会
新しい治療法開発を倫理的に行うために
しました。相談者の背景や価値観は多様で、院内カンファレンスで検
討しながら個々の状況に合わせた支援を行っています。
遺伝医学の発展と共に、発症前診断のニーズの増加が予想されま
■ 患者さんの人権と安全の保護のため
す。NCNP病院では2012年より医療従事者を対象に
『NCNP遺伝カ
有効で安全な新しい治療法(医薬品や医療機器、再生医療等製品
ウンセリングセミナー』
を毎年実施しています。発症前診断を含む当院
など)
を国が承認し広く患者さんが利用できるためには、
「治験」
という
での遺伝カウンセリングの経験を他施設の医療従事者に還元すること
国の承認を得るための試験を行う必要があります。しかし、これらの新
で、より多くの患者さんやご家族の支援につなげたいと考えています。
しい治療法は、有効なのか、安全なのかがまだまだわかっていない
ため、
「治験」の実施に関しては患者さんの人権保護と安全確保が大
遺伝カウンセリングセミナーの様子
切です。この治験が科学的・倫理的に正しく実施できるかを審査す
る委員会が臨床試験審査委員会です。
病 院
◦遺伝カウンセリング室
◦神経内科
◦精神科
担当組織の特色
遺伝カウンセリング室では、遺伝医療の専門職である臨床遺伝専門医
と認定遺伝カウンセラーが遺伝に関する相談に対応しています。遺伝カウ
ンセリングは自由診療として行っています。一部の神経・筋疾患について
の遺伝学的検査は保険収載されており、その患者さんを対象とした検査
前後の遺伝カウンセリングも担当しています。
30
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
用語解説
◦遺伝学的検査
遺伝性疾患
(染色体や遺伝子の変化により生じる
病気)
を診断する目的で行われる遺伝子検査やゲ
ノム構造検査の総称。
◦遺伝カウンセリング
遺伝に関する悩みや不安を抱える患者さんやご家
族に対して遺伝医学的情報を伝え、対話を通して
状況や課題をともに整理し、それぞれの方にとっ
て最善の選択が出来るよう支援すること。
新しい薬などの開発に携わる医師、製薬企業等から独立した第三
者機関で、患者さんの人権保護と安全確保の観点から専門委員(医
師、看護師、薬剤師などの医学専門家)、非専門委員(医学等の専
門知識を有しない人)、外部委員(医療機関と利害関係のない人・一
般の立場の人)で構成されます。患者さんの目線からも公正に審議し
治験実施の厳しい基準(GCP省令)に沿って、治験を実施してよいの
か、治験開始後は安全に倫理的に行われているかを定期的に審査し
ています。このようにして、
「治験」に参加されている患者さんたちの
人権と安全が守られています。
臨床試験審査委員会の様子
NCNP ANNUAL REPORT 2015-2016
31
NCNPの活動
看護活動
NCNPの活動
災害時支援
専門分野の知識や技術を
病院外へも発信。
専門看護室
認知行動療法による
被災された方々へのこころの支援。
災害時こころの情報支援センター
皆様と歩む看護を目指して
避難所の子どもたちのこころを守る
■ 専門看護室の設置
■ 震災時に活用された「子どもにやさしい空間 (CFS)」
NCNPでは2013年4月に、看護部内に専門看護室を設置しました。
災害時には多くの被災者が避難所での生活を余儀なくされます。避
日本看護協会の資格認定制度である専門看護師及び認定看護師が、
難所は体育館や公民館であることが多いのですが、子どもたちのため
組織横断的に活躍し、医療・看護の質の向上等に資することを目的と
のスペースはほとんど確保されていません。そのために子どもたちが遊
しています。
んだり、騒いだりしないようにと親たちは非常に気を遣い、ますますスト
専門看護室では、普段はそれぞれの専門看護分野において活動し
レスが増大します。
ており、その活動範囲は外来から病棟まで多岐にわたります。相談依
定期的なカンファレンス。専門分野を越えて情報を共有している
そこで私たちは日本ユニセフ協会と共同で、
「子どもにやさしい空間
頼があるところに駆けつけ、それぞれの部署の看護師や多職種と協力
(Child Friendly Space; CFS)
というパンフレットを作 成し、災 害
し合いながら、患者さんやご家族へのより良いケアにつながるよう努め
時の子どもの居場所作りの大切さを啓発しています。この中には様々な
ています。
年齢の子どもたちにふさわしい場所の作り方、またそれを運営する方
セーブザチルドレン・ジャパンとの連携による活動
法についての指針が含まれています。実際に熊本震災では国際NGO
■ ケアセミナー・市民公開講座の開催
団体セーブザチルドレン・ジャパンとの連携によりCFSが活用され、多
くの避難所に子どもの居場所が作られ、子どもを預けることのできた親
専門看護室では、これまで、それぞれの専門看護分野の知識や技
たちのストレスも大幅に軽減されました。災害弱者である子どもを守るこ
術を活用し、院内教育を実施してきましたが、2014年度より、院外へ
の情報発信にも取り組み始めました。専門看護師と認定看護師が講
師を務め、医療従事者や介護従事者向けのケアセミナーと市民公開
医療・介護従事者向けのケアセミナーの様子。専門知識を用いて
現場のニーズに応えるテーマの講演・演習を提供している
とは多くの被災者を守ることにつながります。私たちはこれからも、様々
な被災者のニーズに合わせた支援の方法を検討していきます。
講座を開催し、2015年度は106名の参加がありました。講義だけでな
く、実際に体験できる演習なども交えながら、ケア場面にすぐに役立つ
最新の知識や技術、また日常生活に簡単に取り入れることができる健
日本ユニセフ協会と共同で
作成したパンフレット
「子ど
もにやさしい空間」
表紙
「子どもにやさしい空間」本文より。
緊急時に家族と子どもに関わる様々
な職種を表した図
持続エクスポージャー療法
康への取り組みなどを紹介し、大変好評でした。
PTSDの治療を必要な人に届ける
私たちは今後も医療や介護に取り組む多くの皆様に、楽しく学んで
いただきながら、交流が持てる機会を大切にしたいと考えています。
様々なタイプのNPPV
(人工呼吸器)
マスクを実際に装着する演習
■ 効果が認められ保険診療の適応になった治療法
生死に関わるような体験をしたり、その危険に直面したすることによっ
て、悪夢やフラッシュバック、突然の恐怖や動揺が生じることがありま
す。時にはぼんやりとしたり、急に驚いてびくっとすることもあります。
こうした状態が1ヶ月以上続くとPTSDと呼ばれますが、PTSDになっ
ても、周囲のサポートがあれば、半年以内に自然回復することも少な
くありません。しかし全体の3割程度の方が慢性化することが知られて
病棟内の風景
入院について説明をする看護師
病棟内スタッフステーション
います。
研究部員による模擬面接の風景
慢性化したPTSDに対しては、SSRIと呼ばれる抗うつ薬と、トラウ
マに焦点を当てた認知行動療法が有効であることが国際的にも示さ
担当組織の特色
病 院
看護部は、
「 先駆的な看護と患者の心に寄り
添った看護を提供します」
という理念の下、患者
◦看護部
さんの生命の尊厳と権利を尊重し、創造的で科
学的根拠に基づいた看護を実践することや、新
たな看護の情報発信をしていくことなどを基本
方針としています。
32
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
用語解説
◦専門看護師・認定看護師
専門看護師、認定看護師は、日本看護協会の資格認定を取得し
ています。
専門看護室には、精神看護専門看護師、感染管理認定看護師、
摂食・嚥下障害看護認定看護師、皮膚・排泄ケア認定看護師、
慢性呼吸器疾患看護認定看護師、緩和ケア認定看護師、pre慢性
疾患看護専門看護師が所属しています。
れています。なかでも私たちが積極的に導入してきた持続エクスポー
ジャー法と呼ばれる精神療法は、米国の学術会議によって、投薬も含
めてもっとも効果のある、また実証された治療だとされており、日本でも
比較対照試験で効果が証明され、平成28年4月からは保険診療の適
応になりました。治療者の研修指導体制も整備され、今後はより多くの
患者さんにこの治療が届けられるようにいっそう努力をしていきます。
持続エクスポージャーのテキスト、ワークブックなどの書籍
NCNP ANNUAL REPORT 2015-2016
33
NCNPの活動
NCNPの活動
公開活動
国際交流
医療や研究の世界を目指す高校生に向けて
最先端の研究に触れ、体験する場を提供。
世界脳週間
NCNP の研究環境と成果を世界に。
海外の研究者との交流と協力。
海外からの研修生・研究者の受け入れ
熱気溢れる、高校生の脳科学体験
活躍する海外からの研究者たち
■ 医学と社会の課題に取り組む
NCNPは国際的研究機関として、活発な国際交流を行っています。幅
広く海外からの研究者を受け入れ、また、連携大学院や日本学術振興会
などの制度を利用した留学生も在籍しています。
海外からの研究者の出身地は、ヨーロッパやアメリカ、アジアなどにわた
り、2015年度では長期滞在者と短期滞在者を合わせて、15ヶ国(イタリア、
インドネシア、韓国、キルギス、コロンビア、スイス、スペイン、タイ、中国、ドイツ、
最新研究のレクチャーに熱心に聞き入る
NCNPで活躍中の、海外から来た研究者たち
フランス、米国、リトアニア、ルーマニア、ロシア)
にのぼりました。研究内容は、
精神・神経疾患や遺伝性筋疾患の病態研究と臨床研究、さらには自殺予防
や薬物依存症者の社会復帰に関する研究など多岐にわたり、医学のみなら
ず社会的にも重要な課題について精力的に取り組んでいます。
ラボツアーで白衣を着て研究室を見学する高校生たち
最先端の科学技術が利用できる研究環境と、世界的に役立つ国際水
NCNPでは、全世界で行われている
「世界脳週間」キャンペーンに第1
準の研究成果が創出されていることが、外国人研究者にとってのNCNP
回(2000年)
から参加し、若い世代に向けて脳科学の入門から最先端の
の魅力です。
疾病研究第四部に所属するルー 疾病研究第一部に所属するス
マニアから来日した研究者
ペインから来日した研究者
研究に触れられるイベントを開催しています。2013年度からは高校生を
対象に、脳科学に関するレクチャーと研究現場を見学・体験するラボツ
高周波・ハイパーソニックエフェクトを体験
アーを実施しています。2016年は、50名の高校生の参加者を迎えて開
NCNPの活動
催しました。レクチャーでは、
「発達障害」
「腸内細菌」
という新規性の高
連携大学院
いテーマが取り上げられ、高校生視点からの鋭い質問に、講師陣が丁
寧に応えました。その後、自然豊かなNCNPの夏の風景に触れながら、
5つの研究部を巡るラボツアーを行いました。参加した高校生からは「実
連携大学院制度
際に研究を行っている場所を見学し、本当に貴重な体験ができた」
「予
国内7大学との連携協定
想以上に興味深い話だった、驚いた、感動した」
「将来のこと、進路のこ
とを考える良い機会となった」
「今後も体験型のイベントを続けて欲しい」
脳の指紋と呼ばれるABRの波形を観察
などの感想が寄せられました。今後も未来を担う若い世代に向けて、研
■ 職員・学生が相互に学び、研究の場を広げる
究・医療の最先端の現場から情報発信を行っていきます。
NCNPでは、国内7大学と連携協定を締結しており、共同研究の実施、
合同シンポジウム等を通じて、精神・神経疾患等における研究開発の連携
参加校一覧
◦都立昭和高等学校
◦都立戸山高等学校
強化に取り組んでいます。また、大学院より客員教授・准教授を委嘱され
◦都立立川国際中等教育学校
◦都立新宿高等学校
開催プログラム
13:00~13:05 開会の挨拶 神経研究所所長 武田伸一
13:05~13:30 レクチャー 「発達障害の脳を守り、育むための方策:3つのヒント」
精神保健研究所 知的障害研究部 稲垣真澄部長
「腸内細菌と脳の健康」
神経研究所 免疫研究部 山村隆部長
14:10~
ラボツアー
▪自分の脳活動を電気で見る、うごかす(モデル動物開発研究部)
▪ミクロな世界を冒険しよう(病態生化学研究部)
▪聞こえない超高周波音が脳を快適にするハイパーソニック・エフェクト
の体験
(疾病研究第七部)
▪音刺激による脳の指紋を比べてみよう(知的障害研究部)
▪患者血液からのiPS細胞の樹立と骨格筋分化誘導の実際
~難治性筋疾患に対する創薬と再生医療への応用を目指して~
(遺伝子治療研究部・疾病研究第五部)
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大学院との連携・協力により
研究の推進と人材の育成を。
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
たNCNPの職員が大学院の学生の指導にあたったり、研究生の受入等
iPS細胞を実際に見て感動
iPS細 胞を培 養している
ディッシュ
世界脳週間とは
脳科学の科学としての意義と
社会にとっての重要性や科学と
しての意義を一般に啓蒙する
ための世界的なイベントです。
1992 年に「脳週間」として米
国で始まり、2000 年からはユ
ネスコ等の後援を受け「世界脳
週間」となり、同年我が国も高
校生を主な対象として参画し、
NCNPも第1回から参加してい
ます。
の相互交流を実施するなど、優れた専門家の育成も目指しています。
この連携大学院制度により、NCNPのメンバー
(職員等)
も受験して大
学院生になることで、NCNPで最先端の研究を続けながら学位取得を目
山梨大学との合同シンポジウムの様子
差すことが可能です。2015年度には、4名のNCNPメンバーが連携大学
院生として、修士または博士の学位を取得しました。
●連携中の大学院
◦学校法人 早稲田大学(2004年)
(2016年10月現在)
◦国立大学法人 東京農工大学(2014年)
◦国立大学法人 東京医科歯科大学(2006年) ◦学校法人 東邦大学(2016年)
◦国立大学法人 山梨大学(2009年)
◦国立大学法人 千葉大学(2010年)
◦国立大学法人 東京大学(2016年)
東京農工大学との合同シンポジウムの様子
NCNP ANNUAL REPORT 2015-2016
35
NCNPの活動
社会貢献
NCNPの活動
社会貢献
こころの健康を取り戻し
再び社会で活躍するために。
復職支援認知行動療法プログラム
復職を支援するプログラム
■ うつ病等休職者の円滑な職場復帰を支援する
うつ病の患者数は1996年では43.3万人でしたが、2011年では95.8
万人と増加しています。それに伴い、メンタルヘルスの不調による休職
者も増えています(厚労省調べ)。休職者は休職が長期化する不安や
復職への焦りを抱えており、復職に向けたプロセスを支援することが必
要です。
NCNPでは、2015年10月から精神リハビリテーション部と認知行動
療法センターが協力して「復職支援のための認知行動療法プログラム」
地域精神医療の取り組みの一環として
相談の窓口、情報の発信を担う活動。
認知症
(オレンジ)
カフェ
火曜
9:30〜9:45
9:45〜11:15
水曜
①症状評価(うつ・不安)②朝礼(体調や今日の予定の報告)
園芸
ストレッチ
オフィスワーク オフィスワーク
11:15〜11:30
移 動
11:30〜12:30
昼食・休憩
12:30〜13:15
有酸素運動
13:15〜13:30
13:30〜15:00
15:00〜15:15
金曜
課題研究
集団認知行動
療法
ダイアログ
■ 認知症と生きる小さな拠点
オレンジカフェはNCNP内における研究の一環として、横井精神科医師を中
心としたグループが月1回(第3火曜)午後2時から3時30分まで、院内のコーヒー
ショップの一角をお借りして開催しています(そのため参加者全員1人1品以上の
物品購入をお願いしております)。近隣では珍しい医師が常駐するカフェで、進
移 動
書 道
認知症の学びや相談を気軽に
アサーション
ACT
帰りのミーティング
(本日の活動報告)
復職支援プログラムの一例
行は、時にミニレクチャーあり、時には自由会話だけで1時間半が過ぎたりと、参
月に一度カフェに立つのぼりが目印
加者の皆様のニーズに柔軟に合わせています。カフェを通し医師は通常診療で
は時間の関係でなかなか聞き取りづらい「認知症と共に生きる生活」
を聞くことがで
きます。認知症研究に携わるスタッフや他の参加者の方々
(認知症患者・家族だ
を開始しました。対象は、うつ病性障害、不安症、適応障害で休職
けではなく認知症の医療介護などに関わる仕事をされている方)
との幅広い意見・
中の方です。復職準備性の向上や復職後の再発予防を目的に、週3
経験の交換は毎回とても刺激的かつ勉強になるものです。一方「きれいなカフェで
回の通所型デイケアで実施しています。特徴は、①認知行動療法を
人と話をして時間を過ごす」
ということに喜びを感じるといった声も頂戴しています。
中心としたプログラム、②うつ病等の症状や復職準備性の客観的評
日頃外来でお伝えしている
「認知症であるないに関係なく、楽しい生活を送ること
価、③復職コーディネート、が挙げられます。コーディネート面談では、
が一番大切」な楽しい生活の一部として利用していただければと思います。オー
本人や家族、産業保健スタッフや人事担当者、医療スタッフが集まり、
プンなスペースのオープンなオレンジカフェに、ぜひお気軽にお越しください。
カフェの参加者と語り合う横井 優磨精神科医師
復職に向けた調整を行うことでサポート体制を築きます。
申し込み方法についてはNCNPのHPをご覧ください。
http://www.ncnp.go.jp/hospital/sd/seishin/reha03.html
NCNPの活動
産学官連携
認知行動療法研修・セミナー
医療従事者のための認知行動療法専門研修
■ 疾患に応じた、高度な技能を身につける
センターが保有する優れた発明や技術を
広く社会に生かすための取り組み。
産学官連携活動の推進
研究成果を社会へ
NCNPでは、疾患に応じた認知行動療法の研修プログラムを提供し
ております。これらの研修は、医療等の臨床現場において活躍されて
■ 研究の特許出願等を支援
いる医療従事者のみなさまを対象としており、より高度な認知行動療
NCNPでは、職員の研究成果を知的財産化し産業界で有効に活用できるよ
法の技能を身につけていただくために実施しております。NCNPで実
うに、研究の早い段階から知的財産活用マネージャーらが相談にのり、研究の
施する研修の特徴は、そのほとんどが、数年にわたる臨床研究の経
進め方や発表方法、特許出願のタイミング等についてアドバイスを行っています。
験や基盤をもとに構築したプログラムであるという点です。不安症、う
つ病、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、複雑性悲嘆などに対
する認知行動療法の研修を行っています。
研究成果がある程度取りまとまった段階で、職務発明審査委員会にて審査を行
臨床の現場に携わる方に役立つ研修
い、特許出願を行うのが適切かどうかの判断を行います。
認知行動療法はマンツーマンでのきめ細やかな臨床指導の継続を通
■ 実用化に向けて
して初めて適切に実施され、その臨床技能が身につきます。そのため、
NCNP独自に研究を実施するだけでなく、企業や大学、他の機関等から、技
研修で身につけられる臨床技能には限界がありますが、NCNPの研修
術・ノウハウや研究費の提供を受けるなど、さまざまな連携を行い研究成果の実
は、その内容をなるべく実際の臨床場面に近づけ、そこで活かしやす
用化を目指しています。2015年度の企業連携のトピックスとしては、一方向弁を
いように構成しております。例えば、実際に体験した事例をもとに参加
利用した最大強制吸気量(Lung insufflation capacity : LIC)
による呼吸理学
者同士がロールプレイを行って、様々な認知行動療法の実施法を練習
療法のための新しいトレーニング機器について連携先企業と共同出願を行いまし
することで、実施法の理解だけでなく、臨床実践を振り返る機会を設
た。この呼吸理学療法のための新しいトレーニング機器が「LIC TRAINER(エ
けております。
36
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
研修では参加者同士がロールプレイを行い、実践に近づける
ルアイシートレーナー)」の名称で、連携先の企業より2016年9月に発売されました。
職務発明審査委員会の様子
NCNPで開発され、販売された機器
「LIC TRAINER
(エル
アイシートレーナー)
」
NCNP ANNUAL REPORT 2015-2016
37
NCNPの活動
人材育成
各部門の研究実績を生かした様々なセミナーで
医療者・研究者の育成と臨床研究の充実を目指します。
TMCの臨床研究入門講座
第54・55回 筋病理セミナー
臨床研究の実践、発表などのスキルを磨く
ハンズオン形式で若手医師に実技指導
■ 新たなセミナーの提供も
■ これまでに 600 人以上の受講者
TMC(トランスレーショナル・メディカルセンター)では臨床
筋疾患は専門家が少ないために、医師が診断に必須の筋生検
研究についてのノウハウを学べる様々な場を提供しています。
や筋病理の知識や技術を学ぶ機会は限られています。このような
NCNPの職員以外にも公開している「臨床研究入門講座ワー
状況を踏まえて、全国の若手医師に対して筋生検と筋病理に関す
クショップ」では、小グループの演習やピアレビューも取り入れ、
る知識や技術を提供すべく、筋病理セミナーを毎年夏に2回開催し
漠然とした臨床上の疑問を研究計画に変換する過程を学び
ています。セミナーは5日間連続で開催され、午前は講義、午後
ます。「若手育成カンファレンス」では若手研究者のディスカッ
は実技指導と実習が行われます。このように一週間にわたって実
ションを通し、プレゼンテーション・スキルの向上を目指します。
技指導を行うような筋病理セミナーは世界的にも類を見ません。そ
また、2014年度より
「臨床研究に携わる人のための生物統計
の充実した内容は大変好評を博し、例年
講座」、2016年度より初学者向けに「ゼロからわかる! 統計
外部からの応募倍率は7倍を超えるまでに
基礎セミナー」を立ち上げ、臨床研究を正しく実施するための
なっています。今年までの55回の開催でセ
統計学的な考え方を啓発しています。さらに、英語論文の発
ミナーを受講した医師は既に600名を越え
信促進のためのセミナーや、ライティング技能向上を目的とし
た実技演習の枠組みの構築などにも取り組んでいます。
「臨床研究入門講座ワークショップ」
は医療や公衆衛生の現場で活躍する次世代
研究者に、出身校や現所属等に関係なく、臨床研究を学ぶきっかけとなる場を
提供する教育研修プログラム
講義をする神経研究所 疾病研究第一部 西野一三部長
ています。これらの医師がセミナーで学ん
だ知識と技術を活かして臨床の最前線で
活躍しており、日本の筋疾患医療の水準向
上に大きな役割を果たしています。
筋病理セミナー講義風景
筋病理標本作製実習風景
第12回 神経内科短期臨床研修セミナー
知識を吸収し、研究現場に触れる
■ 全国の若手神経内科医が参加
臨床研究入門講座で挨拶する和田圭司TMCセンター長
次世代の臨床研究者を育成する
「若手臨床研究グループ」「若手育成カンファレンス」
による成果発表の様子
NCNP病院神経内科では、第12回神経内科短期
●神経内科短期臨床研究プログラムの例
●1日目
プに分かれての選択実習、ハンズオン
(実習)、病
8:45 オリエンテーション
9:00 神経内科概論
10:10 小脳失調症
11:05 神経病理
11:50 昼食
(研究所見学※1)
13:35 不随意運動のみかた
14:35 選択実習※2
15:35 診察手技と病棟見学
17:30 クリニカルカンファレンス
19:00 懇親会
NCNPでは、小児神経専門医取得を目指す
棟回診、クリニカルカンファレンス、研究所見学など
●2日目
若手小児科医を対象にNCNP小児神経セミナー
バラエティに富んだ濃密なプログラムであり、参加者
を毎年夏に開催しています。小児の神経学的
の多くから、
「非常に充実した内容であった」
「もっと
診察法、てんかん・筋疾患・発達障害などの診
たくさん話を聞きたかった」
という感想をいただきまし
断および治療法、不随意運動の診かた、頭部
た。また、初日の懇親会では、参加者とスタッフ・レ
MRI画像の読み方など、すぐ使える講義・実習
ジデントが活発に交流し、大いに盛り上がりました。
を3日間にわたり行っています。2016年で22回目
セミナー終了後の感想として、
「将来NCNP神経内
の開催となりました。受講者の多くが小児神経
科で学んでみたいと思いました」
という感想を多数の
臨床研修セミナーを開催し、全国から30名の若手神
経内科医が参加しました。このセミナーは、神経内
第22回 NCNP小児神経セミナー
科のスタッフが中心となり、他部門の先生方のご協
力のもとに行われています。参加者は診療に役立つ
歴史ある小児神経セミナー
実践的な知識を吸収するとともに、疾患研究の現場
にも触れることができます。全体講義と、サブグルー
■ 若手小児科医を対象に毎夏開催
専門医となって全国で大活躍しています。
38
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
小児神経セミナーでの実習風景
小児神経セミナー講義風景
参加者が寄せてくれたのが印象的でした。
8:00 レジデント勉強会
8:55 電気生理
(講義とハンズオン)
10:40 パーキンソン病と関連疾患
11:35 多発性硬化症と
視神経脊髄炎
12:20 昼食
(当院での研修の紹介)
13:00 筋疾患
14:00 選択実習2※3
15:00、認知症、プリオン病
15:45 アンケート終了後、解散
※1 研究所見学
①神経変性疾患
②遺伝子疾患
③免疫疾患
④神経画像から1つ選択
※2 実習1
①てんかんと脳波
②神経画像
③臨床研究から1つ選択
※3 実習2
①嚥下評価
②ボツリヌス毒素治療
③神経筋疾患における
呼吸器療法から1つ選択
ハンズオン
(実習)
の様子
NCNP ANNUAL REPORT 2015-2016
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NCNPの活動
広報活動
報道メディアに向けて
脳とこころ、難治性疾患の最新医療・研究活動を
幅広く知っていただくための情報発信。
報道メディアに向けて積極的な情報発信の継続強化を図っています。最新のタイム
リーなプレスリリース配信を行うほか、
「NCNPメディア塾」を通じて NCNP の研究
者・医師たちとジャーナリストの交流および対話を深めています。
重大な他害行為を行った
精神障害者に対する医療の実情
パーキンソン病と睡眠の意外な関係
プレスリリース・記者会見
むら た
み
ほ
就労者の生活を回復させる
~認知行動療法で復職支援~
ひ ら ばやし な お つ ぐ
村田美穂 NCNP理事・病院長
ほ り こ し まさる
平 林 直次 病院 第2精神診療部長
堀越 勝 認知行動療法センター長
た じま み ゆき
田島美幸
■ 医療・研究活動の最新の情報を発信
認知行動療法センター
臨床技術開発室長も登壇
2015年度以降、29本のプレスリリースを実施しています。
( 2016年10月現在)
第3回 NCNPメディア塾
ジャーナリストとの交流および対話を深化
希少疾患の取り組みが
臨床開発にイノベーションを引き起こす
たけ だ しんいち
武田伸一 神経研究所長
皆様に向けて
希少疾患の取り組みが
臨床開発にイノベーションを引き起こす
なかむらはるまさ
中村治雅 TMC臨床研究支援部臨床研究支援室長
熱気ある会場の様子
NCNP の医療や研究についての情報を、出版物・ホームページや動画・ソーシャルメディア
などを媒体にし、幅広くわかりやすくタイムリーにお伝えできるよう心がけています。
広報出版物
■ 写真と記事で知る NCNP
施設見学プログラムの様子
「患者に始まり患者に戻る診断システム」
記者の方に施設の案内をする後藤雄一 メディカル・ゲノムセンター
長
(写真奥)
NCNPでは以下の広報出版物を制作し、WEB公開も行っています。
( 日本語版)
●NCNP ANNUAL REPORT(センター年報)
NCNPの最新の研究成果・活動を写真と記事で見える化した冊子。今号で4号目になります。
●NCNPパンフレット(日本語版、 英語版)
国民の皆様と世界に向けて、NCNPのミッションや組織を知っていただくために作成しています。
●NCNP 病院パンフレット
NCNP病院を紹介するパンフレットです。 薬物事件報道の倫理を考える~断罪か、啓発か~
●NCNP 病院ニュース(年2~3回発行)
まつもととしひこ
松本俊彦 精神保健研究所 薬物依存研究部長
患者さんやそのご家族、また医療関係の方々などに向けて、NCNP病院の活動を紹介しています。
●NCNP 病院医療連携ニュース(年数回発行)
NCNPの第一線の研究者・医師たちとジャーナリストの方々が熱く交
連携医療機関など医療関係者の方々にNCNP病院の活動を紹介しています。
流する場「第3回NCNPメディア塾」を実施致しました。第2回の構成を
継承し、本年度もNCNPを会場として研究・医療施設の見学を組み込
み、立体的な情報交換の場の創造を目指しました。NCNPメディア塾は
NIH(米国国立衛生研究所)の活動をモデルとして2014年度よりスタート
認知症有病率増加をくい止める
~健常者レジストリから謎を解き明かす~
まつ だ ひろ し
松田博史 脳病態統合イメージングセンター長
WEB での広報情報発信
■ 多くの方に向けて、タイムリーな情報発信
しており、2016年度は8月26日に1日集中コースとして開催しました。講
NCNPのニュースや研究成果・セミナーの案内などの情報を、よ
義では、社会的な関心が高い薬物依存の報道に関する意見交換や認
り多くの方々に素早くお届けするため、WEBからの情報発信も積
知症の予防と治療への取り組み、重大な他害行為を行った精神障害者
極的に行っています。ホームページのトップページに新たにスライド
に対する医療の実態や、メンタルヘルスの問題に対する認知行動療法
ショーを導入し、最新のプレスリリースや市民公開講座など、皆様
による復職支援、臨床開発にイノベーションを起こす希少疾患への取り
にお伝えしたい情報が一目でわかるように改善しました。ホームペー
組みの意義など、多彩な内容を組みこみました。施設見学プログラムでは、
ジ内ではNCNPの職員が執筆、編集、監修した書籍の紹介をして
(1)
メディカル・ゲノムセンター後藤雄一センター長によるバイオリソース
おり、更にコンテンツを充実させています。また、Twitterなどのソー
の紹介や(2)脳病態統合イメージングセンター松田博史センター長による
シャルメディアからも情報を発信しています。さらに、YouTube上
認知症画像研究の現場を披露するなど、最終的に17社33名の方にご
認知症を「治す」とは?
参加頂きました。
横井優磨 病院 第一精神診療部 医員
40
National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)
よこ い ゆう ま
NCNPの広報出版物
NCNPのホームページ http://www.ncnp.go.jp
書籍紹介ページ
にNCNPchannelを設け、病院紹介動画や市民公開講座の講演映
像などの配信もしています。
NCNPのTwitter ページ
YouTube上のNCNPchannel
NCNP ANNUAL REPORT 2015-2016
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