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1 【高齢化社会のヘルスケアプロジェクト】 最終報告書 Ⅰ プロジェクトの
【高齢化社会のヘルスケアプロジェクト】 最終報告書 Ⅰ プロジェクトの背景 本プロジェクトのテーマである「高齢化社会のヘルスケア問題の解決」において逗子市を研究対象 フィールドとした理由としては、 ① 65歳以上の高齢者が全人口に占める割合が 26.45%と、神奈川県の市の中では もっとも高いこと。 ② 今後の都市部での高齢化問題に大きな影響を与える要因になるであろう、 地域とのつながりが希薄な「男性×ホワイトカラー層」の比率が高い。 以上の 2 点からヘルスケア・ソリューション研究では首都圏の主要都市に先駆けて超高齢化社会 に突入する逗子市をモデルとした、「地域でのヘルスケア問題の解決」に向けた研究を推進するこ ととした。 その手法としては、主に市民活動レベルからのソリューション提供を推進している。 その理由は、 ・市民活動に積極的な市民特性や市民に意識面、知的面で高いレベルの人材が多い ・逗子には多くの市民団体、NPO 団体が活動しており、横の連携を構築することで地域の 問題解決に際して十分な力を持ちうる。 からである。 自治体・市民・民間企業による「協働による地域づくり」が常態化しつつある中で、今後はより一層 市民の自主性・責任・義務が問われるであろう。 1 そして、その範囲は、医療、福祉といった市民自身の健康や安心にも及ぶものである。 今後の都市部における「高齢化時代におけるヘルスケア問題」に対しては、 市民間の連携、情報の発信と共有、地域問題解決の主体的担い手など、市民活動による問題 解決の仕組みづくりが注目されると考えている。 Ⅱ 本プロジェクトの内容 (1) 「逗子はつらつ会」の設立と地域の問題解決に向けた活動 「逗子市民のはつらつな人生の実現に向けた実践的活動」をコンセプトとした、 逗子市民との活動組織体「逗子はつらつ会」を設立し、逗子市の高齢化を原因とした様々な 地域問題の解決に向けた活動を実施。 2010 年 7 月には特定非営利活動法人となり、責任ある組織体として活動を行っている。 【逗子はつらつ会の登録者属性】 ※2011 年 1 月末現在 ■人数 12 名(男性 9 名/女性 3 名) ■背景 ・老人クラブ連合会役員 ・医療、介護福祉に関する市民活動家 ・民政委員 ・某最大手電気メーカーの社員 ・地場企業の社長 ・大学院生 と参会者の持つ背景は様々。 【活動内容】 およそ 2 週間に一回の頻度で定例会議を開催し、 ・医療、福祉に関する勉強会 ・逗子はつらつ会としての地域問題解決に向けた具体的活動 を行っている。下記にこの 2 年間の活動について簡潔にまとめている。 ■2009 年 6 月 22 日 キックオフ会議(14 名) はつらつ会の目的、到達目標、今後の活動内容について説明。 参加者の同意をいただく。 ■2009 年 7 月 13 日 第 1 回定例会議(14 名) ・逗子市の医療・福祉に関する課題抽出。KJ 法を活用。 ・グループディスカッション ・発表 2 ■2009 年 8 月 3 日 第 2 回定例会議(11 名) ・その地域の特性にあった保健~医療~介護~福祉の連携システムである 「地域包括ケア」の概念に関する説明 ■2009 年 9 月 14 日 第 3 回定例会議(11 名) ・地域包括ケアを構成する要素の整理 ・市民向けの講演会開催の提案 ■2009 年 9 月 28 日 第 4 回定例会議(11 名) ・高齢者医療・福祉の箱モノに関する情報共有 ・逗子市社会福祉協議会からの独居老人を見守るための仕組みに関する協議 ■2009 年 10 月 13 日 第 5 回定例会議(10 名) ・宮崎県のグループホーム「かあさんの家」視察報告 ■2009 年 10 月 26 日 第 6 回定例会議(10 名) ・はつらつ会の今後のビジョンについて協議 ■2009 年 11 月 9 日 第 7 回定例会議(13 名) ・今後の活動スケジュールの策定 ・はつらつ会の会則に関する協議 ・市民向けはつらつ講演会のコンテンツについて協議 ■2009 年 11 月 24 日 第 8 回定例会議(10 名) ・逗子市民を対象とした医療・福祉に関する調査の提案 ■2009 年 12 月 7 日 第 9 回定例会議(11 名) ・3 月の講演会に関する具体的コンテンツの検討 ・逗子市民向け調査の骨子に関する協議 ・講演会および調査の役割分担 ■2009 年 12 月 21 日 第 10 回定例会議(12 名) ・逗子市民向け調査票の素案および調査手法に関する協議 ■2010 年 1 月 12 日 第 11 回定例会議(11 名) ・逗子市民向け調査票確定版の内容確認 ・担当ごとの調査票必要部数の決め ・講演会の PR ツールのデザイン確認 ・4 月からの市民講座開設にあたっての大まかなスケジュールおよび名称 ■2010 年 1 月 25 日 第 12 回定例会議(11 名) ・福祉、介護等のサービス提供者向けの調査素案に関する協議 ・講演会の PR 用チラシに関する必要部数決め ■2010 年 2 月 8 日 第 13 回定例会議(11 名) ・講演会の日程変更のお知らせ。詳細のタイムスケジュールに関する協議 ・NPO 申請にあたっての定款および事業プランに関する提案 3 ■2010 年 2 月 22 日 第 14 回定例会議(12 名) ・逗子ヘルスケアナビに関する開発手順の流れ説明 ・逗子市民向け講座の開設に向けたブレスト ・NPO 申請書類の確認および審議~書類への署名等 ■2010 年 3 月 8 日 第 15 回定例会議(12 名) ・市民向け講演会の当日資料、各担当の確認 ■2010 年 3 月 23 日 第 16 回定例会議(10 名) ・市民向け講演会参加者へのフォローコンテンツと今後に向けての対策 ・市民講座企画に関する協議 ・「コミュニティで創る新しい高齢化社会のデザイン」への研究公募に関する ブレスト ■2010 年 4 月 5 日 第 17 回定例会議(12 名) ・逗子市民向け調査結果の報告書説明および活用方法の検討 ・市民講座の全体プランおよびプロモーション方法に関しての協議 ・2010 年度の活動計画 ■2010 年 5 月 10 日 第 18 回定例会議(12 名) ・第 2 回以降の市民講座のコンテンツ/集客方法に関する再検討 ・「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」への研究公募に関する の概要説明と企画ブレスト ■2010 年 5 月 24 日 第 18 回定例会議(11 名) ・「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」への研究公募に関する の企画案に関する最終詰め ■2010 年 5 月 24 日 第 19 回定例会議(11 名) ・「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」への研究公募に関する の企画案に関する最終詰め ■2010 年 6 月 7 日 第 20 回定例会議(10 名) ・逗子ヘルスケアナビに関するサービス機能の設計プラン協議 ■2010 年 6 月 26 日 第 21 回定例会議(9 名) ・逗子市桜山地域における多世代交流企画の検討 ・逗子ヘルスケアナビの開発スケジュールの確認 ■2010 年 7 月 26 日 第 22 回定例会議(11 名) ・桜山 9 丁目 縁日による旧住民・新住民のコミュニティ形成支援企画 ・逗子中心部(商店街)コミュニティ作り企画 ・遊休不動産の利用した交流サロン兼はつらつ会の拠点づくりに関して 4 ■2010 年 8 月 10 日 第 23 回定例会議(11 名) ・桜山 9 丁目、逗子中心街でのコミュニティづくり計画の進捗 ・須賀川市における市民病院と青年商工会議所による地域医療施策の事例紹介 ・逗子ヘルスケアナビの進捗報告 ■2010 年 8 月 21 日 第 24 回定例会議(7 名) ・逗子市中心街での縁日企画運営サポート ■2010 年 9 月 13 日 第 25 回定例会議(11 名) ・桜山 9 丁目 の縁日企画詰め ・逗子ヘルスケアナビの進捗報告 ■2010 年 9 月 27 日 第 26 回定例会議(8 名) ・逗子ヘルスケアナビ改め「逗子はつらつネット」の進捗報告 ■2010 年 10 月 18 日 第 27 回定例会議(11 名) ・逗子はつらつ会の今後の活動領域と資金調達の方法について 総務省の地域と IT のプロジェクト「地域雇用創造ICT絆プロジェクト」 公益財団法人医療助成 「在宅医療研究に関する助成」 ■2010 年 11 月 1 日 第 28 回定例会議(8 名) ・総務省の地域と IT のプロジェクト「地域雇用創造ICT絆プロジェクト」 ・公益財団法人医療助成 「在宅医療研究に関する助成」 の企画協議 ■2010 年 11 月 1 日 第 29 回定例会議(8 名) ・公益財団法人医療助成 「在宅医療研究に関する助成」の協議 ・三浦半島地域に住むホワイトカラー男性を対象とした地域活動と健康寿命に関する 調査の企画検討 ■2010 年 12 月 13 日 第 30 回定例会議(10 名) ・山本メディカルセンター山本真理子医師との「逗子市における健康維持・予防 促進」を実現する医療機関と市民活動団体の協働スキームに関する懇談会 ■2011 年 1 月 11 日 第 31 回定例会議(8 名) ・「逗子市における健康維持・予防促進」を実現する医療機関と市民活動団体の 協働スキームに具体的プランの検討 【成果】 (1) 逗子市内において地域のヘルスケア問題に取り組む活動体としての認知 ・市民向け講座の実施 ・逗子はつらつネットに掲載する医療、福祉施設の情報収集活動 ・逗子中心地区、桜山地区でのコミュニティづくりに向けたイベント開催など の活動を通して、「逗子はつらつ会」に対する認知が上がってきている。 5 地域医療を支える医師とのネットワーク形成に向けた動きが活発化してきたことや、市民 の中からも新たに参加を希望方も出てきており、今後は情報発信レベルで留まっていた 活動も、問題解決に向けたより実践的活動が可能となるであろう。 (2) 都市部の高齢化問題解決に際し、市民(団体)活動のひとつの方向性を確立しつつある 本プロジェクトにおいては、都市部の高齢者問題の起因のひとつである「ホワイトカラー 男性層における地域との希薄な関係性」に焦点を定め、この層の“健康寿命の延伸”と いうコンセプトのもと ・地域内での生きがいづくりとネットワーク(コミュニティ)形成支援 ・地域問題解決の担い手としての社会資源化 を実現するスキームを検討してきた。 これまでの経緯から、地域ポータルサイトとしての「逗子はつらつネット」を基盤とした、 市民双方向の地域活動・ボランティア支援事業として方向性を確定。 ■社会技術研究開発事業「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」案件にて 申請した事業スキーム (2010 年 6 月時点) (一年目) 現役ホワイトカラー世代のニーズ検証・接点機会づくりと受皿となる地域コミュニティ の強化 6 (二年目) コミュニティのネットワーク化と地域の問題解決に対する連携活動 (三年目) 地域コミュニティ活動の事業化 7 ■逗子はつらつ会の事業スキーム(2010 年 12 月時点) ■地域医療機関とのネットワークによる市民の健康増進プログラム素案(2011 年 1 月時点) 8 【今後の課題】 事業体としての持続可能性に向けた資金面の早期自立 逗子市での認知を得て、活動する市民の数も増えつつある現在において、 逗子はつらつ会の活動に関する継続へのニーズは高い。 しかし、今後も逗子市におけるヘルスケア問題の解決にあたっていくには、 ・前述した事業体としての仕組み確立や情報インフラへの投資 ・事業化に向けて中心的活動を行う市民スタッフへの対価支払い など資金面での問題は残る。 今後持続的・発展的活動をしていくにあたって、下記の考え方に基づき、まずは補助金・ 助成金によって仕組み・インフラ整備に投資をしていく中で事業化を進めていく方向で 考えたい。 (2) 約 1,200 名の逗子市民対象とした医療・福祉に関するアンケート調査 【背景】 2010 年度の主な活動と位置付けていた、市民向け講座の実施に向けたコンテンツの調 達。 逗子市民の医療・福祉に関する問題意識の抽出や地域活動への参加状況、個々の 地域問題の抽出を行っている。 9 【内容】 ■調査対象者:逗子在住の 20 歳以上の男女 ■調査方法 ① 逗子はつらつ会参加メンバーによる近隣在住者への留め置き調査。 高齢者を中心に 330 部回収。 ② レンタルショップ TSUTAYA に会員登録し、かつ調査に関する許諾をいただいてい る逗子市民 3000 人への郵送調査。20 歳~60 歳代を中心に 900 部回収 ■調査項目 ※調査票は別途添付。 ・逗子市民の医療機関の利用状況 ・医療機関を選定する基準 ・逗子の医療体制に関する満足度とその理由 ・地域福祉に関する参加状況 ・逗子の地域福祉の問題点 ・高齢者医療、福祉に関する満足度とその理由 【調査結果 抜粋版】 (1)逗子市の医療について 【ポイント】 ・約 7 割の回答者が、逗子市の医療体制に不満を感じている。 ・逗子市の中心部に住む回答者と、周辺部に住む回答者では、逗子市の医療 体制に対する満足度が異なっている。 ・30 代~40 代の現役子育て世代と、60 代以上の高齢者世代では、医療ニーズ が異なっている。 図 1 医 療 機 関 の利 用 頻 度 10 図1にみるように、逗子市では、回答者のおよそ 4 割が定期的に(1 ヶ月に 1 度以上の頻度で)医 療機関を利用しています。しかし、逗子市の医療体制に対する市民の満足度は、決して高くありま せん。 図2に示されているように、逗子市の医療体制に対する満足度を4段階で尋ねたところ、回答者 のおよそ7割にあたる人が「とても不満である」または「やや不満である」と回答しています。このよう に逗子市の医療体制に不満を感じている人に対し、その理由を尋ねた結果が図3です。 図 2 逗 子 市 の医 療 体 制 に対 す る満 足 度 図 3 逗 子 市 の医 療 体 制 に不 満 を感 じる理 由 不満の理由として最も回答が多かった選択肢は「複数の診療科があり、病床数も多い大きな病院 がない」で、回答者の約8割が、逗子市に総合病院がないことを、逗子市の医療の問題だと見なし ていることが分かります。この総合病院の必要性については(3)の部分でより詳しく分析していま 11 す。 しかし、同じ逗子市民であっても、居住地域や年齢の違いによって、逗子市の医療に対して感じ ている問題意識には濃淡があります。 表 1 居住地域×医療満足度 表1にみられるように、山の根・小坪・沼間地区では、逗子市の医療体制に不満を感じる回答者 の割合が高く、逆に新宿・久木地区では、やや満足を感じている回答者の割合が高くなっていま す。 居住地域によって医療体制に対する満足度が異なることの要因としては、実際に利用している医 療機関の所在地(受診地域)の地域差が考えられます。 表 2 居住地域×受診地域 表2は、定期的に医療機関を利用している回答者を対象に、居住地域ごとに受診地域を集計し たものです。これによると、鎌倉が近い小坪地区、横須賀が近い沼間地区では、それぞれ鎌倉・横 須賀地域にある医療機関を利用する人の割合が、他の地区に比べて高くなっています。 そして、表3に示されているように、受診地域が逗子市外である人は、逗子市内の医療機関を利 用する人よりも、逗子市の医療に対する不満が高まる傾向にあります。表1で小坪地区・沼間地区 の回答者に「とても不満である」人が多いのは、これらの地区の在住者にとって、逗子市内に利用 しやすい医療機関が存在しないことが、ひとつの要因であると言えるでしょう。 12 表 3 受診地域×医療満足度 居住地域によって医療満足度が異なる要因として、もうひとつ考えられるのは、普段から健康相 談にのってくれるかかりつけ医、ホームドクターの有無です。 表4にみられるように、居住地域によって、かかりつけ医がいる人の多い地域とそうでない地域が 分かれています。逗子市の中では、山の根地区と新宿地区の回答者に、かかりつけ医がいる人の 割合が比較的高いようです。 表 4 居 住 地 域 × かかりつ け医 の有 無 回答者全体の傾向でみると、表5のように、かかりつけ医のいる人は医療満足度が高くなり、かか りつけ医がいない人はその逆の傾向があります。 新宿地区では、かかりつけ医のいる回答者の多さが、医療満足度が比較的高くなっている要因 のひとつだと言えるでしょう。しかし山の根地区では、かかりつけ医がいる人の割合は高いのです が、必ずしも医療満足度が高くなってはいません。他にも要因があるようです。 13 表 5 か か りつ け医 の 有 無 × 医 療 満 足 度 居住地域だけでなく、回答者の年齢によっても、医療満足度に差が生じています。 具体的には、表6のように、年齢が 30 代~40 代の子育て世代と 60 代の前期高齢者世代に、医 療体制を不満に感じる回答者の割合が高くなっています。20 代の若い世代では、逆に医療満足 度が高くなっています。 表 6 年齢×医療満足度 表 7 年 齢 × 医 療 体 制 の不 満 点 これらの年齢層ごとに、逗子市の医療体制のどこに不満を感じているかを集計すると、表7のよう に、はっきりとした差が現われます。 年齢が 30 代~40 代の子育て世代では、「小児科・産婦人科が少ない」ことを問題視する回答者 14 の割合が高くなり、60 代や 70 代以上の人では、「往診・在宅医療が少ない」「大きな病院とかかりつ け医の間で連携が不十分」といったことが問題視されています。 その他、「大きな病院がない」ことは、どの年齢層でもおよそ 8 割の回答者が問題視していたり、全 体的に医療体制に対する不満が少ない 20 代の回答者も「医療に関する情報提供が少ない」ことを 重要視していたりする傾向がみられました。 このように、居住地域や年齢層によって、医療に対するニーズは大きく異なっています。この現状 を踏まえたうえで、逗子市の望ましい医療体制のあり方を考えていく必要があると言えるでしょう。 (2)逗子市の福祉について 【ポイント】 ・逗子市の福祉の問題では、高齢者福祉を重視する人が多い。しかし、その問題意識に も、地域や年齢によって意識差がある。 ・30 代~40 代の若い世代の問題関心は、子育て環境の整備に向いており、高齢者福祉に 関心を持つ回答者の割合が高まってくるのは、50 代以降になってからである。 世代による問題意識の差が大きい。 ・逗子市の高齢者福祉に対しては、 「介護が必要になった時、どこに行ってよいか分から ない」などの、情報提供不足を指摘する回答者が多かった。 図 4 自 分 の住 む 地 域 の問 題 点 逗子市の様々な地域福祉について、回答者に自分の住む地域の問題点をたずね、集計したも のが図4です。 全体の回答としては、「一人暮らしの高齢者や障害者のこと」を地域の問題と考える人の割合が 最も高いという結果でした。しかし、これらの問題意識にも、表8にみるように、居住地域や年齢によ る差があります。 15 表 8 居 住 地 域 × 自 分 の住 む 地 域 の問 題 点 全体回答で最も回答割合が高かった「一人暮らしの高齢者や障害者のこと」をはじめ、高齢者福 祉や障害者福祉が自分の住む地域の問題だとみなしている回答者の割合が高いのは、山の根地 区・小坪地区の2地域でした。この2地域では、「住民同士のまとまりや助け合いが乏しい」と回答す る人の割合が低いことも特徴です。 山の根・小坪の2地域と対照的なのが新宿地区と沼間地区で、この2地域では、「一人暮らしの高 齢者や障害者のこと」を問題視する人の割合が低い代わりに、「住民同士のまとまりや助け合いが 乏しい」と回答する人の割合が高くなっています。 その他、逗子・久木・桜山地区では、「子供の遊び場がないこと」を問題視する人の割合が比較 的高く、池子地区では「自治会の役員のなり手がいない」「ごみ処理や駐車、騒音など」の回答率 が高くなっていました。 また、表 10 にみるように、地域福祉に関する問題意識には、回答者の年齢層によって、はっきりと した差が現われています。 20 代の回答者には、問題が「特にない」とする人の割合が高いですが、30 代~40 代の回答者に なると、「子供の遊び場がないこと」を問題視する人の割合が、他の年齢層よりもかなり高くなりま す。 さらに年齢を重ねて 50 代の回答者になると、「くらしや福祉について相談できる人がいない」こと や「リタイア後の生きがいづくり」に関心を持つ人の割合が高まります。60 代や 70 代以上の回答者 では、約 4 割の回答者が、高齢者福祉に関する問題点を強く意識するようになっていました。 多くの回答者は、自分のライフステージに沿った身近な問題を問題視しており、その問題意識に は世代差が大きく存在しています。 逆にいえば、多様な世代がお互いの問題意識について話し合うことがあれば、高齢者福祉につ いてもっと早い年齢で興味を持ったり、子育て環境の整備に高齢者が貢献したりすることも可能に なるのではないでしょうか。 16 表 9 年 齢 × 自 分 の住 む 地 域 の問 題 点 表 11 は、逗子市の介護や高齢者福祉について不満を持つ人に、その不満点を自由記述で尋ね た質問に関して、寄せられた回答をいくつかのパターンに分類して集計したものです。 ここでは、「介護が必要になった時、どこに行ってよいか分からない」などの、情報提供不足を指 摘する回答と、「介護施設が不足している」などの、施設不足を指摘する回答が多い傾向にありま した。特に 30 代~40 代の回答者で、高齢者福祉に関する情報不足を不満に思う人の割合が高く なっています。 表 10 年 齢 × 高 齢 者 福 祉 に対 す る不 満 点 17 (3)総合病院の不在と逗子市の高齢者医療について 【ポイント】 ・逗子市の医療体制に不満を持つ人の約8割が、 「大きな病院がない」ことをその不満の 理由として挙げている。 ・しかし、実際に市外の総合病院を利用していて、逗子市にも総合病院があってほしい と考えている回答者の割合は低く、多くの人は、救急医療体制や小児科医・産科医 不足の対策として、そうした大きな病院を求めている。 ・逆にいえば、それらの問題点が解決されれば、大きな病院がなくても、逗子市民の 医療ニーズを満たすことが可能なのではないか。 ・とりわけ、高齢者医療に関しては、かかりつけ医や在宅医療・往診など、きめこまか な医療サービスを整えることが重要であると思われる。 図3でみたとおり、逗子市の医療体制に対して不満を感じている人の多くは、「複数の診療科が あり、病床数も多い大きな病院がない」ことを理由としていました。しかし、実際に医療機関を利用 する場合、図5のように、「医師の評判がいい、実績がある」病院を選んで利用しており、「大きな病 院」を求めて通院している人の割合は 14.4%にとどまります。 図 5 医 療 機 関 の選 択 基 準 実際に大きな病院を利用してはいないが、逗子市に総合病院があってほしいと考える人の意識 について、より詳細に見ていくと、多くの人は救急医療体制や小児科医不足という逗子市の医療 体制の問題について、その対策として、大きな病院を求めているのではないか、という傾向が見え てきます。 例えば、表 11 や表 12 をみると、大きな病院が逗子市にないことを不満に思う人には、40 代の年 18 齢層の人が多く、また、「親と子供の二世代世帯」や「親と子と孫の三世代世帯」など、子供のいる 世帯に属している人が多いということがわかります。 表 11 大 きな病 院 がないことを不 満 に思 う人 の傾 向 (年 齢 ) 表 12 大 きな病 院 がないことを不 満 に思 う人 の傾 向 (世 帯 構 成 ) また、大きな病院がないことを逗子市の医療の問題点と考える人には、「救急医療体制に不安が ある」ことを一緒に合わせて問題視する人の割合が 51.9%、「小児科医・産科医が少ない」ことを合 わせて問題視する人の割合が 26.7%と、比較的高い割合で存在していることが図6の結果からわ かります。 一方、実際に逗子市外にある総合病院に通院している人で、逗子市内にも総合病院が必要だと 考える人の割合は低く、図7のように、11.8%にとどまっています。 図 6 大 きな病 院 がないことを不 満 に思 う人 の傾 向 (他 の質 問 の回 答 ) 19 図 7 大 きな病 院 がないことを不 満 に思 う人 の傾 向 (医 療 機 関 の利 用 率 ) また、普段はほとんど医療機関を利用していないが、なんとなく不安なので大きな病院があって ほしいと考える回答者の割合は 33.0%と、これも比較的高くなっています。 こうした結果を合わせて考えると、多くの人は救急医療体制の整備や、小児科医・産科医を充実 させる方策のひとつとして、大きな病院を求めているのではないかと考えることができます。逆にい えば、それらの問題点を解決することができれば、大きな病院はなくとも、逗子市民の医療ニーズ を満たすことはできるのではないでしょうか。 とりわけ、高齢者医療について考えてみると、先に表7でみたように、60 代以上の回答者には「往 診・在宅医療が少ない」「大きな病院とかかりつけ医の間で連携が不十分」といった、きめこまかな 医療サービスがないことを問題視する人の割合が高くなっています。 表 13 の結果に現われているように、かかりつけ医がいない人には、大きな病院がないことを不満 に思う人の割合が高く、かかりつけ医がいる人は逆の傾向があります。 表 13 大 きな病 院 がないことを不 満 に思 う人 の傾 向 (かかりつ け医 の有 無 ) これらのことを合わせて考えると、仮に大きな総合病院が逗子市にあったとしても、それだけでは 高齢者の医療ニーズを満たすことにはならないのではないか、と考えられます。 むしろ、在宅医療や往診、医療の相談に乗ってくれるかかりつけ医の充実など、きめこまかな医 療サービスの供給体制を整えることのほうが、逗子市の高齢者医療体制にとっては重要になるの ではないか、というのが、今回のアンケート調査から見えてきた現状です。 逗子はつらつ会では、今後もこのような市民調査を継続して実施し、逗子市民のはつらつとした 人生設計に貢献していきます。 20 【成果】 市民講座でのコンテンツとしての活用の他に (1) 逗子はつらつ会の広報的ツール 逗子はつらつ会の活動実績を示す広報ツールとして活用できた。 行政でも現在は難しいとされる 1,200 もの調査サンプル回収と、その分析力に よって逗子市における本プロジェクトに対する付加価値向上につながった。 (2) 本プロジェクトの方向性を明示するものとなる 逗子市民の医療・福祉に関する調査の実施によって、その後の本プロジェクトの方向性 が明らかとなる。 ① 「かかりつけ医を持つ市民が少ない」・「高齢者福祉の情報不足」 他県や他都市の調査結果と比較しても、かかりつけ医がいる比率が非常に低いこと、親 の介護に携わる年代になる 40 代で高齢者福祉に関する情報提供への不満度が高いこと がわかった。 本調査結果を背景として、逗子市の医療と福祉の情報提供サイト「逗子はつらつネット」の 企画が生まれることとなる。 ② 逗子市の各地域が抱える問題の相違 当然のことではあるが、逗子市を構成する 8 地域の抱える地域課題は大きく異なるという ことである。基礎自治体である「逗子市」でひとくくりにしがちではあるが、よりミクロな視点 での問題解決の必要性を感じる契機となる。 (3) 逗子はつらつ市民講座企画 【背景】 逗子市民を対象にした、ヘルスケアに関する連続講座。 逗子市民を対象とした調査結果に関する情報発信や問題点の共有とその解決方法に ついて知恵を出し合うことを目的とした講座である。 また、逗子はつらつ会の活動に賛同してくれる市民の募集も合わせて行った。 【内容】 2010 年 4 月~7 月に期間に 3 回の連続講座で実施。 テーマとしては、 第一回:マクロとミクロで見る逗子のいまとこれから 第二回:コミュニティによる絆づくり 第三回:地域問題解決の実践的プロセス という、逗子市の人口動態や市民の健康・福祉への態度を入口に、「健康寿命」の 必要性を導き出し、それを生み出すのは「地域との絆」であり、それは「地域活動 への参加」によってもたらされる。というシナリオで展開。 外部から講師を招き講義とワークショップの 2 本立ての構成で行った。 21 【詳細】 <第一回市民講座> 「マクロとミクロで見る逗子のいまとこれから」 参加者 14 名 開催日時:2010 年 4 月 25 日(日) 13 時~16 時 場所:逗子文化プラザ市民交流センター 講師:国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部室長 泉田信行氏 (コンテンツ) ・日本・神奈川県・逗子市の人口動態の予測 ・少子高齢化がもたらす問題→若者の人材不足・ケアサービス提供者の絶対的不足 ・逗子市民の医療と福祉サービスの利用状況 ・みなさんにとっての「安心」についてのディスカッション ・アンケート調査の結果説明 ・ワークショップ →「大規模病院がない自治体での安心生活が可能な地域医療の仕組みとは?」 →「市民レベルでできる地域の住民(特に高齢者や障害者)が安心して生活できる 仕組みとは?」 22 <第二回市民講座> 「地域における絆づくり」 参加者 14 名 開催日時:2010 年 6 月 6 日(日) 13 時~16 時 場所:逗子文化プラザ市民交流センター 講師:青山学院大学 社会情報学部 教授 飯島泰裕氏 (コンテンツ) ・石川県金沢市でのコミュニティづくりの事例紹介 ・コミュニティとは何か? – 共通の目的や価値観を持った – 活動する人々の集まり 成功するコミュニティを作るには、 – 明確な目的(完成イメージがある、利用者の姿が見える) – 明確な価値観(何が良くて、何が悪いと同じように思えるか?) ・ワークショップ 「地域活動を長く成功させるには?絆はどう作る?」 23 <第三回市民講座> 「地域問題解決の実践的プロセス」 参加者 12 名 開催日時:2010 年 7 月 25 日(日) 13 時~16 時 場所:逗子文化プラザ市民交流センター 講師:法政大学大学院 政策創造研究科 准教授 宮木いっぺい氏 (コンテンツ) ・「地域」とは? ・「地域づくり」とは? ・地域づくりの実際のプロセスは? ・「地域づくり」の役割分担は? ・NPO の資金調達は? ・NPO のマネジメントは? ・「地域」のイイトコを発見するには? ・現場で話し合う時に留意すべきポイントは? 24 【成果】 集客面で思うように人が集まらないという課題はあったが、 ① 逗子はつらつ会のメンバーを中心に高齢化社会の地域づくりに関して濃い議論が展開 され、その後の活動の方向性決定に大きな影響を与えた。 ② 問題意識を共有できる市民とのネットワークが構築できた その後の逗子はつらつ会への参加希望などに影響。 【今後の課題】 行政および地域医療機関とのネットワーク構築。 集客の側面はもちろんだが、現状の情報発信だけでなく、その先にある 具体的ソリューションを実践するにあたっては、 ・地域の医療機関、医師との医療的サービスとの連携 ・行政からのお墨付きによる他団体との連携によるサービスの広がり が不可欠である。 (4) 他助成金案件への企画申請 【背景】 逗子はつらつ会の持続的活動を担保すること。また、事業としての自立性を確立 するための投資資金獲得に向けて外部からの資金調達が必須である。 以下の助成金案件に企画を申請。 【内容】 ① 社会技術研究開発事業「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」 2010 年 6 月申請 健康寿命の延伸手段としての、コミュニティ活動に関する実験的検証を目的とした案 件。 都市部における高齢化先進地域として、 ・ホワイトカラー市民と地域のコーディネーション ・地域活動を行う市民の組織化 ・地域活動の事業化 を提案。 結果は不採択。 ② 総務省の地域と IT のプロジェクト「地域雇用創造ICT絆プロジェクト」 2010 年 11 月検討→申請締切日に間に合わず IT を活用した、地域雇用の創造を狙いとした案件。 逗子市の医療・福祉・地域情報掲載したポータルサイト「逗子はつらつネット」を利活用 し、高齢者を中心に地域活動への参加を促進し健康寿命の増進を事業目的として雇 用を創出する。 25 ③ 公益財団法人医療助成 「在宅医療研究に関する助成」 2010 年 12 月申請 在宅医療分野の研究に対する助成金案件。 この 10 年で団塊世代の要介護者は劇的に増えることはすでに周知の事実であるが、 必要とされる在宅医療・ケアの社会資源量はどのくらいなのか? 一言で必要とされる在宅医師数と言っても、各地域の個別事情や、在宅患者の症例に よって提供する医療サービス量・期間が異なることが予想できる。 本研究では、逗子市・葉山町をフィールドとして、 ・在宅医の患者症例別医療サービス量・期間 ・在宅医の QOL を維持できるレベルで担当できる在宅患者数 から在宅医の必要規模数を算出する。 結果は不採択。 【成果】 落選続きで来年度の活動資金となる助成金案件の獲得には至っていないが、この企画 づくりの過程から、逗子はつらつ会の今後の方向性についてメンバーと真剣な議論ができ、 事業活動の方向性が固まった。 【今後の課題】 逗子はつらつ会の活動方針に沿った助成金案件については、今後も引き続き申請を 行うが、採択率を高めるには、提案した企画の具現化にリアルさが伴っていることが不可欠 である。そのためには、 ① 具体的な活動実績 すでに特定領域において活動の実績や基盤があることが採択に向けて必要不 可欠。 今回立ち上げた逗子はつらつネットを基盤とした情報発信サービスなどでまず は地域内での高齢化社会のヘルスケア問題の解決に向けた実績づくりを行う。 ② 協力先のネットワーク構築 リアルに実現できる企画であることを PR するにあたり、逗子市、三浦半島 地域における行政や医療機関、学術機関とのネットワーク構築が不可欠。 逗子市の地域医療機関との協働事業を早急に立ち上げることで、 三浦半島地域の行政や医療機関、市民活動団体などとの連携を広げていく 予定。 26 (5) 三浦半島地域の男性住民を対象とした「地域活動と健康寿命に関する調査」 【背景】 首都圏地域の高齢化が加速化していくこの 10 年において、様々な問題を地域に及ぼすで あろう男性ホワイトカラー層を地域がどのように受け入れるかがどの自治体・地域においても 重要なカギとなることは前述したが、今回の調査は三浦半島という広域において、男性住民 に対象を絞った調査を実施。 今後の逗子はつらつ会の三浦半島地域における問題解決に向けた基礎データの収集を 狙いとする調査である。 【内容】 調査方法:インターネット調査 調査対象:三浦地域(鎌倉、逗子、葉山、横須賀、三浦)に在住の男性(30 歳以上) 1,200 サンプル回収予定 調査実施時期:2011 年 1 月 14 日~20 日 【詳細】 ※調査票は別途添付 主設問項目は ・地域活動への関心度や参加度 ・活動期間 ・活動分野 ・活動のきっかけ ・活動をやめてしまった理由 ・活動の組織体とそこでの役割 ・今後の活動意向 ・帰属するコミュニティ組織 ・退職後の不安 ・主観的健康観 ・医療機関の利用頻度 【成果】 現在集計中 【今後の課題】 調査データを活用した問題解決に向けた活動 単に調査して終わりということではなく、この調査結果をもとにした問題解決に昇華さ せねばならない。 方向性としては、 ③ 三浦半島地域の基礎自治体や医師会へのデータ開示による取組み ④ コミュニティ関連の助成金案件の基礎データ とあるが、逗子はつらつ会は自立した事業体であるため、後者の助成金案件獲得に 27 向けた基礎データとして活用していく。 (申請予定案件) ・社会技術研究開発事業「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」 ・財団法人 自治総合センター「コミュニティ助成事業」 (6) 逗子はつらつネット 【背景】 逗子市は市内に総合病院がないため地域内の病院やクリニックがプライマリーケアとして 地域医療を支える役割を担っている。 しかし、逗子市民を対象にした医療・福祉に関するアンケート調査から、逗子はつらつネットを 立ち上げることの必要性およびそれが高齢化社会における問題解決のソリューションになり うるという仮説を導く結果が出てきた。 ① かかりつけ医を持つ市民の比率が低い <逗子市:健康や病気の相談にのってくれる、かかりつけ医がいるか?> 2010 年 2 月逗子市民を対象とした医療・福祉に関する調査より 28 <東京都:健康や病気の相談にのってくれる、かかりつけ医がいるか?> 2004 年 2 月 東京都患者中心の医療調査より このまま数値の差を鵜呑みにするわけではないが、それでも若年人口の比率が高い東京都 と比較しても差があるのは確かである。 かかりつけ医の重要性を今更述べるつもりはないが、総合病院がなく地域の医療機関との 密接な関係を構築できるはずの逗子市において、この結果は驚きであった。 ② 30~40 歳代で高齢者福祉に関する情報提供に不満 2010 年 2 月逗子市民を対象とした医療・福祉に関する調査より 29 高齢者福祉については、全体を通して情報量やその発信方法に対する不満が高い。 特に親の介護に直面する機会も出始めている 30~40 歳代において顕著である。 【内容】 「市民が求める医療・福祉に関する情報をワンストップで提供する WEB のコミュニケーションツ ール」である。政令市などでは、すでに WEB にて情報提供をしているところもありますが、その 多くは医療に関する情報のみ。また、実際にそこに掲載されている情報や使い方が市民の ニーズを満たしているものではないと考えている。 本研究における「逗子はつらつネット」とは、実際のユーザーである市民、医療・福祉等といっ た専門機関と市民をつなぐ仲介者(ケアマネージャー、民生委員)の方々にとって本当に役に 立つ情報提供サービスを目指すものである。 また逗子はつらつネットの企画・製作においては、青山学院大学社会情報学部の特別講義 の中での問題解決型の実践的カリキュラムに採用される。 <参加人数> 11 名 (男性 2 名・女性 9 名) <開発スケジュール> 2010 年 2 月 特別講義のオリエンテーションでのプロジェクト説明 2010 年 5 月 逗子はつらつネット PJ 参加学生の決定 2010 年 5 月~7 月 座学による講義 ① 高齢化社会と地域にもたらす医療福祉問題 ② 逗子はつらつネット PJ の背景とその必要性 ③ グループワーク 1 「他地域が導入している医療サイトの特徴と課題について」 ④ グループワーク 2 「逗子市における医療・福祉の情報サイトのあるべき姿と機能」 ⑤ 前期の発表会 「私たちが考える高齢化社会における地域の医療・福祉情報の仕組 み」 2010 年 7 月~8 月 逗子はつらつネットの機能・サービス設計 ※週に 1 度の HCS チームと外部のシステム開発部隊ともに定例会実施。 学生もそこに参加。 2010 年 8 月 医療機関・調剤薬局・介護施設向けの調査票作成 2010 年 9 月 逗子市・葉山町でのフィールドワーク 各機関・施設ごとに作成した調査票をもとに、学生が 2 名 1 組となって インタビュー実施。施設の方針やサービスの特徴などについてヒアリング。 30 2010 年 10 月~12 月 データーベースシステムの開発 2011 年 1 月 データベースへの情報入力 2011 年 2 月 逗子はつらつネット一次リリース ※ブログ、介護に関する掲示板機能などの周辺機能は今後随時リリースする予定。 【詳細】 <保有する情報> 逗子市・葉山町を中心に一部鎌倉市・横須賀市・横浜市金沢区の下記情報を一元的管 理することを目指す。 ■医療機関 (病院、クリニック、歯科医) ■調剤薬局 ■介護福祉関連施設(デイケアサービス、在宅介護支援センター、老人福祉施設等) の約 250 施設の情報が掲載。 <逗子はつらつネットの機能> ■検索機能 <病院を探す> ・診療科目別で探す ・地域で探す ・特徴で探す(休日/夜間診療・駐車場有無・女医・クレジット可など) <薬局を探す> ・地域で探す ・サービス内容で探す ・特徴で探す(休日/夜間営業、駐車場有無・クレジット可など) <介護施設を探す> ・地域で探す ・目的で探す(通所/訪問/滞在) ・特徴で探す ■介護の手引きサービス 家族が倒れてから介護までの一連のながれを説明した手引き ・救急車が来るまでの対応 ・入院時の対応 ・介護が必要になった際に病院と相談すべき内容 ・自宅介護か?施設介護か?の選択について ・介護保険に関して ・自宅介護の場合に受けられる介護保険サービス ・施設介護の場合に受けられる介護保険サービス 31 ■はつらつガイドのダウンロード 市内の病院、薬局、介護施設の一覧表をダウンロードできる。 ■他情報提供機能 ・かかりつけ医の選び方 ・介護に関する掲示板 <トップ画面> 32 <検索画面> 33 <施設案内の詳細画面> 34 【成果】 この逗子はつらつネットそのものがもたらす実用効果については、2 月リリースのため、 これからではあるが ■本 PJ における高齢化社会におけるヘルスケア問題に対する研究成果というだけでなく、 逗子市の医療・福祉に関する地域問題の実践的解決ツールとして今後も利用され、 進化していくものであること。 ■企画~製作の段階において、青山学院大学社会情報学部の三年生 11 名に対して ・問題解決に向けた具体的プロセス ・高齢化社会が抱える問題に関する、それに携わる人々とのコミュニケーションによる実感 など、座学では経験できない実践的プログラムを提供できたこと この 2 点において非常に大きな成果ととらえている。 【今後の課題】 ① 逗子はつらつネットの運用資金の調達 4 月以降逗子はつらつネットを運用していくにあたっての ・サーバー管理費用 ・メンテナンス費用 に関する資金の調達を別途行わなければならない。 このようなサイトの多くは、情報の更新がなされず、結果価値提供ができなくなり 利用されなくなるというケースが多い。 地域の問題解決ツールとして立ち上げた以上、常に最新の情報提供がされており かつ必要と思われる機能であれば追加できるくらいでなければ、人々の生活の中で 浸透していかない。 ② 逗子はつらつネットのヘルスケア情報基盤化と事業化 前述の資金調達とも大きく関係してくるが、 ■医療施設・介護施設の情報提供サイトだけではなく、“逗子市民のはつらつ生活を 支援するポータルサイト”として位置付けることで、地域活動やボランティア、 日常生活支援サービス(買い物代行)などの情報基盤としての強化が必要 ■逗子はつらつネットを商材とした事業化の推進。例えば、 ・他地域での同様の仕組みを移植に対してニーズ調査からの開発を行う ・逗子はつらつネットに登録した市民を会員化したビジネスモデルの構築 自治体からの調査受託、一般企業に対するモニターなど などで外部から資金調達できる仕組みをつくる。 以上 35