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新・シルクロード 新興国ネットワークの - Strategy

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新・シルクロード 新興国ネットワークの - Strategy
この文書は旧ブーズ・アンド・カンパニーが PwCネットワークのメンバー、Strategy& になった
2014 年 3 月 31 日以前に発行されたものです。詳細は www.strategyand.pwc.com. で
ご確認ください。
特集 ◎ 新興国成長戦略
新・シルクロード:
新興国ネットワークの
台頭
中東諸国が新たなかたちで再現する
東西世界を結んだ古の交易路
著者:ジョー・サディ、カリム・サッバー、リチャード・シェディアック
監訳:小林 創
サ ウジ アラビ アのア ブドッラ ー・ビ ン・サ ウ ード 国 王 は、
業者はアジアの携帯ネットワークへの投資が自国市場に成長
2005 年 8月に 政 権 の座 に 就くや 否 や自国 のビジョンを 示し
をもたらすか、といった具合に。これを具体的にみると、経済が
た。2006 年1月の最初の公式訪問先は、米国のブッシュ大統領
西側からシフトする趨勢が浮かび上がる。新興市場は、前史時
でも英国のブレア首 相でもドイツのメルケル首 相でもなく、
代、或いはアレクサンダー大王時代まで遡る東アジア・中東・
中 国 の 胡 錦 濤 国 家 主 席 だった。経 済 面 の 関 係 をより緊 密に
南欧間の交易路であったシルクロードを想起させる形で、ネッ
したい両国の思惑を反映したこの会談で、アブドッラー国王
トワークを構築しつつある。その大部分は、欧州の船が国際貿
がインド、マレーシア、パキスタンに赴くに先立ち、国王と主席
易 を 席 巻し 始 めた 西 暦1400 年 頃ま で 世 界 の 商 取引 の 中 心
が石油・天然ガス・鉱物資源における協力合意に署名した。この
だった。
合意の土台は、サウジ・アラムコとシノペックという両国の国営
現代の新しいグローバ ルネットワーク、いわば「新・シルク
エネルギー企業間の関係だった。両社は、中国福建 省に50 億
ロード」は、かつてのシルクロードより広 範かつ多様であり、
ドル規模の石油精製所を敷設すべく、2005年に提携関係を結
中国・中東・中南米・アフリカを含む全世界の新興市場を結ぶ。
んでおり、また、2011年にサウジアラビア西岸ヤンブーでの精
モノの貿易拡大のみならず、短 期・長 期の投資、技術とマネジ
製所建設の覚書に署名した。シノペックはまた、サウジアラビア
メントのイノベーションの伝播経路でもある。たとえば、中国
の石油化学大手 SABICとの合弁事業にも携わっており、両社
のアフリカへの投資は、道 路・鉄 道・通信インフラ建設により
は2010 年に中国北東部の天津市にある30 億ドルの複合施設で
中国の国営企業が潤うのみならず、アフリカ大陸の天然資源
様々な石油化学 製品の生 産を始め、最 近、10 億ドル強のプラ
や消費者へのアクセスを容易にする。中国とブラジル間の貿易
スチック工場建設計画も発表した。
額は 2003 年から2010 年にかけて80 億ドルから560 億ドルへ
グローバル経済での新興市場の台頭に関する論議は、世界
と600 %以上も伸び、中国が米国を抜きブラジルの最大貿易
金融危機後特に顕著であり、米国と欧州の経済への影響が主
相手国となった。韓国の国営企業の韓国電力公社は 2009 年に
な論点だ。たとえば、実業界の有力者は、新興国の消費者が果
アラブ首長国連邦( UAE)に400 億ドル相当の複数の原子炉建
たして米国製品に関心を持つのか、ヨーロッパの電話通信事
設 契 約 を、フ ラン スや 米 国 の 会 社 に 勝 って 掌 中 に 収 めた。
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ジョー・サディ
([email protected])
カリム・サッバー
([email protected])
リチャード・シェディアック
([email protected])
本 稿には、ブーズ・アンド・カンパニー の
プ リン シパ ル の マー ゼ ン・ラムゼイ・ナ
ブーズ・アンド・カンパニー の 会 長。同社
ブーズ・アンド・カンパニー ドバイオフィス
ブーズ・アンド・カンパ ニー ア ブダビ オ
ジャール、Ideation Centerディレクター
の 中 東 に お ける 事 業 の マ ネ ー ジ ング・
のシニア・ヴァイス・プレジデント。グロー
フィスのシニア・ヴァイス・プレジデント。
のハテム・A・サ マン、s+b 寄 稿 編 集 者 の
ディレクター を 兼 務。石 油、ガ ス、鉱 業、
バルコミュニケーション、メディア、テク
公 共 部 門と医 療 分 野 の クライアントを
メリッサ・マスター・キャヴァノーの 各氏
水、鉄鋼、自動車、消費財および石油化学
ノロジー分野のクライアントを対象とする
対 象とする中東のプ ロジェクトを主 導。
の協力も得ている。
の 各セクター に お いて 複 合 的 な プ ロ
プロジェクトを主導。同社のマーケティン
中東、ヨーロッパ、アジアにおいて、戦 略、
ジェクトを担当している。
グ・アドバイザリー・カウンシルのメンバー
業務改善および組織に関連するプロジェ
であり、中東にある同社のシンクタンク
クトを率いた経験を有する。
Ideation Center の理事長を務める。
開発に共同で臨む計画を発表した。これらの展開を捉えれば、
資本である。等しく重要なのは(定 量化は難しいが)ナレッジ
世界中の公共および民間部門のリーダーが刮目すべき潮流の
と技術の交流だ。
兆候である。
1. 脱石油
新・シルクロードの要所
どの GCC 国でも、戦略アジェンダの筆頭は、経済の多様化
により石油依 存度を低下させることだが、多大な努力にかか
湾岸協力会議( GCC )の加盟国 ( バーレーン、クウェート、オ
わらず、実 を 結 んで い な い。石 油とガ ス が GCC の GDP に占
マーン、カタール、サウジアラビアおよび UAE )は強大な地域
める割合は 2000 年で 38 %、2005 年で42 %、2010 年で 39 %
勢力を成し、他の新興国との関係をみれば、新興国間の協力
だ。各 国 政 府は雇 用を創 出する知 識 集 約 型 産 業へ の 石油で
関 係 が どう 構 築 さ れ るか が わ か る。過 去 5 年 間 に、GCC と
得た資 金の投 資に熱心であり、これを促すパートナーを開拓
BRICs( ブラジル、ロシア、インドおよび中国)そして「ネクス
していく。
ト11 」
( バングラデシュ、エジプト、インドネシア、イラン、メキ
これが今や GCC の貿易の 19.4 %が対 BRICsである主因で
シコ、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、韓国、トルコおよ
あり( NAFTA 諸 国 関 連 は 8.9 %)か つ、対 BRICs 貿 易 は 対 米
びベトナム)との関 係 は顕 著に強まってい る(図 表を 参 照)。
国より多様である。例えば、サウジアラビ アの対米輸出は未
GCCとこれら急成長中国との間に「新・シルクロード」が構築
だ石油が 中心 なのに対し、対 BRICs には化 学 品、プラスチッ
されていくスピードは、GCC の重要性の証である。
ク、鉱 物 等が 含まれる。同 様に、UAE の 対 中 国 輸 出もプラス
そもそも GCC は、予てより米 国・欧 州との関 係 が 強 い。高
チック( 28 %)、電子機器( 15 %)、車( 9 %)はじめ広範に亘る。
成長経済国との関係を育む一方、安定した経済大国との関係
対ネクスト11の 非 石 油 産 品 輸 出も 拡 大 中だ。GCC から ベ
を維持する必要がある。この図式の中、新たな政 策や野心が
トナム、インドネシア、トルコへの輸出品(化学品、プラスチッ
交錯する可能性があり、新興市場参入を目論む企業や、GCC
ク、アルミニウム等)は絶対量ではまだ少ない( 2008 年に116
の石油・ガス資源の獲得にしのぎを削り、地 域安 全保障が原
億ドル)ものの、2001年以降の伸び率は 389 %と高い。
油 価 格 安 定 を 脅 かすことに無 関 心で はいられ な い 米 国、中
今後 GCC の企業は輸出拡 大の商機を追い続け、自動車そ
国、日本、多くの欧州諸国に示唆するところは大である。
の他の高度工業製品の製造拠点を設け、輸入・再販の機会も
GCC と他 新 興 国との 連 携 強 化 の 力 学 を 知 れ ば、GCC の
追う。また、海水淡水化や複合インフラ・建 設プロジェクトに
リーダー陣は、新・シルクロードのどこに落とし穴があり、ど
おいても専門性を高め、これらサービスの提供先を求め地域
うすれば避けられるかが 判り、欧 州や米国の 企業や政 府は、
の外に目を向け始める。これに伴い、GCC の経済目標を支え
GCC におけるチャンスをどうすればモノにできるかが判る。
る貿易相手は優位性を獲得する。
GCCとBRICs、ネクスト11の関係を左右するのは貿易・人材・
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特集 ◎ 新興国成長戦略
小林 創(こばやし はじめ)
([email protected])
ブーズ・アンド・カンパニー 東京オフィス
の プ リン シパ ル。医 薬 品・医 療 機 器、商
社、金 融、産 業 財、消 費 財 な ど で のプ ロ
ジェクト経験を有する。ヘルスケアグルー
プのコアメンバー。成 長 戦 略および 事 業
再 生 計 画 の 策 定 お よび 戦 略・計 画 の 実
行支 援において、コン サル ティングなら
びに 事 業 会 社で のマネジメント 経 験 に
裏づけられた強みを有する。
サウジアラビアの対米輸出は
未だに石油が中心であるのに対し、
BRIC諸国への輸出品には
化学品、
プラスチック、鉱物等が含まれている。
2. 豊富な人材
3. 新たな資金源
モノとサービスのみならず人材も GCC や 他の 新興市場 の
GCC 諸 国 は 政 府 系ファンド 等 国 有 事 業 を 通じ、長年にわ
国 境を 超 えて流 れていく。中 国 から GCC へ のフライト 数 は
たり他国(主に欧米)に対する投資家であり続けてきた。西欧
2005 年から2009 年にかけ 3 倍に、歴史的にGCC と関係が強
諸 国 は GCC 投 資 の主 たる受け 手であり、2003 年から2008
いインドからの便は 35 %増加した。トルコ、エジプト、インド
年にかけての GCC の対外投資の71%を占めるが、他中東・ア
ネシア、パキスタン、イランからの便も増加の一途だ。2005 年
ジ ア 諸 国 も 徐 々 に シェア を 伸 ば して い る。投 資 先 決 定 上
に100万人 だった エジ プトからの 訪 問 者は 2009 年には 220
GCC 政府が演じる強い役割をみれば、GCC 政府が自国通貨
万人に、パキスタンからは 77万人から140万人に増えた。
の戦略的な方向性として新興国が経済的・政治的に良いと判
同時に、GCC に入国する人材の質も上がった。重役は西方
断すれば、この傾向は加速する。
から、労 働 者は東 方 からという図式はもはや成り立 たず、新
世界金融 危 機 後 の 今、西 欧 諸国での主 要 産 業 の救 済によ
興 国 出 身 の 優 秀 な人材 が 金 融、エネルギ ー、運 輸、公共 各 部
り、政府の役割は拡大したが、中でも中国、ロシア、ブラジル、
門で 影 響 力のある地 位を占めつつある。特にインド人は、専
「 国家資本
メキシコといった主要新興経済国や GCC 諸国は、
門的職業に就く人材の大きなコミュニティを何十年も前から
主義」の 積 極 的な 支 持 者である。
「 国 家 資 本 主義」とは、政 治
有してい る。GCC は外 国 人の就 業 実 態を 公 表してい ないた
リスク専 門 家イアン・ブレマー の定 義によると、政 府が 国 家
め、傾 向を 数値化することは難しいが、このような 集 団の 影
の資源・影響力を最大化すべく、国有/民営会社、政府系ファ
響 力を 示す一つ の 指 標は、この集団の私有財産(データが入
ンド の 方 向 性 を 決 め るシス テムで あ る(“ Surviving State
手可能 な 範 囲 で)が 今で は 西 洋人と同 等 もしくはそれ 以 上
Capitalism, ”by Art Kleiner, strategy+business Issue
で、かつ GCC 域 外 出 身 のアラブ人の 私有 財産も急 速に 増え
63, Summer 2011 )。これらの国々は、危機時の最終 手段で
ている事 実である。たとえばサウジアラビ アでは 2009 年に
はなく、経済成長と国益維持の方策として国家資本主義を捉
アジア人 が 460 億ドル の私有財産を保 有 する一方、西洋人は
えている。
410 億ドル、アラブ人は 210 億ドルだった。UAE でも、アジア人
過去数十年の資本主義社会での常識は、このモデルを否定
が 270 億ドルで首位に立ち、西洋人の 200 億ドル、アラブ人の
する。すなわち政 府機関の官僚 主義的な性 質は、機 敏な自由
170 億ドルを大きく上回る。
市場にはとても太 刀打ちできない、としていた。確かに、アブ
資 源 に 乏し く 人 材 豊 富 な 国 が 自 国 民 を 送 り 込 む の は、
ダビやドバイの不動産会社が救済を必要としたような例もあ
GCC の成長 へ の野心を 燃 え立 たせるのみならず、自国 民が
るが、近 年一 部の GCC の政 府 支 援 先セクターの業 績を見る
GCC の本国との関係を促進するのが狙いなのだ。
と、この「常識」は疑わしい。UAEとカタールの国有航 空会社
(エミレーツ、エティハド、カタール 航 空)は、瞬く間にグロー
バ ル市場での地位を確立した。一 部の欧 州系 航 空会社(多く
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図表:湾岸経済国が築きつつある提携関係
GCCのBRIC諸国および「ネクスト11」諸国との関係を貿易と投資の流れを通じて示す。オレンジ線はGCCとこれらの国々の二国間貿易総額を表している。
比較のために言えば、2010年における米国、欧州そして日本との貿易額はそれぞれ725億米国ドル、1,223億米国ドルそして1,155億米国ドルだった。
GCCの対中および対インド貿易はすでに対米貿易を上回っている。
2010年二国間貿易
単位:10億ドル
GCC対外投資先の内訳
2003-08
資 本 流出先としては今なお米 国が支 配 的だが、
アジアがますます重要な投資先となってきている。
メキシコ
$0.6
米国
ナイジェリア
$0.9
49.3%
ヨーロッパ 21.9%
MENA* 13.2%
ブラジル
2009年、アブダビの国際石油投資会社は
スペインのバンコ・サンタンデールのブラ
ジル法人に3億2,800万ドルを投資した。
アジア
13.2%
その他
2.4%
*中東および北アフリカ
ブラジル
$9.8
同首長国の国営投資会社ムバダラも大
型投資を検討中。
出所:欧州委員会貿易総局、国際貿易センター、世界銀行、サンバ・フィナンシャル・グループ、ブーズ・アンド・カンパニー
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特集 ◎ 新興国成長戦略
ロシア
湾岸協力会議(GCC)
:バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、
サウジアラビアおよびアラブ首長国連邦
GCCの対ロシア投資にはカタール投資庁
からの5億ドルと、2010年9月のUAEに拠
点を置くダマックとクレセント・グループ
BRIC:ブラジル、ロシア、インドおよび中国
の二社からの8億ドルが含まれている。
NEXT 11:バングラデシュ、エジプト、インドネシア、イラン、
メキシコ、
ナイジェリア、
パキスタン、
フィリピン、韓国、
トルコおよびベトナム
ロシア
$1.3
トルコ
$10.4
韓国
$61.0
イラン
$13.6
中国
$91.6
GCC
エジプト
$7.0
パキスタン
$13.0
インド
$90.6
バングラデシュ
$1.7
フィリピン
$4.5
ベトナム
$1.3
インドネシア
$9.8
インド
中国
2010年3月現在、インドの企業は約500の
サウジの 石油 化 学 企 業SABICは中 国 に
合弁事業を通じてサウジアラビアに20億
おける生産施設に30億ドルを投資すると
ドル以上を投資している。
ともに、2011年5月に 新たな施 設 向 けに
さらに10億ドルを拠出することを約して
いる。
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新・シルクロードは、
インド、タイ、
マレーシア、韓国、
パキスタン、南アフリカ、ナイジェリア
そしてスリランカとGCCを結ぶ海底ケーブルとしても実現している。
はかつて国有)は、国家の支援がバックにある航空会社と競争
ある。
しなければならないのは不公平だとぼやく。戦略的なグロー
電 気 通 信 事 業 者も、新 興 国 に目を 向 けてい る。GCC で の
バ ル 投 資 のおかげ で、GCC の政 府系ファンドの 規 模は過 去
1990 年代に電気通信市場自由化以降、国内事業者は買収三昧
10 年のうちに 3 倍近くになり、2000 年の 3210 億ドルから、今
であり、事業展開国数を 2005 年の 28 から今日の 44 へと拡大
では約 1兆1000 億ドルを保有する。GCC の石油会社(同地域
した。新しい展開先は殆どが新興国で、インドネシアからサハラ
の富の源泉)は、国境内で操業する外国石油会社の技術や専門
以 南 のア フリカ 地 域 に 至 る。ま た、インド の バー ティ 等 が
知識を自分たちが利用できるようにしつつ、国家資源の支配力
GCC への投資を検討しているように、こうした投資は逆方向
を自分たちに与える形で契約を再交渉している。
にも生じてい る。新 興 国が 21世 紀 のグローバ ル 経 済 で重 要
な 役 割を 演じるには、情 報 通 信インフラと 人材へ の 投 資 が
4.コネクション形成
必 要 だ。そ のために自らの 資 源を 合わせて投下すれば、より
GCC 諸国は、他新興国と関係を構築するうちに、情報通信
効果的に前進できる。
技 術( ICT )セクター参入の 道を見出している。多くの 新興国
同様、自国の発展の加速に知識経済を構築する重要性を認識
21世紀のグローバル関係
し、インフラ投 資と政 策 変 更を行った。
「 国・地 域 が ICT 開 発
に参加し、ICT 開発から恩恵を受ける能力」を測定する世界経
GCC とBRICs、ネクスト11の絆はますます強まっている。
済フォーラムの「ネットワーク準備 指 数」における順位が、そ
この展開を、西欧諸国は、自分がゼロサム・ゲームの犠牲となり、
の成 果 を 反 映する。UAE は 2005 年 の 28 位 から2010 年に 24
重 要 度を 増 す消 費 者市 場、天 然 資 源、モノ、サービ スの宝 庫
位( 138 カ国中)、カタールは 40 位から25 位へと躍 進、サウジ
から切り離されることを危惧し、固唾を飲んで見つめてきた。
アラビアは 2007 年に48 位でリスト入り、2010 年に 33 位に浮
しかし、互いが互いに結びついているような世界においては、
上した。この進歩を遂げるにあたり、GCC 諸国は、同様の取組
まだ手つかずのチャンスが世界中のプレイヤーを待ち受けて
を実行する他の新興国を手本にしている。その結果、GCC と
いるのである。
パートナーは、ICT 開発を強化するための連携を図ってきた。
とはいっても新興国間の関係は未だ揺籃期にあるので、欧
新・シルクロードは、インド、タイ、マレーシア、韓国、パキス
米 企 業・政 府は今なら何らか の 行動を考え出し、これに対処
タン、南アフリカ、ナイジェリア、スリランカ等とGCC を結ぶ
できる。金融 危機の際の自国経 済の弱体化が GCC 地 域での
海底ケーブルとしても実現している。GCC の電 気通信ネット
優 位を後 退させ、飛 ぶ鳥を落とす 勢 い の 新 興 市 場 国 の 魅 力
ワーク設備は中国の華為( Huawei )と ZTE が供給する。華為
を高めたことを認識する必要がある。そこで成 功するために
は、インフラを超えてGCC の人材に投資し、UAE の高等技術
は、先 進 経 済 国は 新興 国が太 刀打ちできない 強みを 活 かす
大 学 の 情 報 技 術・通 信 学 部 の 特 命ポスト のスポン サーでも
ことが必要だ。欧米はイノベーションを支える機能・インフラ
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特集 ◎ 新興国成長戦略
GCCは一つの経済ブロックとしてこそ
大きな影響力を持つのであり、
この視点で政策を実行しなければならない。
の構築では今なお 世界 の最 先 端におり、GCC 諸国に手を貸
教育、通信といった重要セクターを形成する能力を備えていく
してきた。同地 域の 石油 会 社は、外国の人材や技 術と引き換
べきである。
えに石油 資 源へのアクセスを与えることで、黎明期には異国
GCC 諸国には、世界において自らの 存 在 感を増強する域
のパートナーに依存していた。この傾向は今なお続き、たとえ
内 経 済 統 合 の 推 進 も 必 要 だ。一つ の 経 済 ブ ロックとして大
ば、サウジアラビ アのダーランにあるキング・ファハド石油・
きな影 響 力を持 ち、この 視 点 で政 策を実 行していかなけ れ
鉱物大学は、シスコ・システムズと、デジタル経済で成 功する
ば ならない。ブーズ・アンド・カンパニーによる最 近 の 調 査・
スキルを学生に身につけさせるシスコ・ネットワーキング・ア
「 目標 達 成または大 方
分析により、
「 目標 達 成の阻害」を1点、
カデミー の設 立で提 携している。また、先 進国 企 業はグロー
完了」を 5 点とするスケールで、GCC の 地 域 統 合 進 捗 状 況を
バ ル・サプライ・チェーンを土台に、新しいパートナーを容 易
評 価した 結 果、GCC の 総 合 点 は 5 点 満 点 中 2.9 点 と 低 か っ
に組み込める。
た。GCC は、通 貨同盟 創設に向けた取り組みを強化、通関と
GCC 側 でも、交 流 ネットワークの 発 展 のため世界 中を見
国 境 政 策を改善、域 内 投 資を 促 進、インフラ開 発を 遂 行、共
て回るうちに、多くのチャンスを見出していく。こうした関係
同研究開発を強化しなければならない。GCC が強固な経 済
が GCC に 最 大 の 効 果 をもたらす ためには、GCC は 喫 緊 の
ブ ロックに な れ ば、地 域 全 体 がより低リスクで 魅 力 的 な 投
優 先事 項に取り組む 助けとなる投 資 家とパートナーを探 さ
資先となるはずだ。
なけ れば ならない。優 先事 項とは、新 規 雇 用創 出、有 能 な人
GCC は、西 洋と東 洋 の 新旧 両 パートナーとの自らの関 係
材を成 功に導く競争、物理的・教育インフラ投資である。
を画 定していくにあたり、重 大な 岐 路に立つ。しかし、新・シ
GCC は 既 にこれら関 係づくりに 着 手し、また 行 動 を取る
ルクロードが GCC の 将 来 の 繁 栄 へ の 道となり、過ぎし日の
うちに、経 済 の 孤 立 度は 1970 年代・1980 年代より格段に薄
旧・シルクロードに匹 敵 する力強さで 交易を 生み出し、富を
れてきた。GCC が 自 分を 外 国 のパートナー にとりより魅 力
作り出すことに疑いはない。
的にするには、実 行 中 の 国 内 改 革を 進 展さ せ なけ れば なら
な い。GCC の 6 加 盟 国 のうち 世 界 銀 行 の 2010 年 版 "Doing
Business" 報 告 書 の上位 20 カ国に入るのは、11位のサウジ
(“The New Web of World Trade,” by Joe Saddi, Karim Sabbagh,
and Richard Shediac, strategy+business, Issue 64 Autumn
2011)
アラビ ア だ け だ(バー レ ーン 28 位、UAE40 位、カ タ ール 50
位)。これらは、事 業 を 立 ち上 げ・投 資 の 煩 雑 な 手 続 を 軽 減
し、事 業 の 透 明 度 を高 め、政 府 の 関 与が 高 い 産 業 に 民 間 部
門投 資を呼び込むことが必要だ。また、非常に重要なスキル
を持つ 外 国 人に同 地 域 がより魅 力 的に映るようにして人材
基盤を強化する一方、自国民の人材開発を進め、エネルギー、
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