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2010年研修レポート(イギリス)

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2010年研修レポート(イギリス)
1.研修の概要
今回、TOSHIBA Medical Visualization Systems Europe 社(以下 TMVSE)の情報科学研究を行
っているプロジェクトに参加し、研修を行った。TMVSE では主に CT や MRI などの医用画像に
関する業務を行っている。私が参加したプロジェクトでは、医用画像を管理するシステムの開発等
を担当している。今回の私の研修の内容は、主に以下の2つに分けることができる。ただし、機密
とされていることが多いため、具体的な事を記せない部分もある。
1. 他社のオープンソースソフトウェアに関する調査
私が所属していたプロジェクトは、以前からあるオープンソースのソフトウェア A に注目していた。
ソフトウェア A は CT や MRI などの医用画像を表示、管理できる。また、実際の放射線科での検
査の予約・受付から結果の報告までの作業の流れを管理することもできる。この A の使用方法、
機能の詳細を明らかにすること、また、実用的かどうか、問題点があるかどうかを調査することが第
一の作業であった。
2.オープンソースソフトウェアの改良
A はオープンソースとして配布されているため、誰でも A のソースコードを入手し、変更を加える
ことができる。今回の研修では、どのような点で A の機能を拡張できるか調査し、実際にいくつか
の機能を追加した。また、それに関連して、既に TMVSE で開発されていた技術を A に適用する
という課題も与えられた。
研修最終日に上記の課題に対する成果を、全社員の前で発表した。後日、私のスーパーバイ
ザーが私が作った発表資料を用いて、A を開発した会社の社長にプレゼンテーションを行ったよ
うである。
2.研修の詳細と現地での生活
1.研修の詳細
今回の研修では、情報科学を担当するプロジェクトに参加し、他社のオープンソースソフトウェア
A に関する調査と、その改良を行った。A はさらに3つのソフトウェアに分ける事ができる。1 つは
医用画像をデータベースからダウンロードし、それを表示するというもの(以下 A1)であった。2 つ
目は医用画像をデータベース化し管理するソフ
トウェア(以下 A2)、3 つ目は、放射線科での撮
影の予約から、検査、結果の報告までの作業の
流れを管理するソフトウェア(以下 A3)であった。
この 3 つのソフトウェアの関係を図で示すと右
のようになる。
この3つのソフトウェアの使用方法や機能、ま
た、実用的か、一般のユーザにも使いやすいか
等を調査するのが第一の仕事であった。簡単
に A1 が持つ機能を説明すると、A2 からダウン
ロードした CT や MRI の画像の明るさの変更、
内蔵や腫瘍等の断面の面積の測定、また、例
えば胸から腰まで連続して撮影された画像があ
った場合、横(腕側)、正面からの断面の表示などができる
事がわかった。
また、A はソースコードだけでなく、拡張機能の開発環境
も提供しており、ユーザが自由に変更を加える事ができる
ようになっている。それを利用して実際に A の拡張を行っ
た。具体的には、医用画像以外の画像の表示、画像のデ
ータの操作などである。さらに、TMVSE が開発した製品に、
連続した CT 画像から、立体画像を生成したり、そこから
骨だけを抽出したりできるものがあり、その技術を A に適
用するという作業も行った。立体表示は時間の関係上間に
合わなかったが、骨のみを表示する機能は加える事ができ
た。
2.苦労した点
まずは、TOSHIBA と聞くと誰かしら日本人がいそうなイメージだったが、1人もいなかった。私の
英語力がひどく低かったため、常にコミュニケーションに支障をきたしてしまった。また、A の調査、
改良をする際、A は私が以前使用した事の無かったプログラミング言語で記述されており、ソフトウ
ェアとしての規模も、今まで扱ってきたものよりも遥かに膨大であったため、どこから手を付けてよ
いのかわからなかった(これで勉強するとよいと渡されたテキストも難解な英語であった)。
最も困難だった点は、TMVSE の画像処理技術を A に組み込む作業である。まず、TMVSE の
技術と A はそれぞれ異なるプログラミング言語で記述されていた。この二つの言語を結びつける
作業は、本格的なアプリケーションの開発経験が無い私にとって、非常に困難なものであった。こ
れはプログラミングに詳しい社員の方にアドバイスを頂きながら解決した。
次に、「企業秘密」という壁も大きな障害となった。一般的にアプリケーションは、そのアプリケー
ションが持つ機能や処理のリストであるヘッダファイルと、実際の処理の内容・仕組みが記述され
ているソースファイルからなる。A はオープンソースであるため、両方を閲覧・変更する事ができる
が、TMVSE で開発された画像処理プログラムは、ヘッダファイルしか見せてもらえなかった。実際
の画像処理アルゴリズムが記述されているソースファイルは一部の社員しか閲覧できなかった。そ
のためほとんど勘を頼りに2つのソフトウェアを結びつけざるをえなかった。
3.会社での生活
TMVSE 社の業務規定ではコアタイムが定められており、10 時から 12 時と 14 時から 16 時がコ
アタイムとなっていた。ほとんどの社員は 8 時から 9 時に出勤し、17 時前後に出社していた。私の
仕事は基本的にプログラミングが中心であったが、日本ではプログラマーは残業が多いのに対し、
こちらでは遅くまで残業するケースはほとんど無いようである。実際、17 時になると、さっさと仕事を
切り上げ、スポーツ等の自分の趣味に時間を費やす人が多かった。TMVSE 社内には2つキッチ
ンとダイニングがあり、昼休みにはダイニングで他の社員の方といっしょに食事をした。
また、夏という事もあってか、休暇を頻繁に取る人が多かった。私のスーパーバイザーも 8 月い
っぱいは育児休暇を取り、それ以外の休暇や出張な
どもあり、ほとんど会う事がなく、正直困惑した。
8 月中旬には、会社が企画したビーチパーティーが
あった。バスで近くの海岸まで移動し、会社が呼んだ
ケータリングサービスのバーベキューを食べ、バーで
お酒を飲みながら、普段関わりのない部署の社員の
方との会話を楽しんだ。そのパーティーでは、社員の
中にも比較的年齢が近い人がいる事がわかり(外見で
同世代を判断するのは難しい)、今でも時々連絡を取
り合ったりしている。
4.普段の生活
普段はエディンバラの中心部に近いところで生活し
ていた(2 回も引っ越ししたが)。日本のように一つの
部屋に一人で住む訳ではなく、寝室がいくつもあり、
キッチン、バスルーム、ダイニングを共有しながら数人
で共同生活を送った。同じ IAESTE を利用してエディ
ンバラに来ている研修生も大勢いて、毎日のように誰
かしらの部屋で飲み会をしていた。非常に多くの国か
ら研修に来ていて、ヨーロッパだけでなく、インド、コロ
ンビア、カザフスタン、モンゴル、タイなどからも来てい
る学生もいた。
8 月までは IAESTE Scotland が企画する旅行が毎
週末あり、グラスゴー、スターリングなどスコットランド内
の観光地に行った。グラスゴーはスコットランドで最も
人口が多い都市で(ただし首都はエディンバラ)、大き
なショッピングセンターがある。また、博物館も多数存
在し、IAESTE による旅行では主に複数の博物館を
回った。かつてのスコットランド王国の首都、スターリン
グでは、スターリング城やウォレスモニュメントなど歴
史ある建造物を回った。これらの旅行にはエディンバ
ラに滞在している学生だけでなく、他の都市で研修
を行っている学生も参加するので、一回の旅行で友
人がたくさんできた。個人的にも、ハリーポッターにも
登場した世界最古のコンクリート製の高架橋「グレン
フィナン高架橋」があるフォートウィリアムや、イングラ
ンドによる虐殺事件のあったグレンコー山などに行っ
た。
エディンバラはスコットランドの首都であるが、治安
もよく、人口も 46 万人と少ない。そのため街中も歩き
やすく、気軽に散策できた。主に回った名所は、エ
ディンバラ城や、エディンバラ市街を見渡せるカール
トンヒルなどである。伝統的な町並みが残っているの
で、歩いているだけでも楽しいと思う。しかし、気候は
非常に耐えがたかった。雨はほぼ毎日降り、頻繁に
天気が変わる。ひどい時は 10 分置きに天気が変
わっていた。また、ほとんどの店舗は 19 時前にし
まってしまうので若干不便だった。最も苦労したのは、
スコットランド英語である。若い人は比較的聞きやす
い英語を話すが、40 代以上ぐらいの人は強い訛りを
持っている。アメリカ人やイングランド人でも理解できないという。気候などは慣れることができるが、
こればかりはあきらめるしかなかった。
今回の研修が初めての海外だったため、かなりの数のトラブルがあった。キャッシュカードの暗
証番号を 3 回連続で間違え、給料を前借したり、財布をバスの中に忘れ、2kmほどバスを走って
追いかけたり、しまいには帰国直前にパスポートを無くしてしまった。しかし、普通の人が何年もか
けて経験するようなトラブルを、たった 3 ヶ月で経験したため、今後はより注意深く行動できると思
う。
5. まとめ
今回のインターンシップを通して、就業経験を積めることができただけではなく、日本とは全く違
う文化・価値観も体験することができた。初めは戸惑うものの、次第に興味深く思えるようになった。
しかし、働くにしても、生活するにしても、自己主張の重要性は深く痛感し、もっと(何事にも)積極
的になるべきだったと反省させられた。いずれにしろ、私の海外インターンシップに参加した目的
である「成長」は達成できたのではないかと思う。再来年は企業で働いていることになるが、就職し
てからでも、海外を積極的に視野に入れていきたい。このような機会を提供してくださった IAESTE
日本支部の方々を始め、現地 IAESTE のスタッフ、LC メンバー、研修生の仲間たちに心から感謝
したい。
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