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ツインフローファン等専用構造採用の 消音ボックス付送風機
【日本機械工業連合会会長賞】 ツインフローファン等専用構造採用の 消音ボックス付送風機 (キャビネットファン モデルナンバー3シリーズ) パナソニック エコシステムズ株式会社 愛知県春日井市 1. 機器の概要 建物の機械室スペース縮小等の建築ニーズにより、天井裏など居室に隣接した 空間へのダクト換気用送風機の設置が増加し、送風機自体の薄型コンパクト化、 低騒音化のニーズが高まっている。そのような中、市場要望に近い商品群の消音 ボックス付送風機(当社商品名:キャビネットファン)の需要が伸張している。 今回、消音ボックス付送風機に適した専用羽根車・ファンケーシング・風路構 造を新開発。高静圧大風量化・薄型化・低騒音化等の市場ニーズに対応しながら 低消費電力化を進めた新型キャビネットファンを、2008 年7月より順次シリーズ 展開しながら発売した。 (写真1) ・基本機種 :静音形・消音形キャビネットファン ・用途別機種 :耐湿形・厨房形・消音給気形・消音給排形キャビネットファン ・風量拡大機種:キャビネットファン大風量タイプ(消音形・耐湿形・厨房形) 写真1 消音ボックス付送風機(消音形キャビネットファン) 2. 2.1 機器の技術的特徴および効果 技術的特徴 (1) 羽根車 消音ボックス付送風機は、両吸込型シロッコファンをモーターに直結駆動し て消音ボックス風路内に配置し、コンパクト化とモーター冷却を図った構造が — 22 — 主流であるが、モーター自体が消音ボックス内部の風路抵抗となることで、モ ーター側ブレードは風量を得にくい。今回の開発品はこの従来の課題に着目し た。 両吸込型シロッコファンのブレードの断面形状と長さを、羽根車中央付近の 主板の左右、つまりモーター側と反モーター側で変えることで、ブレードを最 適化した羽根車“ツインフローファン”を開発。(図1) モーター側は高静圧小風量特性、反モーター側は大風量低静圧特性とするた め、モーター側は、羽根車の外径に対し内径を小さくしてブレード幅(弦長) を大きくし、静圧を確保。反モーター側は、ブレード幅(弦長)を小さくして ブレード間の流路幅は広くしながら吸込口径を拡大して、風量を確保しやすく した。 図1 羽根車構造図(ツインフローファン) (2) ファンケーシング 風速の速い部分はスクロール(ファンケーシングの背板)を大きくし、風速 の遅い部分はスクロールを小さくすることで、気流のムラを少なくしたファン ケーシング“テーパード・スクロール”を開発。(図2) ファンケーシングの吐出口部をテーパー形状とし、羽根車の主板部は吐出口 高さを大きくし、両端部にいくほど吐出口高さを小さくした特殊な形状である。 ■内部風速分布気流解析結果 テーパー部 吐出口高さ: 大 吐出口高さ: 小 テーパー形状部にて風速を均一化 図2 ファンケーシング構造図(テーパード・スクロール) — 23 — (3) 風路 消音ボックス内の気流をスムーズにした消音ボックス付送風機専用の風路 “スライダーフロー”を各機種の仕様に合わせて開発した。 (3-1) マルチ・スライダーフロー(静音形・消音形・消音給気形・消音給排形) 内蔵送風機の羽根車吸込口に向けた複数の風路を設けることで、消音ボッ クス自体の圧力損失を低減して低消費電力化しながら、内部風速を穏やかに し低騒音化した風路“マルチ・スライダーフロー”を開発。(図3) 吸音材は、整流用の凸形状や底部に風路空間を設ける等、特殊な形状とし た。ファンケーシングには、通風開口を設け風路を形成。また、羽根車の大 風量特性側・高静圧特性側に合わせ、反モーター側風路をモーター側風路よ り幅広くとることで風路を最適化した。 図3 風路構造図(マルチ・スライダーフロー) (3-2) ボトム・スライダーフロー(耐湿形・厨房形) 製品底側のドレンパンを天側の消音ボックスと一体化することで、ドレン パン内部を風路化し、さらにドレンパン内部に吸込気流を導く気流ガイドを 設けた風路“ボトム・スライダーフロー”を開発。ドレンパン空間を風路の 一部として、消音ボックス自体の圧力損失を低減し、低消費電力化・低騒音 化した。 (3-3) ネオ・スライダーフロー(大風量タイプ) 複数の内蔵送風機を前後左右に相対位置をずらして配置し、お互いの気流 干渉を避けた風路“ネオ・スライダーフロー”を開発。消音ボックス内に複 数の内蔵送風機をコンパクトに搭載して最大約 13,000m3/h(60Hz 時)の大 風量としながら、消音ボックス自体の圧力損失を低減し、低消費電力化・低 騒音化した。 — 24 — また、既存のベルト駆動遠心送風機に対しては、直結駆動としベルトスリ ップロスを無くし、また直線的なダクト接続を可能としダクト曲げ回数が削 減できることでダクト圧力損失を削減、省エネルギー化に貢献できる。 2.2 効果 静音形・消音形キャビネットファンにおいて、開発品(モデルナンバー3シリ ーズ)と当社従来品(モデルナンバー2シリーズ)との代表静圧風量時の消費電 力の比較で、本開発品はシリーズ平均で消費電力 10%減となる。 (図4) 各種専用構造の採用にて基本性能も向上し、最大静圧は 10%増、製品高さは 15%減、側面騒音は 2.5dB 減とできた。 (消音形モデルナンバー3と2の比較) また、耐湿形・厨房形キャビネットファンでは、シリーズ平均で消費電力 13% 減。キャビネットファン大風量タイプでは、開発品と従来品で風量静圧性能が大 幅に異なるため静圧比消費電力にて比較、シリーズ平均で静圧比消費電力6%減 が実現できた。さらに、全シリーズで行なった薄型コンパクト化・低騒音化は、 原材料の使用量抑制や現場消音施工の削減にもつながっている。 また、将来のライフエンドも考慮。各パネルを簡単な工具で分解し易いねじ締 結構造とし、部品ごとの分別でのリサイクル分解性に配慮している。 (図5) 図4 消費電力比較(消音形の例) 図5 分解図(消音形の例) 3. 用途 国内においては国家機関(庁舎・大学等) 、公共団体を含む地方自治体(市庁舎・ 清掃工場・病院等) 、民間企業(工場・商業施設等)など様々な施設に納入されて おり、主に大空間の換気を必要とする施設にて使用頂いている。また、海外市場 (中国・アジア等)においても、キャビネットファンの需要は大きい。 開発品の使用は、換気設備に対する省エネルギー化の社会的ニーズの高まりや、 環境対策に大きく貢献できる。 — 25 —