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数値管理生産技術への進展

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数値管理生産技術への進展
4
2
0
生 産 研 究
3
7巻 11号 (
1
9
8
5.
l
l
)
UDC 5
1
9.
6:6
5
8.
5
1
特集号刊行によせて
数値 管 理 生産 技 術 へ の進 展
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鈴 木
弘*
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生産技術では, よるべき理論的根拠が乏 しく,経験の
験装置の計測値 により求めるのが第 2の方法である.
蓄積によって技術体系が構成 されていて,実生産への適
生産技術の永年の歴史において, これが行われないで
用には鋭い勘が要求 される. このように,工学化の遅れ
経験 と勘 とに凝 らざるをえなかったのは,上記の特性の
た分野 との見方が, きわめて最近 まで主流であった.
理論的解析 と実測 とがいずれ も極度に困難なため,両方
工業用材料については,金属工学および化学工学の基
法 とも実現 しなかったのであるが,板の最大の生産技術
礎研究のための研究組織が設置され,機械および装置の
0年間にこの分野で
である圧延について,わが国で最近 2
設計のためには大陣容の設計部 と研究所 とを持つことが
の大 巾の進歩が実現 して世界 をリー ドするに至 ったの
必要条件 とされ, ともに百年に近い歴史がある.
で, これを紹介する.
しかし,企業に生産技術部が設置されて,生産技術 を
タンデム圧延機は,5
-7台の大型圧延機の集合体の大
研究する体制が採 られた歴史ははるかに新 しい. まして
設備であって,
独立変数の数は 5
0
-6
0個の大 システムで
5年前であ
生産技術研究所 を企業が持ったのは,わずか 1
ある. また各圧延機の最大圧延力は 3
,
0
0
0トン,圧延最
り,鉄鋼大手 と電気機器の大手数社のみである.
高速度 は 2,
4
0
0メー トル毎分, しか も製品に要求される
日本の今 日の経済繁栄を支えたのは,高品質の工業製
品の量産であるが,その原動力は新開発の材料や画期的
板厚精度は数 ミクロンである.解析的手法で高精度の結
果を求めるには大 きな困難がある.
な新設計は少な く,生産技術であった. この事実 と企業
,
0
0
0
o
Cを越 え, しか も圧延中
また材料の最高温度は 1
の生産技術研究体制の不十分な整備 とのアンバランスは
は圧延機 には数千 リットル毎分の冷却液がそそがれるの
大 きい. この矛盾は,生産技術 もまた材料技術 ・設計技
で,計測機の開発 も難事である. しかし日本では両種の
術 と同様 に,戦後導入技術 を基礎 として, これにキメ細
困難な条件 をク リアーして,解析 ・実験の両手法によっ
かい改良進歩 を加 えることによって高水準の生産技術 を
て,タンデム圧延の特性を明 らかにしえたのである.
実現 した歴史によって生 じた ものである.
日本の工業製品の洪水が全工業先進国の脅威 となった
開発 された主な計測機 には次のものがある.悪環境下
で も作動す る圧下力計,高速走行 の材料の板厚分布 を
現在では, もはや海外からの技術導入に頼 ることは許 さ
0.
1%の精度で測定するクラウン計,高速走行 中の板の
れない.生産技術の分野においても,独 自の創造的ある
伸率の巾方向分布を 1
04 の精度で計測する形状計,高速
いは先行的な技術 を開発 して,それによって生産活動を
走行中の鋼板の ミクロン以下の粗度の計測計, これ らは
続けなければならない.
いずれ も計測を不可能祝されていたものである.
このためには,経験 と勘 との生産技術か ら脱皮 して科
わが国の最新のタンデム圧延機には,圧延中の温度 ・
学に立脚 して新最術 を開発 しうる体制に切 り替 えねばな
寸法 ・形状を,その分布 までを含めて 2
,
0
0
0個所以上で
らない.わが国では,鉄鋼業が技術貿易黒字の唯一の産
計測するものがある.理論で予測される数値 との差があ
業であって, しか も十余年前から技術輸出が輸入を上回
る場合 には,偏差を生 じた工程 をただちに探索 して,圧
っている.すなわち,鉄鋼生産技術が科学に立脚 した近
延条件 を修正 して製品の晶質を正す. これ らをすべて電
代技術への脱皮 を実現 している. これを例 として生産技
算機に実施 させる数値管理圧延技術 まで も誕生 した.
術の経験 と勘か ら科学的技術への近代化 を述べる.
加工工程の理論的把握,特性の数式表現,圧延条件各
生産技術の科学準拠形への脱皮のためには,加工工程
因子および圧延結果諸数値の洲定,電算機 による計算が
の機構 を明 らかにして,多数の加工条件因子が加工結果
すべて実現 してはじめて達成 しうる技術であるが,その
に及ぼす影響 を明 らかにして,その特性を明 りょうに把
効果は非常に大 きい.最適作業条件 を求め, これを再現
握することが第一条件である.
この特性の把握には 2方法がある.加工条件因子を独
立変数 とし,加工結果 を従属変数 として,特性 を数式で
表現するのが第 1の方法であ り,多種類の計測機器を装
備 して,実生産機の実測値 により求めるか,あるいは実
事東京大学名誉教授
しうるばか りでな く,新 しい技術要求に対 して,最適作
業条件 を探求することが可能 となり,将来への対応能力
は経験準拠 とは比較にならない.
圧延に限 らず,すべての生産技術の目標 に数値管理生
産技術 を据 えることが望 まし0.
(
1
9
8
5年 8月 1
5日受理)
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