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軽度発達障害児支援のあり方に関する - 岩手県県立学校一覧岩手県

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軽度発達障害児支援のあり方に関する - 岩手県県立学校一覧岩手県
知的障害養護学校の特別支援教育センターにおける、
軽度発達障害児支援のあり方に関する-研究(2)
あじさい特別支援教育センター
軽度発達障害児支援プロジェクト
(岩手県立花巻養護学校)
平成 17 年度
はじめに
「特別支援教育」への流れは、中央教育審議会の「特別支援教育を推進するための制度の在り方」
(答
申)でも示されているとおり、教育改革の奔流となりつつあることを痛切に感じる。今後、養護学校に
おいても、名称が特別支援学校となり、地域のセンター的機能を果たすべく変革を求められているとい
えよう。
この答申の中で、養護学校の地域におけるセンター的機能の具体的内容が以下のとおり示されている。
①小・中学校等の教員への支援機能
幼児児童生徒への指導機能
②特別支援教育等に関する相談・情報提供機能
③障害のある
④福祉、医療、労働などの関係機関等との連絡・調整機能
⑤小・中学校
等の教員に対する研修協力機能
⑥障害のある幼児児童生徒への施設設備等の提供機能
本校においてセンター部が平成15年9月に開設して以来、手探りの中で、このほとんどの内容に取
り組んできている。そして、その成果や有効性とともに、様々な課題が浮彫りになってきたといえる。
さて、これからの動きはどうなるのか。
その中の一つに、現在は、その数は少ないとはいえ、今後、特別支援学校への移行も相まって、知的
養護学校を軽度発達障害児が進路先や転入先として選択する可能性が高いということである。特にも、
高等部においては、地域の学校から入学してくることは、現在の通常の小中学校の教育環境及び、後期
中等教育の現状を考えてみれば、養護学校の高等部を進路先と考えることは、今後も増えていくものと
考えられる。
また、小中学校における軽度発達障害に対する認識は、制度的な改革・法令等の整備も進んでいる中
で、理解が進んできているとはいえ、
「気づき」の段階から、
「具体的な支援のあり方」の段階までの道
のりは遙かなるものがある。これには、具体的な実践を積み重ね、支援の輪を広げていかない限り、着
実には進んでいかないものであると考えられる。
さらに、知的養護学校における軽度発達障害児に対する支援のあり方はどうあるべきか?
センター
的機能という大風呂敷を広げながらも、やみくもに支援を行っていくことに効果があるとは思えない。
そのためにも、学校という組織の中で、先を見通した継続性のある支援を我々は探っていかなければな
らない。
本研究は、3年次研究の2年目を迎え、1年次の研究の成果を踏まえながら、特にも、SST教室(あ
じっこ)において、一歩進めた形で、実践を行った。また、対象地域における支援のあり方についても、
保護者談話室を北上市内で行うことで、より地域に根ざした支援を進めることができたのではないかと
考えられる。その一方で、次年度への本研究の在り方を探るうえで、さらなる課題も明確にすることが
できた。
これらのことを微力ながら、本研究2年次目として本冊子の中で明らかにすることによって、軽度発
達障害に対する教育的な支援がさらに進むことを祈念してやまない。
平成18年3月
あじさい特別支援教育センター部
SST教室(あじっこ)スタッフ
一同
目
次
それぞれの項目をクリックすると、該当のページに移動します。
Page
はじめに
Ⅰ
問題
A
軽度発達障害の概念について(追記)
1
B
SST(ソーシャルスキルトレーニング)について
3
C 今年度の国内等の動向
4
Ⅱ
概要
5
Ⅲ
目的
5
Ⅳ
方法
5
Ⅴ
内容
5
Ⅵ
研究計画
6
Ⅶ
結果
A
Ⅷ
実践報告:児童支援
6
B 実践報告:保護者支援
21
まとめと今後の課題
23
<資料>
資料1:支援の方針(哲学)
25
資料2:活動計画(例)
27
資料3:児童の活動記録・評価用紙(例)
28
資料4:活動の要素の分析
29
資料5:写真・絵付き選択型ワークシート
30
資料6:B児の評価・記録
31
資料7:F児の評価・記録
32
資料8:保護者アンケート集約
33
Ⅰ
A
問題
軽度発達障害の概念について(追記)
昨年度の研究のまとめの中で、軽度発達障害の概念について、一通りまとめてはいるが、新たな法律
も制定され、網羅できなかった点と近年の国内外の諸氏による研究も進められてきている中での知見も
含め、ここに一歩進めて記載したいと考える。
1
発達障害者支援法における「発達障害」の定義
平成17年4月より、発達障害者支援法が施行された。今まで福祉的なサービスを受けることが
できなかった発達障害者も、適切なサービスが受けられるようにという主旨のもと、この法律が成
立したと考えられる。
さて、この発達障害者支援法における「発達障害」とは、以下のとおり示されている。
(定義)
第二条
この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学
習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢にお
いて発現するものとして政令で定めるものをいう。
政令第百五十号 発達障害者支援法施行令
第一条
発達障害者支援法(以下「法」という。)第二条第一項の政令で定める障害は、脳機能の障害であ
ってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、言語の障害、協調運動の障害その他厚生
労働省令で定める障害とする。
厚生労働省令第八十一号
発達障害者支援法施行規則
発達障害者支援法施行令第一条の厚生労働省令で定める障害は、心理的発達の障害並びに行動及
び情緒の障害(自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性
障害、言語の障害及び協調運動の障害を除く。
)とする。
この中で示されている「発達障害」とは、WHOのICD-101)の診断カテゴリーで、心理的
発達の障害(F80-F89)、小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F
90-F98)という広範囲の障害を示すものである。例えば、分離不安障害、選択(性)かん黙、
さまざまなチック障害などもこの範疇に入ることになる。
このことから、発達障害者支援法においては、ADHD、LD、自閉症などと限定するものでは
なく、様々な発達障害に対応していくということが伺える。
2
軽度発達障害のとらえ方について
文部科学省のLDの定義(1999)2)においては、「・・・全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、
話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す
状態を示すものである。・・・」というように、実際の学習場面で、現実に困っている状態を踏ま
えた広義の定義がなされている。
しかし、近年の研究によると、純粋なLDというのは、例えばディスレクシア(発達性読み書き
障害)など、限られているのではないかという考え方も出てきている。ADD(注意欠陥障害)な
どが元々の原因となり、特定の学習に影響を及ぼしているケースも多いと考えられる。いずれにせ
よ、正しい判断や診断とともに医療的な支援を行う中で、目の前の子どもの困り感に即した指導が
1
2
望まれるのであろう。
また、岡野・ニキ(2002)3)をはじめ、ADHDや自閉症のスペクトラム性について述べられるよう
になってきている。その障害の程度が、遺伝的な素因の組み合わせと環境が、相互に影響し合って、
障害の程度にスペクトラム性を帯びてくることは、当然ながら推察できる。
ただし、そのスペクトラム性が、ADHD傾向と自閉的傾向という二つの軸の濃淡の現れのみと
して捉えるべきかどうかについては、脳機能の詳細な分析等今後の研究の成果を待たなければなら
ないと思われる。例えば、DAMP症候群「注意・協調運動・認知の複合障害」(dificitis in
attention,motor control,and perception)という概念などもスウェーデンのジルボーグらが中心と
なり提唱したりしている(田中 2001)4)。
3
軽度発達障害の概念
近年、軽度発達障害について様々な考え方があり、総じて見ると、決まった定義というものがあ
るわけではない。医学的に、発達障害は、LDやADHD、自閉症というものに限らず、「乳児期
(児童期)に、中枢神経系の障害によって現れる、基本的な症状の変化がみられない」という特徴
をもつ障害である。日本において、軽度発達障害は、その中でも「知的障害がないか、あっても軽
度である発達障害」と一般的にはとらえられているといえよう。
引用・参考文献等
1)
厚生労働省:統計調査結果「疾病、傷害及び死因分類」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/index.html
2)
文部省(1999):学習障害及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒の指導法に関する調
査研究協力者会議『学習障害児に対する指導について(報告)』
3)
岡野高明・ニキ.リンコ(2002):教えて私の「脳みそ」のかたち
大人になって自分のADHD、
アスペルガー障害に気づく.花風社
4)
田中 康雄(2001):ADHD の明日に向かって―認めあい・支えあい・赦しあうネットワークをめ
ざして.星和書店
2
B
SST(ソーシャルスキルトレーニング)について
1
ソーシャルスキルとは?
ソーシャルスキルとは、幅広い専門領域や、その理論的立場・適応の範囲から、歴史的にみてもさ
まざまな定義がなされてきていて一致した結論はない。
広義には、社会生活上必要な技能全般的なことであるが、特に対人的な関わりにおける技能を指す
こともある。ADHDや高機能自閉症など行動上の困難をもつケースでは、興味関心や注意の向け方
に偏りがあったり、対人的な関わりや集団行動への意欲が低いために、ソーシャルスキルを学習する
機会を逸してしまったり、感情や行動のコントロールが未熟であるために適切にソーシャルスキルを
使用することが難しいことも多い(上野 2005)5)。
そのためにも、軽度発達障害の子どもたちに、意図的にSST(ソーシャルスキルトレーニング)
を行うことは、意義のあることである。
また、各発達(年齢)段階で習得すべきスキルには違いがあり、就学前や低学年であれば、感情・
行動のコントロールや集団行動が大切になり、小学校高学年になると仲間とのコミュニケーションと
いうように図1で示したように変化していく(岡田 2006)6)。なお岡田は、ソーシャルスキルの指導と
いった対人技能や学習面だけに着目するのではなく、生きる力としてのLife Skillsという枠組みで捉
えている。
成人期
就労・余暇
青年期
対人技能
生活技能
思春期
学童期
感情・行動のコントロール
幼児期
図1 発達段階による Life Skills
SST(ソーシャルスキルトレーニング)について
2
本校における軽度発達障害児支援事業で行われているSST(ソーシャルスキルトレーニング)
は、ゲームを中心に楽しく行う活動を通して、スキルを教えていくというエクササイズを中心とし
た取り組みを行っている。
指導内容としては、「集団参加行動」「コミュニケーション」「感情の理解」などがある。
小貫(2004)7)は、表1のとおり、その指導領域を示している。
表1
1.集団参加行動
ルール理解・遵守スキル、役割遂行スキル、状況理解スキル
2.言語的コミュニケーション
聞き取りスキル、表現スキル、質問/回答スキル、話し合いスキル、会話スキル
3.非言語的コミュニケーション
聞き取りスキル、表現スキル、質問/回答スキル、話し合いスキル、会話スキル
4.情緒的行動
自己の感情理解スキル、他者の感情理解スキル、共感スキル
5.自己・他者認知
自己認知スキル、他者認知スキル、自己-他者認知スキル
3
具体的な指導方法としては、教示やモデリングを行い、目標となる行動を促し、シールや賞賛を
用いたフィードバックをとおして、行動の強化や修正を図るというものである。また、活動の後の
カードへの記入をとおして、行動を客観的に振り返ってみるという認知的な側面へのアプローチも
行っている。
また、評価の観点として、前年度の研究でも示しているとおり、「依存的・受動的行動」「自主・
自律的行動の芽生え」「自主的・自律的行動」というように3段階でとらえている。これについて
は、対象児と支援スタッフの関係性にも着目し、計画・実践・評価という枠組み(IEP-PDS パッ
ク)の中で評価していく。
さて、SST(ソーシャルスキルトレーニング)の有効性については、特に「般化」の問題が取
り上げられることが多い。SST教室の場では、うまくできた行動が、他の日常場面でもできるよ
うになるのか?
7)
そして、それをどう評価していけばいいのか?
この点に関して、小貫(2004)
は、スポーツにたとえて「SSTは“基礎体力トレーニング”、学校(日常)場面は“試合”その
もの」という説明をしている。SST教室では一つ一つのソーシャルスキルを確実に身につけるこ
とを目指す。しかし、日常生活の場面では、より複雑な要素が絡み合い、うまくできるかどうかと
いうのは微妙である。しかし、なにもしていない状態では、大怪我をしてしまう可能性がある。
この般化の問題については、保護者談話室や学校への支援として取り組んでいるところであるが、
今後検討していく必要がある課題だといえる。
C
今年度の国内等の動向
国内的にみると、2005年4月に、発達障害者支援法が施行され、発達障害者に対する国の福祉
施策が本格的に始動したといえる。
また、日本発達障害ネットワークが12月3日に発足し、
「NPO 法人
法人
えじそんくらぶ」
「NPO 法人
アスペ・エルデの会」
「NPO
EDGE」「全国LD親の会」「社団法人
日本自閉症協会」の 5
団体を発起団体として、全国の団体・研究会なども含めた幅広いネットワークを目指そうとしている。
岩手県においては、2005年3月に、県内の専門家や学校職員を始めとする関係者が集まり、連
絡協議会「いわて軽度発達障害ネットワーク」が結成された。また、12月1日には、「岩手県発達
障害者支援センター」(県立みたけ学園内)が設置され、岩手における発達障害者及び発達障害児に
対する支援を総合的に行う拠点ができたといえる。
引用・参考文献等
5) 上野一彦・柘植雅義・緒方明子・松村茂治(2005):特別支援教育基本用語 100―解説とここが知り
たい・聞きたい Q&A 特別支援教育辞典.明治図書
6) 岡田 智(2006):LD&ADHD 2006 年 1 月号「生きる力」をつけるソーシャルスキルトレーニ
ング
事例
小学校低学年の児童へのソーシャルスキルの指導.明治図書
7) 小貫 悟・三和 彩・名越 斉子(2004):LD・ADHD へのソーシャルスキルトレーニング.日本文
化科学社
4
Ⅱ
概要
あじさい特別支援教育センターにおいて、軽度発達障害児支援のニーズは高いが、その
対応は軽度発達障害に関する知識や経験がある特定のスタッフに頼る割合が高かった。知
的障害養護学校では軽度発達障害児支援のノウハウがない(ポテンシャルが低い)という現
状である。個人ではなく組織として支援のノウハウを共有・蓄積し、必要に応じて情報を
発信できることが急務である。
そこで、あじさい特別支援教育センター内に軽度発達障害児支援チームを結成し、軽度
発達障害児支援事業を立ち上げた。平成 17 年度からは、プロジェクト研究のひとつと位置
づけ、あじさい特別支援センターを中心に、校内から有志を募って事業を継続、研究する
こととした。
Ⅲ
目的
軽度発達障害児支援に関するノウハウを実践的に獲得し、それを組織の成果として共有、
蓄積し、発信できることを目指す。
Ⅳ
方法
あじさい特別支援教育センターにおける支援体制、支援内容・方法のあり方について、プ
ロジェクト事業の実践部門である保護者支援事業及び児童支援事業における実践の結果を
もとに検討・考察する。
Ⅴ
内容
(1)文献研究
①養護学校におけるセンター機能について
②軽度発達障害児の理解と支援方法について
③軽度発達障害児および保護者の心理について
(2)実践活動に基づく事例研究
①保護者支援(北上教育事務所管内の保護者を対象とする)
目的:保護者にとって悩みを打ち明けたり、相談しあったり出来る場、仲間作りの
場を提供する。研究にとっては保護者のニーズや、保護者から見た児童のニ
ーズを把握する場とする。
方法:「談話室あじわい」と称する会合を月 1 回開く。スタッフが 2 人入り会合をコ
ーディネートする。
②児童支援(北上教育事務所管内の児童を対象とする)
目的:ゲームなどを通して、ルールやマナー、人付き合いなどのソーシャルスキル
を身につけることをめざした場とする。スタッフにとっては実践を通して経
験を積む場とする。
方法:
「SST(ソーシャルスキルトレーニング)教室あじっこ」を開催する。内容は、
はじめの会、ゲームなどのグループ活動、おわりの会で、支援スタッフがマ
ンツーマンでつく。また、反省会で活動の様子を記録し、ケースワーカーが
5
まとめる。スタッフとしては、外部からも療育スタッフ、教員などを募る。
③教員支援(花巻、北上、遠野地区の小中学校、高等学校の教職員を対象とする)
目的:軽度発達障害に関する研修を行うとともに、情報交換の場とする。
方法:「サポーターズ・ミーティング」と称するセミナーを長期休業中に開催する。
(3)研究報告書の作成・発信
支援対象地域の関係機関、必要と思われる県内外の教育関係機関及び各地のインフ
ォーマルな支援グループに発信する。
Ⅵ
研究計画
1 年次
養護学校における支援体制の検討。
2 年次
実践の継続、検討。地域支援ネットワークの検討。
3 年次
支援モデルの提起。
Ⅶ
A
結果
実践報告:児童支援
(1)「SST 教室あじっこ」の目的
「SST 教室あじっこ」の目的は、昨年度と同じく、以下三点である。
①支援対象地域の軽度発達障害児支援に資すること、具体的にはソーシャルスキルの
向上を図る。
②あじさい特別支援センタースタッフの軽度発達障害児理解に資すること。
③軽度発達障害児支援の具体的な方法を模索し、開発、蓄積すること。
(2)「SST 教室あじっこ」の方法
①「SST 教室あじっこ」の対象は、北上教育事務所管内(北上市、西和賀町)小学校在
籍児童およびその同胞(以下、きょうだいと記す)である。北上教育事務所や北上
市の幼児教室(療育センター)を通じて参加児童を募集、他に本校が相談を受けた
児童に参加を促したりすることで、昨年度は4名の児童が集まった。今年度は更に
呼びかけを行い参加を募ると、ニーズや知名度が上がったことにより倍以上の計 11
名(昨年からの参加児童含む)の児童の参加が確定した。11 名のうち4名はきょう
だいである。対象となる児童の知的発達水準等のプロフィールは表1(参加児童の
概要)に記した。
6
表1
対象児
A児
参加児童の概要
学年
小学3年
診断または臨床的判断
主訴、保護者の願い
(省略)
・不安が強い、忘れ物が多い、思いついた
ことを突然話し出す。
・相手の気持ちを読み取り、友達を作って
ほしい、自分の思いをしっかり伝えて
ほしい。
・苦手なことにもチャレンジしてほしい。
B児
小学2年
(省略)
・身の周りの片づけが下手な点が心配
・いろいろな体験をさせたい。
・楽しい思いをたくさんさせ、自信をつ
けさせたい。
C児
小学3年
(省略)
・人とのかかわりを学んでほしい。
D児
小学2年
(省略)
・集団の中で協調性や社会性を学び人と
関わることを学んでほしい。
・自分の力で考えて発言したり、行動し
たりできるようになってほしい。
・その場に応じた発言や行動ができるよ
うになってほしい。
E児
小学5年
(省略)
・友達と遊ばせたい。
・遊びのルールを知ってほしい。
F児
小学1年
(省略)
・友達とのかかわりを学んでほしい。
G児
小学1年
(省略)
・遊びのルールを学んでほしい。
・ひらがな、数字、足し算、引き算等簡
単な ことはでき るようにな ってほし
い。
H児
小学1年
*********
********
幼稚園・年中
*********
********
小学3年
*********
********
小学1年
*********
********
(A児弟)
I児
(D児弟)
J児
(F児姉)
K児
(C児弟)
7
②支援の構造
ア)開催日程と内容
表2
開催内容の概要
日
通算回数
程
内
容(グループ活動)
6
5月13日(金)
人間イス取りゲーム、自己紹介
7
6月17日(金)
ボウリング
8
7月15日(金)
ブラインドウォーク
9
8月19日(金)
はないちもんめ
10
9月16日(金)
だるまさんがころんだ
11
11 月18日(金)
秋のフルーツバスケット
表3
時
場所
本校
プレールーム
タイムテーブル
間
活
動
内
容
備考
15:30
集合・自由遊び
15:50
はじめの会(点呼、スケジュールの確認等)
15:55
グループ活動
16:30
ふりかえりカードの記入
の談話、あるいは活
16:40
おやつ
動見学。
16:50
おわりの会(感想発表、次回の予定等)
17:00
解散
保護者は別室で
イ)支援体制
今年度も支援体制としてスタッフの役割分担を行った。役割は昨年度と同様、進行
役のスタッフ(以下、
「T1」と記す)、参加児童とペアで活動するスタッフ(以下、
「担
当スタッフ」と記す)、担当スタッフのスーパーバイザー役であり、依頼があった場合
に訪問支援を行うスタッフ(「ケースワーカー」と記す)である。ケースワーカーの担
当する児童数が昨年は1人ずつであったのに対し、今年度は参加児童が増加したこと
により、2人から3人となった。他に、児童が活動している間保護者の対応にあたる
保護者対応スタッフがある。今年度はスタッフの人数の関係上、T1の補助役をする
T2、T3を設定することが難しく、ケースワーカーが児童を見ながらその役割を行
った。表4に役割分担を記した。
ボランティアとして内外から7名の協力を得て総勢23名のスタッフで対応を行っ
た。しかし、全員が常に揃うとうわけではなく、活動当日のスタッフ数は15人程で
ある。
8
表4
役割分担
役
割
保護者対応
ケースワーカー
担当スタッフ
進行役(T1)
スタッフ
備考
佐々木章
あじさい特別支援教育センターコーディネーター
佐藤みき
北上市こども療育センター:ボランティア
嶋野重行
A児、B児、C児担当
安部千恵子
D児、E児担当
白畑陽子
F児、G児、H児担当
菅原綾佐子
A児
佐々木佳絵
B児
千葉英恵
C児
大森ゆかり
D児
伊藤裕美子
E児
佐藤京子
F児
高橋淳子
G児
橋本咲子
H児
佐藤雅美
I児
藤川健
K児:ボランティア
境田義人
J児:ボランティア
○○○○
北上市内小学校○○○○:ボランティア
○○○○
○○大学4年:ボランティア
伊藤雅枝
木村恵美子
物品準備
近藤衣里
東海林美保子
三田敏明
花巻市教育委員会
ウ)支援内容
支援内容の中核は、ソーシャルスキルである。ソーシャルスキルの定義は様々だ
が、本研究では「対人関係及び適応に資する知識・技能」として操作的に定義する。例
えば、対人関係に資するものでは、アイコンタクト、挨拶スキル、傾聴スキル、感
情表現スキルなどを活動に盛り込んでいる。適応に資するものでは、集団参加、ルー
ルの理解と遵守などである。
具体的な支援内容は、活動場面に対応する形で一覧にし、児童の活動記録・評価
用紙を兼ねて使用した(資料3参照)。なお、活動の記録・評価は、毎回の実践終了
後のミーティング時に、スタッフ間での情報交換を経て担当スタッフが記入し、ケ
ースワーカーが作成する。その後、保護者への報告資料として毎回配布している。
9
③支援の方針(哲学)
「SST教室あじっこ」における支援は、昨年度と同様の方針(哲学)にそって行われ
た。(資料1を参照)
(3)結果
①実践の経過
「SST 教室あじっこ」の活動は表2に示した開催内容の概要、表3に示したタイムテー
ブルに基づいて実践された。その詳細は、毎月の活動計画(資料2参照)として文書化さ
れた。また、中心活動の設定理由と展開を表5に示した。活動の要素の分析を要素一覧
(資料4参照)に示した。
表5
中心活動の設定理由と展開
主なねらい
椅子取りゲーム・自己紹介
・ルールの理解
・スタッフの顔、名
前を覚える。
ボウリング
・ルールの理解
・順番を待つことが
できる
・役割がわかり、で
きる。
・感情表現
設定理由と展開
〈設定理由〉
年度始めの活動。スタッフが入れ替わり、参加児童も増えた
ことから、顔合わせ的な活動として設定。
〈展開〉
①児童と同数のスタッフが円状に座る。
②音楽をかけ、音楽が停止した時点でスタッフの膝の上に座る。
③座ったスタッフと名前、
「すきな○○」についての内容で自己紹
介し合う。(「すきな○○」についてはその回ごとに画用紙に書
いたもので提示する)
④スタッフを減らすことはせず、なるべく多くのスタッフと自己
紹介を行えるようにする。
⑤椅子取りに参加できない児童については、音楽の係になっても
らいその場の雰囲気を共有できるようにする。
⑥最後にスタッフが前に出て、名前クイズを行う。
〈設定理由〉
参加児童の増加にともない、一人一人の活動量を確保するた
めにゲームをすることの他に役割を設けた。
〈展開〉
①グループを学年別に2つに分ける。
(グループの提示は顔写真を
使って行う)
②グループごとに、ピン並べ、スターター、カウンター、スコア
ラーの係を発表する。
③一回目は役割の仕事を確認しながらゲームを行う。
(ゲームの順
番はグループ分けで提示した写真のとおり)
④1ゲームにつき2投し、そのポイントを記録。5ゲームで終了。
⑤役割の交換を必要に応じて行う。
⑥グループごとに気持ちを聞く。
10
ブラインドウォーク
・ルールの理解
・感情表現
・感情の共有
はないちもんめ
・ルールの理解
・運動の調節
・感情表現
・感情の共有
〈設定の理由〉
前回のボウリングで役割のやりとりから、何組かお互いを意
識するようになったペアができた。よって、2人でできるゲー
ムを行いたかった。また、参加児童の言語表現能力を確認する
ために設定した。
〈展開〉…2人一組。一人が目隠しをし、もう一人が目隠しをし
ている相手を誘導しながら障害物のあるコースをゴールまで連
れて行く。
①3コース設定。
②ペアは写真を用いて発表し、移動場所にその写真カードを置く。
児童はそこへ移動する。
③見本を見せる(目隠しをした相手が障害物などに気を付けて歩
くことができるように声をかけることが必要であることを伝え
る。)
④目隠しをする順番を決める(目隠し歩きはどちらの児童も行う)
⑤「よーい、スタート。」のかけ声で開始。(歩いていない残りの
2組は声を出さないように静かに見ている)
⑥ゴールした時点で、目隠しをして歩いた気持ちと誘導した気持
ちを聞いて見る。
⑦全員が終わった後、
「一緒にあるいた友だちの名前」、
「目隠しを
して歩いた時の気持ち」、「ともだちを案内した時の気持ち」に
ついてワークシートに記録する。
(文字で書くものと、写真や絵
を選ぶタイプのワークシート2種類を用意。児童はどちらかを
選ぶ。
)
⑧記入後、ペアごとに気持ちの部分について発表し合う。
〈設定理由〉
活発な児童が多く、一斉に体を動かしながら遊ぶことができ
るものがよかった。参加児童同士、手をつなぎ、名前を呼ぶな
ど友だちを意識できる遊びであったから。
〈展開〉…はないちもんめを行うスペースにブルーシートを敷き、
その範囲で行うことを明示する。また、ビニルテープで2本直
線を引き、チームの立ち位置を示す。
①スタッフの顔(2人)がついているくじを引き、2チームに分
かれる。それぞれのメンバーはチームごとに小さめのホワイト
ボードに貼って提示しておく。
②それぞれの陣地に移動し、スタッフの見本を見る。
③見本を見終わったら実際にゲーム開始。
④相手チームから友だちを選ぶ際は、相手チームのホワイトボー
ドを囲み、貼ってある写真の中から選ぶ。決定した時点で、ど
の児童になったかを一人一人聞いて確認する。
⑤選ばれた児童同士じゃんけんをする。負けて移動する際は、自
分の顔写真をそのチームのホワイトボードへ持っていき貼る。
⑥片方のチームの人が全員いなくなるか、設定した時間まで行う。
終了する際は、あらかじめ「あと○回で終わりにします」と予
告する。
⑦ゲーム終了後に「負けた時の気持ち」、「勝った時の気持ち」な
どを聞く。
11
だるまさんがころんだ
・ルールの理解
・感情表現
・感情の共有
秋のフルーツバスケット
・ルールの理解
・感情表現
・感情の共有
〈設定理由〉
普段、参加児童たちが遊んでいそうな遊び。一斉に体を動か
すことができる遊び。ルールをある程度分かっていることによ
り、展開までが短時間ですみ遊びに満足感が得られることから。
〈展開〉…オニの背後にヘルプゾーンを設定。そこに捕まった児
童たちが入る。ヘルプゾーンの前に鈴を置いた机を準備。オニ
にタッチするかわりに鈴を鳴らすことで仲間を助ける。
(1)ウォーミングアップ…動きを止める練習
①参加児童は円状になり、その中心にスタッフが立つ。時計回り
に児童が歩き、中央のスタッフが「だるまさんがころんだ」と
言い終えた時点で動きを止める。その際、言い終えた時点で鈴
を鳴らし、その間に静止することができればシールをもらうこ
とができる。
②何度か行ったら児童一人一人も中央に立ち、
「だるまさんがころ
んだ」と言う。
(2)だるまさんがころんだ
①スタッフが手本を見せる。
②手本後、実際にやってみる。始めのオニはスタッフが行う。
③終了間際になったら、
「あと○回で終わりにします」と予告する。
④ゲーム終了後は、気持ち札から選んでゲームの感想や「捕まっ
た時の気持ち」、「捕まらなかった時の気持ち」、「オニになった
時の気持ち」を表現する。
〈設定理由〉
遊びが激しくなるにつれ、勝負にこだわりゲームに最後まで
参加できない児童が数名現れた。よってその児童らに配慮し、
勝ち負けを意識せず、楽しく遊べるようなゲームを行おうと思
った。
〈展開〉
(1)ウォーミングアップ…果物は、りんご、ぶどう、かき。
①児童は扇形に椅子に座る。
②くじを引き、自分の果物を決定。果物のカードを首から掛ける。
③扇型の対面にスタッフが立ち、目の前にある机から果物のカー
ドを選び、
「○○」と言って同時にそのカードを上げる。その果
物の児童はその場に素早く立つ。立つことができたらシールを
もらうことができる。
④スタッフが何回か果物のコールをしたら、その後は児童一人一
人がコールの役割をする。段々と果物の個数を一つから二つ、
フルーツバスケットに増やしていく。
⑤児童全員がコールし終えたら終了。
(2)フルーツバスケット
①ウォーミングアップの時のように自分の果物がコールされた
ら、コールする人の前に座っているスタッフにタッチしてから
空いている席に座る。椅子を減らさない状態で行う。
②児童一人一人に再びコール係をしてもらう。
③全員がコールし終わり、ゲームに慣れたところで一つだけ椅子
を抜く。
④座ることができなかった児童がコール係をする。
⑤「あと○回で終わりです」と予告する。
⑥ゲーム終了後、気持ち札を使って「座ることができた時の気持
ち」
、「座ることができなかった時の気持ち」などを表現する。
12
「SST 教室あじっこ」では、活動直後のミーティングで、担当スタッフとケースワ
ーカーで児童の様子を記録し、「児童の活動記録・評価」の項目にそって評価を行っ
た。あわせて、活動場面におけるいろいろなエピソードの情報交換を行った。
その後、話し合いの概要を全スタッフで確認しながら、活動の反省を行った。支
援内容や方法について改善すべき点についてはその場で可能な方法を考え、次回に
改善した方法で支援を行った。
全体反省で話題になった事柄を表6に記した。
表6
回数
1
2
3
4
5
6
活動の実績と反省
活動年月日
5 月 13 日(金)
6 月 17 日(金)
7 月 15 日(金)
8 月 12 日(金)
活動内容
1集合・自由遊び
2イスとり・自己紹介
3先生クイズ
4終わりの会
1集合・自由遊び
2ボウリングゲーム
3終わりの会
1集合・自由遊び
2ブラインド・ウォー
ク
3終わりの会
1集合・自由遊び
2はないちもんめ
3終わりの会
9 月 16 日(金)
1集合・自由遊び
2だるまさんがころ
んだ
3終わりの会
11 月 18 日(金)
1集合・自由遊び
2フルーツバスケッ
ト
3終わりの会
実績(場所・参加者人数)
プレイルーム
7名参加
(ABCDFHIJ)
プレイルーム
全員参加
プレイルーム
10 名参加
プレイルーム
全員参加
プレイルーム
全員参加
プレイルーム
全員参加
(様式2)
活動の様子及び反省事項
・いすとして使用したブロックのうばいあいになった。
→個々にイスがある方がいい。
・F が J をたたくのをやめさせたい。→言葉で注意し
てみる。
・全体的に緊張していて落ち着きが無かった。
・声が反響してとてもうるさかったが、みんな楽しそ
うでゲームにも集中していた。
・C とトラブルになりやすい A,H,D を離す。C には「優
しい言葉で言いましょう」
「気になることは先生に教
えてください」等の声掛けをしてみる。
・F が J,D,I に対して暴言を吐く。→その都度言葉で注
意するか、前もって約束してはどうか。
・席と席を離し、児童の間にスタッフが入るように
する。
・スムーズに活動できた。
・感情の表現が難しい。→顔の表情と言葉を入れたカ
ードを使って選ばせてはどうか。発表を聞くほうも
分かりやすくなる。
・D が早さを競うと勘違いして「勝った」と言ってい
た。
・自由遊びがしたい A が、次回早くくると言って帰っ
た。
・A がべたべたさわってきた時は言葉で注意する。
・B,I が活動に入らずに見ていた。すごく盛り上がった
反面、B と E は疲れて途中で休んだ。
・選ばれない子どもがいたので次回は全員が選ばれる
よう操作してもよいのではないか。
・J はみんなのお姉さん的存在で信頼が厚い。選ばれる
回数も多かった。
・C はみんなの様子を見ながら発言する練習をするた
め、司会を継続する。
・練習は全員がストップすることができた。
・本番の遊びの時は止まれない子どももいたが、楽し
んで参加できた。
・F が「さようなら」の係に満足して、他の人をたた
かなかった。
・H が振り返りカードに何を書いてよいか分からない
ようだ。→おやつの後ではなく、活動直後に書く時
間をとる。
・J がルールに厳しい。
・B と I は、イスに名前がついていたので自分のイス
を他人にとられるのが嫌だった。
・絵カードを出す人の順番も明示すればよかった。
・感想発表が苦手な B は次回おやつを配る係にする。
・A が活動直後だと、振り返りカードに活動したこと
を書けるようになった。
・F が金シールが欲しくて、少しずつ座っている時間
が長くなってきた。
②支援の具体例
13
「SST 教室あじっこ」では実践後に児童個々の様子について話し合ってまとめると共に、
ソーシャルスキル獲得に向けて支援が必要な児童や場面をその都度取り上げて、支援方
法や支援内容について改善を重ねた。その結果が以下に記した支援の具体例である。
(ア)
ポイントカード、ポイントシール
昨年度同様、ポイントカードとポイントシールを用いた。児童たちは一人一人首からポ
イントカードをさげ、挨拶ができた時や静かに話を聞くことができた時など、様々な場面
において良い行いをシールを用いて賞讃される。スタッフはできるだけたくさんのシール
を児童たちに貼る。その際「○○ができたから」、
「○○がよ
かったから」など理由をはっきりと伝えることが重要である。
たくさんのシールをもらい、褒められた児童たちは自己肯定
感を持ち、第1回目の教室から参加の態度がとても積極的で
あった。学校などでは他児と比べられ、消極的な児童たちで
あるようだが、褒められ受け入れられることにより、教室で
はのびのびと活動することができたようだ。
(イ)
はじめの会、おわりの会、元気しらべの雛型
司会の児童用に、セリフを書いたカードを綴った
雛型を用意した。読む部分(例:
「立ってください」)
は太線で、心の中で読む部分(例:
「全員が立ったら
次のページをめくります」)は鉛筆の字で書いた。心
の中で読む部分、一つの動きごとに1ページめくる
という形式にしたことから、セリフを一気に話して
しまうことを防ぎ、一呼吸ずつ置きながらセリフを
言うことができた。また、回を重ねるごとに司会の
児童が他児の動きに気を配ることができるようにな
り、タイミングを見計らってセリフを言うこともで
きるようになった。
(ウ)スケジュールの提示
昨年度同様であるが、見通しを与えるためにスケジュールを黒板に書いて提示した。
年度始めはスケジュールのみで、はじめの会、おわりの会の次第を提示しなかった。その
ため、その時間じっとしていられない児童がいた。よって、翌月にははじめの会、おわり
の会の次第も提示した。すると見通しをもつことができたようで、大分落ち着いて参加で
きるようになった。はじめの会、おわりの会の次第については回数を重ねるごとに何をす
るのか覚え、提示しなくても落ち着いて参加できるようになった。
14
見通しはどう提示するのかが重要である。児童た
ちに理解しやすい状態で提示することで、パターン
化したものについてはその後必要なくなるものもあ
る。その分児童たちへの支援の量が減り、自立度が
上がる。
(エ)役割の設定と提示
参加児童が倍以上に増えたことにより、遊びの時
間だけでは満足感が得られにくいと感じ、参加児童一人一人に役割を与え、参加の意識を
高められるようにした。係の内容は、はじめの会の司会、元気しらべ(出席確認)の係、
中心活動での感想発表、おやつ・お茶配り、「いただきます」を言う係、「ごちそうさま」
を言う係、ふりかえりカードを読む係、おわりの会の司会である。分担については個々の
ニーズに合わせ必要なスキルを高められそうなものにした。よってほぼ固定にした。
係を作った時点では、その時ごとに係の児童を呼び、その係をしてもらっていた。しか
し、係の仕事に興味を持ち始めると自分が何の係をするのかそわそわしたり、「ぼくはま
だ?!」という訴えや、係の仕事を躊躇している児童がいた際、「ぼくがやる!
ぼくがや
る!」と言う児童が複数現れ、一人に一つの役割ということを理解できていなかった。よ
って、スケジュールのわきに役割とその児童の顔写真を張り出し明示することにした。す
ると教室の始めの時点で自分の係を確認することができ、多少「ぼくも○○がやりたい」
という声があったが、落ち着いて活動することができるようになった。また、ある児童が
躊躇している時も、「ぼくがやる!」と言う児童はまだいるが、待ってあげることができる
ようになってきている。
(オ)気持ち札
中心活動後の感想発表の際、「○○の時
の気持ちを教えて下さい」と質問していた
が、感情を上手く表現できない児童が何人
かいた。始めのうちは口頭で「楽しかった
ですか?
それとも、くやしかったです
か?」など選択肢を与えていた。しかし、
それでも難しく、どんどん依存、他律的に
なってしまった。よって、感情を表すこと
ばとその表情の絵が描かれた札を8種類用意し、感想発表の際に用いた。すると、始めは
感想発表自体を拒んでいた児童がいつの間にかカードを選んでいたり、一つだけではなく
複数のカードを選び、状況を説明したり、感想発表に対する意識に積極性が見られるよう
になった。児童によっては提示する札の数を3つ程度にするなど、選択しやすくしてみた
15
が、参加児童の特性として絵などの視覚情報は認知しやすく、複数であっても混乱するこ
とは特になく選択することができていた。また、発表を聞く側の児童にも絵や文字での提
示で注目しやすく、理解しやすくなり、発表に対して「同じだ」「○○だって」などの発言
が自然に聞かれるようになった。
この札を導入したことにより感情表現が難しかった児童の実態として分かったことは、
感情表現の語彙の乏しさから何と言えばいいのか分からない、よって自信が持てないとい
うことの他に、一度に複数の感情札を選択するという状況から、一つの感情では表現しき
れない想いを児童たちは抱いているということである。そして、それを言葉にするのは難
しいとうことである。よって、この気持ち札を用いることにより、感情を目で見える形で
確認することで、それに付随する状況などを整理して考えることができたようである。
(カ)写真・絵付き選択型ワークシート(資料5参照)
活動のふりかえりをする際、昨年度から文字で書くタイプのワークシートを用いてきた。
しかし、低学年の児童が増えたことや書字活動に苦手意識のある児童がいたことから、遊
んだ友だちを顔写真の中から選び、その時の気持ちを、気持ちの言葉と表情の絵がいくつ
か描かれたものの中から選ぶタイプのワークシートを作成した。このワークシートを導入
したことによって、どの友だちと遊んだのか、たとえ名前を覚えていなくても顔を覚えて
いれば選ぶことができ、気持ちについても選択するだけでよく、書字活動に苦手意識のあ
る児童にとっては負担を軽減することができた。また、楽しんで書字活動に向かうことが
できるようになった児童もいた。中には、選択タイプのワークシートを先に書き、それを
参考に文字タイプのワークシートに言葉で書き込むという使い方をしている児童もおり、
それぞれ活用しているようである。
(キ)ワークシートを書く時間の設定
あるスタッフから、おわりの会の時点でふりかえりをするといくつかの活動の中から何
について書けばいいのか選ぶことが難しく書くまでに時間がかかる児童がいるという状況
を聞き、ふりかえりカードを書く時間を中心活動の直後に設定した。このことで、その児
童は中心活動についてふりかえりをするようになり、ワークシートの取りかかりが早く、
しかも意欲的になったようである。他児についても同様の実態であり、気持ち札で感想発
表をした直後に再びその気持ちを確認することができ有効であった。また、教室には関連
のない自分の好きなことをワークシートに毎月書き、なかなかふりかえることが難しかっ
た児童についても、中心活動直後に時間を設定することで、中心活動について書かなくて
はならないと意識することができたようだ(自分が好きなことを書くシートも確保した上
でである)。予め選択できる児童については、その日の活動の中で最も印象に残ったことを
書くことに変わりはなく、特に支障はなかった。
16
③対象児への支援の経過(事例)
ア)B児への支援の経過
(ⅰ)学年
小学2年生
(ⅱ)保護者からみた実態
B児は昨年からSST教室あじっこに参加している。保護者は小学校1年入学時
にみられた「やわらかさ」が復活してきたように感じるという。嫌いな物でも頑張
って食べるようになり、時間で行動するという意識が出来たことから生活リズムも
作られてきた。
「嫌でも頑張る」機会が多くなってきたので、これを応用し楽しみな
がらゆっくりと生活全体につなげたいと願っている。
(ⅲ)「SST 教室あじっこ」での実態
B児の昨年の実態は①集団活動に参加することが難しい、②他人の視線を避けた
り、気にしたりする、③自分のペースで一緒に遊ぶことは出来るが、他の人と遊び
を共有することが難しい、という3点にあった。昨年1年間ではおやつ準備の手伝
いをすることをきっかけに輪の中に入ることができた。また、自分の姿がみんなに
は見えないよう透明人間になったという遊びで活動に参加することが出来た。
今年度の活動を始めると、行動に変化が表れた。昨年とは打って変わって集団の
中に入れるようになり、時々「僕は透明人間だ」と他人の視線を気にすることも見
受けられたが、他人の存在を気にかけながら視線を合わせられるまでになった。自
主・自律的な行動として自ら人との関わりを持つという変遷がみられたのである。
活動に参加するようになってからはゲームに対する苦手意識が出てきた。勝ち負け
を気にして楽しめない、他人と物を共有することに嫌悪感を示し自分の物にこだわ
りを持つ、などの認知面の偏りが情緒に強く影響し、立ち直れなくなってしまうこ
ともあった。
(ⅳ)支援の経過(資料6参照)
昨年度から担任教師と連携をとりながら支援を続けてきたことで、学校生活でも
少人数の集団活動への参加ができるようになった。
「あじっこ」でも、はじめの会の開始時や話を聞く姿勢について、個別記録の評
価から顕著な変遷が読みとれる。ポイントカードによる指導のもと「シールがほし
いから姿勢を正す」という自主的な行動がみられた。昨年からの参加により集団行
動に慣れたことが大きな要因であろう。シールの数を競いながら他人との関わりを
持つようになり、他人の目を気にして活動出来なくなることは無くなった。遊びで
自分が負けそうになったり、自分の使っている物が人の手に渡ったりすることで気
分が落ち込んだ。「ゲームに参加したくない!」「もう嫌だ!」という気持ちになっ
た時は、
「いったん輪の中から離れ、参加しなくても良いから様子を見ていよう」と、
その場にとどまるように促した。フルーツバスケットでは「いすをとられた」と自
分のいすにこだわりを持つ行動が見られた。気分が落ち込むと人前に出ることが難
17
しく、感想発表の係りになっていても、カードで「悲しかった」
「悔しかった」気持
ちを選ぶことが精一杯で、自分では発表することができなかった。
一方すぐに気持ちを切り換えることが出来たこともあった。
「だるまさんがころん
だ」では「知ってる、できるかもしれない」と期待しながらの参加だった。事前に、
自由遊びで「冷凍ビーム」という固まる遊びをしていたので、だるまさんストップ
が楽しくできた。ところがオニにつかまると、泣きだし「悔しかったの?」と聞く
と「ほっといてよ」と顔を合わせず、
「もうあじっこに来るもんか。この遊びは最低
だ」と言った。自由時間のことを質問すると、楽しかった遊びを思い出し、スタッ
フと遊び始めた。このように楽しい時のことを思い出すよう促すと、その時の気持
ちも思い出し、気持ちを切り替えることが出来た。
客観的に静観することで、勝敗にこだわらず遊びを楽しめるようになること、ま
た、集団場面において情緒的に不安定になってもセルフコントロール出来るように
なることが今後の課題になりうるだろう。
イ)F児への支援
(ⅰ)学年 小学1年生
(ⅱ)保護者から見た実態
F 児の保護者は、「全般的に1年程度の遅れがあり、言葉の理解が弱い部分も
見られる」、「生活している上で特に困っていることやできないことはないが、何
をするときにもスローペースなので学校生活でも決まった時間にやり終えるのは
苦手である」、「言葉が足りなかったり、思いが伝わらなかったりが原因での友達
とのトラブルが増えているように思う」の3点を気にかけていた。
(ⅲ) 「SST教室あじっこ」での実態
①話を聞く際の望ましい姿勢(着席、いすに深く座り進行役に体を向けること)
を維持することができない、②はじめの会の開始時、自分の席に着席することがで
きない、③挨拶をする際、アイコンタクトをとることができない、という3点を指
摘することができた。
(ⅳ)支援の経過(資料7参照)
自主・自律的な行動への変遷が見られる項目は「挨拶に応答する際、動作(顔、
手を振る、互いの手でタッチする)を返すことができる」、「終わりの会で話を聞く
際の望ましい姿勢を維持することができる」であった。
F児は課題遊びに対して非常に強い興味関心を示し、毎回楽しみにして「SST 教室
あじっこ」にやって来た。自由遊びからはじめの会への切り替えにはスタッフの声
掛けを要するが、会が始まると課題遊びに注意が向くため、気持ちを自然に切り替
えることができた。課題遊びの説明を行う進行役のスタッフの方を集中して見なが
ら話を聞く姿勢が見られ、取り組みにも積極的で楽しみながら活動した。しかし、
18
課題遊びが終わると疲れからか、集中力が切れたような様子で、話を落ち着いて聞
くことが難しくなる傾向が毎回のように見られた。
自主・自律的な行動への変遷が見られた「終わりの会で話を聞く際の望ましい姿
勢(着席、いすに深く座り進行役に体を向けること)を維持することができる」に
ついては、終わりの会の次第ごとに区切りをつけ、その都度F児に評価の褒美シー
ルを与えることが有効な支援方法であった。特にF児は金色のシールにこだわる傾
向があったため、、姿勢を維持して話を聞くという課題が達成できたら金色のシール
を与えることとした。与えた時に次の次第についても同様に評価することをF児と
確認していくことを続けると、最後までF児も望ましい姿勢を意識して会に臨むこ
とができた。
反対に依存・他律的な行動で推移した項目は「挨拶をする際、アイコンタクトを
とることができる」であった。今後、支援場面を明確に設定し、スタッフの共通認
識のもとで新たな支援方法を探る必要がある。
④保護者アンケートに見る支援の成果
「SST 教室あじっこ」の参加にともない、見られるようになった児童の変容について、
保護者に対しアンケートを実施した。昨年度、支援に関わるニーズ調査を行った質問項目
を用いて改善の有無を選択、さらに自由記述する形で行った。
ア) アンケート回収率
アンケート調査は平成 17 年 11 月に実施し、調査対象 7 名中 7 名から回収した。回収
率、有効回答率共に 100%であった。
イ)集計結果(アンケート結果は資料8を参照)
「SST 教室あじっこ」に参加して見られた児童の変容を、項目ごとに「少しでも改善
できた」、
「変化が無かった」、
「わからない」の 3 段階でチェックした回答をみると、
「少
しでも改善できた」と過半数が判断した項目が 23 項目中 10 項目あることが分かった。
「集中時間が短い」「状況の理解に時間がかかる」
「円滑な友人関係が築きにくい」
「一斉
指導の場面で個別の対応が必要」
「聞くことが苦手」
「落ち着いていられない」の他、
「こ
とばの指示の理解がしにくい」
「自分の意思を伝えることが苦手」「相手の意思をくみと
ることが苦手」「順番やルールを理解し、それを守ることが苦手」の 4 項目の評価が高
い。これらは、
「SST 教室あじっこ」の中でも、視覚的な教材を用いて分かりやすく提示
する工夫を重ねたり、担当スタッフが個々の児童の実態に応じた支援をしたこと、賞賛
の場面を多く設けたりするなど、重点的に取り組んできた支援内容と一致しており、支
援の成果としてとらえることができる。
「変化が無かった」という回答が過半数を超えた項目は 3 項目あり、「手先が器用で
ない」
「衝動的に行動しやすい」
「整理整頓が苦手である」であった。この 3 項目は「SST
教室あじっこ」の活動場面において、困難さが指摘されたことは無かった。しかし、家
19
庭の中では困難さが日常的に実感され、保護者が期待する状態像と児童の実態に大きな
差があると思われる。今後の活動の中でどのような支援ができるか検討が必要である。
自由記述の回答からは、
「SST 教室あじっこ」への参加は、楽しく満足感が得られる場
として児童、保護者にとらえられており、児童の変容、成長を保護者が具体的に実感で
きていることが分かる。
また、「SST 教室あじっこ」以外の学校や家庭において見られる変容についても、ソ
ーシャルスキルトレーニングの成果ととらえられる意見があげられている。これは、活
動の様子を個別に記録して保護者に配布したことで、
「SST 教室あじっこ」での取り組み
や児童の課題、接し方が保護者に理解され、家庭でも日常的にソーシャルスキルトレー
ニングを重ねることができ、学校や家庭等の場でも般化が促されたと考えられる。
さらに、保護者からは、現在児童がかかえている問題を解決するためのソーシャルス
キルトレーニングを行って欲しいと具体的な要求があげられており、期待が高い。
(4)小考察
・
指導グループの規模としては、昨年度に比べると、児童数が約3倍となったが、スタ
ッフ数は約 1.5 倍で、対象児の担当スタッフと進行役(T1)、ケースワーカー3 名の構成
となった。集団が大きくなったことで T1 が児童ひとりひとりを把握しながら進行するこ
とは難しくなり、児童の支援は各担当スタッフに負うところが大きかった。
スタッフは活動直後に、ケースワーカーと担当スタッフで個々の児童の活動の様子につ
いて話し合い、その後、全体にケースワーカーが報告して活動の様子をまとめ、活動全体
の反省を行った。また、月一回の研究日にも学習会を行い、共通理解を図ると共に、個々
への支援の方法、活動の見直しなどの検討を行った。そして、活動の中で見られた支援が
困難な点について話し合い、その都度解決するための手立てを考え、次の活動時に改善す
るようにした。
このような反省会や学習会を通して、児童ひとりひとりに合わせた具体的な支援方法の
開発・蓄積ができた。一人の児童に対して「分かりやすく」工夫した支援が、結果的に児
童全員にとってソーシャルスキル獲得を促す効果があったものもあり、改めて個々に応じ
た対応をすることの重要性を実感した。
・
指導の場としては、自由遊びも集団活動(はじまりの会や課題遊び)も同じ場(プレ
イルーム)を使用した。このことは集団活動参加に抵抗を感じる児童にとっては周囲の遊
具に気を取られるなど活動に集中できない要因となった。場所を変えることで活動場面の
転換を理解しやすくする意味でも、活動の場を分けることが効果的であると考える。
・
今年度は活動の場を分ける事無く、活動に応じて場の使い方、設定を工夫した。振り
返りカードの記入時には座卓テーブルを出して並べ、おやつ後に片付けた。これらの場面
でテーブルを運んだり、おやつを運んだりと自発的に手伝う児童がスタッフから賞賛され
ると、次々と真似て積極的に手伝う様子が見られた。さらには、仕事を自分から探したり、
20
やりたがっている友達に譲ったりするなどの行動が見られた。これらは、活動後のリラッ
クスした場面で、おやつを食べるという好きな活動に向けて強い動機付けがあったことと、
担当スタッフに限らず、側に居合わせたスタッフが即座に行動への賞賛を行ったことで強
化が効果的に行われたととらえられる。このことから、児童にとってのソーシャルスキル
トレーニングには、スタッフの共通理解に基づいた対応が効果的であると言える。
・
④のイ)にもあげたが、保護者に個別の記録を配布したり、担当スタッフと直接児童
について情報交換したりすることで、児童に必要なスキルが的確にとらえられ、支援の方
法を理解して、家庭でもソーシャルスキルトレーニングが行われ、般化が促されたととら
えられる。さらに、「談話室あじわい」でも保護者との情報交換、共通理解が効果的に行
われ、児童の変容、成長という成果をもたらしたと考えられる。
・
今年度の実践では、養護学校職員の経験と知識、技能を活かして、児童の実態に応じ
た有効な支援の方法や内容を開発・蓄積することができたと考える。このことは、言い換
えれば、養護学校職員のもつポテンシャルで、軽度発達障害児の支援に十分に貢献できる
と言える。
・
次年度は、実践を継続しながら、今年度開発・蓄積した支援方法を用いて、北上地域
での実践に移行していくことが課題である。2 年間の研究成果に基づいて、地域での活動
を支えるスタッフの人材育成が急務である。
B
実践報告:保護者支援
(1)「談話室あじわい」の目的
「談話室あじわい」は支援対象地域の軽度発達障害児の保護者が、悩みを打ち明け
たり、相談しあったりできる場として、仲間作りを目的とする。また、保護者から見
た児童のニーズを把握することを目的とする。
(2)「談話室あじわい」の方法
北上教育事務所管内(北上市、西和賀町)の軽度発達障害児の保護者を対象とする。
月 1 回、第1水曜日の午後1:30~3:00に花巻養護学校を会場として開催する。
昨年度の開催は5回であった。
あじさい特別支援教育センターからスタッフ 2 名と北上市療育センターの職員 1
名が入り、会合をコーディネートする。
21
(3)結果
①開催日時と内容(実施回数は前年度からの延べ回数)
回数
月日
5
5 月 10 日
場所
養護学校
参加者数
保護者2名
内容
・参加者自己紹介
・今年度の予定
・岩手県の現状
6
6月8日
養護学校
保護者4名
・近況報告と情報交換
7
7月5日
北上市こど
保護者8名
・参加者自己紹介
も療育セン
・あじさい特別支援教育センタ
ター
ー紹介
・情報交換
8
9月7日
養護学校
保護者2名
・近況報告
・NHK 番組 VTR 視聴
9
11 月 7 日
養護学校
養護学校職員3名
・経験者(保護者)から体験談を
聞く
10
12 月 7 日
北上市子ど
保護者7名
・経験者(保護者)から体験談を
も療育セン
小学校教諭 1 名
聞き意見交換
ター
教育委員会 1 名
②地域での実施と内容
「談話室あじわい」は昨年度から養護学校を会場として開催してきたが、参加者が
限られたことから、今年度は北上市内で2回開催した。会場を北上市こども療育センタ
ーとし、療育センター職員を通じて保護者への参加呼びかけを行うと共に、支援を通じ
ても参加者を募った。
2 回とも養護学校開催の倍の参加者があった。7 月 5 日にはあじさい特別支援教育セ
ンターを紹介し、参加者がそれぞれの抱える悩みや体験談を話し合った。
12 月 7 日には、高校 1 年生の自閉症のお子さんをもつ保護者の経験談をうかがった。
障害の受け入れ、対応の仕方、学校の担任との連携の取り方、トラブルへの対処方法な
ど、体験に基づいた具体的な話は、小学生の保護者である参加者にとって共感できる点
が多く、意見交換でも率直な意見が活発に交わされた。
③アンケートに見る支援の結果
A の(3)の④のアンケートで「談話室あじわい」に参加しての感想と期待することに
ついて自由記述してもらった回答を以下に記した。
22
「談話室あじわい」に参加していかがでしたか。また、今後期待する内容などありまし
たら記入してください。
・なかなか話すことができない内容でも素直にはなせる時間です。
・先々の心配がつきません。この先のことを同じ障害をもつ親から話を聞きたいです。
・午前開催がいいのだが。
・先々のことに不安があるので家族の方、本人の方の話も聞きたい。
・みんなで掃除の仕方を教えて欲しいです。(机を運ぶ、ほうきの使い方)
・他のお母さん方の経験談など聞くことができとても参考になった。
・養護学校の先生のいろいろな話、アドバイス、見方、とらえ方などの話が良かった。
当初目的としていた悩みを打ち明ける場、相談し合う場、仲間つくりはほぼ目的を
達成できていると思われる。さらに、今後児童にとってどのように取り組んでいくべき
か、経験者から情報を得て、学んでいきたいという意欲が見られることは、支援の結果
として評価できるものである。
④次年度に向けた動き
「談話室あじわい」を週休日(土曜日を予定)に、北上市内開催とすることで、保護
者が参加しやすい条件を整える。また、保護者会として組織を立ち上げて地域での活動
への移行を予定している。
(4)小考察
「談話室あじわい」は「SST 教室あじっこ」参加児童の保護者を中心として開催し、互
いの悩みを話し合うことができる場として情緒的なサポートを中心に行ってきた。
今年度北上市内での開催で参加者が増加し、情報交換の必要性、児童・保護者を支援す
るための組織の必要性が共通理解され、保護者会設立への機運が高まったことは大きな成
果である。今後は、設立へ向けた支援を行うことが課題であり、いわて軽度発達障害ネッ
トワークへの参加や、花巻・北上・水沢三地区での合同懇談会等を通じて活動の幅を広げ
ることも必要である。
Ⅷ
まとめと今後の課題
知的養護学校の特別支援教育センターにおける軽度発達障害児支援のあり方を検討する
という目的で 2 年間取り組んできたが、児童支援事業、保護者支援事業共に着実に実践を
重ねることができた。具体的な支援内容や方法の開発・蓄積にあっては、知的養護学校職
員が有するポテンシャルが効果を上げていると実感している。
しかし、地域の小中学校で特別支援教育の体制が形作られようとしている現状では、地域
の中で支援活動が行われる必要性が高く、養護学校内での支援活動としての展開には限界
が見えてきている。次年度は地域への移行を計っていかなければならない。この 2 年間の
実践を継続しながら、新たに加わる地域の人材育成が大きな課題となるであろう。
23
引用・参考文献等
8)佐々木全,加藤義男,佐々木京子(2002):高機能広汎性発達障害児に対する「エブリ教室」
の教育実践に関する報告(第二報)-IEPの作成マニュアル「IEP-PDSパック」の
試み-,岩手大学教育学部附属教育実践センター研究紀要,2.203-227
9)田代美幸(2004):グッドアクションクラブの実践~保護者との協同、ADHD児支援の試み、
はなまき軽度発達障害児の教育と生活を考える会(花童・風童)年報、1、9-11
10)佐々木全(2002):なずな教室における実践報告—言語の遅れを伴うADHD児の特性に応
じた指導—、LD研究、11、1、32—40
11)花巻養護学校
あじさい特別支援教育センター,軽度発達障害児支援プロジェクトチーム
(2004):知的障害養護学校の特別支援教育センターにおける、軽度発達障害児支援のあり
方に関する-研究(1)~あじさい特別支援教育センターにおける実践的検討~
24
資料1
支援の方針(哲学)
「SST教室あじっこ」における支援方針(哲学)は、記録・評価用紙における評価の
観点に反映している。これは、
「IEP-PDSパック」の一部を借用したものである。
「IEP-PDS
パック」とは、岩手大学教育学部附属教育実践総合センターの事業の一つであり、高機
能広汎性発達障害児を対象とした「エブリ教室」において、開発、使用されている計画、
実践、評価の枠組みである(佐々木、加藤、佐々木;200238)、田代;200439))。さて、支
援の方針(哲学)とは、対象児の行動における「依存的・他律的行動から自主的・自律
的行動への行動変容」を目指すことである。
そもそも、軽度発達障害児は、特有の認知特性のため、周囲の状況の意味を理解する
ことが種々の程度に困難である。そのために、活動に対して「わからない、できない、
やりたくない」というマイナスの心理を持ちやすい。この結果、彼らの行動は他者の指
示や援助をより多く必要とする「依存・他律的行動」となる。しかし、「わからない、
できない、やりたくない」という状況を改善することで軽度発達障害児は、自分で考え、
判断し、行動し、その行動を維持するという「自主・自律的行動」を獲得していく。す
なわち、軽度発達障害の認知特性を把握し、それに応じた支援を行なうことによって、
活動に対して「やる、できる、やりたい」というプラスの心理が導かれ、その結果とし
て「自主・自律的行動」への変容が起こる。
そして、このような行動変容を分析的に把握するために、評価の観点として「支援ス
タッフの支援方法と対象児の行動の関係性への着目」という3つの段階を想定している。
これを図に示した。
図
評価の観点
自主的・自律的に行動したとき
注意喚起を要したとき
自分で考えながら
「ほら」で気づいて
行動の指示を要したとき
先生に教わりながら
~しなさい
次はこれだな
あ、そうか
想起・思考→判断→行動
注意喚起 →気づき( 想起・思考) → 行動
はい
指示受容・理解→行動
この具体例として、エブリ教室での例を挙げる。「エブリ教室」では、最初の活動を
25
「はじめの会」と称して、スケジュールワークを行っている。その開始時間は 10 時 20
分である。児童は 10 時前後に集まり、自由遊びをしている。A児が、自分の腕時計を
見て 10 時 20 分を確認してはじめの会の座席に着いたとする。これは、
「自主的・自律
的行動」といえる。これが第一の観点「○」である。すなわち、児童はこれまでの経験
を想起し、それを材料として考え、判断して行動している。
B児は、ペアのスタッフが差し出した置き時計を見て「あ、はじめの会だ」と着席し
た。これは、スタッフによる注意喚起により気づいて行動できたといえる。これが第二
の観点「□」である。すなわち、「自主・自律的行動の芽生え」である。注意喚起によ
り、気づいての行動には、「自分で考えて、判断して」という児童の心理を垣間見るこ
とができる。
C児は、時計を差し出されても、「何の時間だっけ?」と聞かれても「わからない」
と答え遊びを続けた。このように気づきを促せなかった時には、「はじめの会の時間で
すよ、C君は座りますよ」と指示をだす。児童はそれに従って行動する。これが第三の
観点「△」である。すなわち、
「依存的・受動的行動」といえる。ここには、
「自分で考
えて、判断して」という心理の働きが少ない。
スタッフは、児童の行動がどの段階にあるのかを把握するために、○・□・△の順で
アプローチすることが望ましい。すなわち、静観(待つこと)からはじめ、次に、注意
喚起を最小限の手段からはじめる。そして最後に指示を出すのである。はじめから、△
のアプローチをすることは厳禁である。児童の○や□の姿を見逃してしまう可能性が高
いからである(佐々木、200434))。
この「支援スタッフの介入方法と対象児の行動の関係性への着目」という評価のメリ
ットは3つある。すなわち、①評価の客観性である。行動は客観的事実である。「だい
たいできた」とか「ほぼ定着した」というスタッフの主観的事実に影響を受けやすい文
章表記ではなく、「~という行動が、…という支援で導かれた」というような行動に着
目した文章表記は、スタッフと対象児両者の行動の評価であり、複数のスタッフによる
評価の共有につながる。
②支援の継続性である。この評価・記録方法は、支援方法を情報として蓄積すること
になる。結果、複数のスタッフが記録された支援方法をもって支援にあたることができ
る。
③支援スタッフが、自分自身の支援方法をセルフモニタリングしながら行動できるこ
とである。これは支援スタッフが、実践後に自分の支援方法を想起し、記録する必要が
あるために、実践場面では、自分自身のかかわり方を意識化するためだろう。このよう
な意識化は、スタッフが自分自身の支援方法を検証したり、児童の行動と自分の支援方
法の関係からよりよい支援方法を模索したりする上で有益である。
26
資料2
活動計画(平成17年7月)
Aji-co 活動計画
1.日時 /場所: 平成17年7月15日(金) / 於 プレールーム
(様式5)
2.T1:伊藤雅枝
3.活動内容:
ブラインド・ウォーク(めかくし歩き)
4.主なねらい:
①パートナーに声をかけながら決められたコースを誘導することができる。
②目隠しして歩いた時の気持ち、友だちを誘導した時の気持ちを言語化することができる。
5.活動の流れ: 下記表の通り
時間
活動内容
スタッフ&子どもの動き
3:25
スタッフ集合、
打ち合わせ、準備
・活動の確認、参加児童の確
認
3:30
・場の設定
・ペアの確認
児童集合、自由遊び
・顔写真カードをはる
・スケジュール確認(個別)
(1)はじめの挨拶
(2)元気しらべ(呼名と応答)
(3)スケージュールワーク
(4)スタッフから
(5)おわりの挨拶
使用物品
備考
・机
・イス
・黒板にスケジュール
・顔写真カード
・ポイントカード
・ポイントシール
3:50
はじめの会
3:55
〔ゲーム〕
①くじを一斉に引き、順番とペアを決め、表
・くじを一斉に引き、順番とペアを決
にスタッフが顔写真を貼る。 (5グループ)
め、表にスタッフが顔写真を貼る。
②1&2グーループから開始。
・1&2グーループから開始。
③コースを歩ききった時点で、そのつど気
・コースを歩ききった時点で、そのつど
・くじ
持ちをインタビューする。
気持ちをインタビューする。
④片方の子どもが終わったら、3、4&5グ (「1~5」×
・片方の子どもが終わったら、3&4グ
2)
ループに移る。
ループに移る。
・ペア表
⑤続いて役割をチェンジして1&2グルー
課題遊び(1)
・続いて役割をチェンジして1&2グ
(顔写真有り)
プから再び開始~。
・目隠し(2つ)
↓
;ブラインド・ウォーク ループから再び開始~。
〔時間が余ったら〕
・コース
〔ワークシート記入〕
①誰と手をつないだか?
・ワークシート
①誰と手をつないだか?
②目を隠して歩いた気持ち
・筆記用具
②目を隠して歩いた気持ち
③誘導した時の気持ち
・机
③誘導した時の気持ち
をワークシートに記入(子どもによって
をワークシートに記入(子どもによっては選
は選択肢や表情の絵を使って)。
択肢や表情の絵を使って)。
・ペアごとのところで気持ちの一部分につ
・ペアごとのところで気持ちの一部分につ
いて発表しあう。
・はじめの会次第
・誘導する
際、パート
ナーに声を
かけて歩く
ことができ
るか。
・目隠しを
して歩いた
気持ちを言
語化できる
か。
・誘導した
時の気持ち
を言語化す
ることがで
きるか。
・おやつ、お茶を配る。「どうぞ」「ありがと
う」
4:30
おやつ
・「いただきます」
・食べる
・「ごちそうさま」
・おやつ
・お茶
おわりの会
(1)はじめの挨拶
(2)ふりかえりカードの記入
(3)発表(3人)
(4)スタッフから
(5)次回の予定~京子Tから
(6)帰りの挨拶
5:00
児童解散
①挨拶活動を行う。(子ども2人と先生
2人)
②近藤Tにポイントカードを渡して帰
る。
5:10
①安部Tとスタッフ1名が子どもを生訓
室へ誘導。他のスタッフは後片づけ後、
・記録用紙
見送り、片付け、反省会 記録用紙記入。
②反省会;個別、全体、章Tから。
5:30
スタッフ解散
4:45
◎クイズやしりとり
をしながら和気藹々
と・・・
・ふりかえりカー
ド
・鉛筆
・消しゴム
*玄関前ま
では章、安
部が見送
る。
*記録用紙をケースワーカーへ
27
資料3
様式7
活動
場面
集
合
・
自
由
遊
び
集
合
・
自
由
遊
び
課
題
遊
び
1
児童の活動記録・評価用紙(平成17年7月)
■Aji-co個別記録
対象児童: 担当スタッフ: 評価の対象となる行動 評価
君( 学年) 指導年月日:平成17年7月15日
(花巻養護学校)
指導の場:花養・プレールーム
評価の根拠 挨拶に応答する際、アイコンタク
トをすることができる。
挨拶に応答する際、動作(笑顔、
手を振る、互いの手でタッチする)
を返すことができる。
挨拶をする際、アイコンタクトを
することができる
相手の様子をうかがい、適切なタ
イミングで挨拶をすることができ
る。
はじめの会の開始時、自分の席に着
席することができる。
進行役の話し手に視線を向けるこ
とができる。
活動場面におけるエピソード
「元気しらべの」の際、点呼する
相手に視線を向けることができる。
話を聞く際の望ましい姿勢(着席、いすに深く
座り進行役に体を向けること)を維持することが
できる。
パートナーに声をかけながら決め
られたコースを誘導することができ
る。
目隠しをして歩いた気持ちを言語
化することができる。
友だちを誘導して歩いた時の気持
ちを言語化することができる。
お
わ
り
の
会
おわりの会の開始時、自分の席に
着席することができる。
進行役の話し手に視線を向けるこ
とができる。
ふりかえりカードの発表では、適
切な大きさの声(3の声)で話すこ
とができる。
話を聞く際の望ましい姿勢(着席、
いすに深く座り進行役に体を向ける
こと)を維持することができる。
※ 備考 記入例
(記号)
○;自分で判断し、行動したとき。
□;注意の促し(指さしや「ほら」等の声がけ)で行動できたとき。
△;直接的な指導(「〜しなさい」等の指示、手をとる等の援助)で行動できたとき。
●;行動できなかったとき、指導方法を思いつかなかったとき。
=;指導場面がなかったとき。
28
資料4
活動の要素の分析
要素
分類A
分類B
音への気づき
聴覚
ことば
かず
内容
聴覚的弁別
音がしているか否かに気づく。
音がどの方向から聞こえてきている
か分かる。
音の種類を区別できる。
言語理解
言葉の意味を理解する。
音源定位
ブラインド
ボウリング
ウォーク
はないちも だるまさん 秋のフルー
んめ
がころんだ ツバスケット
○
○
○
○
○
○
○
○
語彙力・語想起力 単語を知っている。
○
○
表現力
○
○
言葉を用いて表現する。
文字の読み書き 文字を読んだり書いたりする。
いくつかの事柄に共通の要素をあげ
抽象能力
ることができる。
単語がどのような音から成り立ってい
音韻操作
るか分かる。
数を数えるなど、数の意味が分か
数の概念
る。
順序数
順番と数を対応できる。
計算
○
○
視覚的注意
四則計算ができる。
目の前にないものを視覚的にイメー
ジする。
空間の中での自分と対象物の位置
関係を理解する。
自分の見えている視点ではなく、相
手からどのように見えるかなど、違う方
向からの見え方を予測する。
どのような形か分かる。
背景(地)から見るべきもの(図)を選び
出して見る。
注意を向けて見る。=視る
○
聴覚的注意
注意を向けて聞く=聴く
○
視覚的記憶
視たものを覚える。
視覚イメージ
空間位置関係
視点の変換
視覚
活動名
人間いすと
り
○
形の理解
図と地
聞いたことを覚える。
様々な動作を調節して目的に応じた
巧緻性
動作を行う。
運動
自分の体の部位や大きさ、動きが分
ボディーイメージ
かる。
ゲーム中の自分の役割を理解して、
それを遂行する。また必要に応じて交
役割
替できる。
ゲーム中の自分の順番を理解し、そ
順番
れを守る。
社会性
ゲームの結果である勝敗を受容し、
感情抑制
感情をコントロールすることができる。
自己開示
自分の感情を言語化できる。
相手の表情や動作から、その社会的
表情・動作の読み
な意味を読み取ることができる。
現在の自分の理解度を自覚し、課題
達成のために、どのような情報が必要
かがわかる。
メタ認知的知識 自分の行動による、相手の反応を予
測することができる。
メタ認知
自分が他人にどう見えているかが分
かる。
自分の作業能力を鑑み、課題達成に
かかる時間を予測することができる。
実行機能
課題において、自分のできる範囲を
分かる。
課題をこなすために必要な時間、反
処理速度
応するまでにかかる時間の長さ。
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
聴覚的記憶
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
※項目については、高良・今塩屋(2003)、竹田契一(2000)を参考に、平成16年度に作成した試案である
29
資料5
写真・絵付き選択型ワークシート
30
資料6
①
様式7
活動
場面
B 児の評価・記録の一例
集
合
・
自
由
遊
び
■Aji-co個別記録
評価の対象となる行動 評価
□
挨拶に応答する際、動作(笑顔、
手を振る、互いの手でタッチする)
を返すことができる。
(
お
わ
り
の
会
評価の根拠 スタッフと対面しても挨拶をする前に遊び始め
相手の様子をうかがい、適切なタ
イミングで挨拶をすることができ
る。
= はじめの会の開始時、自分の席に着
席することができる。
○ ことが出来、遊びをやめられる。
集
合
・
自
由
遊
び
「冷凍ビーム」という自分なり
の遊びをしていた。背負い投げ
やキック、パンチをする時に
「痛い」というとすぐにやめる
事が出来た。
集
合
・
自
由
遊
び
進行役の大きい声による指示には耳を傾け従う
進行役の話し手に視線を向けるこ
とができる。
□
「元気しらべの」の際、点呼する
相手に視線を向けることができる。
○
一番最初に席について、ポイン
トシールを求める。「僕偉
話を静かに長時間聞くことは難しい。
い?」「できたよ」と言い、隣
に座っている友達とシール争い
をしている。「司会の話を聞か
自分の番を静かに待ち立派に答えることが出 ないとシールはあげられない
来た。
よ」というと他のスタッフに
シールを求めた。
△ 話を静かに長時間聞くことは難しい。
お
わ
り
の
会
遊び後の感想発表で、カードを選ぶこともお話も 遊びについて「知ってる」「で
○ しないと首を振ったが、「頭に来た」のカードを挙 きるかもしれない」と期待して
げると「頭に来たよ!」と言葉にした。
いた。自由遊びで「冷凍ビー
ム」という遊びをしていたこと
だるまさんころんだでは、周りの様子を見て を重ね合わせたのでだるまさん
いたりスタッフに話しかけたり、鬼の声に合 ストップは楽しくできた。鬼に
わせてストップしない。
つかまると、泣きだし「悔し
かったの?」と聞くと「ほっと
発表に対して拍手されると少し、はにかみな
いてよ」と顔を合わせず、「も
がらも「もう(ゲームを)やらない方が良いん
うあじっこに来るもんか」「こ
じゃない?」と言った。
の遊びは最低だ」と言った。自
スタッフが見本を見せる際にストップのかけ声を 由時間のことを聞くと楽しかっ
忘れた事に気づき「ストップは?」と大きな声で教 た事を思い出し佳絵Tと遊びを
始めた。
えた。
オニのストップの声がけで移動を
止めることができる。
=
感情を言語化することができる
(セーフだった時やオニになった時
など)。
○
おわりの会の開始時、自分の席に
着席することができる。
○ 出来るが、私語をしてしまう。
進行役の話し手に視線を向けるこ
とができる。
□ た。
ふりかえりカードの発表では、適
切な大きさの声(3の声)で話すこ
とができる。
○
話を聞く際の望ましい姿勢(着席、
いすに深く座り進行役に体を向ける
こと)を維持することができる。
□ 話を静かに長時間聞くことは難しい。
※ 備考 記入例
活動
場面
活動場面におけるエピソード
○ る。
)
だ
る
ま
さ
ん
こ
ろ
ん
だ
様式7
はじめから目を合わせて挨拶をするのは難しい
が、次の行動に移る前にこちらから顔を近づけ
ると、趣旨を理解出来る。
= きちんと会釈をして挨拶出来た。
挨拶をする際、アイコンタクトを
することができる
声に合わせて体を静止することが
できる(だるまさんストップ)。
指導年月日:平成17年9月16日
担当スタッフ:佐々木佳絵 (花巻養護学校)
指導の場:プレールーム
話を聞く際の望ましい姿勢(着席、いすに深く
座り進行役に体を向けること)を維持することが
できる。
課
題
遊
び
②
対象児童: D 君 (2学年)
挨拶に応答する際、アイコンタク
トをすることができる。
集
合
・
自
由
遊
び
B 児の評価・記録の一例
B 児の評価の変遷
B 児の行動の変容とスタッフの支援方法の変遷一例
①
②
③
B 児の評価の変遷
■Aji-co個別記録
5月13日 6月17日 8月19日 8月19日 9月16日 11月18日
評価の対象となる行動
評価
評価
挨拶に応答する際、アイコンタクトをす
ることができる。
○
挨拶に応答する際、動作(笑顔、手を振
る、互いの手でタッチする)を返すことが
できる。
挨拶をする際、アイコンタクトをするこ
とができる
相手の様子をうかがい、適切なタイミン
グで挨拶をすることができる。
はじめの会の開始時、自分の席に着席する
ことができる。
評価
評価
評価
評価
○
●
□
△
○
○
=
=
○
●
○
●
○
=
-
●
=
=
=
●
□
○
○
○
進行役の話し手に視線を向けることがで
きる。
□
□
□
□
□
「元気しらべの」の際、点呼する相手に
視線を向けることができる。
=
○
○
○
○
話を聞く際の望ましい姿勢(着席、いすに深く座り進
行役に体を向けること)を維持することができる。
●
△
□
△
○
おわりの会の開始時、自分の席に着席す
ることができる。
●
○
○
○
○
進行役の話し手に視線を向けることがで
きる。
△
○
□
□
□
ふりかえりカードの発表では、適切な大
きさの声(3の声)で話すことができる。
-
●
○
○
○
話を聞く際の望ましい姿勢(着席、いす
に深く座り進行役に体を向けること)を維
□
□
□
○
持することができる。
※ 備考
(記号)○:自分で判断し、行動したとき。
□:注意の促し(指差しや「ほら」等の声がけ)で行動できたとき。
△:直接的な指導(「しなさい」等の指示、手を取る等の援助)で行動できたとき。
●:行動できなかったとき。指導方法を思いつかなかったとき。
=:指導場面がなかったとき。
進行役の大きな声による指示には応じることが
あじっこの課題遊びはもうしな
いで自由あそびだけ楽しいと
言っていたが、ポイントシール
が集まっていくことや、友達と
ふりかえりカードを書くために場所移動する 見せ合いをすることに楽しみを
と気分も切り替わり、集中できた。
見つけたようだ。
司会を見るように言うと怒った顔をしてい
(記号)
○;自分で判断し、行動したとき。
□;注意の促し(指さしや「ほら」等の声がけ)で行動できたとき。
△;直接的な指導(「? しなさい」等の指示、手をとる等の援助)で行動できたとき。
●;行動できなかったとき、指導方法を思いつかなかったとき。
=;指導場面がなかったとき。
B 児の行動の変容とスタッフの支援方法の変遷一例
③
■ SST教室あじっこ・評価
評価の対象となる行動;おわりの会の開始
時、自分の席に着席することができる
対 象 児 童 / F 児 (2学年 )
評価/平成18年 2月14日
担当スタッフ / 佐々木 佳絵
指 導 方 法 の 変 遷
※児童の行動における自主
的・自律的な要素と依存的・
他律的な要素の割合(イメー
ジ)
児 童 の 行 動 変 容
●
多 小
①「先生の後ろにかくれてみんなのところに行こう」と
促す。
①活動している様子を伺いながら教室に入り後ろのほうで見
児童の行動におけ 学する。
る、
依存的・他律的な要素
②「席に着いた人はシールを貰っているよ」と促す。
②席に着いて自らポイントカードをスタッフに差し出す。
③静観
③自分で気付き席に座ることができる。
児童の行動におけ
る、
自主的・自律的な要素
多 小
○
31
資料7
①
様式7
活動
場面
① F 児の評価・記録の一例
② F 児の評価の変遷
③ F 児の行動の変容とスタッフの支援方法の変遷一例
F 児の評価・記録の一例
対象児童: F
■Aji-co個別記録
集
合
・
自
由
遊
び
評価の対象となる行動 評価
挨拶に応答する際、動作(笑顔、
手を振る、互いの手でタッチする)
を返すことができる。
評価の根拠 ○
□
相手の様子をうかがい、適切なタ
イミングで挨拶をすることができ
る。
□
活動場面におけるエピソード
□
進行役の話し手に視線を向けるこ
とができる。
集合の声に気付かなかったのか、遊び足りな
○ かったのか、遊び続けていたので「はじめの
会が始まるよ」と声をかけたら席に着くこと
ができた。
イスに浅く腰掛けがちなので声をかけて姿勢
○
を直した。
見本を見る際、視線を向け注目す
ることができる。
集
合
・
自
由
遊
び
挨拶されると返事は返すがアイコンタクトは
Jさんと遊んだり網の遊具で遊
できていない。かがんで顔を近づけて挨拶を
ぶことが大好きなようだ。
するとやっと目が合った。
はじめの会の開始時、自分の席に着
席することができる。
「元気しらべの」の際、点呼する
相手に視線を向けることができる。
活動
場面
集
合
・
自
由
遊
び
はじめの会は落ち着いて司会者
や発表者を見ることができてい
る。元気調べの時は他の子を意
識している様子が見られ、しっ
かりとした返事ができていた。
□
お
わ
り
の
会
○
自分はやったことがあるからと言い、見本を 楽しそうにやっていたが、相手
選んだ友だちの名前(写真)を答
える(選ぶ)ことができる。
じっくり見て楽しそうな表情を浮かべてい
○ た。手をつなぐ、友だちの写真を選ぶことは チームに姉の美保さんがうつる
と興奮して大声になったり勢い
隣のともだしちと手をつなぎ、前
後のステップを踏むことができる。
○
おわりの会の開始時、自分の席に
着席することができる。
□ 着席の声がかかったが網の遊具に駆け上って ちが強くあり、発表できないA
君を見て「俺がやってやろう
抵抗もなくできた。
よく前に出たり、少々乱暴気味
になっていった。
(
お
わ
り
の
会
進行役の話し手に視線を向けるこ
とができる。
ふりかえりカードの発表では、適
切な大きさの声(3の声)で話すこ
とができる。
話を聞く際の望ましい姿勢(着席、
いすに深く座り進行役に体を向ける
こと)を維持することができる。
※ 備考 記入例
F 児の評価の変遷
■Aji-co個別記録
5月13日 6月17日 7月15日 8月19日 9月16日 11月18日
評価の対象となる行動
評価
評価
評価
評価
評価
評価
挨拶に応答する際、アイコンタクトをす
ることができる。
○
□
○
□
○
□
挨拶に応答する際、動作(笑顔、手を振
る、互いの手でタッチする)を返すことが
できる。
●
□
○
○
○
=
挨拶をする際、アイコンタクトをするこ
とができる
□
□
○
□
○
□
相手の様子をうかがい、適切なタイミン
グで挨拶をすることができる。
□
○
○
□
=
○
はじめの会の開始時、自分の席に着席する
ことができる。
□
○
□
□
□
○
進行役の話し手に視線を向けることがで
きる。
○
○
○
○
○
○
「元気しらべの」の際、点呼する相手に
視線を向けることができる。
○
○
○
○
○
○
話を聞く際の望ましい姿勢(着席、いすに深く座り進
行役に体を向けること)を維持することができる。
△
□
○
□
△
□
おわりの会の開始時、自分の席に着席す
ることができる。
□
○
○
□
□
○
進行役の話し手に視線を向けることがで
きる。
○
○
○
○
○
○
ふりかえりカードの発表では、適切な大
きさの声(3の声)で話すことができる。
○
=
○
=
=
=
話を聞く際の望ましい姿勢(着席、いす
に深く座り進行役に体を向けること)を維
△
△
●
△
□
○
持することができる。
※ 備考
(記号)○:自分で判断し、行動したとき。
□:注意の促し(指差しや「ほら」等の声がけ)で行動できたとき。
△:直接的な指導(「しなさい」等の指示、手を取る等の援助)で行動できたとき。
●:行動できなかったとき。指導方法を思いつかなかったとき。
=:指導場面がなかったとき。
)
は
な
い
ち
も
ん
め
様式7
□
挨拶をする際、アイコンタクトを
することができる
話を聞く際の望ましい姿勢(着席、いすに深く
座り進行役に体を向けること)を維持することが
できる。
課
題
遊
び
指導年月日:平成17年8月19日
担当スタッフ:佐藤京子(花巻養護学校 指導の場:プレイルーム
挨拶に応答する際、アイコンタク
トをすることができる。
集
合
・
自
由
遊
び
②
君(1学年)
係を自分もやりたいという気持
遊び始めた。「終わりの会が始まるよ」「み
か?」などの発言があった。後
んなはもう席に着いているよ」という声掛け
ろに座っていたこうき君が自分
で遊具を離れることができた。
のシールを数えていたのに反応
○
して数の勝ち負けを意識してい
た。こうき君よりも多く欲しが
りシールが欲しいとねだってき
司会者や発言者が気になっているので話して た。最後まで座って話が聞けた
いる相手に視線を向けることはできるが落ち らシールをあげる約束をしてい
着かない。自分がやりたいという気持ちもあ たのでそれを言い聞かせたが、
り、前に出ている子にちょっかいをかけに席 途中席を離れたりして集中がと
ぎれると「シール頂戴よ!!」と
△ をたつことが何度かあった。
我慢できない様子で訴えてくる
ことが何度かあった。
(記号)
○;自分で判断し、行動したとき。
□;注意の促し(指さしや「ほら」等の声がけ)で行動できたとき。
△;直接的な指導(「? しなさい」等の指示、手をとる等の援助)で行動できたとき。
●;行動できなかったとき、指導方法を思いつかなかったとき。
=;指導場面がなかったとき。
③
F 児の行動の変容とスタッフの支援方法の変遷一例
■ SST教室あじっこ・評価
評価の対象となる行動;おわりの会の開始
時、自分の席に着席することができる
対 象 児 童 / F 児 (1学年 )
評価/平成18年 2月14日
担当スタッフ / 佐藤 京子
指 導 方 法 の 変 遷
※児童の行動における自主
的・自律的な要素と依存的・
他律的な要素の割合(イメー
ジ)
児 童 の 行 動 変 容
●
多 小
①直前に「座って下さい」という指示
児童の行動におけ ①何度か立ち上がって席を離れようとした。
る、
依存的・他律的な要素
②事前に「座って下さい」という指示
②声がけに応じて座ることができた。
③良い姿勢で話を聞くことができたら、金シールをあ
げると約束
③意識して姿勢を正して、話を聞くことができた。
児童の行動におけ
る、
自主的・自律的な要素
多 小
○
32
資料8 保護者アンケート結果
『SST教室・あじっこ』に参加して、お子さんの様子に変化が見られた項目に○をしてください。
(A:少しでも改善できた B:変化が無かった C:わからない) 数字は回答人数
総回答数7
子どもの様子
A
B
C
1 集中時間が短い
4
1
2
2 状況の理解に時間がかかる
4
1
2
3 集団の中にいることが苦手
3
3
1
4 円滑な友人関係が築きにくい
4
2
1
4
2
5 一斉指導の場面で個別の対応が必要
1
6 ことばの指示の理解がしにくい
5
0
2
7 手先が器用でない
2
4
1
8 聞くことが苦手
4
3
0
9 話すことが苦手
3
2
2
10 読むことが苦手
2
2
3
11 書くことが苦手
2
3
2
12 計算が苦手
1
3
3
13 推論するのが苦手
2
1
4
1
14 運動するのが苦手
3
3
1
15 見て理解することが苦手
3
3
1
16 落ち着いていられない子
4
2
17 衝動性的に行動しやすい
2
4
1
18 自分の意思を伝えることが苦手
0
5
2
19 相手の意思をくみとることが苦手
6
0
1
20 引っ込み思案
2
2
3
21 順番やルールを理解し、それを守ることが苦手
6
0
1
3
1
22 こだわりがある
3
23 整理整頓が苦手
2
4
1
変化が見られた点について具体的に記入してください。
・あじっこに来て他校の友達をつくることができ、街などで会っても素直にあいさつをかわすこ
とができた。
・家などでも声掛けをしながらやるようにしている。
・友だちとの関わり方が良くならない面が多くありますが、以前よりは相手の気持ちを考えて行
動する時が増えてきました。(遊ぶときの行動のズレ、会話のズレ)
・自分が嫌な時は嫌だとはっきり言えるようになってきた気がします。
・黒板に字を書きたいという衝動を、本人専用のメモ用紙をもらってそれに書くようなアドバイ
スをもらった。そのことで黒板に書きにいくことが少なくなった様に思う。
・ゲーム等で負けることが嫌で泣いていたのですが、自分の気持ちを数字で表したり、また、
「今日の残念な気持ちは3です」など言葉で表現できるようになりました。
・部屋に入るのさえ大変だったが、すんなり入っていけるようになった。
・参加することが楽しそうに見える。(楽しみにしている)
・友だちをたたくことが少なくなった。成長が見られる。
・あじっこで自分や家族以外の友だちの絵を描いた。
・あじっこに参加するのを毎回楽しみにしている。次回のあじっこの日にちをずっと覚えてい
る。その日の活動内容も一生懸命話してくれる。
・個別記録がとても参考になる。
・自分の行事予定表を確認しながら準備をしている。(学校行事、SST、リトルグラス、病院)
・友達関係に意欲が出てきた。(あじっこで一緒の友達に手紙を書きたい、など)
33
『あじっこ』以外の場面(学校、家庭)で見られた子どもの変化について記入してください。
・学級の中で関わりをうまく持てない子があり、その子にいろいろちょっかいを出したりされ、
「今日は掃除があるのか?」「おなかが痛いから行きたくない」などということがあった。あじっ
この先生に相談したら「いっしょにやろうね」などといってお互いの気持ちを尊重するようにした
らとアドバイスをもらった。机を運ぶときに「いっしょにやろう」と自分の方から言うようにしたら
最近はトラブルも減っている様です。
・字を書きたい衝動を学校の本などに書いていたが、自由帳に書くことで落書きが減った。
・思うようにいかなくて泣くこともありますが、何が嫌なのか言えるようになってきました。
・学習生活面でも取り組もうとする気持ちが大きくなった様な気がする。がまんする、誰かに合
わせるといった点でも育っているように見えます。
・だだをこねること(パニック)が少なくなった。
・何に対しても積極的に活動している。学校も「毎日楽しい」という。友達とのトラブルも以前は
ずいぶんとあったが、最近はあまりないようだ。
・学習面や登下校のルールなどまだ心配はあるものの、以前ほどではなく安心して生活してい
る。
・夕食時間にテレビをみることをやめようとの話し合いの中で時々は見なくてもいい日が出てき
た。
・自分のやらなければならない事(宿題、学校の準備、はみがきなど)をわかって、スムーズに
やれるようになった。
・行事の場面にほとんど参加できるようになった。(以前は壁に寄り添っていたり、ごろごろして
いた。)
『SST教室・あじっこ』に参加しているお子さんの様子を見ていかがでしたか。また、今後期待
する内容などありましたら記入してください。
・同じ学校から来る友達もいて、あじっこに来るのは楽しみにしているようです。毎回「楽しかっ
たと言っています。
・話を聞くとき、話すとき以前はどこかを見ていたが、このごろは私の方を何となく見ながら話し
てくれるようになった。前よりしっかりと会話してくれる。
・みんな楽しく参加しているなあと毎回感じます。家でも何かできることがあればどんどん教え
ていきたいです。
・友だちとの付き合い方をもっと学んでいって欲しい。
・手先、指先が不器用なので何か細かい作業ができるようになればと思う。
・良い方向に行っていると思うのでこのまま進んでもらえればと思っています。
・子どもも大変楽しみにしています。司会など努めて自分に自信がついたようです。
・細かいところまで指導してくださるのでとても良かったです。
・「今日は何して遊ぶのかな」と言いながら喜んで参加している。満足している。
・活動の内容を詳しく知りたい。(こどもからはほとんど聞けないので)
34
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