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小説の書く方法をイチからヒャクまで

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小説の書く方法をイチからヒャクまで
小説の書く方法をイチからヒャクまで
ryosui
タテ書き小説ネット Byヒナプロジェクト
http://pdfnovels.net/
注意事項
このPDFファイルは﹁小説家になろう﹂で掲載中の小説を﹁タ
テ書き小説ネット﹂のシステムが自動的にPDF化させたものです。
この小説の著作権は小説の作者にあります。そのため、作者また
は﹁小説家になろう﹂および﹁タテ書き小説ネット﹂を運営するヒ
ナプロジェクトに無断でこのPDFファイル及び小説を、引用の範
囲を超える形で転載、改変、再配布、販売することを一切禁止致し
ます。小説の紹介や個人用途での印刷および保存はご自由にどうぞ。
︻小説タイトル︼
小説の書く方法をイチからヒャクまで
︻Nコード︼
N7577BY
︻作者名︼
ryosui
︻あらすじ︼
小説を書くにはネタがいる、設定がいる、プロットがいる、文
章がいる。
いろんな﹃必要﹄を、自作を引き合いに出して、とにかく具体的
に書いていく内容です。
今現在書いてる人や、これから書く人の参考になれば良いと思い
ます。
おまけで、タイトルの付け方などの書いてて思ったことを雑記に。
1
0 − はじめに
小説の理論だとか、技術というのは、すでに説明されている人が
多いです。
しかし、経験談を最初から最後まで延々と書いているものってあ
んまり無いかな、と思います。
小説家になろうって初心者の方ばかりですし、私もそうです。
そこで思うのが、他の人って具体的にどうやって書いているんだ
? ってこと。
実は自分のやってることって頓珍漢なんじゃないか、とビクビク
しますし。
他の人がどうしているのか知りたい。
なので、まずは自分から晒すことにしました。
初心者の一作書いてみた経緯とか、発想、経験なんてものを、粗
筋を考える段階から完結まで、全て書き切ってしまおうというこの
エッセイ。
すでに書き始めている人には、﹁それは無いだろ﹂とか﹁似たよ
うなことしてるわ﹂などの感想を持って頂けたらいいなと思います。
まだ書いたことが無い人には、﹁これでいけるなら自分もいける﹂
﹁自分も書いてみたい﹂と思って頂けるようなものを目指します。
ついでに、自分のやり方を文字に起こして、反省などにも繋がれ
ば⋮⋮。
普遍的な技術論は他の方のエッセイ頼りで、簡略化する可能性が
多いにあります。
また、書いたことを引き合いに出す関係上、自作の﹃ヒキニート
だけど異世界に来てしまったようなので好き勝手遊ぶことにした﹄
2
のネタバレを書くことが前提になっています。
その点だけはご注意下さい。
3
1 − 適切な小説のネタを考える︵前書き︶
前置きです。
4
1 − 適切な小説のネタを考える
小説を書くにあたり、︵当然のことですが︶どんな話を書くか決
めないといけません。
まずは私の情報でも書きましょうか。
私の人生で読んだ小説といえば400冊くらいです。
古典作品で言えば30冊もいかないですし、グインサーガで10
0冊以上占められているので、他の作者の方に比べたら塵芥みたい
なものです。
しかもほとんどが学生時代に読んだもので、今は年間10冊も読
んだら珍しいっていうくらいです。
人生経験も豊富とは言えませんね。
ここ最近、小説家になろうで読み始めてからが、ある意味人生で
一番文字を追っている期間かもしれません。
さて、小説を書く理由っていろいろあると思います。
好きな小説のような世界を自分も作りたい、自分の考えや思って
いることを表現したい。
私は主に後者で、素朴な昔の人と現代人が絡み合って、思想の違
いから悩む恋愛物が書きたいなぁと思っていました。
ですが、具体的にどういうのがいいのか、なんて全然わかりませ
ん。
何がいいのかもよくわかってなかったんですが、自分なら他の人
が読むことを意識した物しか読みません。
自意識に満ちた話って聞くに堪えないですし、読むのも同じ。
まぁ悩んでも仕方ないってことで、以下のように考えました。
5
そもそも、何が問題なのか。
面白そうなネタは思いつくが、受け入れられるだろうかという点
です。
私の経験上、妄想をするだけなら楽しいんですけど、どう考えて
も俺得でしかないものがよく出来上がります。
どう考えてもこれはダメだろうということで、破棄するんですが、
結構悔しいんですよね。
自分としては面白いはずだ! と考えてるわけですが、ダメだと
考える自分もいるためです。
好きな話を書きたいが、ジャンルがダメで受け入れられるとは思
えないっていう感じですね。
そこで私は、なら好きなことを、自分の好きなジャンルに統合し
てしまえば良いのでは、と考えます。
目的地点は小説のネタになる粗筋が出来上がること。
じゃあ具体的にどうするかということで、次から発想方法を書い
ていきます。
6
2 − 妄想文 + お気に入りジャンル
● 妄想文を簡単に書いてみる
ネタのネタです。
面白いと思う話ではなく、寝る前とか、歩いているとき、電車で
立っているときなどの、暇な時間にふと思い浮かぶ妄想です。
大抵は荒唐無稽な、ご都合主義でいっぱいのトンデモ妄想ですが、
恥ずかしい云々は置いておいて、好きなことではあるはず。
これを先ほどの前者である﹁好きなこと﹂として、配置しました。
ヒキニートにおいてはこんな感じです。
﹁一人暮らしの主人公はなぜか大金をゲットした。使い道は特に無
い。なぜか奴隷商で奴隷を買うことになった。立ち並ぶ奴隷を見て
いると、黒い髪の可愛い子を見つけた。衝動買いして、小さな家で
楽しく暮らした﹂
なんだかすごい欲望ダダ漏れって感じで気持ち悪いとは思います
が、妄想なんてこんなもんかなと思います。
他にも王宮政治系だったり、戦記だったり、成り上がりモノだっ
たりいろいろありますが、簡単なのを選びました。
初めて書くものですし、短い方が良いだろうという判断です。
ご都合主義な部分は全て、なぜか、で、すっ飛ばし、思考放棄を
します。
この段階では考えるだけ無駄というものです。
遠慮はいりません。
7
● ジャンルを決める
書くジャンルというのは、決めるのに結構勇気がいります。
そもそも、自分は何のジャンルで書きたいのか?
投稿先は小説家になろうであり、一般文芸ではなく、ライトノベ
ルでもない。
自分が小説家になろうに書きたい内容は何か?
考えれば考えるほどわからなくなるんですが、スッパリ諦めて、
数字に頼ることにしました。
小説家になろうのお気に入りにある小説の中で、ジャンルとキー
ワードに多く存在する物だけを選ぶ。
単純ですが、こうしました。
お気に入りに入れている以上、好きなジャンルが多く、しかも小
説家になろうに限定されています。
自分で言うのもナンですが、なろうと一般では読むものが全然違
うので、迷わずに済みます。
また、自分に合うような、市場や読者を意識する、という点でも
良いと思います。
ヒキニートのときは結果として、ファンタジー、中世、異世界、
転生、剣と魔法、ハーレムとなりました。
ありきたりですが、なんとか成立しそうな気がしますね。
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3 − 合体、そして粗筋へ
● 合体させてみる
妄想文とジャンルを試しに合体させてみます。
目標は粗筋作成ですが、千里の道も一歩からという気持ちです。
といっても、各所にキーワードを入れ込むだけなんですが。
こんな感じです。
﹁剣と魔法が支配する中世っぽい異世界に転生して、一人暮らしを
していた主人公は、なぜか大金をゲットした。使い道は特に無い。
なぜか奴隷商で奴隷を買うことになった。立ち並ぶ奴隷を見ている
と、黒い髪の可愛い子を見つけた。衝動買いした。その後なぜかハ
ーレムになった。いろいろあったが小さな家で楽しく暮らした﹂
ちょっとだけ小説っぽくなってきたような気がします。
そして、テンプレっぽい雰囲気も出てきました。
このテンプレは自身がよく読む内容なので、補完が容易です。
また、お約束や、ルールなどもすぐに思い浮かぶため、初心者と
しては扱いやすい題材になり易いですね。
自分の土俵で戦うことが出来ることを意味しますし。
初めてに初めてを積み重ねるというのは、人生において危険な行
動のひとつ。
避けた方が良いだろうと思います。
● 粗筋にしてみる
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先ほどの妄想文+ジャンルを粗筋になるよう、補完していきます。
概ね、なぜか、を消す方針で進め、ジャンルのルールやお約束に
従います。
点と点を線で繋ぐような感じですね。
最終的には図形が出来上がることでしょう。
こんな感じですが、長いのでちょっと改行します。
﹁剣と魔法が支配する中世っぽい異世界に転生した一人暮らしの主
人公は、冒険者として働いているうちに大金をゲットした。
しかし、装備はすでに十分で、あまり贅沢にも興味がないため使
い道は特に無い。
娯楽に欠ける中世世界で、酒場で酒を飲んで暇つぶしをしている
と、偶然奴隷商の人とコネを繋ぐことが出来た。
奴隷商は結構気のいい人物で、飲み話の成り行きから奴隷を格安
で買うことになった。
売り物の、立ち並ぶ奴隷を見ていると、黒い髪の可愛い子を見つ
けた。
好みにドストライクだったため、衝動買いした。
奴隷も弱いが、一応戦闘が出来たので、手伝わせることにし、雑
魚敵相手にちょっとずつ稼ぐことにする。
その後も冒険で似たようなことが発生し、大金を手に入れる。
いっそ奴隷でパーティを作ろうかと思い、魔法使いの奴隷を買う
ことにする。
奴隷商に掛け合うと都合よく美人の魔法使いがいたので、購入し、
結果ハーレム状態になった。
いろいろな冒険や、奴隷と掛け合いを繰り返すうちに、奴隷たち
も強く仲良くなり、冒険の末、大金を手に入れて、小さな家を買い、
楽しく暮らした﹂
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大体テンプレに収まったと思います。
いろんなところで無理矢理感が出ていますが、粗筋としてはこん
なところでしょう。
一応起承転結も見て取れることですし、話も小さそうで難しそう
な点も少なく、なんとかいけそうです。
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4 − 一人称か三人称かを選ぶ
どちらが書きやすい云々っていう言葉をよく耳にしますが、私か
らするとどっちも難しいんじゃないかなと思います。
だって初心者ですし。
なので、選ぶ基準はそこではなく、小説の内容に合わせるべきで
す。
こちらもよく聞く話で、得意分野というものがあります。
一人称は小さな世界、三人称は壮大な世界、です。
小さな世界とは、学園物とかそういう話ではなくて、メインの登
場人物が少ないことを意味します。
例えば、勇者一行が魔王を倒すという話は小さな世界です。
仲間は4人くらいしかいませんし、その他のメインといえば5人
もいないでしょう。
壮大な世界とは、主人公が王様などで、多数の部下を抱え、他国
との外交をしたり戦争をしたりするような話です。
メインの登場人物が多い話とも言えます。
そして、大陸中を旅していろんな人と話す、ということではあり
ません。
あくまで人物描写を良く考えるべきメインであり、役割上出てき
ただけのサブではないのです。
これを前提に粗筋を見て、どちらが良いか選んでみます。
私が書いたものは、冒険することはあっても、主人公と奴隷しか
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基本的に登場しないので、一人称が良いように思えますね。
なので、一人称を選びました。
皆さんはもっと違うものが出来上がっているでしょうから、よく
考えて下さい。
また、三人称の中でいろんな種類があって選べない、という方が
いると思います。
正直なところ私も書いた事が無いため、わかりません!
大変申し訳ないんですが、﹃N.M.ぺんくらぶ﹄さんの﹃0か
ら始める小説の書き方徹底講座!﹄という、プロの作家さんが書い
ている講座に説明があります。
そちらを一度読んでみて下さい。
さて、ここからが本番です⋮⋮。
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4 − 一人称か三人称かを選ぶ︵後書き︶
頑張ってみようかと思いましたが、本当に説明できませんでした。
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5 − 主人公を考える
ライトノベル系の定番とも言えますが、キャラクターの設定です。
私の発想としては、粗筋に合わせて作ればちょうど良く合うはず、
です。
合わせているのだから、合って当然、ってことですね。
では、まず主人公から決めます。
というのも、一人称なので主人公の行動のロジックが定まらない
と、どうやっても次が定まらないからです。
似合わない行動を、お話だから仕方ない、なんてやってるとすぐ
に破綻しますし。
ヒロインから決めるのは、このやり方だとなかなか摺り合わせが
上手くいきませんでした。
粗筋から、一人暮らし、贅沢に興味なし、女奴隷を衝動買い、小
さな家で満足という感じの、性格に関わる人間っぽい動きを探し出
します。
テンプレだとある程度、人と一緒に暮らすのが当たり前ですが、
そこで一人暮らしということは、コミュニケーション能力が低そう
です。
もしくは、それを億劫に感じるかで、とりあえず友達が少なかっ
たであろう感じはします。
贅沢に興味なしということは、出世欲とか無さそうな、少々やる
気に欠けそうな感じです。
ヒロインが女奴隷で、買ってしまうということは、モテ無さそう
な感じが見えます。
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ハーレム願望ありということで、先ほどからの例を見るに、オタ
クっぽい感じがします。
なんとなく主人公像が見えてきたような気がしますね。
では、ここからが主人公設定の地獄のはじまりはじまり。
なんと、主人公の生まれてから、異世界転生するまでのことを書
き出すのです。
どうしてこうするかというと、一人称っていうのは、文がほとん
ど主人公の思考で占領されます。
その思考がブレにブレると、正直読む気が失せます。
ゲスでも、ブレなきゃ意外と楽しく読めますが、物語の展開のた
めにブレると、さっきまでこんな考え方してたのにって思えて、イ
ライラしてきてしまうんですね。
人間の思考というのは、それまでの人生が決めることであり、一
本通った考え方を持たせるには、イチから考えた方が、後から整合
性を取る必要がなくて、圧倒的に楽です。
正直、私も男の設定なんて力を入れたくありませんが、後の楽の
ため、今苦労しましょう。
基本的には、あなたが今どんな人生を歩んできたかを思い出せば、
自ずと書く項目はわかるはずです。
逆に言えば、よく考えても思いつかないことは必要ありません。
一度振り返り、どんなイベントや、岐路、友達、家族、趣味、経
験があって、何度それを変更して生きてきたかを思い返してみまし
ょう。
その項目を主人公の設定として書き出せば、主人公の人生が決ま
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ります。
一度やってみると、本当に文が簡単に書けますよ。
書くときに思うことを、今書いたのですから。
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5 − 主人公を考える︵後書き︶
多分一番大変です。
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6 − 本筋を読み解く
主人公と粗筋があれば、物語の内容は想像がつきます。
まず、粗筋から、起承転結を考えましょう。
起:異世界で冒険者として自立して生活
承:ヒロインたる奴隷を購入し、一緒に生活
転:冒険者として、人間として、成長、交流
結:ヒロインとの関係や生活が良い感じに安定して、楽しく暮らす
とします。
つまり、ヒロインとの関係を高める、冒険者として稼ぐことが二
本柱としてあります。
物語の基本は成長と変化です。
幸い主人公は人間的に優れているとは言えないので、これを成長
させる方針にし、その要素として、ヒロインと冒険を組み合わせま
しょう。
また、モテ無さそうなので、ヒロインと擦れ違いが多く発生する
はず。
そして友達が少なそうなので、他の冒険者と問題が発生する可能
性があります。
この二つを成長要素として使い、事件を起こします。
擦れ違いといえば、主人公はヒロインが好きなのに、ヒロインは
主人公が自分を嫌っていると思い込む、とか、他の女に入れ込んで
いる、など。
他の冒険者と問題といえば、パーティを申し込まれたが、付き合
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いたくないから嫌だ、と断り怒られる、主人公補正が働いて不審に
思われる、など。 思いつく事件を、ありきたりなものでいいので
想像していきましょう。
成長要素といえば、前者だと誤解を解消するためにいろいろと考
え、擦れ違いの原因たるヒロインの機微を察するようになる、など。
後者は、人間的に尊敬出来る人に無理矢理付き合わされるうちに、
一緒に行動するのも悪くないな、と思い始め、進んで交流するよう
になる、など。
こういった分解した話に、主人公の要素を組み合わせて、何が起
こるかを想像していきます。
イチからストーリーを書いてみろ、と言われても正直なんのこっ
ちゃって感じですが、一歩ずつ進めていけば、整合性の取れるスト
ーリーが構築できます。
無理にオリジナルティを作る必要なんてありません。
要素と要素を組み合わせて、自分の想像で料理していけば、自然
と他に無いものが出来上がるものなんですから。
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7 − 世界観を考える︵雰囲気と街︶
やりにくいファンタジーを想定して説明します。
舞台となる世界を、頭の中で想像してみましょう。
まず街からどうぞ。
なかなか言葉にしにくいでしょう。
イタリアみたいな感じ、とかになってしまったのではないでしょ
うか。
想像するものが多いのであれば、順序よく想像することが大切で
す。
千里の道も一歩からと言いますし。
地面、道、歩く人、服装、建物、話し声を想像してみましょう。
では私から。
地面は硬くならされた砂地と、石が綺麗に組み合わされた石畳が
存在していて、ゴミなどは見られない。
道は広く、建物から建物の間には街灯の他に何も無いが、大量の
人で溢れていて、非常に活気がある。
歩く人は、白人のように白い肌が基本で、髪は金髪や赤髪、茶髪
ばかりである。
服装は、金属と革を組み合わせたような鎧を着ている人や、だぶ
だぶの固そうな分厚い布のチュニックとズボンを着ている人、旅人
のようなマントに身を包み、中に何を着ているんだかわからない人、
高そうな宝石やレースの装飾がたくさん付いたシャツとズボンを着
ている人という感じ。
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建物は、石造りが基本で、レンガと木を部分部分に使い、明るい
色調にまとめていて、窓には色の付いたガラスと、無色のガラスを
組み合わせて填めこまれている。
話し声からは笑い声に満ちていて、陽気な声が多い。
とりあえず思い浮かんだことをドンドン書いていきます。
箇条書きでもなんでも構いません。
とにかくイメージにあるものを書いて下さい。
ここで問題なのが、ヨーロッパ風がどうとか、っていうことです。
ぶっちゃけイタリアとイギリスで全然違いますし、ファンタジー
っぽいかと言われると、全くそんなことが無いんですよね。
試しに、グーグル画像検索でもしてみると良いかと思われます。
想像したのと違って落胆しそうですが。
どうせするなら、お気に入りの漫画やゲームを思い浮かべた方が
遙かにやりやすいでしょう。
主人公のときと同様、今考えて書いたことが後の楽に繋がります。
頑張って書いていきましょう。
書き上がったら、それをもとに街の雰囲気を探ります。
想像したものがダークファンタジーなら、ゴミがそこら中に転が
っていたり、浮浪者、ねずみ、究極的には死体まであるかもしれま
せんね。
つまり、かなり陰鬱で、危険な雰囲気です。
そしてそれは、ストーリーに多大な影響を与え、作品の雰囲気に
も影響してきます。
こういったものは作者がそういう雰囲気を好んでいて、自然とそ
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うなるようになっていってしまいます。
どうしようもないことなので、受け入れていきましょう。
私が想像したのが先ほどのようなものなので、平和、素朴、正直、
清潔、豊かな雰囲気になりました。
ダークファンタジーみたいな世界とか書いてみたかったんですけ
どね。
これで戦争や殺し合い、奪い合いで陰惨な状況、とか言ってもど
だい無理な話です。
私はそういうのが合っている、としてキッパリ諦めました。
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8 − 世界観を考える︵風景と地図︶
街が出来上がれば、次は周りの風景を思い浮かべてみましょう。
例えば、街と外の領域が壁で仕切られているならば、そこから踏
み出した後の風景はいかがですか。
ヘリコプターで上を飛んでみた風景はどんなものでしょう。
遠くに山が見えたなら、その先は?
門があるなら道があるかもしれませんが、その先はどこに繋がっ
ているのでしょうか。
いろんな事が見えてきませんか。
もしかしたら、どこかで見た風景かもしれません。
ごちゃごちゃに合体した世界かもしれません。
でも思いついた世界です。
じゃあコレも書いてみましょう。
私が想像するのを書いてみます。
門をくぐる。目の先には道が延びて、その先は森へ繋がっている。
それより手前は土がところどころ見える、背の低い雑草と、大きな
岩、一本一本細い木が散らばって立っている。
森は、二回抱きつけば一周出来る、背の高い木が少し離れて生え
ていて、低い草ばかり。背の低い木はなく、藪もない。見通しはそ
こそこ良い。木の間から太陽の光が地面に届く。少し腐葉土のよう
な湿度がある。暗いが、光が差すと明るく感じる。
門をくぐる。道が地平線の先まで伸びている。横には見渡す限り
緑の平原。腰まで届く雑草が一面に生えている。遠くには低い山が
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うっすらと見える。
道は硬く固められた土があり、小さな石は転がっていても大きな
石はない。畦や水たまりもない。境目には雑草が生えていても、道
には生えていない。
基本的には、街と同じ。
地面を見て、徐々に視線を上げていき、周りを見て、そういえば
日本と比べてどうだろう、と意識を変えていきます。
ファンタジーならば田舎を想像するのが良いかと思います。
どうしてもイメージが思いつかない、という人はグーグル画像検
索で、道と検索してみましょう。
いろんな道がありますから、その中のひとつを見て、閉じて、頭
に描きながら書いてみて下さい。
どんな内容になったでしょうか。
恐らく文だけを見ても、写真のイメージには辿り着かなかったの
では?
でもそれで大丈夫です。
それを元にしてイメージを膨らませましょう。
もう一度書いてみます。
どうでしょうか、一度目よりは書けましたか。
連想と同じで、これならこう、こうならあれ、あれならそれ、と
ちょっとずつ変えていけば、どんどん世界は細かく丁寧になります。
最後には、どこかで見たけど、なんだか違う。
そんな、安心感のあるオリジナルティが出来上がります。
上からヘリコプターで見た風景、俯瞰図とも言います。
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これを想像するには、まず地元の周辺を思い出してみると良いで
しょう。
例えば、名古屋市があったとして、近くには港があり、大きな川
が流れ、各方角に道が延びていて、特に南と北西には大きな道があ
ります。
周辺にはベッドタウンと、さらに先には畑が集まり、そして山が
たくさんあります。
大きな道の先には、畑、家、小さな街、家、畑、家、大きな街と
連なっています。
ずっと先には大都市がありますね。
日本地図を覗いてみるのもいいですね。
平地には大都市が出来ていて、囲むようにいろんなものが見えて
きます。
では、それを見た後に、あなたの世界の俯瞰図を想像してみまし
ょう。
ちょっとだけ具体的に思い浮かんだ気がしませんか。
日本のような長い歴史を持つ土地が、今の状態になったのには理
由があります。
でも、それを考えるのは学校の勉強の領域です。
知識があると便利ですが、無いなら真似するのが良いでしょう。
なぜかは分からなくても、結果があります。
それを単純化して、俯瞰図に反映させる。
何も考えない、話の展開のためだけのような薄っぺらい世界より
も、ちょっとだけ好感の持てる、そんな世界になれると思います。
発想と連想を繰り返し、地図自体は簡単に。
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そんな感じで世界を作ってみましょう。
話を書く上で、すらすらと書ける要因になること間違いなしです。
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8 − 世界観を考える︵風景と地図︶︵後書き︶
あんまりたくさん作ると止まらなくなりますので、必要十分で⋮⋮。
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9 − 世界観を考える︵魔法などの技術︶
引き続いて世界観の話です。
大きな風景や地図といった視点が出来上がれば、次はマクロ、人
の生活に関係するところを考えます。
まず、暮らしとはなんでしょうか。
現代人は電気、ガス、そこから繋がる、蒸気機関、発電機、電子
機械、いろんな技術に囲まれて便利に暮らしています。
さて、異世界を考える上で、現代を比較しても分かるわけが無い、
と思うかもしれません。
しかし、そこは発想と連想で埋めていきます。
中世の暮らしをベースにいろいろ考えていきましょう。
無人島で暮らすとしたらどうなるんだろうか?
ここから始めます。
無人島に放り出されたとして、快適に暮らすには何が必要でしょ
うか。
水、食料、住居、安全、衣服、体温調節、仲間、明かり、暇つぶ
し、文化、娯楽。
求めればキリがないですよね。
でもどんな人でも求める物なんです。
たとえ、遅れた旧時代の人間であっても、です。
異世界の人間は考えなしではない、ということ。
これを前提にさっきの必要なものを、異世界らしい解決策で存在
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させましょう。
例えば、現代日本であれば、一番初めにあげたものや、工夫で解
決しています。
水は浄水施設があり、上下水道があります。
食料は畑と畜産が中心ですが、畑は工作機械で効率化し、畜産は
餌や管理体制を整えることで効率化していますね。
安全は危険な動物は周囲から絶滅させ、軍隊、警察を整備して、
機械で素早く動けるようにし、保っています。
住居は災害に強い素材を考え、快適な気温になるように機械や壁
を工夫しています。
衣服はデザイナーが考え、機械などで生産効率をあげて安価にし
ています。
体温調節は服の一貫ですが、マフラーなどのいろんな小道具を使
って安易に出来るようにしていますね。
仲間はいろんな人が近くに住む、電話などで交流が出来る、祭り
を開いて協力し、集まるようにするなどをしています。
明かりは電気で昼間より明るくしていますね。
暇つぶしはもう数えきれませんが、本、インターネット、ゲーム、
などなど。
娯楽もいっぱいあり、将棋などのボードゲーム、スポーツ、映画
などの劇場、などなど。
ざっとあげただけで、こんな感じです。
これを全部考えろなんて当然言いません。
ただ、異世界にもこんなものがあって当然なんですよね。
だって、誰でも思いついて欲しがる要素なんですから。
中世世界で考えると、現代技術がない分、暮らしはかなり不便で
苦しくなります。
30
それをシミュレートするのも凄く面白いです。
勉強にもなりますね。
しかし、それを説明するのは結構大変です。
主人公がその生活を続けるのはストレスだ、と感じないように、
慣れさせる必要が出てくるからです。
例えば、明かりが無かったとします。
部屋の中でたき火をするわけにもいきませんから、ロウソクで用
意する必要がありますね。
一度やってみるとわかると思いますが、非常に暗くて、長持ちし
ません。
また、ロウソクは高価です。
植物油を生成するのにも手間がかかり、ロウソクはその塊でした
からね。
獣脂油は臭くてキッツいです。
そんなストレスが発生します。
これを書いていくのも味があって、私もやってみたいのですが、
無理だと思ったら素直に魔法に頼りましょう。
明かり? 魔力をこめた石が光ればいいんじゃないですか。
水? 魔法で作ってしまえばいいんじゃないでしょうか。魔力が
無いなら川からもらって上水道に流せばいいのでは。
もちろん魔法で解決できないことは多々あるでしょうから、中世
のやり方に準じる必要が出てくると思います。
しかし、文化に魔法技術を入れ込むと、電気のように便利ですし、
小説家になろうでは、ちゃんと一定の考え方で説明すれば、その存
在を簡単に受け入れてくれます。
ラッキーですよね、先人の偉業に感謝したいところです。
31
問題の一定の考え方、です。
これは次で考えましょう。
32
10 − 世界観を考える︵魔法などの技術2︶
前回の一定の考え方についてです。
目的地は魔法技術の機械が、どの程度普及しているかです。
それには、そもそも魔法使いがどういう位置づけなのか、を考え
る必要があります。
魔法技術を構築するためには、魔法使いが研究しないといけませ
ん。
なんせ魔力を操れるのは彼らだけ。
それが一人しかいないようでは研究は遅々として進まず、普及も
しないでしょう。
仙人しか使えないようなら、厳しく長い修行が必要で、しかも最
高峰の才能がないとダメとなりますよね。
いわば超能力者です。
それだと一般人が全く使えず、知名度もゼロになってしまうので、
もうちょっと緩和していきましょう。
魔法使いがレア、という位置づけならどうでしょうか。
国に10人くらいしかいない感じです。
これもちょっと厳しいかもしれませんね。
超絶的な大天才という感じになりますから。
もっともっと緩和していきましょう。
10人に1人しかなれないような人、という位置づけならどうで
しょうか。
左利きみたいな感じですね。
33
これをベースにちょっと考えてみましょう。
左利きと同じくらいいるなら、魔法使いの学校があっても良いレ
ベルです。
師弟関係だけではとても需要に追いつきません。
才能があるのに、使いたくないと思う人がどれだけいるのでしょ
うか。
使えるだけで生活が便利になる。
飯の食う種になる。
身を守るすべになる。
国家事業として、魔法使いを増やす行動を起こしても、不思議で
はありません。
魔法使いを増やし、技術を発展させればそれが金になりますし、
兵力の増加にも繋がります。
なので、才能がある人は魔法使いの道を基本的に選ぶ、とした方
が良いです。
そのように、魔法使いの学校があれば、次は研究する機関が生ま
れます。
大学と同じように、研究者は教育者としても利用しやすいからで
す。
専門家の数とは限られているものですからね。
国は金や兵力のために研究させているのでしょうから、次は金銭
入手に入ります。
魔法を使った技術を普及させて、金に換えるのです。
この技術とはいろんな形が想定できるのですが、私の想像力だと
現代日本の機械の代わり、と思えば、いろいろ想像し易いと思えま
34
す。
まず、電気の代わりに魔力とします。
魔力を蓄積させるために、電池のような石を用意したら想像しや
すいでしょう。
実のところ、布だろうが、水だろうがなんでもいいんですけど、
扱いやすさという点で考えます。
なんでそうなるのか、なんて理論はファンタジーだから要りませ
ん。
魔力を石に集めて蓄積出来る、って理論があればいいのです。
SFなら別ですけどね。
次に魔力をこめた石、魔石をどうやって作るのかです。
自然入手、魔物から奪う、人間がこめる、が想定できます。
恐らく人間がこめる以外だと、価格はかなり高騰します。
安定供給が出来ないためです。
そうなると、魔法を使った機械は非常に高価、という位置づけに
なりますね。
結果、金持ちしか使えないっていうことになります。
これはこれでひとつの世界観になりましたね。
つまり、庶民は中世と同じような生活をしているわけです。
次に、人間がこめるだとどうなるのか。
魔石を作る仕事が魔法使いに発生します。
体ひとつで安定して金銭的価値のあるものを作れるのですから、
楽なものですね。
人間ガソリンスタンドみたいなものでしょうか。
結果的に安価になって、普及率はかなり上昇するでしょう。
35
庶民も魔法技術のある便利な生活になる、ということです。
どちらも採用したくない、というのはあると思います。
それでも全然構いません。
例えば、魔物から入手するが、補充は魔法使いが出来る。
魔石は安価だが、機械が超高い。
明かりを取る機械だけは凄く安い。
水の供給は国がやってくれるからタダ。
制限というのは、高いを一部だけ安くする。
安いを一部だけ高くする。
どっちでも出来ます。
これらを定めて、一定の考えを持つようにしましょう。
そうすれば人々の暮らしが見えてくるはずです。
36
10 − 世界観を考える︵魔法などの技術2︶︵後書き︶
あんまり細かいことを考えないっていう手もありますけど、日常描
写がかなり苦しくなります。
37
11 − 世界観を考える︵異種族︶
世界観の話が長いですね。
しかし、決めないと後が困りますし。
次は異種族についてです。
ファンタジーといえば、エルフ、ダークエルフ、ドワーフ、獣人、
魔族、いろいろ思いつきます。
うーん、これがいいなぁ、あれも好き、こっちも入れよう。
非常に楽しいですね。
しかし、種族を決める前にイメージを決めておきましょう。
種族が入り乱れる世界には、力関係のイメージが必要なのです。
なぜそんなのが必要なのか。
また現代世界でちょっと考えてみましょう。
例えば、一つの国があったとして、世界各国の人種が集められた
としましょう。
ロシア系、北ヨーロッパ系、西ヨーロッパ系、東ヨーロッパ系、
南ヨーロッパ系、北アフリカ系、南アフリカ系、東南アジア系、西
アジア系、中央アジア系、中国系、北アメリカ系、ネイティブアメ
リカ系、南アメリカ系、などなど。
文化も違えば、背格好も違い、言葉まで違います。
まぁここまで考えるのは厳しいので、黒色人、白色人、黄色人、
褐色人としましょうか。
さて、ひとつの国に集まったら、どの人種が一番力を持つと思い
ますか。
38
体力のある黒色人かな?
歴史から見て白色人でしょ。
黄色人舐めるなよ。
褐色人の戦闘技術の方が凄い。
いろいろ意見は出ると思います。
そして、全てがバランス良く拮抗しなかった、のではないでしょ
うか。
私の中では白色人が一大勢力になりました。
どんなイメージかと言えば、征服欲などの欲望に塗れた人種って
感じですかねぇ。
私は別に人種差別家というわけではないんですけど、そんなイメ
ージがあります。
そして勢力の弱い黒色人は差別されていく形。
世知辛いイメージです。
とまぁ、適当な論理を振りかざしましたが、各個人にはイメージ
があると思います。
これは当然異世界においても反映されていきます。
書いているうちに、人間が一大勢力のような形を無意識のうちに
取ってしまったりするんですね。
設定が平等だったとしてもです。
例えば、暮らしている街が妙に人間が多くて、ダークエルフが少
ない。
別に差別されているわけでもないのに、なぜか田舎に引っ込んで
いる。
よく見ませんか。
39
イメージが邪魔をしているためです。
先にイメージを固めておかないと、こういったことになってしま
うのです。
そして、なぜかが増えるごとに世界観が崩壊していくのです。
悲しいことですね。
さて、最初に多数の地方をあげて、そのあと減らしました。
いっぱい考えるのはしんどい、という理由です。
異種族を考えるときもそれは同じで、たくさん考えるのはしんど
いです。
頑張るのであれば応援します。
しかし、初心者の方は、いらない物は簡略化すべきでしょう。
大体5個以内が楽だと思われます。
簡略化した数の人種をひとつの国に入れてみたとき、勢力図はど
うなりましたか。
一大勢力に人間が立って、差別される人種が生まれてしまったで
しょうか。
それともバランスよく配合された勢力図になったでしょうか。
次はそれをもとに、人種を考えることにしましょう。
例えば、人間。
これを白色人に置き換えて、他の人種を制圧していき、下級市民
として差別していく形にしてみる、とか。
それだけだと微妙だから、制圧し切れず、敵対意識だけが残った、
とか。
逆に黄色人に攻め込まれて、青息吐息、なんとか追い出して一息、
とか。
40
褐色人と同盟を組んでみる、とか。
いろいろ考えられます。
その結果、イメージしたバランスになるようにしていけば、世界
観の中に歴史が誕生していくのです。
攻め込んだり、攻め込まれたり、一進一退なんて考える必要はあ
りません。
一回か二回で十分です。
勢力図を考えて、差別するかしないかを考えてみましょう。
奥の深い異種族が生まれますよ。
41
11 − 世界観を考える︵異種族︶︵後書き︶
考えるのは楽しい。
でも書いて披露するタイミングは少ない。
それが歴史。
1割も書けたら万々歳でしょう。
42
12 − メインヒロインを考える
やっと来ました、ヒロインの話。
なんでこんなに遅くなったかというと、ヒロインは異世界の中の
住人だからです。
ヒロインも現代日本から連れてくるのであれば、主人公と一緒に
決めても良かったんですが、多くはそうではないと思いますので。
ファンタジー以外でも似たような感じになると思います。
歴史小説は当然ですし、現代でも世界観を作らないとどうしよう
もないです。
さて、具体的にどうするのかに移りましょう。
私はメインヒロインのひとりは本筋から作ります。
その他のヒロインやキャラクターは、主人公、もしくはメインヒ
ロインと大きく違う人物にします。
対比関係にあるような人物だと好ましいですね。
それは後に回すとして、メインヒロインです。
主人公と同様に、本筋からメインヒロインに関係する要素を抜き
出し、そこから発想、連想を重ねていくことから始めます。
例えば、私の作った本筋からだとこんな感じです。
黒髪↓ダークエルフ
ダークエルフ↓差別されている
ダークエルフ↓髪が長い
ダークエルフ↓褐色肌
奴隷+差別↓生活が苦しく、友人少なめ
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生活が苦しい↓痩せている
痩せている↓小柄
奴隷↓けなげ、自己主張弱め
けなげ↓頑張り屋
自己主張弱め↓従順
頑張り屋+けなげ↓素直で良い子
友人少なめ↓交流は得意ではない、世渡り下手
とりあえず思いつくまま書いていきましょう。
なんだかキャラ像が見えてきたでしょうか。
ここに自分の好みを適当に入れてみます。
褐色肌↓白い肌
ダークエルフ+白い肌↓人間かエルフとの混血
要するに、黒い髪で白い肌ってことですね。
好みです。
紛う事なき、好み。
でも、これでまた要素がひとつ増えましたね。
人物像を作る上で、要素を積み上げるというのは非常に楽な方法
です。
これを本筋のときのような、点と点を繋げて、線を結び、図形を
作る。
図形をいきなり書いて、本筋に結びつけるよりも簡単な気がしま
せんか。
ではメインヒロインを作ってみましょう。
メインヒロインは奴隷階級である。種族はダークエルフと人間の
44
混血児。
髪は黒くて、肌は白い。
人間は髪が金髪、赤髪、茶髪で、黒髪は目立つ。
ダークエルフは人間と仲が悪い。
差別されている。
生まれたときから奴隷階級であり、人間に囲まれて生活してきた
彼女は、差別により食事もまともに食えず、小柄で痩せていた。
それを助ける周囲の人間も少ない。
巻き込まれたくないからだ。
そのため、成長するにつれ、軋轢を避けるように自己主張は少な
く、従順な性格になっていく。
そんな中でも頑張って生きてきた。
また、ひねくれもせず素直な良い気性にある。
いろいろ不自然な点はありますが、どうでしょう。
結構な不幸体質ですが、まぁまぁイケてそうではないですか。
ここで重要なのは、要素を組み合わせるときに、どこかで聞いた
ような話にする、ということです。
つまり、テンプレ。
本筋のときも書きましたが、オリジナルティなんて無理に出す必
要がないんです。
要素と要素を組み合わせていけば、それで十分。
図形を書いてみたら、なんか違うけど、よくあるヒロインに落ち
着いた。
これくらいがベストです。
45
12 − メインヒロインを考える︵後書き︶
連想に次ぐ連想で、好みから外れてきたらちょっとだけ修正。
大きく修正すると、図形を描くのが大変です。
46
13 − サブヒロインを考える
まだ主人公とメインヒロインしか出来ていません。
物語では、もう少し増やす必要が出てくるでしょう。
話を書いていて、どうしても突然新キャラが必要になった、とい
うのも出てきます。
簡単なのは、今いるキャラクターの反対側にいる人物を作ること
です。
例えば、頑固な人物がいるなら、軽薄な人物。
子供っぽい人物がいるなら、大人の人物。
すぐに思いつくと思います。
メイン以外のサブヒロインを作るときも、似たような工程で可能
です。
そんなに適当でいいのか、などと言われそうですが、この方が話
を作るのもかなり簡単です。
商業作品を見ていても多い現象だと思っています。
まずは容姿からいきます。
メインの髪が黒くて長いので、短めで茶色にします。
エルフはストレートのような気がするので、ウェーブにしましょ
うか。
痩せてて小柄なので、少し大きめに普通の体型で。
肌は、うーん。好みで白と白にします。
あっという間に出来ました。
次に性格などの要素。
47
子供っぽい印象がありますので、大人っぽい感じにしましょう。
従順なので、意見をバシバシ言う感じにしますか。
素直で良い子なので、悲観的でなかなか納得しない感じに。
世渡り下手なので、知人が多くて、社交上手にします。
差別されているので、人間でそういったことが無い人にします。
ちょっと苦しくなってきますね、
まとめるのが大変そう。
それなら無理に反対にしなくても良いのです。
一部だけでも全然大丈夫。
好みの部分は共通化してしまい、割り切れるところはさくっと反
対側へ。
それでも微妙ならマイルドにします。
大人っぽい感じで、意見はそこそこハッキリ言う、悲観的でよく
愚痴る、知人は多いが愛想笑いしてるだけ、人間で差別されていな
いが職業的な偏見はあり。
うーん、陰がありますね。
まぁ、おっとり美人だと思えば、いいんじゃないでしょうか。
ふとしたときに陰が見えるくらいで。
出来てきたら、今回はちょっと作り込みはやめておきましょう。
というのも、本筋に出てこないため、今考えるとストーリーに絡
めるのが難しくなるからです。
ストーリーを作る段階になってから、どういった役割で出すかを
決める。
そこから詳しく作り込みを始めて、要素を固める。
このやり方が話を作る上で、便利かつ楽です。
気を取り直して、もっと作ろう⋮⋮と言いたいところですが。
48
私は、ヒロインは多すぎると扱いが難しいと思っています。
なぜかというと、出番が減るからです。
大人しいヒロインに主人公が構い過ぎるようにして、自己主張の
強いヒロインはあっちから来るのを相手にするだけ。
これならいくつかパターンを組んで、出番が減らないように出来
ますが、ラブコメならともかく、ハーレム物でそれが出来るかは⋮
⋮。
まぁ頑張って下さい、としか言いようが無いんですけどね。
ハーレム物の難しさについては、またの機会にします。
49
13 − サブヒロインを考える︵後書き︶
私はいっぱい作りましたが、結局出たのは二人だけです。
50
14 − ストーリーを考える︵序盤 − 物語の導入を考察︶
ヒロイン以外の登場人物や、魔法、剣術、その他システム⋮⋮な
んて考えたいところですが、その前に序盤のストーリーを考えます。
なぜかといえば、それらは必要に応じて与えられるものであって、
ストーリーに影響するものではないからです。
彼にこれをさせたいからストーリーをねじ曲げる。
正直あまり良い手ではないように思えます。
さて、序盤です。
本筋を読み解いたときに、いろいろ必要なことがあったと思いま
す。
まずはそれを用意します。
私が書いたものだと、剣と魔法が支配する中世っぽい異世界に転
生して、一人暮らしの出来る自立した冒険者であることが必要です。
そして、大金を入手する必要もあり、かつ暇人。
結構ハードルが高いです。
ではまず、異世界にどうやっていくか、から決めましょう。
これは結末などにも使える重要なことです。
いろんな異世界のいき方が考案されてきましたが、基本的なこと
はひとつだけ。
日常の生活で、突然異世界に切り替わること。
これです。
例えば足下から突然召喚陣が現れて∼も、大体日常生活中に起こ
51
りますよね。
トラックに轢かれて∼も、そうです。
寝て起きたら∼も、あります。
自殺したら∼っていうのはあんまり見ないですけど。
とにかく日常生活の中で、です。
これは没入感を作るというのもありますが、平坦なテンポで50
0文字ほど読んでいたら、突然異世界行きで凄く慌てる。
この落差が欲しいからです。
そもそも、序盤である程度読んでもらうように掴むというのは、
大変なことです。
ミステリでは冒頭でいきなり死体を転がせ、と言います。
バトル物ではライバルと激しく戦え、と言います。
はたまた官能小説では理由はともかく絡み合え、と言います。
恋愛ではターゲットを描き出せ、かな?
とにかく、ファンタジーにおいては、平坦からの異世界へ、とい
うのが様式美なんです。
トリップ、転生ではない場合でも、何かしらの方法で平坦と突然
の慌てを用意します。
謎の神話を平坦として、いきなり異世界風景の説明と、主人公の
動転を書いて直後から事件へ。
謎の回想を平坦として∼というのもあります。
ハイファンタジーだと、日常から非日常へというのも多いですね。
ロードオブザリングの映画だと、ホビット村で平和に暮らしてい
たら∼という感じです。
RPGでも田舎での平和な生活から、旅立ち、都会を初めて見て
驚く、なんていうのもあります。
52
狭くて平穏な平坦さから、刺激に溢れた旅と、世界が拓ける都会
にいく。
さらに刺激を強くするのに、平穏をぶち壊して田舎が壊滅、なん
ていうのも使い古されていますね。
小説家になろうでは、それがたまたま現代日本での生活を平坦と
して、異世界に切り替わり慌てるのをテンプレとしているだけです。
これをすることで、もう少しだけ読んでもらえるようにしている
のです。
テンプレなんて嫌だ! という人であれば、何かしらの方法で平
坦と慌てを用意しないといけません。
特に平坦については、異世界の説明とかは入れてはダメです。
退屈なだけであって、平坦ではないからです。
主人公の何かしらの情報を得ることが出来る物、が好ましいです。
それを満たすものって大変だなぁと思います。
神様説明による異世界へ∼は、あまり感心しません。
というのも、慌てがすぐに消えてしまうからです。
せっかく落差を作ったのに、すぐにパラシュートが開いて落ち着
いてしまった。
これでは本末転倒です。
上手い小説だと、説明が始まっても動転は収まりません。
もしやるのであれば、研究が必要でしょう。
ヒキニートにおいては、まず、日常生活としてインターネット徘
徊を行わせています。
クリックしている間を利用し、主人公の情報をほんの少しだけ語
らせます。
そして、謎のネットゲームへの登録から、良い気分で就寝。
53
目が覚めたら臭い馬小屋の中という、最悪の目覚め。
そして外に出てみたところで、異世界を実感します。
状況を理解した後、何も生きていく糧がないことに気がつき、得
るために街へと飛び出していく、というのが導入でした。
日常生活のような平坦を用意して、異世界に視界を切り替える。
ここはアイデア一本勝負と言える重要なことなんです。
主人公の日常とは何か、そしてファンタジーに繋げる物は何が転
がっているのか。
この二つを用意することで、良い導入が出来ることでしょう。
54
14 − ストーリーを考える︵序盤 − 物語の導入を考察︶
︵後書き︶
例によって偉そうに書いてますが、私が出来ているかは⋮⋮。
55
15 − ストーリーを考える︵序盤 − 導入の次にするべき
こと︶
さて、導入が終われば、次に来るものは物語の始動です。
異世界転生ファンタジーを例に取ってみると、その手法は驚くほ
どに単純です。
まず、世界、周りの風景を事細かに描写し、ここが異世界である、
ということを読み手と主人公へ明確に示すのです。
この作業は必須条件と言っても良く、蔑ろにした有名作品という
ものを見たことがありません。
そもそもなぜ異世界ファンタジーを手に取ってくれたのか?
異世界を見るためです。
これは必ず、絶対に入れて下さい。
さらに利点があり、三人称では随時入れられますが一人称視点に
おいては、風景描写の出来るタイミングというのはもの凄く限られ
ています。
数少ないタイミングをきっちり掴み、詳細で素直な異世界を伝え
られることが利点です。
ファンタジーで一人称を勧めておいてそれか、と言われそうです
が、残念ながら事実です。
好きなときに好きなように入れてもいいじゃないか、と思って書
いていくと、違和感とともに読みにくさが出てきます。
主人公が興味津々落ち着きの無い人物ならまだいいのですが、普
通の人であれば見慣れたものを気にしません。
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それをキョロキョロと、常時視線を動かして風景を見ているわけ
ですから、違和感が募ります。
ついでに言えば、読み手も気にしません。
どうでもいい情報よりも、ストーリーの情報が欲しいためです。
そのせいで、いらない情報が開示されていると取られ、退屈さが
出てきて、読みにくいと感じてくるのです。
利点はこのくらいにして、見せる順番です。
これは場所にもよりますが、まず足下、真ん中、上、真ん中、左、
右といった順に見えるものを書いていきます。
世界観を考える、のときと同じです。
主人公の立つ場所を書き、ふと目に付いた視線の先、見上げたと
ころ、その周りを想像していきましょう。
もし、動くものがあるのであれば、それは真っ先に書いて下さい。
モンスターが居れば普通はそれに目を奪われます。
高い塔のような、ランドマークがあるならそれも。
また、人間が居れば、それ、動物が居れば、それです。
あなたの世界観を放心している主人公と読み手に、一気に伝えて
しまいましょう。
57
16 − ストーリーを考える︵序盤 − 異世界表現の条件︶
話を進めて、何を見せるのが良いのか? になります。
序盤は無駄に出来ません。
技術論が結構な幅を占めていて、大変だとは思いますが、頑張り
ましょう。
異世界を実感してもらうためには、一目で異世界だとわかるもの
を選ばないといけません。
日本の田舎と大差なければ、驚きはするでしょうけど、微妙です。
最初は誰かのイタズラだと勘違いしていて、調べるうちにおかし
い⋮⋮、と思っていくのもアリですけど、別にナレーターがいる三
人称向けかなと思います。
一目で異世界と言われても、というのは正しい悩みです。
では、異世界らしさとはなんでしょうか。
前話、導入時点の居場所で話はいろいろ変わってくるのですが、
概ね三通りが考えられます。
街中、大自然、その中間です。
街中はその名の通り、周りに人がいる状況で、城に召喚されたり、
神殿にいたり、路地裏にいたり、要塞の中にいたり、とにかく街の
中にいる状態です。
大自然もそのとおり、周りに人がいない状況で、森、平原、山、
砂漠、海、といったところです。
そして、その中間とは、大自然の中に設けられた人のいそうな場
所です。
森の中の街道だったり、平原に立つ物見櫓の上だったり、山にぽ
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つんとある山小屋の中だったり。
こういった場所にいた場合、それぞれで考えられるものは少し違
います。
まず共通してもっとも単純なのが、モンスターを見せることです。
獣人でも良いですが、コスプレと勘違いしないことが必要です。
見た目のインパクトが大きく、勘違いしようがない、大変便利な
ものです。
馬の代わりに、ダチョウみたいなトカゲが馬車を引いていたら仰
天しますし。
● 街中スタート
これは結構難しいところではあります。
とにかく現代日本で考えられない、ヨーロッパでも不可能なこと
を想定しないといけません。
まず第一に、道や建物、馬車、その他全ての雰囲気が時代錯誤で
あること。
第二に、武装や変な服装をしていること。
第三に、背格好や髪の色がおかしいこと。
このくらいは最低でも必要です。
目の前で、魔法でも使われたら最高に分かり易くて良いでしょう。
妙ちくりんな動物や、食べ物を出すのも良いですが、あとから設
定を煮詰めないと面倒な事になり得ます。
一番簡単なのは、ピンクとか青い髪がその辺にうろうろしている
ことですかね。
面倒な設定も一切合切いりませんし、現実的ではありませんから。
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もちろん、独自設定があるのなら、ここで見せて前置きにするの
が大切です。
大抵の独自設定がある小説は、ここで片鱗を見せるものですから
ね。
魔法に厳しい制約があるなら魔法を見せる、奇天烈な動物が主役
になるのならそれが歩いているところを見せる、冒険者が主役にな
るのならそれを見せる、商人が主役になるのなら商人を見せる。
少しだけでも良いので、見せて前置きとしましょう。
● 大自然スタート
大抵の自然では現代日本でも存在する、もしくは存在するだろう
と思ってしまうので、違う要素が必要です。
例えば、魔王の瘴気で禍々しい空気が遠くで渦巻いているとか、
岩や地面が空を飛んでいるとか、植物がその辺を歩いているとかで
すね。
とにかく現実感を無くして下さい。
それが設定上考えられないのであれば、遙か上空にドラゴンでも
飛ばしましょう。
モンスターを見せるということですね。
ストーリーに関係するようにするならば、モンスターに無力な主
人公を襲わせて、誰かに助けさせるというのもオススメです。
今後の展開が楽になりますし、刺激にもなります。
主人公が初めから強烈に強いのは、主人公の成長要素を消し飛ば
すので、止めた方が無難です。
目に見えない精神の成長だけでは、初心者にはかなり苦しいから
60
です。
大抵の作品では、その場合無力なヒロインが登場し、それを成長
させます。
主人公とともに成長させるのは簡単ですが、ヒロインだけを成長
させるのは技術が必要です。
● 街と自然の間におけるスタート
最後の中間です。
これはアイデア勝負となるのですが、定番と言われるものは、街
道でモンスターに襲われる人を助けることです。
この場合、敵対することが明確な相手なら何でも良いので、盗賊
でも大丈夫です。
とにかく誰かを助けて、接触します。
そして、異世界であることを実感してもらいます。
襲われている側が魔法とか使ってると便利かもしれません。
この場合、必然的に主人公はある程度戦えることになりますので、
理由付けにアイデア勝負となります。
さらに前述した欠点があるので、よく考えましょう。
しかし、刺激がある程度確定すること、今後の展開が楽になるこ
となど利点は多いです。
助けずに接触するのであれば、通りすがりの人に話しかける、後
を付けて道案内代わりにする、極端にいけば盗賊に捕まる、などが
考えられます。
この場合、どれを取っても異世界であることを認識させるのは難
しいので、苦難の道と言えるかもしれません。
ただ、展開は早く、スリリングになるので利点はあります。
61
大自然のときの考え方を混ぜるなりして、アイデアを考えてみま
しょう。
62
16 − ストーリーを考える︵序盤 − 異世界表現の条件︶
︵後書き︶
ファンタジーを基準にしていますが、その他でも応用の利く考え方
です。
63
17 − ストーリーを考える︵序盤 − 説明キャラ︶
異世界の表現が済めば、次は主人公を動かさないといけません。
その場で足踏みしていてはカメラが動きませんので、いつまでた
ってもスタート地点。
神殿の中だろうと、大自然だろうと、とにかく歩かせます。
そして、現地の世界について、知識のある人物を説明キャラにし
て、主人公と出会わせましょう。
知識の多寡はなんでもいいですが、ついでに衣食住も提供してく
れると便利です。
主人公ひとりで衣食住を用意するのは結構大変ですから。
無人島を思い出して下さい。
川を探して、木の実を探して、暖の取れるところを探して、ライ
ターなしに火を起こして。
設定を考えるだけで大変です。
さて、この人物。
一体どんな人がいいのでしょうか。
物語のキーマンになるか、どうでもいい人物になるかはわかりま
せん。
ただ、ファーストコンタクトになるので、出来れば中盤まで引っ
張れる人物だと良いでしょう。
物語の基本としては、序盤は結末に繋がる、というのが定番です。
異世界に落ちたら、同じ方法で元の世界に戻る。
序盤でヒロインに出会ったら、結末もヒロインと迎える。
そういったわけで、出来れば重要人物を配したいところですが、
64
出来なければ中盤まででも大丈夫です。
捨てキャラは正直オススメしませんが、少しあとで重要人物が登
場するならオッケーです。
次に説明キャラに、異世界について教えてもらわないといけませ
んが、注意点があります。
まず、序盤で詳細な説明は絶対にしてはいけない、ということ。
退屈であるというのもあるんですが、それよりも後々作者が困る
からです。
例えば、世界のついての説明をダラダラと垂れ流し、10話後に、
その説明した内容を使うときがきたとしましょう。
そのときまでに思いつきで設定を追加してしまい、矛盾が発生し
てしまったら。
矛盾とまではいかなくても、思いつきが追加できなくなったら。
難しそうだと思って、キャラを削除した結果、使いようが無くな
ってしまったら。
とにかく可能性が減ります。
プロのような、先を完全に見通せる人であればいいんですが、十
中八九そうはなりませんので、可能性は確保しておく必要がありま
す。
詳細に説明する必要が出てきてから初めてすれば良いのであって、
序盤は恐らくこうだろうとか、都会の方では知らないが、ここでは
こう、くらいにしておきましょう。
情報を制限し、扱いやすくしておく。
これが大事です。
恐らく序盤のうちに、魔法や技の説明をしたいとは思うんですが、
片鱗だけにしておきましょう。
65
全てを見せる必要なんてありません。
あとから実は∼とか、アレ?そうだったんですか?とか、別の説
明キャラに言わせれば十分です。
地図も要りません。
次に行く場所さえわかればそれで十分。
間違っても大陸全土のマップなんて文中に書かないで下さい。
後付けと言われようがなんだろうが、可能性は大きく取るのです。
もし、感想の返信等で書いてしまったとしても、作品に書いてな
ければ万事オッケーです。
そしらぬフリをして、書いてしまった返信は無視して下さい。
説明キャラには今必要な情報と、後は大ざっぱな説明だけをさせ
るのがオススメです。
66
17 − ストーリーを考える︵序盤 − 説明キャラ︶︵後書
き︶
ストーリー説明がやったら長いのは序盤だけです、はい。
67
18 − ストーリーを考える︵序盤 − 長期中期短期の目標
を立てる︶
物語において、闇雲に話を進めるというのはオススメできません。
凄く楽しい作業なのは確かですが、どこにいけばいいのか分から
なくなるからです。
その迷いは読み手にも伝わり、この作者は期待できない⋮⋮とな
っていきます。
最低限、目標は見定める。
大事なことですね。
では、序盤においてはどうするのか?
まずは長期目標を立てましょう。
私が作った粗筋では、起承転結の起、冒険者として自立し、ひと
り暮らしをすることです。
これに現在位置を組み合わせてみましょう。
ヒキニートにおいては、馬小屋から行動を始めます。
技能は現時点でゼロ。
装備も持ち物も無く、裸足です。
幸い言葉は意思疎通できるレベルで、歩いていて怪しまれること
はあっても捕まることない状態。
説明キャラはまだいません。
この状態から冒険者として自立し∼に持って行くのはどうしたら
良いのか?
正直わからないですよね。
いきなり冒険者だと宣言して、外に飛び出すのでしょうか。
そんなわけはありません。
68
技を覚え、装備を調え、外の情報を集めて、大丈夫だと判断した
ら行くはずです。
自立するにはどうしたら良いのか。
とにかく稼ぐことですよね。
日々に追われるようなら自立しているなんて言えません。
相当な余裕があるはずです。
ですが、冒険者がそこまで稼げる職業なのか?
学のいらない日雇い労働者です。
普通は一日分の稼ぎを得るにも、そこそこの運と実力が必要なは
ず。
つまり、冒険者としてかなりの成功を収めている必要があります。
こうして分解していくと、すべきことというのが見えてくると思
います。
まずは技を覚えることから。
それを短期目標とします。
技を覚えるには、普通は誰かに師事します。
これが数日以上にわたる場合は、その間の衣食住をどうにかしな
いといけません。
師匠のところで食わせてもらうのが一番楽です。
多くの作品では、説明キャラと師匠と衣食住の提供者は同じにし
ます。
一番都合が良くて、やりやすいからです。
しかし、そうではない作品もたくさんあります。
さて、この衣食住の提供者は、なぜ主人公の世話を見ようと思っ
たのでしょうか。
ご都合主義だから。
69
悪くはありませんが、弱いですね。
ご都合主義でもご都合主義なりの意地があります。
荒唐無稽でも、こじつけでもなんでも、理由を用意してぶつける。
これがご都合主義流です。
私が思い浮かぶ限りでは、テンプレは大体三つに分けられます。
将来の返礼に期待して。
慈愛の精神を発揮して。
可哀想になって。
返礼であれば、自らの将来性を相手に聞かせないといけません。
こういった技能があるから間違いなく返せる、といったことです。
スキルであったり、学であったり、体力であったり、特別に得た
資金であったり。
勇者などで才能がある、と証明できれば良いです。
弱いですが、体格が良いからというのもアリかもしれません。
魔法使いの才能とかでも大丈夫そうです。
とにかく将来性が必要です。
慈愛の精神であれば、相手は何者かをよく考えなければなりませ
ん。
慈善事業などという言葉がありますが、私たちが見知らぬ他人を
一日ならともかく、数日、長ければ月単位で面倒を見る理由とはな
んでしょうか。
仕事の業務内容であったり、上司の意向、相手の容姿が気に入っ
たからだったり、性格面でほだされたからだったり。
業務内容とは慈善事業を生業とする人たち、宗教団体とかNPO
とかですかね。
70
最後の可哀想になって泊めてやるというのは、前述の二つと合わ
さることが多いです。
行き倒れを発見して、可哀想なので一日泊めてやったが、穀潰し
を泊め続けるのも嫌なので、働いて礼を返してもらう。
泊めたきっかけで、仲良くなり、友人として扱うようになった。
いろいろありますね。
ただ、友人を泊め続けるのも変な話ですから、知人へ紹介して労
働してもらうというのが一般的です。
孤児院に連れて行くとかもありますけど、世知辛いですね。
衣食住を確保したなら、あとは師事する相手を探すだけ。
上記のことは衣食住の提供者であれば、どの役割と重なっていて
も必要なことなので、考えて下さい。
次です。
技を得たなら、装備を調える必要があります。
多くは、この装備は人から借りる、もしくは譲ってもらいます。
師匠からだったり、冒険者ギルドからだったり。
自分で稼いでから買うというのはあんまり見ないですね。
とにかく展開が遅くなるから、というのがあげられます。
普通、武器や防具というのはかなり高価に設定されますから。
装備を調えたら、次は外の情報を集めましょう。
師匠からだったり、説明キャラからだったり、街の人からだった
り。
とにかく人と話して情報を集める。
RPGの基本ですし、インターネットのない世界の基本です。
大丈夫だと判断するには、文献ではわからない生きた情報が必要
なのです。
71
最後に、外に出て何をすれば金銭が得られるのか、を用意します。
基本はモンスターを倒せば手に入るものが好ましいです。
次点で、外にあるものを回収してくること。
なぜモンスターかと言うと、戦闘シーンを用意しなければならな
いからです。
これまでの流れで、相当動きの少ない話になってしまったのでは
ないでしょうか。
冒険譚ではとにかく早く戦え、というのがあります。
師事先で戦っていたとしても基本は訓練。
緊張感がないので、実戦をする必要があるのです。
さて、モンスターと戦って、勝利したとして、ここからが重要な
設定を考えるところです。
死体はどうすれば金銭になるのか。
今後ずっと付きまとうことになる事項です。
これは次で紹介してみます。
とにかく、長期目標を見据えて、そこまで道のりをひたすら分解
していく。
これを繰り返すことがストーリーの構築に繋がります。
いきなり千里を跨ぐことはできません。
一歩ずつ確かめて進めましょう。
72
18 − ストーリーを考える︵序盤 − 長期中期短期の目標
を立てる︶︵後書き︶
まぁ書いてみたら、分解したとおりに動かなかったっていうのも、
よくあることなんですけどね。
目標地点に辿り着けばそれでいいので。
73
19 − 金銭入手の方法を考える︵はじめに︶
モンスターに勝利した後のことです。
戦闘シーンを作ることの大事さはさておきまして、出来ればその
行為にメリットを配置したいところですね。
なぜかといえば、メリットがなければ戦闘シーンを配置しにくく
なるからです。
RPGにおいて、戦闘行為のあとは経験値や通貨、ドロップ品な
どが手に入ります。
お金なんて王様からもらえばいい、宝箱から入手すればいい。
そんな理由をはね除けて手に入ってしまう理由は、戦闘をしても
らうためです。
モンスターから全て逃げるを選択されては難易度調整も何もあっ
たものではありませんし、ゲームの尺も問題になります。
RPGゲームの戦闘とは大体プレイ時間の半分を占めますので、
無くなれば大変です。
それに、逃げに逃げてボスで詰まってクレームも避けたい。
ユーザーフレンドリーを体現するのが王道的RPGですから、順
当に進めたらイベントもきっちり進行するのが好まれるわけです。
まぁ数字が徐々に増えるのが好きな国民性というのもあるかもし
れませんが⋮⋮。
RPGではそうやって戦闘シーンをたくさん作るわけですが、こ
れは冒険モノ小説にも当てはめられます。
戦闘シーンが不要ならそれ以外の手を打てばいいだけですが、そ
74
れをしない。
王様からもらうのは嫌、その辺にある宝箱から手に入る状況を作
るのは違和感しか出ない。
そんな感じです。
戦闘シーンを作ることは難しいですが、話の展開としては非常に
扱いやすいシーンです。
これによっていろいろ進展が出来ますし、起伏もある程度作れて、
ストーリーの息抜きとしても利用できます。
登場人物の成長も形で見ることが出来て良いことでしょう。
そのためたくさん入れて、話のバランス取りに利用したいのは当
たり前の帰結のような気がします。
話にいれるには、登場人物が進んでモンスター狩りに出てくれる
と楽です。
通常の神経であれば、危険にあえて首を突っ込むことはしません。
突っ込ませる理由を何回も考えるのは結構辛いことです。
特に利害関係の薄い庶民で行うのはかなり苦しいので、メリット
を作ります。
狩れば生活資金が手に入る。
頑張れば大金。
動く理由としてはかなりまともです。
話を最初に戻しますが、モンスターを狩ることで金銭を得るのに
は、いくつかテンプレがあります。
指名手配の賞金首という形で、冒険者ギルドや貴族等にクエスト
として依頼される。
モンスターの死体から皮や肉、魔石などを剥いで、街で売る。
行商人を護衛する最中に返り討ちにすることで、成功報酬として
もらう。
75
薬草などを摘むことでもらうが、道中で仕方なしに戦う。
よくわからない理論で、モンスターを倒すとお金が残る。
小説家になろうで一般的なのは、賞金首と死体から剥ぐ形ですね。
これらはそれぞれ選択することで独自の設定が必要になります。
そのため、話をある程度考えてから選ぶことを推奨します。
76
19 − 金銭入手の方法を考える︵はじめに︶︵後書き︶
次からそれぞれの形を紹介していきますが、長くなったので分割し
ます。
77
20 − 金銭入手の方法を考える︵討伐クエスト︶
まず、賞金首。
ゴブリンを倒して耳を奪う、システム的なもので勝手に記録され
る、横で第三者がカウントしているなどで、討伐したことを証明し、
その分のお金をもらうことです。
これはインベントリというゲーム的な四次元ポケットが無い場合
に便利な設定で、手荷物が増えません。
討伐証明は邪魔にならない物を選べばどうとでもなりますし、剥
ぐ技術も時間も不要です。
ある意味現実的に稼ぐ方法のひとつで、文章表現も簡易に済むの
で、書く上では楽でしょう。
しかし、設定を考えるのが少々厄介なものでもあります。
なぜ賞金首にされているのかをよく考えないといけないからです。
日本では山奥のスズメバチや熊は身近な脅威ですが、殺してもお
金は普通手に入りません。
入り込まなければ被害は無く、殺したことでメリットを受ける人
物がいない。
そんな趣味のような行動に、生活資金になるようなお金を渡す人
はそういませんよね。
つまり、倒したことで依頼主がメリットを受ける設定を考えない
といけないのです。
異世界人は馬鹿な野蛮人ではありませんから、長年モンスターの
いる環境に居たならばそれなりに対応策を講じます。
街は見晴らしのよいところ、脅威度の薄いモンスターの弱いとこ
ろ、街を囲む高い壁を置いて見張りを楽に守りやすく、対処する専
78
用の人間を雇用し配置して、街道は安全に。
要するに、普通に生活する分には脅威がないように努力します。
お金が無くて壁を作れなかったり、雇用できないようなら主人公
に渡すお金も無いですから、考えにくい。
森から一切合切出てこないのなら、脅威が無いので考えにくい。
といった感じで、とにかくメリットを見いださないといけません。
これが結構面倒くさいんですよね。
一番手軽なのは、条件を少し崩してやることです。
一部は見晴らしが良いが、一部はそうではないため、そこに用事
がある人がたびたび襲われる。
主要な街は高い壁があるが、農村はそうではなく、人を派遣させ
てモンスターの間引きを行い、脅威度を下げる。
同じく農村に対処要員として派遣し、人手不足に悩む軍隊ととも
に一定期間守らせる。
街道は軍隊が見回りと間引きをしているが、完璧ではないのでそ
れを手伝わせる。
大体の条件でメリットを見いだすのは、支配者階級と軍隊です。
扱い的には派遣社員みたいなものですね。
有能なら派遣先の軍隊や農村で取り立ててくれるかもしれません。
それはともかく、お金を渡す相手がメリットを見いだすように、
設定を考えられれば非常に楽な金銭の入手方法です。
一般的な冒険者の月の収入が、庶民の少し上を行くような金額に
しておけば完璧です。
個人的にはオススメです。
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20 − 金銭入手の方法を考える︵討伐クエスト︶︵後書き︶
指名手配されないモンスターも発生しますが、その場合は倒しても
収入は得られない残念モンスターに。
80
21 − 金銭入手の方法を考える︵モンスタードロップと運搬
方法︶
次に、死体から剥ぐ形。
これはモンスターを動物の一種として扱うことで、殺す理由を作
るというものです。
普通、動物というのは犬も歩けば棒に当たるみたいに、そこら中
にいるものではないため、ある程度の希少価値が出ます。
見つけて殺すのが大変だから、ということです。
逆にモンスターはあちらから襲いかかってくる上に、見つけるの
も容易で繁殖力旺盛なことが多いので、なんとも言い難い感じです
ね。
ある意味鉱山みたいなもので、一種の資源です。
狩るのが簡単なら、それはもう乱獲されるでしょうが、それをさ
せないために強くする必要があります。
目標としては、素人では絶対に倒せない、数年みっちり訓練して
なんとか倒せるレベルのモンスターで、月の収入が庶民程度、くら
いです。
都会のカラスみたいにそこら中にいるモンスターを、武器規制の
ない簡単に手に入る拳銃で、狙いを定められる訓練をしたら簡単に
殺せて、そのカラスの死体が一匹ウン万円になったらびっくりする
でしょう。
それと似たような感じです。
ちなみにカラスは怒らせると身の危険を感じます。
それはともかく、程度の調整とともに、死体の運搬方法や剥ぐ技
術の習得も考えないといけません。
昔の人でも皮を剥ぐのは立派な技術で、ハンターや遊牧民はとも
81
かく、農村の普通の人は出来ないことでした。
動物のような柔らかい皮でさえ時間が掛かるのと同時に肉体的に
も大変ですから、丈夫なモンスターの皮はもっと大変でしょう。
また、かなり見た目がアレですし、相当汚れます。
ついでに皮も肉も腐ります。
皮はなめすと革になりますが、薬液と技術が必要です。
原始人は唾液でなめしてたそうです。
そして、肉や皮というのはかなり重たいです。
家猫でさえ五キロくらいありますから、熊サイズになるととんで
もないです。
ウサギでも何匹かになるとかなり邪魔で重たいです。
一匹仕留めたら1時間は最低でも動けずに、剥ぐ作業に没頭する
と考えて良いでしょう。
放置したら別の動物に食われる可能性が非常に高いですから、そ
の辺にまとめておいて∼も無理だと思われます。
つまり人力運搬は難しいので、馬車か四次元ポケットが必要とい
うことです。
さて、ここでもまた設定を考える必要が出てきます。
まず馬車。
馬というのは実のところかなり手間のかかる家畜で、あの巨体か
ら食べる飼料や水も相当な量です。
汗を放置すれば体調を崩し、走らせ続ければ簡単に潰れ、意外と
物を運べません。
そして、かなり臆病で、危険な匂いがしたら暴れて逃げます。
人間が後ろに立っただけで興奮するくらいですから。
さらに、直接乗らないにしても、操るにはある程度技術が必要で
す。
82
まずは、これらを解決する必要があります。
食べ物と水は馬車に積み込むのと、野外からの入手を併用すると
します。
食べ物は一日15キロ、水は30リットルほど必要ですから、そ
れらがない地形で運用するのは考えられません。
走らせたら汗を拭くために、一日3時間は世話をする時間を取り
ますし、ブラシなどの道具も必要です。
石畳を走る場合は蹄の保護を考えないといけませんし、馬具の用
意も必要ですから、定期的に専門の職人の世話になる必要がありま
す。
訓練された馬を作るには、かなりの労力と高い技術、組織力、資
金が必要なので、非常に高価になります。
安くても庶民年収で5年分くらいは見た方が良いでしょう。
残念ながら馬車の動かし方の習得に、どれくらい時間が掛かるの
かはわかりませんでしたが、いきなり操作できるとは思えないので、
習う必要があります。
これらを一気に解決しつつ物語に入れ込むのは大変で、突っ込み
を大量に受ける可能性が高いので、小説家になろうではチョコボな
どの独自生物に引かせることが多いです。
そういう生き物だ、としておけば楽ですので。
私もこれがオススメです。
馬は安易に出すと大変ですので、止めた方が無難です。
グインサーガでさえ、ウマという馬ではない生物にしていますし。
四次元ポケットの方ですが、これはちょっと考え方を変える必要
があります。
それはどの程度の人物が扱えるシロモノなのか、という点です。
はっきり言ってしまえば、どんなに高価でも存在するだけで物流
83
革命が起きますから、予見出来ない文化的な影響を最低限にするた
めにも、主人公だけが使えるくらいにしておきたいところです。
しかし、使っているところを見られて怪しまれるのが嫌であれば、
超絶限定的な使用しかできない劣化品を一般人が使えるようにする、
とかがよく使われる手です。
そんな扱いにくいのよく使うね、くらいが良いでしょう。
維持費に非常にお金が掛かるわりに、3個くらいしか運べないと
か、習得に年単位で時間が掛かるのに使い勝手が悪すぎるとか。
四次元ポケットは魔法でもインベントリでもなんでもいいんです
が、前述の通り一般的ではないようにする必要があるので、設定を
練る必要があります。
副次的な効果として、ゲーム的な世界になってしまうので、それ
が嫌な人は選択するのは止めた方が良いです。
現実味が薄れて、なんでもアリなゲームな感じが出てしまうとい
う理由で。
誤解されがちですが、VRMMOとファンタジーは違いますから。
また、何でも入れられて容量無限になると、ドラゴンボールのよ
うなインフレ世界に突入する可能性がかなり高くなるので、これも
注意が必要です。
中盤まではいいんですが、終盤に近くなると一種の異世界状態に
なり、かなり混沌としますし、無制限の絶対的な力というのは結構
扱いを間違えるとダレる要因になりますので、制限を設けた方が話
を考えるのが面白くなります。
なんでもファイアーボール一発で倒せるより、工夫して倒した方
が面白いのと同じです。
一回の冒険ごとに中身をリセットする必要がある、くらいにして
おくのがオススメです。
一定時間で魔力切れで中身が飛び出してしまうだとか、容量が六
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畳一間くらいしかないだとか。
こうすると、荷物を預けるだとか、売り払う必要が出てきて話の
展開のネタにもなりますし、入れたは良いものの全くの無駄という
のも減ります。
とりあえず無限は止めた方が無難でしょう。
85
22 − 金銭入手の方法を考える︵護衛クエスト︶
三つ目の護衛。
これは兼ねて行われることも多いですが、単独でも立派な稼ぎに
なります。
元来旅というのは危険を伴うもので、道中の案内人を兼ねた護衛
というのはどこでもいました。
行商人のようなカモがネギを持って歩いているような人は特に狙
われますし、ファンタジー世界ではモンスターの脅威も追加されま
す。
そのため多くはキャラバンを組み、護衛を雇いますし、キャラバ
ンを組めないような辺境でも護衛は用意します。
護衛費と旅の経費を上乗せしていくことで、遠くの特産品は交易
としてかなりの差額が収入として手に入るのです。
儲からなければ誰もこんな危険で面倒なことはしませんからね。
さて、設定はごく単純で、護衛を任せられるほどの信用を得るに
はどうしたら良いか、です。
護衛が盗賊と手を組んで襲うという小説は古今東西どこにでもあ
りますし、現実にもあります。
海外のタクシーが誘拐するのもよく聞く話です。
普通に考えれば、信用できる組織から人間を派遣してもらうか、
血縁者を使う、長年の付き合いがある人物の紹介を使うといったと
ころです。
冒険者だからクエストでオッケーだと、冒険者ギルドという組織
がいかに信用出来るかを説明しないといけないので、所属している
だけなのはちょっと弱い。
86
実績を延々と積み上げていて、これを崩すと凄い損失があるだと
か、身内や財産をギルドに取られている状態などが必要でしょう。
血縁者は文字通り縁故採用しか出来ないので、専用となる可能性
が高く、冒険モノというより行商モノになりそうです。
長年の付き合いなどは、師匠がこれにあたるとすれば分かり易い
かもしれません。
そういった形で、信用できる人物だとアピールしましょう。
さらに実力を示せれば完璧です。
相応の金額が手に入るはずです。
冒険者ギルドを使うなら実績がギルド側で管理されていると分か
り易く、ランク制度なんていうのを取る理由もここにあります。
実際のところ、○○を単独で倒せる人っていうだけで十分なんで
すが、なんとなく強そうですからね。
その他は信用出来る人物だと、信用出来る人物から紹介されれば
十分です。
縁故とはそういうものですから。
87
23 − 金銭入手の方法を考える︵トレジャーハント、その他
︶
四つ目の薬草摘み。
要するにトレジャーハントです。
危険な地帯に足を踏み入れ、価値あるものを探す。
身を守るために武装して、必要があれば戦う。
モンスター自体に価値を見いださずに、薬草、宝などで収入を得
る感じですね。
まさに冒険モノです。
これの難しいところは、一回の成功でどの程度収入を得るかとい
うことと、同業者がどの程度いるのかです。
年収単位で得ると、次に冒険に出るのはいつになるのかわかりま
せんし、同業者が多いと探す場所の設定や、奪い合いが厳しくなり
ます。
モンスター相手より、人間相手の謀略モノの方が書くにあたり難
易度が高くなりますので、厳しいということです。
インディージョーンズを見ていると分かると思いますが、凄い宝
には同業者がいっぱい来て、大変なことになりますし。
他の要素と絡めて、サブ的な扱いに落とすというのが一般的です
が、あえてメインに据えるなら、これだけでストーリーを構成した
方が楽です。
一章まるまるひとつのトレジャーハント物語で、ドラゴンの巣編、
地下迷宮編、神の山編、死の森編といった感じです。
一回で年収単位の収入があれば、その間に修行するなり、生活面
を書くなりして切り分けることができ、起承転結も短く済みますし、
次に行くところがいかに危険なところか、延々と書くのもいいでし
88
ょう。
そして、大金を得て、名声を高めるなりなんなりで、話の展開も
いろいろ考えられます。
冒険活劇としては、かなり扱いやすい題材であることは間違いあ
りません。
大事なのは、大金を得るところならば相応に危険なところである、
と読み手に認識させることです。
これが不足すれば、ただのご都合主義に陥りやすく、冒険がメイ
ンとは言えなくなります。
他の有名な同業者が何組も帰ってこず、命からがら帰ってきた人
がどんなところだったか、狂いそうな感じで訴えるだとか、噂され
るだとか。
簡単に攻略できるなら、有力な人物がさくっと攻略して小遣い稼
ぎにしてしまう可能性が高く、考えにくいですし。
苦労の甲斐あって、大金を得たとかなら面白くなりやすいです。
読み手に伝わらないと意味がないので、わかるようにストーリー
展開させる必要があります。
最後になぜか手に入るというもの。
要するにゲーム。
モンスターが通貨を持つ理由は全くもって理解不能ですが、ゲー
ムの世界なら仕方ありません。
逆に言えば、よほどの理由が無い限り、ファンタジー小説では採
用されることはありません。
リアル感を著しく減らすばかりか、ギャグっぽくなってしまうか
らです。
デモンズソウルというゲームはその辺を上手く調理していて、敵
を倒すとソウルという自己の存在に必要なものが手に入ります。
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これを溜めて消費すると、強くなったりいろいろ使い道がありま
す。
主人公以外の人物は商品と引き替えにすることで、自己の存在を
維持します。
つまり、命の源、食料であり、水です。
通貨の代わりとして有用なのは間違いありませんし、魔力という
自然発生しそうなものではない魂のようなものであり、有限で、価
値が発生します。
無くなってしまうと存在が消えてしまうので、戦えない人物は集
めるのに必死です。
アクションゲームなので、お金を拾うという動作を消しつつ、勝
手に手に入ってもリアルさが減らない凄い設定だと思います。
とりあえず、理由もなくこれを採用するのは止めた方が無難です。
モンスターがなぜかお金を持っているのも同様です。
日本では、アフリカの通貨が普通は使えない理由と同じです。
長くなりましたが、お金を稼ぐ方法ひとつでストーリーが大分変
わってしまうので、全体を見て選ぶことが大事です。
まったく先が見えないようなら、とりあえず常識知らずの無知で
あると設定づけておいて、別の方法で生活資金を稼いでおくのが良
いかもしれません。
90
24 − 結末を考える
序盤の流れを堅っ苦しくやっておいて、いきなり結末かと言われ
そう。
正味なところ、序盤をあれだけねちっこくやれば、あとに困るこ
とはまずないです。
起承転結の起と承は、もういくらでも考えられるはず。
問題なのは転結です。
結末の仕方というのは、いくつかお約束ごとというのが存在しま
す。
恋愛物であれば、相手と形としてはっきりと分かる結ばれ方をす
ること。
なかなかくっつかない相手ならキスやら結婚式やらで結末を迎え、
エピローグに持って行く。
すぐにくっついたなら、両親に挨拶に行くなど。
推理ものなら、犯人が観念して捕まるのを結末とし、その後をエ
ピローグにします。
異世界トリップなら、主人公が元の世界に帰るか、残る決断をす
ることです。
こういったお約束に共通するのは、序盤の伏線を回収しつつ、読
了感を与えることです。
普通に考えると難しい問題ですが、お約束とされるだけあってや
りやすいのでオススメです。
目的が伏線の回収であるため、最初に結末を考えておくと、途中
91
で伏線をどう弄るかを考えることが出来るため、物語の起伏をつけ
やすく、目標地点に目印をばらまきながら拾い上げる工程が楽に出
来ます。
例に挙げたもののどれでもそうですが、序盤の伏線を起承転結そ
れぞれでメインに据えて行動しているのがわかると思います。
例えば、結末を結婚式とするならば、出会いから、つかず離れず
の距離感を維持しつつ、日常描写を重ねて距離感を狭め、事件を起
こして最後にはゼロにして、結末を迎える。
すぐにくっつくなら、くっついたあと、日常描写でくっつき具合
で甘々にしてこういう関係だと重ねて説明し、事件を起こして離れ
そうになったところを誤解解消でさらに発展させ、結末を迎える。
推理ものなら、事件の舞台の説明のあと、殺人事件を発生させて、
わかるわからないを繰り返し、気づきを通して事件を解決、結末を
迎える。
異世界トリップなら、何かしらの要因で異世界に侵入し、元の世
界と異世界の違いに悶々としつつ、異世界を練り歩き独自の生活を
手に入れ、事件を起こして元の世界に戻る方法を知り、結末を迎え
る。
大体こんな感じになります。
結末が見えているからこそ転を起こしやすい。
転を迎えるための下準備に起承を使う、といったことが見えてく
ると思います。
連載中小説の中で、これは一体どうやって結末を迎えるつもりな
のか、まったく見えない物があると思います。
多くはこういった結末がないため、転になかなか入らないのが原
因だと思われます。
推理物でいう、気づきがやってこない状態とでもいいましょうか。
92
探偵がおそらくこうだ⋮⋮、いや違うんじゃないか、わからん、
わからんぞ⋮⋮と最後まで言ってる、みたいな。
犯人役が決まってなければ、トリックも考えようが無いので当た
り前ですね。
では、具体的に結末の方法を考えるにはどうしたら良いのか。
物語の長短、壮大かそうではないかにもよりますが、大事なこと
がひとつだけ。
連載中の人気小説はあてにできない。
これがあります。
考えてみれば当たり前ですが、今までテンプレテンプレと言って
きた中で、もしこれを参考にしていたならば、残念ですが、不可能
です。
もしかしたら転まで辿り着いてない可能性もありますしね。
参考となるのは昔の漫画、恋愛物なら少女漫画、異世界トリップ
なら寓話が良いでしょう。
推理物は大抵完結してると思うのでなんでもどうぞ。
個人的には金田一少年の事件簿が分かり易くて良いです。
とりあえず、短くて分かり易いものを選択するのがベターです。
壮大ではない物語なら、ハリウッド映画を参考にするのも良いか
もしれませんが、こちらは打ち切りエンドと誤解され易いので扱い
は慎重に︵個人的経験による︶
大長編の完結の仕方というのは結構マチマチで、なんとも言い難
いんですが、大体は先ほどのお約束に則り完結を迎え、さらにエピ
ローグを大切にします。
エピローグへ至るまでに最後の事件終了までに、主要な登場人物
の今後の生活を想像させるに値する描写を入れます。
93
例えば、デルフィニア戦記だと主要な登場人物の大体は誰かと結
ばれますし、仕える人物というのを見出し、国家は今後の方針とい
うものを決めます。
国を描く関係上、子孫や後継者の描写もほんのり入れていました。
エピローグにおいては、おとぎ話的な表現でしたが、かの国は幸
せに暮らしましたとさ、といった具合です。
ここら辺のさじ加減が絶妙で凄い構成だと思う小説なんですが、
大長編ではこういったことが求められます。
難しいと思ったでしょうか。
私もそう思います。
必要なことを箇条書きしてみましょう。
・結末を見据える
・結末のための序盤を用意する
・結末に至るまでの材料を考える
・材料を配置して、そこを目印に起承転結を通らせる
簡単ですが、こうです。
94
25 − ﹃転﹄に関わる最後の事件
前回、事件事件と書きましたが、これが難関でしょう。
個人的感想を言うのであれば、起承までは簡単に書くことができ
楽しいです。
転から異常に難しくなり、投げやすいです。
更新しなくなった小説も、ここにたどり着けなかったのではない
でしょうか。
というのも、必要で、考える要素が多いのが原因だと思われます。
前述したデルフィニア戦記においては、必要な要素を少しずつ丁
寧に書いていき、最後の事件においては必要な要素を可能な限り減
らした上で臨んでいました。
そして、事件の内容は物語の一番最初から脈々と続いていて、中
心となるものを書いています。
基本的には主人公二人の関係、異世界人リィの考え方、戦乱の解
決の仕方というのが一番面白い要素なんですが、それを見事に使っ
ています。
こういったことを使うというのは非常に大切なことです。
ヒキニートにおいては、三角関係に近い状態でのヒロイン感情の
揺れ動きを重視していて、冒険関連は正直あっけらかんとした感じ
でした。
そのため、最後の事件は感情によるもので、それを引き起こした
ものの解決に随行して、最後はまたこれか、というもので事件は終
わります。
結末の仕方は前回の通りでしたが、性急過ぎたきらいがあり、唐
95
突に感じた人が多かったようです。
これはまた別の回に説明します。
最後の転に関わる事件というのは、今までの集大成だと思っても
らって過言ではありません。
事件は大きく書いて盛り上がるのも大事ですが、中心となった要
素を使う方が大事です。
スポーツものの結末を想像してみてください。
大体は強烈な個性あふれるライバルとの対決と、仲間との連携だ
とか友情を描きませんか。
恋愛ものなら、主役と相手、そしてライバルの排除だとか、相手
の謎の悩み解決だったりしませんか。
冒険モノなら最強の敵と最強の技をもって戦い、仲間との友情や
恋慕を描きませんか。
集大成としての転は非常に考えるに難儀です。
中心となる要素はテーマではない事がありえます。
ヒキニートだとテーマは主人公の精神成長でしたが、中心はそこ
ではありませんでしたし。
困ったことですが、最後の事件とはそういうものです。
テーマに固執してはいけません。
また、中心となったことを事件に据えるので、無意味に大戦闘を
起こすことも出来ません。
関連していれば良いですが、してなければ無意味です。
たとえ冒険要素があっても戦闘については、いっそばっさりと切
り捨ててしまうことも大事でしょう。
まとめると、事件というのは第三者からみて大きな騒動ではなく、
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本人からみて大きな内容であること。
そして、その内容は中心としてきたことが好ましい。
こんな感じです。
97
26 − 結末が唐突に感じられるのはなぜか
ヒキニートを完結したときに感想に多く書かれたのは、終わりが
唐突に感じられた、というものです。
作者本人としてはここで完結だと、最初から決め打ちして物語を
作っていたのですが、読む側としてはそうではなかったのです。
こういった認識の齟齬は、文章を書く上で当たり前のように発生
します。
それらの多くは技術不足によるもので、今回のケースもそうです。
では、何が不足していたのでしょうか。
私が思うに、完結への予感、です。
そもそも、最後に大きな事件を用意するのはなぜか。
これまでとは違う、大きな事件だ、とすることで最後の話だと認
識してもらうためです。
当然、最後の話が終われば完結します。
こういったものはどんな話にも用意されています。
一番分かり易いのは推理モノでしょう。
起は舞台説明、承は事件発生、転は推理披露で、結は犯人逮捕で
す。
小さな推理を刑事だったり、ライバル探偵が立てたりしますが、
それでは解決せず、最後に名探偵が推理を大きく披露して解決しま
す。
しかし、長編になるとこれは崩れます。
いくら事件が大きくても、もしかしたらね、くらいにしかなりま
98
せん。
なぜかと言えば、そのジャンルの結末に合わないからです。
異世界トリップなら元の世界に戻るか、残る決断をすること。
これが終わりです。
デルフィニア戦記では最後に大戦争が起きますが、これ自体は今
までより大きかったというだけでした。
ただし、最後は異世界トリップにふさわしい終わり方で締めまし
た。
ここでも構成の上手さが良く出ていて、どちらを選ぶか最初から
ずっと宣言し、最後に迷う要素が出てきてもきっぱり決めて、それ
に付随する各登場人物との話も丁寧に入れ込んでいます。
ヒキニートに足りなかったのは、ここではないかなぁと考えてい
ます。
結末を丁寧に入れ込まずに、最後に少し書いただけで終わらせて
しまった。
ここに問題があったようです。
決断をするなら、それに付随する話を書く。
その話は迷うことだったり、感化されることだったり、きっぱり
初志貫徹することだったり、いろいろ想定できますが、丁寧に書く
のが大事。
それをもって、終わるのか、とうとう終わるのか、といった具合
になります。
エピローグを書くのも非常に分かり易い手なんですが、ヒキニー
トの完結方法に合わないと思ったので、消したんですが、それもダ
メな要因だったようです。
エピローグに関するテンプレというのもいくつか存在します。
99
基本は主人公または、主要登場人物のその後を書くこと。
これは事件の終了を持って完結とした場合によく使われるもので、
推理モノではよくあります。
恋愛ものでは五年後くらいの同居生活を書くことが多いですね。
戦記モノなどの国単位で描くものでは、その国が何十年後どうな
ったのか、と書くのが多いように思えます。
もしくは、最後の戦争が終わったあとの、主人公の老後だとか。
とにかく、平和になった世界を直接的にしろ、間接的にしろ描く
のが基本のようです。
スポーツ系も似たような感じですが、サッカーならセリエAで活
躍する主人公たちを描くような、最高の活躍をしています、的なの
が多いようです。
変化球で大活躍ののちに引退したあとどうしているか、みたいな
のもありますが。
日常系ならいろいろあったけど、その後も変わらない関係を続け
ています、っていうのが多いでしょうか。
逆に短編だと描くことはまずないです。
読了感が失われるのが主な理由で、長編ほど丁寧には描かないの
で、その分想像に任せる範疇が広くなるからです。
ヒキニートもこっち側かなぁと思ったんですけどね⋮⋮。
それはともかく、転だけで満足せず、結末も丁寧に書きましょう
ということです。
私みたいにいろいろ言われないためにも!
100
27 − 一話辺りの文字数はどのくらいが良いのか︵前書き︶
実際に書き始めることについての前置き的な話です。
101
27 − 一話辺りの文字数はどのくらいが良いのか
一話あたりの適切な文字数というのは判断するのが難しい。
実際に書く段になって、いろいろと悩んだことです。
一般的に、文庫等で一冊の小説となっている場合、ある程度まと
めて読む事が出来ます。
種類にもよりますが、概ね10万文字前後となっており、読みや
すいもので3時間程度、難読なもので1日かかります。
新聞や雑誌等で連載されているものは少数派だと思うので、ここ
では考えません。
次に小説家になろう。
ここでは基本的に一話ごとの更新になります。
完結まで書き終えてから投稿する人でも、全て一気に投稿する人
は少ないのではないでしょうか。
普通に考えて、一気に読める方が読む側としては楽です。
一冊で終わるところを分割販売とかされたら怒ります。
しかし、一話四万文字くらいで投稿する人はまずいませんし、読
みたい人もあんまりいないと思います。
この辺は読む側の気合いの問題ではないか、と考えています。
週刊漫画誌では一つにつき大体20ページくらいが標準なんです
が、その中でひとつだけ60ページくらいあると、読むのに結構疲
れます。
いつ終わるのかな、まだ続くのか、いい加減終わらないかな、な
どと思い始める感じです。
102
単行本だと何百ページとあるのに不思議ですね。
これは読むときに、一つあたり5分程度で読み終わる、という気
持ちが大きいからです。
月刊誌だと30∼40ページほどありますが、特に違和感は覚え
ません。
月に一回、分厚い雑誌を読むという気持ちがあるからです。
これは小説家になろうでも当てはまります。
有名小説は一話辺り3000∼1万文字くらいで構成されていま
す。
投稿サイクルは人によりますが、一週間∼一ヶ月に一回くらい。
頑張る人で一日に一回くらいです。
この中で、一話4万文字とあっても読むのにかなり疲れます。
いつ終わるのか、などと思われながら読まれるのも結構しんどい
ものです。
足並みを合わせておくのが良いだろうということで、大体400
0文字程度、多くても1万文字はいかないようにしよう、という感
じで書いていました。
また、もうひとつ理由があります。
3000∼1万文字というのは、栞の不要な文字数です。
大体10分∼30分程度、つまり空いた時間で活用できるサイズ
ということ。
こういった慣習がついている場合、一話を読み切り、そこだけ覚
えておくという形が基本になります。
その中で、自分の作品だけ栞を使ってもらおうというのも変な話
です。
103
週刊誌に栞を使う人はいないでしょう。
話の流れで、この話は読んだ、読んでないと判断するはず。
何話の何ページまで読んだ、などと思う人はいたとしてもかなり
少ないのでは。
小説の文庫本などで栞を使うのは、同時に読む本が数冊と少ない
からです。
続巻待ちだと最新刊まで読んだ、読んでない、何巻まで読んだ、
読んでない、という判断になると思います。
これが小説家になろうでは、何話まで読んだ、読んでないという
話になるわけですね。
そのため、空いた時間で読み切れるサイズが良い、と考えていま
す。
正しいかどうかは保証しかねますが、こういった思考過程で文字
数を定めました。
104
27 − 一話辺りの文字数はどのくらいが良いのか︵後書き︶
小説の話なのに漫画を引き合いに出すのもアレですが、小説雑誌っ
て一般的ではないと思いますので。
105
28 − 文章のリズム︵前書き︶
感覚的なことなので、参考になるかは分かりません。
106
28 − 文章のリズム
書き始めてからの話というのはちょっと纏まらなかったので、ひ
とつずつ書いていきます。
今回はリズムについて。
いろいろな定義があると思いますが、私は読んだときにどんな調
子で読めるかを判断材料にしています。
私は日頃文章なんてほとんど書いたことがありませんでした。
仕事ではテンプレートに沿ったものと、数字、定型文書の穴埋め
くらいのもの。
支店にいる同期相当相手に、簡単な業務連絡のメールを作るとき
が一番文字数を書いているかもしれません。
友人相手のメールなんて一言くらいしか打ち込みませんし。
そういったわけで、書いた文章はほぼメールで書いていたような
リズムになっています。
もちろん、同期相手でも崩した言葉なんて使いませんけど。
まず、語尾を何で終えるか、なんていう悩みが往々にしてあるん
ですけど、気にせずリズムに則って書いています。
ヒキニートの一話を読んでもらうとわかると思いますが、めちゃ
くちゃです。
∼だ、∼だ、と続くのは当たり前で、統一感の欠片もありません。
しかし、一応基準というものはあります。
思考回路にある言葉をそのまま使う、という点です。
107
ヒキニートにおいては、書き始める前の自分なりのルールをいく
つか設定していました。
どうせ書くなら新しいことに挑戦したい。
ダメなパターン、失敗する典型の考えです。
これはそのまま失敗に繋がるんですが、以下の通りです。
・一人称視点を徹底し、三人称では実現不可能な内容にする
・主人公の思考回路を正確にシミュレートし、可能な限り書く
・○○視点∼、○○Side∼は一切行わない
・何日後∼、何年後∼、などの飛ばし行為は一切行わない
・飛ばした後で、あのとき実はこんなことが∼などの後出しは一切
行わない
・こういう状態なら、常識的に考えたらこうなる、と思うことを書く
新しくないこともありますが、こんな感じです。
リズムに関係するのが、初めの二つと最後の一つです。
思考回路を正確にシミュレートします。
それはもう、読者が主人公=作者じゃないの、とか思うくらいに、
忠実に。
その上で、思考回路上にある言葉を並べていった形です。
心の声なんていう言葉がありますが、脳裏の言葉って感じですね。
頭の中で考えている意思、行動決定までのプロセスをひたすら書
く。
意外と文章になりましたし、リズム的にはまぁまぁだったのでそ
のまま載せています。
プロセスを載せた結果、こういう主人公ならこうするといった行
動も、行動に移すまでに説明します。
108
結果的に言えば、これは失敗でした。
思考回路を全て書いた結果、読む側が主人公に感情移入というか
思考移入するような感じで、読みやすくはあったと思います。
しかし、話が全然進みませんでした。
何分、シミュレートがいきすぎて、脱線し過ぎたのです。
脱線自体は目的はいくつかあったので、まったくの無駄というわ
けではないんですけど、テンポが悪すぎた感があります。
目的としては次の通りです。
・過去編を入れずに、異世界と比較になる元の世界の主人公を、分
割して書き切る
・今後、似たような状況に陥ったときに、行動指針はこうだからこ
うする、という理由付けにする
・題名のヒキニートという単語のパブリックイメージに、主人公が
引きずられないように具体的に人物表現する
過去編については思考回路のシミュレートを徹底する関係上、思
い出すくらいしか手はありません。
そのため、脱線という形で少しずつ混ぜています。
似たような状況というのは、一つの酒場に通い続ける理由だった
り、モンスターと戦ってもまったく怯えないことなどです。
普通の人なら違和感がありますが、先出ししておけば問題なかろ
う、というもの。
説明ではなく、経験という形でぼかしています。
ヒキニートという単語。
文中にこういう人物だと具体的かつしつこく書いても、パブリッ
クイメージを至高の絶対定義だと思う人は結構いました。
109
なぜかはよく分かりません。
でも、書かなかったらどうなっていたんだろうなぁとは思います。
一人称ならではのリズムの構成。
正直持続出来たかは自信がありませんが、読みやすくあろう、一
人称らしくあろうと試みてはいます。
次回では読みやすくする工夫について、書いてみます。
110
28 − 文章のリズム︵後書き︶
書いたリズムを理論立てて説明するのは無理でした。
111
29 − 読みやすくする工夫
読みやすくする工夫は文の短さとか、平易な表現をするとかいろ
いろ言われています。
しかし、それだけで読みやすくなるなら苦労はしないんです。
私なりにいろいろ考えて書いていたことは、結構あります。
ヒキニートの目標としては、頭を使わずに目で追うだけで文章理
解が出来ること。
これは、暇な空いてる時間で読むことを意識したものとも言えま
す。
休憩時間や、通勤時に頭を使う文が読めるか疑問ですので。
文学的な表現で書いていることが文章力だと誤解する人が多いん
ですが、私には理解不能です。
内容による、というのが当たり前です。
文章慣れしている人でも、読みやすい、読みにくいというのは間
違いなくあります。
軽めの内容なら、読みやすいことが文章力だと思いますね。
それはともかく、目で追うだけで読める、というのは引っかかり
を無くすことに努めるしかありません。
引っかかりとは、読んでいる最中に止まったり、読み返してしま
うことです。
どんなときに覚えるのか。
・誤字誤用脱字が気になったとき
・日常的に使わない表現、熟語が出てきたとき
112
・独自の単語が出てきたとき
・読んでいる場所がわからなくなったとき
・固有名詞が何を指しているのか分からなくなったとき
・その他、頭を使う必要があるとき
これらを全て無くしたとき、思わず読み流してしまう文章が出来
上がります。
良いことか悪いことかは分かりませんけどね。
まず、誤字誤用脱字。
特に微妙な間違いの場合、こうだったっけと立ち止まります。
引っかかりを感じる分かり易いときでしょう。
無くすのは大変ですが、直すのは概ね簡単です。
次に日常的に∼。
類語辞典などで、わざわざ難しい熟語を引っ張り出してきて使う
人がいるようですが、読む側の気持ちも考えて欲しいと思います。
前後を見れば大体分かるだろう、という問題ではなく、読めない
ときは引っかかるんですよね。
言い方を変えれば、前後を見ろってことは読み返せってことです。
読み返す必要があるほど、そこは重要な内容なんでしょうか。
独自の単語。
世界観を作る上で仕方が無いときもあるんですが、さらっと独自
の単語が登場すると、何コレと立ち止まります。
そういった単語が雪崩のようにやってくるともう無理です。
序盤の説明文が嫌がられるのもここにあります。
113
とにかく読みにくい。
出来るだけ、イメージし易い単語に置き換えた方が読みやすいと
思います。
読んでいる場所がわからなくなる。
横書きというのは、正直なところ読む場所をよく見失います。
ネット小説で空白行が多いのは、この辺が理由になりますね。
読む場所を見失うと、探すためにその周辺を読み返すことになり、
引っかかる要因です。
どういったときに見失うのかはちょっと難しいんですが。
話題の切り替えが分かり難い、というのがあるかなと思っていま
す。
・ひとつの話題が終わるときにオチをつけない。
・話題を変えるときに目印を置かない。
・文頭の言葉が、その近辺の文頭と同じ。
・空白行から空白行までのひとかたまりで、文字数や、見た目が似
ている。
こんなところかなと思います。
オチと言っても大したことではなく、話題が終わったことが分か
ればそれでいいです。
次も同じで、変わったことが分かればそれで。
文頭については、他でもよく言われていると思いますし、小説で
見たことがあると思いますが、かなり引っかかる要因です。
最後のは難癖に近いんですけど、ぱっと見の見た目が似てると結
構混乱します。
ページというのが存在しないので、スクロールミスったかな、と
かなんとか。
114
話は戻り、次の項目。
固有名詞が何か分からない。
人名や、スキル名などのことです。
これも先ほどと似たような理論なんですが、ぱっと見の印象が似
ていると同一の人名かと誤解します。
ヒキニートの命名基準を書いてみましょう。
・登場順にABCの頭文字を使う
・人名やスキル名等は英語、街名はスウェーデン語
・頭文字は可能な限り同じ文字を避け、使う場合は文字数に差をつ
ける
考えるのが面倒だったとかもあるんですが、ぱっと見でわかるよ
うにという配慮があります。
人間心理で、クロンヘイムとクロイヘンムとクロンヘイムは全て
同じものだと誤解するらしいんですね。
そういったことが無いように、文字数や頭文字が同じであること
は避けています。
また、実在の名前を使うのは、かなり響きが良く、イメージも付
いてくるのがあります。
クリスティンと聞いて、どんな人物をイメージしますか。
私は華奢な少女をイメージします。
ブライアンはどうでしょうか。
ゴツい兄貴をイメージしました。
こういったイメージとキャラクターを合わせることで、文中に出
てきてもすぐに連想が出来るようにし易い。
115
引っかかりを無くすことに繋がります。
最後に、頭を使う文だと引っかかりを覚える。
正直思いつかなかったのでこうしましたが、基本的には頭を使う
表現をすると、読み返しが発生します。
全ての項目で言えることですね。
なので、もし書いていて頭を使う表現だな、と思えばそこは読み
返しが発生する場所だと思えば良いでしょう。
シリアス表現なんかをするときは、わざと読み返しが発生するよ
うに、頭を使うような表現を選んでみたりもします。
流し読みせず、じっくり読んでもらいたい場面である、と主張す
るわけですね。
シリアスな場面というのは重要場面であることが多いので、たま
にやると目を引いて、印象深いシーンになります。
全体的にお気楽ムード溢れるヒキニートも、たまーにやってまし
た。
頻繁にやると雰囲気を崩すので、終盤に数話だけですが。
まぁアレコレ書きましたけど、内容が読みやすいことが前提なん
ですけどね。
ヒキニートの序盤は、いろいろ垂れ流し過ぎたせいで読みにくい
とかいろいろ言われましたし。
一文が短いから読みやすい。
平易な表現だから読みやすい。
そんなのは間違い!とまでは言いませんが、それだけで読みやす
くなるなら苦労はしないんですよ、本当。
116
29 − 読みやすくする工夫︵後書き︶
名前つけるのって大変なんですけど、この命名方式だと、ひとり一
分くらいで決まります。
実際に書いてる最中にモブキャラだけでなく、ヒロインの名前まで
決めてました。
117
30 − 書きながら考える︵序盤︶
私が、実際に書いているときの思考過程を書いてみます。
序盤については、世界観や主人公などの設定をもとに、こういう
主人公ならこう動くのが当たり前だろう、と思いながら書いていま
した。
情景描写についても、この主人公ならこんな感じの目線なはず、
と考えながら描写しています。
見ないものは書かない。
流すところは流す、よく見るものは詳細に、を心がけていました。
そうなってくると情景描写がかなり不足するんですが、不足した
分は言葉を置き換えて説明を省きます。
固有名詞は基本的によく使われる言葉にする。
変な言葉は作らない。
これを徹底するだけで、だいぶ省けたと思います。
スケルトンは大きさだとか、動きを説明するだけで、人の骨が動
いてるものだと思ってくれます。
ゾンビも同じ。
大聖堂ではなく街角の教会、なんていう表現も結構気に入ってい
ますね。
とにかく、一般的な言葉に置き換えて、描写不足を補完しようと
画策しました。
ストーリー展開は動かしたあと、常識的に考えたらこう対応する
だろう、というのを予想し、毒を抜いています。
118
雰囲気に合わせることを念頭において、平和で清潔にしようとし
ました。
これは世界観を考えたときの話です。
騙されて云々、聖職者が悪者で云々などの毒は一切なし。
そのまま当然こうなる当然こうなるを続けていましたが、展開が
どう考えても遅い。
テコ入れしようと、修行パートはすっとばします。
細かい世界観説明もざっとだけ書いて、世話役との会話などは省
略。
四方八方街を歩かせたり、修道院の生活を体験させたり。
場面をとにかく切り替えるか、体を動かそうとしていました。
授業みたいに椅子に座って、ノートを取るような描写は絶対に避
けた方が良い、と思っています。
ソファーに座って対面で世界観説明の会話をする。
実世界で、横に立って見てても眠くなりそうでしたので。
そのあとは伏線作りに一人歩きをさせます。
粗筋に従い、金を貯めて独立する必要がありました。
こちらも世界観として、冒険者はありふれた日雇い労働者扱いだ
ったので、長々と時間を掛けるわけにもいかず。
加速するならどうするか、と思ったところで、主人公だけすごい、
にしとこうと思いつきます。
モンスターのレアドロップ、というゲームではありふれたもの。
それを主人公だけ出来るようにし、荒稼ぎさせます。
力加減は当然必要で、稼ぎが多すぎてもいけないのでそこにだけ
注意しました。
また、モンスターを狩りすぎたら当然絶滅、なんていうのも作り、
119
展開を変えやすく。
これらは何年後∼などの飛ばし行為を行えば、設定としては不要
です。
変なルールを入れたがためにこうなりました。
意地になって、何やってるんだろうとか毎度思いましたけども。
途中で、何人もサブキャラが出てきますが、最初に出てきたキャ
ラは職業や立場に似合う性格を選んでいます。
修道院の少年なら可愛らしい感じ、防具屋のおっさんなら気の良
い職人肌などなど。
神殿の主だけは世界観設定とともにちょっと作り込みましたが、
その他は書いてる最中に考えていました。
最初期以降は、それまで出ていたキャラの反対側の味付けで設定
し、名前をささっと決めて書きます。
防具屋が喋りすぎだと思ったら、武器屋は無口無愛想、主人公が
冒険者として頼りなければベテラン冒険者は兄貴分に、という感じ
です。
とにかく比較対象として使えそうな味付けにしておくと、キャラ
立ちもし易く、会話も作り易いです。
そうやって序盤は作っていました。
120
30 − 書きながら考える︵序盤︶︵後書き︶
長かったので三分割しました。
121
31 − 書きながら考える︵中盤︶
中盤からは少し変わってきます。
奴隷商人に酒場で出会うフラグを考えないといけません。
これはヒロイン登場に関わることなので、伏線を絡めて進める必
要があるところ。
発想と連想を行う場面でした。
まず、奴隷は非常に高額に設定しています。
そうなると奴隷商人は資本が潤沢で金持ちになります。
金がある人物が安酒を飲むとも思えないので、出会う酒場は高め
にしないといけません。
高い酒場に主人公が行く理由は何があるんだろうか。
可愛い看板娘がいるからじゃないか。
ここでひとつ、異世界に転生でもトリップでもしたときにする、
テンプレのようなものがあります。
日本を懐かしむというものです。
元々の趣味が美少女ゲームとかをするオタク設定だったのですが、
異世界にきたのに美少女とまったく会わないようにさせていました。
飢えさせて、メイド喫茶のようなところに通わせようという理由
で。
ここで不思議な融合が起こり、メイド喫茶のようなところ=可愛
い看板娘のいる高い酒場になりました。
ただ、この看板娘をヒロインにする気は起きなかったので、対象
年齢から外すためロリ設定に。
122
これが良かったのか悪かったのかはわかりませんが。
ヒロインにする気がない人物は、分かり易くしておく必要がある
と思います。
ハーレムタグを付けている以上、読み手からヒロイン候補だと思
われる可能性が出てくるからです。
粗筋では奴隷だけにする内容でしたので、それは頂けません。
ここで大事なのは、役割を兼ねることが出来るものは合わせてし
まおう、というもの。
無駄にキャラや場所を増やしても仕方が無いし、使い捨て感アリ
アリになります。
増やす分だけ話は無駄に長くなりますしね。
また、衛兵と途中仲良くなる場面もあります。
最初は深く考えていなかったのですが、ヒロインが嫌われ者のダ
ークエルフであるため、その知識を入れ込む人が必要。
そのため、使い回す形で再登場させています。
彼は街の人、普通の人代表としての役割を振りました。
気の良い普通の人で、本音でバシバシ言う感じ。
こういったキャラは貴重です。
世界観を簡単に示すこともできますし、説明キャラとしても活躍
しました。
世界観の説明はこういった普通の人に語らせると、実によく馴染
みます。
最初の説明キャラが、全部を話す必要性はどこにもありませんし
ね。
あと、奴隷と娼婦の関係は密接である、という発想から、娼館に
主人公を通わせます。
123
サブヒロインのひとりは娼婦です。
粗筋を考えているときは奴隷商人から買おうと思っていましたが、
どっちも奴隷商人から買うのは微妙だと思い、チェンジ。
役割自体はそのまま持たせます。
娼館に行けばサブヒロインの娼婦と出会い、お気に入りへ。
ここで初登場となります。
メインも出ていないのに、ヒロインと見られるのもアレでしたし、
掛け合いなどの直接的な描写は避けました。
また、人物の仕草に関する描写が少ない感じでしたので、練習が
てら、サブヒロインの様子に全力を注ぎます。
こういうのは書いていて楽しかったですね。
124
32 − 書きながら考える︵終盤︶
この辺で、いったん書き方が変わります。
具体的には雨の日というサブタイトル。
実のところ、一話以外は全て一発書きで、誤字修正しかしていま
せんでした。
表現チェックとかもなしで、書いたらそのまま上げる形です。
無駄が非常に多かったのもむべなるかなという感じ。
書く流れとしては内容をざっと考える第一フェイズ。
寝る前などのときに一話全体の光景を映像化してイメージする第
二フェイズ。
細部が詰められたと思ったら書き出す第三フェイズ。
第三フェイズについてはとにかく暇があるときに打ち込みまくり、
最後に統合して書き直し一話にまとめる作業で終わります。
上げる前に三回ゆっくり読み返し、誤字チェック。
終わったらさっさと上げます。
こういうことが出来たのも、考慮すべき事項が非常に少なかった
ことが挙げられます。
考えるべきは主人公と、サブキャラが少し。
展開自体は少し考えれば、あとは主人公がこう動くだろうという
ことに追従すると、大体解決しました。
ただ、サブヒロイン登場辺りから苦しくなってきて、このままで
は無理があるというのと、感想でも結構指摘が来ていたので、やり
方を大きく変えます。
125
意識してもやり方がいまいち改善しないなら、行程を増やすしか
ない。
第二フェイズに、下書きを作るというものを入れました。
映像化と平行して行う作業で、映像化出来なかったらその部分は
箇条書きでざっと書いて飛ばす、映像化できたら細かく書いて、詰
まったらまたざっと書いて飛ばす。
そんな作業です。
これのいいところは、思いつかなくて悩む時間を減らして、思い
つくところだけ書いていき、書いているうちに悩むべきところを思
いつけば、そっちにすぐ移行して書けることです。
別のところを書いているうちに、悩みが解決するというのは結構
よくあります。
複雑な話になっても、ざっと書いてあとから書けると思うと気楽
でした。
また、ざっと書くだけなら短い時間の合間合間でもすぐに取りか
かれるので、使い勝手が良かったです。
表現を考えないで済むと、片手間でも出来ますしね。
そういった感じで、一話だけのプロットめいたものを作ります。
次に不要そうな場所を削り、流れを整え、清書に入ります。
この清書作業は下書きを一切見ません。
下書きを見ながら書くと、表現上のリズムや集中力の欠如だとか
が起きて、非常に書きにくかったです。
見ながら書く。
少し書き直して、下書きを少し消す。
どっちもリズムや集中力が削られて良くなかったですね。
126
そもそも下書きなんて見なくても一日くらい覚えてますので、ど
うでも良かったです。
多少内容が変わっても。一連で書いてる方が一貫性がありますし。
そんな感じで行程を増やし、それに慣れるとかなり安定しました
ね。
ただ、これは感情的な表現をするところでは行いませんでした。
あれだけは不思議なんですけど、完全に感情移入しないと上手く
書けないというかなんというか。
冷静に文を作っても興ざめするようなものしか書けなかったんで
すよね。
比較対象としては、クリスティンのご機嫌取りと夜のクロンヘイ
ム辺りでしょうか。
前者は慣れてなかったのもありますが、正直酷いです。
後者はとにかく感情的に書いてました。
読んでいる人に伝わるかどうかは微妙でしたが、私としてはこう
いうものでいいんだ、と思っています。
本当は冷静になんでも作れないとダメなんでしょうけどね。
理論的に出来なかったのが残念でした。
ハーレムを構築する上で、結構試行錯誤なところがありましたね。
まずはヒロインと語り合う場面が、なかなか作れなかったこと。
人間を描写する上で絶対に必要なのが、本音を書くことです。
普通に書いていては、嘘は言ってないけど、本音は全部言ってな
い状態、としかなりません。
127
これではキャラクター理解が進まず、ドラマ性も確保しにくいで
す。
恋愛物では絶対に用意されているはず。
緊迫した状況下、例えば死にそうなくらい苦戦してるときを用意
できれば良いのですが、そういった作品ではありません。
そもそもハーレムというのは、いつも一緒にいるからハーレムな
のであって云々。
困ったので、馬車が前後二人乗りだということにしました。
セダンをイメージしています。
長距離移動中は内密な話をする定番です。
エージェント同士が車の方が盗聴されにくい、なんて言ってドラ
イブする場面はよくありますね。
馬車というのは、トラックみたいな大きさの馬車はあんまり無い
んです。
そこまで馬に力がないというのもありますし、木製で強度が高く
ないのもあります。
坂道なんか大変ですし、街中では邪魔すぎますので。
横に二人しか乗れないのもまぁ、あり得る話だろうという感じで
す。
その他には、定位置ではないので少し離れる時間がある、という
タイミングを作り、二人だけにしています。
これも結構作りにくくて、欲しいタイミングで作るのが大変でし
た。
途中で、ダークエルフについての世界観を語る人物をまた用意し
ました。
128
衛兵だけでは信憑性が薄いので、何人かに語らせて、こういうと
ころだとさらに認識してもらう必要が出てきたためです。
周りに普通の人がいなさすぎて、どうもダークエルフだと気にす
る人がいなかったのが原因で、反省するところ。
それはさておき、こういった繰り返しを行うと強くイメージでき
ますので、大変便利です。
設定を最初に説明したきりになっていたものは、何人かに語らせ
ると良い、と思いましたね。
使い勝手の良いやり方だと思います。
移動が終わると、もう完結へ一直線でした。
デルフィニア戦記を参考に、完結に向けて未来の考慮事項を潰し
ていきます。
メインヒロインには主人公以外の居場所を用意し、依存関係から
の脱却を目指し、サブヒロインには戦闘力の強化と、能力の拡大の
ための学問の道があることを示します。
また、街の近くに手頃な稼ぎ場を設置、家を用意して、安定した
生活が送れるようにします。
ここまで来ると、あとはラストイベント。
そのための伏線をいろいろ用意して、ドドンと展開しました。
ただ、完結が作者だけ見えていたので、前書いた通り、焦り、急
ぎすぎた感がありますし、分かりづらかった感がありました。
締め方に後悔はないんですが、技術不足だったなぁと思います。
大体は長期目標を目指して書き進め、中期短期で障害が見つかれ
ば、なんとか排除する。
展開が遅いと思えば、そんなのアリ?というような方法で解決を
目指す。
129
主眼は成長と恋愛で。
という感じで書いていました。
130
32 − 書きながら考える︵終盤︶︵後書き︶
つまり、細かいところは一話の時点で全然煮詰めてなかったってこ
とです、はい。
131
33 − 展開の早さは果たして必要なのか
前回、何度か展開を早くすると書きましたが、必要性とは何かを
考えてみます。
ヒキニートは誰もが、ダラダラ系小説だろうと太鼓判を押してく
れる内容です。
なんせ、一日一日書きますし、いろいろ垂れ流しなので長い。
魔王を倒すわけでもなく、異世界生活をぐーたら過ごします。
それを延々書こうかなと最初は思っていましたが、ネタが切れる
んですよね。
毎回読んでて退屈しない話を、のんびり進行で書き続けるのは非
常に大変です。
それも当たり前の話で、追加要素がないのに同じ状況を繰り返す
だけなんですから、当然です。
二話目で悟りましたとも。
同じ状況を繰り返さないためには新しい要素が必要です。
矢継ぎ早に投入し続けるのも混乱するので、ひとつずつです。
ヒキニートで言えば、冒険者として活動し始める展開。
修道院の保護下から脱出する展開。
奴隷を購入できる大金を入手する展開。
奴隷を本来の目的に使えるよう、太らせる展開と⋮⋮。
最後はアレですが、どれものんびりやってても大変なだけで面白
くないんですよね。
132
私はぶっちぎってしまいましたが、ラノベではヒロインは初期に
出ないと大変マズイです。
40話近くまで出てこないとか正気の沙汰ではありません。
可能な限り展開は早める必要がありました。
その他にも、戦闘は早くだせとか、冒険をさっさとさせろ、なん
ていうのもあります。
推理モノでよく冒頭に死体を転がせなんてありますが、似たよう
な感じです。
求めるのは早く出す。
展開の早さが求められるところはここです。
逆に、出てしまったあとはどうなのか。
のんびりやってもいいです。
問題なし。
ただし、確実に進展しているというものを示す必要があります。
例えば、敵の四天王のうちひとりを倒したとか、7個の玉のうち
3個集めただとか、数字系が分かり易いです。
ハーレム要員ひとり追加、なんていうのも分かり易くて良いでし
ょう。
次の街に移動したとか、地位が上がったとかでもOKです。
同じところで、同じことをし続けるのはマズイ。
そのうちネタ切れして退屈になり始めます。
小説家になろうに求めることはいろいろあると思うんですが、私
としては商業に出来ない刺激の強いことやトンデモをやって欲しい
なぁなんて思っています。
異世界ファンタジー系統はその傾向が強いので、よく読みますね。
133
言い方は悪いですが、劣化ラノベでしかないなら商業ラノベを買
います。
お金がない学生なら図書館で借りるでしょう。
展開の早さで、さくさくっと刺激の強いところまで持って行き、
暴れる。
そんなのが求められているんじゃないかなぁと思います。
脱線しましたが、足踏みしてなきゃ千里の道でも良いんです。
求めるものを早めに出して、そこから長い道のりでも全然構いま
せん。
というのが展開の早さの必要性だと思います。
千里の道に作者が耐えられるかどうかは別問題ですが。
134
34 − 文字がなかなか書けないとき
実際に書いていると、思っていたよりも文字が書けないことが多
々あると思います。
箇条書きになったり、色彩のない線画のようになったり。
一人称視点の小説においては、主人公の考えというものを書かな
いがゆえに書けないのではないか、と考えています。
話を作ることにおいて大事なものは、行動の経緯や結果ではなく、
人物描写を行うことです。
これは小説に限りません。
漫画、ドラマ、映画、アニメ、なんでもそうです。
それぞれにやり方が違いますが、人物描写のためにいろいろな方
法を編み出します。
音響や、画面の写し方、俳優の努力、などなど。
いろんな方法を組み合わせて、なんとか人物描写を行っています
ね。
小説においてもそれは同じです。
三人称小説ではそれがやりにくいので、映画のようなやり方を多
用します。
人物の仕草に着目してみたり、周りの雰囲気を文体に載せてみた
り、掛け合いが妙に正直だったり。
一人称小説では少しやり方が違います。
主人公が言葉を発しても、それとは違う本音を文章として書ける
のです。
135
代わりにその他の物が、三人称に比べてかなりグレードダウンし
ます。
主人公の能力に合わせるからです。
単純に考えて制限がある以上、書きにくさでは一人称の方が上な
ので、得意とする分野で書くようにしないといけません。
本音、脳内にある考えをどうやって出すか。
文章として書くしかありません。
ヒキニートはやり過ぎた感じはありますが、長期に渡ってよくあ
る三人称のようなパートナーなしで話を書き続けられたのも、ここ
にあります。
例えば考えを書かなかったとき、どんな文章になるかと言えば、
味も素っ気もない報告文や説明文になります。
小説として成り立っているのか分かりません。
情景描写が足りないんじゃないか、と言われると納得しそうです
が、そうではないんですよね。
圧倒的に人間味が足りないのです。
物語を書いているのだから、人間味がないとお話になりません。
人物は思考を持つことで人間らしさを持ちます。
人の形をしたナニカが、録音した言葉を発するだけで人間だと思
うでしょうか。
それが地面をローラーで滑って目的地に辿り着き、また録音した
言葉を発する、を繰り返す。
どうみてもロボットです。
三人称や映画ではこうならないよう、人間的な仕草や感情的なや
136
りとり、文体や演出の雰囲気などで頑張って表現します。
一人称ならロボットとして、思考を書けるのです。
後ろについて回るだけじゃ意味がない。
ロボットとして考えてこそ、ロボットの中に人がいる、と思え始
めます。
こういったことは、実際書く段になるとなかなか思いつかないこ
とです。
しかし、書き始めると一気に文字数が膨れあがります。
書けないとか言ってる場合じゃないくらいに。
ヒキニートだとやり過ぎましたね。
もうとにかく書いてたような気がします。
でも、私としては書けないより書きすぎた方がマシ、と思えます。
主人公サガラはまさしく、あの場にいたのではないでしょうか。
137
34 − 文字がなかなか書けないとき︵後書き︶
上手く書く必要は無いのです。
空が青くて風が弱ければピクニックに行きたいと考え始める、とか
そういう話です。
138
35 − 序盤以降、上手く書けなくなったとき
上手く書けなくなったのはどうしてか、について考えてみます。
まず、執筆の時間というものを考えてみましょう。
私は学生時代、もっとも集中出来たのは通学中だとか、夜も遅く
なってきたような時間帯です。
昼間や夕方といった、他にすることがいくらでもあるとき、とい
うのは思っている以上に集中出来ませんでした。
これは執筆するときも同じでしたね。
つまり、一日のうち、集中して書くことが出来る時間帯は限られ
ています。
では、集中して書ける時間帯以外は活動出来ないのか、といえば
そうではありません。
集中していなくてもプロットと言われるような、主人公の行動を
箇条書きしたようなものは書けます。
設定とかは発想と連想が必要なので、微妙なところですけど。
こういった作業量の分散をすることで、仕事や学業の合間の隙間
時間を活用することが出来ます。
ヒキニートは序盤、投稿ペースは非常に早かったと思います。
年末年始休暇を先取りしてて暇だったこともありますが、悩むこ
とが無かったのが大きいです。
文章の内容的なものもあります。
しかし、大ざっぱな展開は決まっており、主人公の行動ロジック
は完全に出来上がっていたのが一番でしょうね。
悩むことなく、次々に書けることは早さに繋がります。
139
似たようなもので、行動を箇条書きすると悩むことは減るでしょ
う。
序盤以外は多分、結構な確率でペースが落ちます。
書いているうちに変更事項がいろいろ出てきますから、最初に考
えていた内容は使えないものが多くなりますので。
そういったとき、自分は熱意が無くなったのではないか、と感じ
ることがあるでしょう。
これは、多くは誤魔化しです。
良いペースで書けていたのに、段々落ちてきて、悩んで、また落
ちる。
湯水のように展開が思いついていたのに、思いつかなくなった。
熱意が無くなったんじゃないか、と感じる。
そうではありません。
出発地点で見えていた範囲を使い切っただけです。
熱意が無くなったから、といってする行動は結構ありますが、そ
のうちしてはいけない行動というのも存在します。
まず、アクションゲームなどの爽快感や、快楽的なものを感じる
行為です。
気晴らしと言っても良いかもしれません。
執筆は正直なところ、暇に飽かせたとき、鬱屈の溜まってきたと
きなどに良く筆が進みます。
これらを解消してしまうと、溜まるまで上手くいかなくなり易い
です。
鉄は熱いうちに打てといい、執筆も同じだという声がありますが、
これが原因だろうなと思っております。
つまり、小説は完結するまでそのことに集中するべきだと思いま
140
す。
上手くいかなくなったから、気晴らしに。
時間を食ったあげく、筆は進まない。
熱意がなくなったのだと勝手にアタリをつける。
これを繰り返していては、上手く書けるわけもありません。
上手くいかなくなったのであれば、プロットめいたものだけ何通
りか書いてみる。
それも思いつかないなら、いろいろ溜まるような行動をしてみる。
︵風呂とか散歩とか︶
どの展開が良いか分からなくなったら、名作を考察して、参考に
してみる。
それも出来ないようなら、誰かに聞いてみる。
いろんな手があります。
最後については、活動報告に書いてみたり、指南書を読んでみた
りも含みます。
本を買うのが嫌なら個人サイトや、なろうのエッセイを読むので
も、良さそうな人にアドバイスを求めるメッセージを送るのでも何
でもいいですが。
とにかく、その小説以外の快楽的なことは、なるべくシャットア
ウトした方が良いです。
逆に、仕事や勉強にうちこむと小説が良く書けたりして便利です。
いろいろ溜め込む。
いわゆる熱意を取り戻す、簡単な方法なのではないでしょうか。
141
35 − 序盤以降、上手く書けなくなったとき︵後書き︶
中盤筆が止まって、なんでかなぁと考えた結果、こういう結論に至
りました。
全てを細かく詰めずに書き始める私のような人は、こうなりやすい
のでは。
142
36 − 投稿ペースと推敲について
投稿ペースについてかなり考えてみましたが、個人の好み、とい
う結論に落ち着きました。
しかし、それでは寂しいので、少々理屈をこねてみます。
まず、どんなパターンがあるのか。
私が見てきた中では大体以下のように分類されます。
1.一話ごと、完成したら投稿する
2.一話ごと、推敲し終わったら投稿する
3.何時に投稿するか決めたうえで、一週間に複数話完成させ、投
稿日までに推敲し、投稿予約を入れる
4.キリの良いところまで完成し、推敲し終わったら、一日一話ご
と投稿し、ストックが切れたら休止する
大体こんなところですが、ここからさらに細分化されます。
A.完成しているものは全てすぐに投稿する
B.一日に一定回数投稿する
C.一週間に一定回数投稿する
D.一ヶ月に一定回数投稿する
E.不定期に投稿する
それぞれの利点欠点はあるのですが、基本的には推敲をどうする
かで大体決まります。
推敲はした方が良いに決まっている、とは思いますが、ネット小
143
説では必ずしもそうとは言えないところもあります。
というのも、一巻︵十万文字︶ごとに出す商業作家とは違い、一
話に投稿する文字数が少ないネット小説では推敲が難しいためです。
基本的に推敲の効果として求められるのは、誤字脱字誤用の発見
ではなく、洗練された文章と展開にすることです。
文章を、たかだか一万文字程度書いたあとに見直して、自ら修正
するのは容易ではありません。
基本的な力が大差ないので似たり寄ったり、全体的なバランスで
見れば悪化するケースも多いです。
展開については言わずもがな。
今後の話を書き終わっていないのに、無駄な展開だと切り捨てる
のは難しいでしょう。
つまり、ある程度書きためてから推敲しないと、時間が掛かる割
りに良い効果は生まれません。
次に、推敲しないとどうなるのか。
私はヒキニートを書いていたとき、下書きのストックを作りなが
らの1−A型でした。
読み直し、てにをはチェックなどはしますが、本書き後の推敲は
していません。
これは詳細なプロットが無いため、推敲をするのが難しかったと
いうのが理由です。
これの利点は、書き慣れていない人がとにかく完結を目指す心意
気のみで頑張るのにはいいかも、といったところです。
推敲作業は得てして袋小路にはまり易く、修正しているうちに全
面改稿の欲求が高まります。
144
良く言えば、その辺の未練を断ち切り、完成のみを目標に進む。
悪く言えば、完成度は低くても早ければいいよね、といった感じ
でしょうか。
では、推敲する場合はどうか。
理想的なものは、3−C型です。
2型は詳細なプロットを用意していない限り、期間に関係なく推
奨できません。
前述のとおり、推敲の効果が発揮できないのに労力が多く必要に
なるためです。
また、一ヶ月や二ヶ月空くような不定期更新も推奨できません。
読み手側が内容を忘れてしまう、そんな危険性があるためです。
完結出来るのか不安になるから、というのもあります。
3−C型、3−D型はバランスの良い執筆方法です。
配分はいろいろあると思いますが、キリの良いところまでプロッ
トを少しずつ作り、まとまった時間で一気に書いたうえで、推敲を
する。
執筆リズムを作れるうえに読み手側も安心なので、かなり良い方
法です。
書きすぎたとしてもストックとして活用できるので、何か用事が
出来ても安心ですね。
4−E型は職人気質といった感じです。
一巻ずつ作るような感覚で推敲を重ねます。
投稿日を定めないので読み手側としては辛いところですが、作品
のクオリティが高いことが多いです。
全て書いたあとに投稿するタイプとは違い、読み手の反応にある
程度対応できるのも良いところでしょう。
145
とりあえず経験談としては、詳細なプロットなしの場合、中盤を
過ぎると著しくペースが落ちることは覚悟した方が良いです。
厳しいようであれば素直に一週間に二回にするなど、日を空けて
投稿した方が良いでしょう。
私のように毎日投稿に拘り、無理矢理書くと文章が荒れますので。
空けた結果モチベーションが下がるのであれば、下書きだけため
るというのもオススメです。
ちなみに商業作家では、一度全部書き上げて問題点を洗い出し、
一から全部書き直し、というのを五回くらい繰り返す人もいるそう
です。
文は凄まじく洗練されるそうですが、素人に真似できるかは不明。
146
36 − 投稿ペースと推敲について︵後書き︶
かなり大雑把な分類分けで、漏れてる方法も多そう。
147
37 − 完結できないと思ったとき
事情は様々だと思いますが、完結できないと思うことはあるでし
ょう。
解決策はありませんが、やり方はいくつかあります。
● 次の展開が思いつかない場合
思いつかないと、いろいろ言い訳を考えて更新しなくなるもので
す。
逆に言えばそこを突破してしまえば良いわけで、ダイジェストに
飛ばしてしまう、というやり方があります。
戦闘シーンに突入してすぐに止まってしまった場合は、何時間後
∼などで息を切らせているところで始めるとか、相手が倒れるシー
ンで始めるなど。
結果的に主人公が倒したということがあれば良いのです。
難しいところは特にありません。
根本的に展開が思いつかない場合も同様に、何年後∼などで飛ば
して、ラストのイベントに持ち込めばオッケーです。
飛ばしたあとに回想でいろいろあったことを示せば、1話くらい
で30話ほどを短縮できます。
おいしいところだけ書けるので、かなり楽です。
二つ合わせ技で行うことも可能で、つなぎのところだけ少し丁寧
に書けば成立します。
148
これは打ち切り漫画で使われる手法のひとつです。
伏線を無理矢理回収するので、読み手側も一応すっきりとはしま
すから、やり方としてはかなり上策でしょう。
次に俺たちの戦いはこれからだエンド。
戦いの途中でも、展開の途中でもどこにでも入れられるので、非
常に楽かつ便利です。
ただし、前述とは違い、笑うしかない状態になるのが微妙なとこ
ろ。
やり方としては、主人公が一度強敵に吹き飛ばされ、それに仲間
が駆け寄り、立ち上がって走って行く。
ここで完と打って、編集者っぽい一言と謝罪を入れれば終わりで
す。
他にも街を出て、仲間と一緒に歩いて行く場面で終わりでも大丈
夫です。
俺たちの旅はこれからだ、としておけば終わりです。
大事なのは、本来終わるところではないけど、主人公たちは前向
きに頑張っていきますよ、と意思表示することです。
諦めて失意のうちに終わるとか、そういう後ろ向きではいけませ
ん。
少年漫画的な前向きさが必要とされます。
● 当初の計画が気長すぎたために短縮する場合
149
作者が、終わりの見えない展開に疲れてしまった場合です。
序盤にサブイベントを入れすぎたパターンとも言えますが、こう
いった場合はプロットを途中からでも作ることで解決し易いです。
プロット作りで必要なのは、粗筋を立てて、重要な展開を整理し、
そこへの道筋を作ることです。
つまり、展開へ真っ直ぐ、寄り道なしで行くことで相当な短縮に
なります。
短縮のためにいろいろとご都合主義になるとは思いますが、そこ
を考えるだけで良いので楽な方法だと思われます。
例えば、魔王を倒すために四天王を倒す計画を立てたが、長すぎ
るので四天王は仲間割れで三人勝手に死亡、残りはひとりになった、
とか。
次の展開で○○が必要だったが、その他のイベントで同時に手に
入るようにした、とか。
ひとつの道筋がひとつの展開にだけ繋がる必要もないですし。
合体させまくるとかなり短縮できます。
極端に言えば、いきなり魔王戦になってもなんとかなります。
魔王が四天王を癇癪で殺したとかにしておけば良いですし。
ここで大事なのは、ご都合主義の理由を真剣に考えることです。
ギャグ調に落とすのは定番ですが、それがその世界のルール、設
定だと宣言する必要があります。
そこさえ突破してしまえば、作者の負担はかなり軽減され、読み
手側も違和感なく進められるので、かなり良い手でしょう。
● 結末がどうしても想像できない場合
150
これはかなり特殊です。
イベント等は思いつくのに、締め方が分からない場合とも言えま
す。
そういったときは古典にならうのが良いでしょう。
不思議の国のアリスや、美女と野獣、ハリウッド映画などもオス
スメです。
キャラクターを記号化して頭の中で思い出してみると、結構自作
に当てはまるパターンがあると思います。
少し探してみると、案外すぐに想像できるようになりますよ。
完結できないと思うときは多々あると思います。
しかし、私としては放置するよりも、上記をまずしてみることを
オススメします。
読み手のことは正直どうでも良いですが、放置は自分のためにな
りません。
こういったことは数年後、思い出したときにボディブローのよう
に効いてきます。
無理矢理でもなんでも、完結してしまえば楽です。
あとから改訂版として書き直し、再度投稿する手もあります。
完結済みを一度味わってみませんか。
151
38 − おわりに
ごちゃごちゃとしているうえに、長々と続きましたが、私が考え
ていたのは大体こんなところです。
重視すべきことは、発想と連想で切り抜ける。
10あるうちの6で平常運転、キツイところは8で頑張る、10
必要なところは飛ばしてしまえ。
初志貫徹は大事。
物事は柔軟に学んでいこう。
っていう感じです。
最初なら気張る必要は特に感じられませんでしたね。
思いつきのネタでも97話とか続いちゃうくらいなので、あんま
り作り込んだ設定で始めるのは微妙そうです。
気楽に書いていけば案外楽に終わると思いますので、手慣らしに
ひとついかがでしょう。
意外と趣味に目覚めるかもしれませんよ。
152
38 − おわりに︵後書き︶
あとは雑記を更新する程度にしたいと思います。
欲しいネタ、聞きたいことがあれば気軽にメッセージなど下さい。
153
A − タイトルとあらすじを考察
いろいろ読んでいると、皆さん意外とタイトルの決定に悩まれて
いるようです。
私は正直あんまり悩んだ覚えが無いので、ちょっと意外でした。
テーマ以外に拘りがなさ過ぎるせいかもしれませんね。
需要がありそうなので、日刊ランキングにあるような、キャッチ
ーな作品を検証材料に調べてみました。
内容は﹃あーくろ﹄さんの﹃書籍化のための考察﹄というエッセ
イに書いた感想とほとんど同じですが、狭い感想欄ではないのでち
ょっと丁寧に。
変更してアクセスが増えるかどうかは保証しかねますが、私が見
て読もうかなと思った基準で書いてます。
● タイトル
商業書籍と、小説家になろうでは意味合いが全然違います。
基本は一覧表を流し見て、という判断になるので、そこから考え
ました。
日刊ランキング一覧に限らず、検索しても一覧で出ますし。
1.難読漢字は絶対ダメ
高校生でも悩まず、間違えず、パッと書ける漢字が限度です。
読めるかではなく、書けるか、が大事。
全部カタカナだと和製英語でもちょっと厳しいかも。
154
英語を使っていて、良かったと思うタイトルはありませんでした
ね。
2.最初の5文字でユニークさを
全体は、いくら長くても短くても大差ありません。
あらすじの前置きに使っても良いくらいです。
最大でも7文字でその作品が分かる言葉を書くべきでしょう。
主人公か、その世界についてが一番良いかと思われます。
主人公の特色とかが一番良さそう。
世界名を使うなら、語呂、語感の良さが必須みたいです。
3.略称は自分で作らない
何か別の理由がない限り避けるべきです。
初見では、意味不明な文字列でしかありません。
好印象を与えることはないでしょう。
● あらすじ
タイトルで目が止まれば、次はあらすじですね。
基本は好印象を持つかどうか。
次点で読む気になるか。
最後に気になるかどうかです。
1.ランキング表示で3行にまとめる
多くても5行までで、10行は間違いなく厳しい戦いになります。
内容で何行、ではなく、全体で何行、という数え方。
人間、スッキリシンプルなのが好きです。
ランキング表示だと改行無視なので、詰まってしまい酷い見た目
なんですよね。
155
そこを意識した方が良いようです。
2.作品の雰囲気を伝える
軽め、重め、あらすじに雰囲気を乗せます。
読み返して雰囲気が合わないようなら書き直し。
あらすじを読んでみて、この雰囲気いいなぁと思ったら中は全く
の別物。
これはキツい、と私はよく撤退します。
最低でも序盤と同じ雰囲気ではないと厳しそうです。
3.ギャグ調は絶対ダメ
前座の大切さがあります。
まずウケないので止めるべきです。
ギャグにはキャラクター性と、舞台、感度の事前アップが必要な
んです。
それが皆無の状態で書くのは無謀です。
掛け合いとかも止めた方が無難で、語るは一人が良いようです。
4.初心者なので∼云々の保険は一切消す
伸びる可能性が消えます。
今書いていたら真っ先に消すべきでしょう。
その文字数を、あらすじを書くことに注力すべきです。
注意事項もよほどのことがない限り入れない方が無難です。
作者のことしか考えていない言葉ですからね⋮⋮。
5.煽り、引きは入れない
何を得て何を成すのか、などはダメです。
行くことになったが⋮⋮?も微妙。
言い切った方が好感度が高いです。
人気作の続巻なら分かるんですけど、初見の物では上から目線な
156
感じを受けます。
6.わかりやすく
話の本筋を示し、どんな人がどんなところで、どういったことを
目指すのか、を口語体で書きます。
ユニークさがあれば、それを付け足すとタイトルのような効果が
出ます。
世界の説明を延々とするようなのは、不親切にも程がありますね。
説明を読みたいのではなく、どんな本筋かを知りたいだけなんで
す。
スッキリ書いて、後から必要な言葉を追加して、文字数を整える
方が良さそうです。
157
A − タイトルとあらすじを考察︵後書き︶
理屈っぽく書いてみましたが、私が出来ているかどうかは不明。
158
B − 戦闘シーンを書くには
戦闘シーンを書くのは難しいです。
これに悩む人は結構いるようで、私はとにかく緊張感が足りない、
間延びし過ぎとよく言われましたね。
最終的にちょっとはマシになったかなと思うんですが、いろいろ
と書いてみましょう。
戦闘シーンに必要なものは、映画とかが結構参考になります。
まず、準備。
武器を揃えたり、戦闘技術を手に入れたり、仲間を集めたり。
当たり前のことですけど、序盤だけしか準備していないってこと、
ありませんか?
日常描写程度に落とし込むのならそれでもいいんですけど、戦闘
シーンを目玉としてドーンと用意したいのであれば、準備は欠かせ
ません。
次にブリーフィング。
作戦会議のようなものです。
戦う相手、場所、今ある準備したモノ、そういった情報を確認し、
分析します。
敵が盗賊のアジトにいる盗賊なら、それに適した行動を取るでし
ょう。
どう考えて行動に移しますか?
場所を調べて、盗賊はどのくらいいるのか確認して、魔法使いと
かがいたら警戒して、戦力で負けているなら奇襲して、といろいろ
ありますよね。
159
戦闘シーンでは欠かせない要素です。
敵は盗賊、湖の山小屋をアジトにしていて、30人いるらしい。
こちらは5人、一人一人は装備も高級で、熟練者揃いなこともあり
強いが、敵に魔法使いがいるかもしれない。ひとりずつ倒していく
ゲリラ戦を仕掛ける。不味いと思ったら上空に花火を飛ばす。それ
を見たらすぐに撤退しろ。
こんな感じの内容です。
実際はこんなに一気に言わずに、ちょっとずつ話の展開の中で開
示して、辿り着いたときに少し補足して終了になりますけど、説明
キャラがいるならやっても違和感なくていいですね。
実際の戦闘。
ここではとにかくスピード感を出します。
文章の9割ほどを敵味方の動きだけに限定して、語り手の考えと
かで短く補足します。
考察などは入れずに、とにかく動かす。
睨み合いなどの間が空いたときに一息入れて考察します。
次にどうするべきか。
窮地であるなら、それを脱出する方法とかですね。
ここでは小説的な文章はまったく考えなくていいです。
むしろ不安定になるように、バランスを崩した方が良いことも多
いでしょう。
同じ末尾になるようにしたり、﹃い﹄で連続して終わるようにし
たり。
基本的には短文で、主語や修飾語を消してみるのもアリです。
読点を一切入れないなんていうのもアリです。
読んでみてスピード感が出れば、それが正解でしょうね。
160
言い争いは小説によりますが、戦闘の直前か、疲れて一息入れた
いときっていう感じですかね。
剣と剣と合わせながら言い合うのも趣がありますが、長いと間延
びしてしまうので、短く感情の籠もった声で、剣と一緒に振り下ろ
す感じにすると、臨場感が出ます。
魔物相手なら不要だと思いますけど。
戦闘に入ってからは、緩急をつけることはあっても、緊張感を完
全に解いてはいけません。
まだ戦闘は続いているのだ、という意識は読み手に持ってもらい
ましょう。
周りの風景に緊張感を持たせたり、キャラの動きに緊張感を持た
せたり、どこでも構いません。
何かがあれば少しは緊張感が持たせられますので。
最後にデブリーフィング。
戦闘後の確認をしましょう。
仲間の傷に消耗、装備の損壊といった準備したものの損失。
戦闘した相手の情報をまとめ、今後に生かす経験。
結果として得られた報酬。
新たに手に入った敵の新情報。
こういった情報をまとめて、次にどういう行動を取るのか、を決
定するシーンです。
確認が無いと終わったとは思えませんからね。
全ての行程が終われば休憩しましょう。
緊張感を解いて、一息入れるのです。
戦闘はもう終わり。
日常へ帰ります。
読み手も安心することでしょう。
161
意地の悪い人はここで戦闘を持ってきますけどね。
162
B − 戦闘シーンを書くには︵後書き︶
基本としてはこうですが、どれかを崩すことで違った効果も生まれ
ます。
163
C − テンプレに不信を抱く︵レベル︶
テンプレテンプレと言っておいておかしな話ではありますが、私
は基本的にテンプレ展開について不信感を抱いています。
本当にこの展開は必要なのか。
果たしてこの要素の意味は何なのか。
この設定に自己満足以外の何があるのか。
気にしなければ気にしないなりに、面白くはあります。
しかし、気になってしまえば気になる。
少し、考えてみましょう。
※ 考えていたら長くなったので、途中から分けました。
● レベル
RPGゲームの世界では当然のごとく存在する要素です。
そもそもゲームにおいて、なぜこれが必要であり続けたのか。
昔のゲームはレベルによって、キャラごとのステータスの数値が
決まっており、このレベルがあればこのボスは倒せるだろうという
指標になっていました。
格闘ゲームではそういったことはないのですが、テクニックによ
ってカバーできる範囲が決まっている選択型RPGにおいては、必
須の指標です。
この指標に従い、レベルアップのし易さ︵経験値の溜まりやすさ︶
164
を定めておけば、大多数の人がその数値に辿り着き、楽しめる。
ユーザーに親切にするということを目指した典型例とも言えます
が、ゲームを作る側が管理しやすく、分かり易かったということで
す。
さて、小説にこれを持ち込んだのは何だったのかわかりませんが、
恐らくゲームのような世界を作ろうとしたはずです。
ゲームと同じ単語を使い、分かり易くする。同一と見なしてもら
い、没入感を保つ。
必要に迫られて用意された設定というわけでは無さそうです。
この設定があることで、どんなことが発生するかというと、登場
キャラごとにレベルを設定し、管理しなければならない、というも
のがあります。
主人公とその仲間のレベルがわかる。
じゃあ、あの偉そうにしている人のレベルはいくつだろう?
あの強そうなモンスターのレベルは?
ボスは?
際限がありません。
これは攻略本で、相当なページ数を割いて記載していることから
も分かるとおり、知りたがることです。
では、仮にこれを設定したとしましょう。
実際に書いていくとどうなるかというと、強さの上下関係を延々
と考え続けないといけない、ということになります。
例えば、序盤の敵がレベル1だったとして、レベル10のときに
苦戦したライバルがいるとします。
主人公補正でポンポンレベルがあがっていき、レベル50になっ
たときどうなるか。
165
ライバルが超絶天才設定ならいいです。
普通よりすごい程度であれば?
もし、一般人のレベル限界が30くらいだったとしたら、ライバ
ルはもう使えません。
ライバルが一般人に成り下がるときです。
レベルが20違っても似たような強さだ、というのもアリですが、
実際のところゲームでは、このくらいのレベル差がつくとまず相手
になりません。
このように、過去の設定が、今の設定に押しつぶされて無価値に
なってしまう。
インフレ現象とも言えます。
このインフレ現象は成長する以上避けようが無い、と言う人も多
いと思いますが、可能は可能です。
最大レベルを3にしておけば解決です。
レベル2とレベル3が戦って、いい勝負になるのは分からなくも
無い。
レベル200とレベル300だと違和感バリバリですが。
要するに、レベルが決まっていると、強さが分かり易すぎる。
その結果、強さが予めわかってしまい、どうしようもなくなると
きがやってくる。
逆手にとって宇宙まで、銀河まで強さの単位をあげていけば、螺
旋の力は面白かったですけど⋮⋮、全部の作品で出来ることではあ
りません。
シリアスなファンタジーや、目立たない主人公を描くモノならな
おさら。
俺は新世界の神になる! なんて言えませんし。
しかし、レベル2やレベル3では格好がつかない。
166
なら上中下級で分けてしまえば良いのでは?
エキスパート、ベテラン、ルーキーでも良いですけど。
そうなると、レベルの必要性とはどこにあるのか?
テンプレの有用不用に不信感を抱くときです。
わかって使っているのなら、良いのです。
ただテンプレだから、とレベルを使うのは⋮⋮。
167
C − テンプレに不信を抱く︵レベル︶︵後書き︶
長くなったので三分割しています。
168
D − テンプレに不信を抱く︵ステータス︶
● ステータス
STRやVIT、INTなどと言われるものです。
これもゲームにおいて必要とされている要素ですが、何に使うの
かと言えば、新しい装備を買う、選ぶというときに、ユーザーに親
切であろうとした結果です。
RPGゲームにおいては、多いモノで数百種類の武器、防具が存
在します。
お金で買えない、ダンジョンでひとつだけ手に入るものや、モン
スターから手に入るものだったりした場合、高い値段だから強い、
という判断が出来ません。
新しい武器を装備して、今より弱くなったらどうしよう?
もしくは、装備したけれど、本当に強くなったのかわからない。
ユーザーに不親切だとは思いませんか?
これを避けるために、必要とされてきました。
話は変わって、小説です。
こちらはレベルとは違って、明確な必要性が存在します。
見た目は華奢な少女が、重い剣を素早く振るうことが出来る理由
とはなんぞや?
これに対する解答が、STRの数値が高いから実際の筋肉は必要
ない、でした。
そういうものか、と謎の説得力があります。
まぁSTR=ストレングス=筋力なんですけど、野暮は言っては
169
いけません。
ゲームでは攻撃力に関連する数値はSTRです。
コンピューターゲームの前から決まっていたことなのです。
さて、これこそが難儀と言える設定なんですけど、攻略本の多く
ではこの数値を見せません。
なぜかと言われれば、特に知りたいとは思わないからです。
ゲームではレベルこそが強さの指標です。
レベルに応じて変化し、ボス補正がかかってくるだけの数値であ
るならば、特に知ったところでどうしようもありません。
内部の計算式を解き明かして、最適な防御力を準備してから戦う、
なんて酔狂な人はそうそういるものではありませんし。
レベルが高ければ勝てるのだから、数値を知ったところでどうし
ようもないのです。
そのため小説中においては、他者のレベルは開示しても、ステー
タスは開示しないことが多いです。
多くはゲームに倣ったせいでしょうけど。
ここで問題なのは、ステータスの概念を用意したせいで、主人公
のステータスを毎回記載しなければならなくなったこと。
成長したのであれば、どのくらい上昇したのか知りたいのは自明
です。
装備のときもそうでしたね。
実感できないのであれば、数値として示す。
わかりやすい。
わかりやすいがゆえに、面倒くさい。
毎回毎回、一定の時間が経つごとにステータスを計算して書かな
いといけないのです。
170
非常に大変なことですよ。
これも数値化してしまったら、上昇するごとに過去の設定と矛盾
しないように配慮しなければなりませんし。
小説を書いているときにそんな余裕ありませんよ。
名前を考えるのだって億劫なのに⋮⋮。
私だけじゃないはずです。
本当です。
そもそもの必要性が、華奢なままで筋力がすごいことの解答なの
ですから、違う解答を用意すれば良いだけです。
体内の魔力が筋肉の代わりをする、とかで良いのでは無いでしょ
うか。
オーラパワーみたいな感じでどうでしょうか。
こんなことを書くとそれの数値化が、と言われそうですが、しな
ければ良いのです。
ゲームから持ってきた話ではないのですから、説明しなければ良
い。
作中では計測することは不可能。
そうしておけば納得してもらえますし。
テンプレとは不思議なものです。
171
D − テンプレに不信を抱く︵ステータス︶︵後書き︶
文字数って増やすものじゃなくて、減らすものだと思うんですけど
ね。
私は減らしたいなとは思いつつ、ガンガン増えますけど。
172
E − テンプレに不信を抱く︵主人公はモテる and ハー
レム︶
● 主人公がモテる理由とハーレム
ハーレム系作品でたびたび話題になることです。
ToLoveるでは、主人公はイケメンで清潔感、正義感、優し
さに溢れたなんともハイスペックな設定です。
また、メインヒロイン︵?︶のララは、地球にやってきたばかり
で知人のいない状況+見合い話が嫌で本国には戻りたくないという
設定があり、そこで主人公との出会いと勘違いから、このイケメン
なら結婚しても良いという感じになり、話は展開します。
そこから、実はイケメンに惹かれていた現地のヒロインが、ララ
の行動に当てられて云々や、ララが好きな男とはなんぞや、と興味
を持った姉妹やらと、続々と集まり、イケメンの魅力に当てられて
ハーレム状態になります。
こう書いてみるとなかなか凄いですが、基本は接触と、魅力によ
る惹かれ、という手順を踏んでいることが分かります。
まぁ接触してみないとどうしようもないですし、魅力を感じない
と逃げてしまうのも当たり前なんですが。
何が言いたいのかというと、これを守っていないハーレムは意味
がわからない、ということです。
ご都合主義全開のToLoveるですら守っていることで、しか
もすぐに恋愛話にはいかずに丁寧にねちっこく話を重ねた上で、も
しかしたら⋮⋮くらいのキャラも多いのです。
それを強いから、金を持ってるから、というのは厳しい。
金を持ってるから接触機会が増えて∼ならまだわかりますし、接
173
触しているうちに隠された魅力に当てられて∼もわかります。
一目惚れはキツいのでは⋮⋮。
とにかく手順を踏みましょう。
大事です。
次にハーレム状態に持って行くにはですが、現代の日本の感覚を
持つ人であれば、一人と相思相愛の状態で、もう一人に惹かれてい
く、さらにもう一人、もうひとこえ、もうひとこえ。
ちょっと考えにくいですし、そんな人の内面描写をどうしろとい
うのか。
さじを投げたくなりませんか。
仮にやったとしても共感を得ることは難しく、不誠実な主人公、
移り気が酷い主人公、誠○ね等のそしりは避けられません。
スクールデイズの主人公なんてまさにそれですし、三角関係が問
題になる作品もそうです。
これの平和的解決策というのは数が少なく、相思相愛になる前に
ヒロインを増やして、接触機会を累計で並ぶようにし、同様に魅力
に当てられるのも並ぶようにしていく、というのが基本路線です。
少年漫画によくあるのは、主人公側がどのヒロインにするか決め
られない、です。
相思相愛になる前にドンドン増やしていき、増やしたキャラのス
トーリーを増やす。
これの問題点は、ストーリーを減らされた初期ヒロインの影が薄
くなることですが、仕方ないことですね⋮⋮。
でも。
実際にやってみるとこの問題が大きくなるのです。
小説を書く上で、メインヒロインの影が薄くなるというのは、ス
174
トーリーの崩壊に直結します。
これをバランス良く行っていくのは大変難しい。
まず、接触機会と魅力に当てられる話を均等にしなければなりま
せん。
そして、影が薄くならないように工夫に工夫を重ねます。
基本的な手法は、ヒロイン同士を強烈に結びつけ、ヒロインの一
人の出番を作ると、他のヒロインの出番も自動的に作成される状況
を作ることです。
つまり、ヒロイン同士は親友だったり、姉妹だったり、極端にい
けばレズ関係だったりするのです。
過去の因縁があって、ストーリーを掘り下げるうちに繋がり合う、
というのもあります。
とにかく結びつける。
こうすることで、影は薄まらず、ヒロインの魅力が別方向からや
ってきて、主人公側の好感度が上がるようにするわけですね。
でもこれを5人一気にできるでしょうか?
初期ヒロインと相思相愛に持って行くまでの間に、これを行って、
最後に出てきたヒロインに主人公と接触と魅力付けを十分に行う。
しんどいですよ。
本当に。
ハーレムってチート小説のイチ要素なんじゃないですか?
違いますよ。
これだけで一本の小説が成り立つ、凄い技術の集大成なんです。
世の中の漫画家を見て下さい。
どれだけのハーレム漫画を目指して、人気が出ずに力尽きていっ
たことか。
世の中の小説家を見て下さい。
175
どれだけのハーレム要素を作ろうとして中途半端になり、初期ヒ
ロインだけで⋮⋮と妥協したことか。
大変に次ぐ大変。
ハーレムとはテンプレだからと安易に手を出すと、減点要素にし
かならない。地雷です。
考えるのなら慎重に。
176
E − テンプレに不信を抱く︵主人公はモテる and ハー
レム︶︵後書き︶
見てわかるとおり、ハーレム要素が好きです。
同じことを考えている紳士も多いのでは無いでしょうか。
私だけでは無いはずです。
無いはずですよね⋮⋮?
177
F − 小説を書く上での基本的な姿勢
他の人がどうしているのかよくわからないので、正しいとは言え
ませんので、ご注意下さい。
まず私の場合は、同じジャンルの小説を調べます。
結果的に良いものがあればそれでよし、無ければ探します。
知らないものは書きようが無く、良いものを知らなければよくし
ようがない。
とどのつまり、こういうことです。
異世界系統ならどういうものが良いのか。
ハーレム系統ならどういうものが良いのか。
恋愛系統ならどういうものが良いのか。
私は初心者ですので、自分なりの書き方なんてありません。
参考にして、考える。
これしかありませんでした。
良い作品を考察して理解するというのは、非常に参考になる行動
です。
無駄なく違和感なく、話を進めて、展開していく。
技術と経験に裏打ちされた、すごいことです。
これは小説を作るのと逆に考えれば大体わかります。
小説から、目標地点を探し出し、分解されたものをドンドンと結
合し、単純化して、長期中期短期の目標を見つける。
その行程で、作者の凄さとねらいが大体分かります。
これを参考にする。
178
上手く完全にはできないかもしれませんが、ゼロよりイチ。
自分の物にできたら最高です。
小説を書く上で、考えるタイミングというのはいつでも転がって
います。
粗筋を考える最初のとき。
書き始めてから迷ったとき。
新しい展開が欲しくなったとき。
目的地がわからなくなったとき。
上手く書く方法が見つからなくなったとき。
こじつける物が無くなってしまったとき。
こういったときはとにかく粗筋から序盤、中盤、終盤を読み返し、
伏線がないか探します。
無意識のうちに書いているものもあれば、当時伏線として書いた
ものもあります。
とにかく言葉を探す。
あれば万々歳。
これだ、これで良い小説の道筋がひとつ出来る。
無ければ意気消沈ですが、諦めることは出来ません。
ならば考察。
発想と連想を繰り返し、書いたつもりがない自分=作者の気持ち
というのを探り出します。
こういった話を書いている。
なら普通はこう考えるが、もしかしたらこういった裏話が存在す
るかもしれない。
このキャラには裏設定があったのでは。
裏の裏の裏の⋮⋮。
179
果てしないですが、良いことはあります。
見つかります。
探せば見つかります。
バクマンという漫画家を目指す少年二人を描いた漫画があります。
その中で尊敬するギャグ漫画家の描き方、というもので、過去に
書いた自作を読み返し、伏線になりそうな微妙すぎる設定を探り出
す、という手法がありました。
それに似ています。
これをする上で必要なことはただひとつ。
詳細に設定を書きすぎないこと。
書いてしまえば確定します。
確定してしまえばどうしようもありません。
後付けだとなんだと言われようが、必要になったら後からしょう
がなく出す。
先出しは可能性が死んでしまうのです。
私の好きな小説にグインサーガという大長編があるのですが、そ
の中で誰もが認める偉大な王グインと、若くして王になったレムス
が登場します。
レムスはとにかく自信がない少年で、尊敬するグインに助言を求
めます。
良い王になるにはどうしたら良いか?
返答は、全力を出すな、10ある力は、平時では6、緊急時には
8を出せ。
疑問符を浮かべながら従うのですが、⋮⋮まぁ結果は言いません。
これの言葉は、無能とそしられようが、周りの人間が自発的に動
180
くことを期待した言葉だと思っています。
上司がダメなら俺たちがやらないといけない。
もちろん上司が良ければそれで良いのですが、部下が上司に頼る
ようになると負担は倍々的に増えていきます。
6の力でこの状態を切り抜ける力があるのなら良いのですが、1
0の力でこれでは緊急時には破綻します。
これを小説にも当てはめる。
作者は王です。
全力で書いてしまえば、困ったときに破綻します。
余力を残し、困ったときはそれに頼る。
10を示すときは無いかもしれません。
でも破綻するより、8でいた方がマシです。
余力を作りながら、力を抜いて小説を書く。
こんな姿勢が基本だと思っています。
無駄なく作る必要がある短編は、こうもいかないと思いますけど
ね。
181
G − 目が滑るのを防ぐには
ライトノベル、ネット小説、その他メールなどでは古典小説では
考えられない問題がいくつか発生します。
そのうちのひとつとして、読み手が文章を理解する努力をしない
ということがあります。
目が滑るという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
スラングに近い言葉なんですが、文字を目で追うだけで内容が頭
に入っていない状態を指します。
文字で何かを伝えるというのは非常に効率が悪いことです。
頭にあるものを言葉として吐き出す。
受け取り、正確に理解する。
どちらも高度な教養が必要で、大きな差異があれば伝わることは
ありません。
さて、これらの条件下で素人が文章を作り、頭を動かさない読み
手に理解させるにはどうしたら良いのでしょうか。
普通に小説を書いていては無理です。
そのため、少し条件を崩す必要が出てきます。
ヒキニートを書いていたときに試行錯誤した方法を書いてみまし
ょう。
ヒキニートの目標としては、読み流すだけで内容が掴めるように
することでした。
182
達成できたかどうかは分かりませんが、努力はしたつもりです。
小説として成り立ったかは微妙なところですが。
1.文章
普通の文章で段落とするものを、空白行から空白行までの一塊と
する。
文は基本的に短文とする。
2.内容
理解してもらうものはなるべく減らす。
独自の単語などは極力無くし、伝えるべき事柄を絞る。
3.論法
重点を最初に置き、補足、結論と続ける。
長くなる場合にはなるべく分けて、結論から重点へと続けていく。
4.放棄
どうでも良いことは途中で打ち切る。
全て理解してもらおうとは思わない。
5.繰り返し
大事なことは二度言う。
基本はこの方法に従って書いていました。
解説に移ります。
まず1は、横書きで見やすいというのもありますが、3を活用し
易いことでもあります。
箇条書きに近いことが容易に出来るので、頭を使わずに読むには
183
最適でしょう。
三段論法などという言葉がありますが、それには短文である必要
がありますし。
2は、伝える事柄を減らせば、説明は容易になるというもの。
至極当たり前のことですが、意識するのとしないのとではだいぶ
違ってきます。
イギリスにある建物を説明するにはイギリス英語を使って解説す
るのが一番ですが、日本人に対して行うなら日本語に翻訳してから
行いますよね。
それと同様に、意味の分からない単語を使って説明するより、分
かる単語を組み合わせて示した方が頭を使わずに理解できるという
ことです。
独自設定を作るよりも、よく使われる設定に補足して行うのも同
じです。
童話なんかでも意味の分からない独自単語は可能な限り減らして
いるでしょう。
小説としてはかなり使い古された手です。
3は、頭を使わずに文章を読むと、最初と最後しか内容を覚えて
いない、ということを利用したものです。
最初に話題を置き、次にそれはどういうことなのか、話を掘り下
げていき、最後に結論を置く。
その流れは三段論法に近ければ近いほど、頭を動かさずに済みま
す。
もし短文に収まらないようであれば、結論をもって次の段落で重
点項目、話題として扱えば良いでしょう。
とにかく結論を示すことが大事です。
184
小説の楽しみは隠された結論を探す事だと思いますが、いつもそ
うだと疲れますからね。
4は、非常によろしくないことなんですけど、私はよくやってい
ました。
展開をあまり練っていないせいで、どうでもいい内容が結構出て
きます。
そうなったとき、続かないように打ち切る。
冗長な説明になりそうなら適当なところで手を打つ。
1から10まで解説が必要なところを、3くらいで止める感じで
す。
考えるなら勝手にどうぞという餌だけばら撒く非道な行為ですが、
ストーリーに関係なければ便利な手でもあります。
作者という生き物は設定を誇示せずにはいられない、なんていう
言葉がありますが、この打ち切りが出来ないせいだろうなぁと思っ
ています。
ちょっと考えれば、自己満足だと分かることなんですけどね。
5は、いろんなものに言えることです。
まず、キャラクター説明。
私はだいぶ失敗しましたが、ヒロイン等については初回登場時の
みならず、随時容姿や特徴について表現する必要があります。
繰り返すごとに人物像が固まり、よく伝わるようになります。
これは仕草に入れ込んでしまうのが一番使われる手で、便利な方
法でもあります。
示すものは一回につき一個、示すたびに違うものを選ぶと多角的
になります。
髪、目、性格、物腰、シルエット、声、イメージ。
キャラクター重視なラノベの基本でもあるそうです。
185
次に、説明よりの会話文。
よく説明は会話に入れろと言われますが、実のところこれだけで
は微妙です。
行うべきは、最後にまとめを入れて、大事なところを繰り返すと
いうもの。
説明文はどうしても長々としがちですが、最後に一人称なら地の
文、三人称なら会話文の終わりにまとめるとよく伝わります。
つまり、○○ってことかね。
なんていう言葉をよく使いました。
ストーリーの重視すべき事柄でも行えます。
ヒキニートでは地の文で主人公の掘り下げを延々と行いました。
その中で、展開上必要な情報はそのたびに一言繰り返します。
序盤に言っていた内容を後半のシリアス場面で一度出すと、伏線
が活用された形になります。
俺が○○なのは俺が一番よく知っている、などという言葉はよく
使いました。
一言でも出すと、読み手もそういえばそんな事があったな、と思
い出してくれるので便利です。
繰り返すごとにイメージが固まり、ストーリーのメインとして示
せます。
ヒキニートは小説としてあるまじきやり方を行っていましたが、
読み流しても内容は結構理解できたのではないでしょうか。
難しい言葉を使い、古典に倣ったやり方をしたところで、目が滑
ったらどうしようもないですね。
186
G − 目が滑るのを防ぐには︵後書き︶
かなり失礼なことを書いていますが、私自身頭を使って読んでいな
いので⋮⋮。
187
H − 執筆環境︵有料、無料ソフトの紹介︶について
宣伝のつもりは特にありませんが、参考程度に紹介します。
まず、小説家になろうのブラウザ上におけるもの。
私はほとんどこの新規小説作成という機能で行っていました。
利点は高機能執筆エディタが使えることと、導入になんの苦労も
なくクラウド作業が行えることです。
スマートフォンやタブレットにて、多少の編集と投稿が出先で出
来るのは結構便利でして、書きためたあと、昼間に適当な間隔を空
けて投稿できるのは良いです。
一気に投稿してもあまり良いことは無いですし。
次に、ローカル上での作業用ソフト。
いろいろ試してみましたが、一番気楽なのはウィンドウズ標準の
テキストエディタ、いわゆるメモ帳です。
非常に軽快に動き、強制終了などがまず無い安定性の高さが良い
感じです。
またデフォルトの保存形式にすごい互換性があり、大概のソフト
で読み込めるので良いですね。
難点は表示される文字がすごく詰まっているので読みづらく、機
能がほとんど無いためにヒューマンエラーによる事故が防げません。
うっかり消してしまうとか、保存し忘れたとか、いろいろ。
アンドゥが無いのも結構面倒でして、一長一短が極まる印象です
が、使えるソフトです。
一太郎。
マイクロソフトのワードと対をなすソフトです。
188
とにかく日本語文書に強く、付属されるATOKという変換ソフ
トと合わせて、最高の誤字修正能力を秘めていますが、非常にお高
いソフトでもあります。
縦書き原稿用紙表示テンプレートの入手も面倒で、本気で書く人
以外には薦めにくいのですが、逆に言えば本気でやりたいならおす
すめです。
有料ソフトは便利ですが、ブラウザ執筆で満足していた身にはお
金を払うのがなんか嫌なので、フリーソフトも探しました。
一番良かったのはVerticalEditorというテキスト
エディタ。
縦書き原稿用紙で小説を書くことに特化したソフトで、小説家に
なろうなどの青空文庫系ふりがな︵|と︽︾を使うもの︶に対応し
ています。
アンドゥ︵UnDo︶という削除の取り消し︵Ctrlキーを押
しながらzキー︶と、取り消しの取り消しを複数回行うことができ、
機能的には誤字訂正機能がないだけで、ほかは満足のできる仕様で
す。
標準でテキストファイル形式の保存に対応していて互換性も良く、
軽快に動き、設定も分かり易い部類で、文字数のカウントもしてく
れる、文句なしにおすすめできます。
原稿用紙のサイズも自由に変更できるので、練習に好きな小説を
書き写すという作業でも行数などを揃えられるために、改行位置と
ページ数を合わせられるので便利です。
意外と簡単に縦書きができるソフトは少ないので、貴重な感じで
すね。
次は変換ソフトです。
Editor︶というもので行っています。
ウィンドウズ標準ではMicrosoftIME︵Input
Method
189
日本語入力をするときに変換一覧が出たりすると思いますが、そ
れのことですね。
私の所感としてはウィンドウズ標準は耐えがたいほどバカです。
漢字変換は二文字程度ごとに変換しないと、なかなか狙った文字
にたどり着きませんし、人名などのあまり使われない漢字は候補に
すら挙がりません。
iPhoneもひどいですけど、個人的には同等だと思います。
無料で入れられて、そこそこ賢いものといえばGoogleIM
Eです︵正しくはGoogle日本語入力︶。
Googleのサーバーに多数のユーザーや、Webサイトの変
換候補を集積してソフトに反映し、スラング等に対応するという、
検索ページの大手らしい力業を使っています。
50文字程度を一気に入力したあとの変換でも、結構意図通りに
変換してくれるので効率面の向上はすごいです。
問題点としては企業としてあまり信用が置けないところ。
この辺は書き出すと陰謀論と言われそうなので、気になる人は各
々で調べて下さい。
一太郎のところでも書いたATOK。
日本語変換ソフトのなかでも随一の変換効率を誇ります。
GoogleIMEと比較すると、スラング等の対応には劣りま
すが、その他機能では全て上回る感じですね。
最新版ですと、非常に長い文を書いてもそのまま変換出来てしま
うことが多く、使い続けていると癖を学習して使用者に合うように
なります。
また、オンラインの国語辞典や英英辞書、和英辞書などと連携し
たり、オフライン辞書と連携したりしていて、変換候補漢字の意味
を調べつつ比較し、どちらが良いのか判断出来たりもします。
GoogleIMEなどにもありますが、より強力ですね。
190
有料ソフトですが、月額500円で利用できますし、ストレス具
合がだいぶ変わってくるので大変おすすめです。
最後にクラウドでのデータ保存について。
マイクロソフトが無料で提供している、OneDriveという
ソフトがあります。
これはオンライン上に、自分専用のデータ保存フォルダを作るも
のです。
よくあることとして、パソコンが壊れたためにデータが飛ぶとい
うことがあるんですが、飛んだとしても保険を掛けておくことで、
なんとか持ち直そうというもの。
また、AndroidやiPhoneなどともデータを共有でき
るので、出先での編集も可能になります。
似たソフトはいろいろありますが、ウィンドウズ8から標準ソフ
トになりましたし、スマホなどのアプリも無料なので、一番使いや
すいのではないかと思われます。
視覚的にはただのフォルダがある感じですね。
テキストファイルくらいなら、このフォルダ上で編集してもなん
の違和感もないです。
以下は完全な趣味の世界に入ります。
私は肩こりが結構ひどい方でして、PCチェアはがんばって探し
ました。
いろいろ比べたところ、必要な機能はいくつか絞れました。
一番重要なのは、腕置きの高さを調節できること。
肩を自然に下ろしたときに肘が乗る高さにならないと、どうも凝
るようです。
191
次に背もたれがある程度倒れつつも、バランスを崩さず安定して
転倒したりしないこと。
体重を預けたら転倒するとか笑えません。
最後にあまり柔らかすぎないこと。
あまり詳しくは無いですが、尻の筋肉が緊張していると頭の働き
も鈍りにくいのだそうで。
学校の椅子などが硬い木で出来ているのはこのためらしいのです
が、真偽は不明です。
結果的にいま使っているのはコイズミSOHOファニチャーのJ
G−77384でして、長時間執筆していても疲れず、かなり快適
です。
近場に品揃えの良い店がないので、なかなか合うPCチェアが無
く、探すのは大変でした。
最後はAmazon頼りです。
次にキーボード。
安物から高価なものまでピンキリもいいとこなんですが、私の探
し方はゲーミングキーボードのなかから選びます。
安物でも耐久性が高く、反応が良いものが多いので、外れを引き
にくいところが良いですね。
私が買った印象だとシグマAPOや、ダーマポイントが安くて良
いものを出します。
シグマAPOのSCK88BKや、ダーマポイントのDRKB1
09BK/Cが気に入ってます。
取り留めのない話になりましたが、この辺りで終わります。
192
I − 感情移入をしてもらうには
■ 感情移入をしてもらうには
物語を書く上で、読み手に楽しんでもらうというのは非常に大切
なことです。
純文学ではともかく、それ以外では基本的に娯楽作品であり、対
象が著しく限定されることはあっても、どの作品にも必ず読み手と
いうものが存在します。
さて、楽しむ上で手段のひとつとしてあるのが、感情移入です。
物語に登場する人物の喜怒哀楽を、自分のものとしてもらうので
す。
戦いの興奮、恋愛の切なさ、敵への憎しみ、不条理への哀しみと
いった様々な感情の揺れ動きを、読んでいる自分も感じたとき、こ
の作品は面白いという気持ちに繋がります。
そんな感情移入ですが、これは闇雲に物語を書いたとしても、読
み手が自然に行ってくれるものではありません。
当然ながら、登場人物は読み手自身ではなく、判断基準や倫理観
などの様々な差異が存在し、そのたびに自分ではないのだ、と意識
するからです。
では、どうやって書いていけば良いのか?
ここには明確に技術というものが存在しますが、簡単な方法も多
いです。
それを少し紹介しましょう。
193
■ 一人称︵純正︶で書く
恐らく一番単純なやり方であり、なおかつ難しくもあります。
いわゆるSideなどの視点移動をまったくせず、主人公の視点
のみで物語を書きます。
視点が一貫すると、読み手の立場も一貫するので感情移入しやす
い環境になります。
難しいのは、仕草その他だけで他の登場人物の感情や思考を書か
ないといけないので、豊富な引き出しが必要となります。
劇のような多少大げさな行動をしてもらうことで、カバー可能で
すが。
■ 思考過程をとにかく書く
これも心がけ次第ですが、単純なやり方のひとつです。
何か物事を判断するときに、その登場人物︵多くは主人公︶の思
考過程を書ききってから、判断を下すシーンを書くというもの。
特に一人称小説においては必須の内容ですが、三人称においても
重要とされます。
前述した通り、登場人物と読み手の考え方は一致しません。
どんなに常識的なことでも差異は現れます。︵人は可能な限り殺
したくない、など︶
そのため、感情移入をしてもらうために、小説全体を通して﹁こ
の登場人物はこういう価値観や基準を持っており、そのためここで
はこういう判断を下した﹂とするわけですね。
ヒキニートだと、主人公はだいぶ偏った考え方の持ち主なので、
194
読み手を洗脳するくらいの勢いで書いています。
やり過ぎは良くないという割と当たり前のところも気にせずやっ
ていたので、そこは反省するところですけど。
過去世界やファンタジー、SFなどの現代物以外では、書かない
と意味がわからない状況にすらなり得ます。
文学系ではそこも推し測るところだとする向きもありますが、か
なり高度な技術が必要になりますし、読者層もかなり限定すること
になります。
ここで大事なのはふたつあり、思考過程はくだらないことでもな
るべく書き、短くても良いので高頻度で書くこと。
そして、最初から最後まで一貫することです。
前者は、多面的に主人公の価値観などを説明することで、理解度
をあげてもらうというもの。
特に似たような状況でも思考過程を再度書けば繰り返しとなり、
読み手も良く覚えます。
後者は本当に当たり前のことなんですが、難しくもあります。
成長したのだと作者は思っていても、急激な変わりようだとブレ
ていると思われてしまうのです。
ブレがなぜダメかと言えば、読み手は頑張って人物の価値観を覚
えてきたのに、それが無駄になってしまうのです。
﹁○○話ではこう考えていたじゃないか、なんだよこれ、ご都合主
義で突然アホになったのか﹂というのは読み手からすると嫌です。
物語上そうなってしまうのであれば、そのイベントは無しにしま
しょう。
ダメなら別の人物に解決してもらうか、初動をしてもらって主人
195
公は巻き込まれる形にするなど、判断が必要ない状態にしましょう。
判断が必要なければ思考過程もいらないので、安定はします。
主人公かその人物のどちらかに悪感情が募るのが難点。
■ 主人公を読み手に近づける
これも単純ですが、非常に効果が高いです。
理解してもらう差異を極力無くすことで、感情移入しやすい土台
を作るわけですね。
男性読者なら男主人公。
年齢層が20代後半なら社会人主人公、高校生なら高校生。
あとは比較的常識人か、極端に思考が偏った人物だとやりやすい
かと思われます。
男であれば、ある程度共通する考え方というのは存在します。
女も同様でしょう。
逆に理解できないところも存在しますが、ここできちんと理解で
きる思考過程を書けるかどうかで、異性にも読める小説かどうかが
決まります。
男の場合は、商業含めて作品がありふれているので、比較的書か
れていなくても理解できそうですが、女主人公の場合は難易度高め
です。
女心は男には理解できないことが多いのです。
年齢層の問題は、かなりあるものだと思います。
中学生に30代社会人の思考を読めと言っても難しいでしょう。
逆は経験談として理解できるかもしれませんが、世代が違いすぎ
ると理解できない可能性もあります。
196
高校生は敬語が一切できないと認識している人も多いですし。
常識人だと要するに中庸に近いので、万人に理解しやすいのは当
たり前ですが、極端に偏った人物でも﹁普通ならこう考える﹂とい
う先入観が薄くなるので、やりやすいです。
■ 読み手が想像しやすい事件にする
これは読み手の経験として感情が動いたことがありそうな事件を
書くというもの。
よくあるのは恋愛系統です。
あのとき自分はこういった気持ちだったが、この人物もそうなの
だろうか、といった具合で、多少小説に書かれていなくても想像の
範囲に収まります。
まぁ全く想像できない人種も割りといるので、効果はほどほどと
いったところ。
といってもありふれた事件ばかりを扱うわけにもいきませんので、
上手く配置する必要があります。
例えば、特殊な事件の中で、一部だけは万人に共通するであろう、
ありふれた感情の動きをする場面とします。
その一部以外は思考過程を念入りに書き、一部だけぼかした書き
方をする。
これだけでも、ある程度の効果は見込めます。
経験がない人でも、ありふれた題材ゆえに推測しやすく、感情移
入しやすいです。
例えば、ヒキニートで気に入っている娼婦と遊んだあと、後ろ髪
を引かれつつ別れるシーンがあります。
197
ヒキニートの主人公はだいぶアッパー系の人物で、結構な変人で
す。
遊ぶところに至るまでは思考過程をバリバリ書いていますが、別
れるシーンは少しぼかしました。
明確に書くよりも、経験に訴えた方が良さそうだと思ったからで
す。
こういった種類の、現代の日常生活で発生しうる経験は良く吟味
する必要がありますが、ここぞというところで使えれば、感情移入
を狙えます。
死別などはちょっと扱いが難しいですけど。
最初に書きましたが、読んでいて感情が動ける小説は面白いと思
います。
コメディ系も、楽しい感情が動いていますしね。
鬱系が好きな人は決して変人ではなく、感情が動いたことを楽し
んでいるのです。
小説を書くのなら、どんな変人主人公であれ、読み手に感情移入
させるのを狙ってみてはいかがでしょうか。
198
I − 感情移入をしてもらうには︵後書き︶
何度も言いますが、全てに適用する必要はありません。
こういうことを念頭に置きながら執筆すると良いでしょう、くらい
です。
199
J − 冗長的な文章は悪なのか?
◆ 冗長的な文章は悪なのか?
ヒキニートを書いていたとき、無駄が多いと言われたことが良く
あります。
確かに脱線が多かったのは認めますが、簡素すぎるのも好みでは
ないなと思うので、基本冗長的な文章にするよう、心がけています。
さて、ここでひとつ良くわからないことが発生しました。
ヒキニートはテンポが良い、文章が読みやすいということをよく
書かれたのです。
冗長的な文章であるのに、テンポが良くて読みやすいとは何故で
しょうか?
小説の書き方指南などでよく言われるのはこういう論法。
小説というのは書こうと思えば、いくらでも文章量は増やせます。
一歩歩くごとに、それこそ一挙手ごとに描写すれば良いからです。
なので、可能な限り無駄を省いて、文字数は減らしましょう。
確かにその通りです。
足を上げて下ろしたとか、立って座ったとか、特別な場面でない
限り誰も読みたくないと思いますしね。
しかしながら、簡素な文を心がけよというわけではないのです。
◆ 簡素に過ぎる小説の場合
200
﹁明日晴れるといいね﹂
絵里子は窓から空を見上げて言った。
﹁天気予報見ようか?﹂
僕は漫画を読む手を止めて、彼女を見る。
﹁不安がるのも楽しみのひとつなの。調べちゃダメ﹂
﹁そういうもの?﹂
﹁そういうものよ﹂
﹁子供らしくないな﹂
僕は笑いながら目線を下に戻した。
なんというか、独特の空気感を保とうとするあまり、不明瞭なこ
とが増えすぎました。
小説においては、行間を読むのが楽しみのひとつでもあるのです
が、これの場合、登場人物の心情を察するための情報が抜けすぎて
います。
動作で心情を察するのは、書き手読み手双方に高度な技術と教養
が必要です。
ライトノベルだからとにかく地の文を減らそう、というのは正し
いアプローチなのか?
心情を理解できる情報が抜けてしまっては何の意味もないのでは
ないか?
そう考えています。
◆ 冗長にするとどうなるか
﹁明日晴れるといいね﹂
絵里子は窓から空を見上げて言った。
201
声はいつもより弾んでいて、遠足前の子供みたいだ。
いつもは大人びている彼女だが、繁華街に行くのがそんなに楽し
みなのだろうか。
あんなところ、いつでも行けるだろうに。
﹁天気予報見ようか?﹂
僕は漫画を読む手を止めて、彼女を見る。
携帯を見ればすぐに分かることだ。いちいち気にするのも効率的
じゃない。
そう思って見上げてみれば、窓から見る夜空は星がたくさん見え
て、どう見ても晴れ。
明日もどうせ晴れかなと思われた。
﹁不安がるのも楽しみのひとつなの。調べちゃダメ﹂
絵里子は窓に背を向けると、窓枠に腰を預けながら微笑んだ。
その声は幼い子供に物事を教えるような優しさに満ちている。
先ほどまで子供のような態度であったのに、今ではすっかりお姉
さんだ。
こういうところがいつも敵わないなと思う。
﹁そういうもの?﹂
僕は効率を求めようとする心は不要だなと思い、じゃれ合う心を
引き寄せた。
彼女の前では僕は子供のようなものだ。大人しく従っておこう。
﹁そういうものよ﹂
202
妙なリズムを付けて言わないで欲しい。
これでウィンクのひとつでもあれば、本当に大人のお姉さんみた
いだ。
﹁子供らしくないな﹂
僕は笑いながら目線を下に戻した。
そこまで言うのであれば、僕も不安がる楽しみというのを実践し
てみよう。
今日の夜はなかなか寝付けないかもしれないな。
先ほどまで明日がダメでも来週でいいと思っていたのに、今では
すっかり明日が待ち遠しくなっていた。
大体こんな感じになります。
技術不足で心情を動作で表せない場合、心情を直接書き連ねる。
一人称であっても主人公の予想という形でいくらか書けます。
結果的に約5倍もの文字数となって、かなり冗長的ですが、私は
こういう方が好みです。
もちろん、これをさらに肥大化させることも容易です。
上記の文は、会話文↓動作↓内面描写↓意思決定↓会話文、とい
う基本構成で行っています。
ここから、会話文の間の行程を増やしてやれば良いだけなので、
単純に考えて倍に増えますし。
そういえば∼などと書いて、その場とは関係のない連想を行えば
簡単にできますね。
まぁこれは、私もちょっとどうかなと思うので、やめた方が無難
ですが、ストーリーに絡めることも不可能ではないので、やり方次
第でしょうか。
203
◆ 冗長にするのが難しい?
心情を直接書くのも難しい、という場合はどうか?
多分、そういう風になるのは、プロットや粗筋などの狙った着地
点にもっていけないことが原因と思われます。
登場人物はこう考えて行動するだろうな、というところを予想で
きなかったのでしょう。
無理に着地点を狙おうとした結果、間が書けずに空白にしてしま
ったという感じが多いかと。
解決策は簡単で、着地点なんか狙わず、適当に書けばいいんです。
こんなこと考えてないかもしれないし、設定にもないけど、面白
そうだからこうしよう、くらい。
結果的に話が予想をしない方向に転がることもしばしばあるかと
思いますが、そのときはそのとき。
無理やり方向修正するくらいなら、エピソードをひとつ増やして、
結末までに帳尻を合わせてしまいましょう。
ヒロインが風邪で寝込んだイベントとか追加して、感情のブレを
作ると結構簡単に方向修正できますし、その場に拘る必要はありま
せん。
◆ 三人称においてはどうするべきか?
私も最近三人称に挑戦しているのですが、三人称一元視点と呼ば
れるタイプは表現方法が多少異なるだけで、一人称と大差ありませ
ん。
動作については良く考える必要がありますが、心情を直接書くの
204
もルールに則れば自由に書けますし。
説明文を簡単に添付できる点は、自由度が跳ね上がっている感す
らあります。
そういった書き方をしない三人称俯瞰視点などの場合、グインサ
ーガのように、台詞を舞台調にすることで表現の幅を増やします。
グインサーガの特徴は台詞に感情をとにかく詰めること。
﹃ああ、ロミオ、あなたは何故ロミオなの?﹄的な台詞が多いで
すね。
一人称のように考えると、地の文に心情表現を任せきらずに、台
詞にも分担させているという高度な技術です。
台詞がクドいだとか、言い回しがクサいという難点はありますが、
私は大好きです。
さて、冗長の代名詞的グインサーガでも、日常会話などで毎回そ
んな言い回しをしているわけではありません。
ですが、三人称一元視点のようなセコイやり方はしないので、台
詞がまた特徴的です。
基本的には本音吐露が非常に、それはもうめちゃくちゃ多いです。
一人称の独白部分をほぼ台詞に入れ込み、一回の台詞が百文字く
らいは当たり前という感じですね。
これでも破綻しないのは技術の賜物なのかどうか、ちょっと分か
りませんが、舞台脚本のような台詞と合わさり、作品の持ち味にな
っています。
地の文に心情を直接書かない三人称は淡々と進みがちなのですが、
グインサーガは実に派手です。
小説の読み方をろくに知らない私でも、簡単に読むことができま
した。
205
文面を今風に直せば、恐らく読みやすいという評価をもらえると
も思えます。
どうでしょうか。
私は冗長的な文章は悪ではないと思っています。
素人であればむしろ推奨されてしかるべき、とも。
無駄を削っている方も、たまには気にせずダラダラ書いてみませ
んか?
206
J − 冗長的な文章は悪なのか?︵後書き︶
好みの問題でしょうが、ねちっこく書いてくれたら凄く面白そうな
小説って、なろうに結構ありまして。
特に短編は簡素な傾向が強いと思います。
もったいないなぁ、クドクド書いてくれないかなぁと思った次第。
207
K − 一人称における地の文の書き方を解説
◆ 一人称における地の文
前回、冗長的な文章について書きましたが、そういえば具体的な
文章の書き方について書いていなかったなと、いまさらながら気が
付きました。
説明しにくいことですが、頑張ってみます。
また、出てくる例文は前回のものをそのまま使ってます。
◆ 伝えることの難しさ
人間の話す内容などというのは正直信用のおけないものでして、
大概は大した意味を持ちません。
というより、読み取れないものです。
﹁明日晴れるといいね﹂と言われても、どういった意図なのか全
く分かりませんし、どんな感情の元に言っているのかすら分かりま
せん。
これに地の文にて、﹃声が弾んでいる﹄だとか追加で書かれたと
ころで、ようやく意図や感情が読み取れそうになります。
あくまで、取れそうになるレベル。そこから先は読み手の考えに
よります。
一般的に声が弾んでいれば、興奮している状態や、楽しい感情を
受け取ることだと思います。
208
上記の意味を、もし百パーセントあれば読み手が完璧に読み取れ
るとしたら、﹁明日晴れるといいね﹂だけだと精々十パーセント。
﹃声が弾んでいる﹄と追加されれば三十パーセントほどでしょう
か。
要するに、まだ足りません。
◆ 伝わる確率を上げる
さて、伝わらないのであれば、伝わりやすくする必要があります。
先ほど一般的にどうだという話をしました。
これを主人公はそう感じ取ったという風に、すり替えます。
つまり、地の文にて、﹃その声は弾んでいる。彼女はどうやら興
奮しているようで、なんだか楽しそうだ﹄という風にするわけです
ね。
こうすると、主人公からは彼女が上記のようだと感じている、と
いう表現になります。
さらに、読み手は、﹃声が弾んでいるのだし、実際その場にいる
主人公はそう感じているのだから、恐らく彼女はそういう気持ちな
のだろう﹄とアタリを付けます。
この辺りで、多分五十パーセントくらいまで上昇しました。
◆ 解説をつける
次です。
彼女の言葉はどうやらそういう意図なのだと、客観的には分かり
ました。
209
しかし、まだ足りません。
当事者たる主人公が解説をつけていないからです。
彼女と読み手の間には、酷い距離感があります。
言ってみれば、たまたまチャンネルを合わせただけのドラマ女優
が、適当な台詞を言ったのを見聞きしただけに過ぎません。
ベテラン視聴者からの解説がなければ、全ての意図は把握できな
いのです。
一人称小説においてはこれを当事者たる主人公に担わせます。
読み手が分かりやすいように、地の文で解説してくれるわけです
ね。
非常にありがたい。つきっきりでやってくれます。
どのような解説が入るのかと言えば、﹃いつもはこうであったが、
今はこんなだ。だから興奮しているor楽しみなのだろうと感じた
のである﹄といった内容。
こうしてみると、読み手もなるほど、と思います。
大体ここまで来れば七十パーセントくらいはいけそうです。
◆ 感想をつける
これは伝えることに繋がりませんが、次への布石として必要です。
見たまま聞いたままを書いているだけでは、主人公は傍観者にし
かなりません。
主人公に主人公の解説をしてもらうため、物事の感想を付け足し
ていきます。
こうすることで、読み手は主人公という俳優の解説を聞くことが
できます。
210
﹃あんなところ、いつでもいけるだろうに﹄と感想を付け足すと、
足りないながらも何らかの人格が見え隠れします。
繁華街に行くことに大して価値を感じていない、なぜ彼女がそう
感じているのか分からない、といった具合でしょうか。
ふわふわしていますが、布石と取るならこのまま続投して、次で
伝える確率を上げます。
布石ではなく、この場で解決するのなら、地の文を続けます。
﹃あんなところ、いつでもいけるだろうに。僕は正直あまりあそ
こに行きたくない。うるさいし、多すぎる人の波が邪魔だ。部屋で
のんびりしている方が楽しいと思う。一体彼女は何がそんなに楽し
みなんだろうか﹄といった具合です。
価値を見出していないということは、メリットデメリットの比重
が良くないということでしょう。
デメリットを挙げて、行く価値の無いところだとします。
そのまま書いても不自然でなければ、そのままで結構。同様に遠
回りで書いても良いです。
伝わる確率が上がればそれでオッケーです。
理屈っぽく書いてみましたが、順繰りに書いてみると大したこと
は書いていないのが分かると思います。
人物の意図や感情というのを予想してみて、地の文で表現する。
会話文だけだと無数の解釈が生まれます。それを制限していくの
が、地の文というものです。
書き手の解釈が超理論すぎ+地の文の解説も無くて、読み手には
211
理解不能だった場合、どうなるか、よくお分かりかと思います。
◆ 地の文を解釈する
上記は例文を区切っただけですが、地の文の書き方というのは色
々あります。
動きに感想をつけただけだったりも、よくあること。
主人公による主人公の解説であれば、もっと色々な形が考えられ
ます。
しかしながら、結局のところは上記のような形に収まります。
つまり、意図と感情の解説です。
私の例文ではなく、好きな小説を手に取り、記憶に残っているペ
ージを探してみてください。
地の文を良く読んでみましょう。
どのように解釈をしますか?
解釈はどういう道程で行われましたか?
◆ 登場人物の感情なんて分からんがな
確かに。
私もよく分からずに書いてます。
それでも成り立ってしまうのは不思議ですね。
これを書きながら考える、と言います。
練習として、お題の会話文をひとつ用意します。
212
﹁明日晴れるといいね﹂が私のお題でしたが、なんでもいいです。
﹁風が気持ちいいね﹂でも、﹁約束、覚えてますか﹂とかでも。
十回以内に会話が終わるくらいのネタがベスト。
会話文それぞれは幾通りもの解釈を得るために、二十文字以内の
短い文にしましょう。
長いとやりにくいです。
次に、会話文がひとつあったとして、読み手として読んだとき、
どう思ったか?
一般的にはこういう気持ちで言ったんじゃないの? という予想
をいくつか立てます。多分、無限にあるうち、数通りはすぐに思い
つくはず。
その中で適当にひとつを選びます。
やった、登場人物の気持ちが分かったぞ!
終わりです。
分かったら前述のように地の文で書き散らしましょう。
これでさらに分かったぞ!
ついでに主人公の気持ちもなんとなく道筋ついたぜ、ラッキー!
次です。
会話が進むにつれ、登場人物の考え方というものに制限が掛かっ
てきます。
理解度が進んだということです。
解説を減らし、感想文を多めにしていきましょう。
物語のオチが見えてきます。
幾通りかオチが考えられると思いますが、適当に選びます。
完
213
投げやりみたいですが、練習としては結構やりやすいです。
大きなネタでやってももったいないので、どうでもいいネタで書
いてみましょう。
時代背景とか考えるのはすごーく面倒なので、現代で、かつ、す
ぐに思いつく人物。
欠陥がある人物の方が得てして書きやすいので、学生がお勧め。
推敲は適当に。次に行った方が効率は良さそう。
そのうち登場人物の感情を考える癖が付いてきます。
書いてるうちに理解することもままあるでしょう。
私はイマイチ、書き写すことで技量が上がるとは思えないので、
こういった適当なネタでとりあえず書いてみるというのをお勧めし
ます。
いくら読んでも、書いてみないと解釈の仕方っていうのはなかな
か理解できませんので。
214
K − 一人称における地の文の書き方を解説︵後書き︶
練習なんて適当かつ気楽が一番です。
上手いこといった人物が出来たら、長編にでも流用しましょう。
見せびらかしたくなったら短編で投稿しても良いくらい、小説家に
なろうは懐が大きいですからね。
215
L − 地の文を書く練習に長編が適さないのはなぜか
◆ 地の文を書く練習に長編が適さないのはなぜか
前回、練習には小さいものが良いとしました。
これには理由がいくつかありますが基本は、効率が全くもって良
く無いから、です。
◆ 感情の動く場面が必要
地の文を練習するのにはまず、感情を書く必要があります。
ですが、長編のものになると舞台説明や、人物説明などが最初に
立ち、主人公解説やバトルシーンなどが来てしまうため、練習に入
るまでの時間が非常に掛かります。
こういったシーンでは状況はともかく平静としがちであり、感情
を書く余地はあまりありません。
一万文字も書いて、ようやく練習に入れるかと思うと、ぞっとす
ると思います。
◆ なぜ必要か
感情の揺れ動きが無いようだと、地の文の役割は意図の解説に終
始します。
もしかしたら、会話文に動きを追記するだけ、にもなる可能性が
あります。
216
つまり、キャラクターの感情を理解するという練習ができません。
前回も述べましたが、感情を書くことで理解は深まります。
練習をする程度の実力だと思うのであれば、初期設定だけですん
なり理解できるわけではないでしょう。
理解する手順を覚えることで、地の文の洗練さも増します。
◆ 練習は手のひらの上が良い
文章を書いていると見直しをしたくなります。
自分の書いた文章ですから、読み直しをしたくなりますし、読み
直していれば気になる部分も出てきます。
気になったら直すのが人間の心理であり、書き始めというもの。
また、小説を書こうと思ったわけですから、理想とするものがあ
るはずです。
比べてみて、稚拙であれば直したいでしょう。
そのとき、読み直すのに何十分もかかるようでは、たまりません。
小さければ整合性を保とうとするのも容易です。
先ほどどう書いたかも記憶に留まりやすいでしょう。
簡単に手の届く範囲が練習には適しています。
◆ 長編はベテランでも書くのが難しい
本文で書き続けること、完結することが難しいと書きました。
何ヶ月も取り掛かる以上、いろんな障害があります。
練習作に長編を選んで完結した場合、ひとつでいろんな経験はで
きますが、完結できなかった場合は丸損です。
217
◆ 捨てるのが気楽
思いついたけど書けないネタ、というのは往々にして存在します。
これが長編でくると、設定その他が丸損です。ショック凄いです。
その点、どうでもいいネタからスタートするのは、かなり気楽で
す。
凄く良い作品しようという意気込みもありませんから、ささっと
書いて、単純な文章の見直しが出来ます。
意気込みがあると、目が曇って悪く見えません。
◆ 何個も書くと気分が良い
たとえ短かろうが、一作は一作。
書き終わると結構な爽快感があります。
どのくらい時間が掛かるかは人によりますが、五百文字でも数十
分はゆうに掛かるわけで、その結果が物としてある状態は、精神的
に非常に良いことです。
こうして爽快感を得ていると、文章を書く楽しさというのが芽生
えてきます。
◆ 批評してもらうのが容易い
短い文というのは、当たり前ですが、読む時間が少なくて済みま
す。
また、ヒキニートみたいなのを書いていた私が言うのもなんです
けど、現実の知人に見せるのが容易です。
218
変態的なものを読ませるのは気が引けますから、小さいネタなら
単純な文章の良し悪しを判断してもらえます。
メッセージなどで送るのも容易ですし、なろう内で交流する際に
も良いでしょう。
短篇集という形で投稿するのも良いかもしれませんが、それを知
人に見せた場合、今後変態的なものは書けなくなりますのでご注意
を。
ということで、練習には短いものをお勧めします。
効率は大事です。
人間、思っていたより持続力はありませんから。
219
L − 地の文を書く練習に長編が適さないのはなぜか︵後書き
︶
オチを付ける練習だとか、小説を書く練習だとか言って書くのは面
倒ですが、地の文の練習として割り切ると案外書けます。
前者はストーリーの良し悪しが入ってきますが、後者は単純な技術
のため。
220
M − 地の文の流れをテンプレ化する
◆ 地の文の流れをテンプレート化する
地の文は小説の根幹に至る技術で、センスが問われるところだと
いうのには異論の余地はないかと思われます。
しかしながら、技術である以上、ある程度のテンプレート化は可
能なはず。
それを求めてみようかと思います。
エッセイである以上、私の偏見が混じりますが、その辺の判断は
お任せします。
◆ 地の文の役割 ﹃注意﹄理由は後述しますが、例文は悪文で
す。
まず初めに地の文は、前にも述べた通り、無数にある解釈を制限
するためにあります。
基本的に長ければ長いほど制限がキツくなり、方向性が絞られま
す。
方向性を絞り過ぎないために遠回しの表現を重ねて、けむにまく
ような表現も多いでしょう。
これは文学に多い傾向とは思いますが、ライトノベルでもよくあ
ります。
しかし、意味も無く長いと読み手が理解する情報量も増えるため、
読みにくいと判断される確率も高くなります。
221
一言で﹃アイツはウルサイ﹄と書くところを、
﹃あそこでいかにも高校生らしい喋り方をしている、笑い声が必
要以上に大きな男は、このクラスでも指折りのスポーツマンである。
県大会の順位がどうとかいう話をちらと聞いたことはあるが、詳し
くは知らないし興味もない。ただ同じクラスであるというだけの僕
が知るのは、休み時間になると決まって同じ人種で寄り集まり、あ
のように大声でどうでもいい会話を周囲に撒き散らすということだ。
暴力的ではないのが唯一ありがたいと思うことである。だが、害が
無いというわけでもなく、実際、僕はいま不利益を被っている。昼
休みで眠いのに寝付けないということだ。まったく少しは静かにし
てくれないものだろうか。もし携帯式防音室が売っていたら買って
きてあげるから、そこに入って出てこないで欲しいものだ。ただし、
小遣いで買える範囲でよろしく頼む。そんなことでバイトはしたく
ないゆえに﹄みたいな内容で書かれても、意味がなかったらびっく
りします。
仮に書くとしたら、今後物語に出てくるキャラクターということ
でしょう。
それはともかく、長ければ読みやすいように情報は整理して示す
必要があります。
これがテンプレート化すべきところであり、技術の現れるところ
でもあります。
◆ 流れをテンプレート化する
地の文において、多くの作品は先頭に動きを置きます。
どういう事かというと、先ほどの文であれば、﹃あそこでいかに
も高校生らしい喋り方をしている、笑い声が必要以上に大きな男は、
このクラスでも指折りのスポーツマンである。﹄になります。
222
つまり、カメラがあったとしたら、その場面で映しだされる物と
いうことです。
基本的には一文、多くても二文で書かれ、多すぎる場合はかなり
の割合で間に他の文を入れて引き離されます。
仮に文もテンプレート化するのであれば、﹃○○は□□した。﹄
﹃△△と言いつつ、僕は□□した。﹄などになります。
要するに情景描写と呼ばれる文を置けばよく、動詞を無理やりで
も入れ込めばそれっぽくなります。
◆ 流れとは
長い文章を構成する際、念頭に置くべきことがひとつあります。
関連する言葉は、可能な限り近くに置くこと。
これです。
単純な話、人間はあまり記憶力が良くないので、間に別の話が入
ればすぐに忘れてしまいます。
もちろん思い出すことも出来ますが、数秒でも時間が掛かれば詰
まります。
つまり、読みにくいと判断されるわけです。
文章には流れというものが存在します。
前の文で書いたことは、次の文に関連することである、というも
のです。
ある男について書いたのなら、次もある男の話が続きますし、あ
る男はスポーツマンだと書いたなら、それに関連することを書きま
す。
そうして文章に流れが出来、詰まらずに読めるものとなっていき
223
ます。
一文目には流れが存在しないので、カメラのような動きが必要と
されるわけですね。
◆ 動きの次の流れ
カメラが焦点を合わせたのなら、次はその物体について語らなけ
ればなりません。
語る人物は一人称か三人称かによって変わりますが、基本的には
一般的に見てどうか、という点を書き連ねます。
焦点が喋っていることなら内容や相手、スポーツマンということ
ならどんなスポーツマンか、など。
一人称で主人公が一般的でないならそれに沿う必要がありますが、
それは例外とします。
焦点を見極めて、それについて語ることが重要とされます。
なので、焦点を見極めにくい前述の例文は悪文でして、先頭の文
である動きは簡潔明瞭であることが読みやすい文章と言えます。
名詞と動詞くらいしか無い程度の文が優良でしょう。
動きから流れの一文を書いたことで、地の文の流れが出来始めま
す。
◆ 流れ始める
動きの次に、その焦点に合わせた文を書きました。
これで流れは始まります。
224
次にすべきは、流れを止めないこと。
一般的に見てどうか、という内容を書いたなら、次に語り手はど
う思うかを書きます。
一人称においては主人公、三人称においては色々です。主人公だ
ったり周囲の者だったり、﹃神視点の神﹄であったり。
基本的には主義主張となり得るモノを書きますが、単純にこの人
物ならこう思うだろう程度で良いです。
書き方も自由度がありますが、端的に示す、迂遠に示す等の方向
性は一貫すると持ち味になるでしょう。
漫才でいえば、ツッコミに当たると思って頂ければ良いかと。
ここも流れを止めないよう、焦点を見極めて、それについて語る
と良いでしょう。
概ねここで作者が何を言いたいのかが決まるので、アイツはウル
サイと言いたいならそう書くべきです。
長く書くのであれば、一文で収まることも少なく、二文三文と続
くことも良くあります。
きちんと流れを作り、言いたいことに至るよう調整しましょう。
◆ 言いたいことを書いたら
最後には、次の地の文や会話文に繋がるような内容を書くか、地
の文全体を要約するような結論を配置します。
迂遠な文は味がありますが、結局何が言いたいのか良くわからな
いこともしばしば起こります。
その際に結論を示すと、ああなるほどねとなり、首をひねること
が少なくなります。
225
次に繋がる文を置くのは流れがさらに活きるからです。
例文だと最後まで結論が何なのか良く分かりません。
内容としては﹃アイツはウルサイ﹄というものなのですが、迂遠
に書いたあげく、良くわからないことで締めています。
これで次に出てくる文にバイトなどが関係なかったとしたら、悪
文もいいところですね。
ここで注意したいのは、結論と言いたいことは大体似た内容にな
ります。
言いたいことで締めても問題ありませんので、無理に書く必要は
ないということでもあります。
◆ 分かりやすい文章
良い文章かどうかは置いておいて、分かりやすい文章というのは
存在します。
初めと終わりの文で何が言いたかったのか分かること。
これです。
というのも、初めと終わりは良く覚えている内容でして、﹃誰が
何をした﹄というものと、﹃つまり何が言いたいのかといえば○○
は○○だってことだ﹄みたいな文があれば、まぁまぁ理解できます。
迂遠に書きまくった挙句、作者も分かりにくいと思ったら、こう
いう構成も試してみると良いでしょう。
接続詞を使うとより分かりやすいですが、頻繁に同じ接続詞を使
うのも芸がないので、そこは頑張りどころです。
効果は高いのでお勧め。
226
◆ つまり
グダグダと書きましたが、結局のところの構成は大体こうです。
1.情景描写
2.語り手による補足
3.内面描写
この順番を守る限り、ある程度の読みやすさは保証されます。
ただ、繰り返しのような形となって、無駄だと判断されれば、い
くつかカットされます。
カットする場合の大前提は、書かなくても分かること。
一人称なら﹃僕は∼と思った。﹄と丁寧に書かずとも、﹃∼。﹄
だけで読める場合は多々あり、三人称でも起こり得ます。
また、情景描写をカットして内面描写だけを書くのも多々ありま
す。
逆に情景描写だけのこともあります。
その辺りの感覚は各自によってしまうのでなんとも言えません。
しかし、これが味とされる事は非常に多く、逆にまったくカット
しないような小説は退屈とも言われてしまいます。
小説の流れを鋭く見極め、要不要を分けていくことが洗練された
文章の第一歩となるでしょう。
227
M − 地の文の流れをテンプレ化する︵後書き︶
簡潔明瞭な﹃動き﹄を先頭に置くのは大事です。
どんなに迂遠な表現をしようと、これがあるだけで読みやすさは抜
群にアップしますし、書きやすくもなります。
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N − 書き出しにおけるテンプレート
◆ 書き出しにおけるテンプレート
小説を実際に書き始める上で、書き出しというのは大事です。
何せそこで気にならなければ閉じてしまいますし、どのような技
量があるのかも見られてしまいます。
つまり、期待値を測られているわけです。
しかしながらそれ以上に気にするべき項目があり、読み手が苦労
なく作品に入れるか否か、というもの。
バトル系小説には、能力やスキルを用いた戦闘というのはよくあ
るかと思われます。
そういった物は得てして派手になり、興奮するものですが、安易
に書き出しで用いるのもよくありません。
そのスキルはどういったものなのか、なぜ使えるのか、世界の中
ではどういったレア度の立ち位置なのか、など説明が必要になって
くるからです。
もちろん、こういったことを自然に読ませる技術はあるでしょう。
しかしそれは、意識的に自然に読ませるよう書かなければならな
いことでもあるということです。
さて、苦労なく作品に入れる書き出しとはどういったものか。
少しばかり検証しようかと思います。
◆ 一人称小説における書き出し
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簡単に言うと、吾輩は猫であるパターンが良いかと思います。
どういうことかといえば、主人公の現在の状況を交えつつも、ど
ういった性格と技能を持っている主人公であるのかを、独白をつら
つらと重ねる形で読み手に示すパターンです。
吾輩は猫であるだと、主人公は猫であり、元は野良猫、たまたま
家に入り込んでも飯を盗む邪魔者扱いで、追い出されるところを書
生の旦那に許されて家に上がれた、楽天家で人間のことなんてよく
知らない呑気なやつ、という感じです。
こういった書き方で大事なのは、一種のコメディ色をつけること
と、主人公が独白の中でも動くことです。
というのも、基本的に動きのない小説は退屈なものでして、作品
に入るのも苦労します。
教科書染みた説明文が嫌われるのもここにあり、動かないことは
一種の害悪と捉えて貰っても構いません。
それを凌駕するほどの技術があればもちろん別ですが、多くはそ
うなりませんし、大概の作品は動きが見えることでしょう。
コメディ色を付けるのは大変難儀ですが、主人公がいたって真面
目であることと、常人とは少し考え方が違うところを書き記せば、
まぁまぁ及第点になります。
吾輩は猫であるだと、猫と人間の考え方が食い違うところなんか
がそうですね。
ヒキニートの書き出しは、吾輩は猫であるを参考にしており、個
人的には及第点だと思っています。
タイトルの付け方からして少々反則気味ですが、先頭に端的に主
人公を示す言葉を置き、現在置かれている状況を書いていきます。
現在は無職であり、そのことをあまり気にしていない楽天家で後
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悔などはしないタイプ、それまでは一応仕事をしていて人付き合い
の難儀さから退職したこと、快楽主義かつネットコンテンツの消費
者といった感じになります。
動きとしてはパソコンを弄っていたりする辺りです。
コメディ色の付け具合は微妙なところですが、ツッコミ役を読み
手に委譲する関係上、真面目に馬鹿を独白しました。
普通に考えたら無職歴一年経過していると焦ってくるものですが、
無し。
気持ち悪いくらいの快楽主義でうわぁという感じも出しますが、
本人は気にせず、といったところですか。
常人と違うことを、当たり前と思っているだけで結構コメディに
なります。
◆ 他の書き出し
さて、一人称はこのタイプしか無いのか、といえばそうでもあり
ません。
自らを掘り下げるタイプはこれ一択だと思いますが、対話が多い
タイプもあるので、そちらを考えるのであれば会話文から始めるタ
イプもアリでしょう。
たとえば、幼馴染みのヒロインと会話しつつ、両者の考え方や立
ち位置というのを示すタイプ。
世界が狭いタイプの恋愛物に適した形で、二人の関係を延々と掘
り下げるストーリーだと相性が良いです。
二人一緒に導入で少しだけ説明できることと、動きを付けるのが
難しくなく、ストーリーの中核を書き出しに示すことによって読み
手の興味を惹くことが可能だからです。
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逆に言えば、二人一緒に説明しない、動きを付けない、ストーリ
ーの中核を持ってこない、といったことをすると、意味が急激に薄
れます。
特にストーリーの中核を持ってくることは大事です。
一昔前に流行ったものだと過去の約束場面だったり、離ればなれに
なってしまう場面だったり、という回想系が良くありました。
少し不思議なストーリーだとこれが本当に鉄板でして、このあと
に主人公の日常シーンを兼ねて遅ればせながらも説明していく、と
いうのが広く支持されましたね。
◆ 一人称でバトルを先頭に
バトルを先頭に持ってくるタイプもあるだろうという声があると
思いますが、これは吾輩は猫であるタイプの亜種です。
動きが派手になり、主人公の状況説明をかなり薄くしただけとも
言えます。
多くはバトル描写を数百文字から千文字程度書き、主人公の日常
シーンに移ります。
利点はファンタジー色を示すことができ、導入から期待されるシ
ーンに至るまでが遠い場合に使えるというところ。
本文でも述べましたが、ファンタジーやSFならさっさとそうい
う描写をしないと不味いです。
ロボバトルモノも大概はロボバトルを書き、誰かの日常シーンに
移ります。
異世界トリップであれば落差としてすぐに用意できるので、完全
に悪手だと思いますが、そうでないなら効果的です。
特に未来であるという状況を書かないといけない、VRMMOモ
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ノなどの初期導入が遅くなりがちなタイプでは良く利用されるでし
ょう。
大事なことは、吾輩は猫であるパターンで説明することを、バト
ル描写で説明することに変えたのを忘れないこと。
ことことうるさくなりましたが、忘れたら駄目です。
主人公はどういった人物なのかを書かないといけません。
ただわーきゃー騒いで派手にしたところで、意味はありません。
次の日常シーンで説明していく主人公を、前もって示しておくシ
ーンだと思ってもらえれば良いでしょう。
◆ 三人称における書き出し
こちらも鉄板はあります。
主人公を遠くのカメラから映し、少しずつ接近させて、客観的に
見てどういう人物かを書くこと。
そして、会話や独り言などを通じて、内面を少し見せることです。
説明すべき内容は同じですが、内側から見せるか外側から見せる
かの違いが大きく、書き方は多彩です。
主人公最強系であれば、その世界の一般的な強者︵盗賊など︶の
視点から、主人公を書いていきます。
こうすると一元視点であっても客観的に説明でき、強いというこ
とも示せて良い塩梅です。
そうでないなら、前述したような書き出しで説明していき、何か
しらのイベントで内面を掘り下げます。
多くは一般人との会話であり、そこから主人公は常人とはどう違
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うのかを示します。
会話がないのであれば、独り言を違和感がないように出し、それ
を地の文で補強する形になりますね。
大事なのは、客観的に見てどういう人物かを最初に出すことです。
地の文はどうやっても客観視が強くなりますので、一人称のよう
に書いていたら違和感が凄いです。
あくまで遠くからそろりそろりと近づき、内面を覗く。
こういった形が作品に入りやすい書き出しとして支持されていま
す。
◆ 三人称でバトルを先頭に
これに大事なことは少ないです。
一人称にも言えることですが、名前を見てもよく分からないスキ
ルの応酬に終始する戦闘は出すなというレベルですかね。
主人公の能力が一般的に見ていかに強力かを書くのも大事ですが、
何より予備知識のない読み手に対し、客観視している状態だけで凄
いということを認識させないといけません。
剣戟をしても凄いかどうかは判断しにくいですし、魔法を打ち合
うのも当たり前の世界かもしれない。
そのため、一般的に見て強者を敵役に置きます。
悪手は、敵役までも、どの程度強力か分からない状態であること。
いきなりラスボスとの対決になった場合に多い状態なのですが、
読み手は作品の世界観で両者がどの程度の強さの立ち位置なのか分
かりません。
その状態で凄い凄いと言われても、置いてきぼりになり易いです。
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もし、この状態からスタートするのであれば、タイマン勝負にす
るのではなく、横に第三者となる一般人を配置しましょう。
戦士や騎士などの、普通に考えれば強者の部類とされる仲間が良
いと思われます。
彼らに視点を置き、理解しがたい戦闘が行われていると説明させ
ると良いでしょう。
噛ませ役と言われそうですが、仕方がありません。
強さとは比較しなければ分からないものですし、最初に比較すべ
き現実の自分=読み手が存在しないファンタジーであれば、第三者
を用意するしかありません。
強さではなく、美しさなどを置く恋愛物でもそうです。
第三者から見ていかに美しい人物、魅力的な人物であるかを書か
なければ、美しい美しいと言われたところで、美しい人物しか存在
しない世界だったらどうするというのか。
比較対象は大事だということです。
◆ 結局どういうことか
長くなりましたが、書き出しは基本的に主人公の説明をすべきと
いうことです。
SFであっても主人公の説明をしながら世界観の説明をしていき
ます。
ダラダラと書いたところで意味はなく、動きを絡めるには主人公
のついでが良いという感じですかね。
説明すべき内容は、主人公が常人と違う点、性格、置かれた状況
が基本になります。
一人称で迷ったなら、吾輩は猫であるパターン。
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三人称で迷ったなら、それを客観視した形。
バトルで開始は加減が難しいので、よく考えましょうといったと
ころですか。
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N − 書き出しにおけるテンプレート︵後書き︶
テンプレになる理由を考えようという話かも。
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PDF小説ネット発足にあたって
http://ncode.syosetu.com/n7577by/
小説の書く方法をイチからヒャクまで
2016年7月21日17時07分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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