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タバコの害から子供を守りたい p168-72
タバコ の 害 から 子 ども を 守 りたい (第一章 禁煙の意義 社会編) 武蔵ヶ丘病院 看護師 藤本恵子 要約 1.熊本市内の一般的な公立小学校における PTA 広報活動を通した活動で、タバコ に関する情報を収集した。 2.家族内喫煙率は 60%であり、子ども達の身近にタバコが存在していた。 3.喫煙する親の 66%は「大人になっても子どもにはタバコを吸ってほしくない」 と回答し、親としての複雑な気持ちが垣間見えた。 4.PTA 広報活動による情報を基に「初めの1本を吸わない知識」をテーマとした 講演を行っている。 5.講演は非常に有用であり、今後は定期的な講演活動を継続するための教育現場 とのネットワーク作りが重要であると考えている。 キーワード: キーワード : PTA 活動、 活動 、 始 めの1 めの 1 本 を 防 ぐ 、 喫煙予防、 喫煙予防 、 教育現場、 教育現場 、 ネットワーク構築 ネットワーク 構築 1 . はじめに 近年、公共交通機関・公共施設・飲食店・医療機関などでの“分煙”や“敷地内禁煙” の取り組みにより、無煙環境が整いつつある。しかし、熊本県における教育現場の取り組 みは遅れているのが現状である。実際、入学式や運動会など催し事の度に、喫煙所が設け られ、大勢の大人たちが群れを成している姿を目にする。 このような中、病院勤務看護師の私は、喫煙者に対する禁煙支援活動ではなく、教育現 場において学童期にタバコに対するリスクを伝える事が、将来の喫煙者数の減少につなが るのではと考え、小学校の PTA 活動の一環でタバコの広報活動および防煙に関する講演活 動を試行錯誤しながら行っている。 2 . PTA 広報活動を 広報活動 を 通 した情報収集 した 情報収集 病院で禁煙外来の担当看護師として勤務していた私が、小学校で禁煙支援活動の取り組 みを始めたきっかけは、息子の通う小学校の PTA 広報委員になったことである。広報委員 ではテーマを決めて、アンケート調査をしたり、小学校の月刊新聞にコラムを掲載したり することが出来た。禁煙活動に興味のあった私は、「タバコに関する意識調査」を全学年・ 全家庭を対象に実施し報告した。 【アンケート調査について】 平成 18 年 10 月実施 アンケート配布 児童 567 名 回収 464 名(回収率 81.8%) 家族 567 家族 回収 278 家族(回収率 49.0%) - 168 - タバコに関する意識調査 結 果 は、大人に対 するアンケート結果より家族内喫煙率 60.1% 60.1% (167 名 / 278 名)と子ども達の身近 にタバコが存在する環境が垣間見えた。 さ らに 注 目する 結 果 として、喫煙者の 喫煙者 の 66% 66% ( 100 名 / 167 名 ) が 、「大人 「 大人になっても 大人 になっても子 になっても 子 ど も にはタバコ には タバコを タバコ を 吸 ってほしくない」 ってほしくない 」と 回答 し たことである。一度吸い始めると、 体 に 悪 い と 認 識してもやめにくいのがタバコである。 図 1 . 海外の 海外 の 受動喫煙防止啓発ポスター 受動喫煙防止啓発 ポスター タバコをやめられない親の 切 なる 願 いが垣間 見えた。 ま た、子ども達の 結 果 で 注 目したのは、タバコに対する「 イ メ ー ジ 」である。く さ い・ 汚 い・ 黒 いなどと 言 う、 臭 いや 色 から 悪 い イ メ ー ジ を持つ子どもが 多 い中、かっこいい・ 憧 れる … 、とテ レ ビ などの 視 覚 情報から喫煙 願 望 を持っている子ども達がいる事も 注 目す る 結 果 であった。 表 1 . 子 どもアンケート ども アンケート結果 アンケート 結果 Q タバコを吸う人をどう 思 い ま すか ? (対象者数 464 名、複数回答 可 ) 喫煙に関する 方 向 性 質 問 項 目 人数(名) 臭い 279 汚い 40 苦しそう 20 禁煙 へ の 志 向 黒い 52 かわい そ う 12 かっこ 悪 い 53 ム カ ム カ する 110 かっこいい 9 喫煙 へ の 志 向 憧 れる 8 落 ち 着 いている 6 このアンケート 結 果 を フ ィ ー ド バックするために、家族 へ は新聞で報告し、子ども達 へ は講演活動を通して報告した( 添 付 資 料 参 照 )。 - 169- 3 . 初 め の 1 本 を 吸 わない知識 わない 知識を 知識 を テーマにした テーマ にした情報提供 にした 情報提供 PTA 広報活動による情報を基に「初めの1本を吸わない知識」をテーマとした講演の 資 料 作成を行った。いかに 長 く 記 憶 に 残 る内 容 にするかに 工 夫 を 凝 らし 構 成を行った。 内 容 は 以 下 の通りである ① タバコ(煙)の 自 己 紹 介 ・ タバコの年 齢(500 歳 以 上 )・出身地(ア メ リ カ )・タバコの分 類( ナ ス 科 の 植 物 ) などを 紹 介 ・ 以 前 は 薬 として 使 用 さ れていたこともある ・ タバコが中 毒 になる 理 由 ( ニ コ チ ンの 説 明 ) ・ タバコが病気になる 理 由 (が ん ・ 慢 性 呼 吸 不 全の 疾 患 を通した 説 明 ) ・ 疲 れやすくなる 理 由 (一 酸 化 炭 素 が運動 能 力 を 確 実に 落 とすことを 説 明 ) ② 副 流 煙について ・ 受 動喫煙の 恐 怖 を、 CM 映 像 やスラ イ ド で 説 明 ③ 世 界 の中の 日 本・ 日 本の中の熊本 ・ タバコの 価 格 差 ・ 世 界 のタバコの 警 告 文 書 ・ 熊本県の 熊本県 の 公立学校の 公立学校 の 敷地内禁煙率の 敷地内禁煙率 の 低 さ ( 図 2) 日本の中でも、熊本の禁煙対策は遅れている? 全国公立小中学校の敷地内禁煙化率 (原田正平;国立成育医療センター) 敷地内禁煙化率(%) 100 90 80 70 60 熊本は最下位! (18%) 50 40 30 20 10 0 秋田 静岡 滋賀 宮城 香川 徳島 兵庫 沖縄 神奈川 愛知 栃木 東京 大阪 山形 京都 岩手 島根 岐阜 千葉 福岡 群馬 長崎 三重 熊本 「全国学校禁煙マップhttp://www.kawasakihttp://www.kawasaki-disease.net/~kinen/index.php」よりグラフ化して引用 ④ 図2. 全国公立学校の 全国公立学校 の 敷地内禁煙化率 始めの1本を 誘 われた 時 の 断 り 方 ・ はっきり意 思 表 示 … 「いらない」「私は吸わない」 ・ そ れでも 勧 められたら( 理 由 を 言 う) … 「 健 康 でいたいから吸わない」「 美 人で いたいから」 - 170 - ・ さ らに 勧 められたら( 科 学的 根 拠 を 示 す) … 「 走 る 能 力 が 100% 落 ちる ん だ よ」 「吸っている人も、 周 りの人も 必 ず 病気になるよ」 (講演後 記 ) 講演を 聴 いた子ども達に、どのような 反 応 があるか 楽 しみであり、 不 安 でもあった。し かし 話 し始めると、 思 いのほか 生 徒 達のタバコに対する関 心 度が 高 いことには 逆 に 驚 か さ れた。定期的な防煙講演を実施することが 希 望 であるが、学校の 日 程 調整が 難 しく、 繰 り 返 しの講演はなかなか実現しないのが現状である。しかし、講演を 聴 いた子ども達に「始 めの 1 本」の 誘 惑 が 訪 れた 時 、 何 か一つでも講演内 容 が 心 に 残 り、 躊 躇 する要 因 となれ ば ・・・と 切 に 願 う。 3 . 定期的な 定期的 な 講演活動を 講演活動 を 継続するための 継続 するための教育現場 するための 教育現場との 教育現場 とのネットワーク との ネットワーク作 ネットワーク 作 りの重要性 りの 重要性 今回の PTA を通した活動で、タバコに関する情報 発 信 する場を 得 たことは、 最 初の一 歩 としては 上 々 の 滑 り出しであった。講演後に子ども達から「大人になってもタバコは吸い ま せ ん ! 」、「お 父 さ ん ・お 母 さ ん に吸わないよう 注 意し ま す ! 」などと 力 強 く 書 き 記 した 手 紙 が 届 いた。この 手 紙 を見 返 すことは、私の禁煙活動を継続するための 原 動 力 となって いる。 今後はいかに教育現場と 連 携 し、情報 発 信 を継続して行なっていけるかが 課 題 となる。 医療現場では、 命 を 削 ってタバコの煙を吸ってきた人達の 生 の 声 を聞いているコ メ デ ィ カ ル や、継続支援の 難 し さ に 日 々 奮 闘 しているコ メ デ ィ カ ル が大勢いる。しかしこの 生 の 声 は医療現場に 留 ま り、情報 発 信 出来ていないのが現状である。この人 材 が教育現場で活動 をすることが、将来的な 予 防医学につながるのではと 感 じ ている。 4 . おわりに 現在の小学 生 の親の 顔 ぶ れを見ると、 多 くは 昭 和 40 年 ~ 50 年 代 の 高 度成 長 期に 生 を 受 けた 世 代 である。この親 世 代 の私達は、学校でタバコに関する 正 確 な知識を学 ん だ 人は ま ず いないであ ろ う。 職 員 室 では 先 生 の 机 に 灰 皿 が 置 かれ、 自 宅 では 父 親が 威 厳 を 保 つよう に家で 自 由 にタバコを吸っていた。テ レ ビ は 白 黒 から カ ラーとなり、 ブ ラ ウ ン 管 から 映 る 映 像 は 花 形 俳 優 が 山 盛 りの 灰 皿 でタバコを 消 す シ ーンや、吸ったタバコを 足 で 踏 み 消 す シ ーンなど 視 覚 情報としての 悪 材 料 を見て育った 世 代 である。 時 代 は ブ ラ ウ ン 管 から 液 晶 テ レ ビ に 変 わり、 俳 優 さ ん 達のタバコを吸う シ ーンもめっきり減った。 子ども達は、 換 気 扇 の 下 や家の外で ひ っ そ りタバコを吸う姿や、喫煙場所を 探 し 周 り、 肩 身の 狭 い 思 いをしながらタバコを吸う親の姿を見て育っている。このマ イ ナ ス イ メ ー ジ の 視 覚 情報に、 正 確 な 聴 覚 情報を子ども達に 発 信 することができたら、防煙 能 力 が身に 付 き、今後の喫煙率の 低 下 およびタバコが 引 き 金 となる 疾 患 の 発 生 が 激 減するのではないか と考える。 - 171 - く ま もと禁煙 推 進 フ ォ ーラムの取り組みが、教育現場 ― 医療現場間のコ ミ ニ テ ィ ー・ネ ットワークの 構 築 および、子ども達を 疾 病から 守 るような取り組みを 牽 引 する組 織 ・人 材 育成の場になる事を期待する。 添付資料 - 172-