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5 発音指導について

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5 発音指導について
発音指導について
Ⅰ.はじめに
コミュニケーションに関係する器官のうち、発声のしくみを調べてみましよう。発声に
は、以下のような様々な要素が含まれます。
①
ことばを組み立てる大脳
②
大脳の指令を伝える神経系
③
大脳の指令に従って動くさまざまな筋肉や器官
Ⅱ.毎時間練習するプログラム
・呼吸四態の練習(口から吸って口から吐く、口から吸って鼻から出す、
鼻から吸って鼻から出す、鼻から吸って口から出す)
※腹式呼吸も
・発声の練習………アイウエオ体操等
・母音の練習………長母音
短母音
a
aaaaa
有声母音(アイウエオ)
無声母音(ハヒフヘホ)
・舌の安定を図る………中舌を窪んだスプーン状にする。
Ⅲ.発声・発音の基礎指導
1.リズム練習
・拍手でリズムに合わせる
・リズムに合わせて歩く
・歌いながらお遊戯
2.唇の運動
・過敏の軽減(スプーン等で触られるなど)
・大きく開ける、しっかり閉じる
・唇を前に出す、引く
・口の中に息をため、出す
・唇を左右に引く
・擬態語や擬声語を引き出す
・バ行の2連続音の練習
3.舌の運動
・過敏の軽減(スプーン等で触られるなど)
・舌を出す、入れる
・舌でほおを押す
・舌を唇の左右上下に動かす(ウエハースや蜂蜜を取る)
・舌先を中歯茎につける(蜂蜜をなめる)
・中歯茎につけたウエハースを舌先で取る
・後口蓋ににつけたウエハースを舌先で取る
・上下の前歯の裏をなめる
・上下の唇の裏をなめる
・中舌にぼうろをのせ、「あ」「お」と発音する
・舌先でガムをつぶす
-1-
・ガムをふくらます
・平らな皿に砂糖やきなこをつけてなめ回す。
・舌でウエハースをなめ、穴を開ける
・ウエハースを手を使わずに食べる
・アメをなめて舌で転がす
4.顔・口形の運動
・いろいろな表情の模倣
・顔の筋肉のマッサージ
5.息の練習のための遊び
・ジュースをストローで飲む
・ラッパや笛を吹く(強く、弱く)
・風車で遊ぶ
・巻き笛で遊ぶ
・シャボン玉で遊ぶ。(口から吹く、鼻から吹く)
・紙風船をとばす
・ろうそくを消す。消さないように吹く
・ストローで紙吹雪を吹く
・舌にストローをのせ、かんで吹く
・セロハンをハーと吹く
・フーと吹く
・息を止めたり出したりする
・玉吹きをする
・吹き出し(ぞうの鼻)を吹く
・風船を一息で大きくふくらませる
・ピンポン玉を強く吹き、遠くへ転がす
・羽毛をハーととばす
・息と声の区別をし、赤(声)と青(息)のカードに結びつける
・吹き矢で的に当てて遊ぶ
・「パ」や「バ」の息でウエハースを落とす
・息を吸い込みながら唇や鼻穴に紙を吸い付ける
・うがいをする
・鼻水をかむ
6.発語指導発声のための遊び
・自然な明るい声を出す
・抑揚を捉えて口声模倣する
・「あいうえお体操」(上腕の動き)をする
・興味を持った場面ですすんで口声模倣する
-2-
・メガホン遊び(メガホンに触りながら声を出す)
・カラオケ
・セロハン、ゴム風船に唇を当てて声を出す
・動物のなきごえ・乗り物の音等の模倣(ワンワン、ブーブーなど)
・基本口形と音節数を一致させようとする
・母音の3連音、5連音の練習
・有声・無声・鼻音の区別ができる
・色カードに対応した声を出そうとする(赤→有声
青→無声
黄→鼻音)
・高い声、低い声の調節ができる
・アクセント、イントネーションをとらえる
・口形や音節について、修正されたことが分かり、言い直しするようになる
・音声のフィードバック機能を働かせて、気をつけて発話するようになる
・助詞を含めて正しく模倣する
・行動の言語化を行う
・口声模倣を上手に行う
Ⅳ.各音の練習プログラム
1.母音
「あ」
・ア行の発音は「アオウエイ」の順で指導しましょう。
・自然に口を大きく開ける。
・歯と歯の間は親指が楽にはいるくらい。
・舌は平ら、下がっている。
→口形がうまくできない時
・手で形をつくってみましょう。閉じてしまうときには、軽く口を手で開けてあげてくだ
さい。ただし、くれぐれもいやがらないように注意しましょう。
→舌が盛り上がったり、舌の位置が定まらない時
・スプーンや平らなキャンディなどで舌が平らになるように軽く押さえてあげましょう。
→顎があがる時
・形に軽く手を置いてあげたり、下顎を少し押さえたり、鏡の位置を工夫してみてくださ
い。
「お」
・唇は丸い感じて、間隔は人差し指。
・舌は自然に少し上がる。
・呼びかけ遊び「オーイ」
・口形ができにくい場合は、手でほっぺを押さえる。
-3-
・棒アメをなめて口の形を覚える。
・口が閉じてしまう場合は、筒状の物を口に当てたり、
いやがらない程度に手で口を開けてあげましょう。
「う」
・唇が小指くらい開く。
・唇がとがらないように。
・ローソクふきなどで口形をつくる。
・ブタの鳴き声「ブウブウ」やバスの音「ブッブー」
など、まねっこ遊びをしてみましょう。
・「フ」の時は、紙が動かないことを知らせてあげましょう。
「え」
・歯と歯の間がストロー1本ぐらい。
・奥舌が少し上がる。
・指で舌の持ち上がりを感じる「ア、エ」
・鏡を見て、「い」の口形から「エー」と言って、口形の違いを知らせましょう。
「い」
・鏡を見て「イー」
・奥舌が少し上がる。
・歯磨きをしながら「イー」と言ってみましょう。
・「 シー」や「ジー」となるときは舌の位置が高くなって
い
ます。ストローを使った水吹きで違いを確かめてみま
し
ょう。
2.ヤ・ワ行音(j音、w音の発音要領の練習をする。
)
j音…「イ」の口構え(中舌を硬口蓋に近づける)で、声を出すと同時に母音を
出す。
w音…「ウ」の口構え(奥舌を上げて軟口蓋に近づける)で。声を出すと同時にa
音を出す。
①ヤ・ワ行音の発音練習をする。
②ヤ・ワ行音を含む言葉による練習をする。
「や行」
ヤ行音は、[j]と言う子音に母音の「ア」「ウ」
「オ」音がついて、「ヤ」「ユ」「ヨ」音
になります。
・「いあ」「いう」「いお」とかいた口形(文字)カードを見て、手拍子をパンと打ち2文
字を一声で言います。
・はじめは「イーア」、次に「イアー」と練習し「イア」から「ヤ」と言えるようにしま
す。
-4-
・「ユ」「ヨ」についても同じように練習します。
「わ行」
「ワ」音は[w]と言う子音に母音「ア」がついた音と考えられますが、「ウ」に「ア」
がつながった重母音として練習します。[w]という子音は、顎が開いて、唇だけが小さ
くなっています。
・唇を丸めて人差し指に息を吹き出し、「ウー」といいながら指をはずし同時に「ア」と
言います。
・はじめは「ウーア」、次に「ウアー」と練習し、
「ワー」から「ワ」といえるようにしま
す。
3.パ・バ・マ行音(p音・b音・m音の発音要領の練習をする。
)
p音…唇を軽く閉じ、呼気を一旦止めて破裂的に吐き出す時、母音を出す。
b音…唇を軽く閉じ、呼気を一旦止めてp音より弱く破裂させて、母音を出す。
m音…両唇を軽く閉じ、声を鼻に響かせながら、口を開くと同時に母音を出す。
①パ・バ・マ行音の発音練習をする。
②パ・バ・マ行音を含む言葉による練習をする。
「ぱ行」
唇を閉じ、息をはれるさせるように出すと子音[p]が出ます。それに母音を続けると、
パ行が発音できます。
・鏡を用意して、唇を閉じる練習をします。
・ティッシュペーパー、綿、羽、銀紙片などを手の上に載せ、「パー」「プー」と言って飛
ばして遊びましょう。
・「パ」
「ピ」
「プ」
「ペ」
「ポ」と言いながら手のひらに息をかけましょう。
・「パ」「ピ」「プ」「ペ」「ポ」と言いながらローソクを吹き消します。
・指で唇を閉じさせ、「パッ」と声をかけて開けます。
・パンの絵カードなどを使い、単語で練習しましょう。
「ば行」
唇を閉じ、声を破裂させるように出すと子音[b]が出ます。それに母音を続けると「バ
行音」が発音できます。
・「ブルルル」と唇をふるわせ、声を出して遊びましょう。
・指導者の頬に手のひらをあてて、「ブーブー」と言ってひびき
があることを知らせまし
ょう。
・指導者と自分の頬に手をあてて、「バ」「ビ」「ブ」「ベ」「ボ」
と練習します。
・「いないいないバァー」、「あかんベェー」、「ブッブー」など、
遊びながら声を出しましょう。
-5-
「ま行」
唇を軽く閉じて、「ンー」と鼻にひびかせると子音「m」がでます。
それに母音を続けると、マ行音が発音できます。
・指を鼻に当て、唇を閉じて「ンー」と言う練習をします。次に、指を
鼻に当てて「ンー」、鼻から指を離して「アー」というように分けて
練習します。
・「 マー」と言いながら、つばのシャボン玉作りをして遊ぶ方法もあり
ます。
・「マンマン」
「モーモー」など口まねをして遊んだり、
「ミーンミーン」、
「メーメー」
、
「モ
ーモー」と動物のなどの鳴きまねをして遊びましょう。
4.タ・ダ・ナ行音(t音・d音・n音の発音要領の練習をする。
)
t音…前舌を中歯茎に軽く付けて呼気を止め、破裂的に呼気を出しながら、a、
e、o音を出す。
d音…t音よりは弱いが、t音と同じ要領で有声破裂する。
n音…前舌中歯茎に軽く付けて、声を鼻に響かせながら、舌を下げ、母音を出す。
①タ・テ・ト音の発音練習をする。
②タ・テ・ト音を含む言葉による練習をする。
③ダ・デ・ド音の発音練習をする。
④ダ・デ・ドを含む言葉による練習をする。
⑤ナ・ヌ・ネ・ノ音の発音練習をする。
⑥ナ・ヌ・ネ・ノ音を含む言葉による練習をする。
「た行」
タ行音の子音は、「タ、テ、ト」音が[t]、「チ」音が[t∫]、「ツ」音が[ts]と
3つに分けられます。[タ、テ、ト]音と[チ、ツ]音に分けて練習します。
①[タ、テ、ト]音
上歯茎裏に前舌をつけ、破裂させながら息を出し、同時に母音を続けると「タテト」音
が発音できます。
・上歯茎裏にハチミツや乳ボーロをつけ、前舌でなめたり、すりつぶして遊びましょう。
・子どもの手に、無声で「タ」「
( テ」「ト」)と言ってやり、破裂の息が手にあたること
を知らせ、模倣させましょう。
・手のひらや物さしにウエハースや銀紙片を載せ、「タ、テ、ト」と
言って軽くとばして遊びましょう。
・タンバリンを叩いて「タンタンタン」、まりをついて「テンテンテ
ン」、たいこを叩いて「トントントン」と言って遊びます。
「な行」
唇をわずかに開き、前舌を上の歯茎裏に密着させて声を鼻にひびかせると子音「ん」が
-6-
出ます。それに母音を続けると、な行音が発音できます。
・始めは、鼻に人差し指を当てて「ンー」、鼻から指を離しながら「アー」というように
分けて練習します。
・「ノ」「ネ」「ヌ」「ニ」についても同じように練習します。
・「ンアー」になったり、「ンター」になりやすいので指導者の頬をさわったり、手のひ
らに息のあたりからを感じながら練習します。
・人差し指を軽く鼻に当てて、「ナナナ・・」「ニニニ・・」と連続音の練習をします。
5.ニ音( i音の発音要領の練習をする。
)
i音…中舌を硬口蓋に触れ、声を鼻に響かせながら、i音を出す。
①ニ音の発音練習をする。
②ニ音を含む言葉による練習をする。
6.サ行音(s音の発音要領の練習をする。
)
s音…舌先を歯茎に軽く触れ、舌の中央に溝を作り、そこに呼気を通して摩擦させ
s音を出しながら母音を出す。
①サ、ス、セ、ソ音の発音練習をする。
②サ、ス、セ、ソ音を含む言葉による練習をする。
「さ行」
サ行音の子音は、「サ、ス、セ、ソ」が[s]、「シ」が[∫]です。
①サシセソ音の練習
・舌の先を下歯茎裏に軽くつけ、前舌と上歯茎のすき間から行きを出すと子音[s]が出
ます。それに母音を続けます。
・4分の3くらい水を入れたコップとストローを用意します。前舌と上歯
茎でストローをはさむようにくわえ、水の中に息を吹き出します。この
とき、唇でくわえたり、歯で噛んだりしないよう気をつけましょう。
・静かに息が出せるようになったらコップをはずし、手のひらをストロー
の先に近づけて息を感じさせながら出します。
・「スーッ」と拭いているストローを静かに抜きとり、「スーッ」と続
けて吹く練習をします。このときの「スー」が子音[s]です。
・[s]の音が安定して出せるようになったら、母音「ア」を続けます。
始めは「sーアー」とゆっくり練習し、次第に短く「サ」と1つの
音として言えるよう練習します。
・「ス」「セ」「ソ」についても同じように練習します。
7.シ音(∫音の発音要領の練習をする。
)
∫音…舌先を歯裏から少し離れ、舌の中央に溝を作り、前舌と口蓋との隙間から息
を摩擦させ、i音を出す。
①シ音の発音練習をする。
②シ音を含む言葉による練習をする。
-7-
②シ音の練習
・下の先を下歯茎裏に軽くつけ、中舌面と軟口蓋のすき間から息を出すと子音[∫]が出
ます。それに母音「イ」を続けます。
・噛みの上に細かく切った色紙をまき、一方に唇の舌をつけ、「シッ」と色紙を舞い上が
らせて遊びます。
・手の甲を下唇の舌につけて、摩擦の息を感じさせて練習します。このときの「シーッ」
が子音[∫]です。
・[∫]の音が安定して出せるようになったら、母音「イ」を続けます。
8.ハ行音(h音の発音要領の練習をする。
)
h音…「ア、エ、オ」の口構えで、呼気を軽く摩擦させながら、声を出す。
①ハ、ヘ、ホ音の発音練習をする。
②ハ、ヘ、ホ音を含む言葉による練習をする。
「は行」
ハ行音の子音は、「ハ、ヘ、ホ」が[h]、「ヒ」が[Ç]、「フ」が[Φ]と3つに分かれ
ています。「フ」、「ハ、ヘ、ホ」、「ヒ」の順に練習します。
①ハヘホの練習
・「ア」の口形をして、鏡やガラス窓に息を吹きかけ曇らせると、「ハ」の子音[h]が出
ます。それに母音を続けます。
・「ハ」「へ」「ホ」の口形で手のひらに息を吹きかけ、サッと手をずらして母音を続けま
す。習熟してきたら手を使わないで「ハ」「へ」
「ホ」音が出せるように練習します。
・行きを強く吐きすぎないよう注意しましょう。
9.ヒ音( 音の発音要領の練習をする。
)
音…中舌を丸くして、硬口蓋に近づけ、呼気を強く出しながら、
「イ」の口構え
で声を出す。
①ヒ音の発音練習をする。
②ヒ音を含む言葉による練習をする。
②ヒ音の練習
・小指の先をかみ、そーっとぬいてそのまま「ヒー」と声を出します。
・子どもの発音が無声の「シ」「チ」「キ」になる場合が多いので注意します。
・ア行音とハ行音を区別して発音できるよう練習します。
-8-
10.フ音(V 音の発音要領の練習をする。
)
V音…両唇をつぼめて、呼気を摩擦させながら、声を出す。
①音の発音練習をする。
②フ音を含む言葉による練習をする。
③フ音の練習
・「ウ」の口形で少し唇をすぼめ、火をつけたローソクを吹き消すと「フ」
の子音[Φ]が出ます。
・手のひらに「フ」と息を吹きかけ、サッと手をずらして母音「ウ」を続
けます。習熟してきたら手を使わないで「フ」音が出せるように練習し
ます。
・「フー」と言って、風車を回したり、綿を空中に吹き上げて遊びましょ
う。
11.ラ行音(r音の発音要領の練習をする。
)
r音…前舌(舌先)を硬口蓋の方へそり上げ、母音の口形で声を出しながら、舌先
を歯茎の方へうち下ろし、母音を付けて声を出す。
①ラ音の発音練習をする。
②ラ音を含む言葉による練習をする。
「ら行」
ラ行音は、舌がしなやかに、柔らか、自由自在に動くようにならないと上手に発音できな
い音です。ラ行音の子音は[r]です。
・歯茎裏と舌先を密着させたまま声を出すと[r]の発音ができます。それに母音を続け
ると、ラ行音が発音できます。
・ハチミツを上歯茎裏、または歯裏につけ、舌先でなめとる練習をしま
す。
・ウエハースを小さく切り、上歯茎裏につけ、舌先でとる練習をします。
・「ラ」「ロ」「レ」「リ」「ル」の順に練習しましょう。
・「ラララ・・・」「レレレ・・・」と連続音の練習をします。
12.カ行音(k音の発音要領の練習をする。
)
k音…「エ」に近い口構えで奥舌を軟口蓋に軽く付け、呼気を止めて軽く破裂させ
ながら、母音を付けて声を出す。
①カ音の発音練習をする。
②カ音を含む言葉による練習をする。
「か行」
軟口蓋に軽く奥舌をつけて、息を破裂させるように出すと子音[k]がでます。それに
母音を続けるとカ行音が発音できます。
カ行音の練習では、うがい(ガラガラうがい)ができることが大切です。
①うがいの練習をします。
・水(ジュース)を口にふくみ、だんだん顔をあお向けにし、水を飲み込まない練習をし
-9-
ます。次に指導者が「ガラガラ・・・」と手本を見せてから練習します。
・始めはあお向けに寝て練習する方がよいでしょう。
②ストローを使ってカ行音の練習をします、
・顔をあお向け、ストローで口の奥に少しだけ水を入れ、「カー」または「アー」と声を
出します。次第に水の量を少なくしていき、水を入れなくても発音できるよう練習しま
す。
・「ハ」の音が安定して発音できるようになったら。「コ」「ク」「ケ」「キ」の順に練習し
ます。
③タ行音からカ行音を発音します。
・始めにタ行音がはっきり発音できるかどうか確認します。
・指で前舌を押さえ、舌が上に上がらないようにしながら、指導者が「タ」と言って模倣
させると「カ」の音がでます。
・最初が、しっかり押さえるようにしますが、だんだん指の力をぬき、次に指を離してい
き、最後には指で口をさすだけで「カ」の音がでるように練習します。
・「カ」の音がでるようになれば、今度は子どもが自分の指を使って練習します。
13.ツ音(tsw音の発音要領の練習をする。
)
tsw音…前舌を上歯茎に軽く付け、呼気を止め、軽く破裂させると同時に摩擦さ
せ、母音uを付けて声を出す。
①ta、da、na音との比較練習をする。
②ツ音の発音練習をする。
③ツ音を含む言葉による練習をする。
②「チ、ツ」音
上歯茎(歯)裏に前舌(舌先)をつけ、舌先を離しながら息を破裂させると同時に、舌
と上歯茎裏のすき間に息を出し、母音を続けると「チ、ツ」音が発音できます。
・つばを舌先にため、「イ」の口形でつばをザラ紙にとばし、
「チ」と言ってみましょう。
・要領が分かってきたら、次第につばを少なくして、つばをとばさなく
ても発音できるよ
うに練習します。
・「ツ」の音については、「ウ」の口形で同じようにします。
- 10 -
14.チ音(t∫i音の発音要領の練習をする。
)
t∫i音…舌先を下歯茎に軽く触れ、前舌面を硬口蓋に軽く付け、呼気を弱く破裂
させると同時に、摩擦させ、母音iを付けて声を出す。
①チ音の発音練習をする。
②チ音を含む言葉による練習をする。
15.ガ音(g音の発音要領の練習をする。
)
g音…ka音の要領で、呼気を一旦止め、有声破裂させると同時に、母音を付けて
声を出す。
①ガ行音の発音練習をする。
②ガ行音を含む言葉による練習をする。
「濁音」
濁音の特徴は、声は響くことにあります。頬やのどにさわって発音すると手のひらに響
きが伝わります。
・指導者の頬をさわって、ひびきの違うことを知ります。
「パ」と「バ」、「カ」と「ガ」、「サ」と「ザ」、「タ」と「ダ」
・母音を前につけて練習します。
「あーばーぱ」、「いーびーぴ」、「うーぶーぷ」、「えーべーぺ」、
「おーぼーぽ」
と練習します。
・他の音も同じように練習します。
16.ザ行音(z音の発音要領の練習をする。
)
z音…s音の要領(s音に比べて、呼気はやや弱い)で、呼気を有声摩擦させなが
ら、母音を出す。
①ザ、ゼ、ゾ音の発音練習をする。
②ザ、ゼ、ゾ音を含む言葉による練習をする。
17.ジ音(¾ i音の発音要領の練習をする。
)
¾ i音…s音の要領(イに近いクチ構え)で、有声摩擦させながら、母音「イ」を
出す。
①ジ音の発音練習をする。
②ジ音を含む言葉による練習をする。
18.カ゜行音(¿ 音の発音要領の練習をする。
)
¿ 音…ka音と同じく、奥舌を軟口蓋に付け、声を鼻に響かせながら、軽く奥舌の
調音点で破裂させて母音を出す。
①カ゜行音の発音練習をする。
②カ゜行を含む言葉による練習をする。
- 11 -
19.撥音 ン
① 音の発音要領の練習をする。
(せんせい、ふうせん)
音…口を開いたまま、奥舌を軟口蓋に付けて、息を鼻に流し、声を鼻に響かせ
る。
② ¿ 音の発音要領の練習をする。
(しんごう、にんぎょう)
¿ 音…硬口蓋と軟口蓋の境目に奥舌を持ち上げて接触させ、息を鼻へ流し、声を
鼻に響かせる。
③m音の発音要領の練習をする。
(トランプ、たんぽぽ)
m音…両唇を閉じ、息を鼻に流し、声を鼻に響かせる。
④n音の発音要領の練習をする。
(ほんたて、ランドセル)
n音…前舌を中歯茎に付けて息を鼻に流し、声を鼻に響かせる。
⑤ 音の発音要領の練習をする。
(しんにゅうせい)
音…中舌を奥歯茎や硬口蓋に接触させ息を鼻に流し、声を鼻に響かせる。
「ん音」
日本語の「ン」は文字では「ん」の1文字
ですが、発音の上では5つ以上に言い分け
ています。ここでは、3つの音について練習します。「ン」の練習はことばの中でしまし
ょう。
・唇を軽く閉じて、声を鼻にひびかせる。
「とんぼ」「えんぴつ」「たんぽぽ」「パンも食べる」
・唇をわずかに開き、前舌を軽く上歯茎裏につけて、声を鼻にひびかせる。
「べんとう」「おんなのこ」「せんたく」「パンにバターをぬる」
・口を軽く開き、舌を平らにし、奥舌面を軟口蓋につけて声を鼻にひびかせる。
「えほん」「りんご」
「はんかり」
「パンを食べる」
20.促音 ッ
①pp・tt・kkの促音を含む言葉の練習をする。
②ss・∫∫の促音を含む言葉の練習をする。
③ts・t∫の促音を含む言葉の練習をする。
21.拗音
(1)みゃ・みゅ・みょ音(mja・mjw・mjoの発音要領の練習をする。)
mja・mjw・mjo音…m音を出しながらj音に渉り、母音a・w・oを付け
る。
①mja・mjw・mjoを含む言葉の練習をする。
(2)びゃ・びゅ・びょ音(bja・bjw・bjoの発音要領の練習をする。)
bja・bjw・bjo音…b音を出しながらj音に渉り、母音a・w・oを付け
る。
①bja・bjw・bjoを含む言葉の練習をする。
(3)ぴゃ・ぴゅ・ぴょ音(pja・pjw・pjoの発音要領の練習をする。)
- 12 -
pja・pjw・pjo音…p音を出しながらj音に渉り、母音a・w・oを付け
る。
①pja・pjw・pjoを含む言葉の練習をする。
(4)りゃ・りゅ・りょ音(rja・rjw・rjoの発音要領の練習をする。)
rja・rjw・rjo音…r音を出しながらj音に渉り、母音a・w・oを付け
る。
①rja・rjw・rjoを含む言葉の練習をする。
(5)ひゃ・ひゅ・ひょ音( ja・ jw・ joの発音要領の練習をする。)
ja・ jw・ jo音… 音を出しながらj音に渉り、母音a・w・oを付け
る。
① ja・ jw・ joを含む言葉の練習をする。
(6)きゃ・きゅ・きょ音(kja・kjw・kjoの発音要領の練習をする。)
kja・kjw・kjo音…k音を奥舌面で無声破裂させると同時にj音に渉り、
母音a・w・oを付ける。
①kja・kjw・kjoを含む言葉の練習をする。
(7)ぎゃ・ぎゅ・ぎょ音(gja・gjw・gjoの発音要領の練習をする。)
gja・gjw・gjo音…g音を奥舌面で有声破裂させると同時にj音に渉り、
母音a・w・oを付ける。
①gja・gjw・gjoを含む言葉の練習をする。
(8)き゜ゃ・き゜ゅ・き゜ょ音(¿ ja・¿ jw・¿ joの発音要領の練習をする。)
¿ ja・¿ jw・¿ jo音… ¿ 音を出しながらj音に渉り、母音a・w・oを付け
る。
① ¿ ja・¿ jw・¿ joを含む言葉の練習をする。
(9)にゃ・にゅ・にょ音( a・ w・ oの発音要領の練習をする。)
a・ w・ o音… 音を前舌又は中舌を奥歯茎に又は硬口蓋に軽く付け、鼻に
響かせながら出しながら母音a・w・oを付ける。
① a・ w・ oを含む言葉の練習をする。
(10)しゃ・しゅ・しょ音(∫a・∫w・∫oの発音要領の練習をする。)
∫a・∫w・∫o音…∫音を出すと同時に、母音a・w・oを付ける。
①∫a・∫w・∫oを含む言葉の練習をする。
(11)じゃ・じゅ・じょ音(ja・jw・joの発音要領の練習をする。)
ja・jw・jo音…j音を出すと同時に母音a・w・oを付ける。
- 13 -
①ja・jw・joを含む言葉の練習をする。
(12)ちゃ・ちゅ・ちょ音(t∫a・t∫w・t∫oの発音要領の練習をする。)
t∫a・t∫w・t∫o音…t∫音を出しながら、母音a・w・oを付ける。
①t∫a・t∫w・t∫oを含む言葉の練習をする。
※
各音を含む言葉を練習した後に、各音を含む言葉が入っている文を使って練習する。
例:バターパンを食べる。
【留意点】
○自然な声を出す練習をする。
○正しい発音の練習をする。
○正しい言葉のリズムやイントネーションの練習をする。
○音節の数と拍数とを区別して発音する練習をする。
○テンポが乱れず同じ早さで話す練習をする。
Ⅴ.発音練習で使えるもの
ピンポン玉吹き、シャボン玉、巻き笛、羽毛、もも笛、玉吹き、風車、紙風船、ろうそく、
吹き矢、ストロー、ジュース、ラッパ、笛、セロハン、ウエハース、ボウロ、チョコ、蜂蜜、
スプーン、ガムなど、手を変え品を変え子どもたちは遊んでいるつもりでも、指導意図をふま
えて行う。
Ⅵ.札幌聾学校
千葉先生の助言(平成18年度
東北聾教育研究大会より)
○ 発音を誘導した時に使ったサインに文字をつけて音韻意識につなげ、発音と文字のワタリ、
書き文字につなげていく、ということを地道に繰り返しやっていくことで、音韻意識と書き文字
につなげていくことができる。
○ 話したい、伝えたいという気持ちはどの子にもある。その気持ちを受け止めてあげて、そこ
にぴったりしたことばを当てはめてあげるということを積み重ねていくことが大切だと思う。何
でも受け止めてくれる先生、お母さん、大人がいるという状況の中で子どもの発言を子どもの気
持ちにぴったりした日本語に置き換えていく。それを繰り返していく中で、この言葉を使うと便
利だな、と子どもたちが思ってくる。
「その言葉を使ったときにお母さんが『なあに』と言った。
このことばを言ったらお母さんは振り向いてくれる。ことばって便利」と実感できたときにその
言葉が、その子の中に少しずつ育っていくのだ。
○ 発音指導をする場合、子どもの発音の傾向や手掛かりを知るために、できるだけ発音明瞭度
検査はしたほうがよい。分析と指導の指針ということではコレール社の岡先生の本が参考になる。
その本によると、聞き取り役は聾学校の先生でも一般社会人でも大きく差が無いということなの
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で、聾学校の先生方が聞き取り役をやっても良いと思う。
○ 札幌医大とのカンファレンスの中で、言葉は生活の中で身に付けていくものだから、カード
で「リンゴ」ということばがわかったとしても、においとか、皮をむいたら中が白いとか、種が
あるとか、豊かな「リンゴ」というイメージは育たないということが話題になったことがある。
子どもたちはリンゴと聞いたとき、
「白雪姫」を連想するかもしれない。そういう様々なことが
あっての「リンゴ」という言葉なのだ。カードを見せて、
「リンゴ、はい、取れましたね。バナ
ナ、はい、取れましたね。このお子さんはリンゴも、バナナもわかりましたよ」となっても、子
どもさんの中のイメージは貧弱だと思う。
「豊かなイメージがあっての言葉だ」ということを医
大の先生方やSTの方に理解していただいたことがある。
(参考文献)
『人工内耳装用者と難聴児の学習』城間将江
井脇貴子
『だけにでもできる発音・発語指導』柳生浩
湘南出版社
『母と子のカルタとてびきセット』金山千代子
中村淳子
学苑社
聴覚障害児と共に歩む会トライアングル
『平成16・17年度研究集録』青森県立青森聾学校
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氏田直子
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