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電源回路の実装の注意点
見本 PDF 徹底図解★はじめての電源回路設計 Q & A 集 第 5 章 保護回路や熱 /ノイズ対策の常識を身に付けよう 電源回路の実装の注意点 5- 1 考え方をマスタして, しっかり計算できるようになろう 半導体の使用温度と熱抵抗,許容損失の考え方は? パワー回路に使用するパワー・デバイスは,絶対最 大定格で使用温度が決められています.ほとんどの半 導体はチャネル(ジャンクション)温度が 150℃までで す.2SK3911( 東芝)の絶対最大定格を 表1 に示しま す. 表1 の絶対最大定格から,チャネル温度が 150 で,デバイスの損失とケース温度が分かればチャネル 温度が分かります.例えば,2SK3911 のデバイス損失 PD が 60 W で,ケース温度 TC が 50℃のとき,チャネ ル温度T ch [℃]は, ℃を超えて使用することはできないことが分かります. また,機器の信頼性を保つために,絶対最大定格に 余裕を持った値 (ディレーティング)で使用します.一 般的にチャネル温度のディレーティングは 80 % 以下 とするので,150℃× 0.8 = 120℃以下のチャネル温度 で使用します. から, (0.833℃/W × 60 W) + 50℃≒ 100℃ ● チャネル温度の求め方 表2 に示すチャネル−ケース間熱抵抗は, 図1 の ように,チャネルとケース間の熱抵抗を示しているの 表1 T ch =R th(ch−c)×P D +T C (5−1) となります. 表2 に示すチャネル−外気間熱抵抗は, 図2 のよ うに,デバイス単体で使用した場合の熱抵抗を示して います.つまり,周囲温度 T a が 30℃で,デバイス損 失P D が 1.5 W の場合, T ch =R th(ch−a)×P D +T a 図1 チャネル−ケース間熱抵抗 チャネル-ケース間熱抵抗 (0.833℃/W) (1) MOSFET 2SK3911 の絶対最大定格 (Ta = 25℃) 記号 定 格 単位 ドレイン−ソース間電圧 項 目 VDSS 600 V ドレイン−ゲート間電圧 (R GS = 20 kΩ) VDGR 600 V ゲート・ソース間電圧 VGSS ± 30 V DC ID 20 A パルス IDP 80 A 許容損失 (T c = 25℃) PD 150 W EAS 792 mJ IAR 20 A ドレイン電流 アバランシェ・エネルギー (単発) アバランシェ電流 アバランシェ・エネルギー (連続) チャネル 図2 EAR 15 mJ チャネル温度 Tch 150 ℃ 保存温度 Tstg − 55 ∼ 150 ℃ チャネル−外気間熱抵抗 チャネル-外気間熱抵抗 (50℃/W) 外気温度 チャネル 表2 (1) MOSFET 2SK3911 の熱抵抗特性 記 号 最 大 単位 チャネル−ケース間熱抵抗 項 目 Rth(ch − c) 0.833 ℃/W チャネル−外気間熱抵抗 Rth(ch − a) 50 ℃/W 74 第 5 章 電源回路の実装の注意点 ケース温度 ケース-外気間熱抵抗 (49.167℃/W) チャネル-ケース間熱抵抗 (0.833℃/W) 見本 PDF 図3 (50℃/W × 1.5 W)+ 30℃= 105℃ (5−2) 基礎編 から, (1) ケース温度−許容損失のグラフ 200 熱抵抗とは熱の伝わりにくさを表し,電気抵抗の計 算で使うオームの法則と同じ計算式で算出できます. 熱計算をオームの法則に置き換えると,熱抵抗は電気 抵抗,損失は電流,温度は電圧となります. にチャネル−ケース間熱抵抗が記載されていない場合, 160 120 80 40 0 0 40 チャネル−ケース間熱抵抗は,絶対最大定格の許容損 80 120 ケース温度 TC [℃] 160 200 失とチャネル温度から計算することもできます.絶対 最大定格にはケース温度 T C が 25℃時の許容損失 P D (150 W)と最大チャネル温度T ch(150℃)が記載されて います. 従って,T C = 25℃時は絶対最大定格に記載されて いる許容損失まで許容され,T C = 150℃時は損失が 0 W である必要があります. つまり,最大チャネル温度を T ch max[℃],許容損 失を定義しているケース温度TC [℃] ,許容損失をPD [W] ,熱抵抗をR th(ch−c) [℃ /W]とすると, (T ch max −T C ) ÷P D =R th(ch−c) から, (150℃− 25℃)÷ 150 W = 0.833℃/W (5−3) と計算できます.この式をグラフにしたのが, 図3 に示すケース温度−許容損失のグラフです. ● 許容損失の求め方 デバイス周囲温度が 40℃になる環境で使用する機 器で,2SK3911 を放熱器に取り付けないで使用する場 合,許容損失は, [(150℃× 0.8) − 40℃] ÷ 50℃/W = 1.6 W (5−4) となります. なお,デバイスのケース温度は, 図1 のように, 放熱器に取り付ける面で規定しています.型式などの 印刷面は,データシートに記載されている熱抵抗とは 異なるので注意が必要です. 〈浅井 紳哉〉 引用文献 (1)2SK3911 データシート,㈱東芝. column パッケージと熱抵抗の例 電源 IC でよく使用されているパッケージと,そ の熱抵抗の例をいくつか示します.ただし,同じパ ッケージでも内部構造などによって熱抵抗は大きく 異なりますから,この例はあくまでも参考として見 てください.実際の熱抵抗は,必ずそれぞれの IC のデータシートで確認が必要です. 〈宮崎 仁〉 ● TO220 パッケージの例 [TL2575 シリーズ 1 A 降圧型 DC−DC コンバータ(TI) ]. 放熱タブのある挿入実装用パッケージ.データシートより. ● SOT23 パッケージの例 [TPS62200シリーズ 300 mA 降圧型DC−DCコンバータ (TI) ] . 0.95 mm ピッチの面実装用パッケージ.データシートより. 熱抵抗 チャネル−放熱タブ下端 Rth(ch−c) 0.38℃/W 熱抵抗 チャネル−外気 Rth(ch−a) 26.5℃/W 許容損失 10.16mm 4.55mm チャネル−外気 Rth(ch−a) 250℃/W TA = 25℃ PD 400 mW 5 4 3.84mm 15.37mm 1.6mm 1 1 2 34 5 2 2.8mm 3 2.9mm 5-1 半導体の使用温度と熱抵抗,許容損失の考え方は? 75 実践編 ● ケース温度−許容損失の関係 使用するデバイスのデータシートに, 表2 のよう 許容損失 PD [W] となります.