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栗山繁教授

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栗山繁教授
モーションキャプチャデータの知的処理に基づく映像技術
栗山繁,向井智彦(第 工学系,メディア信号処理コア)
はじめに
3次元空間での位置や向きを高精度に計測す
るセンサ技術の進歩により,人体上に貼り付けら
れた複数のマーカやセンサの動きを実時間測定
して人間の動きをデジタルデータ化する,いわゆ
るモーションキャプチャ装置がリハビリテーショ
ン等の医療目的だけでなく,人物アニメーション
や舞踊のデジタル保存,製品や環境の人間工学
的な検証,および組立作業や軍事訓練シミュレー
ション等の幅広い分野で用いられるようになって
きた.画像工学研究室では,動作データを将来の
情報社会での利活用が期待されるメディア信号
としてとらえ,その知的処理を基盤とした映像
生成技術を開発している.特に,モーションデー
タを用いた環境のシミュレーションシステム を構築するために基盤技術として,以下の問題
と取り組んでいる.
自己組織化マップを用いた動作データの
検索インタフェース
¯ データを分かりやすく整備保存し効率良く
検索する技術
¯ 得られたデータから所望のデータを精度良
く合成する技術
本稿では,これらの問題を解決するために開発
した手法を紹介する.
モーションデータの検索技術
人の動きを表現するモーションデータは人体関
節の回転角度の時系列データであり,各姿勢ベク
トルは 次元以上の実数値として保持されてい
るので,多変量データ解析による次元圧縮法を
用いる必要がある.我々は,
「ユーザが既に所望
するモーションを頭の中にイメージできており,
そのキーとなる姿勢を可視化した姿勢群から直
接的に選択する」ことにより,モーションデータ
を検索するというアプローチを試みた.モーショ
ンデータは姿勢データが時系列に並べられたも
のと見なされるが,その中から代表的な姿勢の
みを効率良く 次元ディスプレイ上に分布させ
て表示するために,自己組織化マップと呼ばれる
手法を導入した (
参照).
動作データの要約化例
代表姿勢群がアイコン表示されたマップ上で
キーとなる姿勢に近いアイコンを指示すること
により,モーションデータの検索結果一覧がアニ
メーションとして表示される.
我々はさらに,モーションデータの扱いを容易
にするために,データの概念化,要約化(
参照) ,意味に基づくカテゴリ分類等の技術
開発に取り組んでいる.
モーションデータの補間生成技術
モーションデータを再利用する際の問題点と
して,データが計測された環境と使用する仮想
環境の設定の不一致から生じる誤差が挙げられ
る.例えば,環境内の物体をつかむ際の手先が物
体の位置に到達しなかったり,歩行中の足が床に
めり込んだり,上滑りしたりする等の誤差を修正
する作業が頻繁に発生する.我々は人の動きを雑
音成分を含む確率的な過程とみなし,空間統計
学の一種である地球統計学()で開
発された補間法であるクリギング()を
適用して,与えられた任意の拘束条件を満たす
動作をデータ補間によって予測し生成する手法
を開発した (
参照).その精度は動径
基底関数を用いた既存の補間手法よりも高いこ
とが数値的に証明され,計算効率も対話的な操
作が十分可能な程度に効率的であるという利点
を有する.また,データ補間が動きの類似した
多くのデータ群を用いる際に大量のメモリ領域
を要するという欠点を解消するために,多次元
テンソル近似を用いたデータ圧縮法 を開発し
た.この手法は人体の表示サイズに応じて動作
生成に要する計算コストを効率的に配分するこ
とを可能にするので,群集を実時間で制御する
のに特に適している(
参照).
まとめ
人間の動きを精密に計測するモーションキャ
プチャ技術の普及によって,健康管理や事故防止
のための視聴覚教材,さらには熟練した作業や
運動技能を伝授するための電子マニュアル等の
開発に人物アニメーションを有効活用する機会
が増えてくるであろう.しかし,人間の動作や運
動を で単純に可視化するだけであれば,実
際の動きを録画したビデオ映像と比較した場合
の視覚的な効果における優位性が認められない.
ゆえに, 映像の特性を活かすために,認知的
な観点から理解しやすい仮想カメラの制御方法
や,人物の動きに特化した描画方法等を開発す
る必要がある.例えば,モーションデータを意図
的に間引いて簡素化することにより,実写映像よ
りも動きに対する理解度を高められる可能性が
ある.これらは今後の重要な研究テーマである.
発表論文
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